説明

ストレージ装置、電子機器及び周波数帯域補償レベル調整方法

【課題】入力信号の所定の周波数帯域での減衰度合いに適合するように等化器の周波数帯域補償レベルを調整できるようにする。
【解決手段】実施形態によれば、ストレージ装置は、第1の等化器と、第2の等化器と、調整手段とを具備する。第1の等化器は、ホストによってストレージインタフェースを介して転送された第1の信号の所定の周波数帯域を補償した第2の信号を出力する。第2の等化器は、周波数帯域が補償された第2の信号を判定フィードバック補償により等化する。調整手段は第2の等化器による判定フィードバック補償の状態に応じて第1の等化器の周波数帯域補償のレベルを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ストレージ装置、電子機器及び周波数帯域補償レベル調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ハードディスクドライブ、或いはソリッドステートドライブのようなストレージ装置は、ホストとストレージインタフェースを介して接続して用いられる。ストレージ装置はインタフェースコントローラを備えている。インタフェースコントローラは、ホストから転送されるデータ信号の受信と、ホストに転送するデータ信号の送信とを制御する。インタフェースコントローラの受信部は、入力信号を等化するための信号等化器を備えている。
【0003】
近年、ホストとストレージ装置との間で送受信されるデータ信号の転送レートは高速になっており、例えば6Gbps(ギガビット/秒)に至っている。このような超Gbpsの高速のデータ信号を受信する受信部に適用される信号等化器として、第1の等化器と第2の等化器とを備えた信号等化器が知られている。
【0004】
第1の等化器は、設定された周波数帯域補償レベルに従って入力信号の所定の周波数帯域を補償する。第2の等化器は、第1の等化器によって周波数帯域補償された信号を、判定フィードバック補償により目標とする信号に等化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−112390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来技術では、第1の等化器に設定された周波数帯域補償レベルとホストから転送されてストレージ装置に入力される信号の特性とによって、第2の等化器は影響を受ける。例えば、設定された周波数帯域補償レベルが、高周波帯域を補償するレベルとして高レベルを指定している状態で、高周波帯域が強調された信号が第1の等化器に入力されたものとする。この場合、第2の等化器には、高周波帯域がより強調された信号が入力される。これに対し、設定された周波数帯域補償レベルが低レベルを指定している状態で、高周波帯域で振幅が減衰された信号が第1の等化器に入力されたものとする。この場合、第2の等化器には、高周波帯域で相当量の補償を必要とする信号が入力される。
【0007】
本発明の目的は、入力信号の所定の周波数帯域での減衰度合いに適合するように等化器の周波数帯域補償レベルを調整できるストレージ装置、電子機器及び周波数帯域補償レベル調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、ストレージ装置は、第1の等化器と、第2の等化器と、調整手段とを具備する。前記第1の等化器は、ホストによってストレージインタフェースを介して転送された第1の信号の所定の周波数帯域を補償した第2の信号を出力する。前記第2の等化器は、前記周波数帯域が補償された第2の信号を判定フィードバック補償により等化する。前記調整手段は、前記第2の等化器による判定フィードバック補償の状態に応じて前記第1の等化器の前記周波数帯域補償のレベルを調整する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係るストレージ装置を備えた電子機器の構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態におけるインタフェースコントローラの受信部の主要な構成を示すブロック図。
【図3】同実施形態において、伝送ライン長に依存する、タップ値に対するタップ係数の関係を示す図。
【図4】同実施形態における調整器による高周波帯域補償レベルの調整を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態につき図面を参照して説明する。
図1は実施形態に係るストレージ装置を備えた電子機器の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、電子機器は、ストレージ装置11とホスト12とを備えている。ストレージ装置11とホスト12とは、ストレージインタフェース13を介して接続されている。ホスト12は、ストレージ装置11にストレージインタフェース13を介してアクセスする。
【0011】
本実施形態において、ストレージインタフェース13は、SAS(Serial Attached SCSI)インタフェースであり、転送レートが超Gbpsのインタフェースであるものとする。しかし、ストレージインタフェース13が、SASインタフェース以外のインタフェース、例えばSATA(Serial ATA)インタフェースであっても構わない。
【0012】
ストレージ装置11は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)、或いはソリッドステートドライブ(SSD)のような、不揮発性のストレージ装置である。ストレージ装置11は、記憶媒体111と、リード/ライトコントローラ112と、インタフェースコントローラ113とを備えている。
【0013】
記憶媒体111は、例えば、ストレージ装置11がHDDであれば磁気ディスクであり、ストレージ装置11がSSDであればフラッシュメモリのような書き換え可能な不揮発性メモリである。リード/ライトコントローラ112は、記憶媒体111へのデータの書き込みと、記憶媒体111からのデータの読み出しとを制御する。
【0014】
インタフェースコントローラ113は、ホスト12との間のデータ信号の送受信を制御する。インタフェースコントローラ113は、図示せぬ受信部及び送信部を備えている。受信部は、ホスト12からストレージインタフェース13を介して転送されるデータ信号を受信する。送信部は、ホスト12にストレージインタフェース13を介してデータ信号を送信する。
【0015】
図2は、インタフェースコントローラ113の受信部の主要な構成を示すブロック図である。
インタフェースコントローラ113の受信部は、信号等化器210と調整器220とを備えている。
【0016】
信号等化器210は、第1の等化器としてのフィードフォワード等化器(Feed Forward Equalizer:FFE)211と、第2の等化器としての判定フィードバック等化器(Decision Feedback Equalizer:DFE)とを備えている。
【0017】
FFE211は、周知のように、設定されたパラメータ(周波数帯域補償レベル)に従って入力信号230(第1の信号)の周波数帯域を補償する。入力信号230は、ホスト12からストレージ装置11にストレージインタフェース13を介して転送され、インタフェースコントローラ113に入力された(より詳細には、インタフェースコントローラ113の受信部で受信された)データ信号である。
【0018】
FFE211は、パラメータ(FFEパラメータ)群を設定するためのパラメータレジスタ211aを備えている。FFEパラメータ群は、FFEブーストパラメータ及び低周帯域補償パラメータを含む。
【0019】
FFEブーストパラメータは、FFE211のブーストレベルを指定する周波数帯域補償パラメータである。より詳細には、FFEブーストパラメータは、入力信号230の転送レートに対応する周波数帯域(ここでは高周波帯域)のブーストレベル(つまり高周波帯域補償レベル)を指定する周波数帯域補償パラメータである。FFE211は、このFFEブーストパラメータに従って、入力信号230の振幅をブーストすることにより転送レートに対応する高周波帯域を補償する。
【0020】
低周帯域補償パラメータは、入力信号230の低周波帯域を補償するための補正レベルを指定する。FFE211は、低周帯域補償パラメータに従って、入力信号230の低周波帯域を補償する。
【0021】
DFE212は、FFE211によって出力される周波数帯域が補償された信号231(第2の信号)を判定フィードバック補償により目標の信号に等化する。これによりDFE212は、等化信号240(第3の信号)を出力する。
【0022】
DFE212は、複数のタップ、例えば図示しないデジタルフィルタを構成する6個のタップ0乃至5を備えている。つまりDFE212には、信号231の基準値としてタップ0が配置され、当該信号231が転送レートの1UI(Unit Interval),2UI,…5UIに相当する時間間隔だけ遅延される位置に、それぞれタップ1,タップ2,…タップ5が配置される。DFE212はまた、周知のDFEタップ係数モニタ212a及びDFEタップ係数レジスタ212bを備えている。
【0023】
DFEタップ係数モニタ212aは、タップ0乃至5でのずれ(より詳細には、タップ0乃至5に区切られた遅延地点での目標の信号からの位相ずれ)を検出して、検出されたタップ0乃至5でのずれを係数化する周知の判定処理を行う。このようにDFEタップ係数モニタ212aは、検出されたタップ0乃至5でのずれ(誤差)に対応する係数を決定する。DFEタップ係数モニタ212a、タップ0乃至5でのずれに対応する決定された係数(つまり判定結果)を、タップ0乃至5の次に用いられるべきタップ係数(DFEタップ係数)C0乃至C5としてフィードバックする。
【0024】
本実施形態のように、超Gbpsの高速転送では、ホスト12によってストレージ装置11に転送されるデータ信号は、ストレージインタフェース13の伝送ライン長の影響を大きく受ける。例えば、このデータ信号が入力信号230として、ストレージ装置11のインタフェースコントローラ113内の信号等化器210に入力されたものとする。この場合、入力信号230の振幅は、上記伝送ライン長の影響を受けて、高周波帯域で減衰しているため、高周波帯域と低周波帯域との間に振幅差が生じる。すると、符号間干渉(Inter-Symbol Interference:ISI)による入力信号230の位相ずれが発生する。DFE212は、上述の判定処理に基づくフィードバックにより、この位相ずれを補正する。
【0025】
DFEタップ係数レジスタ212bは、DFEタップ係数モニタ212aによって決定されたタップ0乃至5のDFEタップ係数C0乃至C5を保持する。DFEタップ係数レジスタ212bに保持されたDFEタップ係数C0乃至C5は、タップ0乃至5で用いられる。
【0026】
調整器220は、DFE212のDFEタップ係数レジスタ212bからDFEタップ係数を読み込む。調整器220は、読み込んだDFEタップ係数に基づいて、信号231の減衰度合い(より詳細には、信号231の高周波帯域の減衰度合い)を推定(判定)する。この減衰度合いの推定の詳細は後述する。調整器220は、減衰度合いの推定結果に基づいて、FFE211が入力信号230の周波数帯域(例えば高周波帯域)を補償するのに用いられる周波数帯域補償レベル(例えば高周波帯域補償レベル)を調整する。
【0027】
ここで、ストレージインタフェース13の伝送ライン長が短い場合と長い場合とにおける、DFE212のタップ0乃至5の典型的なDFEタップ係数について、図3を参照して説明する。図3は、伝送ライン長に依存する、タップ値(タップ位置)に対するDFEタップ係数の関係を示す。
【0028】
図3において、曲線31は、伝送ライン長が短いL1の場合のタップ値(タップ位置)に対するDFEタップ係数の関係を表わし、曲線32は、伝送ライン長が長いL2(L2>L1)の場合のタップ値(タップ位置)に対するDFEタップ係数の関係を表わす。ここで、データ信号の送信側(つまり、ホスト12の側)における当該データ信号の振幅及び転送レートは、伝送ライン長が短い場合と長い場合とで同一であるものとする。また、FFE211のパラメータレジスタ211aに設定される、FFEブーストパラメータを含むパラメータ群の値も、伝送ライン長が短い場合と長い場合と同一であるものとする。
【0029】
伝送ライン長がL1(L1<L2)の場合、データ信号がストレージインタフェース13を介してストレージ装置11に転送されて、入力信号230として信号等化器210のFFE211に入力される際の高周波帯域の減衰(より詳細には、振幅の減衰)は小さい。この場合、FFE211により出力されてDFE212に入力される信号231の高周波帯域の減衰も、伝送ライン長がL2の場合と比較して小さい。このため、基準値のタップ0(第1のタップ)のDFEタップ係数C0に対して、タップ1、つまりタップ0の次段のタップ1(第2のタップ)でのずれが小さくなる。よって、曲線31からも明らかなように、タップ1のDFEタップ係数C1はゼロに近くなる。
【0030】
一方、伝送ライン長がL2(L2<L1)の場合、データ信号が入力信号230として信号等化器210のFFE211に入力される際の高周波帯域の減衰は大きい。FFE211により出力されてDFE212に入力される信号231の高周波帯域の減衰も、伝送ライン長がL1の場合と比較して大きい。このため、基準値のタップ0のDFEタップ係数C0に対して、タップ1でのずれが大きくなる。よって、曲線32からも明らかなように、タップ1のDFEタップ係数C1も大きくなる。
【0031】
このことは、入力信号230の高周波帯域の減衰度合いを、タップ1のDFEタップ係数C1から推定可能なことを意味する。また、データ信号の送信側における当該データ信号の振幅及び転送レートが一定であるならば、タップ1のDFEタップ係数C1から伝送ライン長を推定することも可能である。
【0032】
さて、上述の説明から明らかなように、高周波帯域の減衰度合いが大きいほど、タップ1のDFEタップ係数C1が大きくなる。そこで本実施形態において調整器220は、DFE212のDFEタップ係数レジスタ212bに保持されているタップ1のDFEタップ係数C1に基づいて、当該DFEタップ係数C1が小さくなるように、FFE211が入力信号230の高周波帯域を補償するのに用いられる高周波帯域補償レベルを調整する。調整器220は、この高周波帯域補償レベルの調整のために、パラメータレジスタ211aに保持されているFFEパラメータ群のFFEブーストパラメータの値を変更する。なお、本実施形態において調整器220は、調整処理のためのファームウェアを格納したROMのような不揮発性メモリと、このファームウェアを読み込んで実行するMPU(マイクロプロセッサユニット)とから構成されるものとする。しかし、調整器220がハードウェアモジュールで構成されてもよい。
【0033】
以下、調整器220による高周波帯域補償レベルの調整について、図4のフローチャートを参照して説明する。
ストレージインタフェース13がSASインタフェースである本実施形態では、ホスト12とストレージ装置11との間で転送レートがネゴシエートされる。そこで、この転送レートをネゴシエートするためのトレイン(Train)期間(DFEトレイン期間)の間に、調整器220によってFFE211の高周波帯域補償レベル、つまり高周波帯域のブーストレベル(以下、FFEブーストレベルと称する)が調整される。FFE211のFFEブーストレベルは、パラメータレジスタ211aに設定されるFFEパラメータ群のうちのFFEブーストパラメータによって指定される。
【0034】
まず調整器220はブーストレベル変更手段として機能して、FFEブーストレベルを最低レベルに初期設定する(ステップ401)。つまり調整器220は、パラメータレジスタ211aに保持されているFFEパラメータ群のうちのFFEブーストパラメータを、最低のFFEブーストレベルを示す最小値に初期設定する。この状態で、調整器220はDFEトレインを開始する(ステップ402)。
【0035】
まず調整器220はタップ係数読み込み手段として機能して、DFE212のDFEタップ係数レジスタ212bからタップ1のDFEタップ係数C1を読み込む(ステップ403)。次に調整器220は判定手段として機能して、読み込んだDFEタップ係数C1が閾値nを超えているかを判定する(ステップ404)。閾値nは、DFE212の特性に適合する値に予め設定されている。DFE212の特性は、DFE212の設計手法等で決まる。
【0036】
もし、読み込んだDFEタップ係数C1が閾値nを超えているならば(ステップ404のYES)、調整器220は、入力信号230の高周波帯域の減数度合いが大きいと判定(推定)する。この場合、調整器220は、タップ1のDFEタップ係数C1が小さくなるように、FFEブーストレベルを上げる必要があると判断する。
【0037】
そこで調整器220は、FFEブーストレベルを上げる余地があるかを判定するためにステップ405に進む。ステップ405において調整器220は、パラメータレジスタ211aに保持されているFFEブーストパラメータが最高のFFEブーストレベルを示す最大値未満であるかを判定する。
【0038】
もし、FFEブーストパラメータが最大値未満であるならば(ステップ405のYES)、調整器220はFFEブーストレベルを上げる余地があると判定する。そこで調整器220は、パラメータレジスタ211aに保持されているFFEブーストパラメータの値を例えば1インクリメントする(ステップ406)。つまり調整器220はブーストレベル変更手段として機能して、FFEブーストレベルを1レベル上げる。
【0039】
するとFFE211は、前回より1レベル高いFFEブーストレベルで、入力信号230の高周波帯域の振幅をブーストする。この結果、FFE211によって出力されてDFE212に入力される信号231の高周波帯域の減衰量は前回より少なくなる。この場合、DFE212のDFEタップ係数モニタ212aによって再調整(設定)されるタップ1のDFEタップ係数C1の値は、前回よりも小さくなる。
【0040】
さて調整器220は、ステップ406を実行するとステップ403に戻り、FFEブーストレベルが変更された後の、タップ1の新たなDFEタップ係数C1を読み込む。このようにして調整器220は、ステップ404〜406及び403のループを繰り返すことにより、FFEブーストレベルを段階的に上げる。
【0041】
調整器220がFFE211のFFEブーストレベルを段階的に上げた結果、読み込んだDFEタップ係数C1が閾値nを超えなくなったものとする(ステップ404のNO)。この場合、調整器220は、信号231の高周波帯域の減衰が適切に抑えられていると判定する。そこで調整器220は、ブーストレベル変更手段として機能して、FFE211及びDFE212の設定(より詳細には、FFEパラメータ群及びDFEタップ係数C0〜C5)を最新の状態に保持させる(ステップ407)。このFFE211及びDFE212の最新の状態は、DFEタップ係数C1が閾値nを超えなくなった状態である。
【0042】
つまり調整器220は、FFE211のパラメータレジスタ211aに保持されている、FFEブーストパラメータを含むFFEパラメータ群の値を、DFEタップ係数C1が閾値nを超えなくなった状態に保持する。この状態におけるFFEブーストパラメータの値は、現在のストレージインタフェース13の伝送ライン長に最適な値である。つまり、入力信号230の高周波帯域の減衰を補償するためのFFEブーストレベルが、ストレージインタフェース13の伝送ライン長に最適なレベルに調整される。調整器220はまた、DFE212のタップ1のDFEタップ係数C1を含む、タップ0乃至5のDFEタップ係数C0〜C5も、DFEタップ係数C1が閾値nを超えなくなった状態に保持する。
調整器220はステップ407を実行すると、DFEトレインを終了する(ステップ408)。
【0043】
次に、DFEタップ係数C1が依然として閾値nを超えているものの、FFEブーストパラメータが最大値に一致したものとする(ステップ405のNO)。つまり、FFEブーストレベルが最高レベルに達したものとする。この場合、FFEブーストレベルを更に上げる余地はないことから、調整器220はステップ407に進み、FFE211及びDFE212の設定を最新の状態に保持させる。このときのFFE211及びDFE212の最新の状態は、FFEブーストレベルが最高レベルに達している状態である。
【0044】
このように本実施形態によれば、調整器220は、FFE211のFFEブーストレベルを最小レベルから段階的に上げながら、その都度、DFE212において調整されるDFEタップ係数(ここではタップ1のDFEタップ係数C1)を読み込む。DFEタップ係数C1は、FFE211によって出力されてDFE212に入力される信号231の高周波帯域(所定の高周波帯域)の減衰量を表している。このため調整器220は、DFEタップ係数C1を読み込むことで、当該DFEタップ係数C1から信号231の高周波帯域での減衰の度合いを推測(判定)することができる。信号231の高周波帯域での減衰の度合いは、FFEブーストレベルが同一であるならば、入力信号230の高周波帯域での減衰の度合いに対応する。
【0045】
調整器220は、FFEブーストレベルを上げる動作とDFEタップ係数C1を読み込む動作とを、読み込んだDFEタップ係数C1が閾値nを超えなくなるまで繰り返す。このようにして調整器220は、FFEブーストレベル(高周波帯域補償レベル)を、推測された減衰の度合いに適合したレベルに調整し、高周波帯域での減衰を補償することができる。
【0046】
前述したように、高速転送では、ホスト12からストレージ装置11に転送される信号は伝送ライン長の影響を受ける。このため、ホスト12とストレージ装置11(つまりホスト12にストレージインタフェース13を介して接続されたストレージ装置11)とを備えた電子機器毎に、ホスト12からストレージ装置11に転送される信号の特性が異なる可能性がある。また、1つのストレージ装置11がそれぞれ異なるスロットを介してホスト12を含む複数のホストに接続される電子機器では、スロット毎に伝送ライン長が異なる可能性がある。この場合、ストレージ装置11のそれぞれのスロットに入力される信号の高周波帯域での減衰度合いは、スロット毎に異なる。本実施形態のストレージ装置11の信号等化器210は、これらのいずれに対しても、入力信号の高周波帯域での減衰度合いに適合したFFEブーストレベルに調整できる。
【0047】
以下、FFEブーストレベルと周波数帯域補償との関係を、本実施形態のようにFFEブーストレベルの調整を適用する場合と、本実施形態と異なってFFEブーストレベルの調整を適用しない場合とを比較して説明する。
【0048】
まず、FFEブーストレベルの調整を適用しない場合について述べる。
FFE211のFFEブーストレベルが高レベルに設定されている第1の状態でFFE211が使用されるものとする。この第1の状態において、高周波帯域が強調された信号が入力信号230としてFFE211に入力されたものとする。この場合、FFE211は、高周波帯域が強調された信号を高いFFEブーストレベルでブーストする。すると、FFE211からDFE212に、高周波帯域が更に強調された信号が入力されることから、DFE212での補正マージンが少なくなる。
【0049】
次に、FFE211のFFEブーストレベルが低レベルに設定されている第2の状態でFFE211が使用されるものとする。この第2の状態において、高周波帯域が減衰された信号が入力信号230としてFFE211に入力されたものとする。この場合にもDFE212での補正マージンが少なくなる。
このように、FFEブーストレベルの調整を適用しない場合、多種多様な特性の入力信号230を適切に等化することが難しくなる。
【0050】
次に、FFEブーストレベルの調整を適用した場合について述べる。
まず、上記第1の状態において、高周波帯域が強調された信号が入力信号230としてFFE211に入力されたものとする。前述したように調整器220は、FFE211のFFEブーストレベルを最小レベルから段階的に上げながら、その都度、DFE212にて調整されるタップ1のDFEタップ係数C1を読み込む。調整器220は、この動作を、タップ1のDFEタップ係数C1が閾値nを超えなくなるまで繰り返す。この場合、FFEブーストレベルは、高周波帯域が強調された信号に適合する比較的低いレベルに設定される。
【0051】
次に、上述の第2の状態において、高周波帯域が減衰された信号が入力信号230としてFFE211に入力されたものとする。この場合、FFEブーストレベルは、高周波帯域が減衰された信号に適合する比較的高いレベルに設定される。
【0052】
このように本実施形態においては、入力信号の高周波帯域の減衰度合いに応じて、FFE211のFFEブーストレベルが適切に設定される。つまり本実施形態においては、ホスト12から送出されるデータ信号の特性、或いはストレージインタフェース13の伝送ライン長もしくは伝送ラインの特性に応じて、ストレージ装置11の受信側に配置される信号等化器210内のFFE211のFFEパラメータを適切に調整することができる。これにより、FFE211によって出力されてDFE212に入力される信号231の高周波帯域での振幅減衰量のばらつきを抑えることができ、多種多様な特性の入力信号を適切に等化できる。
【0053】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、入力信号の所定の周波数帯域での減衰度合いに適合するように等化器の周波数帯域補償レベルを調整できるストレージ装置、電子機器及び周波数帯域補償レベル調整方法を提供することができる。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
11…ストレージ装置、12…ホスト、13…ストレージインタフェース、111…記憶媒体、112…リード/ライトコントローラ、113…インタフェースコントローラ、210…信号等化器、211…フィードフォワード等化器(FFE、第1の等化器)、211a…パラメータレジスタ、212…判定フィードバック等化器(DFE、第2の等化器)、212a…DFEタップ係数モニタ、212b…DFEタップ係数レジスタ、220…調整器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストによってストレージインタフェースを介して転送された第1の信号の所定の周波数帯域を補償した第2の信号を出力する第1の等化器と、
前記周波数帯域が補償された第2の信号を判定フィードバック補償により等化する第2の等化器と、
前記第2の等化器による判定フィードバック補償の状態に応じて前記第1の等化器の前記周波数帯域補償のレベルを調整する調整手段と
を具備するストレージ装置。
【請求項2】
前記第2の等化器は、複数のタップを備え、前記複数のタップそれぞれのタップ係数を前記判定フィードバック補償により調整する判定フィードバック等化器であり、
前記調整手段は、前記複数のタップのうちの所定のタップの前記調整されたタップ係数を前記判定フィードバック補償の状態として用いる
請求項1記載のストレージ装置。
【請求項3】
前記第1の等化器はフィードフォワード等化器であり、
前記周波数帯域補償のレベルが、前記入力信号の高周波帯域をブーストするレベルを表すブーストレベルである
請求項2記載のストレージ装置。
【請求項4】
前記調整手段は、
前記所定のタップの前記調整されたタップ係数を読み込むタップ係数読み込み手段と、
前記読み込まれたタップ係数に基づいて、前記第2の信号の前記高周波帯域における振幅の減衰度合いを判定する判定手段と、
前記判定された減衰度合いに基づいて前記ブーストレベルを変更するブーストレベル変更手段と
を備えている請求項3記載のストレージ装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記読み込まれたタップ係数が予め定められた閾値を超えている場合、前記減衰度合いが大きいと判定し、
前記ブーストレベル変更手段は、前記減衰度合いが大きいと判定された場合、前記ブーストレベルを上げる
請求項4記載のストレージ装置。
【請求項6】
前記タップ係数読み込み手段は、前記ブーストレベルが上げられる都度、前記判定フィードバック補償により調整された最新のタップ係数を読み込み、
前記判定手段は、前記読み込まれたタップ係数が前記閾値を超えなくなった場合、前記減衰度合いが適切であると判定し、
前記ブーストレベル変更手段は、前記減衰度合いが適切であると判定された場合、前記第1の等化器における少なくとも前記ブーストレベルの設定及び前記第2の等化器における少なくとも前記所定のタップのタップ係数の設定を最新の状態に保持させる
請求項5記載のストレージ装置。
【請求項7】
前記ブーストレベル変更手段は、前記ブーストレベルの調整が開始される際に、前記ブーストレベルを最低レベルに設定する請求項6記載のストレージ装置。
【請求項8】
ストレージ装置と、
前記ストレージ装置とストレージインタフェースを介して接続されるホストとを具備し、
前記ストレージ装置は、
前記ホストによって前記ストレージインタフェースを介して転送された第1の信号の所定の周波数帯域を補償した第2の信号を出力する第1の等化器と、
前記周波数帯域が補償された第2の信号を判定フィードバック補償により等化する第2の等化器と、
前記第2の等化器による判定フィードバック補償の状態に応じて前記第1の等化器の前記周波数帯域補償のレベルを調整する調整手段とを備える
電子機器。
【請求項9】
ホストによってストレージインタフェースを介して転送された第1の信号の所定の周波数帯域を補償した第2の信号を出力する第1の等化器と、前記周波数帯域が補償された第2の信号を判定フィードバック補償により等化する第2の等化器とを備えたストレージ装置における周波数帯域補償レベル調整方法であって、
前記第2の等化器による判定フィードバック補償の状態に応じて前記第1の等化器の前記周波数帯域補償のレベルを調整する周波数帯域補償レベル調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−191509(P2012−191509A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54477(P2011−54477)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】