説明

スパイクソーティング装置、スパイクソーティング方法、スパイクソーティングプログラムおよび記録媒体

【課題】 複数の生波形から単一ニューロン活動波形をリアルタイムで分離する。
【解決手段】 分離行列算出部10は、複数の生波形から、独立成分分析法にしたがい、単一ニューロン活動波形の分離に必要な分離行列を算出する。独立成分波形抽出部12は、分離行列Wを使用することによって、複数の生波形から独立成分波形を単一ニューロン活動波形として抽出する。ここで、分離行列算出部10は、予め定められた単位時間が経過するたびに、複数の生波形よりも後に測定される他の複数の生波形から、新たな分離行列を算出する。また、分離行列算出部10が新たな分離行列を算出したとき、独立成分波形抽出部12は、当該新たな分離行列を使用することによって、他の複数の生波形から新たな独立成分波形を新たな単一ニューロン活動波形として抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経細胞から測定される生体電気信号を処理するスパイクソーティング装置、スパイクソーティング方法、スパイクソーティングプログラム、および記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
神経科学分野における強力な計測法として、マルチニューロン活動記録法が幅広く使用されている。この方法では、近接する多数の神経細胞(ニューロン)から、スパイク波形を同時記録する。具体的には、多数の記録電極から構成される1本の多点電極を用意し、この多点電極を用いて、狭い範囲に存在するほぼ全ての単一ニューロン活動波形を同時に検出する。
【0003】
現在、自作可能で最も広く活用されている多点電極に、4本の記録電極を束ねたテトロード(tetrode)がある。テトロードなどの多点電極を用いてスパイク波形を記録する場合、スパイク波形を表すスパイク波形データを処理することによって、スパイク波形から単一ニューロン活動波形を分離し、抽出することが求められる。これを一般に、スパイクソーティングと呼ぶ。スパイクソーティングの段階において、スパイク波形データの取り扱いを誤ると、スパイク波形データに秘められている機能的情報を的確に読み取ることができない。そればかりか、事実とは異なる誤った結論に到達する可能性もある。
【0004】
近接する複数の神経細胞は、時に、同時に発火する。これにより、発生したスパイク波形にオーバーラップが生じる。オーバーラップが生じると、単一ニューロン活動波形を正確に記録できない。しかし、既存のスパイクソーティング方法は、このようなスパイク波形のオーバーラップに対処できない。さらには、スパイク波形の変動などの問題にも対処できない。したがって、近接した神経細胞間の詳細な相互作用、すなわち、数ミリ秒の時間内に神経細胞間に作用している関係性を検出できない。
【0005】
このような問題に対処するため、特許文献1には、マルチニューロン活動波形を適当な数のクラスタに分割する手法であるk−meansクラスタリングと、観測された信号から原波形を抽出する独立成分分析法とを組み合わせたスパイクソーティング方法が開示されている。
【0006】
非特許文献1によれば、生波形の記録に用いる記録電極の本数よりも多い数の単一ニューロン活動波形を分離できる。したがって、スパイク波形のオーバーラップや変動などの、既存のスパイクソーティングでは対処できない問題に対処できる。なお、この方法は、非特許文献2〜4にも開示されている。
【非特許文献1】独立成分分析を応用したマルチニューロン活動の解析、脳の科学、25巻、53〜60頁、2003年
【非特許文献2】Classification of neuronal activities from tetrode recordings using independent component analysis、49巻、289〜298頁、2002年
【非特許文献3】A new approach to spike sorting for multi−neuronal activities recorded with a tetrod − how ICA can be practical、Neuroscience Research、46巻、265〜272頁、2003年
【非特許文献4】Automatic Sorting for Multi−Neuronal Activity Recorded With Tetrodes in the Presense of Overlapping Spikes、J Neurophysiol、89巻、p2245〜2258頁、2003年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した従来技術には、単一ニューロン活動波形をリアルタイムで分離できないという問題がある。
【0008】
一般に、単一ニューロン活動波形の形状は、時間とともに変化する可能性がある。これは、生波形の測定中に多点電極がドリフトしたり、多点電極を挿入した脳などの生体組織が移動したりすることを主要因とする。このような変化は、場合によっては、数秒単位で生ずることもある。しかし、特許文献1に記載のスパイクソーティングに基づいて単一ニューロン活動波形を分離する場合、たとえば1時間に渡って測定した生波形データを、後に数十時間かけて一括して処理する。そのため、数秒単位で単一ニューロン活動波形が変化したとしても、単一ニューロン活動波形の分離結果に現れてこない。したがって、ユーザは、単一ニューロン活動波形の短時間での変化に気づくことができない。
【0009】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、単一ニューロン活動波形をリアルタイムで分離するスパイクソーティング装置、スパイクソーティング方法、スパイクソーティングプログラムおよび記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るスパイクソーティング装置は、上記の課題を解決するために、複数の記録電極から構成される多点電極によって神経細胞から測定された複数の生波形から、単一ニューロン活動波形を分離するスパイクソーティング装置であって、上記複数の生波形から、独立成分分析法にしたがい、単一ニューロン活動波形の分離に必要な分離行列を算出する分離行列算出手段と、上記複数の生波形から、主成分分析法にしたがい、単一ニューロン活動波形の分離に必要な無相関化行列を算出する無相関化行列算出手段と、上記分離行列、および、上記無相関化行列を使用することによって、上記複数の生波形から独立成分波形を単一ニューロン活動波形として抽出する単一ニューロン波形抽出手段とを備えており、上記分離行列算出手段は、予め定められた単位時間が経過するたびに、上記複数の生波形よりも後に測定される他の複数の生波形から、新たな分離行列を算出し、上記分離行列算出手段が上記新たな分離行列を算出したとき、上記単一ニューロン波形抽出手段は、当該新たな分離行列、および上記無相関化行列を使用することによって、上記他の複数の生波形から新たな独立成分波形を新たな単一ニューロン活動波形として抽出することを特徴としている。
【0011】
上記の構成によれば、本装置は、複数の記録電極からなる多点電極によって神経細胞から測定される複数の生波形から、単一ニューロン活動波形を分離する。このとき、本装置は、独立成分分析法にしたがって、生波形から単一ニューロン活動波形を分離する。
【0012】
また、本装置は、複数の生波形から、独立成分分析法にしたがい、単一ニューロン活動波形の分離に必要な分離行列を算出する。さらに、上記複数の生波形から、主成分分析法にしたがい、単一ニューロン活動波形の分離に必要な無相関化行列を算出する。これにより、算出した分離行列および無相関化行列を使用することによって、複数の生波形から独立成分波形を単一ニューロン活動波形として抽出する。ここで、本装置は、予め定められた単位時間が経過するたびに、上記複数の生波形よりも後に測定される他の複数の生波形から、新たな分離行列を算出する。さらに、この新たな分離行列を使用することによって、他の複数の生波形から新たな独立成分波形を新たな単一ニューロン活動波形として抽出する。
【0013】
以上の処理によって、本装置は、所定の単位時間ごとに、分離行列を更新する。これにより、更新した分離行列を使用することによって、新たな生波形から新たな独立成分波形を抽出する。本装置は、この新たな独立成分波形を、新たな単一ニューロン活動波形とする。すなわち、単位時間ごとに、抽出した単一ニューロン活動波形を更新する。これにより、本装置は、単一ニューロン活動波形をリアルタイムで抽出する効果を奏する。
【0014】
このように、本装置は、十分実用的な時間で、単一ニューロン活動波形をリアルタイムで分離できる。したがって、ユーザは、本装置による分離結果に基づき、単一ニューロン活動波形の経時的変化を確認できる。たとえば、ユーザは、単一ニューロン活動波形が数百ミリ秒〜数秒単位の短い時間で変化したとしても、その変化を確認できる。
【0015】
本発明に係るスパイクソーティング方法は、上記の課題を解決するために、複数の記録電極から構成される多点電極によって神経細胞から測定された複数の生波形を処理するスパイクソーティング装置において、単一ニューロン活動波形を分離するスパイクソーティング方法であって、上記複数の生波形から、主成分分析法にしたがい、単一ニューロン活動波形の分離に必要な無相関化行列を算出する無相関化行列算出ステップと、予め定められた単位時間が経過するたびに、上記複数の生波形よりも後に測定される他の複数の生波形から、独立成分分析法に基づき、新たな分離行列を算出する分離行列算出ステップと、上記算出される新たな分離行列、および、上記無相関化行列を使用することによって、上記他の複数の生波形から独立成分波形を単一ニューロン活動波形として抽出する単一ニューロン活動波形抽出ステップとを含んでいることを特徴としている。
【0016】
この方法によれば、上述したスパイクソーティング装置と同様の作用効果を奏する。
【0017】
また、本発明に係るスパイクソーティング装置では、上記複数の記録電極は、11本であることが好ましい。この構成により、本装置は、複数の生波形から、11以下の数の単一ニューロン活動波形を分離できる。ここで、記録電極の数が10本の場合、単一ニューロン活動波形の分離率が65%となる。一方、記録電極の数が10本よりも多い場合、分離率は、90%以上となる。そのため、本装置は、スパイク波形のクラスタリング等の処理を行わなくても、充分に高い分離率で、単一ニューロン活動波形を分離できる効果を奏する。
【0018】
また、本発明に係るスパイクソーティング装置では、上記無相関化行列算出手段は、予め定められた単位時間が経過するたびに、上記複数の生波形よりも後に測定される他の複数の生波形から、新たな無相関化行列を算出し、上記無相関化行列算出手段が上記新たな無相関化行列を算出したとき、上記単一ニューロン波形抽出手段は、上記新たな分離行列、および、上記新たな無相関化行列を使用することによって、上記他の複数の生波形から新たな独立成分波形を新たな単一ニューロン活動波形として抽出することが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、本装置は、予め定められた単位時間が経過するたびに、上記複数の生波形よりも後に測定される他の複数の生波形から、新たな無相関化行列を算出する。これにより、本装置は、算出した新たな分離行列、および、新たな無相関化行列を使用することによって、上記他の複数の生波形から新たな独立成分波形を新たな単一ニューロン活動波形として抽出する。
【0020】
このように本装置は、予め定められた単位時間が経過するたびに、使用する無相関化行列を切り替える。すなわち、処理する複数の生波形が新しくなって、波形に含まれるノイズが変化したとしても、そのノイズを低減できる新たな無相関化行列を使用する。これにより、本装置は、リアルタイムで分離する単一ニューロン活動波形のノイズをより低減できる効果を奏する。
【0021】
なお、上記スパイクソーティング装置は、コンピュータによって実現してもよい。この場合、コンピュータを上記各手段として動作させることにより上記スパイクソーティング装置をコンピュータにおいて実現するスパイクソーティングプログラム、およびそのスパイクソーティングプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明に係るスパイクソーティング装置は、予め定められた単位時間が経過するたびに、複数の生波形よりも後に測定される他の複数の生波形から、新たな分離行列を算出する分離行列算出手段と、分離行列算出手段が新たな分離行列を算出したとき、当該新たな分離行列を使用することによって、上記他の複数の生波形から新たな独立成分波形を新たな単一ニューロン活動波形として抽出する単一ニューロン波形抽出手段とを備えているため、単一ニューロン活動波形をリアルタイムで分離する効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の一実施形態について、図1〜図7を参照して以下に説明する。
【0024】
本発明のスパイクソーティング装置1は、少なくとも12個の記録電極を含む多点電極を用いて、神経細胞から測定される複数の生波形データを処理する装置である。ユーザは、図2に示すドデカトロード20(Dodecatrode)などの多点電極を用いて、神経細胞からマルチニューロン活動を記録する。そして、記録したマルチニューロン活動を、スパイクソーティング装置1に入力する。これにより、スパイクソーティング装置1は、入力されたマルチニューロン活動の生波形データを処理することによって、生波形から単一ニューロン活動波形をリアルタイムで分離する。
【0025】
まず、スパイクソーティング装置1が処理する生波形データの取得方法を簡単に説明する。図2は、スパイクソーティング装置1が処理する生波形データの取得に使用するドデカトロード20の一構成例を示す図である。この図に示すように、本実施形態では、ユーザは、複数のマイクロワイヤ30からなるドデカトロード20を使用する。図2に示すドデカトロード20は、12本のマイクロワイヤ30からなる。
【0026】
図2に示すドデカトロード20の製造方法を簡単に説明する。直径8μmのマイクロワイヤ30を12本、一つに束ねる。1つに束ねた12本のマイクロワイヤ30を、約200回転、よじることによって、先端経を約60〜80μmに仕上げる。これにより、ドデカトロード20の先端径は、4本のマイクロワイヤ30からなるテトロードの先端経と、ほぼ同様になる。たとえば、テトロードの先端経は平均で約60μmであり、ドデカトロード20の先端径は平均で約70μmである。
【0027】
このように、ドデカトロード20は、テトロードに比べて、先端径がほぼ同一である一方、先端に含んでいるマイクロワイヤ30の数が3倍になる。すなわち、ドデカトロード20の計測点数は、テトロードのそれよりも多い。
【0028】
ユーザは、図2に示すドデカトロード20を、可動式慢性埋め込み用のマイクロドライブに取り付ける。このマイクロドライブを操作して、ユーザは、ドデカトロード20をたとえばラットの脳内に挿入する。このとき、ラットは自由に動き回れるようになっている。挿入後、1時間に渡り、ラット海馬および体性感覚野の神経細胞から、ドデカトロード20を通じてマルチニューロン活動を記録する。本実施形態では、12本のマイクロワイヤ30のそれぞれから、生波形を1つずつ記録する。したがって、1本のドデカトロード20から、12本のマイクロワイヤ30のそれぞれに由来する12個の生波形を記録できる。
【0029】
12本のマイクロワイヤ30のそれぞれから記録された生波形を、増幅器に入力する。増幅器は、入力された生波形を2000倍に増幅し、増幅後の生波形をAD変換器に入力する。AD変換器は、入力された生波形を、25kHzのサンプリングレートで、デジタルデータに変換する。さらに、AD変換器は、デジタル化により生成した生波形データを、スパイクソーティング装置1に入力する。スパイクソーティング装置1は図示しない記憶部を備えており、入力された生波形データを、この記憶部にいったん保存する。
【0030】
スパイクソーティング装置1は、入力された生波形データを処理することによって、生波形から単一ニューロン活動波形を分離する。なお、本実施形態では、12本のマイクロワイヤ30を通じて、12個の生波形データが記録する。そこで、これらの12個の生波形データを、それぞれ、第1〜第12チャンネルの生波形データと表現する。すなわち、第1マイクロワイヤ30を通じて取得した生波形データを、第1チャンネルの生波形データ(第1生波形データ)と表現する。また、第2マイクロワイヤ30を通じて取得した生波形データを、第2チャンネルの生波形データ(第2生波形データ)と表現する。また、第3マイクロワイヤ30を通じて取得した生波形データを、第3チャンネルの生波形データ(第3生波形データ)と表現する。このように、第nマイクロワイヤ30を通じて取得した生波形データを、第nチャンネルの生波形データ(第n生波形データ)と表現する(nは1以上12以下の整数)。
【0031】
本実施形態におけるスパイクソーティング装置1は、生波形から単一ニューロン活動波形をリアルタイムで分離する。このリアルタイム分離を実現するスパイクソーティング装置1の構成について、図1を参照して以下に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るスパイクソーティング装置1の構成を示すブロック図である。この図に示すように、スパイクソーティング装置1は、分離行列算出部10(分離行列算出手段)、無相関化行列算出部11(無相関化行列算出手段)、独立成分波形抽出部12(単一ニューロン波形抽出手段)、およびタイムスタンプ抽出部13(タイムスタンプ抽出手段)を備えている。
【0032】
分離行列算出部10は、入力された生波形データに基づき所定の演算を実行することによって、生波形から分離行列Wを生成する。このとき分離行列算出部10は、独立成分分析法のアルゴリズムにしたがう。また、分離行列算出部10は、分離行列Wを表すデータを生成する。
【0033】
無相関化行列算出部11は、入力された生波形データに基づき所定の演算を実行することによって、生波形から無相関化行列Pを生成する。このとき無相関化行列算出部11は、主成分分析法のアルゴリズムにしたがう。また、無相関化行列算出部11は、無相関化行列Pを表すデータを生成する。
【0034】
独立成分波形抽出部12は、入力された生波形データに基づき所定の演算を実行することによって、生波形から独立成分波形を抽出する。このとき、独立成分波形抽出部12は、分離行列算出部10が生成した分離行列Wと、無相関化行列算出部11が生成した無相関化行列Pとを用いて、生波形から独立成分波形を抽出する。また、独立成分波形抽出部12は、抽出した独立成分波形を表すデータを生成する。なお、スパイクソーティング装置1は、独立成分波形抽出部12が抽出した独立成分波形を、単一ニューロン活動波形とみなす。
【0035】
タイムスタンプ抽出部13は、独立成分波形抽出部12が生成した独立成分波形データに基づき、所定の演算を実行することによって、独立成分波形からスパイク波形を抽出する。これにより、タイムスタンプ抽出部13は、抽出したスパイク波形に現れる負ピーク値を算出し、この負ピーク値の出現時間をタイムスタンプとする。また、タイムスタンプ抽出部13は、抽出したタイムスタンプを表すデータを生成する。
【0036】
上述したように、スパイクソーティング装置1は、入力された生波形データを処理することによって、生波形から単一ニューロン活動波形をリアルタイムで分離する。このデータ処理の流れについて、以下に詳細に説明する。
【0037】
図1に示すように、スパイクソーティング装置1の分離行列算出部10に、測定した生波形を表す生波形データが入力される。ここで、スパイクソーティング装置1が処理する生波形データは、記録された時間順に電圧値が並んでいる配列データである。ここでいう「時間」とは、生波形データの記録を開始してからの経過時間を意味する。
【0038】
スパイクソーティング装置1は、最初に初期化処理を実行する。この初期化処理を、スパイクソーティング装置1は、10秒分の生波形データに基づき実行する。すなわち、まず、生波形の測定を開始してから10秒が経過する間での間に取得した生波形データが、分離行列算出部10に入力される。生波形をデジタル化する際のサンプリングレートが25kHzであるため、分離行列算出部10には、それぞれ250,000個の電圧値からなる初期生波形データdが、12個、入力される。図4に示すように、分離行列算出部10は、入力された初期生波形データdから、分離行列Wを算出する。このとき、分離行列算出部10は、独立成分分析法のアルゴリズムに基づき、分離行列Wを算出する。
【0039】
ここで分離行列算出部10は、入力された初期生波形データdが表す生波形の特性に基づき、後述する独立成分波形抽出部12が抽出する独立成分波形の数を決定する。本実施形態では、分離行列算出部10は、12個の生波形から12個の独立成分波形を抽出することを決定する。そこで、分離行列算出部10は、入力された初期生波形データdに基づき、12行12列の分離行列Wを算出する。すなわち、独立成分波形抽出部12が抽出する独立成分波形の数と同一の行・列の分離行列Wを算出する。本実施形態では、12個の独立成分波形に対応するように、12行12列の分離行列Wを生成する。なお、このとき、分離行列算出部10は、12行12列の分離行列Wを表すデータを生成する。
【0040】
分離行列算出部10は、算出した分離行列Wに基づき、その逆行列である逆行列W−1を算出する。このとき分離行列算出部10が生成する逆行列W−1は、分離行列Wと同じく12行12列である。分離行列算出部10は、算出した逆行列W−1に基づき、独立成分波形ごとに12行1列の基底ベクトルを算出する。なお、この基底ベクトルは、逆行列W−1のある一行を抜き出した縦ベクトルである。逆行列W−1が12行12列であることから、分離行列算出部10は、逆行列W−1から、行ごとに合計して12個の基底ベクトルを算出する。
【0041】
このように、分離行列算出部10は、初期生波形データdに基づき、分離行列W、逆行列W−1、および12個の基底ベクトルを算出する。このとき、分離行列算出部10は、これらをそれぞれ表すデータを生成する。生成したデータを、分離行列算出部10は、記憶部に保存するとともに、独立成分波形抽出部12に出力する。このとき、分離行列算出部10は、さらに、生波形から抽出する独立成分波形の個数(この場合は12)を、記憶部に保存する。
【0042】
なお、分離行列算出部10が処理する10秒間分の生波形データは、無相関化行列算出部11および独立成分波形抽出部12には入力されない。すなわち、分離行列算出部10および無相関化行列算出部11は、分離行列算出部10が分離行列W等を算出するまで、処理を待機する。
【0043】
以上のように、分離行列算出部10は、10秒間分の生波形データを使用することによって、分離行列Wを初期化する。なお、分離行列算出部10は、FastICAにおいて採用されているアルゴリズムに基づき、分離行列Wを算出する。FastICAは、フリーソフトウェアとして広く流通している(URL:http://www.cis.hut.fi/projects/ica/fastica/を参照)ものであり、そのアルゴリズ自体は公知であるため、詳細な説明を省略する。
【0044】
分離行列Wの初期化が完了すると、スパイクソーティング装置1は、生波形からの単一ニューロン活動波形のリアルタイム分離を開始する。このとき、スパイクソーティング装置1は、40ミリ秒分の生波形データに基づき、40ミリ秒間隔で、単一ニューロン活動波形を次々と分離し続ける。そこで、このリアルタイム分離処理の詳細について、図4を参照して説明する。
【0045】
図4は、スパイクソーティング装置1における分離行列W、無相関化行列P、および独立成分波形の生成タイミングを示す図である。この図に示すように、初期生波形データdに基づいた分離行列Wの算出が終了したあと、無相関化行列算出部11に40ミリ秒分の生波形データdが入力される。すなわち、無相関化行列算出部11には、1,000個の電圧値からなる生波形データが12個、生波形データdとして入力される。この生波形データdは、初期生波形データdの直後に取得されるものである。無相関化行列算出部11は、主成分分析法のアルゴリズムに基づき、入力された生波形データdから無相関化行列Pを生成する。主成分分析法のアルゴリズム自体は公知であるため、詳細な説明を省略する。
【0046】
無相関化行列算出部11は、記憶部にアクセスすることによって、スパイクソーティング装置1が分離する独立成分波形の数を読み出す。上述したように、本実施形態では、この数は12である。そこで、無相関化行列算出部11は、生成する無相関化行列Pの行数および列数を、12個に設定する。これにより、無相関化行列算出部11は、12行12列の無相関化行列Pを算出する。また、無相関化行列算出部11は、算出した無相関化行列Pを表すデータを生成し、独立成分波形抽出部12に出力する。
【0047】
無相関化行列算出部11は、無相関化行列Pの算出を40ミリ秒以内に終了する。ここで、無相関化行列算出部11が無相関化行列Pを算出するとき、生波形データd1は、同時に、独立成分波形抽出部12にも入力される。
【0048】
上述したように、このとき、独立成分波形抽出部12には、分離行列Wおよび無相関化行列Pも入力される。そこで、独立成分波形抽出部12は、分離行列Wおよび無相関化行列Pを用いて、生波形データdから、次の式(1)に基づき、独立成分波形群yを生成する。
【0049】
【数1】

【0050】
式(1)において、W−1は、分離行列Wの逆行列である。Pは、無相関化行列である。xは、入力された生波形データである。Tは、転置行列を示す。
【0051】
上述したように、分離行列算出部10は、生波形データから、12個の独立成分波形を抽出することを設定する。そこで、独立成分波形抽出部12は、分離行列算出部10による初期化設定にしたがい、入力された生波形データから、12個の独立成分波形を抽出する。すなわち、独立成分波形抽出部12は、生波形データdから、12個の独立成分波形を含む独立成分波形群yを抽出する。また、独立成分波形抽出部12は、生成した独立成分波形群yを表すデータを生成し、タイムスタンプ抽出部13に出力する。
【0052】
独立成分波形抽出部12が生波形から抽出する独立成分波形の一例を、図3に示す。図3は、(a)は、スパイクソーティング装置1が処理する生波形の一例を示す図であり、(b)は、(a)に示す生波形からスパイクソーティング装置1が抽出する独立成分波形を示す図である。図3(a)および(b)に示すように、独立成分波形抽出部12は、12個の生波形から12個の独立成分波形を分離する。
【0053】
スパイクソーティング装置1では、生波形データdは、無相関化行列算出部11と同時に、分離行列算出部10にも入力される。これにより、無相関化行列算出部11が生波形データdを用いて無相関化行列Pを算出するとき、同時に、分離行列算出部10が生波形データdを用いて分離行列Wを算出する。本実施形態では、分離行列算出部10は、40ミリ秒分の生波形データdから、約160ミリ秒の時間をかけて分離行列Wを生成する。したがって、独立成分波形抽出部12は、分離行列算出部10による分離行列Wの算出が終了するまで、分離行列Wを使用し続ける。
【0054】
生波形データdの次に、生波形データdが、無相関化行列算出部11および独立成分波形抽出部12に入力される。この生波形データdは、生波形データdの直後に取得されるものであり、生波形データdと同じく、40ミリ秒分の生波形データである。
【0055】
これにより、分離行列算出部10が分離行列Wの算出を続けている間、無相関化行列算出部11は、入力された生波形データdから無相関化行列Pを生成する。このとき、無相関化行列算出部11は、12行12列の無相関化行列Pを算出する。さらに、算出した無相関化行列Pを表すデータを生成し、独立成分波形抽出部12に出力する。
【0056】
生波形データdが独立成分波形抽出部12に入力されるとき、分離行列算出部10は、未だ分離行列Wの算出を終了できない。独立成分波形抽出部12は、現在使用できる分離行列Wを使用し、生波形データdから独立成分波形群yを生成する。より詳細には、独立成分波形抽出部12は、分離行列Wおよび無相関化行列Pを用いて、式(1)に基づき、生波形データdから独立成分波形群yを生成する。独立成分波形抽出部12は、生成した独立成分波形群yを表すデータを生成し、タイムスタンプ抽出部13に出力する。すなわち、独立成分波形抽出部12は、独立成分波形群yを抽出したあと、40ミリ秒後に、独立成分波形群yを抽出し、そのデータをタイムスタンプ抽出部13に出力する。
【0057】
生波形データdの次に、生波形データdが、無相関化行列算出部11および独立成分波形抽出部12に入力される。この生波形データdは、生波形データdの直後に取得されるものであり、生波形データdと同様に40ミリ秒分の生波形データである。
【0058】
分離行列算出部10が分離行列Wの算出を続けている間、無相関化行列算出部11は、入力された生波形データdから無相関化行列Pを算出する。生波形データdが独立成分波形抽出部12に入力されるとき、分離行列算出部10は、未だ分離行列Wの算出を終了できない。そこで、独立成分波形抽出部12は、現在使用できる分離行列Wを使用し、生波形データdから独立成分波形群yを生成する。より詳細には、独立成分波形抽出部12は、分離行列Wおよび無相関化行列Pを用いて、式(1)に基づき、生波形データdから独立成分波形群yを生成する。独立成分波形抽出部12は、生成した独立成分波形群yを表すデータを生成し、タイムスタンプ抽出部13に出力する。すなわち、独立成分波形抽出部12は、独立成分波形群yを抽出したあと、40ミリ秒後に、独立成分波形群yを抽出し、そのデータをタイムスタンプ抽出部13に出力する。
【0059】
詳細は省略するが、無相関化行列算出部11および独立成分波形抽出部12は、生波形データdの次に生波形データdを処理する。すなわち、無相関化行列算出部11は、生波形データdから無相関化行列Pを生成する。これにより、独立成分波形抽出部12は、分離行列Wおよび無相関化行列Pを使用することによって、生波形データdから独立成分波形群yを抽出する。
【0060】
図4に示すように、無相関化行列算出部11が生波形データdから無相関化行列Pを算出する時点において、分離行列算出部10は、生波形データdから分離行列Wを算出し終える。そこで、分離行列算出部10は、算出した分離行列Wから、新たな逆行列を算出する。また、逆行列から、新たな12個の基底ベクトルを算出する。分離行列算出部10は、算出した分離行列W等を表すデータを生成し、独立成分波形抽出部12に出力する。
【0061】
独立成分波形抽出部12は、分離行列Wを表すデータが入力されると、記憶部に保存されている分離行列W等を表すデータを、入力された分離行列W等を表すデータに置き換える。そのため、これ以降、分離行列Wの次に算出される分離行列Wを表すデータが入力されるまで、独立成分波形抽出部12は、独立成分波形の抽出に分離行列Wを使用する。すなわち、独立成分波形抽出部12は、生波形データdの次に入力された生波形データdから独立成分波形を抽出するとき、分離行列Wおよび無相関化行列Pを使用する。これにより、独立成分波形抽出部12は、生波形データdから独立成分波形群yを抽出する。
【0062】
生波形データdは、分離行列算出部10にも入力される。これにより、分離行列算出部10は、生波形データdから分離行列Wを算出する。すなわち、分離行列算出部10は、分離行列Wおよび分離行列Wを算出するときと同様に、40ミリ秒分の生波形データdを使用することによって、分離行列Wを算出する。上述したように、分離行列算出部10は、約160ミリ秒の時間をかけて分離行列Wを生成する。そのため、分離行列算出部10は、図4に示すように、独立成分波形抽出部12が生波形データdから独立成分波形群yを抽出するころに、分離行列Wの算出を終了する。そこで、分離行列算出部10は、生波形データdの次の生波形データdが独立成分波形抽出部12に入力される前に、独立成分波形抽出部12に分離行列W等を表すデータを出力する。
【0063】
分離行列W等を表すデータが入力されると、分離行列算出部10は、記憶部に保存されている分離行列W等を表すデータを、入力された分離行列W等を表すデータに置き換える。これにより、分離行列算出部10は、生波形データdよりも後に入力された生波形データに対して、分離行列Wを適用する。たとえば、分離行列算出部10は、分離行列Wおよび無相関化行列Pを使用することによって、生波形データdから独立成分波形群yを生成する。また、分離行列Wおよび無相関化行列P10を使用することによって、生波形データd10から独立成分波形群y10を生成する。
【0064】
以上のように、スパイクソーティング装置1は、40ミリ秒間隔で更新される無相関化行列Pと、200ミリ秒間隔で更新される分離行列Wとを使用することによって、40ミリ秒分の生波形データから、40ミリ秒ごとに新たな独立成分波形を抽出する。これにより、スパイクソーティング装置1は、独立成分波形をリアルタイムで生波形から抽出できる。上述したように、スパイクソーティング装置1では、抽出した独立成分波形が、単一ニューロン活動波形となる。これにより、たとえば、スパイクソーティング装置1が、抽出した独立成分波形を単一ニューロン活動波形として表示パネルにリアルタイムで表示すれば、ユーザは、単一ニューロン活動波形の経時的変化をリアルタイムで確認できる。したがって、ユーザは、単一ニューロン活動波形が数百ミリ秒〜数秒単位の短い時間で変化したとしても、その変化を確認できる。
【0065】
図1に示すように、独立成分波形抽出部12が生成した独立成分波形データは、タイムスタンプ抽出部13に入力される。タイムスタンプ抽出部13は、入力された独立成分波形データに基づき、まず、各独立成分波形の平均2乗誤差を算出する。このとき、タイムスタンプ抽出部13は、12個の独立成分波形に対応した、12個の平均2乗誤差をそれぞれ算出する。
【0066】
タイムスタンプ抽出部13は、独立成分波形を構成する電圧値を、順次、算出した閾値と比較する。これにより、独立成分波形を構成する電圧値が、閾値を超えるか否かを判定する。閾値を超えると判定する場合、タイムスタンプ抽出部13は、その閾値を含む所定超の波形を、スパイク波形と見なす。これにより、タイムスタンプ抽出部13は、閾値を超える電圧値の出現時間の前後16ポイント分のデータを取り出す。この32ポイント分の電圧値からなるスパイク波形から、負ピーク値を算出する。
【0067】
タイムスタンプ抽出部13は、各スパイク波形において負ピーク値が出現する時間を算出し、これをタイムスタンプとする。さらに、タイムスタンプを表すデータを生成して、記憶部に保存する。たとえば、図6に示す例では、タイムスタンプ抽出部13は、第2チャンネルの独立成分波形から、3つのスパイク波形を抽出する。これにより、タイムスタンプ抽出部13は、これらのスパイク波形から、t、t、およびtの合計、3つのタイムスタンプを算出する。タイムスタンプ抽出部13は、抽出したタイムスタンプを表すデータを、独立成分波形に関連づけて、記憶部に保存する。
【0068】
タイムスタンプ抽出部13は、このようなタイムスタンプの抽出を、独立成分波形群に含まれる全てのチャンネルの独立成分波形に対して適用する。すなわち、第1チャンネルの独立成分波形から、n個のタイムスタンプを抽出する。また、第2チャンネルの独立成分波形から、n個のタイムスタンプを抽出する。このように、12個の独立成分波形から、合計、n+n+・・・+n12個のタイムスタンプを抽出する。
【0069】
タイムスタンプ抽出部13には、40ミリ秒間隔で、次々と、新たな独立成分波形データが入力される。これにより、タイムスタンプ抽出部13は、入力されるこれらの独立成分波形データのそれぞれに基づき、タイムスタンプデータを生成する。上述したように、タイムスタンプ抽出部13には、まず独立成分波形群yが入力される。
【0070】
たとえば、タイムスタンプ抽出部13は、独立成分波形群yから第1タイムスタンプ群を抽出する。タイムスタンプ抽出部13は、抽出したタイムスタンプを一つにまとめて、独立成分波形群yに対応する第1タイムスタンプデータとして記憶部に保存する。独立成分波形群yを表すデータの入力後40ミリ秒が経過してから、タイムスタンプ抽出部13に独立成分波形群yを表すデータが入力される。そこで、タイムスタンプ抽出部13は、独立成分波形群yから第2タイムスタンプ群を抽出する。タイムスタンプ抽出部13は、抽出した第2タイムスタンプ群を一つにまとめて、独立成分波形群yに対応する第2タイムスタンプデータとして記憶部に保存する。すなわち、タイムスタンプ抽出部13は、第1タイムスタンプデータを生成したあと、40ミリ秒が経過する頃に、第2タイムスタンプデータを生成する。このように、タイムスタンプ抽出部13は、40ミリ秒間隔で、タイムスタンプデータを次々と更新し続ける。
【0071】
スパイクソーティング装置1は、タイムスタンプ抽出部13が抽出したタイムスタンプを、表示パネルに順次、表示する。これにより、表示パネルに40ミリ秒間隔で新たなタイムスタンプが表示される。すなわち、表示パネルでは、表示されるタイムスタンプが40ミリ秒間隔で更新される。これによりユーザは、タイムスタンプの経時的変化をリアルタイムで確認できる。このタイムスタンプの経時的変化を確認することによっても、ユーザは、単一ニューロン活動波形の経時的変化を知ることができる。
【0072】
なお、スパイクソーティング装置1では、独立成分波形抽出部12は、続けて算出した独立成分波形を互いに連結する。このとき独立成分波形抽出部12は、ある独立成分波形に関連づけられている基底ベクトルと、この独立成分波形の次に生成した独立成分波形に関連づけられている基底ベクトルとを比較する。この比較結果に基づき、独立成分波形抽出部12は、2つの独立成分波形を連結するルールを決定する。すなわち、独立成分波形抽出部12は、次の式(2)を使用することによって、連結対象となる2つの独立成分波形に関連づけられている2つの基底ベクトル間の角度を算出する。
【0073】
【数2】

【0074】
式(2)において、aおよびbは、比較対象である2つの基底ベクトルである。<a,b>は、aおよびbの内積である。|a|は、aの絶対値である。|a|は、bの絶対値である。||a||は、aのノルムである。||b||は、bのノルムである。Mabは、aおよびbの角度である。なお、独立成分波形抽出部12は、算出した角度が、予め定められている所定の角度よりも大きいか否かを判定する。
【0075】
独立成分波形抽出部12が、独立成分波形群yおよび独立成分波形群yを連結する場合の例を、以下に説明する。独立成分波形抽出部12は、独立成分波形群yに関連づけられている12個の基底ベクトルと、独立成分波形群yに関連づけられている12個の基底ベクトルとを、それぞれ互いに比較する。すなわち、独立成分波形抽出部12は、12×12=144通りの比較を実行する。
【0076】
式(2)、独立成分波形抽出部12は、式(2)を使用することによって、独立成分波形群yの第1基底ベクトルと、独立成分波形群yの第2基底ベクトルとの間の角度を算出する。この角度が、予め定められた所定の設定値よりも大きい場合、独立成分波形抽出部12は、独立成分波形群yの第1独立成分波形と、独立成分波形群yの第2独立成分波形とを互いに類似した独立成分波形であると判定する。そこで、独立成分波形抽出部12は、独立成分波形群yの第1独立成分波形と、独立成分波形群yの第2独立成分波形とを連結する。このように、独立成分波形抽出部12は、独立成分波形群yに含まれる12個の独立成分波形のそれぞれを、独立成分波形群yに含まれる12個の独立成分波形のどれに連結するのかを決定する。独立成分波形抽出部12は、決定した独立成分波形の連結ルールを記憶部に保存する。
【0077】
独立成分波形抽出部12は、同一の分離行列Wを使用することによって独立成分波形を抽出する限り、同一の連結ルールを適用する。すなわち、図4に示す例では、独立成分波形抽出部12は、分離行列Wを使用することによって、生波形データdから独立成分波形群yを抽出する。さらに、同じく分離行列Wを使用することによって、生波形データdから独立成分波形群yを抽出する。すなわち、独立成分波形抽出部12は、独立成分波形群yおよび独立成分波形群yを抽出するとき、同一の分離行列Wを使用する。そのため、独立成分波形抽出部12は、独立成分波形群yを独立成分波形群yに連結するときと同一のルールを、独立成分波形群yに適用する。
【0078】
たとえば、独立成分波形抽出部12は、独立成分波形群yに含まれる第2独立成分波形を、独立成分波形群yに含まれる第1独立成分波形に連結する場合、独立成分波形群yに含まれる第2独立成分波形を、独立成分波形群yに含まれる第2独立成分波形に連結する。これにより、独立成分波形抽出部12は、独立成分波形群yの第1独立成分波形と、独立成分波形群yの第2独立成分波形と、独立成分波形群yの第2独立成分波形とを、互いに連結する。
【0079】
独立成分波形抽出部12は、独立成分波形の抽出に使用した分離行列Wを、新たな分離行列Wに切り替える場合、独立成分波形の連結ルールを再び算出する。このとき、独立成分波形抽出部12は、上述した式(2)を使用する。たとえば、独立成分波形抽出部12は、生波形データdから独立成分波形群yを抽出する場合、分離行列Wを使用する。一方、生波形データdから独立成分波形群yを抽出する場合、分離行列Wを使用する。すなわち、独立成分波形抽出部12は、独立成分波形群yを抽出するときに使用する分離行列Wとは異なる分離行列Wを、独立成分波形群yを抽出するときに使用する。
【0080】
このとき、独立成分波形抽出部12は、既に決定している連結ルールに基づくと、独立成分波形群yと独立成分波形群yとを誤って連結してしまう。これは、独立成分波形群yの抽出に使用した分離行列Wと、独立成分波形群yの抽出に使用した分離行列Wとが、互いに異なるからである。そこで、独立成分波形抽出部12は、独立成分波形群yに関連づけられている基底ベクトルと、独立成分波形群yに関連づけられている基底ベクトルとを、互いに比較する。これにより、独立成分波形群yと独立成分波形群yとを連結するときの連結ルールを再び決定する。独立成分波形抽出部12は、新たに決定した連結ルールを、分離行列Wを使用することによって抽出した独立成分波形に適用する。図4に示す例では、独立成分波形抽出部12は、独立成分波形群y〜yを抽出する場合、分離行列Wを使用する。そこで、独立成分波形抽出部12は、独立成分波形群y〜yを互いに連結する場合、新たな連結ルールを適用する。
【0081】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0082】
たとえば、スパイクソーティング装置1が処理する生波形データは、ラットから記録した生波形データに限定されない。ドデカトロード20などの多点電極によって神経細胞から記録した生波形データは、全て、スパイクソーティング装置1によって処理できる。たとえば、ラットやマウスなどの小動物、サルなどの大型動物も対象にしてよい。さらに、倫理的問題が解決さえすれば、人間を対象にすることも可能である。
【0083】
生波形データの記録に用いるドデカトロード20のインピーダンスは、100kΩ〜1.5MΩの範囲内にあることが好ましい。マイクロワイヤ30の太さは、10ミクロン以下であることが求められる。マイクロワイヤ30を束ねたドデカトロード20の太さは、100ミクロン以下であることが求められる。なお、独立成分分析法は、電極間の波形分布の差を、情報としている。そのため、同一の神経細胞から発生しているスパイク波形を計測しなければ、単一ニューロン活動波形を分離するために充分な情報を取得できない。そこで、ドデカトロード20のサイズを、計測範囲が重なる100ミクロン以下とすればよい。
【0084】
上述した本実施形態では、12本のマイクロワイヤ30からなるドデカトロード20を例に、説明した。しかし、ドデカトロード20に含まれるマイクロワイヤ30の本数は、12本に限定されない。上述した100ミクロンの範囲内に収まるのであれば、12本以上の任意の本数が可能である。したがって、スパイクソーティング装置1では、12個以上のチャンネルの生波形データを処理できる。
【0085】
上述した本実施形態では、独立成分波形抽出部12は、12個の生波形から、12個の独立成分波形を分離する。これは、分離行列算出部10が、生波形の特性に基づき、12個の独立成分波形を分離するように決定するからである。しかし、スパイクソーティング装置1は、処理する生波形の特性に基づき、12以下の数の任意の独立成分波形を分離できる。たとえば、図6に示す例では、スパイクソーティング装置1は、(a)に示す12チャンネルの生波形から、(b)に示す8個の独立成分波形を抽出する。
【0086】
このとき、スパイクソーティング装置1では、分離行列算出部10が、図6(a)に示す生波形の特性から、8個の独立成分波形を抽出することを決定する。そのため、分離行列算出部10は、8行12列の分離行列Wを算出する。これにより、分離行列算出部10は、算出した分離行列Wから、12行8列の逆行列W−1を算出する。さらに、算出した逆行列W−1から、12行1列の基底ベクトルを8個、算出する。また、無相関化行列算出部11は、12行12列の無相関化行列Pを算出する。
【0087】
このような処理を一般化して記載すると、次に示す通りである。
【0088】
スパイクソーティング装置1では、分離行列算出部10が、n(nは12以上の整数)個の生波形の特性から、m個(mは1以上n以下の整数)の独立成分波形を抽出することを決定する。そのため、分離行列算出部10は、m行n列の分離行列Wを算出する。これにより、分離行列算出部10は、算出した分離行列Wから、n行m列の逆行列W−1を算出する。さらに、算出した逆行列W−1から、n行1列の基底ベクトルをm個、算出する。また、無相関化行列算出部11は、n行n列の無相関化行列Pを算出する。
【0089】
さらに、請求項に記載されているように、分離行列算出部10は、複数の生波形から、独立成分分析法にしたがい、単一ニューロン活動波形の分離に必要な分離行列を算出する。また、、独立成分波形抽出部12は、分離行列Wを使用することによって、複数の生波形から独立成分波形を単一ニューロン活動波形として抽出する。また、分離行列算出部10は、予め定められた単位時間が経過するたびに、複数の生波形よりも後に測定される他の複数の生波形から、新たな分離行列を算出する。また、分離行列算出部10が新たな分離行列を算出したとき、独立成分波形抽出部12は、当該新たな分離行列を使用することによって、他の複数の生波形から新たな独立成分波形を新たな単一ニューロン活動波形として抽出する。
【0090】
上述したように、スパイクソーティング装置1は、少なくとも11本のマイクロワイヤ30からなる多点電極によって測定した生波形データを処理することが好ましい。この電極本数は、実験結果に基づき決定されたものである。この実験結果について、以下に説明する。
【0091】
スパイクソーティング装置1を用いて、生波形の測定に使用するドデカトロード20の本数と、単一ニューロン活動波形の分離率との関係を決定した。このとき、20本のマイクロワイヤ30からなる多点電極を使用することによって、20チャンネルの生波形を測定した。この20チャンネルの生波形から、単一ニューロン活動波形の分離に使用する生波形を、10〜20チャンネル分、選択した。それぞれをスパイクソーティング装置1に処理させることによって、単一ニューロン活動波形の分離率を算出した。
【0092】
結果を図7に示す。図7は、記録電極の本数と、単一ニューロン活動波形の分離率との関係を示す図である。この図に示すように、記録電極数が10本である場合と、20本である場合とで、単一ニューロン活動波形の分離率に優位な差が生じた。一方、記録電極数が12本の場合と、14本以上の場合とでは、単一ニューロン活動波形の分離率に優位な差は生じなかった。また、記録電極数が12本以上では、いずれも、分離率が90%を超えていた。これらの結果から、スパイクソーティング装置1が、少なくとも11本のマイクロワイヤ30からなる多点電極を使用することによって測定した生波形を処理すれば、単一ニューロン活動波形をほぼ完全に分離できることが明らかになった。
【0093】
なお、上述した各部材は、いずれも機能ブロックである。したがって、これらの部材は、CPUなどの演算手段が、図示しない記憶部に格納されたスパイクソーティングプログラムを実行し、図示しない入出力回路などの周辺回路を制御することによって、実現される。
【0094】
したがって、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアであるスパイクソーティングプログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータによって読み取り可能に記録している記録媒体を、スパイクソーティング装置に供給し、スパイクソーティング装置に備えられるコンピュータ(またはCPUやMPU、DSP)が、記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによって、達成可能である。
【0095】
この場合、記録媒体から読み出されたプログラムコード自体が、上述した機能を実現する。そのため、そのプログラムコードを記録している記録媒体は、本発明を構成することになる。
【0096】
一方で、上述した各部材は、上述したソフトウェアと同様の処理を行うハードウェアとして実現してもよい。この場合、本発明の目的は、ハードウェアとしてのスパイクソーティング装置によって達成されることになる。
【0097】
ここで、プログラムコードを読み出し実行する演算手段は、単体の構成であればよい。または、スパイクソーティング装置内部のバスや各種の通信路を介して接続されている複数の演算手段が、プログラムコードを協同して実行する構成であってもよい。
【0098】
演算手段によって直接的に実行可能なプログラムコードを、このプログラムコードを格納しているコンピュータ読み取り可能な記録媒体を通じて、スパイクソーティング装置に配布すればよい。また、プログラムコードを、後述する解凍などの処理によってプログラムコードを生成可能なデータとして、当該データを格納しているコンピュータ読み取り可能な記録媒体に通じて、スパイクソーティング装置に配布してもよい。あるいは、これらのプログラムコードまたはデータを、有線または無線の通信路を介してデータを伝送する通信ネットワークを通じて、スパイクソーティング装置に配布または送信してもよい。いずれの手段によって配布または送信されても、プログラムコードは、スパイクソーティング装置に備えられる演算手段によって実行される。
【0099】
このとき、特定のものに限定されない各種の通信ネットワークを通じて、プログラムコードまたはデータを伝送できる。このような通信ネットワークの具体例を挙げると、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(Virtual Private Network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等がある。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体(通信路)も、特に限定されない。具体的には、IEEE1394規格による回線、USB回線、電力線、ケーブルTV回線、電話線、およびADSL回線等の有線を、伝送媒体として利用できる。さらに、IrDAやリモコンに用いられている赤外線を利用した無線、Bluetooth規格またはIEEE802.11無線規格に規定されている無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等を利用した無線も、伝送媒体として利用できる。
【0100】
なお、プログラムコードをスパイクソーティング装置に配布するための記録媒体は、プログラムコードの配布前には、取り外し可能になっていることが好ましい。しかし、プログラムコードを配布した後には、スパイクソーティング装置装置から取り外し可能になっていてもよく、スパイクソーティング装置と一体化されて取り外し不可能になっていてもよい。
【0101】
また、記録媒体は、プログラムコードが記録されてさえいれば、書き換え(書き込み)可能であってもよく、不可能であってもよい。また、揮発性であってもよく、非揮発性であってもよい。さらに、記録媒体へのプログラムコードの記録方法、および記録媒体の形状も、任意のものでよい。
【0102】
このような条件を満たす記録媒体を例示すると、磁気テープやカセットテープなどのテープ、フロッピー(登録商標)ディスクやハードディスクなどの磁気ディスク、CD−ROMや光磁気ディスク(MO)、ミニディスク(MD)、デジタルビデオディスク(DVD)などのディスクがある。さらに、ICカードや光カードのようなカード型メモリ、あるいは、マスクROMやEPROM、EEPROMまたはフラッシュROMなどの半導体メモリも該当する。さらに、CPUなどの演算手段内に形成されているメモリも該当する。
【0103】
なお、プログラムコードを記録媒体から読み出して主記憶に格納するためのプログラムは、あらかじめ、スパイクソーティング装置内に、コンピュータによって実行可能に格納されている。また、プログラムコードを通信ネットワークを通じてスパイクソーティング装置に配布する場合、通信ネットワークからプログラムコードをダウンロードするプログラムは、あらかじめ、スパイクソーティング装置内に、コンピュータによって実行可能に格納されている。
【0104】
また、プログラムコードは、上述した各処理の全手段を演算手段へ指示するコードであればよい。なお、コンピュータには、プログラムコードによる各処理の一部または全部を所定の手順で呼び出すことによって実行可能な基本プログラム(たとえば、オペレーティングシステムやライブラリなど)がすでに存在している場合がある。この場合、プログラムコードにおける全手順の一部または全部を、この基本プログラムの呼び出しを演算手段へ指示するコードやポインタなどに置き換えたプログラムコードものを、スパイクソーティングプログラムのプログラムコードとしてもよい。
【0105】
また、記録媒体に、実メモリにプログラムコードを配置した状態のように、スパイクソーティングプログラムを格納すればよい。具体的には、演算手段が記録媒体にアクセスしてプログラムコードを実行できる形式によって、スパイクソーティングプログラムを記録媒体に格納すればよい。または、実メモリにプログラムコードを配置する前であり、かつ、演算手段が常時アクセス可能なローカルな記録媒体(たとえばハードディスクなど)にインストールした後の格納形式によって、スパイクソーティングプログラムを記録媒体に格納してもよい。あるいは、通信ネットワークや搬送可能な記録媒体などからローカルな記録媒体にインストールする前の格納形式によって、スパイクソーティングプログラムを記録媒体に格納してもよい。
【0106】
スパイクソーティングプログラムは、コンパイルされた後のオブジェクトコードに限られない。たとえば、スパイクソーティングプログラムは、ソースコードとして記録媒体に格納されていてもよい。あるいは、インタプリトまたはコンパイルの途中において生成される中間コードとして、記録媒体に格納されていてもよい。上述したいずれの場合であっても、記録媒体に格納されているプログラムコード(中間コード)は、演算手段が実行可能な形式に変換可能なものであればよい。
【0107】
すなわち、プログラムコード(中間コード)は、所定の形式変換プログラムが、圧縮されたプログラムコードを解凍したり、符号化されたプログラムコードを復元したり、ソースコードをインタプリト、コンパイル、リンク、または、実メモリへ配置したりすることによって、あるいはこれらの処理を組み合わせて実行することによって、演算手段が実行可能な形式に変換されるものであればよい。これにより、スパイクソーティングプログラムを記録媒体に格納する際の格納形式にかかわらず、同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、スパイクソーティング装置において、脳神経活動だけで機械を操作する最新技術である脳−機械インターフェース(Brain Machine Interface)作成の基礎技術となる。したがって、脊椎損傷によって四肢が不自由な患者などを対象とした、医療分野や介護分野に広く応用できる。また、脳の神経活動を解析するマルチニューロン活動記録の解析装置の製造にも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の一実施形態に係るスパイクソーティング装置の構成を示すブロック図である。
【図2】スパイクソーティング装置が処理する生波形データの取得に使用するドデカトロード20の一構成例を示す図である。
【図3】(a)は、スパイクソーティング装置が処理する生波形の一例を示す図であり、(b)は、(a)に示す生波形からスパイクソーティング装置が抽出する独立成分波形を示す図である。
【図4】スパイクソーティング装置における分離行列、無相関化行列、および独立成分波形の生成タイミングを示す図である。
【図5】スパイクソーティング装置が独立成分波形からタイムスタンプを抽出する例を示す図である。
【図6】(a)は、スパイクソーティング装置が処理した生波形の他の例を示す図であり、(b)は、(a)に示す生波形からスパイクソーティング装置が抽出した独立成分波形を示す図である。
【図7】記録電極の本数と、単一ニューロン活動波形の分離率との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0110】
1 スパイクソーティング装置
10 分離行列算出部(分離行列算出手段)
11 無相関化行列算出部(無相関化行列算出手段)
12 独立成分波形抽出部(単一ニューロン波形抽出手段)
13 タイムスタンプ抽出部(タイムスタンプ抽出手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録電極から構成される多点電極によって神経細胞から測定された複数の生波形から、単一ニューロン活動波形を分離するスパイクソーティング装置であって、
上記複数の生波形から、独立成分分析法にしたがい、単一ニューロン活動波形の分離に必要な分離行列を算出する分離行列算出手段と、
上記複数の生波形から、主成分分析法にしたがい、単一ニューロン活動波形の分離に必要な無相関化行列を算出する無相関化行列算出手段と、
上記分離行列および無相関化行列を使用することによって、上記複数の生波形から独立成分波形を単一ニューロン活動波形として抽出する単一ニューロン波形抽出手段とを備えており、
上記分離行列算出手段は、予め定められた単位時間が経過するたびに、上記複数の生波形よりも後に測定される他の複数の生波形から、新たな分離行列を算出し、
上記分離行列算出手段が上記新たな分離行列を算出したとき、上記単一ニューロン波形抽出手段は、当該新たな分離行列、および、上記無相関化行列を使用することによって、上記他の複数の生波形から新たな独立成分波形を新たな単一ニューロン活動波形として抽出することを特徴とするスパイクソーティング装置。
【請求項2】
上記複数の記録電極は少なくとも11本であることを特徴とする請求項1に記載のスパイクソーティング装置。
【請求項3】
上記無相関化行列算出手段は、予め定められた単位時間が経過するたびに、上記複数の生波形よりも後に測定される他の複数の生波形から、新たな無相関化行列を算出し、
上記無相関化行列算出手段が上記新たな無相関化行列を算出したとき、上記単一ニューロン波形抽出手段は、上記新たな分離行列、および、上記新たな無相関化行列を使用することによって、上記他の複数の生波形から新たな独立成分波形を新たな単一ニューロン活動波形として抽出することを特徴とする請求項1に記載のスパイクソーティング装置。
【請求項4】
複数の記録電極から構成される多点電極によって神経細胞から測定された複数の生波形を処理するスパイクソーティング装置において、単一ニューロン活動波形を分離するスパイクソーティング方法であって、
上記複数の生波形から、主成分分析法にしたがい、単一ニューロン活動波形の分離に必要な無相関化行列を算出する無相関化行列算出ステップと、
予め定められた単位時間が経過するたびに、上記複数の生波形よりも後に測定される他の複数の生波形から、独立成分分析法にしたがい、新たな分離行列を算出する分離行列算出ステップと、
上記算出される新たな分離行列、および、上記無相関化行列を使用することによって、上記他の複数の生波形から独立成分波形を単一ニューロン活動波形として抽出する単一ニューロン活動波形抽出ステップと、を含んでいることを特徴とするスパイクソーティング方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のスパイクソーティング装置を動作させるスパイクソーティングプログラムであって、コンピュータを上記の各手段として機能させるためのスパイクソーティングプログラム。
【請求項6】
請求項5に記載のスパイクソーティングプログラムを記録しているコンピュータ読み取り可能な記録媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−296509(P2006−296509A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−118969(P2005−118969)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】