説明

スピロフロピリジンアリール誘導体

式(I)の化合物;及びそれらの製薬上許容される塩(ここで、Arは式(II)又は(III)の部分であり;そしてA、B及びR1は明細書で定義したとおりである)、このような化合物を含む組成物、並びにこのような化合物の使用及び治療に使用するための組成物。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニコチン性アセチルコリン受容体のための新規なスピロフロピリジンアリールリガンド及び治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ニコチン性アセチルコリン受容体に結合する化合物を、低下したコリン作動性機能を伴うある範囲の障害、例えばアルツハイマー病、認識又は注意障害、不安症、うつ病、禁煙、神経保護、統合失調症、無痛覚症、トゥーレット症候群及びパーキンソン病の治療のために使用することは、McDonald et al., (1995) “Nicotinic Acetylcholine Receptors: Molecular Biology, Chemistry and Pharmacology”, Chapter 5 in Annual Reports in Medicinal Chemistry, vol. 30, pp. 41-50, Academic Press Inc., San Diego, CA; Williams et al., (1994) “Neuronal Nicotinic Acetylcholine Receptors,” Drug News & Perspectives, vol. 7, pp. 205-223; Holladay et al. (1997) J. Med. Chem. 40(26), 4169-4194; Arneric and Brioni (Eds.) (1998) “Neuronal Nicotinic Receptors: Pharmacology and Therapeutic Opportunities”, John Wiley & Sons, New York; Levin (Ed.) (2001) “Nicotinic Receptors in the Nervous System” CRC Pressで論じられている。
【0003】
ニコチン性アセチルコリン受容体に結合する化合物、及び特にアルファ−7ニコチン性アセチルコリン受容体に結合するものは、低下したコリン作動性機能を伴うある範囲の障害、例えばアルツハイマー病、認識又は注意障害、不安症、うつ病、統合失調症、無痛覚症、トゥーレット症候群及びパーキンソン病の治療のために有用である。このような化合物はまた、禁煙の誘導に有用であり、そして神経保護作用がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、ニコチン性アセチルコリン受容体(“nAChR”)において活性を有するスピロフロピリジンアリール誘導体を包含する。本発明のスピロフロピリジンアリール誘導体は、式Iで表される化合物:
【化1】

及びその製薬上許容される塩であり、式中:
Arは、式II又はIIIの部分:
【化2】

であり、
Aは、O又はSであり;
Bは、1個又は2個存在するN、およびその他の全てに存在するCR1であり;
1は、存在するごとに独立して、水素、−R2、−C2−C6アルケニル、−C2−C6アルキニル、ハロゲン、−CN、−NO2、−NR34又は−OR5であり;
2は、直鎖状、分枝鎖状又は環状の非置換C1−C6アルキル基、又は1個、2個、3個、4個又は5個のハロゲン原子で置換され、且つ−C2−C6アルケニル、−C2−C6アルキニル、−CN、−NR34又は−OR5から選択される1個又は2個の置換基で置換された直鎖状、分枝鎖状又は環状のC1−C6アルキル基であり;
3及びR4は、存在するごとに独立して、水素、R5、又は組み合わされて−NR34に存在する場合においては、−(CH2)pJ(CH2)q−であり、ここで、JはO、S、NH、NR5又は結合であり;
5は、直鎖状、分枝鎖状又は環状の非置換C1−C6アルキル基、又は1個、2個、3個、4個又は5個のハロゲン原子で置換された直鎖状、分枝鎖状又は環状のC1−C6アルキル基であり;
pは、存在するごとに、2、3又は4であり;そして
qは、存在するごとに、0、1又は2である。
【0005】
本発明はまた、スピロフロピリジンアリール誘導体のエナンチオマー、インビボ加水分解性前駆体及び製薬上許容される塩、それらを含有する医薬組成物及び製剤、それらを単独で又は他の治療活性化合物又は物質と組み合わせて使用して疾患及び症状を治療する方法、それらの製造に使用される方法及び中間体、医薬としてのそれらの使用、医薬の製造におけるそれらの使用、並びに診断及び分析目的のためのそれらの使用を包含する。
【0006】
〔発明の詳細な説明〕
一つの態様において、本発明は、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)のための強力なリガンドである化合物を含む。
【0007】
本発明の化合物は、式Iで表される化合物:
【化3】

及びその製薬上許容される塩であり、式中:
Arは、式II又はIIIの部分:
【化4】

であり、
Aは、O又はSであり;
Bは、1個又は2個存在するN、およびその他の全てに存在するCR1であり;
1は、存在するごとに独立して、水素、−R2、−C2−C6アルケニル、−C2−C6アルキニル、ハロゲン、−CN、−NO2、−NR34又は−OR5であり;
2は、直鎖状、分枝鎖状又は環状の非置換C1−C6アルキル基、又は1個、2個、3個、4個又は5個のハロゲン原子で置換され、且つ−C2−C6アルケニル、−C2−C6アルキニル、−CN、−NR34又は−OR5から選択される1個又は2個の置換基で置換された直鎖状、分枝鎖状又は環状のC1−C6アルキル基であり;
3及びR4は、存在するごとに独立して、水素、R5、又は組み合わされて−NR34に存在する場合においては、−(CH2)pJ(CH2)q−であり、ここで、JはO、S、NH、NR5又は結合であり;
5は、直鎖状、分枝鎖状又は環状の非置換C1−C6アルキル基、又は1個、2個、3個、4個又は5個のハロゲン原子で置換された直鎖状、分枝鎖状又は環状のC1−C6アルキル基であり;
pは、存在するごとに、2、3又は4であり;
qは、存在するごとに、0、1又は2である。
【0008】
本発明の特定の化合物は、Bが1個存在するN、および3個又は4個存在するR1が水素である化合物である。本発明の他の特定の化合物は、Bが2個存在するNであり、そして2個又は3個存在するR1が水素である化合物である。
本発明の他の特定の化合物は、Bが1個存在するNである化合物である。
本発明の他の特定の化合物は、Arが式IV:
【化5】

である化合物である。
本発明のさらなる特定の化合物は、AがOである化合物である。
【0009】
本発明の化合物は、
(2'R)−5' −(フロ[3,2−b]ピリジン−3−イル)スピロ{1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3,2'(3'H)−フロ[2,3−b]ピリジン};
(2'R)−5' −(フロ[3,2−c]ピリジン−3−イル)スピロ{1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3,2'(3'H)−フロ[2,3−b]ピリジン};
(2'R)−5' −(フロ[2,3−b]ピリジン−3−イル)スピロ{1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3,2'(3'H)−フロ[2,3−b]ピリジン};及び
(2'R)−5' −(フロ[2,3−c]ピリジン−3−イル)スピロ{1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3,2'(3'H)−フロ[2,3−b]ピリジン}
を包含する。
【0010】
本発明はまた、式Iの化合物、治療におけるそれらの使用及びそれらを含有する組成物に関する。
【0011】
本発明の別の態様は、1個又はそれ以上の原子が同一元素の放射性同位体で標識されている式Iの化合物に関する。本発明のこの態様の一つの実施形態において、式Iの化合物はトリチウムで標識されている。
【0012】
別の態様において、本発明は、ニコチン性アセチルコリン受容体の作用により仲介される疾患を治療するための式Iの化合物の使用に関する。本発明のこの態様の一つの実施形態は、α7ニコチン性アセチルコリン受容体の作用により仲介される疾患を治療するための式Iの化合物の使用に関する。本発明のこの態様の別の実施形態は、症状又は障害がアルツハイマー病、学習障害、認識障害、注意欠陥、記憶喪失、注意欠陥多動性障害である治療のための使用に関する。本発明のこの態様の別の実施形態は、障害が不安症、統合失調症又は躁病若しくはうつ病である治療のための使用に関する。本発明のこの態様の別の実施形態は、障害がパーキンソン病、ハンチントン病、トゥーレット症候群又はコリン作動性シナプスの損失が存在する神経変性性障害である治療のための使用に関する。
【0013】
本発明の別の態様は、α7ニコチン性受容体の活性化が有益であるヒトの疾患又は症状を治療又は予防するための医薬の製造における式Iの化合物の使用に関する。本発明のこの態様の一つの実施形態は、神経若しくは精神障害又は知能障害性疾患を治療又は予防するための医薬の製造における式Iの化合物の使用に関する。本発明のこの態様の別の実施形態は、時差ぼけを治療又は予防するための、禁煙を誘導するための、ニコチン含有生成物への暴露に起因するものを包含するニコチン中毒、渇望、疼痛を治療するための、及び潰瘍性結腸炎のための医薬の製造における式Iの化合物の使用に関する。
【0014】
本発明の別の態様は、式Iの化合物の治療有効量を投与することを含む、α7ニコチン性受容体の活性化が有益であるヒトの疾患又は症状の治療又は予防方法に関する。本発明のこの態様の一つの実施形態は、式Iの化合物の治療有効量を投与することを含む、神経若しくは精神障害又は知能障害性疾患の治療又は予防方法に関する。本発明のこの態様の別の実施形態は、障害がアルツハイマー病、学習障害、認識障害、注意欠陥、記憶喪失又は注意欠陥多動性障害である治療方法に関する。本発明のこの態様の別の実施形態は、障害がパーキンソン病、ハンチントン病、トゥーレット症候群又はコリン作動性シナプスの損失が存在する神経変性性障害である治療方法に関する。本発明のこの態様の別の実施形態は、障害が不安症、統合失調症又は躁病若しくはうつ病である治療方法に関する。本発明のこの態様のさらに別の実施形態は、式Iの化合物の治療有効量を投与することを含む、時差ぼけの治療又は予防方法、禁煙を誘導する治療方法、ニコチン中毒、渇望、疼痛及び潰瘍性結腸炎の治療方法に関する。
【0015】
本発明の別の態様は、式Iの化合物、及び製薬上許容される希釈剤又は担体を含む医薬組成物に関する。本発明のこの態様の別の実施形態は、α7ニコチン性受容体の活性化が有益であるヒトの疾患又は症状の治療又は予防に使用するための医薬組成物に関する。本発明のこの態様の別の実施形態は、精神障害又は知能障害性疾患の治療又は予防に使用するための医薬組成物に関する。本発明のこの態様の別の実施形態は、アルツハイマー病、学習障害、認識障害、注意欠陥、記憶喪失、注意欠陥多動性障害、不安症、統合失調症又は躁病若しくはうつ病、パーキンソン病、ハンチントン病、トゥーレット症候群、コリン作動性シナプスの損失が存在する神経変性性障害、時差ぼけの治療又は予防、禁煙の誘導、ニコチン含有生成物への暴露に起因するものを包含するニコチン中毒、渇望の治療、並びに疼痛及び潰瘍性結腸炎の治療に使用するための医薬組成物に関する。本発明のこの態様のさらに別の実施形態は、哺乳類、好ましくはヒトにおけるニコチン性アセチルコリン受容体神経伝達の機能不全に起因する本明細書に記載の症状又は疾患を治療又は予防するための、このような障害又は症状の治療又は予防に有効な量の式Iの化合物、そのエナンチオマー又はその製薬上許容される塩、及び製薬上許容される不活性担体を含む医薬組成物に関する。
【0016】
本明細書に記載の使用及び治療方法に関して、投与量は当然のことながら用いられる化合物、投与方式及び望まれる治療により変化するだろう。しかしながら、一般的に、本発明の化合物を動物の体重1kgあたり約0.1mg〜約20mgの1日用量で投与する場合に満足すべき結果が得られるだろう。このような用量は1日当たり1〜4回の分割用量で、又は持続放出形態で投与することができる。ヒトのためには、全1日用量は5mg〜1,400mg、より好ましくは10mg〜100mgの範囲にあり、そして経口投与に適する単位投与形態は、2mg〜1,400mgの化合物を、固体又は液体の製薬担体又は希釈剤と混合して含む。
【0017】
本明細書に記載する医薬組成物は、当然のことながら、用いられる化合物に応じて異なる量の化合物を含有するだろう。しかしながら、一般的に、組成は動物の体重1kgあたり約0.1mg〜約20mgを与えるだろう。このような用量は1日当たり1〜4回の分割用量で、又は持続放出形態で投与することができる。ヒトのためには、組成物は5mg〜1,400mg、より好ましくは10mg〜100mgの範囲の1日用量を与え、そして経口投与に適する単位投与形態は、2mg〜1,400mgの化合物を、固体又は液体の製薬担体、潤滑剤又は希釈剤と混合して含む。
【0018】
式Iの化合物又はそれらのエナンチオマー及びそれらの製薬上許容される塩は、そのままで、又は腸内又は非経口投与に適切な医薬調製物の形態で用いることができる。本発明のもう一つの態様によれば、80質量%未満、より好ましくは50質量%未満の本発明の化合物を、製薬上許容される不活性希釈剤又は担体と混合して含む医薬組成物が提供される。
【0019】
希釈剤及び担体の例は下記のものである:
− 錠剤及び糖衣錠のため:乳糖、澱粉、タルク、ステアリン酸;
− カプセルのため:酒石酸又は乳糖;
− 注射液のため:水、アルコール、グリセリン、植物油;
− 坐剤のため:天然又は硬化油又はワックス。
成分を混合することを含む、このような医薬組成物の製造方法も提供される。
【0020】
本発明のもう一つの態様は、以下に述べる疾患又は症状の一つを治療又は予防するための医薬の製造における、本発明に係る化合物、そのエナンチオマー又はその製薬上許容される塩の使用;及び本発明に係る化合物、そのエナンチオマー又はその製薬上許容される塩の治療有効量を患者に投与することを含む、上記の疾患又は症状の一つの治療又は予防方法である。
【0021】
本発明に係る化合物は、ニコチン性アセチルコリン受容体の作動剤である。理論により限定されるわけではないが、α7 nAChR(ニコチン性アセチルコリン受容体)サブタイプの作動剤は、精神障害及び知能障害性疾患の治療又は予防に有用であり、且つα4 nAChRサブタイプであるか又はその作動剤でもある化合物よりも有利であると考えられる。従って、α7 nAChRサブタイプに対して選択的である化合物が好ましい。本発明の化合物は、医薬として、特に精神障害及び知能障害性疾患の治療又は予防において適応される。精神障害の例は、統合失調症、躁病若しくはうつ病及び不安症を包含する。知能障害性疾患の例は、アルツハイマー病、学習障害、認識障害、注意欠陥、記憶喪失及び注意欠陥多動性障害を包含する。本発明の化合物はまた、疼痛(慢性疼痛を包含する)の治療、並びにパーキンソン病、ハンチントン病、トゥーレット症候群、及びコリン作動性シナプスの損失が存在する神経変性性障害の治療又は予防における鎮痛剤として有用である。本化合物はさらに、時差ぼけの治療又は予防のために、禁煙の誘導、渇望及びニコチン中毒(ニコチン含有生成物への暴露に起因するものを包含する)の治療又は予防のために適応される。
本発明に係る化合物は潰瘍性直腸炎の治療及び予防にも有用であると考えられる。
本明細書で用いられるように、「C1-6アルキル」という用語は、直鎖状、分枝状又は環状のC1-6アルキル基を指す。
【0022】
放射性標識された形態
本発明の別の態様は、本発明の化合物の放射性標識された形態に関する。受容体に強力且つ選択的に結合するこのような化合物は、放射能を検出するために、化合物とその受容体との相互作用の検出及び測定を可能にする高感度且つ定量的技術を利用できるので、有用である。
【0023】
受容体に結合する化合物を発見する一つの方法は、放射性標識された化合物が別の化合物で置換される程度を測定する結合アッセイを行うものである。従って、受容体に強力に結合する化合物の放射性標識された形態は、受容体に結合する新規な医薬用化合物をスクリーンするのに有用である。このような新規な医薬用化合物は、作動作用、部分的作動作用又は拮抗作用により受容体の活性を調節することができる。従って、本発明の化合物の放射性標識された形態は、ニコチン性受容体に結合する他の化合物を発見するためのスクリーンにおいて有用である。
【0024】
類似化合物が体内の局在受容体に結合する能力は、このような化合物をPET、SPECT及び同様のイメージング方法による原位置イメージングのために利用することを可能にする。PETイメージングは、陽電子放出同位体で標識されたトレーサー化合物を用いて行われる:Goodman, M. M. Clinical Positron Emission Tomography, Mosby Yearbook, 1992, K. F. Hubner et al., Chapter 14。大部分の生物学的標的には、殆どの同位体が適しない。炭素同位体、11CがPETに用いられているが、20.5分という短いその半減期は、迅速に合成及び精製できる化合物に対して、並びに前駆体11C出発材料が生成されるサイクロトロンに近似する設備に対して、その有用性を限定する。より高エネルギーの他の同位体は、よりいっそう短い半減期を有し、13Nは10分の半減期を有し、そして15Oは2分の半減期を有する。それにもかかわらず、PET研究は、Hubner, K. F.によりClinical Positron Emission Tomography, Mosby, Year Book, 1992, K. F. Hubner, et al., Chapter 2に記載されているように、これらの同位体を用いて行われている。[18F]−標識化合物がPET研究に用いられているが、それらの使用は、同位体の110分の半減期により限定される。最も著しくは、[18F]−フルオロデオキシグルコースは、グルコース代謝及び脳活動に関連するグルコース取り込みの局在化の研究に広く用いられている。[18F]−L−フルオロドーパ及び他のドーパミン受容体類似体もまた、ドーパミン受容体分布のマッピングに用いられている。
【0025】
SPECTイメージングは、高エネルギー光子(γ−放射体)を放射する同位体トレーサーを用いる。有用な同位体の範囲はPETよりも大きいが、SPECTはより低い三次元分解能を与える。それにもかかわらず、SPECTは類似の結合、局在化及びクリアランス速度に関する臨床的に重要な情報を得るために広く用いられる。SPECTイメージングに用いられる同位体は、123I、すなわち13.3時間の半減期を有するγ−放射体である。123Iで標識された化合物は製造場所から約1000マイルまで出荷できるか、又はこの同位体それ自体は現場合成のために運搬できる。同位体の放射の85%は159 KeV陽子であり、これは現在用いられているSPECT機器により容易に測定される。
【0026】
脳及び他の組織における受容体の正確な位置及び分布は、臨床研究者、臨床医及び診断医にとってますます興味深くなっている。減少したコリン作動性機能を伴う障害、例えばアルツハイマー病、認識又は注意障害、不安症、うつ病、禁煙、神経保護、統合失調症、無痛覚症、トゥーレット症候群及びパーキンソン病を有する個体の脳nAChRの分布は、これらの症状の分子基盤が発見されるにつれて、次第に興味深くなっている。脳及び他の組織におけるnAChRの正確な位置及び分布もまた、これらの症状の動物モデルの妥当性の評価において重要である。
【0027】
製造方法
式Iの化合物の合成に使用できる方法は、スキーム1で概説する方法を包含する。別に述べない限り、スキーム1のArは式Iについて上記で定義したとおりである。
【化6】

【0028】
式Iの化合物は、式V及びVIの化合物のクロスカップリング反応により得られ、ここで、X又はYの何れかは、Y又はXがそれぞれ有機金属基である場合には、ハロゲン又はOSO2CF3である。好適な有機金属基は、ボロン酸又はボロン酸エステル基、B(OH)2、B(OAlk)2、又はトリアルキルスタンニル基、SnAlk3を含み、ここで、Alkはアルキル基である。この反応は、好適な有機金属触媒及び溶剤の存在下に行われる。好適な有機金属触媒は、パラジウム(0)錯体、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、又はトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)と好適なトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシンリガンド、例えばトリフェニルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン又はトリフェニルアルシンとの組み合わせを包含する。好適な溶剤は、不活性エーテル溶剤、例えば1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン若しくは1,4−ジオキサン、又はアルコール、例えばエタノール、又はそれらの混合物を包含する。式V又はVIの化合物がボロン酸であるならば、他の試薬に加えて好適な塩基を存在させることが好ましい。好適な塩基は、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム及び水酸化バリウムを包含する。この反応は、0〜120℃の温度、好ましくは60〜120℃の温度で行われる。
【0029】
Xが有機金属基である式Vの化合物、又はYが有機金属基である式VIの化合物は、X又はYが適切に水素、ハロゲン又はOSO2CF3である相当する式の化合物から、好適な金属化又は交換方法により製造することができる。有機金属基がB(OH)2である化合物は、水素又はハロゲン基を有する好適な芳香族化合物から、相当するアリールリチウム又はアリールマグネシウム化合物に変換し、次いでトリアルキルボレートと反応させた後、生成したボレートエステルを加水分解することにより製造することができる。同様に、有機金属基がトリアルキルスタンニル基である化合物は、水素又はハロゲン基を有する好適な芳香族化合物から、相当するアリールリチウム又はアリールマグネシウム化合物に変換し、次いで適切なトリアルキルスタンニルハライドと反応させることにより製造することができる。アリールリチウム又はアリールマグネシウム化合物の生成は、好適な不活性溶剤、例えばテトラヒドロフランの中で行われる。別法として、有機金属基がB(OH)2である化合物は、ハロゲン又はOSO2CF3基を有する好適な芳香族化合物から、ビス(ピナコラート)ジボロン及び有機金属触媒と反応させ、次いで生成したボレートエステルを加水分解することにより製造することができる。該有機金属基がトリアルキルスタンニル基である化合物は、ハロゲン又はOSO2CF3基を有する好適な芳香族化合物から、好適な有機金属触媒の存在下に、適切なビス(トリアルキル錫)と反応させることにより製造することができる。この反応は、好適な不活性溶剤、例えばテトラヒドロフランの存在下に行われ、そして好適な有機金属触媒は、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)を包含する。この反応は、約0℃〜約150℃、好ましくは約20℃〜約100℃の温度で行われる。このような変換を行うための典型的な手順は当業者に公知であろう。
【0030】
X又はYが適切にOSO2CF3を示す式V又はVIの化合物は、X又はYがOHを示す式V又はVIの化合物から、塩基及び好適な溶剤の存在下に、トリフルオロメタンスルホン酸無水物又は他のトリフルオロメタンスルホニル化試薬と反応させることにより製造することができる。好適な塩基は、ピリジン及び2,6−ジ−t−ブチルピリジンを包含する。この反応は、好ましくは−78〜120℃の温度、最も好ましくは−78〜0℃の温度で行われる。
【0031】
式Vの化合物は、国際特許出願公開番号WO 99/03859に記載された方法により製造することができる。
【0032】
式VIの化合物は、本明細書に記載された方法により製造することができ、文献で公知であり、本明細書又は文献に記載された方法を合成有機化学の当業者により適応させた方法によって製造することができ、又は合成有機化学の当業者に公知であるか又は明らかである方法によって製造することができる。
【0033】
本発明の化合物の放射性標識された形態は、公知方法により放射性標識された出発材料を組み込むか、又はトリチウムの場合には水素をトリチウムで置換することにより合成される。公知方法は、(1)求電子ハロゲン化、次いでトリチウム源の存在下でのハロゲンの還元、これは例えばパラジウム触媒の存在下にトリチウムガスで水素化することによる、又は(2)トリチウムについての水素の交換、これはトリチウムガス及び有機金属(例えばパラジウム)触媒の存在下に行われる。
【0034】
必要に応じて、ヒドロキシ、アミノ又は他の反応性基は、Greene及びWutsにより標準テキスト“Protecting groups in Organic Synthesis”, 3rd Edition (1999)に記載されているように、保護基を用いて保護することができる。
上記の反応は、別に述べない限り、一般的に約1〜約3気圧の圧力、好ましくは周囲気圧(約1気圧)で行われる。
別に述べない限り、上記の反応は、不活性雰囲気下、好ましくは窒素雰囲気下で行われる。
本発明の化合物及び中間体は、それらの反応混合物から標準的技術により単離することができる。
【0035】
挙げることのできる式Iの化合物の酸付加塩は、無機酸の塩、例えば塩酸塩及び臭化水素酸塩;並びに有機酸で形成される塩、例えばギ酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩及びフマル酸塩を包含する。式Iの化合物の酸付加塩は、遊離塩基又はその塩、エナンチオマー若しくは保護誘導体を、1当量又はそれ以上の適切な酸と反応させることにより形成することができる。この反応は、塩が溶解しない溶剤若しくは媒質又は塩が溶解する溶剤、例えば水、ジオキサン、エタノール、テトラヒドロフラン若しくはジエチルエーテル、又は溶剤の混合物の中で行うことができ、それらは真空中で又は凍結乾燥により除去することができる。この反応は複分解過程であってよく、又はイオン交換樹脂上で行ってもよい。
【0036】
式Iの化合物は互変異性体又はエナンチオマーの形態で存在し、それらは全て本発明の範囲内に包含される。種々の光学異性体は、従来の技術、例えば分別結晶又はキラルHPLCを用いて、化合物のラセミ混合物の分離によって単離することができる。別法として、個々のエナンチオマーは、適切な光学活性出発材料を、ラセミ化を引き起こさない条件下で反応させることにより製造することができる。
【0037】
薬理学
本発明の化合物の薬理学的活性は、下記の試験法を用いて測定することができる:
試験A − α7 nAChRサブタイプにおける親和性のアッセイ
ラット海馬膜への[125I]−α−ブンガロトキシン(BTX)結合
ラット海馬を20容量の冷均質化緩衝液(HB:成分濃度(mM):トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン 50;MgCl2 1;NaCl 120;KCl 5:pH 7.4)中で均質化した。均質化物を1000 gで5分間遠心分離し、上澄み液を保存し、ペレットを再抽出した。プールした上澄み液を12000 gで20分間遠心分離し、洗浄し、HBに再懸濁した。膜(30〜80μg)を、5nMの[125I]α−BTX、1mg/mLのBSA(ウシ血清アルブミン)、試験薬剤、及び2mMのCaCl2又は0.5mMのEGTA[エチレングリコール−ビス(β−アミノエチルエーテル)]と共に21℃で2時間インキュベートし、次いでWhatmanガラス繊維フィルター(厚さC)によりBrandel細胞ハーベスターを用いて4回濾過して洗浄した。フィルターを水中の1%BSA/0.01%PEI(ポリエチレンイミン)で3時間前処理することは、低いフィルターブランク値(毎分の全カウントの0.07%)にとって重要であった。非特異的結合を100μM (−)−ニコチンで記述し、そして特異的結合は典型的に75%であった。
【0038】
試験B − α4 nAChRサブタイプに対する親和性のアッセイ
[3H]−(−)−ニコチン結合
Martino−Barrows and Kellar (Mol Pharm (1987) 31:169−174)から変更した手順を用いて、ラット脳(髄質及び海馬)を[125I]α−BTX結合アッセイと同様に均質化し、12,000xgで20分間遠心分離し、2回洗浄し、次いで100μMのジイソプロピルフルオロホスフェートを含有するHBに再懸濁した。4℃で20分後に、膜(約0.5 mg)を3nMの[3H]−(−)−ニコチン、試験薬剤、1μMのアトロピン、及び2mMのCaCl2又は0.5mMのEGTAと共に4℃で1時間インキュベートし、次いでWhatmanガラス繊維フィルター(厚さC)(0.5%PEIで1時間前処理した)によりBrandel細胞ハーベスターを用いて濾過した。非特異的結合を100μMカルバコールで記述し、そして特異的結合は典型的に84%であった。
【0039】
試験A及びBの結合データ分析
非線形曲線適合プログラムALLFIT(DeLean A, Munson P J and Rodbard D (1977) Am. J. Physiol., 235:E97−E102)を用いてIC50値及び擬似Hill計数(nH)を計算した。非線形回帰プログラムENZFITTER(Leatherbarrow, R.J. (1987))を用いて飽和曲線を一部位モデルに適合させ、それぞれ[125I]−α−BTX及び[3H]−(−)−ニコチンリガンドについて1.67及び1.70 nMのKD値を得た。Ki値はCheng−Prusoffの一般式を用いて評価した:
Ki=[IC50]/((2+([リガンド]/[KD])n)1/n−1)
ここで、nH<1.5のときはいつでもn=1の値を用い、そしてnH≧1.5のときはn=2の値を用いた。サンプルを三重にアッセイし、そして典型的に±5%であった。6又はそれ以上の薬剤濃度を用いてKi値を決定した。本発明の化合物は試験A又は試験Bの何れかにおいて1000 nM未満の結合親和性(Ki)を有する化合物であり、それらの化合物が有用な治療活性を有すると期待されることを示す。
【0040】
本発明の化合物は、それらの毒性がより少なく、より効果的であり、より長期作用性であり、より広範囲の活性を有し、より強力であり、副作用がより少なく、より容易に吸収され、又は他の有用な薬理学的特性を有するという利点を有する。
【実施例】
【0041】
市販の試薬はさらに精製することなく用いた。n−ブチルリチウムはヘキサン中の溶液として用いた。質量スペクトルは、HP−1100 HPLCを採用したHPLC−MS装置及びイオン化技術としてAPCIを用いたMicromass LCZ Mass Spectrometer、HP−1100 HPLCを採用したHPLC−MS装置及びイオン化技術としてAPCIを用いたHP−1100−シリーズ質量選択的検出器、又はHP−6890ガスクロマトグラフを採用したGC−MS装置及び電子衝撃イオン化を採用したHP−5973質量選択的検出器を用いて記録され、そして親分子イオンに関するm/zとして報告される。室温は20〜25℃を指す。5'−ブロモスピロ[1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3,2'(3'H)−フロ[2,3−b]ピリジン]及び他の前駆体は、国際特許出願公開番号WO 99/03859に記載されているように製造した。
【0042】
〔製造例1〕
(2'R)−5'−トリメチルスタンニル−スピロ[1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3,2'(3'H)−フロ[2,3−b]ピリジン]
【化7】

(2'R)−5'−ブロモスピロ[1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3,2'(3'H)−フロ[2,3−b]ピリジン](690 mg、2.34 mmol)、ヘキサメチル二錫(1.225 g、0.27 mmol)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(266 mg、0.027 mmol)を、10 mLのトルエンと混合し、窒素下に密閉した。この混合物を窒素下に120℃で4時間攪拌して加熱した。次いでこの混合物を冷却させ、珪藻土に通して濾過した。濾液をクロロホルムで希釈し、飽和重炭酸ナトリウムで洗浄し、MgSO4により乾燥し、濾過し、溶剤を蒸発した。フラッシュクロマトグラフィーによりクロロホルム中のアンモニア処理メタノールの勾配を用いて精製して、表題の化合物を固体(780 mg)として得た;m/e 377 379 381(MH+)。
【0043】
〔実施例1〕
(2'R)−5'−(フロ[3,2−b]ピリジン−3−イル)スピロ{1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3,2'(3'H)−フロ[2,3−b]ピリジン}
【化8】

(a) トリフルオロメタンスルホン酸フロ[3,2−b]ピリジン−3−イル
3−ヒドロキシ−ピコリン酸(15.6 g、42.1 mmol)、エタノール(360 mL)、ベンゼン(100 mL)及び98%硫酸(6 mL)を、40時間加熱還流した。エタノール及びベンゼンを蒸発した後、残留物を水に溶解し、重炭酸ナトリウムで中和し、クロロホルムで抽出した。有機層を乾燥し(MgSO4)、濾過し、次いで溶剤を蒸発して、3−ヒドロキシ−ピコリン酸エチルを褐色油状残留物(11.0 g)として得た。
【0044】
アセトン(120 mL)中の3−ヒドロキシ−ピコリン酸エチル(11.0 g、65.8 mmol)、ブロモ酢酸エチル(12.1 g、72.4 mmol)及び無水炭酸カリウム(11.8 g、85.5 mmol)の混合物を、15時間加熱還流した。冷却した後、無機物質を濾過により分離した。濾液をクロロホルムに溶解し、水、次いでブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、溶剤を蒸発して、褐色油状残留物を得た。残留物をフラッシュクロマトグラフィーによりクロロホルム中のアンモニア処理メタノールの勾配を用いて精製して、2−(2−エトキシカルボニル−3−ピリジルオキシ)酢酸エチル(13.7 g)を黄色油状物(13.7 g)として得た。
【0045】
トルエン(200 mL)中の2−(2−エトキシカルボニル−3−ピリジルオキシ)酢酸エチル(13.6 g、54.0 mmol)及びナトリウムエトキシド(8.08 g、118.8 mmol)を18時間加熱還流した。冷却した後、沈殿を濾過により集め、最小量の熱水(約300 mL)に溶解し、酢酸(6 mL)で酸性化した。生成した沈殿を濾過し、真空乾燥して、3−ヒドロキシフロ[3,2−b]ピリジン−2−カルボン酸エチルを固体(7.0 g)として得た。
【0046】
3−ヒドロキシフロ[3,2−b]ピリジン−2−カルボン酸エチル(6.90 g、25.8 mmol)を10%塩酸(50 mL)に溶解し、3時間加熱還流した。この塩酸溶液を蒸発して、フロ[3,2−b]ピリジン−3(2H)−オン塩酸塩(9.0 g)を得た。フロ[3,2−b]ピリジン−3(2H)−オン塩酸塩の一部を、次の段階のための製造において、飽和重炭酸ナトリウムで処理し、クロロホルムで抽出することにより遊離塩基に変換した。
【0047】
N,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.08 g、8.34 mmol)を、乾燥ジクロロメタン(60
mL)中のフロ[3,2−b]ピリジン−3(2H)−オン(1.40 g、7.25 mmol)の溶液に−10℃で窒素下に徐々に加えた。次いでトリフルオロメタンスルホン酸無水物(2.45 g、8.70 mmol)を徐々に加えた。この混合物を室温に温め、一夜攪拌した。反応を水で停止した。有機層を水及びブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、次いで溶剤を蒸発して、褐色油状残留物を得た。これをフラッシュクロマトグラフィーによりクロロホルムを用いて精製して、サブタイトルの化合物(980 mg)を淡褐色油状物として得た。
【0048】
(b) (2'R)−5'−(フロ[3,2−b]ピリジン−3−イル)スピロ[1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3,2'(3'H)−フロ[2,3−b]ピリジン]
(2'R)−5'−トリメチルスタンニル−スピロ[1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3,2'(3'H)−フロ[2,3−b]ピリジン](200 mg、0.53 mmol)、フロ[3,2−b]ピリジン−3−トリフレート(184 mg、0.69 mmol)、Pd2dba3(25 mg、0.027 mmol)及びトリフェニルホスフィン(14 mg、0.053 mmol)を、2mLのDMF中で混合した。反応物を100℃に6時間加熱した。冷却した後、この混合物をブラインの溶液中に注ぎ、クロロホルムで抽出した。有機層をMgSO4により乾燥し、溶剤を蒸発した。残留物をフラッシュクロマトグラフィーによりクロロホルム中のアンモニア処理メタノールの勾配を用いて精製して、固体を得た。この固体をWaters Novapak−HR C18 Column上の逆相HPLCにより溶出液として5〜45%アセトニトリル/水の勾配(各溶剤は緩衝剤として0.1%のトリフルオロ酢酸を含有する)を用いてさらに精製した。生成物含有フラクションを蒸発した。残留物をNaHCO3で中和し、クロロホルムで抽出し、溶剤を蒸発して、表題の化合物(33 mg)を白色固体として得た;m/e 334.3(MH+)。
【0049】
〔実施例2〕
(2'R)−5'−(フロ[3,2−c]ピリジン−3−イル)スピロ[1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3,2'(3'H)−フロ[2,3−b]ピリジン]
【化9】

(a) トリフルオロメタンスルホン酸フロ[3,2−c]ピリジン−3−イル
100 mLのヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)中の4−クロロニコチン酸(7.03 g、44.6 mmol)の溶液に、5.5 N水酸化ナトリウム溶液(13 mL)を0℃で加えた。次いでヨードメタン(27.8 g、179 mmol)を反応混合物に0℃で1時間かけて加え、攪拌を室温でさらに1時間続けた。この混合物を250 mLの水で希釈し、エーテルで3回抽出した。エーテル抽出物を一緒にし、3回水洗し、次いで乾燥し(MgSO4)、濾過し、溶剤を蒸発して、4−クロロニコチン酸エチル(6.21 g)を褐色油状残留物として得た。これをさらに精製することなく次の段階に用いた。
【0050】
グリコール酸エチル(7.26 g、59.7 mmol)を、85 mLの1,2−ジメトキシエタン(DME)中の水素化ナトリウム(鉱油中の60%溶液2.95 g、73.8 mmol)の懸濁液中に0℃で徐々に加え、この混合物をさらに30分間攪拌した。20 mLのDME中の4−クロロニコチン酸エチル(6.20 g、33.4 mmol)の溶液を反応混合物に室温で徐々に加えた。この混合物を70℃に加熱し、その温度で一夜保持した。溶剤を蒸発し、残留物を100 mLの水に溶解し、ヘキサンで3回洗浄した。この水溶液のpHを、酢酸を用いて約5に調節すると、黄色沈殿が生成した。この黄色沈殿を濾過し、少量の水(20 mL×3)で洗浄し、一夜真空乾燥して、3−ヒドロキシフロ[3,2−c]ピリジン−2−カルボン酸エチル遊離塩基を黄色固体(5.79 g
)として得た。これをさらに精製することなく次の段階に用いた。
【0051】
3−ヒドロキシフロ[3,2−c]ピリジン−2−カルボン酸エチル(5.79 g、27.9 mmol)を10%塩酸(50 mL)に溶解し、40時間加熱還流した。反応混合物を蒸発乾固した。残留物を飽和重炭酸ナトリウム溶液に懸濁し、クロロホルムで3回抽出した。クロロホルム抽出物を一緒にし、乾燥し(MgSO4)、濾過し、蒸発して、フロ[3,2−c]ピリジン−3(2H)−オン(570 mg)を淡褐色油状物として得た。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(616 mg、4.77 mmol)を、乾燥塩化メチレン(25 mL)中のフロ[3,2−c]ピリジン−3(2H)−オン(560 mg、4.14 mmol)の溶液に−10℃で窒素下に徐々に加えた。次いでトリフルオロメタンスルホン酸無水物(1.40 mg、4.97 mmol)を徐々に加えた。この混合物を室温に温め、さらに1時間攪拌した。反応を水で停止した。有機層を水洗し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、次いで溶剤を蒸発して、サブタイトルの化合物を褐色油状残留物(1.10 g)として得た。これをさらに精製することなく次の段階に用いた。
【0052】
(b) (2'R)−5'−(フロ[3,2−c]ピリジン−3−イル)スピロ[1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3,2'(3'H)−フロ[2,3−b]ピリジン]
実施例1の製造について記載したのと同様の方法により、(2'R)−5'−トリメチルスタンニル−スピロ[1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3,2'(3'H)−フロ[2,3−b]ピリジン]及びトリフルオロメタンスルホン酸フロ[3,2−c]ピリジン−3−イルから製造した。逆相クロマトグラフィーの後、表題の化合物をトリフルオロ酢酸塩として得た。これは無色固体であった;m/e 334(MH+)。
【0053】
〔実施例3〕
(2'R)−5'−(フロ[2,3−b]ピリジン−3−イル)スピロ{1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3,2'(3'H)−フロ[2,3−b]ピリジン}
【化10】

(a) トリフルオロメタンスルホン酸フロ[2,3−b]ピリジン−3−イル
2−クロロニコチン酸(5.90 g、37.5 mmol)、エタノール(120 mL)、トルエン(35 mL)及び98%硫酸(2 mL)を一緒に48時間加熱還流した。エタノール及びトルエンを蒸発した後、残留物を水に溶解し、重炭酸ナトリウムで中和し、クロロホルムで抽出した。有機層をMgSO4により乾燥し、次いで溶剤を蒸発して、暗褐色油状残留物を得た。これをフラッシュクロマトグラフィーにより溶出液として10〜20%ヘキサン/酢酸エチルの勾配を用いて精製して、2−クロロニコチン酸エチル(4.60 g)を淡褐色油状物として得た。
【0054】
グリコール酸エチル(7.00 g、67.3 mmol)を、60 mLの1,2−ジメトキシエタン(DME)中の水素化ナトリウム(鉱油中の60%分散2.80 g、70.0 mmol)の懸濁液中に0℃で徐々に加え、次いでこの混合物をさらに30分間攪拌した。14 mLのDME中の2−クロロニコチン酸エチル(4.60 g、24.8 mmol)の溶液を反応混合物に室温で徐々に加えた。次いでこの混合物を70℃で一夜加熱した。溶剤を蒸発した後、残留物を90 mLの水に溶解し、ヘキサンで3回洗浄し、酢酸で酸性化し、クロロホルムで3回抽出した。一緒にしたクロロホルム層を乾燥し(MgSO4)、蒸発して、黄色残留物を得た。残留物を20 mLのエーテルから結晶化して、3−ヒドロキシフロ[2,3−b]ピリジン−2−カルボン酸エチルを淡黄色固体(4.30 g)として得た。
【0055】
3−ヒドロキシフロ[2,3−b]ピリジン−2−カルボン酸エチル(3.0 g、11.23 mmol)を10%塩酸(50 mL)中で3時間加熱還流した。この塩酸溶液を蒸発して、フロ[2,3−b]ピリジン−3(2H)−オンを塩酸塩(1.73 mg)として得た。フロ[2,3−b]ピリジン−3(2H)−オン塩酸塩の一部を、次の段階のための製造において、飽和重炭酸ナトリウムで処理し、クロロホルムで抽出することにより遊離塩基に変換した。
【0056】
N,N−ジイソプロピルエチルアミン(429 mg、3.32 mmol)を、乾燥ジクロロメタン中のフロ[2,3−b]ピリジン−3(2H)−オン(390 mg、3.89 mmol)の溶液に−10℃で窒素下に徐々に加えた。次いでトリフルオロメタンスルホン酸無水物(978 mg、3.47 mmol)を徐々に加えた。この混合物を室温に温め、さらに2時間攪拌した。反応を水で停止した。有機層を水洗し、次いで乾燥し(MgSO4)、濾過し、次いで溶剤を蒸発して、褐色油状残留物を得た。フラッシュクロマトグラフィーによりクロロホルムを用いて精製して、サブタイトルの化合物を淡褐色油状物(576 mg)として得た。
【0057】
(b) (2'R)−5'−(フロ[2,3−b]ピリジン−3−イル)スピロ[1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3,2'(3'H)−フロ[2,3−b]ピリジン]
実施例1の製造について記載したのと同様の方法により、(2'R)−5'−トリメチルスタンニル−スピロ[1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3,2'(3'H)−フロ[2,3−b]ピリジン]及びトリフルオロメタンスルホン酸フロ[2,3−b]ピリジン−3−イルから製造した。表題の化合物を無色固体として得た;m/e 334(MH+)。
【0058】
〔実施例4〕
(2'R)−5'−(フロ[2,3−c]ピリジン−3−イル)スピロ{1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3,2'(3'H)−フロ[2,3−b]ピリジン}
【化11】

実施例1の合成で記載したのと同様の合成により、3−ヒドロキシピリジン−4−カルボン酸[Di Marco et al., Eur. J. Inorg. Chem., 2002, (10), 2648−2655]から出発して、表題の化合物を製造した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、
Arは式II又はIIIの部分:
【化2】

であり、
ここで、
Aは、O又はSであり;
Bは、1個又は2個存在するN、およびその他の全ての存在するCR1であり;
1は、存在するごとに独立して、水素、−R2、−C2−C6アルケニル、−C2−C6アルキニル、ハロゲン、−CN、−NO2、−NR34又は−OR5であり;
2は、直鎖状、分枝鎖状又は環状の非置換C1−C6アルキル基、又は1個、2個、3個、4個又は5個のハロゲン原子で置換され、且つC2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、−CN、−NR34又は−OR5から選択される1個又は2個の置換基で置換された直鎖状、分枝鎖状又は環状のC1−C6アルキル基であり;
3及びR4は、存在するごとに独立して、水素、R5、又は組み合わされて−NR34に存在する場合においては、−(CH2)pJ(CH2)q−であり、ここで、JはO、S、NH、NR5又は結合であり;
5は、直鎖状、分枝鎖状又は環状の非置換C1−C6アルキル基、又は1個、2個、3個、4個又は5個のハロゲン原子で置換された直鎖状、分枝鎖状又は環状のC1−C6アルキル基であり;
pは、存在するごとに、2、3又は4であり;
qは、存在するごとに、0、1又は2である]
の化合物、及びその製薬上許容される塩。
【請求項2】
Bが1個存在するNであり、そして2個又は3個存在するR1が水素である化合物、又はBが2個存在するNであり、そして3個又は4個存在するR1が水素である化合物から選択される、請求項1に記載の化合物又はその製薬上許容される塩。
【請求項3】
Bが1個存在するNである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Arが式IV:
【化3】

である、請求項1に記載の化合物又はその製薬上許容される塩。
【請求項5】
AがOである、請求項1に記載の化合物又はその製薬上許容される塩。
【請求項6】
(2'R)−5' −(フロ[3,2−b]ピリジン−3−イル)スピロ{1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3,2'(3'H)−フロ[2,3−b]ピリジン};
(2'R)−5' −(フロ[3,2−c]ピリジン−3−イル)スピロ{1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3,2'(3'H)−フロ[2,3−b]ピリジン};
(2'R)−5' −(フロ[2,3−b]ピリジン−3−イル)スピロ{1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3,2'(3'H)−フロ[2,3−b]ピリジン};及び
(2'R)−5' −(フロ[2,3−c]ピリジン−3−イル)スピロ{1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3,2'(3'H)−フロ[2,3−b]ピリジン}
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1に記載の化合物、及び製薬上許容される希釈剤又は担体を含む医薬組成物。
【請求項8】
α7ニコチン性受容体の活性化が有益であるヒトの疾患又は症状の治療又は予防に使用するための、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
神経障害、精神障害又は知能障害性疾患の治療又は予防に使用するための、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
アルツハイマー病、学習障害、認識障害、注意欠陥、記憶喪失、注意欠陥多動性障害、不安症、統合失調症又は躁病若しくはうつ病、パーキンソン病、ハンチントン病、トゥーレット症候群、コリン作動性シナプスの損失が存在する神経変性性障害、時差ぼけ、喫煙、タバコ中毒、ニコチン含有生成物への暴露に起因するものを包含するニコチン中毒、渇望、疼痛及び潰瘍性結腸炎の治療又は予防に使用するための、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項11】
α7ニコチン性受容体の活性化が有益であるヒトの疾患又は症状を治療又は予防するための医薬の製造における、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項12】
神経障害、精神障害又は知能障害性疾患を治療又は予防するための医薬の製造における、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項13】
症状又は障害がアルツハイマー病、学習障害、認識障害、注意欠陥、記憶喪失、注意欠陥多動性障害である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
障害が不安症、統合失調症又は躁病若しくはうつ病である、請求項12に記載の使用。
【請求項15】
障害がパーキンソン病、ハンチントン病、トゥーレット症候群又はコリン作動性シナプスの損失が存在する神経変性性障害である、請求項12に記載の使用。
【請求項16】
時差ぼけ、禁煙、タバコ中毒、ニコチン含有生成物への暴露に起因するものを包含するニコチン中毒、渇望、疼痛及び潰瘍性結腸炎を治療又は予防するための医薬の製造における、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項17】
請求項1に記載の化合物の治療有効量を投与することを含む、α7ニコチン性受容体の活性化が有益であるヒトの疾患又は症状の治療又は予防方法。
【請求項18】
請求項1に記載の化合物の治療有効量を投与することを含む、精神障害又は知能障害性疾患の治療又は予防方法。
【請求項19】
精神障害がアルツハイマー病、学習障害、認識障害、注意欠陥、記憶喪失、注意欠陥多動性障害、パーキンソン病、ハンチントン病、トゥーレット症候群、コリン作動性シナプスの損失が存在する神経変性性障害、不安症、統合失調症又は躁病若しくはうつ病である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載の化合物の治療有効量を投与することを含む、時差ぼけ、禁煙、ニコチン中毒、渇望、疼痛及び潰瘍性結腸炎の治療又は予防方法。
【請求項21】
1個又はそれ以上の原子がその元素の放射性同位体である、請求項1に記載の化合物。
【請求項22】
放射性同位体がトリチウムである、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
作動作用、部分的作動作用又は拮抗作用により、α7ニコチン性アセチルコリン受容体に結合し、そしてその活性を調節する新規な医薬用化合物の発見のためのスクリーンにおける、請求項21に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2007−509121(P2007−509121A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536175(P2006−536175)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004484
【国際公開番号】WO2005/042538
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】