説明

スパーク放電発光分析による金属試料の厚み方向成分濃度評価方法

【課題】スパーク放電発光分析法を用いて金属試料の板厚断面の成分濃度を迅速かつ正確に評価する方法を提供する。
【解決手段】測定対象物である金属試料の表面を予め傾斜研磨加工した後、スパーク放電発光分析法を用いて該金属試料の厚みが薄くなる表面傾斜方向にそって隣接する分析点同士が重畳しないように分析点を移動させつつ、各分析点から得られる発光スペクトルを分光分析し、特定成分に対応する波長の発光強度から金属試料の各厚みに対応する特定成分の濃度を求めることを特徴とするスパーク放電発光分析による金属試料の厚み方向成分濃度評価方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属試料の厚み方向の成分濃度変化を評価する方法に関し、より詳しくは、スパーク放電発光分析を用いて迅速かつ正確に金属試料の厚み方向の成分濃度変化を評価する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼等の金属材料は、製鋼工程で成分を調整した後、熱延処理、冷延処理、焼鈍処理、表面処理等を経て最終製品としての性能、形状に仕上げて出荷される。この中で焼鈍処理過程に代表される熱処理工程においては、金属材料に含まれる成分元素は、様々な形態に変化し、最終製品の特性に影響する。例えば、酸に可溶で母材金属元素中に均一に固溶分散している鋼中のTi等の成分元素を用いてCをTiC析出物の形で固定し、加工特性や強度を向上させるIF鋼や、MnSやAlN等をインヒビターとして結晶粒の成長制御に使用する電磁鋼のように、鋼中の成分元素の析出形態や濃度分布は、最終的な製品特性を決めるうえで重要である。
【0003】
特に薄板製品では、目的とする析出物を析出させ、結晶粒の大きさを制御するための、圧延処理及び熱処理、又は、表面にめっき層を付与したりする各種表面処理等を行う工程において、薄板の板厚断面中に各種成分元素の濃度勾配が発生し、これにより最終製品の品質に影響が生じる。そのため、薄板の板厚断面における成分元素の濃度勾配を評価することは、プロセスコントロール条件の最適化等の製造及び品質管理上重要となってくる。このため、最終的な製品特性に影響を及ぼす成分元素を分別、定量し、これらの成分元素の析出状態と濃度分布を、製造条件を制御することにより最終的な製品特性を最適化させる必要がある。
【0004】
従来、金属薄板の板厚断面の成分元素濃度の分布を測定する方法については、主として段削り化学分析法が用いられている。この方法は、図1に示すように金属薄板の表面から所定厚さまでを薬品により溶解させ(これを化学的段削りということもある)、この溶解処理を逐次実施して、溶解後の板厚の異なる複数の試料を作成する。これらの板厚の異なる試料を化学的に溶解せしめた溶液を、それぞれICP発光分光分析法や、ケルダール蒸留法を用いて各種金属元素やN等の非金属元素等を分析し、これらの板厚の異なる複数試料間の溶解溶液中の成分濃度の差から金属薄板の板厚方向の濃度分布を求めることができる。このような化学分析法は、成分濃度の測定絶対値として高い定量精度を持つ方法であるが、溶解処理により板厚の異なる複数の試料を作成するため、貴重な試料を大量に消費し、1回の分析で1点の分析値しかデータが取れないため、測定データが出るまでの時間が1成分元素当たり1週間と非常に長く、コスト的にも非常に高価となるという不都合があった。
【0005】
一方、試料表面及び板厚断面の成分濃度分析法としては、グロー放電スペクトロメトリー(GDS)、X線光電子スペクトロメトリー(XPS)、二次イオン質量スペクトロメトリー(SIMS)、電子線プローブX線微小領域分析装置(EPMA)、オージェ電子スペクトロメトリー(AES)等が知られている(例えば、非特許文献1、特許文献2参照)。しかしながら、対象とする実際の金属試料の厚さが、数mmから0.2mmという金属薄板の板厚断面の成分濃度変化を測定する場合には、上記従来方法では、
1) 対象範囲に対して測定領域(数nm〜数十μm)が狭すぎる、
2) SIMSを除き、微量(<0.1%)の成分分析は不可能、
3) 多元素同時に測定できる元素数が少ない、
4) 試料調製、測定、評価に時間がかかる、
5) 測定装置本体、測定料金が非常に高価である、
等の実用上の問題点があった。
【0006】
これらの従来の分析方法の問題点に鑑みて、本発明者は、スパーク放電発光分析法を用いて、金属試料に多数回のスパーク放電を行い、得られた発光スペクトルの内、特に発光初期の数百パルスを解析することにより、所定の式に従って介在物等の存在個数、粒径、含有量、又は平均粒径を求めることができる方法を提案した(例えば、特許文献1参照)。
また、本発明者は、上記スパーク放電発光分析において、介在物は選択放電を受けた後に、イオン化、原子化して発光に寄与するものの、母材に微細分散化していくことも確認した(例えば、特許文献3参照)。即ち、金属試料のスパーク放電発光分析におけるスパーク放電初期は、介在物が選択放電を受けて高いスペクトル線強度を与えるが、数百パルス以降になると、金属薄板の表層に存在していた介在物等の殆どは選択放電を受けて溶融、凝固を繰り返すことにより、母材に微細分散化していく。この結果、スパーク放電回数が数百パルス以降では、このようなスパーク放電時の成分元素の放電ミキシング現象により、金属試料の板厚方向の空間分解能が悪化し、金属試料の板厚断面の成分濃度を評価するためには測定精度上の課題が残されていた。
【0007】
【非特許文献1】氏平祐輔、昭晃堂、「化学分析」、1993年、254頁
【特許文献1】特開平4-238250号公報
【特許文献2】特開平11-160257号公報
【特許文献3】特開平2004-163400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、従来技術の上記のような問題に鑑みて、スパーク放電発光分析法を用いて金属試料の板厚断面の成分濃度を迅速かつ正確に評価する方法を提供することを目的とするものである。また、本発明は、スパーク放電発光分析法を用いて金属試料の板厚断面の成分濃度の測定分解能を向上させための傾斜研磨加工を用いた金属試料の作成方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するものであり、その発明の要旨は以下の通りである。
(1) 測定対象物である金属試料の表面を予め傾斜研磨加工した後、スパーク放電発光分析法を用いて該金属試料の厚みが薄くなる表面傾斜方向にそって隣接する分析点同士が重畳しないように分析点を移動させつつ、各分析点から得られる発光スペクトルを分光分析し、特定成分に対応する波長の発光強度から金属試料の各厚みに対応する特定成分の濃度を求めることを特徴とするスパーク放電発光分析による金属試料の厚み方向成分濃度評価方法。
(2) 前記金属試料の試料台上の固定位置を水平方向に移動させることにより、該金属試料表面の分析点を移動させることを特徴とする上記(1)に記載のスパーク放電発光分析による金属試料の厚み方向成分濃度評価方法。
(3) 前記分析点当りのスパーク放電回数は10〜2000回とし、該分析点から得られる各発光スペクトルの特定成分に対応する波長の発光強度の平均値から、該分析点に対応する金属試料の厚みにおける特定成分の濃度を求めることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のスパーク放電発光分析による金属試料の厚み方向成分濃度評価方法。
(4) 前記分析点当りのスパーク放電周波数は500Hz以下とし、該分析点から得られる各発光スペクトルの特定成分に対応する波長の発光強度の平均値から、該分析点に対応する金属試料の厚みにおける特定成分の濃度を求めることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のスパーク放電発光分析による金属試料の厚み方向成分濃度評価方法。
(5) 前記スパーク放電周波数が100Hz以下であることを特徴とする(4)に記載のスパーク放電発光分析による金属試料の厚み方向成分濃度評価方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スパーク放電発光分析において、予め金属試料の板厚が徐々に薄くなるように、金属試料表面を傾斜研磨等により試料裏面に対して傾斜させ、この試料の表面傾斜方向に分析点を移動させながら発光スペクトルを測定することで、従来の化学分析法に比べて短い分析時間で迅速に、かつ高い精度での板厚方向の成分濃度分析を多元素同時に実行できる。
本発明法を、例えば、鉄鋼等の薄板製造工程における焼鈍過程における各種成分元素の侵入、濃化、純化等の金属薄板の板厚断面における成分濃度変化の評価に適用することで、製品の品質を迅速かつ正確に評価し、その結果を基に製品の製造工程条件の適正な制御を行うことが可能となり、産業上において極めて価値の高い発明である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明においてスパーク放電発光分析対象とされる金属試料は、各種金属製品の製造工程から製品品質評価のために分取された金属材料であるが、本発明では、特に板厚が0.2〜5mm程度の金属試料の板厚断面濃度分布の測定を好ましい対象とする。金属試料の金属としては、純鉄、鉄鋼、アルミニウム、銅、チタン、ステンレス鋼、シリコンウエハー、インジュウム等、特に限定されない。
また、金属試料の中で、薄板製品を製造した後、さらに、薄板表面に各種の表面処理材、例えば焼鈍分離材のように薄板表面に薬品を塗布し熱処理により表面に化学的にグラス皮膜を形成させた薄鋼板や、薄板表面に電気的又は化学的めっき表面処理等を施した表面処理鋼板も本発明の対象となる。
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
本発明における金属試料の厚み方向の特定成分濃度の評価は、測定対象物である金属試料の表面を予め傾斜研磨した後、スパーク放電発光分析法を用いて該金属試料の厚みが薄くなる表面傾斜方向に沿って隣接する分析点同士が重畳しないように分析点を移動させつつ、各分析点から得られる発光スペクトルを分光分析し、特定成分に対応する波長の発光強度から金属試料の各厚みに対応する特定成分の濃度を求めることを特徴とする。
【0013】
図2に平面研削盤を用いて測定対象物である金属試料の表面を傾斜研磨する方法の実施形態の一例を示す。なお、以下の説明で定盤表面(加工前の試料表面と平行)上の2次元方向をX方向、Y方向とし、試料表面の傾斜方向をX方向とし、X方向と垂直な方向をY方向とし、また、定盤表面の法線方向をZ方向とする。
【0014】
本発明において金属試料の傾斜研磨を行う方法としては、図2に示すように、例えば、数値制御(NC)平面研削盤と金属試料2の傾きを調節するための調整台5を用いて行える。通常、数値制御(NC)平面研削盤は、金属試料の平均厚みが均一になるように平面研削するために用いられ定盤の上に金属試料を磁力で固定する。切削条件を設定するために、事前に研削砥石1と金属試料2との間隔(Z方向)をμm単位で測定し、試料表面における平面研削砥石の稼動範囲(X方向、Y方向)を決定した後に、試料表層を定めた切削深さ分だけを回転砥石1で研磨しながら、試料2を平面研削することにより所望の厚みで金属試料を研磨加工することができる。
【0015】
本発明では、この数値制御(NC)平面研削盤を用いて、図2に示すように、調整台5により支え台3に固着された金属試料2を所定の傾きに調整して定盤4上に固定した後、上記のように研削砥石1を定盤面に水平なX軸及びY軸方向及び定盤4面に垂直なZ軸方向に移動させつつ金属試料表面を繰り返し研磨加工することで、金属試料の厚みが連続的に薄くなる表面が傾斜した金属試料2を得ることができる。
【0016】
なお、調整台5を用いて厚みが薄い金属試料2を傾けた状態で研磨加工する場合は、金属試料2の剛性が低いため試料2が容易にたわみ、平面研磨の精度が低下する恐れが生じる。このため、金属試料2の裏面と支え台3表面をスプレー糊や両面テープ又は磁力等を用いて固着させ、金属試料2の強度を補強することが好ましい。
また、板厚の異なる複数の金属試料2を傾斜研磨する場合には、金属試料2の板厚に応じて金属試料2の強度を補強するために複数の厚みの支え台3を作成することが好ましい。
【0017】
また、支え台3に固着された金属試料2を所定の傾きに調整するための調整台5としては、測定対象である金属試料の一部を切断して、調整台5として図2に示すように定盤4上に固定することにより、簡易に、測定対象である金属試料2の薄さ分だけ傾斜させることができる。なお、厚みが異なる支え台3を複数用意し、支え台3の厚みを調整することにより、金属試料2の傾きを調整することができる。
【0018】
上記傾斜研磨において金属試料2の表面傾斜方向における板厚の薄い方の端部(図2の金属試料2右端部)の厚みは、スパーク放電発光分析法により成分濃度を測定評価する際の目的とする金属試料2の板厚の範囲によって調節するのが好ましい。
ただし、上記傾斜研磨された金属試料2の板厚の薄い方の端部の厚みが過度に薄くなると、金属試料が脆弱化し、傾斜研磨後に金属試料2を支え台3から剥離する際に、変形や破損等が生じ金属試料2表面の平滑性が低下する結果、スパーク放電発光分析する際に金属試料2表面の分析点を不活性アルゴンガスでシーリングするのが不十分となり、発光不良が発生し易くなる。また、金属試料2の板厚の薄い方の端部の厚みが過度に薄くなると、スパーク放電発光分析する際にスパーク放電により金属試料2の裏面まで貫通し、酸化物や不純物成分等の影響が大きい試料裏面表層部の成分までミキシングされた分析情報となり、異常分析値を与える可能性も生じる。
【0019】
本発明者らの検討結果によれば、上記傾斜研磨において金属試料2の表面傾斜方向における板厚の薄い方の端部(図2の金属試料2右端部)の厚みを、上記傾斜研磨前の金属試料2の平均厚みの1/2以下とすることで、金属試料の板厚の薄い方の端部の強度低下に起因する金属試料表面の平滑性低下を防止でき、かつ、スパーク放電発光分析する際に金属試料2の裏面まで貫通することに起因する試料裏面表層部の成分のミキシングによる分析異常も防止できることを確認した。また、金属試料の板厚中心(1/2t)を基準として、その表面側とその裏面側の濃度分布がほぼ対象である金属試料の場合の、厚み方向の成分濃度は、スパーク放電発光分析により上記傾斜研磨前の金属試料の平均厚みの1/2までの最大深さの成分濃度を測定評価することにより、金属試料の板厚全体の濃度分布を安定して精度良くかつ迅速に評価することができる。
【0020】
以上の知見から、金属試料の板厚中心(1/2t)を基準として、その表面側とその裏面側の濃度分布がほぼ対象である金属試料の場合、本発明では、スパーク放電発光分析により金属試料の板厚全体の濃度分布を安定して精度良くかつ迅速に評価するために、上記傾斜研磨によって得られる金属試料の表面傾斜方向における薄い方の端部(図2の金属試料2右端部)の厚みが、上記傾斜研磨前の金属試料2の平均厚みの1/2以下となるようにするのが好ましい。
なお、本発明者らは、上記方法により、金属試料の強度及び平坦性を良好に維持しつつ、板厚0.5mmまでの板厚の薄い金属試料、更に板厚が薄い板厚0.2mmまでの薄板の金属試料を傾斜研磨加工することができ、この結果、スパーク放電発光分析により金属試料の板厚全体の濃度分布を安定して精度良くかつ迅速に評価できることを確認している。
【0021】
なお、上記傾斜研磨によって得られる金属試料の表面傾斜方向における板厚が薄い方の端部の厚みが、上記傾斜研磨前の金属試料の平均厚みの1/2以下になるように傾斜研磨する方法として、図2に示される調整台5の厚みを金属試料の平均厚みの1/2以上にすることにより、金属試料の傾きを調整し、望みの傾斜研磨を簡易な方法で実施することが可能となる。
また、鋼板表層部分に合金めっき層、ぶりき層等が施された金属試料の表面処理層と鉄鋼との界面までを分析したい場合には、表面処理層厚み範囲内の所望の研磨深さに相当する板厚のダミー板を設置することにより、望みの傾斜研磨を簡易な方法で実施することが可能となる。
【0022】
本発明は、一般に知られているスパーク放電発光分析法(例えば、アグネ「最新の鉄鋼状態分析」、1979年、107頁)を用いて金属試料表面の成分分析を行うことを前提とする。スパーク放電発光分析方法は、不活性雰囲気下で金属試料表面に対向する電極からパルス電圧を印加し、金属試料表面より噴出したベーパージェットがArイオンと衝突することによりスパーク放電プラズマを生成させ、そのスパーク放電発光の波長と強度及び放電の回数等から金属試料中の成分含有量や、介在物等及び可溶性物質を形態別に含有量を求めるものである。
図4を用いてスパーク放電発光分析法による金属試料の板厚方向の成分濃度分の測定、評価方法の実施形態の一例を説明する。
【0023】
図4は本発明の実施形態の一例としてスパーク放電発光分析装置を模式的に示す。
図4に示すように、上記傾斜研磨加工が施された金属試料、つまり、表面の傾斜方向に厚みが連続的に薄くなっている金属試料2を発光分光分析装置の試料台にセットする。望ましくはアルゴンガスのシーリング性能を高めて発光不良を防止するため金属試料2の上に板厚が充分に厚い平滑面を持つブロック試料で押さえると安定した放電を得ることができる。不活性ガス雰囲気下で、金属分析試料2と電極7との間に、放電装置8を用いて電圧を印加して当該分析点において1〜数千パルスまでスパーク放電を起こし、当該分析点から得られた各発光スペクトルは、集光レンズ9、スリット10を通して分光部30内に導かれ、回折格子11により分光される。分光スペクトル12を検出器13で特定成分に対応した波長毎に同時受光し、特定成分に対応した1パルス毎の発光スペクトル線強度を測光装置14及び演算処理装置15で一定時間積算した後、デジタル信号値に変換して測定する一定時間積分測光法を行う。
【0024】
1パルス毎の発光スペクトル強度の内、特定成分と同時に受光した母材成分、例えば、鉄鋼であれば鉄のスペクトル線強度が異常に弱い場合は、放電不良か、発光位置のずれ、又は、試料表面のクラック部等への放電不良であるので、これを除去するために、放電毎に母材成分強度をトリガーとして用いる内標準法を適用することで、発光不良データを適切にカットし、各成分の分析精度を向上させることができる。
【0025】
スパーク放電条件としては、ノーマルスパーク、アークライクスパーク、コンバインドスパーク等様々な条件があるが、目的とする元素を感度良く分析するのを判断基準として放電形態を選択するのは、通常のスパーク放電発光分析法における判断基準と同一である。
【0026】
通常のスパーク放電分光分析において、発光スペルトルを測定する前に、試料表面に付着した不純物を除去するために、予備放電が行なわれる。本発明では、試料表面が清浄であれば、予備放電は行う必要はない。通常のスパーク放電発光分析においては、予備放電回数を多くすれば放電が安定するが、上記傾斜研磨を施した金属試料の表面の成分分析の場合には、金属試料の最小板厚が1mmにも満たない場合は、無駄に予備放電回数を増加させても板厚を貫通させるだけで分析情報を得られなくなる可能性があるから、最高でも500パルスとし、できる限り少なく抑えることが望ましい。したがって、予備放電回数は、1分析点当たり、最低でゼロパルス、最高でも500パルスほどが望ましい。より好ましくは、50パルス以下に止めるのが良い。
【0027】
本発明では、上記傾斜研磨加工が施された金属試料表面の特定分析点のスパーク放電発光分析を行った後、金属試料の試料台のセット位置を変更し、当該金属試料の厚みが薄くなる表面傾斜方向にそって隣接する分析点同士が重畳しないように分析点を移動させた後、上記と同様なスパーク放電発光分析を行うことを順次繰り返すことにより、金属試料の各厚みに対応する特定成分の濃度を求めることができる。
金属試料表面の分析点を移動する際に、隣接する分析点同士が重畳しないようにすることによって、スパーク放電発光による隣接する分析点同士の特定成分が選択放電を受けて溶融、凝固を繰り返すことにより、母材に微細分散化していくミキシング現象は防止でき、これによる金属試料の各厚みに対応する特定成分濃度の測定精度の低下を防止し、金属試料の厚み方向で測定分解能が高い成分濃度の測定が可能となる。
【0028】
また、各分析点当りのスパーク放電回数についても、スパーク放電回数の増加に伴い、金属試料の板厚方向の成分のミキシングが発生し、板厚方向の分解能が低下し易くなるため、スパーク放電発光分析による金属試料の板厚方向の分解能を向上させるために、できる限り少なくした方が望ましい。スパーク放電回数(以下、放電パルス数と言うこともある)としては、1分析点当たり、最低で10パルスから最高でも2000パルス相当が望ましい。10パルス以下においては放電初期に発生し易い介在物選択放電現象等により強度変動が激しく、安定性の良い分析結果を得ることが難しい。また2000パルス以上の放電を実施すると、通常のスパーク放電においては試料表面から20〜50μmの深さ範囲がスパッタリングされるため、金属試料の板厚方向の成分濃度の測定分解能が悪化していくこととなる。より好ましくは、スパーク放電回数を500〜1200パルスほどに抑えることにより、深さ方向分解能と分析値の安定性を両立することが可能となる最適点を与えることができる。
【0029】
また、各分析点当たりのスパーク放電周波数についても、スパーク放電周波数の増加に伴い単位時間当たりに放電で発生する熱量を試料上部に設置するブロック試料で抜熱するのが間に合わなくなり、金属試料の板厚方向の成分のミキシングが発生し、板厚方向の分解能が低下したり、溶融による板厚貫通が発生し易くなるため、スパーク放電発光分析による金属試料の板厚方向の分解能向上と溶融による板厚貫通防止のために、できる限りスパーク放電周波数は少なくした方が望ましい。スパーク放電周波数としては、通常のスパーク放電発光分析装置では、主な放電周波数として100、200、333、500Hzの中から選択する型式が多いが500Hz以下であることが望ましい。スパーク放電周波数500Hz超においては放電時に発生する熱量を分析する試料の上に設置するブロック試料で抜熱するのが間に合わず、金属試料の板厚方向の成分のミキシングが発生し易い。またスパーク放電の型式として、通常のノーマルスパーク条件から、更に電圧、電流等を大きくするハイパワースパーク放電型式等を用いて、C、N、S、O、P等軽元素をより高感度に分析する場合には、好ましくは、スパーク放電周波数を100Hz以下に抑えることにより、深さ方向分解能と分析値の安定性を両立することが可能となる最適点を与えることができる。
【0030】
本発明のスパーク放電発光分析を用いた金属試料の板厚断面の成分濃度分析法及びこれに適した傾斜研磨加工を施した金属試料により、従来の化学分析法や、従来の表面及び断面分析法と比較して、
[1] 広い測定領域(薄さ200μm〜500μm)における濃度分布を得ることができる、
[2] Al、Ti等の金属元素はもとより、C、N、S等の軽元素も高感度に検出できる、
[3] 多元素を同一箇所で同時に測定できる、
[4] 試料調製、測定、評価にかかる時間が数時間以内と非常に迅速である、
[5] 測定装置は汎用的に金属精錬業に置かれているスパーク放電発光分析装置を利用できる、
[6] 従来の化学分析、表面分析法と比較して時間、精度、コスト全てに優っている、
等の利点があり、工業上の利用価値が非常に高い方法が提供できる。
【0031】
次に、本発明におけるアーク放電発光分析に適した金属試料の傾斜研磨加工(板厚断面研磨)を行う場合の好ましい研磨条件について図3を用いて説明する。
上述した通り、スパーク放電発光分析を用いて予め傾斜研磨加工が施された金属試料の板厚方向の成分元素濃度を測定する場合には、傾斜研磨加工が施された金属試料表面において隣接する分析点同士が重畳すると、スパーク放電発光による隣接する分析点同士の特定成分が選択放電を受けて溶融、凝固を繰り返すことにより、母材に微細分散化していくミキシング現象が発生し、金属試料の厚みに対応する特定成分濃度の測定分解能は低下する。そこで、金属試料の板厚方向の成分濃度の測定分解能を向上させるためには、傾斜研磨加工が施された金属試料表面において隣接する分析点同士が重畳しないようにすることが前提となる。
【0032】
スパーク放電の分析直径φ(mm)又は分析点数n(個)、及び、金属試料の最大研磨深さt(mm)が予め決められると、スパーク放電発光分析において目標とする測定分解能r(mm)を確保するための研磨条件、つまり、研磨長さL(傾斜面に沿う線分ACの長さ)(mm)又は傾斜角度θ(rad)の研磨条件を以下の<1>式を用いて決定できる。
図3において、金属試料(研磨加工前)の厚みd(mm)、金属試料の最大研磨深さ(研磨加工後)t(mm)の範囲を(d/2)≦t<d、目標とする金属試料の板厚方向の測定分解能rとする。なお、分析点数nは、研磨深さt及び板厚方向の測定分解能rの関係から、n=t/rで定義され、上記最大研磨深さtと上記測定分解能rが予め決められると決まる値である。
【0033】
この条件で、傾斜研磨加工後の金属試料表面の傾斜方向における隣接する分析点同士の放電直径φが重複しないような研磨長さL(傾斜面に沿う線分ACの長さ)(mm)は、下記<1>式の関係を満足する必要がある。
AC≧n×φ=(t×φ/r) ……… <1>
研磨加工後の最小研磨深さ位置A(研磨開始位置)の位置、及び、最大研磨深さ位置C点とし、C点に対応する研磨加工前の位置D点とすると、上記<1>式の研磨長さL(mm)は、図3における線分ACで示され、研磨加工後の傾斜角度θ(rad)は、線分ADとACがなす角度で示される。
また、研磨長さL(mm)は、傾斜角度θ(rad)及び最小研磨深さ位置A(研磨開始位置)の位置を変えることにより調整される。
sinθ=t/L≦(t/nφ) ……… <2>
θ≦asin{t/(nφ)} ……… .<3>
求めるADの長さは
L×cosθ≧nφ×cos{asin(t/nφ)} ……… <4>
なお、分析点数nは整数であるため、roundup(x,0)の関数を用いて整数に切り上げることで下記<5>式から分析点数nを求める。
n=roundup{n,0}=roundup{(t/r),0} ……… <5>
上記<5>式を上記<4>式に代入すると研磨長さLが決まる。
L×cosθ≧roundup{(tφ/r),0}×cos{asin(r/φ)} ……… <6>
本発明では、金属試料の板厚が0.2〜5mm程度と薄く、傾斜研磨加工の傾斜角は小さいため(θ→0)、cosθ→1となり、下記<7>式で近似できる。
L≧n×φ=(t×φ/r) ……… <7>
【0034】
以上から、スパーク放電発光分析において目標とする測定分解能r(mm)を確保するための研磨条件として、上記<7>式を満足するように、金属試料の傾斜研磨加工における研磨長さL(傾斜面に沿う線分ACの長さ)(mm)又は傾斜角度θ(rad)の条件を調整することが好ましい。
【0035】
上記<7>式を満足するように、金属試料の傾斜研磨加工における研磨長さL(傾斜面に沿う線分ACの長さ)(mm)又は傾斜角度θ(rad)の条件とは、例えば、板厚d=0.23mm、分析直径φ=5mm、研磨深さt=0.138mm(60%)、深さ方向の分解能r=10μm(t、rから分析点数n=14点となる)の場合は、上記<7>式の条件は、L≧70mmとなり、研磨長さLを70mm以上となるように金属試料を傾斜研磨加工することにより、スパーク放電発光分析において目標とする測定分解能r(mm)を確保することができる。
【0036】
また、同様に、板厚d=0.50mm、分析直径φ=5mm、研磨深さt=0.30mm、深さ方向の分解能10μm(t、rから分析点数n=30点となる)の場合は、上記<7>式の条件は、L≧150mmとなり、研磨長さLを150mm以上となるように金属試料を傾斜研磨加工することにより、スパーク放電発光分析において目標とする測定分解能r(mm)を確保することができる。
【0037】
上記の条件で傾斜研磨を施した試料をスパーク放電発光分析法に供する前には、試料支え台から傾斜研磨試料を丁寧に剥離させる必要がある。例えば、アルコール類や有機溶剤等を試料の縁にたらしてから、鋭利なカッター刃を試料と支え台の間隙に押し込んでいき、更にアルコール類や有機溶剤等の粘着物を溶解させる液体を試料と支え台の間隙にたらすことを繰り返せば、容易に試料を剥離させることが可能である。
得られた試料には、粘着物等が残存している可能性があるため、再度、アルコール類や有機溶剤等を用いて、試料全体をクリーニングして乾燥させることにより、軽元素(C、N、S)の汚染を防止することができる。
【0038】
なお試料板厚が充分に厚く、スパーク放電により板厚を貫通させる心配が無い場合には、試料支え台と密着したまま、分析に供することが可能であるが、スパーク放電により板厚を貫通することが考えられる場合には、貫通した際に、試料と支え台との間に存在する粘着物質が、軽元素への汚染要因となり、清浄な値を示さないことが危惧されるため、通常は、剥離することが望まれる。
【0039】
スパーク放電発光分析を行う際には、試料を試料置き台に静置してから、試料の上に板厚が充分に厚い平滑面を持つブロック試料を押さえ台として使用することが好ましい。これは、試料のまま放電を実施した場合、板厚が薄いが故に、貫通した場合には分析室内に空気巻き込みが発生して発光不良を起こすからである。また10mmから30mmほどの厚みのブロック試料、望ましくはCu等の熱伝導性の良い材質のブロック試料や冷却機構を持つブロック試料を用いることにより、傾斜研磨試料に加わるスパーク放電時の熱をブロック試料が抜熱してくれ、板厚方向への溶融進行を最低限に抑えて、板厚方向の分解能を向上してくれる効果や、傾斜研磨試料全体を平滑に、分析試料置き台に密着させることにより放電を行う分析室内のアルゴンが漏れて異常放電を起こすのを防止する役割ももつ。
【実施例】
【0040】
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例の条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0041】
(実施例1)
Si:3%、Mn:0.08%、S:0.03%鋼の表面にアルミナコーティングを焼付防止のため施し、1100℃で48時間焼鈍を実施した試料厚み0.5mmの試料を傾斜研磨した。
この時の板厚、研磨厚み、分解能の時の研磨条件を以下に示す。
板厚d=0.50mm、傾斜角度φ=5mm、研磨深さt=0.50mmの時、深さ方向の分解能40μm(t、rから分析点数n=13点となる)とし、研磨長さLは上記<7>式の条件を満足する条件、つまり、L≧65mm(<7>式)を満足する研磨長さL=65mmの条件で金属試料を研磨加工した。なお、この研磨条件では、研磨長さLと板厚dの比率(L/d)は130倍となる。
得られた傾斜研磨試料を、スパーク放電発光分析法を用いて、n=13点、放電直径5mmφで、傾斜研磨面を並列させて、各点でのS発光強度を得た。この場合、事前にS濃度が既知の標準試料を用いて、S濃度の検量線を作成しておき、得られたSの発光強度を検量線からS濃度に換算した。分析した点は、同じ研磨深さ位置で2回実施した。得られた結果を図5に示す。横軸に板厚、縦軸にS濃度をプロットした。その結果、焼鈍処理することにより硫黄が表層から純化されていく過程が明らかになった。
【0042】
試料に含まれる硫黄分は表層よりH2S等のガス体として消失することは、これまで数多くの実験より判明していたが、試料内部におけるS濃度分布については、理論計算の方が先行して、実際の分析値を正確に把握した実験結果は非常に少なかったが、本発明を用いることにより、迅速かつ精度良く、硫黄濃度分布を得ることが可能となった。
【0043】
(実施例2)
Si:3%、Mn:0.08%、S:0.03%鋼の表面にアルミナコーティングを焼付防止のため施し、1100℃で48時間焼鈍を実施した試料厚み0.23mmの試料を傾斜研磨した。
この時の板厚、研磨厚み、分解能の時の研磨条件を以下に示す。
板厚d=0.23mm、分析直径φ=5mm、研磨深さt=0.138mm(60%)、深さ方向の分解能=10μm以下、分析点数n=15点、研磨長さLを80mm以上となるように金属試料を傾斜研磨加工した。
得られた傾斜研磨試料を、スパーク放電発光分析法を用いて、分析点数n=15点、放電直径5mmφで、傾斜研磨面を並列させて、各点でのN発光強度を得た。この場合、Nを高感度に検出するために、スパーク放電条件はハイパワースパークを選択した。放電周波数を、通常の333Hzで実施すると、図6中段×に示すように、試料の上に設置するブロック試料による抜熱が間に合わず、500パルス放電で板厚を貫通してしまうため分析値を得ることができない。ハイパワースパークを止めて、通常のノーマルスパーク放電形態を通常の333Hzで実施すると、図6下段△に示すように板厚貫通は免れるが、目的とする軽元素Nの光発光強度は極端に弱くなり、100ppm以下の分析値を得ることは不可能となる。そこで、ハイパワースパーク放電形態かつ放電周波数を100Hzに選択すると、図6上段◎に示すように板厚貫通を防止すると共に、目的とするN元素からの発光をより強く得ることを両立できることを確認した。
【0044】
得られた結果を図7に示す。横軸に板厚、縦軸にN濃度をプロットした。その結果、焼鈍処理することにより表層からNが純化されていく過程が明らかになった。
試料に含まれるN分は表層よりガス体として消失することは、これまで数多くの実験より判明していたが、試料内部におけるN濃度分布については、理論計算の方が先行して、実際の分析値を正確に把握した実験結果は非常に少なかったが、本発明を用いることにより、迅速かつ精度良く、窒素濃度分布を得ることが可能となった。
【0045】
従来の化学分析法で、本発明と同様な深さ方向分解能を得るには、同一条件に試料調製した試料を10〜20枚と大量に用意して、厚み別に化学分析的に表層より溶解して、得られた溶液から元素を分析するか、残った試料を化学分析することにより分析しなければならない。そのために要する時間は、少なく見積もっても、約一週間から一ヶ月弱は必要となる。それと対比して、本発明法は、試料調製に要する時間は、約1時間で、スパーク放電発光分析に要する時間は、1分析点当たり約1分であり分析データの評価解析も含めても、約2時間弱で、全元素の濃度変化を正確かつ迅速に評価することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】従来技術における段削りによる化学分析的手法による鋼板内断面濃度の求め方を示す。
【図2】実施例におけるスパーク放電発光の用傾斜研磨試料と平面研削盤による傾斜研磨試料の作成法を示す。
【図3】金属試料を傾斜研磨するときにおける傾斜角度、発光分析面積、発光分析回数、研磨深さ、試料厚みの関係を説明した例を示す。
【図4】スパーク放電発光分析装置の模式図を示す。
【図5】実施例1における薄さ0.5mmの電磁鋼板を焼鈍してS分を表層から純化させた試料の断面におけるS濃度の変化を本発明により分析した例を示す。
【図6】実施例2における放電条件と放電周波数によるスパーク放電(QV)痕跡の例を示す。
【図7】実施例2における焼鈍した厚み0.23mmの試料の断面N濃度分布を放電周波数100Hzで分析した例を示す。
【符号の説明】
【0047】
1 研削砥石
2 試料
3 支え台
4 定盤
5 高さ調整台
6 切削代
7 電極
8 放電装置
9 集光レンズ
10 スリット
11 回折格子
12 分光スペクトル
13 検出器
14 測光装置
15 演算処理装置
20 発光部
30 分光部
40 データ処理部
A 研磨加工後の最小研磨深さ位置
B A点の裏面
C 研磨加工後の最大研磨深さ位置
D 研磨加工前のC点に対応する位置
E 板厚の中心線
L 研磨長さ(線分AC)
d 研磨加工前の金属試料の厚み(mm)(線分AB)
n 分析点数
r 板厚方向の測定分解能(mm)
t 最大研磨深さ(線分DC)
θ 研磨加工前の傾斜角度(線分ACと線分ADの角度)
φ スパーク放電の発光分析直径(mm)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物である金属試料の表面を予め傾斜研磨加工した後、スパーク放電発光分析法を用いて該金属試料の厚みが薄くなる表面傾斜方向にそって隣接する分析点同士が重畳しないように分析点を移動させつつ、各分析点から得られる発光スペクトルを分光分析し、特定成分に対応する波長の発光強度から金属試料の各厚みに対応する特定成分の濃度を求めることを特徴とするスパーク放電発光分析による金属試料の厚み方向成分濃度評価方法。
【請求項2】
前記金属試料の試料台上の固定位置を水平方向に移動させることにより、該金属試料表面の分析点を移動させることを特徴とする請求項1に記載のスパーク放電発光分析による金属試料の厚み方向成分濃度評価方法。
【請求項3】
前記分析点当りのスパーク放電回数は10〜2000回とし、該分析点から得られる各発光スペクトルの特定成分に対応する波長の発光強度の平均値から、該分析点に対応する金属試料の厚みにおける特定成分の濃度を求めることを特徴とする請求項1又は2に記載のスパーク放電発光分析による金属試料の厚み方向成分濃度評価方法。
【請求項4】
前記分析点当りのスパーク放電周波数は500Hz以下とし、該分析点から得られる各発光スペクトルの特定成分に対応する波長の発光強度の平均値から、該分析点に対応する金属試料の厚みにおける特定成分の濃度を求めることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスパーク放電発光分析による金属試料の厚み方向成分濃度評価方法。
【請求項5】
前記スパーク放電周波数が100Hz以下であることを特徴とする請求項4に記載のスパーク放電発光分析による金属試料の厚み方向成分濃度評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−256256(P2007−256256A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289039(P2006−289039)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】