説明

スネークインサートアンカーボルト

【課題】鉄筋を埋設したコンクリート構造物の取付け箇所に存在する鉄筋と接触しないように取付け可能なスネークインサートアンカーボルトを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のスネークインサートアンカーボルト10は、鉄筋32を埋設したコンクリート構造物30のコンクリート打設前の型枠36に設けた取付け孔38にアンカー本体12を挿入可能なスネークインサートアンカーボルト10であって、前記アンカー本体12は、前記コンクリート構造物30の取付面と同一平面上に取り付け可能な雌ねじ部20と、前記雌ねじ部20の端部を折り曲げた第1屈曲部22と、前記第1屈曲部22から延びる第1シャフト24と、前記第1シャフト24の端部を折り曲げた第2屈曲部26と、前記第2屈曲部26から延びる第2シャフト28と、からなり、前記雌ねじ部20は軸芯を直線状に形成し、前記アンカー本体12を前記取付け孔38の外側から前記鉄筋32側へ向けて回転させながら挿入可能としたこと特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋を埋設したコンクリート構造物のコンクリート打設前の鉄筋の間に取付け可能なスネークインサートアンカーボルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋を埋設したコンクリート構造物にアンカーボルトを取り付けるアンカー定着工法として、先付け工法と後付け工法が知られている。
先付け工法は、コンクリート構造物を構成する鉄筋を組み立てた後、又は鉄筋の周辺に型枠を組み立てた後、コンクリートを型枠に流し込む前にアンカーボルトを鉄筋の間に取り付けて、コンクリート打設と同時に定着させる工法である。
【0003】
一方、後付け工法は、前述の型枠にコンクリートを流し込み、養生期間を経て所定の強度以上になったコンクリート構造物が形成された後、あとからコンクリートの表面に穴を開けて、この穴にアンカーボルトを定着させる工法である。
【0004】
特許文献1に開示のアンカーボルトは、先付け工法に用いるアンカーボルトであって、杆体の上端部に形成したナット螺合用の螺糸と、杆体の下端部に所定長さに亘って、杆体の軸に沿って波状に屈曲した波状屈曲部とを備えている。このような構成のアンカーボルトによれば、埋設するアンカーボルトの軸に沿った位置にコンクリート構造体の横方向の鉄筋が既に配筋されている場合でも、アンカーボルトの軸中心に適宜回動して、波状屈曲部の凹部を鉄筋に合わせることにより、鉄筋の位置をずらすことなくアンカーボルトを設置することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−54803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5は従来のインサートアンカーボルトの説明図である。図示のように従来のインサートアンカーボルト1は軸芯が直線状に形成されている。このようなインサートアンカーボルト1を、鉄筋2と型枠3を組み合わせた施工箇所に施工する場合、A点のような、取付け孔4aから挿入して鉄筋2と接触しない箇所であれば、取り付けることができる。しかしB点のように、取付け孔4bを通り、取付け面と直交する直線上に鉄筋2が存在する場合には、インサートアンカーボルト1と鉄筋2が接触してしまい途中までしか挿入することができず、取り付けることができない。この場合、インサートアンカーボルト1の施工箇所を鉄筋2と遭遇しない箇所まで移動させることになり、設計変更を余儀なくされていた。
【0007】
コンクリート構造物の一例として病院がある。病院では種々の測定機械、器具、薬品棚がある。地震等により転倒防止対策のために、測定機械、器具、薬品棚を天井、壁、床などのコンクリート構造物に固定することがある。固定対象物が重量物の場合には、強固に固定する必要がある。取付け孔を通り、取付け面と直交する直線上に鉄筋が存在する場合であっても固定することができるアンカーボルトが望まれている。
【0008】
また、アンカーボルトは、図5に示すように型枠3で鉄筋2を囲った後の方が位置決めがし易い。この場合、型枠3に囲まれた空間は外から見ることができず、取付け孔の軸線上に鉄筋2が存在するか否かが判断できない。そのため、取付け孔の軸線上に鉄筋が存在する場合には、再度位置をずらして取付け孔を形成していた。特許文献1に開示のアンカーボルトは、杆体が長尺であり、波状屈曲部の形状であるため、形態上型枠の取付け孔から挿入することができない。また波状屈曲部の凹部が複数形成されているため、回動する際に鉄筋と接触する可能性が高くなる。
【0009】
そこで本発明は、鉄筋を埋設したコンクリート構造物の取付け箇所に存在する鉄筋と接触しないように取付け可能なスネークインサートアンカーボルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のスネークインサートアンカーボルトは、鉄筋を埋設したコンクリート構造物のコンクリート打設前の型枠に設けた取付け孔にアンカー本体を挿入可能なスネークインサートアンカーボルトであって、前記アンカー本体は、前記コンクリート構造物の取付け面と同一平面上に取り付け可能な雌ねじ部と、前記雌ねじ部の端部を折り曲げた第1屈曲部と、前記第1屈曲部から延びる第1シャフトと、前記第1シャフトの端部を折り曲げた第2屈曲部と、前記第2屈曲部から延びる第2シャフトと、からなり、前記雌ねじ部は軸芯を直線状に形成し、前記アンカー本体を前記取付け孔の外側から前記鉄筋側へ向けて回転させながら挿入可能としたこと特徴としている。
【0011】
この場合において、前記アンカー本体は、前記第1屈曲部の中心を互いに直交するX軸のZ軸上に配置したときに、X平面に対してX軸方向からY軸方向へθ1°、前記X平面に対して−Z軸方向へθ2°折り曲げて、前記第1シャフトを形成し、前記第2屈曲部の中心を互いに直交するX軸のZ軸上に配置したときに、X平面に対して前記θ1と同一方向となるX軸方向からY軸方向へθ3°、前記X平面に対して−Z軸方向へθ4°折り曲げて、前記第2シャフトを形成し、前記θ1〜θ4は、0°<|θ1、θ2、θ3、θ4|<90°の範囲に設定したことを特徴としている。
【0012】
前記アンカー本体は、前記第1屈曲部の軸芯を互いに直交するX軸のZ軸上に配置してX平面で平面視したときに、前記雌ねじ部を中心としてZ軸回りに回転して前記第2シャフトの先端までが1/4回転以内に設定したことを特徴としている。
前記第1シャフト又は第2シャフトは、軸芯を直線状又は曲線状に形成していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明のスネークインサートアンカーボルトによれば、取付け孔を通り、取付け面と直交する線上に鉄筋が存在しても、容易に取り付けることができる。また取付け孔から鉄筋を巻き込むように側面視で略S字状に形成しているので、コンクリートとの接触面積が増えるとともに、引っ張り強度を高めることができる。
【0014】
よって病院などのコンクリート構造物で、取付け孔を通り、取付け面と直交する直線上に鉄筋が存在する場合であっても、種々の測定機械、器具、薬品棚等を容易かつ所定の強度を備えながら固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係るスネークインサートアンカーボルトの施工断面図である。
【図2】本実施形態に係るスネークインサートアンカーボルトの斜視図である。
【図3】本実施形態に係るスネークインサートアンカーボルトの平面図である。
【図4】本実施形態に係るスネークインサートアンカーボルトの側面図である。
【図5】従来のインサートアンカーボルトの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のスネークインサートアンカーボルトについて添付の図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
本実施形態のスネークインサートアンカーボルト10は、特にコンクリート構造物30の施工時にコンクリート34を打設する前の鉄筋32の間に取り付ける先付け工法に適用可能なボルトである。コンクリート構造物30は、複数の鉄筋32をコンクリート34中に埋設した構造物である。
【0017】
図1は本実施形態に係るスネークインサートアンカーボルトの施工断面図である。図示のようにスネークインサートアンカーボルト10は、側面視で略S字状に折り曲げたアンカー本体12から構成されている。
【0018】
アンカー本体12は、コンクリート構造物30の取付け面と同一平面上に取り付け可能な雌ねじ部20と、雌ねじ部20の雌ねじが形成されていない側の端部を折り曲げた第1屈曲部22と、第1屈曲部22から雌ねじ部20と反対方向へ延びる第1シャフト24と、第1シャフト24の端部を折り曲げた第2屈曲部26と、第2屈曲部26から第1シャフト24と反対方向へ延びる第2シャフト28と、から構成されている。アンカー本体12のシャフト径は、型枠36の取付け孔38の孔径よりも小さくして、挿入可能な構成としている。
【0019】
アンカー本体12の取付け側の端部には、雌ねじ部20が形成されている。雌ねじ部20は、留め治具40と螺合可能な凹部に雌ねじが形成されている。雌ねじ部20は軸芯を直線状に形成している。雌ねじ部20の凹部端面は、コンクリート構造物30の取付け面と同一平面上に取り付けることができる。アンカー本体12は、コンクリート構造物30の鉄筋32と遭遇したときに回避できるように、かつ型枠36の取付け孔38から挿入できるように側面視で略S字状に折り曲げている。
【0020】
図2は本実施形態に係るスネークインサートアンカーボルトの斜視図である。図3は本実施形態に係るスネークインサートアンカーボルトの平面図である。図4は本実施形態に係るスネークインサートアンカーボルトの側面図である。
【0021】
図示のように、アンカー本体12の第1屈曲部22は、当該第1屈曲部22の中心を互いに直交するX軸のZ軸上に配置したときに、X平面に対してX軸方向からY軸方向へθ1°、X平面に対して−Z軸方向へθ2°折り曲げている。これにより、第1シャフト24は、雌ねじ部20の端部から、θ1+θ2のベクトル成分の和の方向へ延出している。
【0022】
前記第2屈曲部26は、当該第2屈曲部26の中心を互いに直交するX軸のZ軸上に配置したときに、X平面に対して前記θ1と同一方向となるX軸方向からY軸方向へθ3°、前記X平面に対して−Z軸方向へθ4°折り曲げている。これにより、第2シャフト28は、第1シャフト24の端部から、θ3+θ4のベクトル成分の和の方向へ延出している。
このとき、θ1〜θ4は、それぞれ0°<|θ1、θ2、θ3、θ4|<90°の範囲となるように設定している。
【0023】
またアンカー本体12は、第1屈曲部22の軸芯を互いに直交するX軸のZ軸上に配置してX平面で平面視したときに、雌ねじ部20を中心としてZ軸回りに回転して第2シャフト28の先端までが1/4回転以内に収まるように設定している。ここで、図3に示す実線のアンカー本体12は、雌ねじ部20から第2シャフト28の先端を、X平面に対して時計回りに形成した場合を示している。また図3に示す点線のアンカー本体12は、雌ねじ部20から第2シャフト28の先端を、X平面に対して反時計回りに形成した場合を示している。このように本実施形態のスネークインサートアンカーボルト10は、雌ねじ部20をX軸のZ軸上に配置したときに、時計回り、反時計回りのいずれの回転方向であってもよい。また図4に示すように、第1シャフト24は、側面視でX平面よりも下側(−Z軸側)へ延出し、第2シャフト28は、側面視でX平面よりも下側(−Z軸側)へ延出している。
また第1シャフト24又は第2シャフト28は、軸芯を直線状又は曲線状に形成している。
【0024】
本実施形態のアンカー本体12は、一例として金属材料を用いて形成されている。アンカー本体12の材質はこれに限らず、所定の剛性を備えていれば、他の材料を適用することもできる。
【0025】
図1に示すスネークインサートアンカーボルト10の断面形状は円形で説明している。しかしスネークインサートアンカーボルト10の断面形状はこれに限らず、楕円、多角形など取付け孔から挿入可能な断面形状であれば適用することができる。
【0026】
また図1に示すスネークインサートアンカーボルト10の表面は鉄筋形状で説明している。しかしスネークインサートアンカーボルト10の表面はこれに限らず、平滑、凹凸、外ねじなども適用することができる。
【0027】
留め治具40は、アンカー本体12の取付け側の端面に形成された雌ねじ部20と螺合する治具である。留め治具40は、治具本体42に雌ねじ部20と螺合する雄ねじ44とツバ部46を備えている。治具本体42は、型枠36の取付け孔38に挿入可能となるように形成している。ツバ部46は、型枠36の取付け面と同一平面上に沿うように形成されている。
【0028】
次に上記構成による本発明のスネークインサートアンカーボルトの取付けについて以下説明する。スネークインサートアンカーボルト10の取付け方法は、まず、雌ねじ部20に留め治具40を取り付ける。本実施形態では、留め治具40の雄ねじ44を雌ねじ部20の雌ねじに螺合させることにより取り付けることができる。なお、スネークインサートアンカーボルト10と留め治具40は着脱可能に形成されている。そして、アンカー本体12の先端、すなわち第2シャフト28の先端を型枠36の取付け孔38に挿入する。第2シャフト28の軸芯は取付け孔38に挿入可能なように直線状又は曲線状に形成されている。そして第2屈曲部26で回転させながら、第1シャフト24を挿入する。さらに第1屈曲部22を回転させながら挿入すると、取付け孔38を通り、取付け面と直交する線上に存在する鉄筋32との干渉を避けながら、この鉄筋32よりも深く(取付け孔38から鉄筋32までの距離よりも長く)鉄筋32を回り込むように挿入することができる。
【0029】
このような本発明のスネークインサートアンカーボルト及びその施工方法によれば、特にコンクリート構造物の施工時にコンクリートを打設する前の鉄筋の間に取り付ける先付け工法において、取付け孔を通り、取付け面と直交する線上に鉄筋が存在しても、容易に取り付けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のスネークインサートアンカーボルトは、鉄筋を埋設したコンクリート構造物の施工時にコンクリートを打設する前の鉄筋間に取り付ける先付け工法の技術分野において特に有用である。
【符号の説明】
【0031】
1………インサートアンカーボルト、2………鉄筋、3………型枠、4,4a,4b………取付け孔、10………スネークインサートアンカーボルト、12………アンカー本体、20………雌ねじ部、22………第1屈曲部、24………第1シャフト、26………第2屈曲部、28………第2シャフト、30………コンクリート構造物、32………鉄筋、34………コンクリート、36………型枠、38………取付け孔、40………留め治具、42………治具本体、44………雄ねじ、46………ツバ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋を埋設したコンクリート構造物のコンクリート打設前の型枠に設けた取付け孔にアンカー本体を挿入可能なスネークインサートアンカーボルトであって、
前記アンカー本体は、
前記コンクリート構造物の取付け面と同一平面上に取り付け可能な雌ねじ部と、
前記雌ねじ部の端部を折り曲げた第1屈曲部と、
前記第1屈曲部から延びる第1シャフトと、
前記第1シャフトの端部を折り曲げた第2屈曲部と、
前記第2屈曲部から延びる第2シャフトと、
からなり、
前記雌ねじ部は軸芯を直線状に形成し、
前記アンカー本体を前記取付け孔の外側から前記鉄筋側へ向けて回転させながら挿入可能としたこと特徴とするスネークインサートアンカーボルト。
【請求項2】
前記アンカー本体は、
前記第1屈曲部の中心を互いに直交するX軸のZ軸上に配置したときに、X平面に対してX軸方向からY軸方向へθ1°、前記X平面に対して−Z軸方向へθ2°折り曲げて、前記第1シャフトを形成し、
前記第2屈曲部の中心を互いに直交するX軸のZ軸上に配置したときに、X平面に対して前記θ1と同一方向となるX軸方向からY軸方向へθ3°、前記X平面に対して−Z軸方向へθ4°折り曲げて、前記第2シャフトを形成し、
前記θ1〜θ4は、
0°<|θ1、θ2、θ3、θ4|<90°
の範囲に設定したことを特徴とする請求項1に記載のスネークインサートアンカーボルト。
【請求項3】
前記アンカー本体は、前記第1屈曲部の軸芯を互いに直交するX軸のZ軸上に配置してX平面で平面視したときに、前記雌ねじ部を中心としてZ軸回りに回転して前記第2シャフトの先端までが1/4回転以内に設定したことを特徴とする請求項1又は2に記載のスネークインサートアンカーボルト。
【請求項4】
前記第1シャフト又は第2シャフトは、軸芯を直線状又は曲線状に形成していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のスネークインサートアンカーボルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−87452(P2013−87452A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227131(P2011−227131)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(598118400)スエヒロシステム株式会社 (2)
【Fターム(参考)】