説明

ストーカ型ごみ焼却炉の燃焼情報監視制御装置

【課題】 ストーカ型ごみ焼却炉において、複数の夫々独立した制御ループを一つの制御システムに組み合せすることにより、より安定したごみ燃焼を高効率で行なえるようにした燃焼情報監視制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】 ストーカ型ごみ焼却炉における複数の異なる制御の中の少なくとも供給ごみ熱量制御と燃焼中心・燃切点制御と二次燃焼空気リアルタイム制御とを一つのシステムとして構築すると共に、ごみ投入ホッパから炉出口にかけて前記各制御における供給ごみ熱量、燃焼中心・燃切点位置、炉出口排ガスのO2 濃度、ごみ表面温度分布及びごみ層厚の各情報を総合的に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はストーカ型ごみ焼却炉の燃焼制御装置に関するものであり、ごみ投入ホッパーから一次燃焼室、二次燃焼室及び排ガス出口にかけてのごみ燃焼に関係する全情報を総合的に表示すると共に、これ等の情報を燃焼状態の判断及び制御に利用できるようにしたストーカ型ごみ焼却炉の燃焼情報監視制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ストーカ型ごみ焼却炉においては、排ガス内のNOx濃度の引下げやダイオキシン類の発生を防いで環境汚損を防止すると共に、熱回収の高効率化および排ガス処理設備の小型化等を可能とした所謂新世代型燃焼方式が多く採用されている。
【0003】
この新世代型燃焼方式においては、特に安定した燃焼制御が要求され、具体的には(1)燃焼熱量の安定化、(2)目標とする空気比での安定燃焼、(3)ダイオキシンやCOの発生抑制及びNOxの変動抑制等が、要求されることになる。
【0004】
一方、上記(1)〜(3)の事項を実現させるため、これ迄に(a)ごみ供給熱量制御、(b)燃焼中心・燃切点の検出制御及び(c)二次燃焼空気リアルタイム制御等の技術が開発され、実用に供されて来た。
【0005】
図4及び図5は、先に開発をされた前記新世代型燃焼技術を採用したストーカ型ごみ焼却炉の一例を示すものである。図4のストーカ型ごみ焼却炉においては、赤外線カメラ16からの炉内燃焼情報と、酸素濃度センサ20からの排ガス酸素濃度信号と、ごみ層レベルセンサ15からの乾燥ストーカのごみ層レベル等を燃焼コントローラ21へ入力し、当該燃焼コントローラ21に於いて(イ)赤外線カメラ16からの炉内燃焼情報を用いた炉内温度分布の測定、燃焼中心I及び燃切点Eの判定、(ロ)酸素濃度信号に基づいて酸素濃度が設定範囲内となる総燃焼空気供給量の算定、(ハ)前記測定した炉内温度分布に基づく総燃焼空気供給量の乾燥、燃焼、後燃焼ゾーンへの割り振り等を行って炉内温度分布を予め設定した温度分布に調整すると共に、(ニ)ごみ層レベルセンサ15からの信号に基づいて、乾燥ストーカのごみ層レベルおよび燃焼中心Iが設定範囲内となるように、ごみ搬送速度及び炉内へのごみ供給量を制御することにより、ごみの安定燃焼を達成するようにしている。
【0006】
尚、図4において、1は炉本体、2はごみ供給口、3は灰排出口、4はストーカ、5はストーカ駆動装置、5aはストーカ駆動装置の制御部、6はプッシャ、6aはプッシャ制御部、7は風箱、8は空気供給装置、9はホッパ、10は空気流量調整装置、18は廃熱回収装置、19は排ガス処理装置、22は画像処理部、23は帯域・温度分布判定部、24は総空気量演算部、25は総空気供給制御部、26は分配空気演算部、27は空気調整装置制御部、28は燃焼中心制御部、29はごみ搬送制御部、30はごみ供給制御部である。
【0007】
また、図5のストーカ型ごみ焼却炉においては、炉本体1の後燃焼部上方空間12の燃焼ガスG′を引き抜いて二次燃焼室13の上流側へ還流させ、所謂還元性ゾーン14を形成すると共に、燃焼用空気を一次及び二次燃焼空気に分けて供給し、更に、ホッパー9のごみレベルセンサ31a及び供給ごみ量検出装置31により検出した供給ごみ量信号と、排ガス内酸素濃度信号と、赤外線カメラ16及び燃焼中心・燃切点位置検出装置17により検出した燃切点位置及び燃焼中心位置の信号を燃焼制御装置21へ入力し、燃焼中心位置及び燃切点位置に基づいて一次燃焼空気供給量やストーカ作動速度を調整すると共に、排ガス内O2 濃度等に基づいて二次燃焼空気供給量を制御することを基本にして、ごみの完全燃焼を達成するようにしている。
【0008】
尚、図5に於いて、32は二次燃焼空気供給ファン、33は二次燃焼空気制御装置、34は一次燃焼空気供給ファン、35は一次燃焼空気制御装置、36は還流ガスファン、37は還流ガス制御装置である。
【0009】
また、図4及び図5では示されていないが、炉内のごみ燃焼制御においては、ストーカ上のごみ表面温度、炉内のガス流速、排ガス内のダイオキシン前駆体類濃度、供給ごみのごみ質、ごみの保有発熱量、廃熱ボイラの蒸気発生量及び蒸気温度(圧力)、還流ガスG′内のCO濃度及びO2 濃度等が制御要素として燃焼コントローラ(又は燃焼制御装置)21へ入力され、前記基本の燃焼制御に適宜に組み合わせ使用されている。
【0010】
而して、前記図4や図5に示したような新世代型ストーカ炉の定常状態における燃焼制御は、一般に次の(a)、(b)及び(c)の単ループ制御を組み合せることにより行われている。(a)供給ごみ熱量・・供給ごみ熱量制御−(燃焼中心位置・燃切点制御による補正)−(空気比制御による補正)−ごみ供給プッシャ・ストーカ速度の調整、(b)ボイラ蒸発量・・燃焼熱量制御−(燃切点位置制御・未燃物制御による補正)−一次燃焼空気−(乾燥空気量・燃焼空気量・後燃焼空気量)の調整−(空燃比制御による補正)−ごみ供給プッシャ・ストーカ速度制御及び(c)O2 濃度計測・・二次燃焼空気供給量リアルタイム制御−(CO濃度制御等による補正)−二次燃焼空気量の調整。
【0011】
しかし、上記(a)、(b)及び(c)等の各制御系は、夫々の単ループ内でその制御が相互に独立して実施されており、ごみ焼却炉内で計測されている制御対象も、夫々の単ループ毎に独立して計測されている。そのため、制御度合によっては各単ループにおける制御が相互に干渉し合うと云う事態を招くことになり、より安定した燃焼の実現が困難になると云う状態にある。
【0012】
例えば、ボイラ蒸発量を基準とする前記(b)の制御にあっては、ボイラ蒸発量が不足してくると燃焼熱量を増加するために一次燃焼空気量を増し、空燃比制御を介して給じん速度及びストーカ速度を増加させる。
これに対して、排ガス内のO2 濃度を基準とする前記(c)の制御は、O2 濃度が上昇すると二次燃焼空気量リアルタイム制御を介して二次燃焼空気量を減少させ、また、逆にO2 濃度が低下すると、二次燃焼空気量を増加させる。
そのため、前記(b)の制御ループの要求する一次燃焼空気量の増加と、前記(c)の制御ループの要求する二次燃焼空気量の減少とが対応していれば総空気比に問題はないが、仮に(b)の制御ループが一次燃焼空気の増加を、また(c)の制御ループが二次燃焼空気の増加を夫々要求するような場合には、総空気比を設定値に保持した状態でO2 濃度を設定値に保った安定燃焼の達成が困難になる。
【0013】
【特許文献1】特開2003−106509
【特許文献2】特開2003−254524
【特許文献3】特開2003−302027
【特許文献4】特開2003−329229
【特許文献5】特開2003−322321
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、従前のアドバンスト型ストーカ式ごみ焼却炉の燃焼制御における上述の如き問題、即ち供給ごみ熱量、燃焼中心・燃切点検出、ごみ表面温度分布、炉出口排ガスのO2 濃度及びごみ層厚さ等のごみ燃焼炉内で計測されている制御対象は、夫々の単ループ内で独立して各制御対象を設定値に保持するように制御されているため、制御度合によっては各単ループにおける制御が相互に干渉し合い、安定した燃焼の実現が困難な状態になると云う問題を解決せんとするものであり、供給ごみ熱量・燃焼中心・燃切点検出・炉出口O2 濃度・ごみ層厚演算等のごみ焼却炉内で計測されている制御対象の全てを一つのシステムとして構築し、ごみ投入ホッパから排ガス出口にかけての各情報を総合的に表示すると共に、この情報を総合的に利用して燃焼状態の判断並びに制御を行い、更に、計算機等で前記表示情報を用いて判断した燃焼状態と理想の燃焼状態のシミュレーションとの比較を実施して、制御対象の操作端をどのように制御すれば各制御対象を最適に近づけるかを推論し、この推論した結果にもとづいて各操作端を制御することにより、より安定した燃焼状態を実現することを可能にしたストーカ型ごみ焼却炉の燃焼情報監視制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の発明はストーカ型ごみ焼却炉における複数の異なる制御の中の少なくとも供給ごみ熱量制御と燃焼中心・燃切点制御と二次燃焼空気リアルタイム制御とを一つのシステムとして構築すると共に、ごみ投入ホッパから炉出口にかけて前記各制御における供給ごみ熱量、燃焼中心・燃切点位置、炉出口排ガスのO2 濃度、ごみ表面温度分布及びごみ層厚の各情報を総合的に表示する構成としたことを発明の基本構成とするものである。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、表示された情報からごみ焼却炉内の燃焼状態を総合的に判断し、各制御対象の操作端への入力を制御することにより安定した燃焼を実現する構成としたものである。
【0017】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、表示された各情報と、予め求めたごみ層厚、炉内温度分布、ごみ表面温度分布、O2 分布、CO分布、NOx分布、ガス流れ方向、ガス流速、ごみ質、ごみの乾燥及び燃焼状態の最適シミュレーション情報の中の前記表示された各情報に対応する情報とを比較し、前記表示情報を最適シミュレーション情報に近づけるための各制御対象の操作端への入力を推論すると共に、当該推論した入力に基いて前記各操作端を制御するようにしたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明においては、ごみ焼却炉における複数の異なる制御の中の主要なもの、即ち供給ごみ熱量制御、燃焼中心・燃切点制御、炉出口排ガスのO2 濃度に基づく二次燃焼空気リアルタイム制御、ごみ層厚制御等にを一つのシステムとして構築すると共に、ごみ投入ホッパから炉出口にかけての前記各制御における制御内容の全情報を総合的に表示し、また、この情報を総合的に利用して燃焼状態を判断し、これ等の結果に基づいて各制御対象の操作端の制御を行うようにしている。
これにより、従前のごみ燃焼制御の場合に比較して、より安定したストーカ型ごみ焼却炉におけるごみの完全燃焼を実現することが可能となる。
【0019】
更に、本発明においては、前記炉内の各制御対象の情報と、予め求めた最適シミュレーションにおける各制御対象のシミュレーション情報とを対比し、前者を最適シミュレーション情報に近づけるのに必要な各制御対象の操作端の制御量を推論し、この推論に基づいて各制御端を制御する構成としている。その結果、炉内の各制御対象を全体として迅速且つ確実に最適値に近づけることができ、より安定したストーカ型ごみ焼却炉におけるごみの完全燃焼が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の燃焼情報監視制御装置を適用したストーカ型ごみ焼却炉の一例を示すものである。
図1において、41は炉本体、42はストーカ、43はストーカ駆動装置、44はプッシャ、45はプッシャ駆動装置、46はごみ供給ホッパ、47は一次燃焼空気供給ファン、48ファン駆動装置、49は二次燃焼空気供給ファン、50はファン駆動装置、51は二次燃焼空気調整ダンパ、52はダンパ駆動装置、53a〜53gは一次燃焼空気調整ダンパ、54はダンパ駆動装置、55は還流ガスファン、56はファン駆動装置、57はNOx濃度計、58はO2 濃度計、59はダイオキシン前駆物質濃度計(CO濃度計)、60はごみ投入重量検出計、61はレーザ距離計(ごみ検出計)、62はガス流速検出計、63は走査型赤外線放射温度計、64は蒸気圧力・温度検出計、65は蒸気流量計、66はごみ層レベルセンサ、67は廃熱回収ボイラ、68は排ガス処理装置、69は燃焼情報監視制御装置である。
【0021】
尚、本実施形態では、ストーカ型ごみ焼却炉として、所謂炉内の後燃焼部上方空間の燃焼ガスG′を還流させて二次燃焼室の上流部に還元ゾーンを形成する型式の炉を使用しているが、炉の型式としては燃焼排ガスを再循環させる型式の炉やその他の型式の炉であってもよいことは勿論である。
【0022】
前記、燃焼情報監視装置69へは、ストーカ炉の燃焼制御に関係する各制御対象に関する情報が全て入力されている。即ち、図1の実施形態では、NOx濃度計57、O2 濃度計58、CO濃度計59、ごみ投入重量検出計60、レーザー距離計61、ガス流速計62、赤外線放射温度計63、蒸気圧力・温度検出計64、蒸気流量計65等からの各検出信号(検出情報)が夫々入力されており、且つ各入力情報が目視可能に表示(図示省略)されている。
【0023】
また、燃焼情報監視制御装置69からは、ストーカ駆動装置43、プッシャ駆動装置45、一次燃焼空気供給ファン駆動装置48、二次燃焼空気供給ファン駆動装置50、二次燃焼空気ダンパ駆動装置52、一次燃焼空気ダンパ駆動装置54、還流ガスファン駆動装置56等へ夫々制御信号(制御情報)が出力されている。
【0024】
即ち、燃焼情報監視制御装置69には入力情報表示部72が設けられており、CRT画面上に、供給ごみ熱量、燃焼中心・燃切点位置、炉出口排ガスO2 濃度、ごみ表面温度分布、ごみ層厚およびごみ分布等の各情報が総合的に表示される。そのため、外部から一目瞭然に、ごみ焼却炉内の状態を把握することができ、例えば燃焼が不安定になった場合に手動介入をする際でも、不安定になった原因がどこなのかを入力情報表示部72の画面を見れば簡単に突き止めることができる。その結果、どこを調整するのが一番よいのか確認・理解しながら対応ができることになり、安定した燃焼への復帰が比較的容易に行えるようになる。
【0025】
また、燃焼情報監視制御装置69には、後述するように最適燃焼状態シミュレーション演算部70、基本制御要素演算部73及びトータル制御システム部74等の各種の機構が設けられており、供給ごみ熱量、燃焼中心・燃切点位置、炉出口排ガスO2 濃度、ごみ表面温度分布、ごみ層厚およびごみ分布等の各情報を総合的に集約することによって、例えば燃焼状態や燃焼空気比状態が以下のような複数の段階に評価・分類される。
[ごみ燃焼状態]・・安定燃焼中・ごみ枯れ傾向・ごみ枯れ傾向から復旧中・ごみ過剰傾向・ごみ過剰傾向から復旧中・未燃箇所発生。
[燃焼空気比状態]・・安定燃焼中・不完全燃焼発生中・空気過剰中。
そして、前記各分類ごとで、それぞれ安定燃焼中になるように、ごみ供給プッシャ・ストーカの速度や、一次燃焼空気量や空気分配、二次燃焼空気量や空気分配を自動的に燃焼制御装置で操作する。これにより、単ループ制御の際には、制御の度合いによってお互いの制御が干渉することになることが解消されることとなる。
【0026】
更に、燃焼情報監視制御装置69には、後述するように入力情報・シミュレーション情報の対比・表示部75、制御情報推論部76及び各操作端への出力部77等が設けられており、ごみ焼却炉内で計測されている内容や各制御ループの制御内容に関する各情報が一つに集約されることによって、計算機による物理モデル法を用いた炉内シミュレーションを行った結果との相違が一目瞭然でわかる。その結果、燃焼状態の良否を正確且つ迅速に判断することができる。
【0027】
また、計算機による物理モデル法を用いた炉内シミュレーションから現状の燃焼状態を理想の安定燃焼状態にする為に最適な各制御値はいくらなのかを算出することができ、その制御量を自動燃焼制御装置の制御量としてフィードバックすることで安定燃焼を図ることが可能となる。
【0028】
更に、現状の燃焼状況のデータから10〜30分程度後の燃焼状態をシミュレーションして、そのシミュレーション内容が安定燃焼から崩れてごみ枯れ傾向にあると判断すれば、事前にストーカ速度や一次空気分配比の自動燃焼制御装置の制御量をフィードフォワード制御的に変更することで、将来の燃焼崩れを未然に防止することができる。
【0029】
図2は、前記燃焼情報監視制御装置69を形成する各演算制御部を示すブロック図である。
図2において、70は最適燃焼状態シミュレーション演算部、71は最適シミュレーション情報表示部、72は入力情報表示部、73は基本制御要素演算部、73aは供給ごみ熱量演算部、73bは燃焼中心・燃切点位置の検出(演算)部、73cは二次空気量リアルタイム演算部、73dは蒸気発生量演算部、73eは炉内温度分布演算部、75は入力情報・シミュレーション情報対比部、74はトータル制御システム部、75は入力情報・シミュレーション情報の対比・表示部、76は制御情報推論部、77は各操作端(各駆動制御装置)への出力部である。
【0030】
前記最適燃焼状態シミュレーション演算部70では、稼動中のストーカ炉のその時のごみ燃焼条件下での最適燃焼状態における各制御対象の最適値がコンピュータにより演算され、これが最適シミュレーション情報表示部71に表示される。
【0031】
また、炉内の各検出装置等からの入力情報は、入力情報表示部72において目視可能な型で表示されると共に、当該入力情報と前記最適シミュレーション情報との対比が、対比部75で行われる。
更に、当該対比・表示部75で得た各制御対象の演算値を用いて、制御情報推論部76において、入力情報を最適シミュレーション情報に近づけるのに必要な制御情報を演算、推論し、その推論した制御情報をトータル制御システム部74へ入力する。
【0032】
当該トータル制御システム部74は、後述するように複数の所謂単ループ制御の制御対象を一つのシステムに集合構築したものであり、組み合わせる制御対象の数に応じて、複数のトータル制御システム部74が予め準備されている。
【0033】
前記基本制御要素演算部73からの各演算情報と制御情報推論部76からの制御情報とが前記トータル制御システム部74へ入力され、ここからトータル制御システム部74を構成する各制御対象の駆動部(操作端)へ、所定の操作信号(制御信号)が発信される。
【実施例】
【0034】
図2に示した燃焼情報監視制御装置の実施形態において、前記供給ごみ熱量演算部73aは、ごみ投入重量検出計60と走査型レーザ距離計61からの入力情報により、ごみ比重とごみの発熱量を推定すると共に、ごみ供給ホッパ46内のごみ容積の単位時間当りの変化量から炉本体41内へ供給されるごみの熱量を演算する。
そして、炉本体41内へのごみの供給熱量が定量化するように、トータル制御システム部74において、プッシャ44及びストーカ42が前記演算された供給ごみ熱量に基づいて制御される。
【0035】
また、前記燃焼中心・燃切点検出部73bは、走査型赤外線放射温度計63を中心にして構成されており、ストーカ上のごみ表面温度の分布をごみの流れ方向に連続的に検出することにより、燃焼中心位置と燃切点を演算検出すると共に、炉内温度を計測する。これ等二つの検出値(制御要素)は、トータル制御システム部74において燃焼ストーカ速度やプッシャの作動速度、一次燃焼空気量の分配制御等に用いられ、最適な燃焼温度とガス流れ状態の確保等を通して、低NOx及び低ダイオキシンの維持が図られる。
【0036】
更に、前記二次燃焼空気リアルタイム演算部73cは、レーザ式分析計より成る排ガス出口のO2 濃度を時間遅れなしで計測し、O2 濃度が設定範囲を外れた場合には、トータル制御システム部74からの制御信号により二次燃焼空気量を調整制御する。
【0037】
同様に、蒸気発生量制御部73dは、蒸気圧・温度検出計64と蒸気流量計65の両信号から蒸気発生量を演算し、蒸気発生量が設定範囲を外れた場合には、トータル制御システム部74からの制御信号により、一次燃焼空気量及びプッシャ44の作動速度並びにストーカ42の作動速度を調整する所謂燃焼熱量制御が行われる。
【0038】
前記炉内温度分布演算部73eは、走査型赤外線温度計63の検出情報から炉内のごみ表面温度の分布や炉内温度分布を演算すると共に、ごみ層レベルセンサ66の信号を用いてその変動をチェックする。
また、ごみ表面温度及びごみ層厚が設定範囲より外れると、トータル制御システム74に於いて、一次燃焼空気量及び用プッシャー44並びにストーカ42の作動速度を調整する。
【0039】
図3は、図2の実施例におけるストーカ炉の定常運転状態下のトータル制御システム部74の基本ブロック構成図を示すものである。当該トータル制御システム部74は、供給ごみ熱量演算部73aと、燃焼中心・燃切点検出演算部73bと、二次空気リアルタイム演算部73dと炉内温度分布演算部73eの各演算値が入力される一つの制御システムとして構成されている。
【0040】
即ち、当該トータル制御システム部74では、プッシャ及びストーカの速度と一次燃焼空気と二次燃焼空気とが、供給ごみ熱量(供給ごみ熱量制御)とボイラ蒸発量(燃焼熱量制御)とO2 濃度(二次空気リアルタイム制御)と燃焼中心・燃切り点位置とごみ表面温度・ごみ層厚とによって相関的に調整若しくは補正され、各制御対象の操作端(駆動装置)へ適宜の制御信号が出力される構成となっている。
【0041】
尚、図3の供給ごみ熱量制御B1 は、炉本体内へ投入されるごみ量(ごみ熱量)を設定値に保持するようにプッシャ44やストーカ42の速度を調整する制御であり、また、空燃比制御B2 は一次・二次燃焼空気量とごみ量とのバランスのずれをストーカの速度調整により補正する制御である。更に、燃焼熱量制御B3 は、ボイラ蒸発量を設定値に保持するように一次燃焼空気量とプッシャ44等の作動速度を調整する制御であり、燃焼中心位置・燃切点制御73bは燃焼中心・燃切点のずれを一次燃焼空気量の調整又はこれとストーカ速度調整との併合により補正するものである。
尚、上記各制御は、何れも所謂偏差の大きさによりPIDの比例ゲインを自動変更する公知の可変ゲインPIDが採用されている。
【0042】
また、本実施例では、トータル制御システム部74を、供給ごみ熱量、ボイラ蒸発量、二次空気リアルタイム制御、燃焼中心・燃切点位置制御等の各制御要素を一つに構築することにより形成しているが、前記以外の他の制御要素(例えばCO濃度やNOx濃度等)を組み入れたトータル制御システム部としてもよいことは勿論である。
【0043】
更に、本実施形態に於いては、トータル制御システム部74を安定燃焼状態をベースにしたものとして構成しているが、所謂ごみ枯れ等の非定常状態に対する対応を組み入れしたトータル制御システム部とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、主として都市ごみや産業廃棄物等の燃焼処理に用いるストーカ式焼却炉に利用されるものであり、バガスや汚泥等の焼却処理にも適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明を適用したストーカ型ごみ焼却炉の一例を示す全体系統図である。
【図2】本発明に係る燃焼情報監視制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係るトータル制御システム部の一例を示すブロック構成図である。
【図4】従前のストーカ型ごみ焼却炉の燃焼制御方法の一例を示す説明図である。
【図5】従前のストーカ型ごみ焼却炉の燃焼制御方法の他の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0046】
41は炉本体、42はストーカ、43はストーカ駆動装置、44はプッシャ、45はプッシャ駆動装置、46はごみ供給ホッパ、47は一次燃焼空気供給ファン、48はファン駆動装置、49は二次燃焼空気供給ファン、50はファン駆動装置、51は二次燃焼空気調整ダンパ、52はダンパ駆動装置、53は一次燃焼空気調整ダンパ、54はダンパ駆動装置、55は還流ガスファン、56はファン駆動装置、57はNOx濃度計、58はO2 濃度計、59はCO濃度計、60はごみ投入重量検出計、61はレーザ距離計(ごみ検出計)、62はガス流速検出計、63は走査型赤外線放射温度計、64は蒸気圧力・温度検出計、65は蒸気流量計、66はごみ層レベルセンサ、67は廃熱回収ボイラ、68は排ガス処理装置、69は燃焼情報監視制御装置、70は最適燃焼状態シミュレーション演算部、71は最適シミュレーション情報表示部、72は入力情報表示部、73は基本制御要素演算部、73aは供給ごみ熱量演算部、73bは燃焼中心・燃切点位置検出(演算)部、73cは二次空気量リアルタイム演算部、73dは蒸気発生量演算部、73eは炉内温度分布演算部、74はトータル制御システム部、75は入力情報・最適シミュレーション情報の対比・表示部、76は制御情報推論部、77は各操作端(駆動装置)への出力部である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストーカ型ごみ焼却炉における複数の異なる制御の中の少なくとも供給ごみ熱量制御と燃焼中心・燃切点制御と二次燃焼空気リアルタイム制御とを一つのシステムとして構築すると共に、ごみ投入ホッパから炉出口にかけて前記各制御における供給ごみ熱量、燃焼中心・燃切点位置、炉出口排ガスのO2 濃度、ごみ表面温度分布及びごみ層厚の各情報を総合的に表示する構成としたことを特徴とするストーカ型ごみ焼却炉の燃焼情報監視制御装置。
【請求項2】
表示された情報からごみ焼却炉内の燃焼状態を総合的に判断し、各制御対象の操作端への入力を制御することにより安定した燃焼を実現する構成としたことを特徴とする請求項1に記載のストーカ型ごみ焼却炉の燃焼情報制御装置。
【請求項3】
表示された各情報と、予め求めたごみ層厚、炉内温度分布、ごみ表面温度分布、O2 分布、CO分布、NOx分布、ガス流れ方向、ガス流速、ごみ質、ごみの乾燥及び燃焼状態の最適シミュレーション情報の中の前記表示された各情報に対応する情報とを比較し、前記表示された各情報を最適シミュレーション情報に近づけるための各制御対象の操作端への入力を推論すると共に、当該推論した入力に基いて前記各操作端を制御するようにした請求項1に記載のストーカ型ごみ焼却炉の燃焼情報監視制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−64300(P2006−64300A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247976(P2004−247976)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】