説明

スパイラル型膜モジュール装置の目詰まり防止方法

【課題】 スパイラル型膜モジュール装置を備えた膜ろ過装置の目詰まりを防止する。
【解決手段】 膜ろ過装置は、原水Wを貯留した反応槽たる原水槽21内に凝集剤を注入して前記原水槽21内にて前記原水W中に含まれる懸濁物質をフロック化させる凝集手段と、この凝集手段の下流側に設けられたスパイラル型膜モジュール装置を備えた膜分離装置本体と、これら凝集手段及びスパイラル型膜モジュール装置とを連結する給液管路23とからなる。原水槽21に凝集センサ1を設け、前記原水W中のフロック間の空隙における濁度を連続的測定し、ここで得られた凝集状態に基づき膜ろ過装置を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパイラル型膜モジュール装置の目詰まりを防止する方法に関し、特に濁質の凝集状態を監視してスパイラル型膜モジュール装置の目詰まりを防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膜ろ過装置に用いられる膜モジュールとして、集水管の外周に分離膜を巻回したスパイラル型膜モジュールがある。このスパイラル型膜モジュールとしては、例えば特開平11−137975号に開示されているようなものがある。このスパイラル型膜モジュールは、図2に示すようにシャフト11の周りに袋状膜12をメッシュスペーサ13を介して巻き付けて円筒状の巻回体とし、この巻回体の後端面の外周側に透過水流出領域を内周側に濃縮水流出領域とをそれぞれ形成したものである(特許文献1参照)。
【0003】
図3は、このようなスパイラル型膜モジュールを用いた膜ろ過装置の通水系統図であり、反応槽たる原水槽21内の水がポンプ22及び給液管路23、開閉弁24を介して膜分離装置本体25に供給される。この膜分離装置本体25は、耐圧容器内にスパイラル型膜モジュールを挿入したものであり、透過水は透過水取出管路26から取り出され、濃縮水は濃縮水取出管路27から取り出される。
【特許文献1】特開平11−137975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図3に示す膜ろ過装置においては、原水槽21を反応槽として凝集剤を注入し、原水中に含まれる懸濁物質をフロック化して、ろ過に適した状態としているが、原水槽21における凝集が悪化すると、膜モジュールに目詰まりが生じる。そして、前述したようなスパイラル型膜モジュールを用いた場合、目詰まりが生じやすいばかりか目詰まりが進行すると、膜間差圧の増大により膜の破損に至ることがある。このため、特開平11−137975号公報では、図4に示すように該給液管路23から枝管28を分岐させ、該枝管28に調整弁29を設け、該給液管路23のうち該枝管28の分岐点よりも下流側に開閉弁24を設け、該開閉弁24よりも下流側の給液管路23の少なくとも一部をフレキシブルチューブ30とする膜ろ過装置が提案されている。
【0005】
この膜ろ過装置によりスパイラル型膜モジュールの目詰まりがかなり防止されるようになったが、上記装置は原水側の凝集状態を監視するものではないため、原水側の凝集状態が大きく悪化した場合には対応しきれず、目詰まりを完全には防止できないという問題がある。そこで従来は原水を孔径8〜10μm程度の5Aろ紙でろ過した後、このろ液100mLを孔径0.45μmのフィルターでろ過した時の最初の500mLのろ過時間をT1、残りの500mLのろ過時間をT2とした時のMFF値=T2/T1に基づき、この値が所定の値よりも大きくなったら、原水の凝集状態が悪化したと判断して、原水槽21から膜分離装置本体25への給水を停止するなどしていた。
【0006】
しかしながら、このようなMFF値の測定(MFF測定)により凝集状態を監視していたのでは、凝集状態を連続的に監視することができないため、急激に凝集状態が悪化した場合には、これが看過されてしまい、目詰まりによるスパイラル型膜モジュールの破断を完全には防止できないという問題点があった。
【0007】
本発明は、このようなスパイラル型膜モジュール装置の目詰まりを防止する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1に本発明は、原水を貯留した反応槽内に凝集剤を注入して前記反応槽内にて前記原水中に含まれる懸濁物質をフロック化させる凝集手段と、この凝集手段の下流側に設けられたスパイラル型膜モジュール装置と、これら凝集手段及びスパイラル型膜モジュール装置とを連結する給液管路とからなる膜ろ過装置において、前記反応槽の内部または前記給液管路に凝集センサを設け、前記原水中のフロック間の空隙における濁度を連続的測定し、ここで得られた凝集状態に基づき膜ろ過装置を制御するスパイラル型膜モジュールの目詰まり防止方法を提供する(請求項1)。これにより従来は原水の凝集状態を所定の時間ごとにスポット的に測定していたが、凝集センサを用いることにより連続的に凝集状態を監視することができるので、凝集不良の原水がスパイラル型膜モジュール装置に供給されるのを防止することができる。
【0009】
また、第2に本発明は、前記凝集状態に異常が認められた場合には、前記反応槽と給液管路との間で原水を循環させるように制御するスパイラル型膜モジュールの目詰まり防止方法を提供する(請求項2)。これにより凝集センサにより凝集状態に異常が認められたら反応槽と給液管路との間で原水を循環させることによりスパイラル型膜モジュール装置への原水の供給が停止するので、凝集不良の原水がスパイラル型膜モジュール装置に供給されるのを防止することができる。
【0010】
さらに、第3に本発明は、前記凝集状態に異常が認められた場合には、前記スパイラル型膜モジュール装置の運転を停止するように制御するスパイラル型膜モジュールの目詰まり防止方法を提供する(請求項3)。これにより凝集センサにより凝集状態に異常が認められたらスパイラル型膜モジュールの運転を停止することで、凝集不良の原水がスパイラル型膜モジュール装置に供給されるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のスパイラル型膜モジュールの目詰まり防止方法によれば、原水の凝集状態を連続的に監視することができるので、凝集状態が悪化したら直ちにスパイラル型膜モジュール装置の運転を制御することができるので、スパイラル型膜モジュール装置に目詰まりが生じるのを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明のスパイラル型膜モジュールの目詰まり防止方法の一実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。図1は本実施形態のスパイラル型膜モジュールの目詰まり防止方法を適用可能な膜ろ過装置の凝集手段としての原水槽近傍を示す通水系統図であり、全体構成としては図4に示す膜ろ過装置において、フレキシブルチューブ30を有しない以外は同じであるので同一の構成には同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。同図において、反応槽たる原水槽21の下側にはポンプ22を備えた給液管路23が接続されており、該給液管路23の途中には枝管28を分岐させ、この枝管28に調整弁29を設けている。そして、この給液管路23のうち該枝管28の分岐点よりも下流側に開閉弁24を設け、該開閉弁24よりも下流側の給液管路23の下流側には、スパイラル型膜モジュールを備えた膜分離装置本体(図示せず)が連続している。
【0013】
上述したような膜ろ過装置において、原水槽21の上側には凝集センサ1と、攪拌機2と凝集剤注入路3とが設けられている一方、下側には原水ポンプ5を備えた原水供給管4が連結されている。
【0014】
そして、この凝集センサ1は測定部6と制御部7とを内蔵したコンピュータなどの情報処理装置に接続されており、この凝集センサ1は、例えば原水Wの中にレーザー光を放射し、このレーザーが原水Wの中の懸濁物質やフロックによって生じる散乱光を連続的に検出する。この散乱光は原水Wの濁度、すなわちフロックの部分を除く清澄度が高いほど散乱光の平均強度は低く検出されるので、測定部6は散乱光の平均強度が所定の値を超えたか否かで凝集状態の正常・異常を判断する。さらに、制御部7は、この測定部6における凝集状態の判断結果に基づき、開閉弁24及び調整弁29を制御できるようになっている。なお、この制御部7は、凝集剤注入機構(図示せず)や原水ポンプ5を制御可能としてもよい。
【0015】
前記構成につきその作用について説明する。まず、原水供給管4から原水槽21に原水Wを注入したら凝集剤注入路3から凝集剤を注入し、攪拌機2により原水槽21内を攪拌してフロックを形成する。そうしたら、凝集センサ1のレーザー光線により原水Wの中の懸濁物質やフロックによって生じる散乱光を連続的に検出する。
【0016】
そして、測定部6によりその散乱光の平均強度を判断し、凝集状態が正常、例えば、散乱光の平均強度が所定の値以下であれば、この判断結果に基づき制御部7は、開閉弁24及び調整弁29を制御する。すなわち、図1(a)に示すように開閉弁24を開成するとともに調整弁29を閉鎖するように制御することで、原水がポンプ22により給液管路23から膜分離装置本体(図示せず)に供給され、スパイラル型膜モジュールによる膜分離が行われる。
【0017】
一方、凝集状態が異常、例えば、散乱光の平均強度が所定の値を超えるものであれば、この判断結果に基づき制御部7は、図1(b)に示すように開閉弁24を閉鎖するとともに調整弁29を開成するように制御することで、原水は給液管路23から枝管28の経路を循環するようになり、膜分離装置本体(図示せず)には供給されない。これにより凝集状態が悪くなった時点で、膜分離装置本体への原水の供給がストップするので、スパイラル型膜モジュールの目詰まりを未然に防止することができるようになっている。
【0018】
上述したとおり本実施形態によれば、原水Wを貯留した反応槽たる原水槽21内に凝集剤を注入して上記原水槽21内にて前記原水W中に含まれる懸濁物質をフロック化させる凝集手段と、この凝集手段の下流側に設けられたスパイラル型膜モジュール装置を備えた膜分離装置本体と、これら凝集手段及びスパイラル型膜モジュール装置とを連結する給液管路23とからなる膜ろ過装置において、前記原水槽21に凝集センサ1を設け、前記原水W中のフロック間の空隙における濁度を連続的測定し、ここで得られた凝集状態に基づき膜ろ過装置を制御しているので、原水槽21での凝集状態を連続的に監視することができるので、凝集不良の原水Wがスパイラル型膜モジュール装置を備えた膜分離装置本体に供給されるのを防止することができ、これによりスパイラル型膜モジュール装置の目詰まりを未然に防止することが可能となる。具体的には、凝集センサ1による凝集状態の検出に異常が認められた場合には、給液管路23と枝管28とに設けた開閉弁24及び調整弁29を制御することにより、原水槽21と給液管路23との間で原水を循環させるように制御する。
【0019】
以上本発明について前述した実施形態に基づいて説明してきたが、本発明はこの実施形態に限るものではなく、例えば凝集センサは原水槽21でなく給液管路23の基端部に設けて同様の制御を行ってもよい。また、制御についても凝集不良の原水がスパイラル型膜モジュール装置に供給されなければよく、凝集状態に異常が認められた場合には、前記スパイラル型膜モジュール装置の運転を停止したり、ポンプ22を停止したりするだけでもある程度の効果が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明のスパイラル型膜モジュール装置の目詰まり防止方法によれば、凝集状態が悪化したら直ちにスパイラル型膜モジュール装置の運転を制御することでスパイラル型膜モジュール装置の目詰まりを確実に防止することができるので、スパイラル型膜モジュール装置の膜破断の故障の生じにくい膜ろ過装置とすることができて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態によるスパイラル型膜モジュール装置の目詰まり防止方法の反応槽における通水系統を示す要部概略構成図であり、(a)は凝集正常状態の制御を、(b)は凝集異常状態の制御をそれぞれ示す。
【図2】スパイラル型膜モジュール装置の一例を示す断面図である。
【図3】従来のスパイラル型膜モジュール装置を備えた膜ろ過装置の一例を示す通水系統図である。
【図4】従来のスパイラル型膜モジュール装置を備えた膜ろ過装置の他の例を示す通水系統図である。
【符号の説明】
【0022】
1…凝集センサ
2…攪拌機(凝集手段)
3…凝集剤注入路(凝集手段)
6…測定部
7…制御部
21…反応槽(凝集手段)
25…膜分離装置本体
28…枝管
W…原水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を貯留した反応槽内に凝集剤を注入して前記反応槽内にて前記原水中に含まれる懸濁物質をフロック化させる凝集手段と、この凝集手段の下流側に設けられたスパイラル型膜モジュール装置と、これら凝集手段及びスパイラル型膜モジュール装置とを連結する給液管路とからなる膜ろ過装置におけるスパイラル型膜モジュールの目詰まり防止方法であって、
前記反応槽の内部または前記給液管路に凝集センサを設け、前記原水中のフロック間の空隙における濁度を連続的測定し、ここで得られた凝集状態に基づき膜ろ過装置を制御することを特徴とするスパイラル型膜モジュール装置の目詰まり防止方法。
【請求項2】
前記凝集状態に異常が認められた場合には、前記反応槽と給液管路との間で原水を循環させるように制御することを特徴とする請求項1に記載のスパイラル型膜モジュール装置の目詰まり防止方法。
【請求項3】
前記凝集状態に異常が認められた場合には、前記スパイラル型膜モジュール装置の運転を停止するように制御することを特徴とする請求項1に記載のスパイラル型膜モジュール装置の目詰まり防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−255670(P2006−255670A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−80511(P2005−80511)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】