説明

ストーカ式焼却炉及びその燃焼制御方法

【課題】 焼却炉内の燃焼状態が急激に変化した場合であっても、燃焼排ガスの性状の変化を抑制することができる、応答性の高いストーカ式焼却炉及びその燃焼制御方法を提供する。
【解決手段】 ホッパ1から被燃焼物をストーカ炉2内に投入し、ストーカの下方より一次空気を導入して、一次燃焼室3で一次空気により一次燃焼を行うとともに、その上方の二次燃焼室4で二次空気により二次燃焼を行う際に、酸素/一酸化炭素濃度測定器35で測定した排ガス中の酸素濃度が下限閾値未満になった場合に、または一酸化炭素濃度が上限閾値を超えた場合に、または排ガス温度計33で測定した温度が上限閾値を超えた場合に、二次空気の流量を増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ごみや産業廃棄物などの被燃焼物を焼却するためのストーカ式焼却炉及びその燃焼制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ストーカ式焼却炉は、固定段と可動段の火格子を交互に配置してなるストーカを備え、油圧装置により可動段を往復移動させることにより、ホッパより投入されたごみ(被燃焼物)の攪拌と前進を行いながら、ストーカの上流側に配置された乾燥帯でごみの乾燥を行い、次の主燃焼帯で一次空気を投入しながら主燃焼を行い、最下流側のおき燃焼帯で燃え残り分のおき燃焼を行うように構成された焼却炉である。ストーカ式焼却炉では、通常、二次燃焼室からの排ガスをボイラに導き、このボイラにおいて排ガス熱により蒸気を発生させて、排ガス熱を回収している。
【0003】
ストーカ式焼却炉における低空気比での燃焼は、燃焼排ガスの性状の安定化およびボイラの蒸気流量の安定化に寄与する。低空気比での燃焼を実現させるために、特許文献1には、高温ガスや循環ガスを使用して燃焼空気比を1.3〜1.5とし、燃焼排ガス中のCO、NOx等の有害ガスの発生量を抑制する方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、この方法では、高温ガスを導入するために高温空気製造装置および/あるいは返送排ガスのための流路の敷設が必要となり、建設コストの増大を引き起こす。また、おき燃焼帯に供給する循環排ガスを操作する制御方法のため、焼却炉稼動中に被燃焼物の物性状が大きく変化し、被燃焼物の発熱量が低下した場合や、ストーカ上の被燃焼物層が崩落して急激に燃焼反応が進行してしまった場合には、応答性が悪く、燃焼排ガスの性状が大きく変化し、ボイラ蒸気流量の急激な上昇を引き起こし、電力供給が不安定になる。
【特許文献1】特開2004−239509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上記の事情に鑑み、焼却炉内の燃焼状態が急激に変化した場合であっても、燃焼排ガスの性状の変化を抑制することができる、応答性の高いストーカ式焼却炉及びその燃焼制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係るストーカ式焼却炉の燃焼制御方法は、ホッパから被燃焼物をストーカ上に投入し、このストーカの下方より一次空気を導入して、このストーカ上方の一次燃焼室で前記一次空気により一次燃焼を行うとともに、この一次燃焼室上方の二次燃焼室で二次空気により二次燃焼を行い、この二次燃焼室を経た排ガス熱をボイラにより回収するストーカ式焼却炉の燃焼制御方法において、前記二次燃焼室から排出された排ガス中の酸素濃度が下限閾値未満になった場合に、または排ガス中の一酸化炭素濃度もしくは温度が上限閾値を超えた場合に、前記二次空気の流量を増加させることを特徴とする。
【0007】
このように、被燃焼物の発熱量が増加して着火性が向上した場合や、ストーカ上の被燃焼物層が崩落して急激に燃焼反応が進行した場合などは、酸素が不足し、不完全燃焼により、一酸化炭素が増加し、燃焼温度が上昇する可能性があることから、二次燃焼室からの排ガスの酸素濃度が下限閾値未満になった場合に、または一酸化炭素濃度もしくは温度が上限閾値を超えた場合に、二次空気の流量を増加させることで、二次燃焼室4での酸素不足が解消され、不完全燃焼を防ぐことができる。これにより、燃焼排ガスの性状の変化を抑制することができる。
【0008】
前記二次空気の流量を増加させる際に、前記一次空気の流量を減少させることが好ましい。この一次空気の流量減少を行うために、前記ストーカの下方に設置したダンパから一次空気を放出することが好ましい。また、前記二次空気の流量増加を行うために、前記ダンパから放出した一次空気を前記二次燃焼室に前記二次空気として導入することが好ましい。
【0009】
また、前記二次燃焼室に導入する二次空気として、前記一次燃焼室内から抜き出した燃焼ガスを再循環して使用するとともに、前記二次空気の流量増加を行う場合には、この燃焼ガスを抜き出して再循環する量を増加させることが好ましい。前記二次空気の流量増加を行う際に、前記一次空気の流量を減少させるとともに、前記二次空気の流量増加を行うために、前記流量減少により生じた余分の一次空気を、前記抜き出した燃焼ガスと混合して、前記二次燃焼室に前記二次空気として導入することが好ましい。
【0010】
本発明は、別の側面として、ストーカ式焼却炉であって、被燃焼物を投入するためのホッパと、このホッパから前記被燃焼物が供給されるストーカと、このストーカの下方より一次空気を導入して、このストーカ上方で前記一次空気により一次燃焼を行う一次燃焼室と、この一次燃焼室上方で二次空気により二次燃焼を行う二次燃焼室と、前記ストーカおよびそこにおける火炎からの放射に対して遮断された箇所の前記排ガスの温度または酸素濃度、一酸化炭素濃度を測定するための測定器と、この測定器で測定された酸素濃度、一酸化炭素濃度または温度に基づいて、前記二次燃焼を制御する燃焼制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0011】
このように、二次燃焼室から排出される排ガスの温度を、ストーカおよびそこにおける火炎からの放射に対して遮断された箇所で測定すること、または二次燃焼室から排出される排ガスの酸素濃度、一酸化炭素濃度を測定することで、ストーカや火炎からの放射の影響を受けることなく、二次燃焼室から排出される排ガスの温度を正確かつ迅速に測定することができる。または排ガスの酸素濃度あるいは一酸化炭素濃度から燃焼状態を正確かつ迅速に判断することができる。したがって、この測定結果を用いて二次燃焼を制御することで、燃焼状態が早期に改善され、応答性高く、燃焼排ガスの性状の変化を抑制することができる。温度の測定箇所としては、二次燃焼室からボイラまでの煙道内が好ましく、濃度の測定箇所としては、ボイラ出口から極力二次燃焼室に近い位置が好ましい。
【0012】
前記ストーカの下方に設置され、前記一次空気を放出するダンパをさらに備えることが好ましい。また、前記ダンパと前記二次燃焼室との間に敷設され、前記ダンパから放出した一次空気を前記二次燃焼室に導入するための配管をさら備えることが好ましい。
【0013】
前記一次燃焼室に設置され、前記一次燃焼室内の燃焼ガスを抜き出すための抜出し口と、この抜出し口と前記二次燃焼室との間に敷設され、前記抜出し口から抜き出した燃焼ガスを前記二次空気として前記二次燃焼室に再循環して導入するための再循環通路とをさら備えることが好ましい。また、前記一次空気を導入するための一次空気管と前記再循環通路との間に敷設され、前記一次空気を前記再循環通路に導入するバイパス管をさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明によれば、焼却炉内の燃焼状態が急激に変化した場合であっても、燃焼排ガスの性状の変化を抑制することができる、応答性の高いストーカ式焼却炉及びその燃焼制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るストーカ式焼却炉及びその運転方法の一実施の形態について説明する。図1は、本発明に係るストーカ式焼却炉の一実施形態を示す模式図である。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態のストーカ式焼却炉は、ごみや産業廃棄物等の被燃焼物が投入されるごみホッパ1と、このホッパから供給されたごみを攪拌、前進させながら乾燥、燃焼するストーカ炉2と、このストーカ炉からの排ガスで蒸気を発生せしめるボイラ10と、このボイラでの蒸気流量を安定して発生させるためにストーカ炉で燃焼を制御する燃焼制御装置30とから主に構成されている。
【0017】
ストーカ炉2には、その炉内底部に、主として乾燥帯を構成する乾燥帯ストーカ21と、主として燃焼帯を構成する主燃焼帯ストーカ22と、主としておき燃焼帯を構成するおき燃焼帯ストーカ23とが敷設されている。乾燥帯ストーカ21は、ごみホッパ1からの投入口に対して最上流側に位置し、主燃焼帯ストーカ22は乾燥帯ストーカ21の下流側に位置し、おき燃焼帯ストーカ23は主燃焼帯ストーカ22の下流で最下流側に位置している。ここで、主燃焼帯とは、ごみ層上で火炎を上げて燃えている領域を指している。
【0018】
前記各ストーカ21、22、23は、固定火格子の間に配設した移動火格子を備え、移動火格子の往復運動によりごみ(被燃焼物)を投入した後、ごみをストーカ21で乾燥し、ストーカ22で主燃焼を行い、最後にストーカ23でおき燃焼を行うものである。なお、本実施形態では燃焼帯ストーカ22は3個であるが、1個でも複数個でもよい。おき燃焼帯ストーカ23の下流側には灰ホッパシュート8が敷設されている。また、ストーカ21、22、23の上方には一次燃焼室3が設けられ、更にその上方には二次燃焼室4が設けられている。
【0019】
乾燥帯ストーカ21、主燃焼帯ストーカ22、おき燃焼帯ストーカ23には、それらの下部の風箱に開口する一次空気管25がそれぞれ配設されている。これら一次空気管25は、一次空気主管5から分配されており、この一次空気主管5には一次空気供給用の押込送風機(ファン)6と蒸気式空気予熱器(SAH)が設置されている。すなわち、ファン6から圧送された一次空気は、一次空気主管5を通って予熱された後、一次空気管25から各ストーカ21、22、23に供給されるように構成されている。また、一次空気管25内には、これらを開閉する開閉弁またはオリフィス26がそれぞれ設けられ、一次空気主管5内には、これを開閉する開閉弁7が設けられている。
【0020】
二次燃焼室4の排ガス出口とボイラ10の排ガス入口とは、煙道9を介して接続されている。この煙道9は、煙道9内をストーカ21、22、23およびストーカ炉2の火炎の放射から遮断するために、U字型の形状の通路となっている。この煙道9内には、二次燃焼室4からの排ガスの温度を測定するための排ガス温度計33(例えば、赤外線高温計)が設置されている。このように、火炎の放射から遮断された箇所に排ガス温度計33を設けることで、排ガスの温度を早期かつ正確に測定することができる。
【0021】
ボイラ10の排ガス出口には、煙道11が設けられており、この煙道11の出口には、排ガス中の酸素濃度または一酸化炭素濃度を測定するための酸素/一酸化炭素濃度測定器35が設置されている。このように本実施の形態では酸素/一酸化炭素濃度測定器35を煙道11の出口に設置することで、排ガス温度が200〜300℃と低下していることから、酸素濃度または一酸化炭素濃度を長期にわたり正確に測定することができる。しかし、高温、高ばいじん雰囲気で酸素/一酸化炭素濃度を測定可能な計測器を用いることが可能な場合は、ストーカ炉2の出口により近い位置に計測器を設置することができるため、より短い時間遅れにて燃焼状態の変化を把握することができ、より高応答の燃焼制御を提供することが可能となる。
【0022】
さらに煙道11の排ガス下流側には、排ガスを降温するための減温塔(図示省略)と、排ガス中から飛灰等を取り除くためのバグフィルタ(図示省略)と、排ガスを外気へと排出するための煙突(図示省略)とが順次敷設されている。
【0023】
吹出しノズル19は、二次燃焼室4の乾燥帯側とおき燃焼帯側にそれぞれ設けられている。二次空気供給用の押込送風機(ファン)20に設けられた二次空気管27は、下流側で2本に分岐しており、1本の二次空気管27aは乾燥側の吹出しノズル19aに接続され、1本の二次空気管27bはおき燃焼帯側の吹出しノズル19bに接続されている。分岐した二次空気管27a、27bには、それぞれ開閉弁24a、24bが設けられており、乾燥帯側とおき燃焼帯側の吹出しノズル19a、19bで、二次空気の供給量を変えることができる。なお、乾燥帯側とおき燃焼帯側の吹出しノズル19a、19bは、それぞれガス流に沿って二次燃焼室4に複数段設けてもよく、その場合、その数に合わせて二次空気管27を分岐する。
【0024】
ストーカの下には、燃焼帯の一次空気をストーカ炉2内から抜き出すための空気放出ダンパ45が設置されている。空気放出ダンパ45から抜き出した空気は、灰ホッパシュート8を介してストーカ式焼却炉の二次燃焼室側や炉外に放出するように構成されている。
【0025】
排ガス温度計33と酸素濃度測定器35は、それぞれ測定した値を燃焼制御装置30へと信号として送信できるように、燃焼制御装置30と電気的に接続されている。また、燃焼制御装置30は、一次空気管25や二次空気管27等の各開閉弁24、26の開度や空気放出ダンパ45の開閉を個別に調整する制御ができるように、各開閉弁24、26や空気放出ダンパ45とそれぞれ電気的に接続されている。
【0026】
以上の構成によれば、先ず、ごみホッパ1に被燃焼物としてごみが投入されると、ごみは間欠的に往復運動する給塵装置29によりストーカ炉2内へと供給される。また、ストーカ炉2内の乾燥帯ストーカ21、主燃焼帯ストーカ22、おき燃焼帯ストーカ23には、一次空気管25を介してそれぞれ一次空気が供給され、これにより一次燃焼室3でごみが高温燃焼される。
【0027】
この燃焼ガスは、吹出しノズル19から供給される二次空気によって、更なる高温燃焼がなされて完全燃焼される。二次燃焼室4にて燃焼後の排ガスは、煙道9を介してボイラ10に供給され、蒸気を発生させることによって熱回収をした後、煙道11を通って大気中に排出される。また、おき燃焼帯ストーカ23での燃焼後の灰は、灰ホッパシュート8で捕集されて排出される。
【0028】
ここで、被燃焼物の発熱量が増加して着火性が向上した場合や、ストーカ上の被燃焼物層が崩落して急激に燃焼反応が進行した場合、ストーカ炉2内の酸素が不足し、未燃成分などが多く発生する可能性がある。そこで、燃焼制御装置30では、酸素/一酸化炭素濃度測定器35で測定した酸素濃度が下限閾値(例えば3〜7%)未満になった場合、二次空気管27の開閉弁24に、弁をより大きく開いて吹出しノズル19からの二次空気量を増加させるように信号を送る。
【0029】
図2は、酸素濃度の増減に対して二次空気量を変化させるタイミングを示すチャートである。図2に示すように、二次空気量を増加させることで、二次燃焼室4での酸素不足が解消され、未燃成分の発生を抑制することができる。これにより、排ガス中の酸素濃度は増加することから、酸素/一酸化炭素濃度測定器35で測定した酸素濃度が下限閾値を超えた場合、上記の開閉弁24に、弁の開度を絞って二次空気量を元に戻すように信号を送る。このようにして、燃焼排ガスの性状の変化を防ぐことができ、ダイオキシン類や一酸化炭素などの有害物質の排出を抑制できる。また、ボイラ10の蒸気流量の変動も抑制することができる。
【0030】
上記のようにストーカ炉2内の酸素が不足し、未燃成分が多量に発生した場合、酸素濃度が低下する一方、一酸化炭素濃度は増加する。そこで、上記の酸素濃度による制御に替えて又は併用して、燃焼制御装置30では、酸素/一酸化炭素濃度測定器35で測定した一酸化炭素濃度が上限閾値(例えば50〜1000ppm)を超えた場合、二次空気管27の開閉弁24に、弁をより大きく開いて二次空気量を増加させるように信号を送る。
【0031】
図3は、一酸化炭素濃度の増減に対して二次空気量を変化させるタイミングを示すチャートである。図3に示すように、二次空気量を増加させることで、二次燃焼室4での酸素不足が解消され、未燃成分の発生を抑制することができる。これにより、排ガス中の一酸化炭素濃度は減少することから、酸素/一酸化炭素濃度測定器35で測定した一酸化炭素濃度が上限閾値未満になった場合、上記の開閉弁24に、弁の開度を絞って二次空気量を元に戻すように信号を送る。このように、一酸化炭素濃度に基づいて制御することでも、燃焼排ガスの性状の変化を防ぐことができる。
【0032】
上記の酸素濃度又は一酸化炭素濃度による制御に替えて又は併用して、排ガス温度による制御を行うことができる。すなわち、排ガス温度計33で測定するストーカ炉2の火炎の放射から遮断された煙道9内の排ガス温度の値が、上限閾値(例えば650〜800℃)を超えた場合に、二次空気管27の開閉弁24に、弁をより大きく開いて二次空気量を増加させるように信号を送る(図3)。
【0033】
被燃焼物の発熱量が増加して着火性が向上した場合や、ストーカ上の被燃焼物層が崩落して急激に燃焼反応が進行した場合、ストーカ炉2内の燃焼温度が急激に上昇するとともに、酸素が不足し、未燃成分が多量に発生する可能性がある。よって、二次空気量を増加させることで、酸素不足を解消し、未燃成分の発生を抑制することができる。排ガス温度が上限閾値未満に回復した場合は、開閉弁24に一次空気量を元に戻すように信号を送る。このように、排ガス温度に基づいて制御することでも、燃焼排ガスの性状の変化を防ぐことができる。
【0034】
なお、酸素濃度、一酸化炭素濃度、排ガス温度は、測定した瞬間の値に基づいて制御する他に、一定時間にわたって測定した平均値(移動平均)や、その平均値との偏差、または変化の勾配を算出して、これらの下限閾値または上限閾値を設定して制御することもできる。このように平均値、偏差、変化の勾配を用いることで、酸素濃度、一酸化炭素濃度、排ガス温度の急激な変化に対して過剰に応答することを防ぎ、燃焼排ガスの性状の更なる安定化を図ることができる。
【0035】
なお、上記の説明では、酸素濃度、一酸化炭素濃度、排ガス温度のいずれか1つを用いるように説明したが、その中の2つ又は3つ全てを用いて制御を行うこともできる。例えば、その中の2つ又は3つ全てが閾値を超える場合に二次空気量を増加する制御を行うようにすることで、急激な変化に過剰に応答することを防ぎ、燃焼排ガスの性状の更なる安定化を図ることができる。
【0036】
なお、二次空気量を増加させる場合、同時に、一次空気量を減少させるように制御することが好ましい。例えば、燃焼制御装置30から一次空気管25の開閉弁26に弁を狭めるように信号を送る。これにより、急激に燃焼反応が進行した一次燃焼室3での燃焼反応を抑制することができ、燃焼排ガスの性状の更なる安定化を図ることができる。
【0037】
また、一次空気量を減少させる場合、ストーカの下に設置した空気放出ダンパ45に、ダンパを開放するように信号を送ることもできる。これにより、一次燃焼室3内の一次空気の量を瞬時に減少させることができるので、急激に燃焼反応が進行した一次燃焼室3での燃焼反応を迅速に抑制することができる。空気放出ダンパ45から抜き出したガスは、灰ホッパシュートを介して放出する。
【0038】
図4は、本発明に係るストーカ式焼却炉の他の実施形態を示す模式図である。なお、図1と同じ構成については同じ符号を付してある。図4に示すように、本実施形態では、一次燃焼室3のおき燃焼帯には、一次燃焼室3内の燃焼排ガスの一部を再循環ガスとして抜き出すための再循環ガス抜出し口28が設けられている。この再循環ガス抜出し口28は、再循環通路16を介してサイクロン12の入口14に接続されている。
【0039】
サイクロン12の出口には再循環通路15が設けられており、この再循環通路15は、二次燃焼室4の上流部位で二次燃焼室4内に二次空気を供給するための吹出しノズル19に接続している。再循環通路15には再循環ファン13が設けられており、この再循環ファン13の手前に設けられた開閉弁18により、一次燃焼室3内から燃焼排ガスを再循環ガスとして抜き出す量を調整することができる。
【0040】
再循環通路15は、再循環ファン13の下流側で2本に分岐しており、1本の再循環通路15aは乾燥側の吹出しノズル19aに接続され、1本の再循環通路15bはおき燃焼帯側の吹出しノズル19bに接続されている。分岐した再循環通路15a、15bには、それぞれ開閉弁17a、17bが設けられており、乾燥帯側とおき燃焼帯側の吹出しノズル19a、19bで、再循環ガス(二次空気)の供給量を変えることができる。
【0041】
一次空気主管5と再循環通路15とは、バイパス管40により接続されている。また、このバイパス管40には、これを開閉する開閉弁41が設けられている。また、ストーカの下に設置された空気放出ダンパ45は、本実施形態では、抜き出した排ガスを二次空気として使用するために、再循環通路16に接続されている。
【0042】
以上の構成によれば、被燃焼物がごみホッパ1を介してストーカ炉2内に供給され、一次空気管25からの一次空気により、一次燃焼室3でごみが高温燃焼される。この燃焼ガスは、二次燃焼室4において吹出しノズル19、20から供給される再循環ガス(二次空気)によって、更なる高温燃焼がなされて完全燃焼される。二次燃焼室4にて燃焼後の排ガスは、ボイラ10に供給されて熱回収をした後、煙道11を通って大気中に排出される。
【0043】
そして、酸素/一酸化炭素濃度測定器35で測定した酸素濃度が下限閾値未満になった場合、一酸化炭素濃度が上限閾値を超えた場合、または排ガス温度計33で測定した排ガス温度が上限閾値を超えた場合、燃焼制御装置30は、再循環通路15の開閉弁17に、弁をより大きく開いて再循環ガス量(すなわち、二次空気量)を増加させるように信号を送る(図2、図3)。
【0044】
これにより、図1の実施形態と同様に、二次燃焼室4での酸素不足が解消され、未燃成分の発生を抑制することができる。また、再循環ガス抜出し口28から抜き出すガスの量も増加するので、すなわち、一次燃焼室3の一次空気量が減少するので、急激に燃焼反応が進行した一次燃焼室3での燃焼反応を抑制することができる。
【0045】
これによって排ガス中の酸素濃度、一酸化炭素濃度、排ガス温度が回復することから、酸素濃度が下限閾値を超えた場合、一酸化炭素濃度が上限閾値未満になった場合、または排ガス温度が上限閾値未満になった場合、上記の開閉弁17に、弁の開度を絞って二次空気量を元に戻すように信号を送る。このようにして、本実施形態においても、燃焼排ガスの性状の変化を防ぐことができ、ダイオキシン類や一酸化炭素などの有害物質の排出を抑制できる。また、ボイラ10の蒸気流量の変動も抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態でも、二次空気量を増加させると同時に一次空気量を減少させる場合、空気放出ダンパ45にダンパを開放するように信号を送ることができる。これにより、一次燃焼室3内の一次空気の量を瞬時に減少させて、一次燃焼室3での燃焼反応を迅速に抑制することができる。また、空気放出ダンパ45から抜き出したガスは、再循環通路16、15を通って再循環ガスとともに吹出しノズル19から二次空気として供給できるので、二次空気量を迅速に増加することができる。したがって、より応答性の高い制御を行うことができる。
【0047】
さらに、二次空気量を増加させると同時に一次空気量を減少させる場合、バイパス管40の開閉弁41に弁を開くように信号を送ることもできる。これにより、減少させる分の一次空気の量を、バイパス管40および再循環通路15を通って再循環ガスとともに吹出しノズル19から二次空気として供給することができる。したがって、この方法によっても、より応答性の高い制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係るストーカ式焼却炉の一実施形態を示す模式図である。
【図2】酸素濃度の増減に対して二次空気量を変化させるタイミングを示すチャートである。
【図3】一酸化炭素濃度又は排ガス温度の増減に対して二次空気量を変化させるタイミングを示すチャートである。
【図4】本発明に係るストーカ式焼却炉の他の実施形態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0049】
1 ごみホッパ
2 ストーカ炉
3 一次燃焼室
4 二次燃焼室
5 一次空気主管
6 押込送風機
7、17、18、26、41 開閉弁
8 灰ホッパシュート
9、11 煙道
10 ボイラ
12 サイクロン
13 循環ファン
15、16 再循環通路
19 吹出しノズル
20 押込送風機
21 乾燥帯ストーカ
22 主燃焼帯ストーカ
23 おき燃焼帯ストーカ
24 開閉弁
25 一次空気管
27 二次空気管
28 再循環ガス抜出し口
29 給塵装置
30 燃焼制御装置
33 排ガス温度計
35 酸素/一酸化炭素濃度測定器
40 バイパス管
45 空気放出ダンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホッパから被燃焼物をストーカ上に投入し、このストーカの下方より一次空気を導入して、このストーカ上方の一次燃焼室で前記一次空気により一次燃焼を行うとともに、この一次燃焼室上方の二次燃焼室で二次空気により二次燃焼を行うストーカ式焼却炉の燃焼制御方法において、
前記二次燃焼室から排出された排ガス中の酸素濃度が下限閾値未満になった場合に、または排ガス中の一酸化炭素濃度もしくは温度が上限閾値を超えた場合に、前記二次空気の流量を増加させることを特徴とするストーカ式焼却炉の燃焼制御方法。
【請求項2】
前記二次空気の流量を増加させる際に、前記一次空気の流量を減少させることを特徴とする請求項1に記載のストーカ式焼却炉の燃焼制御方法。
【請求項3】
前記一次空気の流量減少を行うために、前記ストーカの下方に設置したダンパから一次空気を放出することを特徴とする請求項2に記載のストーカ式焼却炉の燃焼制御方法。
【請求項4】
前記二次空気の流量増加を行うために、前記ダンパから放出した一次空気を前記二次燃焼室に前記二次空気として導入することを特徴とする請求項3に記載のストーカ式焼却炉の燃焼制御方法。
【請求項5】
前記二次燃焼室に導入する二次空気として、前記一次燃焼室内から抜き出した燃焼ガスを再循環して使用し、前記二次空気の流量増加を行う場合には、この燃焼ガスを抜き出して再循環する量を増加させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項にストーカ式焼却炉の燃焼制御方法。
【請求項6】
前記二次空気の流量増加を行う際に、前記一次空気の流量を減少させるとともに、前記二次空気の流量増加を行うために、前記流量減少により生じた余分の一次空気を、前記抜き出した燃焼ガスと混合して、前記二次燃焼室に前記二次空気として導入することを特徴とする請求項5にストーカ式焼却炉の燃焼制御方法。
【請求項7】
被燃焼物を投入するためのホッパと、
このホッパから前記被燃焼物が供給されるストーカと、
このストーカの下方より一次空気を導入して、このストーカ上方で前記一次空気により一次燃焼を行う一次燃焼室と、
この一次燃焼室上方で二次空気により二次燃焼を行う二次燃焼室と、
前記ストーカおよびそこにおける火炎からの放射に対して遮断された箇所の前記排ガスの酸素濃度、一酸化炭素濃度または温度を測定するための測定器と、
この測定器で測定された酸素濃度、一酸化炭素濃度または温度に基づいて、前記二次燃焼を制御する燃焼制御装置と
を備えたことを特徴とするストーカ式焼却炉。
【請求項8】
前記ストーカの下方に設置され、前記一次空気を放出するダンパをさらに備えたことを特徴とする請求項7に記載のストーカ式焼却炉。
【請求項9】
前記ダンパと前記二次燃焼室との間に敷設され、前記ダンパから放出した一次空気を前記二次燃焼室に導入するための配管をさら備えたことを特徴とする請求項8に記載のストーカ式焼却炉。
【請求項10】
前記一次燃焼室に設置され、前記一次燃焼室内の燃焼ガスを抜き出すための抜出し口と、この抜出し口と前記二次燃焼室との間に敷設され、前記抜出し口から抜き出した燃焼ガスを前記二次空気として前記二次燃焼室に再循環して導入するための再循環通路とをさら備えたことを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に該当するストーカ式焼却炉。
【請求項11】
前記一次空気を導入するための一次空気管と前記再循環通路との間に敷設され、前記一次空気を前記再循環通路に導入するバイパス管をさらに備えたことを特徴とする請求項10に記載のストーカ式焼却炉。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−57935(P2008−57935A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238692(P2006−238692)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】