説明

ストレージ装置、情報処理システム、およびコンピュータプログラム

【課題】安全な取り外しを簡易な操作で可能とし、その上で、取り外し前に再度使用する際の利便性を高めたストレージ装置を提供する。
【解決手段】パーソナルコンピュータと接続されるUSBハードディスク20であって、ディスク32と、キャッシュメモリ34と、押しボタン42と、LED44とを備える。押しボタン42が押下されたときに、キャッシュメモリ34に記憶されているデータをディスク32に書き込むことでディスクとキャッシュの物理的な同期をとり、アンマウント操作せずにUSBハードディスク20を取り外してもデータを保全する。また、アンマウント操作をしていないので、そのままディスクを継続使用することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置と接続されるストレージ装置、そのストレージ装置を備える情報処理システム、またはそのストレージ装置のためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、パーソナルコンピュータ(以下、「PC」と呼ぶ)に接続されるストレージ装置を取り外す場合、操作者が適正な取り外し処理を行わなくてはならない。例えばPCを操作して、ストレージ装置の取り外しの指示をPCから行い、ストレージ装置をアンマウントされた状態としてから取り外す、といった処理を行う。操作者がこのような取り外し処理を行わずに物理的な取り外しを行うと、ストレージ装置のデータが破壊されるおそれがある。
【0003】
上記のようにPC上から取り外し指示を行う処理は、操作者にとって煩わしく簡単なものではなかった。そこで、ストレージ装置に取り外しボタンを設け、取り外しボタンが操作者により操作されたときに、ストレージ装置をアンマウント状態とする技術が提案されていた(下記の特許文献1)。この構成によれば、操作者は取り外しボタンを押すだけで、ストレージ装置をアンマウントすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−4251号公報
【0005】
しかしながら、前記従来の技術では、アンマウントした後は、ストレージ装置は使用不可の状態にあり、取り外す前に再度使用しようとする場合、PC上でマウントする操作を行うか、ストレージ装置を抜き差しするか、ストレージ装置に設けられたボタンを再度押すか、等する必要がある。このため、アンマウントした後、再度使用しようとする際の利便性が悪いという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ストレージ装置の安全な取り外しを簡易な操作で可能とし、その上で、取り外し前に再度使用する際の利便性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するために以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1] 情報処理装置と接続されるストレージ装置であって、データを格納する記憶媒体と、前記記憶媒体に転送されるデータを一時的に記憶するキャッシュメモリと、操作者による所定の操作指令を受信する操作指令受信部と、前記操作指令受信部により前記所定の操作指令を受信したときに、前記キャッシュメモリに記憶されているデータを前記記憶媒体に書き込むデータ回収部とを備えるストレージ装置。
【0009】
適用例1に係るストレージ装置によれば、操作者による所定の操作指令が受信されると、キャッシュメモリに記憶されているデータが記憶媒体に書き込まれることから、キャッシュメモリのデータが記憶媒体に書き込まれずに消失することがない。このため、データ回収部による書き込みを終えた後、ストレージ装置が物理的に取り外されたとしても、ストレージ装置のデータは破壊されることはない。さらに、データ回収部による書き込みを終えた後でも、ストレージ装置はマウント状態を維持することから、ストレージ装置の取り外しを止めて再度使用しようとする際には、操作者は何の操作も行う必要がない。このため、取り外し前に再度使用する際の利便性に優れている。
【0010】
[適用例2] 適用例1に記載のストレージ装置であって、前記操作者により操作されて前記所定の操作指令を送信する操作スイッチを備えるストレージ装置。この構成によれば、ストレージ装置側からの操作者による取り外し操作が可能となる。
【0011】
[適用例3] 適用例1または2に記載のストレージ装置であって、前記データ回収部によるデータの書き込みが終了したときに、当該終了を前記操作者に報知する報知部を備えるストレージ装置。この構成によれば、操作者は、報知部による報知を受けた後に、物理的な取り外しを行えばよいことから、データ回収部による記憶媒体へのデータの書き込み中にストレージ装置が取り外される危険性を回避することができる。
【0012】
[適用例4] 適用例3に記載のストレージ装置であって、前記報知部は、前記報知用の発光ダイオードを備える、ストレージ装置。この構成によれば、発光により、操作者への報知を行うことができる。
【0013】
[適用例5] 適用例1に記載のストレージ装置であって、前記操作指令受信部は、前記情報処理装置から前記所定の操作指令を受信する構成であるストレージ装置。この構成によれば、情報処理装置側からの操作者による取り外し操作が可能となる。
【0014】
[適用例6] 情報処理装置と、適用例1ないし5のいずれかに記載のストレージ装置とを備える情報処理システムであって、前記情報処理装置は、前記記憶媒体に転送されるデータを一時的に記憶する第2のキャッシュメモリと、前記ストレージ装置から前記所定の操作指令を受信した旨の通知信号を受信する通知信号受信部と、前記通知信号受信部により前記通知信号を受信したときに、前記第2のキャッシュメモリに記憶されているデータを前記ストレージ装置に送信するデータ送信部とを備え、前記ストレージ装置は、前記情報処理装置の前記データ転送部により送信されたデータを受信するデータ受信部と、前記受信したデータを前記記憶媒体に書き込む第2のデータ回収部とを備える情報処理システム。
【0015】
適用例6に係る情報処理システムによれば、操作者による所定の操作指令が受信されると、ストレージ装置側のキャッシュメモリに記憶されているデータと、情報処理装置側の第2のキャッシュメモリに記憶されているデータとが共に記憶媒体に書き込まれることから、両キャッシュメモリのデータのいずれも記憶媒体に書き込まれずに消失することがない。このため、データ回収部による書き込みを終えた後、ストレージ装置が物理的に取り外されたとしても、ストレージ装置のデータは破壊されることはない。さらに、この情報処理システムによれば、適用例1に係る情報処理システムと同様に、取り外し前に再度ストレージ装置を使用する際の利便性に優れているという効果を奏する。
【0016】
[適用例7] データを格納する記憶媒体と、前記記憶媒体に転送されるデータを一時的に記憶するキャッシュメモリとを備え、情報処理装置と接続されるストレージ装置のためのコンピュータプログラムであって、操作者による所定の操作指令を受信する第1機能と、前記第1機能により前記所定の操作指令を受信したときに、前記キャッシュメモリに記憶されているデータを前記記憶媒体に書き込む第2機能とを前記ストレージ装置に実現させるためのコンピュータプログラム。
【0017】
適用例7に係るコンピュータプログラムは、適用例1に係るストレージ装置と同様の作用効果を得ることができる。
【0018】
さらに、本発明は、上記適用例7に係るコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の態様で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施例としての情報処理システム100の概略構成を示す説明図である。
【図2】USBハードディスク20に備えられるブリッジコントローラ24とディスクコントローラ36とにおいて実行される制御処理を示すフローチャートである。
【図3】押しボタン42が操作者により押下されたときの各部の動作の流れを一覧する説明図である。
【図4】本発明の第2実施例としての情報処理システム200の概略構成を示す説明図である。
【図5】押しボタン42が操作者により押下されたときの各部の動作の流れを一覧する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら、実施例に基づき説明する。
【0021】
A.第1実施例:
A−1.ハードウェアの構成:
図1は、本発明の第1実施例としての情報処理システム100の概略構成を示す説明図である。図示するように、情報処理システム100は、情報処理装置としてのパーソナルコンピュータ10と、ストレージ装置としてのUSBハードディスク20とを備える。
【0022】
パーソナルコンピュータ(以下、「PC」と呼ぶ)10は、USBルートハブ12を備え、USB機器との接続が可能となっている。本実施例では、USB機器としてのUSBハードディスク20が、USBケーブル51を介して接続されている。
【0023】
USBハードディスク20は、インタフェース部22と、ブリッジコントローラ24と、ハードディスクユニット30とを備える。インタフェース部22は、PC10とUSB接続するためのインタフェースである。
【0024】
ブリッジコントローラ24は、インタフェース部22とハードディスクユニット30とに接続され、インタフェース部22を介したPC10との間のデータの送受信の制御を行うとともに、ハードディスクユニット30に対する上記データの書き込み処理および読み出し処理の制御を行う。ブリッジコントローラ24は、CPUやメモリ等を備える小型マイクロコンピュータにより構成される。なお、小型マイクロコンピュータの構成に換えて、複数のディスクリートな電子部品による構成とすることもできる。
【0025】
ハードディスクユニット30は、記憶媒体としてのディスク32と、ブリッジコントローラ24を介して送られてきたデータを一時蓄えておくキャッシュメモリ34と、ディスクコントローラ36とを備える。ディスクコントローラ36は、前述したブリッジコントローラ24、ディスク32、およびキャッシュメモリ34に接続されており、ディスク32に対する書き込みおよび読み出しを行う。すなわち、ディスクコントローラ36は、ブリッジコントローラ24から送られてきたデータを、キャッシュメモリ34に一時蓄えつつ、ディスク32へ書き込み、また、ディスク32に記憶されたデータを読み出して、キャッシュメモリ34に一時蓄えつつ、ブリッジコントローラ24へ送る。なお、ディスクコントローラ36は、CPUやメモリ等を備える小型マイクロコンピュータにより構成される。ディスクコントローラ36は、小型マイクロコンピュータの構成に換えて、複数のディスクリートな電子部品による構成とすることもできる。
【0026】
さらに、USBハードディスク20の筐体には、押しボタン42と、LED(発光ダイオード)44とが取り付けられている。押しボタン42とLED44は、ブリッジコントローラ24に接続されている。
【0027】
押しボタン42は、USBハードディスク20を安全に取り外し可能な状態とするためのスイッチで、操作者によって操作される。すなわち、押しボタン42は、操作者により押下されたときに、USBハードディスク20をPC10から取り外し可能とする旨の指令をUSBハードディスク20に送る。
【0028】
ブリッジコントローラ24、USBハードディスク20が安全に取り外し可能な状態となったことを、LED44を発光させることにより操作者に知らせる。なお、LED44に換えてスピーカを取り付ける構成とし、音により操作者へ知らせる構成としてもよい。また、光、音に限る必要はなく、操作者に報知可能な構成であれば、どのような構成に換えることもできる。例えば、USBハードディスク20が安全に取り外し可能な状態となったことをPC10に通知し、PC10でその旨を表示する構成とすることもできる。
【0029】
A−2.ソフトウェアの構成:
USBハードディスク20において、押しボタン42が操作者により押下されたときの動作について、次に詳述する。
【0030】
図2は、USBハードディスク20に備えられるブリッジコントローラ24とディスクコントローラ36とにおいて実行される制御処理を示すフローチャートである。各制御処理は、ブリッジコントローラ24とディスクコントローラ36のそれぞれのメモリに記憶された所定のコンピュータプログラムを各CPUが実行することにより実現されたものである。なお、上記コンピュータプログラムは、予めROMに記憶した構成としても良いし、ディスク32に格納される構成とし、CD−ROMなどの各種記憶媒体(コンピュータ読み取り可能な記録媒体等)に記憶されて配布されたり、またはインターネットなど各種通信手段を通じて配信されたりするものとすることもできる。
【0031】
図2に示すように、ブリッジコントローラ24は、処理が開始されると、押しボタン42が操作者により押下されたか否かを判定する(ステップS110)。ここで、押下されていないと判定されると(ステップS110:NO)、ステップS110の判定を繰り返すことにより、押下されるのを待つ。
【0032】
一方、ステップS110で押しボタン42が押下されたと判定されると(ステップS110:YES)、ブリッジコントローラ24は、≡flush cache≡コマンドを、ディスクコントローラ36に送信する。≡flush cache≡コマンドは、キャッシュメモリ34に記憶されているデータをディスク32へ書き込み、その後、キャッシュメモリ34をクリアさせる旨の指令である。
【0033】
一方、ディスクコントローラ36は、≡flush cache≡コマンドを受信したか否かを判定する(ステップS210)。ここで、受信していないと判定されると(ステップS210:NO)、ステップS210の処理を繰り返すことで、≡flush cache≡コマンドが送られてくるのを待つ。ステップS210で、≡flush cache≡コマンドを受信したと判定されると(ステップS210:YES)、ディスクコントローラ36は、キャッシュメモリ34に記憶されているデータをディスク32へ書き込み、その後、キャッシュメモリ34をクリアする(ステップS220)。
【0034】
ステップS220の実行後、ディスクコントローラ36は、キャッシュメモリ34のクリアが完了した旨を示す返り値をブリッジコントローラ24へ送信する(ステップS230)。ディスクコントローラ36は、ステップS230の実行後、「リターン」に抜けて処理を一旦終了する。
【0035】
ブリッジコントローラ24は、キャッシュメモリ34のクリアが完了した旨の返り値がディスクコントローラ36から送られてくるのを待って、その旨の返り値を受信する(ステップS240:YES)。その後、ブリッジコントローラ24は、LED44を点灯する(ステップS250)。ステップS250の実行後、「リターン」に抜けて処理を一旦終了する。
【0036】
なお、点灯したLED44は、所定期間経過後、ブリッジコントローラ24により消灯される。ここで、「所定期間」とは、例えば、所定時間であってもよいし、USBハードディスク20とパーソナルコンピュータ10との間の物理的な接続が操作者により切り離されるまでの期間であってもよい。
【0037】
図3は、押しボタン42が操作者により押下されたときの各部の動作の流れを一覧する説明図である。先に説明したフローチャートにより、ブリッジコントローラ24とディスクコントローラ36の各制御は明瞭となったが、図3では、より一層の理解のために動作を、時間経過とともに示した。
【0038】
図3に示すように、押しボタン42が押下されると(タイミングt1)、ブリッジコントローラ24は、その押下された旨を受信し、≡flush cache≡コマンドをディスクコントローラ36に送信する(タイミングt2)。ディスクコントローラ36は、≡flush cache≡コマンドを受信すると、キャッシュメモリ34に記憶されているデータをディスク32へ書き込む(data:タイミングt3)。また、ディスクコントローラ36は、キャッシュメモリ34のクリアが完了した旨の返り値をブリッジコントローラ24に返す(return status:タイミングt4)。
【0039】
ブリッジコントローラ24は、“return status”を受けると、LED44を点灯する(タイミングt5)。
【0040】
A−3.作用・効果:
以上のように構成された第1実施例の情報処理システム100に備えられるUSBハードディスク20によれば、操作者により押しボタン42が押下されると、キャッシュメモリ34に記憶されているデータがディスク32に書き込まれることから、キャッシュメモリ34の未書き込みのデータがディスク32に書き込まれずに消失することがない。このため、ディスク32への書き込みを終えた後、USBハードディスク20が物理的に取り外されたとしても、USBハードディスク20のデータは破壊されることはない。さらに、キャッシュメモリ34の未書き込みのデータのディスク32への書き込みを終えた後でも、USBハードディスク20はマウント状態を維持することから、USBハードディスク20の取り外しを止めて再度使用しようとする際には、操作者は何の操作も行う必要がない。したがって、第1実施例によれば、取り外し前に再度使用する際の利便性に優れている。
【0041】
さらに、USBハードディスク20によれば、操作者は、LED44が点灯した後に、物理的な取り外しを行えばよいことから、キャッシュメモリ34のデータをディスク32へ書き込んでいる最中にUSBハードディスク20が取り外される危険性を回避することができる。
【0042】
B.第2実施例:
B−1.ハードウェアの構成:
図4は、本発明の第2実施例としての情報処理システム200の概略構成を示す説明図である。図示するように、情報処理システム200は、第1実施例と同様に、PC210と、PC210に接続されるUSBハードディスク220とを備える。
【0043】
PC210は、中央演算処理装置としてのCPU211を中心にバス212により相互に接続されたメモリ213、ホストコントローラ215、USBルートハブ216等を備える。メモリ213は、各種データや各種プログラム等を記憶し、CPU211の作業領域となる。また、メモリ213は、USBハードディスク220用のキャッシュ213aを含む。このキャッシュ213aが、適用例7に記載の「第2のキャッシュメモリ」に相当する。なお、キャッシュ213aは、実際は、メモリ213に形成される領域としての構成であるが、これに換えて、メモリ213とは別の記憶媒体によって構成してもよい。
【0044】
ホストコントローラ215はUSBインタフェースユニットである。USBルートハブ216は、ホストコントローラ215に一体化されている。
【0045】
第1実施例におけるPC10はUSBルートハブ12を備える構成であると説明したが、詳細はこの第2実施例と同様に、CPU、メモリ、ホストコントローラ、およびUSBルートハブ等を備える。第1実施例のPC10と第2実施例のPC210とを比較すると、第1実施例のPC10では、USBハードディスク20用のキャッシュを備えない構成であるのに対して、第2実施例のPC210では、USBハードディスク220用のキャッシュ213aをメモリ213に含む構成である点が、両者は相違する。
【0046】
USBハードディスク220は、第1実施例のUSBハードディスク20と比較して同一のハードウェア構成を備え、ブリッジコントローラ224で実行される制御処理だけが相違する。ブリッジコントローラ224以外のパーツについては、第1実施例と同じ符号を付けている。
【0047】
B−2.ソフトウェアの構成:
USBハードディスク220において、押しボタン42が操作者により押下されたときのPC210およびUSBハードディスク220の動作について、次に詳述する。
【0048】
第1実施例ではフローチャートを用いて動作について説明したが、第2実施例では、フローチャートを用いた説明は省略する。第2実施例では、PC210に備えられるCPU211と、USBハードディスク220に備えられるブリッジコントローラ224と、USBハードディスク220に備えられるディスクコントローラ36との3者が関わり合うことからフローチャートが複雑となるために省略した。
【0049】
第2実施例では、USBハードディスク220の押しボタン42が操作者により押下されたことを、PC210側で検知可能な構成となっている。すなわち、PC210のCPU211は、USBハードディスク220に備えられるブリッジコントローラ224に対して、押しボタン42が押下されたか否かを問い合わせするポーリングを行う。
【0050】
PC210のCPU211は、ポーリングによって、ブリッジコントローラ224から押しボタン42が押下された旨の返信を受けたとき、メモリ213に用意されたUSBハードディスク220用のキャッシュ213aに記憶されたデータを、USBハードディスク220側に転送して、USBハードディスク220のディスク32に記憶させる。USBハードディスク220は、そのディスクへの記憶を完了すると、次いで、第1実施例と同様の方法で、USBハードディスク220のキャッシュメモリ34に記憶されているデータをディスク32へ書き込む。
【0051】
この結果、操作者によりUSBハードディスク220の押しボタン42が押下されたときに、PC210のメモリ213に用意されたキャッシュ213aに記憶されているデータと、USBハードディスク220のキャッシュメモリ34に記憶されているデータとの双方がディスク32へ書き込まれることになる。
【0052】
図5は、押しボタン42が操作者により押下されたときの各部の動作の流れを一覧する説明図である。図示するように、PC210に備えられたCPU211は、USBハードディスク220に備えられるブリッジコントローラ224に対して、押しボタン42が押下されたか否かを問い合わせするポーリング(polling)を行う(タイミングt11、t13)。ブリッジコントローラ224は、押しボタン42の押下が検出されなかった場合に、押下されていない旨の返り値を、問い合わせ先であるPC210に対して返信する(タイミングt12、t14)。
【0053】
一方、押しボタン42が操作者により押下され(タイミングt15)、その後に、上記問い合わせを受けた場合には(タイミングt16)、ブリッジコントローラ224は、押しボタン42が押下された旨の返り値を、PC210に対して返信する(return status:タイミングt17)。
【0054】
PC210に備えられるCPU211は、押しボタン42が押下された旨の返り値を受け取ると、PC210側のキャッシュ213aに対する≡flush cache≡コマンドを実行する。ここでは、USBハードディスク220用のキャッシュ213aに記憶されているデータを、USBハードディスク220のブリッジコントローラ224へ転送し、その後、キャッシュ213aをクリアする(flush cache:タイミングt18)。
【0055】
USBハードディスク220のブリッジコントローラ224は、PC210側から送られてくる上記データ(すなわちUSBハードディスク220用のキャッシュ213aに記憶されているデータ)を、USBハードディスク220に備えられるディスクコントローラ36に転送し(data:タイミングt19)、ディスクコントローラ36に上記データをディスク32へ書込みさせる(data:タイミングt20)。ディスクコントローラ36は、上記データの書き込みを完了すると、ブリッジコントローラ224に対し、その書き込みが完了した旨を返信する(return status:タイミングt21)。
【0056】
ブリッジコントローラ224は、上記書込みの完了を受けると、≡flush cache≡コマンドをディスクコントローラ36に送信する(タイミングt22)。ディスクコントローラ36は、≡flush cache≡コマンドを受信すると、キャッシュメモリ34に記憶されているデータをディスク32へ書き込み、キャッシュメモリ34をクリアする(タイミングt23)。また、ディスクコントローラ36は、キャッシュメモリ34のクリアが完了した旨の返り値をブリッジコントローラ224に返す(return status:タイミングt24)。
【0057】
ブリッジコントローラ224は、“return status”を受けると、LED44を点灯する(タイミングt25)。タイミングt22〜t25における動作は、第1実施例におけるタイミングt2〜t5(図3)における動作と同一である。
【0058】
B−3.作用・効果:
以上のように構成された第2実施例の情報処理システム200によれば、操作者によりUSBハードディスク220の押しボタン42が押下されると、USBハードディスク220側のキャッシュメモリ34に記憶されているデータと、PC210のキャッシュ213aに記憶されているデータとが共にディスク32に書き込まれることから、両データのいずれもディスク32に書き込まれずに消失することがない。このため、ディスク32への書き込みを終えた後、USBハードディスク220が物理的に取り外されたとしても、USBハードディスク220のデータは破壊されることはない。さらに、情報処理システム200によれば、第1実施例と同様に、取り外し前に再度USBハードディスク220を使用する際の利便性に優れているという効果を奏する。
【0059】
C.変形例:
・第1変形例:
上記第1および第2実施例では、USBハードディスク20、220を安全に取り外し可能な状態とするためのスイッチとして押しボタン式のものを用いたが、操作者による所定の操作指令を送ることができるものであれば、どのような方式のスイッチに換えることができる。また、押しボタン42はUSBハードディスク20に設けられているが、これに換えて、USBハードディスク20の外側から通知する構成としてもよい。例えば、操作者はPC10、210を操作してPC側から取り外し指示を送信する構成としてもよい。
【0060】
・第2変形例:
上記第1および第2実施例では、ストレージ装置としてUSBハードディスクを例示していたが、USBハードディスクに換えて、USBフラッシュドライブ(USBメモリ)等の他のストレージ装置に換えることができる。また、SDカード、メモリスティック等のメディアと、メディアリーダーとの組によりストレージ装置を構成してもよい。
【0061】
・第3変形例:
上記第1および第2実施例では、情報処理装置としてパーソナルコンピュータを例示していたが、パーソナルコンピュータに換えて、プロジェクタ、ファクシミリ装置、ルータ、テレビジョン装置等の他の情報処理装置としてもよい。
【0062】
・第4変形例:
上記第1および第2実施例では、ストレージ装置はUSB接続用のものとしたが、これに換えて、IEEE1394(アイトリプルイーイチサンキューヨン)、eSATA等の他のインタフェースにより情報処理装置と接続される構成としてもよい。好ましくは、ホットプラグに対応したインタフェースによるものがよい。
【0063】
上記実施例および各変形例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしても良い。
【0064】
なお、前述した実施例および各変形例における構成要素の中の、独立請求項で記載された要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、本発明はこれらの実施例および各変形例になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の態様での実施が可能である。
【符号の説明】
【0065】
10…パーソナルコンピュータ(PC)
12…USBルートハブ
20…USBハードディスク
22…インタフェース部
24…ブリッジコントローラ
30…ハードディスクユニット
32…ディスク
34…キャッシュメモリ
36…ディスクコントローラ
42…押しボタン
100…情報処理システム
200…情報処理システム
211…CPU
212…バス
213…メモリ
213a…キャッシュ
215…ホストコントローラ
216…USBルートハブ
224…ブリッジコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置と接続されるストレージ装置であって、
データを格納する記憶媒体と、
前記記憶媒体に転送されるデータを一時的に記憶するキャッシュメモリと、
操作者による所定の操作指令を受信する操作指令受信部と、
前記操作指令受信部により前記所定の操作指令を受信したときに、前記キャッシュメモリに記憶されているデータを前記記憶媒体に書き込むデータ回収部と
を備えるストレージ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のストレージ装置であって、
前記操作者により操作されて前記所定の操作指令を送信する操作スイッチ
を備えるストレージ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のストレージ装置であって、
前記データ回収部によるデータの書き込みが終了したときに、当該終了を前記操作者に報知する報知部
を備えるストレージ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のストレージ装置であって、
前記報知部は、
前記報知用の発光ダイオードを備える、ストレージ装置。
【請求項5】
請求項1に記載のストレージ装置であって、
前記操作指令受信部は、
前記情報処理装置から前記所定の操作指令を受信する構成であるストレージ装置。
【請求項6】
情報処理装置と、
請求項1ないし5のいずれかに記載のストレージ装置と
を備える情報処理システムであって、
前記情報処理装置は、
前記記憶媒体に転送されるデータを一時的に記憶する第2のキャッシュメモリと、
前記ストレージ装置から前記所定の操作指令を受信した旨の通知信号を受信する通知信号受信部と、
前記通知信号受信部により前記通知信号を受信したときに、前記第2のキャッシュメモリに記憶されているデータを前記ストレージ装置に送信するデータ送信部と
を備え、
前記ストレージ装置は、
前記情報処理装置の前記データ転送部により送信されたデータを受信するデータ受信部と、
前記受信したデータを前記記憶媒体に書き込む第2のデータ回収部と
を備える情報処理システム。
【請求項7】
情報処理装置と接続されるとともに、データを格納する記憶媒体と、前記記憶媒体に転送されるデータを一時的に記憶するキャッシュメモリとを備えるストレージ装置のためのコンピュータプログラムであって、
操作者による所定の操作指令を受信する第1機能と、
前記第1機能により前記所定の操作指令を受信したときに、前記キャッシュメモリに記憶されているデータを前記記憶媒体に書き込む第2機能と
を前記ストレージ装置に実現させるためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−8570(P2011−8570A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151894(P2009−151894)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(390040187)株式会社バッファロー (378)
【Fターム(参考)】