説明

スピロラクタム類の位置選択的官能化および保護

本発明は、所望数の保護または未保護官能基を有するか、またはカーボネート化構造が高度立体的および位置選択的に導入された、シクロヘキサン部分を有する高度に官能化された式(I)のスピロ縮合ラクタム類、並びにそれらを得るための方法を提供する。これらの化合物は、広範囲の生物活性分子、例えばコンズリトール類、アミノイノシトール類、および、それらの類似物の合成に有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、位置選択的にヒドロキシル化され、保護され、かつ官能化された、新規なスピロラクタム類、およびそれらの合成方法に関する。
【発明の背景】
【0002】
ラクタム類は、その生物活性のために高い関心のよせられる化合物であり、例えば、一部のペニシリン類、セファロスポリン類およびカルバペネム類のような周知のβ‐ラクタム類は抗菌活性を有する。
【0003】
スピロラクタム類は、興味深い生物学的性質を示す、ラクタム類の特別な部類である。一部のスピロ縮合アゼチジノン類は、抗菌活性(米国特許第4,680,388号参照)または血中コレステロール低下性(例えば、国際特許公開WO94 17038号参照)を有するとされている。さらに、これらの化合物が適切な官能基を有していれば、それらは異なる化合物ファミリーに対して有益な中間体である。スピロラクタム環は、α‐アミノまたはヒドロキシアミノ酸の等価物であり、ジアステレオ/エナンチオ選択的合成において多くの可能性を有している。
【0004】
Miyazawa,E.らのHeterocycles,vol.59,1:149-160 ”Synthesis of spiro-fused nitrogen heterocyclic compounds via N-methoxy-N-acylnitrenium ions using phenyliodine(III) bis(trifluoroacetate) in trifluoroethanol”には、一部のスピロジエノン類を含む官能化スピロラクタム類を得る方法が記載されている。
【0005】
Kukugawa,Y.らのJ.Org.Chem.,2003,vol.68,6739-6744 “Intramolecular cyclization with nitrenium ions generated by treatment of N-acylaminophthalimides with hypervalent iodine compounds:formation of lactams and spirofused lactams”には、ジエンおよびジエノン官能基を有する、官能化されたスピロラクタム類の形成について記載されている。
【0006】
コンズリトール類、アミノコンズリトール類、アミノイノシトール類、およびそれらの誘導体も、興味深い生物学的性質を有し、これらの一部には、抗腫瘍および抗菌性があることが示されている。これら化合物を得るための合成方法もいくつかは存在するものの(Yong-Uk Kwonら,J.Org.Chem.,2002,vol.67,3327-3338 ”Facile syntheses of all possible diastereomers of conduritol and various derivatives of inositol stereoisomers in high enantiopurity from myo-inositol”を参照)、これらの化合物または対応する類似化合物を得るのには、依然として困難がある。
【0007】
上記からも明らかなように、種々の官能基が、制御的かつ位置選択的に導入された、官能化されたスピロラクタム化合物を、高収率で製造するための効率的な方法があれば、歓迎されるべき技術的貢献となり、種々の生物活性化合物への道を開くことになろう。
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、本出願と同日付で出願された、欧州特許出願04380104.2、04076477.1、およびPCT/EP2005/.....において記載されている化合物から出発して、種々の化学構造物の調製における中間化合物として有用な、安定性が非常に高く、高度に官能化されたスピロ縮合ラクタム類の制御的製造を可能とする、必要に応じて、化学−、場所(loco) −、位置(regio) −、ジアステレオ−および/またはエナンチオ−、選択的工程によるものを含む工程の基本的組合せを見い出した。さらなる炭素構造を、簡単な反応により所望の位置に取り込むことにより、興味深い新規な中間体を生成することができる。
【0009】
本発明の一実施態様においては、下記式I:
【化1】

(式中、R、R、R、およびRは、独立して、H、OH、ハロゲン、OPR、=O、シアノ、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換複素環、置換もしくは非置換アルコキシ、置換もしくは非置換アリールオキシ、置換もしくは非置換アミノ、またはハロゲンから選択されるものであり、
およびRは、互いに、=Oまたは‐O‐(CH‐(ここで、mは、1、2、3、4、または5から選択されるものである。)であるか、または、
は、H、OH、OPRから選択され、Rは、水素、シアノ、置換または非置換アルキル、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換アルケニル置換または非置換アルキニル、置換または非置換アリール、置換または非置換複素環から選択されるものであるが、
但し、R、R、R、R、またはRのうち少なくとも1つは、OH、置換または非置換アルコキシ、置換または非置換アリールオキシ、またはOPRであり、
PRは、R、R、R、R、またはRのそれぞれにおいて同一または異なり、かつ、1、2、または3のヒドロキシ基を同時に保護しうる、ヒドロキシル保護基であり、
点線は、単結合または二重結合を表わすが、RおよびR、または、RおよびR、のいずれもがHであるとき、そのHが結合している2個のC間には二重結合が存在し、
Zは、‐(CRaRb)‐、‐CH‐(CRaRb)‐、‐(CRaRb)‐CH‐、‐CH‐(CRaRb)‐CH‐、‐(CH‐(CRaRb)‐、または、‐(CRaRb)‐(CH‐(ここで、nは1、2、または3から選択される数であり、RaおよびRbは、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換アルケニル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロシクリル、置換もしくは非置換アルコキシ、置換もしくは非置換アリールオキシ、置換もしくは非置換アミノ、またはハロゲンから選択されるものである。)であり、
Yは、‐O‐、‐S‐、‐NRa‐(ここで、Raは前記と同義である。)、または、‐C(O)‐から選択されるものであり、
Wは、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロシクリル、置換または非置換アルケニルから選択される基を少なくとも含んでなる基である。)
の化合物、またはその塩、その錯体若しくはその溶媒和物を提供する。
【0010】
一態様において、本発明の化合物は前記と同義であるが、但し、Zが‐CHCH‐であるとき、Yは‐O‐、‐S‐、‐NRa‐または‐C(O)‐から選択される。
【0011】
一態様において、好ましくは、nは1である。この場合に、Zは、好ましくは‐CHRa‐である。
【0012】
別の態様において、Wは、置換または非置換アリールアルキル、置換または非置換ヘテロシクリルアルキル、置換または非置換アルケニルから選択される。より好ましくは、アリールアルキル、好ましくはベンジルである。
【0013】
別の態様において、Yは、好ましくは‐O‐である。
【0014】
本発明は、下記式IV:
【化2】

(式中、Z、Y、および、Wは、上記と同義である。)の化合物に適用される、
a)ヒドロキシル化、ケトヒドロキシル化またはジヒドロキシル化
b)ヒドロキシルまたはカルボニル保護
c)カルボニル基または二重結合の求核攻撃
d)ヒドロキシル反転
e)アリル転位
からなる群より選択される1以上の工程を、いずれかの順序で含んでなる、式Iによる化合物を製造する方法も提供する。
【発明の詳細な説明】
【0015】
本明細書においては、下記の番号付けを用いる。
【化3】

【0016】
本発明の一態様においては、上記したような式Iの化合物を提供する。式Iの化合物において、基Zは、4、5、または6員の環を生じる。
【0017】
5または6員の環も本発明の範囲内に属するが、一態様においては、この化合物に他の利用に供するため、β‐ラクタム環(n=1)が好ましい。
【0018】
部位Zでの置換により、ベンゾジエノン部分で選択的官能化を誘導しうる立体中心が生じる。好ましい態様において、Zはキラル中心を有する。特に好ましくは‐CHRa‐(ここでRaはHでない)であるが、この場合、β‐ラクタム環の立体中心により、他の反応における選択性または特異性が付与される。より好ましくは、Raは、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ基、または、ヒドロキシ保護基である。
【0019】
式Iの化合物における基Yは、安定性および立体配座における役割を果たす。一態様においては、Yは好ましくは‐O‐であるが、最終生成物が安定であるかぎり他の原子は排除するものではない。
【0020】
W基は、式Iの化合物の安定性にとって重要である。W基が不飽和結合または芳香族基を含んでなることにより、Wと、二重結合または水素とのp相互作用が増大する。
【0021】
Wは、好ましくは、置換または非置換アリールアルキル、置換または非置換ヘテロシクリルアルキル、置換または非置換アルケニルから選択される。
【0022】
より好ましくは、アリールアルキル、好ましくはベンジルである。
【0023】
具体的な態様において、Wは、‐CRaRb‐Q、または、‐SiRaRb‐Qであり、それにより、Yと、ベンゾジエノン部分とp(π)相互作用する置換基Qと間の、‐CRaRb‐または‐SiRaRb‐結合基の存在により、立体配座の安定性がより改善される。結合基は、好ましくは‐CHRa‐である。これにより、必要であればキラル中心が導入され、有利にも、後記する一方の面への選択性に加えて、ジアステレオ‐および/またはエナンチオ選択的合成の道が開けるであろう。Raのサイズに応じて、p(π)相互作用を調整することもできる。
【0024】
一態様においては、Wはアラルキル基である。アリール基の中では、置換または非置換フェニル、および、ナフチルが好ましい。ヘテロシクリルアルキル基も考えられる。ベンジルが最も簡単なW置換基であり、良好な結果が得られる。
【0025】
本発明の化合物の具体的態様は下記の通りである。
【0026】
上記した下記式II:
【化4】

(式中、RおよびRは、独立して、H、置換もしくは非置換アルキル、または、PR、から選択されるものであり、W、Ra、R、および、Rは、上記と同義である。)の化合物、またはそれらの塩、その異性体若しくはその溶媒和物である。
【0027】
別の態様においては、下記式III:
【化5】

(式中、R、R、R、および、R10は、それぞれ独立して、H、置換もしくは非置換アルキル、または、PR、から選択されるものであり、W、Ra、R、および、Rは、上記と同義である。)を有する化合物が好ましい。
【0028】
本発明の具体的態様においては、下記式:
【化6】



(式中、W、PR、および、Raは、上記と同義であり、式中の保護基PR1〜5は、同一または異なっていてもよく、かつ、2または3の異なるヒドロキシ基を同時に保護できるものであり、Nuは求核基である。)のいずれかに相当する化合物、それらのジアステレオマー、エナンチオマー、およびその混合物である。
【0029】
代表的化合物は、下記の相対的立体配置を有するものである。
【化7】


【0030】
本発明の化合物の別の態様は、以下および実施例に記載されている。多くのバリエーションと立体配置が可能であり、出発物質として選択された化合物、存在する官能基の相対的立体配置、キラル中心の存在または不在、および適用される反応の組合せに応じて自在に得られることは、当業者にとって明らかである。本発明は、すべての上記のようなバリエーションおよび可能性を包含している。
【0031】
上記した式(I)の化合物の定義および説明おける下記の用語の意味は、以下の通りである。
【0032】
“アルキル”とは、炭素および水素原子からなる、直鎖または分岐の炭化水素鎖であって、不飽和を除くものではなく、1〜8の炭素原子を有し、かつ、単結合によって他の分子に結合されているものを意味し、例えば、メチル、エチル、n‐プロピル、i‐プロピル、n‐ブチル、t‐ブチル、n‐ペンチル等である。アルキル基は、所望により、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、シアノ、カルボニル、アシル、アルコキシカルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルキルチオ等の1以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0033】
“アルコキシ”とは、式‐ORa(式中、Raは前記したアルキル基である。)の基を表し、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ等である。“アリールオキシ”とは、式‐ORb(式中、Rbは後記するアリール基である。)の基を意味する。
【0034】
“アミノ”とは、式‐NH、‐NHRa、‐NRaRbの基を意味する。
【0035】
“アリール”とは、フェニル、ナフチル、フェナントリル、またはアントラシル基を意味する。アリール基は、所望により、1以上の置換基、例えば本明細書に規定した、ヒドロキシ、メルカプト、ハロ、アルキル、フェニル、アルコキシ、ハロアルキル、ニトロ、シアノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキル、アシル、およびアルコキシカルボニル等によって置換されていてもよい。
【0036】
“アラルキル”とは、ベンジルおよびフェネチル等の、アルキル基に結合したアリール基を意味する。
【0037】
“シクロアルキル”とは、3〜8の炭素原子を有する飽和炭素環式環を意味する。
【0038】
“複素環”とは、ヘテロ環式基、即ち、炭素原子と、窒素、酸素、およびイオウからなる群より選択される1〜5のヘテロ原子とからなる安定な3〜15員環、好ましくは1以上のヘテロ原子を有する4〜8員環、より好ましくは1以上のヘテロ原子を有する5または6員環を意味する。本発明の目的においては、複素環は、縮合環系を含んでいてもよい、単環式、二環式または三環式の環系であり、複素環基の窒素、炭素、またはイオウ原子は、所望により、酸化されていてもよく、窒素原子は、所望により、四級化されていてもよく、さらに、複素環基は、一部または完全が飽和もしくは芳香族であってよい。このような複素環の例としては、アゼピン類、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、フラン、イソチアゾール、イミダゾール、インドール、ピペリジン、ピペラジン、プリン、キノリン、チアジアゾール、テトラヒドロフランが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
“ヒドロキシル保護基”とは、他の反応のためにOH官能基をブロックし、制御条件下で除去し得る基を意味する。ヒドロキシル保護基は当業界では周知であり、代表的な保護基としては、トリメチルシリルエーテル、トリエチルシリルエーテル、tert‐ブチルジメチルシリルエーテル、tert‐ブチルジフェニルシリルエーテル、トリイソプロピルシリルエーテル、ジエチルイソプロピルシリルエーテル、ヘキシルジメチルシリルエーテル、トリフェニルシリルエーテル、ジ‐tert‐ブチルメチルシリルエーテル等のシリルエーテル、メチルエーテル、tert‐ブチルエーテル、ベンジルエーテル、p‐メトキシベンジルエーテル、3,4‐ジメトキシベンジルエーテル、トリチルエーテル等のアルキルエーテル、アリルエーテル、メトキシメチルエーテル、2‐メトキシエトキシメチルエーテル、ベンジルオキシメチルエーテル、p‐メトキシベンジルオキシメチルエーテル、2‐(トリメチルシリル)エトキシメチルエーテル等のアルコキシメチルエーテル、テトラヒドロピラニル、およびそれに関連するエーテル、メチルチオメチルエーテル、酢酸エステル、安息香酸エステル、ピバル酸エステル、メトキシ酢酸エステル、クロロ酢酸エステル、レブリン酸エステル等のエステル、ベンジルカーボネート、p‐ニトロベンジルカーボネート、tert‐ブチルカーボネート、2,2,2‐トリクロロエチルカーボネート、2‐(トリメチルシリル)エチルカーボネート、アリルカーボネート等のカーボネート、ならびに、SOpy等のサルフェートが挙げられる。ヒドロキシル保護基のさらなる例が、Greene and Wuts’ “Protective Groups in Organic Synthesis”,John Wiley & Sons,Inc.,New York,1999等の参考文献に記載されている。
【0040】
本明細書において、本発明の化合物の置換基に言及しているときは、1以上の適切な基、例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨード等のハロゲン、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、アジド、アシル等のC1‐6アルカノイル基等のアルカノイル、カルボキサミド、1〜約12の炭素原子または1〜約6の炭素原子、より好ましくは1〜3の炭素原子を有する基を含むアルキル基、1以上の不飽和結合を有し2〜約12の炭素または2〜約6の炭素原子を有する基を含むアルケニルおよびアルキニル基、1以上の酸素結合を有し1〜約12の炭素原子または1〜約6の炭素原子を有するアルコキシ基、フェノキシ等のアリールオキシ、1以上のチオエーテル結合を有し1〜約12の炭素原子または1〜約6の炭素原子を有する部分を含むアルキルチオ基、1以上のスルフィニル結合を有し1〜約12の炭素原子または1〜約6の炭素原子を有する部分を含むアルキルスルフィニル基、1以上のスルホニル結合を有し1〜約12の炭素原子または1〜約6の炭素原子を有する部分を含むアルキルスルホニル基、1以上のN原子と1〜約12の炭素原子または1〜約6の炭素原子を有するアミノアルキル基、6以上の炭素を有する炭素環式アリール、とりわけフェニルまたはナフチル、ならびに、ベンジル等のアラルキルにより、1以上の利用可能な部位が置換されていてもよい特定の部分を意味する。特にことわりのない限り、所望により置換された基は、その基の置換可能な各部位で置換基を有してもよく、各置換は他と独立している。
【0041】
本発明の化合物は、非常に立体特異的な手法において、異なる位置の保護、官能化が可能な簡単な反応の基本セットを用いて、製造しうる。これらの手順を以下に説明する。以下、示された立体配置が相対的立体配置のみであり、純粋なエナンチオマーの立体配置ではないことに注意する。エナンチオ選択的に進めるためには、ZまたはWのようなキラル中心、またはキラル試薬の使用が必要とされる。
【0042】
引用されることにより本明細書の開示の一部とされる、欧州特許出願EP04380104.2およびPCT/EP2005/.....(本出願と同日付で出願)において、本発明者らは、下記式IVを有する新規化合物およびそれら得るための方法を記載している。
【化8】

(式中、Z、W、および、Yは、上記と同義であり、Wは、ベンゾジエノン部分とのp(π)相互作用により化合物を安定化させる上で十分な電子密度を有した基、好ましくは不飽和結合を有する基または芳香族基であり、より好ましくは、置換または非置換アリールアルキル、置換または非置換ヘテロシクリルアルキル、置換または非置換アルケニルから選択されるものである。)
【0043】
この化合物は、W基とベンゾジエノン部分とのp相互作用のために、著しく安定である。さらに、この化合物は、W基が、ベンゾジエノンの一方の面(以下、β面という。)をブロックし、p相互作用により、そこに“固定”され、ベンゾジエノン部分の自由面(以下、α面という。)への他の反応を導く、優先的立体配座をとっている。
【0044】
本発明者らは、これを利用して、これらの化合物から出発すると、ベンゾジエノン基の異なる位置を、位置選択的にヒドロキシル化、官能化および保護することにより、シクロヘキサジエノン部分の5つの利用可能部位のそれぞれにおいて所望の官能基および保護を有する、安定性の幅が広い化合物を得ることが可能であることを見出した。さらに、得られた化合物にカーボネート化置換基を導入して、望み通りの新規炭素骨格を形成することができる。これら高度に官能化された全ての化合物は、種々の生物活性化合物の構築用ブロックとして有用である。
【0045】
1つのヒドロキシ基のみを望む場合は、例えば、カルボニル基でシアンヒドリンを形成し、(α面において)二重結合の1つをヒドロホウ素化またはヒドロシリル化し、次いで酸化および酸またはAgFでの最終処理により、位置選択的に導入し得る。
【化9】

【0046】
他の代替手順も可能である。重要なことは、ヒドロキシル化はジエノンの一方の面のみで生じることである。次いで、ヒドロキシル基は、上記したようないずれかの望ましいヒドロキシル保護基で保護してもよい。
【0047】
本発明の別の態様において、我々は、ベンゾジエノン部分の二重結合の1つのジアステレオ選択的ジヒドロキシル化を紹介する。これは、高度に不活性化された二重結合のため、式IVの構造から予想される乏しい反応性からみて、驚くべき結果である。さらに、予想とは逆に、ジヒドロキシル化はα面のみで位置選択的に生じる。
【化10】

【0048】
この酸化は、極性溶媒、例えば、水およびケトンの混合液中、N‐メチルモルホリンN‐オキシドのようなアミンの存在下で、OsOを用いるような、穏やかな条件下で容易に生じる。代わりの酸化系は当業者に自明であり、有機合成の標準文献、例えばNoyori,R.”Asymmetric catalysis in organic synthesis”,John Wiley and Sons,Inc.(1994)またはOjima,I.”Catalytic asymmetric synthesis”VCH(1993)に記載されている。
【0049】
ジヒドロキシル化化合物は選択的に保護できる。実際に、例えばCl‐TBDMSで保護を行なうとき、完全に保護されるまで6位のヒドロキシルが反応し、次いで5位のOHのみが保護されることを、我々は見出した。
【化11】

【0050】
これは、6位のHとW基とのC‐H p相互作用が存在するためである、と我々は考えているが、論理に拘束されるものではない。これは、6位の‐OHがエクアトリアル立体配座であり高い反応性を有するが、5位の‐OHがアキシアル立体配座であり低い反応性であることを意味している。このことにより、他の位置に対しある位置において選択的反応をさせることができる。
【化12】

【0051】
したがって、ヒドロキシル化を行なう際の面選択(α vs.β)、および、W基の存在やW基と分子の残部との相互作用によって形成される、特殊な立体配座による5位と6位の異なった反応性の両方により、分子の官能化を厳密に制御することができる。この効果は、アリール部分のプロトンとシクロヘキサジエン部分のプロトン、とりわけ、6位のHとの非常に強いNOE効果により証明された。
【0052】
エステル、カーボネート、シリルエーテル等の保護基が移動能を有しているときは、保護基が6位から5位へ移動しうる場合もある。例えばベンジルの場合は以下の通りである。
【化13】

【0053】
同時に、立体配座も変化し、OBnはC5でエクアトリアル位をとるようになる。このようにして、一方をヒドロキシにし、他方を保護できる。
【0054】
2つのヒドロキシ基を、上記と同様の2つの保護基、または異なる保護基によって保護でき、最初に6位、次いで5位を保護する。
【化14】

【0055】
ヒドロキシル保護基を導入するために、標準操作、例えばGreene and Wuts’ “Protective Groups in Organic Synthesis”,John Wiley & Sons,Inc.,New York,1999またはKocienski,P.J.”Protecting Groups”,3rd Ed.Thieme Chemistry,2003に記載されているような操作を用いることができる。
【0056】
別の態様においては、例えば求核付加により、カルボニル基も選択的に官能化することができる。重要なことは、ラクタム基が代わりに反応することはなく、なぜならそれがWeinreb型のアミドを有しているからである。そのため、この部位で望ましい官能基を導入するために、シアニド、有機リチウム化合物、Grignard試薬、アジド、ハロゲン、および、ケトン、を簡易に添加しすることができる。水素化物が用いられると、ヒドロキシが3位で形成される。この種の反応に適した操作は当業界で公知であり、例えばFischer,A.ら,J.Org.Chem.,1987,52,4464-4468”Formation of 4-nitrocyclohexa-2,5-dienols by addition of organolithium reagents to 4-alkyl-4-nitrocyclohexa-2,5-dione”、Wipfら,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,1997,36,no.7,764-767;Fischer,A.ら,Tetrahedron lett.,1980,21,701-704;Carreno,M.ら,J.Org.Chem.,1997,62,26,9128-9137、またはMarch,J.”Advanced Organic Chemistry”5th Ed.(2001)に記載されている。
【0057】
付加は他の部位の官能化と独立して行うことができる。他のヒドロキシ基が存在しなければ:
【化15】

【0058】
この反応は非立体選択的に生じる。この化合物は、いずれの場合であっても、当業界で公知の分割操作、例えばクロマトグラフィーにより分離される。
【0059】
官能化の代替法として、所望により、カルボニル基は公知のカルボニル保護基を用いて保護してもよい。
【0060】
一方、付加は他の部位の官能化と独立して行い得る。式IVの化合物が最初にジヒドロキシル化され、次いでカルボニルへの付加が行なわれる場合には、完全な立体選択性が得られることを、我々は見出した。完全に明らかではないが、この重要な立体選択性が、6位と7位との間の立体電子効果、および6位の上記した立体配座によるものであることは明らかである。例えば、
【化16】

【0061】
このようなプロセスの1つの具体的な例は以下の通りである。
【化17】

【0062】
例えばPRCNが用いられる場合(PRは保護基である)、第二ヒドロキシル基の付加および保護は同時に行なわれる。
【0063】
用いる求核試薬に応じて、反応の生成物は異なる構造を有することができる。例えば、所定の立体配座のエポキシドが望まれるならば、Sイリドのような試薬が用いられる。Coreyエポキシ化の条件下では、1つのエポキシドのみが得られる〔a)E.J.Corey,Michael Chaykovsky,J.Am.Chem.Soc.,87,1965,1353-1364.b)Steven P.Tanis,Mark C.McMills,Paul M.Herrinton,J.Org.Chem.,50,1985,5887-5889.c)Malcolm Chandler,Richard Conroy,Anthony W.J.Cooper,R.Brian Lamont,Jan J.Scicinski,James E.Smart,Richard Storer,Niall G.Weir,Richard D.Wilson and Paul G.Wyatt,J.Chem.Soc.Perkin Trans.1,1995,1189-1197〕。
【化18】

【0064】
一方、二重結合は、例えばWittig条件下で生成し得る。この場合、求核剤がCイリドである。
【化19】

【0065】
用いる試薬に応じて、二重結合は10位に他の置換基を有することができる。この構造から、2つの区別された二重結合があるため、後記するような別の反応を行うことができる。
【0066】
求核剤がカルボニルの代わりに二重結合へ向かうと、官能基または追加炭素基が9位に加えられる。
【化20】

【0067】
このようにして、シアニド、ハロゲン、または、アリル基のような基を、例えば9位に導入でき、さらなる構築における新たな可能性が開かれる。Nuが導入されると、カルボニル基上の上記反応、例えば他の求核攻撃が行われて、新規構造は形成されることが、理解されるであろう。例えば、Coreyエポキシ化またはWittig反応がこの新規基質で行なわれると、下記構造が得られる。
【化21】

【0068】
10位にヒドロキシル基を導入するために、エポキシドを開環する。これは、9位で求核またはハロゲン基を導入すると同時に行うことができる。
【化22】

【0069】
このようにして、7および8位間に新たな二重結合を生成させることができるが、これはさらなる官能化対する多くの可能性を切り開く。例えば、単純なジヒドロキシル化は、2つの新たな区別されたヒドロキシ基を有する、高度に官能化された構造を生み出す。
【化23】

【0070】
このような思想による組合せ保護およびハロゲン導入のさらなる例は以下の通りである。
【化24】

ハロゲンは次いで他の基と容易に交換される:
【化25】

【0071】
本発明の他の態様においては、第二の二重結合(4および5位)も立体選択的にヒドロキシル化される。3位にカルボニル基が存在する場合は、さらに容易に二重結合が生じるが、その理由は、カルボニル基がアリルアルコールの原位置形成を行なえるからであり、それが酸化プロセスにおいて役割を果たすことを示しているのかもしれない、と我々は考えている。したがって、穏やかな条件下では:
【化26】

【0072】
この場合、ヒドロキシル基がβ面で出現するが、これは立体電子的理由のためと我々は考えている。異なる立体化学が望まれるならば、適切な酸化またはエピマー化条件を選択しうる。例えば、選択的酸性または塩基性条件下で4位のヒドロキシがエピマー化する。一方、DEAD、PhPおよび酸、例えば安息香酸またはp‐ニトロ安息香酸を用いるような、Mitsunobu型反応によるヒドロキシル反転も用いられる。多くの場合、Mitsunobuによる反転には他のヒドロキシル基の保護を要する。Mitsunobu反応による反転の更なる詳細はMitsunobu,O., Synthesis,1,1981、または、Hughes,D.L., Org.Reactions,1992,42,335に記載されている。
【0073】
ジヒドロキシル化はWittig反応の生成物上で行うことができ、この場合、2つの区別されたヒドロキシ基が7位および10位に導入される。
【化27】

【0074】
ジヒドロキシル化の代わりに、例えば、穏やかな条件下において、過酸化物でエポキシ化を行う場合、Coreyの条件下で直接得られるエポキシドと比較して、7位で反対の立体配置を有するエポキシドが得られる。
【化28】

【0075】
そのため、すべてこれらの反応を経るとしても、我々は異なる位置で立体化学をなお制御しうるのである。生物学的に活性な化合物の異なる立体異性体へ下流で到達する上で、このことは我々に適切な立体配置の中間体を製造させられる。
【0076】
酸化反応の別な例は、8位と9位と間の二重結合のエポキシ化である。用いる酸化系および存在する保護基に応じて、エポキシ化はある立体配置または他の立体配置を与える。
【化29】

【0077】
以下は、この種の反応のいくつかの例である。
【化30】

【0078】
さらに、これらの化合物は選択的に脱保護でき、交換される保護基またはエポキシドは求核基またはハロゲンを用いて開環できる。例えば、
【化31】

【0079】
もちろん、式IVの出発化合物から二重エポキシ化が生じ得る。
【化32】

【0080】
酸化を行なう場合、カルボニル基が既に官能化されていれば、より強い酸化条件、例えばRuClまたは類似系の使用が必要である。
【化33】

【0081】
この場合には、用いられる酸化剤の量または反応の条件に応じ、過剰酸化が生じて、良好な収率で、8位に新たなカルボニルを形成できることもあり、これは新たな可能性への道を開く。カルボニルはこの位置で形成されるが、その理由は、この位置が熱力学的により安定だからである。両化合物は周知の操作で容易に分離できる。
【0082】
ジヒドロキシル化またはケトヒドロキシル化の条件は制御することができる。酸化剤の使用が少量であると、ジヒドロキシ化合物のみが得られる。
【化34】

【0083】
ケトヒドロキシル化反応に関する試薬および条件のさらなる情報は、例えばPlietker,B., J.Org.Chem.,2003,68,7123-7125およびJ.Org.Chem.,xxx ” The RuO4-catalyzed ketohydroxylation. Part 1. Development, Scope and Limitation”に記載されているが、これらは引用されることにより本明細書の開示の一部とされる。
【0084】
炭素(10)が7位に存在する場合、カルボニルは代わりに9位で形成される。得られる生成物の残部は、おそらく、熱力学的により安定な化合物を生じるエン‐ジオール平衡のせいであろう。
【化35】

【0085】
これらの化合物は慣用的操作で容易に分離される。この工程を通じて、7位の代わりに8または9位にカルボニル基が導入される。
【0086】
さらなる保護基の導入により、ここから、完全な直交および完全な位置選択的保護が得られる。
【化36】

【0087】
vic‐ヒドロキシル基の存在は、所望であればジオール保護基の使用から、それら2つの同時保護を可能にする。用いうるジオール保護基の中で、我々はO,O‐アセタール、例えばイソプロピリデンアセタール(アセトニド);シクロヘキシリデンおよびシクロペンチリデンアセタール;アリールメチレンアセタール;メチレンアセタール;ジフェニルメチレンアセタール;1,2‐ジアセタール、例えばジスピロケタール(ジスポーク)誘導体、シクロヘキサン‐1,2‐ジアセタール、ブタン‐2,3‐ジアセタール;シリレン誘導体;1,1,3,3‐テトライソプロピルジシロキサニリデン誘導体またはN,O‐アセタールを有している。ジオール保護基の追加例は、Greene and Wuts’ “Protective Groups in Organic Synthesis”,John Wiley & Sons,Inc.,New York,1999のような参考文献でみられる。加えて、例えばフェニルホウ酸を用いて、ボロランが2つのvic‐ヒドロキシ基で形成される。
【0088】
vic‐保護を有する化合物の一例は、
【化37】

この場合、7員環は、保護された2個のOHのアキシアル‐エクアトリアル位を調整している。
【0089】
代わりに、ジヒドロキシル化および保護は同時に行なってもよい。
【化38】

【0090】
または、所望により、ヒドロキシ基の1つのみが、それらの異なる性質(一級 vs.三級アルコール)のために選択的に保護される。
【化39】

【0091】
用いる保護基に応じて、第二ジヒドロキシル化の立体化学が制御される。例えば、
【化40】

【0092】
したがって、第二のジヒドロキシル化およびケトヒドロキシル化が熱力学的因子に依存することを避けるために、代わりに適切な保護基を用いて立体選択性が化学的に制御される。立体配座はこれらの反応で重要な役割を果たす。例えば、
【化41】

【0093】
2つの異なる位置に同時に結合された、またはあるサイズの保護基を使用することにより、生成物の立体化学を制御し得る。
【0094】
さらに、例えばメチル(トリフェニルホスホラニリデン)アセテートを用いた、カルボニル基における官能化求核剤の反応と、8位に存在する未保護ヒドロキシル基とのラクトン化を介して、カルボラクトンが得られる。
【化42】

【0095】
または、それより強い条件下で、
【化43】

再度、追加反応をさらに実施し得る、多数の官能基を有した新規構造を得る。
【0096】
代わりの保護系として、オルトエステルの形成がある。これは、非常に正確な立体配座制御と、ヒドロキシ基3個の同時保護とを付与する。適切な条件下で、エステル保護ヒドロキシ基から出発してオルトエステルが形成される。必要な条件に関するさらなる情報は、例えばGiner JL ら, J.Org.Chem., 2002,67:2717-2720 ”A biomimetic approach to the synthesis of an antiviral marine steroidal orthoester”および、当該文献の参考文献に記載されており、これらの文献は引用されることにより本明細書の開示の一部とされる。こうして、水素結合で安定化された下記タイプの構造が容易に得られる。
【化44】

【0097】
これらの化合物に至る経路の例は、
【化45】

【0098】
既に言及したように、例えば下記スキームに従い、所望の位置に官能基を移動および導入するために、アリル転位が有利に用いられる。
【化46】

【0099】
ヒドロキシル基が保護されている場合、適切な条件下で‐CHOR基またはいずれかの他の基が、この位置において代わりに移動し得る。
【0100】
この方策は、下記タイプの構造への立体特異的アクセスを付与する。
【化47】

【0101】
このような転位の例は、
【化48】

【0102】
下記スキームは、既に記載された反応の基本セットを用いる、可能性を開くさらなる例を示したものであり、導入される基が立体特異的に制御される。この場合、Zは‐CH‐であるが、それは上記した定義のうち、いずれであってもよく、とりわけ、Zはキラル中心を有することができる。この場合、エナンチオ選択的反応が可能となる。
【化49】

【0103】
これら反応のうち1つにおいて、5位の保護ヒドロキシル基はエクアトリアル位で存在し、容易に脱保護される。こうして、この位置は別な反応へアクセスできるようになる。例えば、
【化50】

【0104】
こうして、カルボニル基も5位に導入できる。
【0105】
本発明の化合物が、ラクタム環を開環し、その後のレトロアルドールまたはレトロ‐Staudinger様反応を伴うプロセスによるアセテート部分の除去を経て、イノシトール類およびコンズリトール類へ至る適切な前駆体であることは、当業者に容易に明らかとなるであろう。
【化51】

【0106】
それらは、例えば以下で提示されるような合成操作に従い、パンクラスチスチンのような重要な天然産物へ至る適切な前駆体でもある。
【化52】

【0107】
これら有益な生物学的化合物の他の類似物も、我々がここで記載しているような異なる構造から出発すれば、調製することができる。
【0108】
上記から理解され、当業者に明らかなように、記載された化合物の特殊な立体配座および反応特性により、非常に多くの可能性が得られる。得られた式Iの化合物が、とりわけ、5、6、7、8、9および10位において入念に導入された官能基を有し、かつ所望の立体化学を有するであろう、と指摘することは重要である。基本的反応の異なる組合せによって、同様の構造を得ることができる。異なる保護基の導入は、適切な保護‐脱保護の方策を選択することにより、非常に選択的な別の反応への経路を開く。
【0109】
これらの化合物を得るための工程は、上記の式IVの化合物から出発して、以下において選択される反応の基本セットを適用することにより、容易に設計できる。
a)ヒドロキシル化、ジヒドロキシル化またはケトヒドロキシル化:上記で説明したように、ヒドロキシル化される位置に応じて、穏やかな(例えばOsO/Nオキシドアミン)または強い系(例えばRuCl)を用いる。代替系も考えられる。
b)カルボニル基の求核攻撃:例えばsp、sp2またはsp3 Cのカルバニオンの場合、カルバニオンは原位置または水素化物で調製または生成できる。求核攻撃から、用いられる試薬に応じて、新たな官能基、新たなカーボネート化構造と、更にはエポキシドまたは二重結合の導入も行なえる。
c)ヒドロキシル反転:例えばMitsunobu条件下で、例えばエピマー化または反転による。
d)ヒドロキシルまたはカルボニル保護:上記で説明したように、上記のような条件下で同一または異なる保護基を用いる。
e)アリル転位:二重結合の移動を行なわせる。
【0110】
これら操作の各々は周知であり、有機合成の当業者であれば、例えば上記した参考文献に示されたものから、適切な試薬を選択し得るが、それらを本発明の構造に適用すると、反応性および選択性に関する予想外の結果が得られる。
【0111】
全ての化合物はラセミ混合物として得られる。しかしながら、エナンチオ純粋が望まれる場合、上記のように、Zおよび/またはW基にキラル中心を導入するか、またはキラル試薬または触媒を用いることにより、達成できる。したがって、上記式で表わされる本発明の化合物には、立体中心またはジアステレオマーの存在に応じて、ラセミ混合物、純粋エナンチオマー、またはそれらの種々の混合物も含まれる。単一の異性体、エナンチオマーまたはジアステレオマー、およびそれらの混合物も、本発明の範囲内に属する。異なるジアステレオマーの混合物は従来技術により分離される。
【0112】
特にことわりのない限り、本発明の化合物は、1以上の同位体濃縮原子が存在することにおいてのみ異なる化合物も含まれることを意味する。例えば、重水素または三重水素による水素の置換、または、13C‐もしくは14C‐濃縮炭素、または15N‐濃縮窒素による炭素の置換を除く本構造を有する化合物も、本発明の範囲内に属する。
【0113】
本発明の化合物は、遊離化合物または溶媒和物(例えば、水和物)として結晶形態で存在してもよく、両形態とも本発明の範囲内に属することが意図されている。溶媒和の方法は当業界で通常知られている。
【0114】
本発明は、実施例より更に説明されるが、特許請求の範囲に記載された発明の開示を制限するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0115】
一般的方法および材料
下記の全ての反応は、別記されないかぎり、アルゴン雰囲気下で行なわれたものである。用いられた溶媒は、蒸留されて使用前にアルゴン雰囲気下で乾燥されたものである。全ての出発物質は、市販のもの(Aldrich、FlukaおよびMerck)を購入して、さらなる精製を行わずに用いた。フラッシュクロマトグラフィーは230〜400メッシュシリカゲルMerck担持のカラムで実施された。TLCはシリカゲルMerck(Kieselgel 60F-254)で実施された。
【0116】
融点(mp)は、Reichert Microscopic Hot-Stageを用いて測定したが、未補正である。Hおよび13C NMRスペクトルは、別記されないかぎり、内部標準として(CHSiを用い、溶媒としてCDClを用いて、Varian Gemini-200およびVarian Inova-300スペクトロメーターにより測定された。Hおよび13C NMRスペクトルデータは、いずれも溶媒の残渣サインを基準とした部/百万(δ)で記録されている(CDClHおよび13C NMRで各々7.26ppmおよび77.0ppm)。Hおよび13C NMR表示は:s(シングレット);s br.(ブロードシングレット);d(ダブレット);t(トリプレット);q(クァルテット);m(マルチプレット)である。赤外(IR)スペクトルは、Perkin-Elmer FT‐IRスペクトロメーターを用いて記録された。UVスペクトルはPerkin-Elmer 402スペクトロメーターを用いて記録された。低分解能質量(LRMS)スペクトルは、70eVの直接注入システム(EI)を用いたHewlett Packard 5973 MSDスペクトロメーターによって得た。微量分析データ(E.A.)は、Instrumental Analysis Department of Instituto de Quimica Organica General(C.S.I.C.)において、Perkin-Elmer 240CおよびHeraus CHN‐O装置により得た。
【0117】
Z=‐CH‐の下記化合物は、1‐アザスピロ〔3.5〕ノナン‐2‐オンの誘導体として命名され、下記数値表記に従い番号付けされている。
【化53】

【0118】
例1
rac‐(4R,5S,6S)‐1‐ベンジルオキシ‐5,6‐ジヒドロキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2,7‐ジオン(2)の調製
【化54】

アセトン(12ml)中メソ‐1‐ベンジルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐5,8‐ジエン‐2,7‐ジオン(1)(804mg,3.150mmol)の溶液に、室温でHO(2.4ml)、N‐メチルモルホリン N‐オキシド(812mg,6.930mmol)および四酸化オスミウム(2.37ml,2‐メチル‐2‐プロパノール中2.5wt%溶液,0.189mmol)を連続的に加えた。反応が完了するまで(1h,TLCモニター,AcOEt)、得られた混合液を室温で攪拌し、次いで10%Na水溶液(3ml)で反応停止させた。20分間後、混合液をAcOEt(5×6ml)で抽出した。合わせた有機抽出液をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン‐AcOEt,3:2)により精製して、白色固体物としてrac‐(4R,5S,6S)‐1‐ベンジルオキシ‐5,6‐ジヒドロキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2,7‐ジオン(2)を得た(419mg,46%)。
【0119】
=0.47(TLC,AcOEt);収率46%;白色固体物;H‐NMR(200MHz,CDOD):δ7.56(5H,s,Ph),6.69(1H,部A系AB,J9,8=10.1Hz,H‐9),6.65(1H,部B系AB,J8,9=10.1Hz,H‐8),5.19(1H,部A系AB,J=11.2Hz,OCPh),5.14(1H,部B系AB,J=11.2Hz,OCPh),4.56(1H,d,J=2.9Hz,H‐6),4.31(1H,m,H‐5),3.32(1H,部A系AB,J=14.4Hz,H‐3),2.93(1H,部B系AB,J=14.4,H‐3);13C‐NMR(75MHz,CDOD):δ199.0,167.0,146.8,136.7,131.2,131.1,130.1,80.9,76.1,74.2,67.3,43.4;IR(KBr):ν3429,1772,1692,1631,1450,1382,1053,698cm−1;LRMS(API‐ES):m/z 312(M+Na),290(M+H)
【0120】
例2
rac‐(4R,5S,6S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐5‐ヒドロキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2,7‐ジオン(3)の調製
【化55】

DMF(0.6ml)中rac‐(4R,5S,6S)‐1‐ベンジルオキシ‐5,6‐ジヒドロキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2,7‐ジオン(2)(123mg,0.425mmol)およびイミダゾール(35mg,0.510mmol)の溶液に、0℃でDMF(1.2ml)中tert‐ブチルジメチルシリルクロリド(77mg,0.510mmol)の溶液を加えた。室温で12時間後、反応をHO(3ml)で停止させ、混合液をAcOEt(3×5ml)で抽出した。合わせた抽出液を飽和CuSO水溶液(2×10ml)および塩水(2×10ml)で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン‐AcOEt,5:2)により精製して、白色固体物としてrac‐(4R,5S,6S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐5‐ヒドロキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2,7‐ジオン(3)を得た(133mg,78%)。
【0121】
=0.56(TLC,ヘキサン‐AcOEt,1:1);収率78%;白色固体物;H‐NMR(200MHz,CDCl):δ7.40‐7.29(5H,m,Ph),6.24(1H,部A系AB,J9,8=10.1Hz,H‐9),5.78(1H,部B系AB,J8,9=10.1Hz,H‐8),5.00(1H,部A系AB,J=11.4Hz,OCPh),4.87(1H,部B系AB,J=11.4Hz,OCPh),4.36(1H,d,J=2.7Hz,H‐6),4.01(1H,m,H‐5),3.25(1H,部A系AB,J=14.6Hz,CH),2.63(1H,部B系AB,J=14.6Hz,CH),2.56(1H,d,J=3.8Hz,OH)0.85(9H,s,C(CH),0.09(3H,s,SiCH),0.08(3H,s,SiCH);13C‐NMR(75MHz,CDCl):δ195.4,165.5,145.2,134.9,129.6,129.5,129.3,128.8,79.3,75.5,71.7,64.7,41.9,25.6,18.1,−4.9,−5.3;IR(KBr):ν3453,2949,2929,2855,1767,1682,1256,1119,1088,980,843,782cm−1;LRMS(API‐ES):m/z 829(2M+Na),426(M+Na),404(M+H)
【0122】
化合物3の構造および相対的立体配置は、イメージプレート検出器装備のMARRESEARCH mar345回折計を用いて確認した。X線結晶データおよび原子座標は、以下の通りである。
結晶データ
実験式 C2129NOSi
式量 403.54
温度 293(2)K
波長(Å) 0.71073
晶系,空間群 単斜晶,P21/c
単位格子寸法 a=24.9570(10)Å
b=7.8220(10)(7)
c=11.5760(10)
β=92.2070(10)°
体積 2258.1(4)Å
Z,計算密度 4,1.187Mg/m
μ(mm−1) 0.133
F(000) 864
【0123】
原子座標(×10)および等価等方性変位パラメーター(Å×10
U(eq)は直交Uijテンソルのトレースの1/3として規定される。
【表1】

【0124】
例3
rac‐(4R,5S,6S,8S,9S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐5,8,9‐トリヒドロキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐2,7‐ジオン(4)の調製
【化56】

アセトン(0.45ml)中rac‐(4R,5S,6S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐5‐ヒドロキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2,7‐ジオン(3)(50mg,0.124mmol)の攪拌溶液に、室温でHO(0.09ml)、N‐メチルモルホリンN‐オキシド(58mg,0.496mmol)および四酸化オスミウム(93μL,2‐メチル‐2‐プロパノール中2.5wt%溶液,7.4・10−3mmol)を連続的に加えた。反応が完了するまで(18h,TLCモニター,ヘキサン‐AcOEt,1:1)、得られた混合液を室温で攪拌し、次いで10%Na水溶液(20滴)で反応停止させた。20分間後、混合液をシリカゲルに通してMeOHで濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン‐AcOEt,2:1)により精製して、白色固体物としてrac‐(4R,5S,6S,8S,9S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐5,8,9‐トリヒドロキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐2,7‐ジオン(4)を得た(26mg,48%)。
【0125】
=0.46(TLC,ヘキサン‐AcOEt,1:1);収率48%;白色固体物;H‐NMR(200MHz,CDCl):δ7.49‐7.30(5H,m,Ph),5.11(1H,部A系AB,J=10.6Hz,OCPh),5.05(1H,部B系AB,J=10.6Hz,OCPh),4.68(1H,dd,J=4.3,3.7Hz,H‐8),4.44‐4.32(2H,m,H‐5およびH‐6),4.22(1H,dd,J=1.8,1.5Hz,H‐9),3.48(1H,d,J=4.3Hz,HO‐C(8)),3.36(1H,部A系AB,J=14.3Hz,CH),2.73(1H,d,J=1.8Hz,HO‐C(9)),2.45(1H,部B系AB,J=14.3Hz,CH),2.28(1H,s br.,HO‐C(5))0.85(9H,s,C(CH),0.13(3H,s,SiCH),0.04(3H,s,SiCH);13C‐NMR(75MHz,CDCl):δ204.8,166.1,135.1,129.4,129.0,128.5,78.9,76.4,75.5,72.2,67.4,65.7,37.5,25.6,18.0,−5.0,−5.3;IR(KBr):ν3435,2949,2927,2855,1761,1740,1631,1261,1110,1078,837cm−1;LRMS(API‐ES):m/z 897(2M+Na),460(M+Na),438(M+H)
【0126】
例4
rac‐(4R,5S,6S,8S,9S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐5‐ヒドロキシ‐8,9‐ジメチルメチレンジオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐2,7‐ジオン(5)の調製
【化57】

無水アセトン(0.5ml)中rac‐(4R,5S,6S,8S,9S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐5,8,9‐トリヒドロキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐2,7‐ジオン(4)(50mg,0.115mmol)および2,2‐ジメトキシプロパン(71μL,0.575mmol)の攪拌溶液に、室温で触媒量のp‐TsOH(1%mmol)を加えた。得られた混合液を室温で18時間攪拌し、次いで飽和NaCO水溶液(1ml)で反応停止させ、AcOEt(3×2ml)で抽出した。合わせた有機抽出液を塩水(3ml)で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン‐AcOEt,3:1)により精製して、白色固体物としてrac‐(4R,5S,6S,8S,9S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐5‐ヒドロキシ‐8,9‐ジメチルメチレンジオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐2,7‐ジオン(5)(27mg,49%)および未反応出発物質(5)(13mg,24%)を得た。
【0127】
=0.77(TLC,ヘキサン‐AcOEt,1:1);収率49%;白色固体物;H‐NMR(200MHz,CDCl):δ7.40‐7.34(5H,m,Ph),5.05(1H,部A系AB,J=10.2Hz,OCPh),5.02(1H,部B系AB,J=10.2Hz,OCPh),4.84(1H,d,J=5.4Hz,H‐8),4.45(1H,d,J=5.4Hz,H‐9),4.39(1H,d,J=2.7Hz,H‐6),4.35(1H,dd,J=5.9,2.7Hz,H‐5),3.45(1H,部A系AB,J=14.2Hz,CH),2.56(1H,d,J=5.9Hz,OH),2.48(1H,部B系AB,J=14.2Hz,CH),0.86(9H,s,C(CH),0.11(3H,s,SiCH),0.06(3H,s,SiCH);13C‐NMR(75MHz,CDCl):δ203.6,165.8,135.0,129.3,128.9,128.5,111.3,79.8,79.0,78.9,77.7,66.1,65.4,39.4,26.9,25.9,25.5,18.0,−5.1,−5.3;IR(KBr):ν3434,2930,2855,1764,1739,1628,1453,1384,1255,1225,1111,1086,898,832,784cm−1;LRMS(API‐ES):m/z 977(2M+Na),500(M+Na),478(M+H)
【0128】
例5
rac‐(4R,5S,6S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2,7‐ジオン(6)の調製
【化58】

1‐トリメチルシリルイミダゾール(0.5ml,3.220mmol)中rac‐(4R,5S,6S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐5‐ヒドロキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2,7‐ジオン(3)(130mg,0.322mmol)の溶液を室温で16時間攪拌した。反応をNaPO 0.1M緩衝液(2ml)で停止させ、混合液をAcOEt(3×4ml)で抽出した。合わせた抽出液を飽和CuSO水溶液(1×8ml)および塩水(2×8ml)で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン‐AcOEt,5:1)により精製して、白色固体物としてrac‐(4R,5S,6S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2,7‐ジオン(6)を得た(100mg,65%)。
【0129】
=0.50(TLC,ヘキサン‐AcOEt,3:1);収率65%;白色固体物;H‐NMR(200MHz,CDCl):δ7.42‐7.28(5H,m,Ph),6.09(1H,部A系AB,J9,8=10.3Hz,H‐9),5.68(1H,部B系AB,J8,9=10.3Hz,H‐8),4.98(1H,部A系AB,J=11.6Hz,OCPh),4.84(1H,部B系AB,J=11.6Hz,OCPh),4.13(2H,d,J=2.4Hz,H‐5およびH‐6),3.40(1H,m,CH),2.47(1H,d,J=14.2Hz,CH),0.79(9H,s,C(CH),0.16(9H,s,C(CH),0.08(3H,s,SiCH),0.00(3H,s,SiCH);LRMS(API‐ES):m/z 973(2M+Na),498(M+Na),476(M+H);LRMS(EI):m/z 475(M,3),460(2),418(21),384(5),368(4),354(6),340(4),324(3),309(13),269(43),179(24),147(34),91(100),73(57).
【0130】
例6
rac‐(4R,5S,6S,7S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐7‐シアノ‐5,7‐ビス(トリメチルシリルオキシ)‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2‐オン(7)の調製
【化59】

rac‐(4R,5S,6S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2,7‐ジオン(3)(200mg,0.496mmol)およびトリメチルシリルシアニド(607μL,4.460mmol)の混合液に室温(水浴で冷却)でDABCO(6mg,0.050mmol)をゆっくり加えた。混合液を室温で14時間攪拌し、次いで減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン‐AcOEt,5:1)により精製して、橙色固体物としてrac‐(4R,5S,6S,7S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐7‐シアノ‐5,7‐ビス(トリメチルシリルオキシ)‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2‐オン(7)を得た(254mg,89%)。
【0131】
=0.61(TLC,ヘキサン‐AcOEt,3:1);収率89%;橙色固体物;H‐NMR(300MHz,CDCl):δ7.37(5H,s,Ph),5.72(1H,d,J=10.0Hz,H‐9),5.21(1H,dd,J=10.0,1.9Hz,H‐8),4.96(1H,部A系AB,J=11.6Hz,OCPh),4.82(1H,部B系AB,J=11.6Hz,OCPh),4.49(1H,d,J=1.5Hz,H‐6),4.10(1H,t,J=1.9,1.5Hz,H‐5),3.32(1H,部A系AB,J=13.8Hz,H‐3),2.26(1H,部A系AB,J=13.8Hz,H‐3),0.80(9H,s,C(CH),0.28(9H,s,Si(CH),0.20(9H,s,Si(CH),0.09(3H,s,SiCH),0.04(3H,s,SiCH);13C‐NMR(75MHz,CDCl):δ165.7,135.6,132.6,129.3,128.8,128.7,126.9,119.7,78.8,78.6,69.8,67.0,65.6,40.6,25.8,18.2,1.4,0.2,−4.1,−4.6,−7.0;IR(NaCl,CCl):ν2957,2891,2855,1785,1255,1101,878,843,753cm−1;LRMS(API‐ES):m/z 1171(2M+Na),598(M+Na),575(M+H)
【0132】
例7
rac‐(4R,5S,6S,7S)‐1‐ベンジルオキシ‐7‐シアノ‐5,6,7‐トリス(トリメチルシリルオキシ)‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2‐オン(8)の調製
【化60】

rac‐(4R,5S,6S)‐1‐ベンジルオキシ‐5,6‐ジヒドロキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2,7‐ジオン(2)(44mg,0.152mmol)およびトリメチルシリルシアニド(186μL,1.368mmol)の混合液に室温(水浴で冷却)でDABCO(2mg,0.015mmol)をゆっくり加えた。混合液を室温で14時間攪拌し、次いで減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン‐AcOEt,5:1)により精製して、黄色固体物としてrac‐(4R,5S,6S,7S)‐1‐ベンジルオキシ‐7‐シアノ‐5,6,7‐トリス(トリメチルシリルオキシ)‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2‐オン(8)を得た(51mg,62%)。
【0133】
=0.50(TLC,ヘキサン‐AcOEt,3:1);収率62%;黄色固体物;H‐NMR(200MHz,CDCl):δ7.37(5H,s br.,Ph),5.33‐5.20(2H,m,H‐8およびH‐9),4.96(1H,部A系AB,J=11.6Hz,OCPh),4.81(1H,部B系AB,J=11.6Hz,OCPh),4.41(1H,d,J=1.5Hz,H‐5またはH‐6),4.08(1H,t,J=1.5Hz,H‐6またはH‐5),3.27(1H,部A系AB,J=14.1Hz,CH),2.27(1H,部B系AB,J=14.1Hz,CH),0.27(9H,s,Si(CH),0.20(9H,s,Si(CH),0.08(9H,s,Si(CH);13C‐NMR(75MHz,CDCl):δ165.9,135.6,132.8,129.2,128.8,128.7,126.7,119.6,78.8,78.4,69.4,66.8,65.5,40.3,1.3,0.4,0.2;IR(NaCl,CCl):3391,2958,2898,2222,1785,1455,1400,1253,1168,1104,1030,880,843,752cm−1;LRMS(API‐ES):m/z 1087(2M+Na),555(M+Na),533(M+H)
【0134】
例8
rac‐(4R,5S,6S,7S)‐1‐ベンジルオキシ‐7‐シアノ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐5,7‐ビス(メトキシカルボニルオキシ)‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2‐オン(9)の調製
【化61】

rac‐(4R,5S,6S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐5‐ヒドロキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2,7‐ジオン(3)(95mg,0.235mmol)およびメチルシアノホルメート(169μL,2.115mmol)の混合液に室温でDABCO(3mg,0.023mmol)を加えた。混合液を室温で14時間攪拌し、次いで減圧下で濃縮した。残渣をEtOで摩砕し、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させて、褐色油状物としてrac‐(4R,5S,6S,7S)‐1‐ベンジルオキシ‐7‐シアノ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐5,7‐ビス(メトキシカルボニルオキシ)‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2‐オン(9)(110mg,86%)を得、これを更に精製することなく次の反応に用いた。
【0135】
=0.65(TLC,ヘキサン‐AcOEt,1:1);収率86%;褐色油状物;H‐NMR(200MHz,CDCl):δ7.39(5H,s br.,Ph),5.73(1H,dd,J=10.3,2.0Hz,H‐8またはH‐9),5.46(1H,d,J=10.3Hz,H‐9またはH‐8),5.40(1H,d,J=1.8Hz,H‐5またはH‐6),4.95(1H,部A系AB,J=11.5Hz,OCPh),4.87(1H,部B系AB,J=11.5Hz,OCPh),4.77(1H,dd,J=2.0,1.8Hz,H‐6またはH‐5),3.85(3H,s,OCH),3.84(3H,s,OCH),3.29(1H,部A系AB,J=14.4Hz,CH),2.44(1H,部B系AB,J=14.4Hz,CH),0.79(9H,s,C(CH),0.07(3H,s,SiCH),0.04(3H,s,SiCH);13C‐NMR(75MHz,CDCl):δ165.5,154.2,152.9,135.2,133.9,129.4,129.3,129.0,128.9,123.2,115.1,79.1,72.5,72.3,70.9,63.1,55.7,55.5,41.7,25.5,25.1,17.9,−4.5,−5.5;IR(NaCl,CCl):3355,2958,2927,2855,2233,1786,1763,1442,1274,1255,1155,1050,834,783cm−1;LRMS(API‐ES):m/z 1115(2M+Na),569(M+Na),(M+H);LRMS(EI):m/z 546(M,2),489(5),455(1),413(3),337(18),323(4),295(17),216(10),190(17),133(16),91(100).
【0136】
例9
rac‐(4R,5S,6S,7R,8S,9S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐7‐シアノ‐8,9‐ジヒドロキシ‐5,7‐ビス(トリメチルシリルオキシ)‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐2‐オン(10a)およびrac‐(4R,8S,9S,7S,5S)‐1‐ベンジルオキシ‐8‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐7‐シアノ‐5‐ジヒドロキシ‐7,9‐ビス(トリメチルシリルオキシ)‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐2,6‐ジオン(10b)の調製
【化62】

AcOEt(1ml)およびCHCN(1ml)中rac‐(4R,5S,6S,7S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐7‐シアノ‐5,7‐ビス(トリメチルシリルオキシ)‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2‐オン(7)(100mg,0.174mmol)の溶液に、0℃で激しく攪拌しながらHO(0.35ml)中塩化ルテニウム(III)水和物(9mg,0.043mmol)および過ヨウ素酸ナトリウム(71mg,0.331mmol)の溶液を加えた。5分間後に反応を飽和重亜硫酸ナトリウム水溶液(1.5ml)で停止させ、AcOEt(3×2ml)で抽出した。合わせた有機抽出液をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン‐AcOEt,5:1)により精製して、白色固体物としてrac‐(4R,5S,6S,7R,8S,9S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐7‐シアノ‐8,9‐ジヒドロキシ‐5,7‐ビス(トリメチルシリルオキシ)‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐2‐オン(10a)(63mg,59%)および白色固体物としてrac‐(4R,8S,9S,7S,5S)‐1‐ベンジルオキシ‐8‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐7‐シアノ‐5‐ジヒドロキシ‐7,9‐ビス(トリメチルシリルオキシ)‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐2,6‐ジオン(10b)(11mg,10%)を得た。
【0137】
rac‐(4R,5S,6S,7R,8S,9S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐7‐シアノ‐8,9‐ジヒドロキシ‐5,7‐ビス(トリメチルシリルオキシ)‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐2‐オン(10a)
=0.17(TLC,ヘキサン‐AcOEt,3:1);収率59%;白色固体物;H‐NMR(200MHz,CDCl):δ7.47‐7.33(5H,m,Ph),5.21(1H,部A系AB,J=10.1Hz,OCHPh),5.02(1H,部B系AB,J=10.1Hz,OCHPh),4.74(1H,d,J=2.1Hz,H‐8またはH‐7),4.10(1H,d,J=2.1Hz,H‐7またはH‐8),3.92(1H,m,H‐6またはH‐5),3.83(1H,m,H‐5またはH‐6),3.27(1H,部A系AB,J=14.0Hz,H‐3),3.27(1H,s,OH),2.15(1H,部B系AB,J=14.0Hz,H‐3),2.01(1H,s,OH),0.86(9H,s,C(CH),0.30(9H,s,Si(CH),0.14(3H,s,SiCH),0.13(9H,s,Si(CH),0.11(3H,s,SiCH);13C‐NMR(50MHz,CDCl):δ166.0,134.9,128.9,128.5,119.3,97.1,78.9,78.7,74.8,73.9,70.9,68.8,65.2,38.6,26.1,18.3,1.8,0.4,−3.8,−5.0;IR(KBr):ν3434,3028,2957,2927,2898,2855,2152,1762,1630,1253,1169,1107,846,740cm−1;LRMS(API‐ES):m/z 1240(2M+Na),631(M+Na),609(M+H)
【0138】
化合物10aの構造は、ENRAF-NONIUS CAD-4回折計を用いて、X線回折により確認した。得られた結晶データおよび原子座標は以下の通りである。
結晶データ
実験式 C2848Si
式量 608.95
温度 293(2)K
波長(Å) 0.71073
晶系,空間群 単斜晶,P21/n
単位格子寸法 a=13.862(13)Å
b=19.504(7)
c=26.674(12)
β=102.28(5)°
体積 7047(8)Å
Z,計算密度 8,1.148Mg/m
μ(mm−1) 0.176
F(000) 2624
【0139】
原子座標(×10)および等価等方性変位パラメーター(Å×10
U(eq)は直交Uijテンソルのトレースの1/3として規定される。
【表2】


【0140】
rac‐(4R,8S,9S,7S,5S)‐1‐ベンジルオキシ‐8‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐7‐シアノ‐5‐ジヒドロキシ‐7,9‐ビス(トリメチルシリルオキシ)‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐2,6‐ジオン(10b)
=0.33(TLC,ヘキサン‐AcOEt,3:1);収率10%;白色固体物;H‐NMR(200MHz,CDCl):δ7.43‐7.31(5H,m,Ph),5.20(1H,部A系AB,J=11.0Hz,OCHPh),5.17(1H,部B系AB,J=11.0Hz,OCHPh),4.74(1H,br.s,H‐5),4.62(1H,d,J=2.3Hz,H‐8),4.27(1H,d,J=2.3Hz,H‐9),3.83(1H,br.s,OH),3.46(1H,部A系AB,J=13.2Hz,H‐3),2.48(1H,部B系AB,J=13.2Hz,H‐3),0.91(9H,s,C(CH),0.33(9H,s,Si(CH),0.20(3H,s,SiCH),0.18(3H,s,SiCH),0.12(9H,s,Si(CH);13C‐NMR(75MHz,CDCl):δ202.4,162.6,134.7,129.2,128.6,128.4,117.0,79.5,78.4,76.5,75.8,72.9,66.5,39.2,25.9,18.4,1.4,0.2,−4.2,−4.8;IR(KBr):ν3449,2957,2898,2855,2111,1768,1755,1734,1631,1256,1182,1144,1080,922,847,780cm−1;LRMS(API‐ES):m/z 1235(2M+Na),629(M+Na),606(M+H)
【0141】
例10
rac‐(4R,5S,6S,7S,8S,9S)‐1‐ベンジルオキシ‐6,8‐ビス(tert‐ブチルジメチルシリルオキシ)‐7‐シアノ‐9‐ヒドロキシ‐5,7‐ビス(トリメチルシリルオキシ)‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐2,7‐ジオン(11)の製造
【化63】

DMF(0.25ml)中rac‐(4R,5S,6S,7R,8S,9S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐7‐シアノ‐8,9‐ジヒドロキシ‐5,7‐ビス(トリメチルシリルオキシ)‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐2,7‐ジオン(10a)(63mg,0.103mmol)およびイミダゾール(8mg,0.124mmol)の溶液に、0℃でDMF(0.5ml)中tert‐ブチルジメチルシリルクロリド(19mg,0.124mmol)の溶液を加えた。室温で16時間後、反応をHO(2ml)で停止させ、混合液をAcOEt(3×4ml)で抽出した。合わせた抽出液を飽和CuSO水溶液(2×8ml)および塩水(2×8ml)で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン‐AcOEt,5:1)により精製して、白色固体物としてrac‐(4R,5S,6S,7S,8S,9S)‐1‐ベンジルオキシ‐6,8‐ビス(tert‐ブチルジメチルシリルオキシ)‐7‐シアノ‐9‐ヒドロキシ‐5,7‐ビス(トリメチルシリルオキシ)‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐2,7‐ジオン(11)を得た(37mg,46%)。
【0142】
=0.60(TLC,ヘキサン‐AcOEt,3:1);収率46%;白色固体物;H‐NMR(200MHz,CO(CD):δ7.54‐7.42(2H,m,Ph),7.41‐7.29(3H,m,Ph),5.26(1H,部A系AB,J=10.2Hz,OCPh),5.06(1H,部B系AB,J=10.2Hz,OCPh),4.82(1H,d,J=2.4Hz,H‐5),4.70(1H,d,J=2.4Hz,OH),4.27(1H,d,J=2.4Hz,H‐6),4.16(1H,m,H‐9),3.99(1H,s br.,H‐8),3.23(1H,部A系AB,J=13.7Hz,CH),2.89(1H,部B系AB,J=13.7Hz,CH),0.91(18H,s,C(CH),0.19(6H,s,SiCH),0.18(6H,s,SiCH),0.11(18H,s,Si(CH).
【0143】
化合物11の構造は、イメージプレート検出器装備のMAR‐3200回折計を用いて、X線回折により確認した。得られた結晶データおよび原子座標は以下の通りである。
結晶データ
実験式 C2848Si
式量 608.95
温度 293(2)K
波長 0.71073Å
晶系,空間群 単斜晶,P21/c
単位格子寸法 a=11.4160(10)Å
b=22.2850(10)
c=14.8440(10)
β=104.760(10)°
体積 3651.8(4)Å
Z,計算密度 4,1.108Mg/m
吸収係数 0.170mm−1
F(000) 1312
【0144】
原子座標(×10)および等価等方性変位パラメーター(Å×10
U(eq)は直交Uijテンソルのトレースの1/3として規定される。
【表3】

【0145】
例11
スピロβ‐ラクタム1aおよび1bから各々シリルシアノヒドリン12aおよび12bの製造のための一般操作
【化64】

スピロβ‐ラクタム1a‐b(0.588mmol)およびトリメチルシリルシアニド(1.763mmol)の混合液に室温(水浴で冷却)でDABCO(10mol%)をゆっくり加えた。出発物質の消失がTLC(ヘキサン‐AcOEt,1:1)により観察されるまで混合液を室温で攪拌し(所要時間は1aの場合で6時間、1bの場合で24時間であった)、次いで減圧下で濃縮した。操作により単離されたシリルシアノヒドリン12a‐bは更に精製することなく用いられた(シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製で、シリルシアノヒドリン12a‐bおよび出発物質1a‐bの混合物を得た)。
【0146】
rac‐(4R,7S)および(4R,7R)‐1‐ベンジルオキシ‐7‐シアノ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐5,8‐ジエン‐2‐オン(12a)
=0.64(TLC,ヘキサン‐AcOEt,1:1);収率88%;褐色固体物;H‐NMR(200MHz,CDCl):δ7.37(5H,m,Ph),7.35(5H,m,Ph),6.09(2H,部AA′系AA′BB′,J5,6=10.1Hz,C=CHCO),6.06(2H,部AA′系AA′BB′,J5,6=10.1Hz,C=CHCO),5.87(2H,部BB′系AA′BB′,J6,5=10.1Hz,CH=CCO),5.79(2H,部BB′系AA′BB′,J6,5=10.1Hz,CH=CCO),4.89(2H,s,OCPh),4.87(2H,s,OCPh),2.75(2H,s,CH),2.73(2H,s,CH),0.26(9H,s,Si(CH),0.19(9H,s,Si(CH).
rac‐(4R,7S)および(4R,7R)‐1‐メトキシ‐7‐シアノ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐5,8‐ジエン‐2‐オン(12b)
=0.61(TLC,ヘキサン‐AcOEt,1:2);収率64%;褐色固体物;H‐NMR(200MHz,CDCl):δ6.26(2H,部AA′系AA′BB′,J5,6=10.1Hz,C=CHCO),6.21(2H,部AA′系AA′BB′,J5,6=10.1Hz,C=CHCO),6.09(2H,部BB′系AA′BB′,J6,5=10.1Hz,CH=CCO),6.08(2H,部BB′系AA′BB′,J6,5=10.1Hz,CH=CCO),3.76(6H,s,OCH),2.81(2H,s,CH),2.80(2H,s,CH),0.24(9H,s,Si(CH),0.23(9H,s,Si(CH).
【0147】
例12
rac‐(4R,5S,6S)‐1‐ベンジルオキシ‐5,6‐ジメチルメチレンジオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2,7‐ジオン(13)の調製
【化65】

無水アセトン(0.75ml)中rac‐(4R,5S,6S)‐1‐ベンジルオキシ‐5,6‐ジヒドロキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2,7‐ジオン(2)(109mg,0.377mmol)および2,2‐ジメトキシプロパン(0.24ml,1.885mmol)の攪拌溶液に、室温で触媒量のp‐TsOH(1%mmol)を加えた。得られた混合液を室温で18時間攪拌し、次いで飽和NaCO水溶液(1ml)で反応停止させ、AcOEt(3×2ml)で抽出した。合わせた有機抽出液を塩水(3ml)で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン‐AcOEt,5:2)により精製して、固体物としてrac‐(4R,5S,6S)‐1‐ベンジルオキシ‐5,6‐ジメチルメチレンジオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2,7‐ジオン(13)を得た(52mg,42%)。
【0148】
=0.50(TLC,ヘキサン‐AcOEt,1:1);収率42%;固体物;H‐NMR(200MHz,CDCl):δ7.50‐7.22(5H,m,Ph),6.28(1H,部A系AB,J9,8=9.9Hz,H‐9),5.91(1H,部B系AB,J8,9=9.9Hz,H‐8),4.95(1H,部A系AB,J=11.4Hz,OCPh),4.85(1H,部B系AB,J=11.4Hz,OCPh),4.27(1H,部A系AB,J=5.1Hz,H‐5またはH‐6),4.11(1H,部B系AB,J=5.1Hz,H‐6またはH‐5),6.37(1H,部A系AB,J=15.0Hz,CH),2.79(1H,部B系AB,J=15.0Hz,CH),1.34(3H,s,CH),1.27(3H,s,CH).
【0149】
例13
rac‐(4R,5S,6S,7S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐7,10‐エポキシ‐7‐メチル‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2‐オン(14)の調製
【化66】

THF(0.9ml)中粉末トリメチルスルホニウムヨージド(52mg,0.252mmol)の攪拌懸濁液に、0℃でn‐ブチルリチウム(0.16ml,ヘキサン中1.6M溶液,0.252mmol)を滴下した。この温度で15分間にわたる混合液の攪拌後、わずかな沈殿物が残留しただけであった;THF(0.6ml)中rac‐(4R,5S,6S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2,7‐ジオン(6)(100mg,0.210mmol)を滴下した。混合液を0℃で30分間、次いで室温で2時間攪拌した。反応をNaHPO 0.1M緩衝液(2.5ml)およびAcOEt(2.5ml)で停止させた。各層を分離し、水相をAcOEt(3×5ml)で抽出した。合わせた抽出液をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン‐AcOEt,8:1)により精製して、低融点白色固体物としてrac‐(4R,5S,6S,7S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐7,10‐エポキシ‐7‐メチル‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2‐オン(14)を得た(84mg,82%)。
【0150】
=0.50(TLC,ヘキサン‐AcOEt,3:1);収率82%;白色固体物;H‐NMR(300MHz,CDCl):δ7.34(5H,m,Ph),5.52(1H,d,J=10.1Hz,H‐9),5.06(1H,dd,J=10.1,1.9Hz,H‐8),5.00(1H,部A系AB,J=11.5Hz,OCPh),4.84(1H,部B系AB,J=11.5Hz,OCPh),4.17(1H,d,J=1.9Hz,H‐6),3.50(1H,t,J=1.9Hz,H‐5),3.43(1H,部A系AB,J=13.9Hz,H‐3),2.87(1H,部A系AB,J=5.0Hz,H‐10),2.73(1H,部B系AB,J=5.0Hz,H‐10),2.34(1H,部B系AB,J=13.9Hz,H‐3),0.83(9H,s,C(CH),0.14(9H,s,Si(CH),0.04(3H,s,SiCH),0.02(3H,s,SiCH);13C‐NMR(75MHz,CDCl):δ165.9,135.7,133.1,129.6,128.9,128.6,128.4,78.7,77.4,68.7,66.3,58.9,53.0,40.7,25.7,18.2,0.2,−4.9,−5.0;IR(NaCl,CCl):ν3028,2956,2857,1778,1472,1410,1253,1152,1116,987,930,879,839,778cm−1;LRMS(API‐ES):m/z 1001(2M+Na),512(M+Na),490(M+H)
【0151】
例14
rac‐(4R,5S,6S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐7‐メチレン‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2‐オン(15)の調製
【化67】

THF(7.5ml)中メチルトリフェニルホスホニウム(292mg,0.802mmol)の攪拌懸濁液に−78℃でn‐ブチルリチウム(0.5ml,ヘキサン中1.6M溶液,0.802mmol)を滴下し、得られた薄黄色溶液をこの温度で15分間攪拌した。次いで、THF(7.5ml)中rac‐(4R,5S,6S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2,7‐ジオン(6)(381mg,0.802mmol)の溶液を滴下し、混合液を室温で1時間攪拌した。反応を0℃でHO(5ml)で停止させ、各層を分離し、水相をAcOEt(3×10ml)で抽出した。合わせた抽出液をMgSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン‐AcOEt,8:1)により精製して、無色油状物としてrac‐(4R,5S,6S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐7‐メチレン‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2‐オン(15)を得た(257mg,68%)。
【0152】
=0.58(TLC,ヘキサン‐AcOEt,3:1);収率68%;無色油状物;H‐NMR(300MHz,CDCl):δ7.34(5H,m,Ph),5.97(1H,部A系AB,J=13.8Hz,H‐9),5.38(1H,部B系AB,J=13.8Hz,H‐8),5.01(2H,br.s,CH=C),4.98(1H,部A系AB,J=11.7Hz,OCPh),4.87(1H,部B系AB,J=11.7Hz,OCPh),4.28(1H,br.s,H‐6),4.06(1H,br.s,H‐5),3.47(1H,部A系AB,J=14.1Hz,H‐3),2.28(1H,部B系AB,J=14.1Hz,H‐3),0.80(9H,s,C(CH),0.15(9H,s,Si(CH),0.07(3H,s,SiCH),−0.01(3H,s,SiCH);13C‐NMR(75MHz,CDCl):δ166.0,144.3,135.6,130.6,129.3,128.8,128.6,128.4,115.6,78.6,76.1,69.2,66.6,40.3,25.6,18.0,0.3,−4.6,−4.7;IR(NaCl,CCl):ν3028,2956,2927,2855,1779,1656,1611,1472,1367,1252,1138,1101,988,883,840cm−1;LRMS(API‐ES):m/z 969(2M+Na),496(M+Na),474(M+H)
【0153】
例15
rac‐(4R,5S,6S,7R)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐7‐ヒドロキシ‐7‐ヒドロキシメチル‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2‐オン(16)の調製
【化68】

アセトン(4ml)中rac‐(4R,5S,6S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐7‐メチレン‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2‐オン(15)(235mg,0.496mmol)の溶液に、室温でHO(0.8ml)、N‐メチルモルホリンN‐オキシド(132mg,1.091mmol)および四酸化オスミウム(0.37ml,2‐メチル‐2‐プロパノール中2.5wt%溶液,0.030mmol)を連続的に加えた。反応が完了するまで(16h,TLCモニター,ヘキサン‐AcOEt,3:1)、得られた混合液を室温で攪拌し、次いで10%Na水溶液(1.5ml)で反応停止させた。15分間後、混合液をAcOEt(3×4ml)で抽出した。合わせた有機抽出液をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮させて、低融点薄黄色固体物としてrac‐(4R,5S,6S,7R)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐7‐ヒドロキシ‐7‐ヒドロキシメチル‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2‐オン(16)を得た(240mg,95%)。
【0154】
=0.13(TLC,ヘキサン‐AcOEt,3:1),0.64(TLC,ヘキサン‐AcOEt,1:1);収率95%;薄黄色固体物;H‐NMR(300MHz,CDCl):δ7.41‐7.32(5H,m,Ph),5.47(1H,d,J=9.9Hz,H‐9),5.41(1H,d,J=9.9Hz,H‐8),5.01(1H,部A系AB,J=11.5Hz,OCPh),4.84(1H,部B系AB,J=11.5Hz,OCPh),4.48(1H,br.s,H‐6またはH‐5),3.83(1H,br.s,H‐5またはH‐6),3.67(1H,br.d,J=11.1Hz,C‐OH),3.45(1H,d,J=11.1Hz,C‐OH),3.24(1H,br.d,J=12.4Hz,H‐3),2.26(1H,br.d,J=12.4Hz,H‐3),2.04(2H,s br.,OH)0.81(9H,s,C(CH),0.19(9H,s,Si(CH),0.13(3H,s,SiCH),0.08(3H,s,SiCH);13C‐NMR(75MHz,CDCl):δ165.3,133.4,129.5,129.2,128.8,128.6,128.5,78.8,76.2,73.7,68.0,66.5,65.8,40.2,26.0,18.1,0.4,−2.8,−5.4;IR(NaCl,CCl):ν3434,3028,2956,2858,1755,1478,1462,1456,1411,1389,1362,1253,1141,1090,918,882,837,756cm−1;LRMS(API‐ES):m/z 1037(2M+Na),530(M+Na),508(M+H)
【0155】
例16
rac‐(4R,5S,6S,9R)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐9‐シアノ‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2,7‐ジオン(17)の調製
【化69】

THF(0.5ml)中シアノトリメチルシラン(56μL,0.411mmol)およびトリメチルアルミニウム(0.19ml,トルエン中2.0M溶液,0.374mmol)の攪拌溶液に、室温でTHF(0.5ml)中rac‐(4R,5S,6S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2,7‐ジオン(6)(89mg,0.187mmol)の溶液を加えた。得られた混合液を還流下で24時間攪拌し、次いで減圧下で濃縮した。残渣をトルエン(2ml)に溶解し、冷飽和NHCl(1ml)およびNaHPO 0.1M緩衝液(1ml)で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン‐AcOEt,5:1)により精製して、低融点白色固体物としてrac‐(4R,5S,6S,9R)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐9‐シアノ‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2,7‐ジオン(17)を得た(21mg,22%)。
【0156】
=0.41(TLC,ヘキサン‐AcOEt,3:1);収率22%;白色固体物;H‐NMR(300MHz,CDCl):δ7.44‐7.30(5H,m,Ph),5.31(1H,部A系AB,J=10.7Hz,OCPh),5.11(1H,部B系AB,J=10.7Hz,OCPh),4.71(1H,d,J=2.2Hz,H‐6),4.13(1H,d,J=2.2Hz,H‐5),3.66(1H,dd,J=13.4,5.4Hz,H‐9),2.92(1H,部A系AB,J=14.5Hz,H‐3),2.76(1H,部B系AB,J=14.5Hz,H‐3),2.63(1H,dd,J=13.4,5.4Hz,H‐8),2.21(1H,t,J=13.4Hz,H‐8),0.85(9H,s,C(CH),0.09(9H,s,Si(CH),0.08(3H,s,SiCH),−0.06(3H,s,SiCH);13C‐NMR(75MHz,CDCl):δ201.0,164.1,133.9,129.5,129.4,128.9,117.1,80.8,78.9,78.0,67.3,42.2,38.3,32.0,25.8,18.5,0.5,−4.8,−5.6;IR(KBr):ν3425,2956,2927,2855,2233,1772,1631,1454,1364,1255,1107,1064,841cm−1;LRMS(API‐ES):m/z 525(M+Na),503(M+H)
【0157】
例17
rac‐(4R,5S,6S,8S,9S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐8,9‐ジヒドロキシ‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナン‐2,7‐ジオン(18)の調製
方法A
【化70】

ベンゼン(1.0ml)中rac‐(4R,5S,6S,7S,8S,9S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐7‐シアノ‐7,9‐ジヒドロキシ‐5,8‐ビス(トリメチルシリルオキシ)‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナン‐2‐オン(11B)(58mg,0.095mmol)の溶液に、室温でベンゼン(2ml)中メチル(トリフェニルホスホラニリデン)アセテート(76mg,0.228mmol)の溶液を加えた。混合液を還流下で11時間攪拌した。反応をNaHPO 0.1M緩衝液(3ml)およびAcOEt(3ml)で停止させた。各層を分離し、水相をAcOEt(3×6ml)で抽出した。合わせた抽出液をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン‐AcOEt,4:1)により精製して、白色固体物としてrac‐(4R,5S,6S,8S,9S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐8,9‐ジヒドロキシ‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナン‐2,7‐ジオン(18)(19mg,38%)および白色固体物としてrac‐(4R,5S,6S,8S,9S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐9‐ヒドロキシ‐7‐メチレン‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナン‐2‐オン‐10,8‐カルボラクトン(19)(10mg,20%)を得た。
【0158】
方法B
【化71】

アセトン(0.5ml)中rac‐(4R,5S,6S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2,7‐ジオン(6)(49mg,0.103mmol)の溶液に、室温でHO(0.1ml)、N‐メチルモルホリンN‐オキシド(26mg,0.227mmol)および四酸化オスミウム(0.077ml,2‐メチル‐2‐プロパノール中2.5wt%溶液,0.006mmol)を連続的に加えた。反応が完了するまで(15h,TLCモニター,ヘキサン‐AcOEt,1:1)、得られた混合液を室温で攪拌し、次いで10%Na水溶液(0.2ml)で反応停止させた。20分間後、混合液をAcOEt(5×2ml)で抽出した。合わせた有機抽出液をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮させた。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン‐AcOEt,2:1)により精製して、白色固体物としてrac‐(4R,5S,6S,8S,9S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐8,9‐ジヒドロキシ‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナン‐2,7‐ジオン(18)を得た(32mg,62%)。
【0159】
=0.10(TLC,ヘキサン‐AcOEt,3:1),0.55(TLC,ヘキサン‐AcOEt,1:1);収率62%;白色固体物;H‐NMR(300MHz,CDCl):δ7.43‐7.39(2H,m,Ph),7.34‐7.32(3H,m,Ph),5.11(1H,部A系AB,J=10.1Hz,OCPh),5.05(1H,部B系AB,J=10.1Hz,OCPh),4.74(1H,dd,J=3.6,3.4Hz,H‐8),4.44(1H,部A系AB,J=3.2Hz,H‐6),4.26(1H,部B系AB,J=3.2Hz,H‐5),4.17(1H,dd,J=3.6,1.6Hz,H‐9),3.52(1H,d,J=3.4Hz,HO‐C(8)),3.46(1H,部A系AB,J=13.7Hz,H‐3),2.74(1H,s,HO‐C(9)),2.38(1H,部B系AB,J=13.7Hz,H‐3),0.85(9H,s,C(CH),0.12(3H,s,SiCH),0.08(9H,s,Si(CH),0.00(3H,s,SiCH);13C‐NMR(75MHz,CDCl):δ205.7,165.3,135.2,129.3,129.0,128.6,128.3,78.7,77.8,75.4,72.1,67.6,66.9,37.5,25.5,18.0,0.3,−5.0,−5.2;IR(NaCl,CCl):ν3435,2955,2891,2858,1761,1740,1471,1253,1154,1139,1109,887,884,780cm−1;LRMS(API‐ES):m/z 1041(2M+Na),532(M+Na),510(M+H)
【0160】
例18
rac‐(4R,5S,6S,7R)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐7,10‐エポキシ‐7‐メチル‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2‐オン(20)の調製
【化72】

CHCl(6ml)中rac‐(4R,5S,6S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐7‐メチレン‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2‐オン(15)(200mg,0.422mmol)の攪拌溶液に、0℃で3‐クロロペルオキシ安息香酸(109mg,0.633mmol)を加えた。混合液をこの温度で30分間、次いで室温で7時間攪拌した。この混合液をCHCl(3ml)で希釈し、飽和NaHCO(3×3ml)および飽和NaCl(1×3ml)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン‐AcOEt,8:1)により精製して、無色油状物としてrac‐(4R,5S,6S,7R)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐7,10‐エポキシ‐7‐メチル‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2‐オン(20)を得た(170mg,82%)。
【0161】
=0.50(TLC,ヘキサン‐AcOEt,3:1);収率82%;無色油状物;H‐NMR(200MHz,CO(CD):δ7.44‐7.35(5H,m,Ph),5.02(1H,部A系AB,J=11.1Hz,OCPh),4.93(1H,部B系AB,J=11.1Hz,OCPh),4.34(1H,br.s,H‐5またはH‐6),3.58(1H,br.s,H‐6またはH‐5),3.17(1H,m,H‐3),2.87(2H,s,H‐10),2.44(1H,d,J=14.1Hz,H‐3),0.87(9H,s,C(CH),0.16(9H,s,Si(CH),0.02(3H,s,SiCH),0.01(3H,s,SiCH);IR(NaCl,CCl):ν3028,2957,2891,2854,1781,1494,1472,1407,1362,1255,1151,1100,1055,994,881,842,803,778,753,666cm−1;LRMS(API‐ES):m/z 1003(2M+Na),513(M+Na),490(M+H)
【0162】
例19
rac‐(4R,5S,6S,8S,9S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐9‐ヒドロキシ‐7‐メチレン‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナン‐2‐オン‐10,8‐カルボラクトン(19)の調製
方法A
【化73】

ベンゼン(1.0ml)中rac‐(4R,5S,6S,7S,8S,9S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐7‐シアノ‐7,9‐ジヒドロキシ‐5,8‐ビス(トリメチルシリルオキシ)‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナン‐2‐オン(11B)(58mg,0.095mmol)の溶液に、室温でベンゼン(2ml)中メチル(トリフェニルホスホラニリデン)アセテート(76mg,0.228mmol)の溶液を加えた。混合液を還流下で11時間攪拌した。反応をNaHPO 0.1M緩衝液(3ml)およびAcOEt(3ml)で停止させた。各層を分離し、水相をAcOEt(3×6ml)で抽出した。合わせた抽出液をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン‐AcOEt,4:1)により精製して、白色固体物としてrac‐(4R,5S,6S,8S,9S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐8,9‐ジヒドロキシ‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナン‐2,7‐ジオン(18)(19mg,38%)および白色固体物としてrac‐(4R,5S,6S,8S,9S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐9‐ヒドロキシ‐7‐メチレン‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナン‐2‐オン‐10,8‐カルボラクトン(19)(10mg,20%)を得た。
【0163】
方法B
【化74】

ベンゼン(1ml)中rac‐(4R,5S,6S,8S,9S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐8,9‐ジヒドロキシ‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナン‐2,7‐ジオン(18)(59mg,0.116mmol)の溶液に、室温でベンゼン(3ml)中メチル(トリフェニルホスホラニリデン)アセテート(124mg,0.370mmol)の溶液を加えた。混合液を還流下で15時間攪拌した。反応をNaHPO 0.1M緩衝液(3ml)およびAcOEt(3ml)で停止させた。各層を分離し、水相をAcOEt(3×6ml)で抽出した。合わせた抽出液をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン‐AcOEt,3:1)により精製して、白色固体物としてrac‐(4R,5S,6S,8S,9S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐9‐ヒドロキシ‐7‐メチレン‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナン‐2‐オン‐10,8‐カルボラクトン(19)を得た(44mg,71%)。
【0164】
=0.14(TLC,ヘキサン‐AcOEt,3:1),0.66(TLC,ヘキサン‐AcOEt,1:1);収率71%;白色固体物;H‐NMR(300MHz,CDCl):δ7.42‐7.38(2H,m,Ph),7.36‐7.33(3H,m,Ph),6.00(1H,d,J=1.5Hz,H‐10),5.09(1H,dd,J=3.6,1.5Hz,H‐8),5.08(1H,部A系AB,J=10.2Hz,OCPh),5.03(1H,部B系AB,J=10.2Hz,OCPh),4.77(1H,d,J=3.2Hz,H‐5),4.32‐4.27(2H,m,H‐9およびH‐6),3.46(1H,部A系AB,J=13.8Hz,H‐3),2.37(1H,d,J=2.9Hz,HO‐C(9)),2.32(1H,部B系AB,J=13.8Hz,H‐3),0.85(9H,s,C(CH),0.10(3H,s,SiCH),0.09(9H,s,Si(CH),0.01(3H,s,SiCH);13C‐NMR(75MHz,CDCl):δ165.4,165.1,135.2,129.4,128.8,128.4,115.8,78.8,78.6,72.7,69.5,67.1,66.9,37.6,25.5,18.0,0.4,−4.9;IR(KBr):ν3435,2949,2927,2855,1779,1747,1631,1248,1129,1101,840,616cm−1;LRMS(API‐ES):m/z 1088(2M+Na),556(M+Na),533(M+H)
【0165】
例20
rac‐(4R,5S,6S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐7‐メチレン‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2‐オン‐10,8‐カルボラクトン(21)の調製
【化75】

トルエン(0.3ml)中rac‐(4R,5S,6S,8S,9S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐8,9‐ジヒドロキシ‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナン‐2,7‐ジオン(18)(19mg,0.037mmol)の溶液に、室温でトルエン(0.7ml)中メチル(トリフェニルホスホラニリデン)アセテート(93mg,0.277mmol)の溶液を加えた。得られた混合液を還流下で24時間攪拌し、次いで減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン‐AcOEt,6:1)により精製して、黄色油状物としてrac‐(4R,5S,6S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐7‐メチレン‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2‐オン‐10,8‐カルボラクトン(21)を得た(44mg,71%)。
【0166】
=0.55(TLC,ヘキサン‐AcOEt,3:1);収率26%;黄色油状物;H‐NMR(200MHz,CDCl):δ7.35‐7.26(5H,m,Ph),5.91(1H,m,H‐9またはH‐10),4.99(1H,部A系AB,J=11.5Hz,OCPh),4.99(1H,d,J=1.8Hz,H‐10またはH‐9),4.87(1H,部B系AB,J=11.5Hz,OCPh),4.73(1H,d,J=2.6Hz,H‐5またはH‐6),3.97(1H,d,J=2.6Hz,H‐6またはH‐5),3.42(1H,部A系AB,J=13.9Hz,H‐3),2.47(1H,部B系AB,J=13.9Hz,H‐3),0.78(9H,s,C(CH),0.20(3H,s,SiCH),0.12(9H,s,Si(CH),0.07(3H,s,SiCH);LRMS(API‐ES):m/z 538(M+Na),516(M+H)
【0167】
例21
rac‐(4R,5S,6S,7R)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐7‐ヒドロキシ‐7‐エトキシカルボニルメチル‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2‐オン(22)の調製
【化76】

CHCl(1.5ml)中rac‐(4R,5S,6S,7R)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐7‐ヒドロキシ‐7‐ヒドロキシメチル‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2‐オン(16)(52mg,0.102mmol)およびDMAP(1.3mg,0.010mmol)の溶液に、0℃でN‐エチルジイソプロピルアミン(42μL,0.245mmol)およびエチルクロロホルメート(12μL,0.122mmol)を加えた。反応が完了するまで(16h,TLCモニター,ヘキサン‐AcOEt,1:1)、得られた混合液を室温で攪拌した。反応をHO(数滴)、AcOEt(1.5ml)および飽和NHCl/NHOH溶液(1.5ml)で停止させた。各層を分離し、水相をAcOEt(3×3ml)で抽出した。合わせた抽出液を飽和NHCl/NHOH溶液(5ml)で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して、低融点薄黄色固体物としてrac‐(4R,5S,6S,7R)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐7‐ヒドロキシ‐7‐エトキシカルボニルメチル‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2‐オン(22)を得た(50mg,85%)。
【0168】
=0.32(TLC,ヘキサン‐AcOEt,3:1),0.73(TLC,ヘキサン‐AcOEt,1:1);収率85%;薄黄色固体物;H‐NMR(200MHz,CDCl):δ7.42‐7.29(5H,m,Ph),5.48(1H,d,J=10.1Hz,H‐8またはH‐9),5.42(1H,m,H‐8またはH‐9),4.98(1H,部A系AB,J=11.3Hz,OCPh),4.85(1H,部B系AB,J=11.3Hz,OCPh),4.55(1H,br.s,H‐5またはH‐6またはH‐10),4.22(1H,q,J=14.4,7.1Hz,OCCH),4.22(1H,q,J=14.2,7.1Hz,OCCH),4.13(1H,br.s,H‐6またはH‐10またはH‐5),3.88(1H,br.s,H‐10またはH‐5またはH‐6),3.23(1H,部A系AB,J=13.4Hz,H‐3),2.27(1H,br.s,H‐10またはH‐5またはH‐6),2.26(1H,部B系AB,J=13.4Hz,H‐3),1.32(3H,t,J=7.1Hz,OCH),0.80(9H,s,C(CH),0.18(9H,s,Si(CH),0.15(3H,s,SiCH),0.06(3H,s,SiCH);LRMS(API‐ES):m/z 1181(2M+Na),602(M+Na),580(M+H)
【0169】
例22
rac‐(4R,5S,6S,7R)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐7‐メチル‐5‐トリメチルシリルオキシ‐7,10‐フェニルボランジイルジオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2‐オン(23)の調製
【化77】

CHCl(0.25ml)中N‐メチルモルホリンN‐オキシド(18mg,0.149mmol)およびフェニルホウ酸(19mg,0.149mmol)の溶液に、室温で四酸化オスミウム(32μL,CHCl中0.5mM溶液,0.0025mmol)およびCHCl(0.5ml)中rac‐(4R,5S,6S)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐7‐メチレン‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2‐オン(15)(59mg,0.124mmol)の溶液を連続的に加えた。反応が完了するまで(2h,TLCモニター,ヘキサン‐AcOEt,3:1)、得られた混合液を室温で攪拌し、次いで10%Na水溶液(0.5ml)で反応停止させた。15分間後、混合液をAcOEt(3×2ml)で抽出し、合わせた有機抽出液をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮させた。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン‐AcOEt,5:1)により精製して、低融点白色固体物としてrac‐(4R,5S,6S,7R)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐7‐メチル‐5‐トリメチルシリルオキシ‐7,10‐フェニルボランジイルジオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2‐オン(23)を得た(33mg,45%)。
【0170】
=0.40(TLC,ヘキサン‐AcOEt,3:1);収率45%;白色固体物;H‐NMR(200MHz,CDCl):δ7.84(2H,dd,J=8.1,1.5Hz,Ph),7.56‐7.30(8H,m,Ph),6.91,5.52(1H,m),5.52(1H,m),5.07(1H,部A系AB,J=10.1Hz,OCPh),4.93(1H,部B系AB,J=10.1Hz,OCPh),4.71(1H,br.s),4.60‐4.30(1H,m),4.10‐3.80(2H,m),3.26,2.33(1H,br.s),2.59(1H,br.s),0.80(9H,s,C(CH),0.17(9H,s,Si(CH),0.10(3H,s,SiCH),0.07(3H,s,SiCH).
【0171】
例23
rac‐(4R,5S,6S,7R)‐1‐ベンジルオキシ‐6,7‐ビス(tert‐ブチルジメチルシリルオキシ)‐7‐ヒドロキシ‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2‐オン(24)の調製
【化78】

DMF(0.25ml)中rac‐(4R,5S,6S,7R)‐1‐ベンジルオキシ‐6‐tert‐ブチルジメチルシリルオキシ‐7‐ヒドロキシ‐7‐ヒドロキシメチル‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2‐オン(16)(50mg,0.098mmol)およびイミダゾール(8mg,0.118mmol)の溶液に、0℃でDMF(0.25ml)中tert‐ブチルジメチルシリルクロリド(18mg,0.118mmol)の溶液を加えた。室温で5時間後、反応をHO(1ml)で停止させ、混合液をAcOEt(3×2ml)で抽出した。合わせた抽出液を飽和CuSO水溶液(2×3ml)および塩水(2×3ml)で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン‐AcOEt,6:1)により精製して、白色固体物としてrac‐(4R,5S,6S,7R)‐1‐ベンジルオキシ‐6,7‐ビス(tert‐ブチルジメチルシリルオキシ)‐7‐ヒドロキシ‐5‐トリメチルシリルオキシ‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2‐オン(24)を得た(50mg,82%)。
【0172】
=0.69(TLC,ヘキサン‐AcOEt,3:1);収率82%;白色固体物;H‐NMR(200MHz,CDCl):δ7.44‐7.27(5H,m,Ph),5.55(2H,m,H‐8およびH‐9),4.97(1H,部A系AB,J=11.1Hz,OCPh)4.88(1H,部B系AB,J=11.1Hz,OCPh),4.62(1H,br.s,H‐5またはH‐6),3.81(1H,br.s,H‐6またはH‐5),3.62(1H,部A系AB,J=9.6Hz,OCCH),3.54(1H,部B系AB,J=9.6Hz,OCCH),3.23(1H,部A系AB,J=13.6Hz,H‐3),2.94(1H,br.s,OH),2.26(1H,部B系AB,J=13.6Hz,H‐3),1.32(3H,t,J=7.1Hz,OCH),0.92(9H,s,C(CH),0.81(9H,s,C(CH),0.17(9H,s,Si(CH),0.14(3H,s,SiCH),0.09(6H,s,SiCH),0.06(3H,s,SiCH).
【0173】
例24
rac‐(4R,5S,6S,7S,8R,9R)‐1‐ベンジルオキシ‐8,9‐ジヒドロキシ‐5,6‐(1,1,3,3‐テトライソプロピルジシリルジオキシ)‐10‐〔2‐(4‐メトキシフェニル)アセトキシ〕‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐2‐オン(25)の調製
【化79】

AcOEt(0.6ml)およびCHCN(0.6ml)中rac‐(4R,5S,6S,7R)‐1‐ベンジルオキシ‐5,6‐(1,1,3,3‐テトライソプロピルジシリルジオキシ)‐10‐〔2‐(4‐メトキシフェニル)アセトキシ〕‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐8‐エン‐2‐オン(25)(50mg,0.070mmol)の溶液に、0℃で激しく攪拌しながらHO(0.2ml)中塩化ルテニウム(III)水和物(4mg,0.017mmol)および過ヨウ素酸ナトリウム(18mg,0.084mmol)の溶液を加えた。5分間後に反応を飽和重亜硫酸ナトリウム水溶液(1.5ml)で停止させ、AcOEt(3×2ml)で抽出した。合わせた有機抽出液をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン‐AcOEt,3:2)により精製して、白色固体物としてrac‐(4R,5S,6S,7S,8R,9R)‐1‐ベンジルオキシ‐8,9‐ジヒドロキシ‐5,6‐(1,1,3,3‐テトライソプロピルジシリルジオキシ)‐10‐〔2‐(4‐メトキシフェニル)アセトキシ〕‐1‐アザスピロ〔3.5〕ノナ‐2‐オン(I26)を得た(43mg,83%)。
【0174】
=0.43(TLC,ヘキサン‐AcOEt,2:1);収率83%;白色固体物;H‐NMR(300MHz,CDCl):δ7.44‐7.31(5H,m,Ph),7.16(2H,部A系AB,J=8.8Hz,CHOC),6.87(2H,部B系AB,J=8.8Hz,CHOC),5.06(1H,部A系AB,J=11.1Hz,OCHPh),4.99(1H,部B系AB,J=11.1Hz,OCHPh),4.60(1H,部A系AB,J=11.8Hz,H‐10),4.51(1H,d,J=2.9Hz),4.33(1H,部B系AB,J=11.8Hz,H‐10),4.28(1H,dd,J=2.9,1.5Hz),3.99(1H,d,J=2.9Hz),3.80(3H,s,OCH),3.77(1H,m),3.63(2H,s,CHCOCH),2.97(1H,d,J=10.0Hz),2.85(1H,部A系AB,J=13.3Hz,H‐3),2.80(1H,部B系AB,J=13.3Hz,H‐3),2.51(1H,br.s,OH),1.12‐0.98(28H,m,(i‐Pr)Si);13C‐NMR(75MHz,CDCl):δ172.7,166.0,158.9,135.7,130.1,128.9,128.8,128.6,125.1,114.2,78.8,75.6,74.5,72.6,69.6,68.9,66.7,65.7,55.2,40.3,34.2,17.6,17.2,17.1,17.0,16.9,14.1,13.8,13.1,13.0;IR(NaCl,CCl):ν3435,2946,2868,1747,1613,1514,1464,1249,1151,1105,1133,1006,884,754cm−1;LRMS(API‐ES):m/z 1513(2M+Na),769(M+Na),746(M+H)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式Iの化合物、またはその塩、その錯体若しくはその溶媒和物:
【化1】

(式中、R、R、R、およびRは、独立して、H、OH、ハロゲン、OPR、=O、シアノ、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換複素環、置換もしくは非置換アルコキシ、置換もしくは非置換アリールオキシ、置換もしくは非置換アミノ、またはハロゲンから選択されるものであり、
およびRは、互いに、=Oまたは‐O‐(CH‐(ここで、mは、1、2、3、4、または5から選択されるものである。)であるか、または、
は、H、OH、OPRから選択され、Rは、水素、シアノ、置換または非置換アルキル、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換アルケニル、置換または非置換アルキニル、置換または非置換アリール、置換または非置換複素環から選択されるものであるが、
但し、R、R、R、R、またはRのうち少なくとも1つは、OH、置換または非置換アルコキシ、置換または非置換アリールオキシ、またはOPRであり、
PRは、R、R、R、R、またはRのそれぞれにおいて同一または異なり、かつ、1、2、または3のヒドロキシ基を同時に保護しうる、ヒドロキシル保護基であり、
点線は、単結合または二重結合を表わすが、RおよびR、または、RおよびR、のいずれもがHであるとき、そのHが結合している2個のC間には二重結合が存在し、
Zは、‐(CRaRb)‐、‐CH‐(CRaRb)‐、‐(CRaRb)‐CH‐、‐CH‐(CRaRb)‐CH‐、‐(CH‐(CRaRb)‐、または、‐(CRaRb)‐(CH‐(ここで、nは1、2、または3から選択される数であり、RaおよびRbは、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換アルケニル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロシクリル、置換もしくは非置換アルコキシ、置換もしくは非置換アリールオキシ、置換もしくは非置換アミノ、または、ハロゲンから選択されるものである。)であり、
Yは、‐O‐、‐S‐、‐NRa‐(ここで、Raは前記と同義である。)、または、‐C(O)‐から選択されるものであり、
Wは、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロシクリル、置換または非置換アルケニルから選択される基を少なくとも含んでなる基である。)。
【請求項2】
Wが、置換または非置換アリールアルキル、置換または非置換ヘテロシクリルアルキル、置換または非置換アルケニル、から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Wがアリールアルキルである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Wがベンジルである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
Wが、‐CRaRb‐Q(ここで、RaおよびRbは前記と同義であり、Qは置換または非置換アリール、置換または非置換複素環、置換または非置換アルケニルである。)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
RaおよびRbが異なる、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
Yが‐O‐である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
Zが‐CRaRb‐である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
Zが‐CRaH‐である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
Zがキラル中心を有している、請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
下記式II:
【化2】

(式中、
およびRは、独立して、H、置換もしくは非置換アルキル、またはPRから選択されるものであり、
W、Ra、R、および、Rは、請求項1における定義と同義である。)
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
下記式III:
【化3】

(式中、R、R、R、および、R10は、それぞれ独立して、H、置換もしくは非置換アルキル、またはPRから選択されるものであり、
W、Ra、R、および、Rは請求項1における定義と同義である。)
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
、R、R、R、および、R10において、少なくとも2つの異なる保護基が存在する、請求項11または12に記載の化合物。
【請求項14】
下記式:
【化4】

(式中、W、PR、および、Raは、上記と同義であり、式中の保護基PR1〜5は、同一または異なっていてもよく、かつ、2または3の異なるヒドロキシ基を同時に保護できるものであり、Nuは求核基である。)
のいずれかに対応する、請求項1に記載の化合物、それらのジアステレオマー、エナンチオマー、およびその混合物。
【請求項15】
下記式:
【化5】

(式中、W、PR、および、Raは、上記と同義であり、式中の保護基PR1〜5は、同一または異なっていてもよく、かつ、2または3の異なるヒドロキシ基を同時に保護できるものであり、Nuは求核基である。)
のいずれかに対応する、請求項14に記載の化合物、それらのジアステレオマー、エナンチオマー、およびその混合物。
【請求項16】
下記式:
【化6】

(式中、W、Z、Y、および、PRは、上記と同義であり、式中の保護基PR1〜4は、同一または異なっていてもよく、かつ、2または3の異なるヒドロキシ基を同時に保護できるものであり、Nuは求核基である。)
のいずれかに対応する、請求項1に記載の化合物、それらのジアステレオマー、エナンチオマー、およびその混合物。
【請求項17】
下記式:
【化7】

(式中、W、Z、Y、および、PRは、上記と同義であり、式中の保護基PR1〜4は、同一または異なっていてもよく、かつ、2または3の異なるヒドロキシ基を同時に保護できるものであり、Nuは求核基である。)
のいずれかに対応する、請求項16に記載の化合物、それらのジアステレオマー、エナンチオマーおよびその混合物。
【請求項18】
下記式:
【化8】

(式中、W、Z、Y、および、PRは、上記と同義であり、式中の保護基PR1〜4は、同一または異なっていてもよく、かつ、2または3の異なるヒドロキシ基を同時に保護できるものであり、Nuは求核基である。)
のいずれかに対応する、請求項1に記載の化合物、それらのジアステレオマー、エナンチオマーおよびその混合物。
【請求項19】
Zが‐CHRa‐(ここで、Raは上記と同義である。)である、請求項16〜18のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項20】
Zがキラル中心を有している、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
Yが‐O‐である、請求項16〜20のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項22】
Nuが、水素、シアノ、ハロゲン、置換または非置換アルキル、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換アルケニル、置換または非置換アルキニル、置換または非置換アリール、置換または非置換複素環によりなる群から選択されるものである、請求項14〜21のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項23】
請求項1〜21のいずれか一項に記載された化合物を製造する方法であって、下記式IV:
【化9】

(式中、Z、Y、および、Wは、請求項1における定義と同義である。)
の化合物に適用される、
a)ヒドロキシル化、ジヒドロキシル化、または、ケトヒドロキシル化
b)ヒドロキシルまたはカルボニル保護
c)カルボニル基の求核攻撃
d)二重結合の求電子攻撃
d)ヒドロキシル反転
e)アリル転位
からなる群より選択される1以上の工程を、いずれかの順序で含んでなる、方法。

【公表番号】特表2007−536329(P2007−536329A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512098(P2007−512098)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005149
【国際公開番号】WO2005/108357
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(500031124)ラボラトリオス・デル・ドクトル・エステベ・ソシエダッド・アノニマ (55)
【Fターム(参考)】