説明

スピン偏極電子発生素子

【課題】基板、バッファ層、歪み超格子層の材料選択の自由度を持たせた状態で、スピン偏極度と外部量子効率の高いスピン偏極電子発生素子を実現すること。
【解決手段】基板と、バッファ層と、バッファ層上に形成された歪み超格子層とを有するスピン偏極電子発生素子において、基板とバッファ層との間に、バッファ層を構成する結晶の格子定数よりも大きな格子定数を有する結晶から成る中間層を介在させた。これにより、バッファ層には、引張歪みにより基板に垂直な方向へのクラックが発生し、モザイク状となる。この結果、バッファ層上に成長させる歪み超格子層には、斜め方向の滑り転位が伝播しないために、歪み超格子層の結晶性が改善される。この結果、励起される電子のスピン偏極度と偏極電子の外部量子効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歪み超格子層を用いたスピン偏極電子発生素子に関する。特に、歪み超格子層の結晶性を改善し、スピン偏極度と外部量子効率の向上を実現するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
スピン偏極電子源は、磁区構造を観測するスピン低速電子顕微鏡や、陽子とスピン偏極電子とを衝突させて素粒子を生成する場合の素粒子研究に用いられることが期待されている。これらの分野では、特に、高偏極度と高外部量子効率が必要である。現在、スピン偏極電子源には、主に、スピン偏極電子発生素子である半導体フォトカソードが用いられている。半導体フォトカソードは、光を照射することで電子を励起し、その電子を表面から取り出すことで、電子ビームを得る素子である。スピン偏極電子源として用いる場合は、励起光に円偏光を用いることで、励起される電子のスピンに偏りが生じ、スピン偏極電子源として機能する。
【0003】
GaAs系半導体フォトカソードにおけるスピン偏極の原理を説明する。半導体フォトカソードに照射された円偏光により、重い正孔バンドと軽い正孔バンドから、伝導帯へ電子が励起される。そのとき、それぞれのバンドからは、異なるスピンを持った電子が3 対1 の割合で励起される。その結果、カソードの外部に出力される電子ビームのスピンに偏りが生じ、スピン偏極電子ビームが得られる。
【0004】
歪みGaAs半導体の単層を用いたスピン偏極電子発生素子として、下記特許文献1、2、3の技術が知られている。その技術は、GaAs半導体層に歪みを与えることでスピン偏極度を向上させるものである。GaAs系半導体では、価電子帯の重い正孔バンドと軽い正孔バンドは、Γ点で縮退しているため、両方のバンドから同時に電子が励起されてしまう。もし、この縮退を解いて2つのバンドを分離することができれば、片方のスピン電子しか励起されず、原理的には100% のスピン偏極度を達成することができる。バンドを分離する方法として、半導体に歪みを与える方法がある。これらの特許文献1〜3では、GaAs基板上に、それと格子定数の異なるGaAsP 結晶活性層をエピタキシャル成長させることで格子不整合によりGaAsP 層に歪みを生じさせ、それによるGaAsP の価電子帯のバンド分離により偏極度50%以上を達成している。さらに、GaAs基板に直接ではなく、活性層の下に、活性層とは異なる組成をもつGaAsP を挿入することで、活性層の結晶性の劣化を抑制することが提案されている。
【0005】
また、下記特許文献4では、歪み超格子構造を用いて、スピン偏極度を向上させる技術が開示されている。超格子構造とは、一層が1ML 〜数nmの厚さの、2種類以上の異なるバンドギャップを持つ半導体を繰り返し積層したものである。電子の場合は、伝導帯の底のエネルギーが低い層、また正孔の場合は、価電子帯の頂上のエネルギーが高い層は、井戸層とよばれ、それを挟む層は障壁層と呼ばれている。電子や正孔はこの井戸層に閉じ込められることで、量子準位が形成される。また、その準位は、重い正孔と軽い正孔では異なるエネルギー領域に形成されるため、これによってもバンドの分離が生じる。
【0006】
さらに、超格子層に歪みを付与したものは、歪み超格子構造といい、歪みと量子閉じ込めによる効果を相加的に利用することで、更なるバンド分離が実現される。特許文献4ではGaAs基板上に形成したGaAs-GaAsP歪み超格子構造によるスピン偏極電子源に関するもので、90%以上の偏極度が実現されている。
【0007】
また、下記特許文献5に開示された技術は、高輝度偏極電子線を実現する電子源に関する。輝度向上のためには、励起光を絞り、電子線発生領域を小さくすることが有効である。本発明では、励起光をフォトカソードの裏面から照射することで、表面から放出されるスピン偏極電子線と干渉せずに、レンズで励起光を集光する構造を提案している。ここで、半導体フォトカソードに関しては、励起光を透過するGaP 基板上のGaAs-GaAsP歪み超格子構造を新たに発明している。しかし、このままの構造では高い偏極度は得られない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】バッファ層と歪み超格子層を用いたスピン偏極電子発生素子の構造図。
【図2】バッファ層と歪み超格子層におけるバンド図。
【図3】(a)は、バッファ層に引張歪みが印加された場合の結晶の断面図、(b)は、バッファ層に圧縮歪みが印加された場合の結晶の断面図。
【図4】本発明の具体的な実施例1に係るスピン偏極電子発生素子の構造図。
【図5】(a)は、実施例1の構成において、中間層を用いてバッファ層を成長させた後のバッファ層のAFM 像、 (b)は、実施例1の構成において、中間層を用いずに、バッファ層を成長させた後のバッファ層のAFM 像。
【図6】実施例1のスピン偏極電子発生素子のスピン偏極度と波長との関係、及び、中間層を用いない場合のスピン偏極電子発生素子のスピン偏極度と波長との関係を測定して得た特性図。
【図7】本発明の具体的な実施例2に係るスピン偏極電子発生素子の構造図。
【図8】本発明の具体的な実施例3に係るスピン偏極電子発生素子の構造図。
【図9】本発明のスピン偏極電子発生素子を用いたスピン偏極電子発生装置の構成図。
【図10】スピン偏極電子発生装置のスピン偏極電子発生素子の設置部の構成図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明は、超格子層において偏極度や量子効率の低下の原因となる転位の密度を低下させるための構造に関する。図3に示すように、バッファ層3の格子定数が基板1の格子定数よりも大きい場合、バッファ層3は、面内2軸圧縮歪みをうける。バッファ層3の厚さが増加し、臨界膜厚をこえると、その歪みを緩和するために転位が導入される。図3(b)に示すように、バッファ層3 に圧縮歪みが印加される場合は、結晶中に細かく、高密度で転位が分布することになる。
【0030】
一方、バッファ層3の格子定数が基板1の格子定数よりも小さい場合には、バッファ層3は面内2軸引張歪みを受ける。バッファ層3の厚さが臨界膜厚を越えると、やはり転位が導入されるが、それと同時に基板面に対して垂直方向に伸びるクラック5が発生する。その結果、図3(a)に示すようなクラック5に区切られたモザイク構造が形成される。このクラック5の発生密度は、図3(b)に示す圧縮歪みの場合の転位密度に比べると遥かに小さい。引張歪みの場合、クラック5で囲まれたモザイク構造内部には、歪みがクラックで開放されるので、転位密度が低い状態が維持される。したがって、励起された電子が転位に散乱される確率が減少し、偏極度、量子効率が増加する。
【0031】
また、超格子層で励起された電子のうち、基板に垂直方向に進む電子が真空中に取り出されるが、滑り転位の場合は、基板垂直方向に進む電子の進行を妨げ、スピン反転散乱の要因となるが、クラックは電子の進行方向と平行であるため、電子はクラックによっては散乱されず、スピン反転散乱の要因にならない。
【0032】
上述したように、超格子層3に歪みを与えて価電子帯を有効にスプリットさせるために設計したバッファ層3の格子定数が、基板1の格子定数より、必ずしも小さくなるわけではない。たとえば、基板1に励起光を透過させるためには、バンドギャップの大きい基板を選ぶ必要がある。一般に、バンドギャップが大きい材料は格子定数が小さい。励起光を透過させる目的のために、GaP 基板を用いた場合には、GaP 基板上にバッファ層を形成して、そのバッファ層上に、GaAsP/GaAs超格子層を形成した場合、バッファ層の格子定数が基板の格子定数よりも大きくなる。この構造では、バッファ層は、圧縮歪みが緩和されて、高い密度の滑り転位が発生し、その転位が歪み超格子層に伝播して、歪み超格子層の転位密度が高くなり、スピン偏極度や量子効率が低下する。
【0033】
バッファ層の組成は理論計算による設計により決定され、また基板は入手可能なものであり、かつ、目的に応じて制限されてしまう。このため、基板とバッファ層との間で、格子定数の大小関係を任意に選ぶことは不可能である。本発明では、基板とバッファ層をどのように選択したとしても、バッファ層に引張歪みを印加するようにするために、基板とバッファ層の間に、バッファ層よりも格子定数の大きい中間層を導入する。本発明は、それにより、どのような歪み超格子層を形成する場合であっても、バッファ層に、基板に垂直な方向のクラックを発生させて、モザイク構造にして、歪み超格子層の結晶性を改善して、励起される電子の高スピン偏極度、高量子効率を実現するものである。
【0034】
最も望ましい場合には、中間層には、主に次の4 つの要件が要求される。ただし、本発明においては、1.項の要件が必須であって、他の要件は、望ましくは付加すべき要件である。
1. バッファ層よりも格子定数が大きい。
2. 中間層の歪みが十分緩和されていること。(中間層は、臨界膜厚以上の厚さを有すること。)
3. バッファ層の引張歪みが緩和されるときに、中間層はほとんど歪まないこと。(バッファ層によって、中間層が歪まないほどに、中間層は十分な厚さを有すること。)
4. 透過型のスピン偏極電子発生素子の場合、歪み超格子層での電子励起効率を低下させないために、中間層は、入射する励起光の50〜100%が透過する厚さ以下であること。
【0035】
中間層には、バッファ層よりも格子定数の大きい材料・組成を選択する。中間層は、格子定数が異なる基板上にエピタキシャルに成長しているため、中間層には歪みが生じる。中間層としての機能を有効に働かせるためには、膜厚を大きくし、その歪みが十分緩和する必要がある。歪みが緩和される中間層の膜厚hi は次式で求められる。
【0036】
【数1】

【0037】
また、中間層は、バッファ層に転位が導入され、垂直方向のクラックによりモザイク構造が形成されるまで、ほとんど歪まない厚さであることが望ましい。このような厚さhi' は、次の式で求めることができる。ここでは、バッファ層の歪みに対する中間層の歪みの割合をx%とした。
【0038】
【数2】

【0039】
ここで、
【0040】
【数3】

【0041】
【数4】

【0042】
ただし、
Gb: バッファ層のshear modulus
Gi: 中間層のshear modulus
νb: バッファ層のポアソン比
νi: 中間層のポアソン比
ab: バッファ層の格子定数
ai: 中間層の格子定数
as: 基板の格子定数
hb: バッファ層にモザイク構造が形成される膜厚
b : 中間層に導入される転位のバーガーズベクトル
θ: 転位線とバーガーズベクトルのなす角
λ: 中間層と基板界面の法線方向とバーガーズベクトルのなす角
f : 基板と中間層の格子不整合度
【0043】
【数5】

【0044】
である。
【0045】
x は、5 程度よりも小さいほうが望ましい。
【0046】
中間層の膜厚は、上述のhiとhi' のいずれの値よりも大きい必要がある。
【0047】
さらに、半導体フォトカソードを透過型電子源として用いる場合は、励起光が基板と中間層を透過する必要がある。しかし、一般的には、中間層の格子定数は超格子層の格子定数よりも大きいため、中間層のバンドギャップは、超格子層のバンドギャップよりも小さくなる。このため、中間層は、励起光を100%透過できない場合が多い。その際には、励起光が中間層を、入射強度の50%以上透過できるようにすることが望ましい。そのためには、中間層の透過率は次式を満たす必要がある。
【0048】
【数6】

【0049】
α: 励起光波長に対する中間層の透過率
透過率αは、中間層の組成に依存するので、中間層の組成は、この透過率の条件を満たすものであることが望ましい。さらに(6)式において、1に近いほど(中間層での光吸収がないほど)最適な構造となる。
【0050】
バッファ層にモザイク構造が形成されるバッファ層の臨界膜厚hbは、理論的には次式で求められる。
【0051】
【数7】

【0052】
ただし、
bb : バッファ層に導入される転位のバーガーズベクトル
θb : バッファ層における転位線とバーガーズベクトルのなす角
λb : バッファ層と中間層界面の法線方向とバーガーズベクトルのなす角
fb: バッファ層と中間層の格子不整合度
【0053】
【数8】

【0054】
また、中間層の厚さの下限値をより正確に定義するためには、実験によるバッファ層の臨界膜厚の測定値を用いても良い。任意の基板上に中間層を、予測される最適厚さよりも、十分厚くエピタキシャル成長させ、その上に、バッファ層をエピタキシャル成長する。様々な厚さのバッファ層を成長させ、顕微鏡、もしくは原子間力顕微鏡などで、バッファ層の表面を観察する。そのとき、亀裂状のクラックが確認できる厚さを、バッファ層の臨界膜厚hbとして求めても良い。
【0055】
転位の導入により形成されるモザイク構造は、その幅が、超格子層の厚さ、及び、電子の拡散長以上であることが望ましい。歪み超格子層において、励起された電子が、このクラックで散乱される確率を低減させるためである。
【実施例1】
【0056】
実施例1は、図4に示すように、GaP 基板と、GaAsP/GaAs歪み超格子層を用いたスピン偏極電子発生素子である。すなわち、GaP から成る基板10上に、厚さ500nm のGaAsから成る中間層20が形成され、その上に、厚さ1 μm のバッファ層30が形成され、そのバッファ層30の上に歪み超格子層40が形成され、その歪み超格子層40の上に、厚さ5nm のキャップ層50が形成されている。
【0057】
この構造は、高偏極度、高輝度のスピン偏極電子源を目的として設計された透過型歪み超格子半導体フォトカソードである。歪み超格子層40は、理論計算に基づき、図4のように設計された。すなわち、バッファ層30は、Znが濃度1.5 ×1018cm-3に添加された厚さ1 μm のGaAs0.65P0.35で構成されている。また、歪み超格子層40は、厚さ4.3nm のGaAsから成る井戸層401と、厚さ4.3nm のGaAs0.65P0.35から成る障壁層402を1組として、12組で構成されており、総合厚さは103.2nm である。また、井戸層401と障壁層402には、共に、Znが濃度1.5 ×1018cm-3で添加されている。これは、p型半導体として、励起された電子を少数キャリアとするためである。そして、歪み超格子層40の上には、厚さ5nm のZnが濃度6 ×1019cm-3で添加されたGaAsから成るキャップ層50が形成されている。
【0058】
この構造から計算されるバンド構造を図2に示す。この構造では、重い正孔バンドと、軽い正孔バンドの分離幅が107 meV であり、理論的には100%のスピン偏極度が期待できる。また、バンド構造から偏極電子の励起には、780nm 程度の励起光波長が最適であることがわかる。ここで、透過型スピン偏極電子発生素子を想定する場合、基板が780nm の光を透過する必要があり、基板10としてはGaP を選択することとなる。この場合、バッファ層30の格子定数は0.558 nmであるのに対して、基板10の格子定数は0.539 nmとなるため、バッファ層30の結晶の方が、基板10の結晶よりも格子定数が大きくなる。このため、バッファ層30を基板10の上に直接、成長させた場合には、バッファ層30には、圧縮歪みがかかる。この圧縮歪みを引張歪みに変化させて、高偏極度を得るためには、本発明の要部である中間層20が必要となる。本発明の設計指針にしたがって、本構造では中間層20として厚さ500nm のGaAs層を導入した。上記組成のバッファ層30と中間層20との組み合わせでは、バッファ層の臨界膜厚は、式(7) に基づき、7nm である。しかし、バッファ層30が歪み超格子の厚さに対して薄すぎると、歪み超格子に掛かるべき歪みがバッファ層に掛かって好ましくないという理由から、バッファ層の厚さは歪み超格子の厚さの10倍程度が望ましいので、バッファ層の厚さを1ミクロンとした。この厚さの違いにより、約90%の歪みが歪み超格子に掛かり、バッファ層には約10%の歪みが掛かることになる。バッファ層の厚さは、素子全体の大きさが大き過ぎない範囲であれば、いくらでも厚くて構わない。
【0059】
図5に、バッファ層の表面のAFM 像を示す。図5(b)は、GaP 基板に直接GaAsP バッファ層を積層した場合のバッファ層表面のAFM 像、図5(a)は、GaP 基板上に、GaAs中間層を成長させて、その中間層上にGaAsP バッファ層を成長させた場合のバッファ層表面のAFM 像である。中間層が介在されている場合には、図5(a)から明らかなように、大きなクラック状の欠陥が見られ、さらにその間隔は0.5 〜1 μm 程度あることが確認できている。クラック密度としては、圧縮歪みにより生じた転位密度よりも低い。
【0060】
このバッファ層30の上に設計した歪み超格子層40を形成し、さらに、その上に、高ZnドープGaAsから成るキャップ層50を形成後、表面をCs:O蒸着によりNEA 表面を形成した。これは、仕事関数を小さくして、電子を真空中に取り出し易くするためである。この構造のスピン偏極電子発生素子の基板10の裏側からの励起光照射により、偏極度測定を行った。その結果を図6に示す。横軸は励起光波長、縦軸はスピン偏極度である。GaAs中間層を導入しなかったものは、最大偏極度で70% 以下と非常に低い値となっている。それに対して、GaAs中間層を導入したものは90% の偏極度を達成していることがわかる。本実施例において、中間層の望ましい厚さは、370nm以上500nm以下である。中間層の厚さが、370nmよりも薄いと、バッファ層の歪みに対する中間層の歪みを5%よりも小さくすることができないので、望ましくない。また、中間層の厚さは、基板の裏面から励起光を導入する場合に、光損失を低減するために、なるべく薄い方が望ましい。中間層が500nmよりも厚いと、光損失が大きくなり、望ましいくない。さらに、望ましくは、370nm以上400nm以下である。
この実施例において、バッファ層は、中間層の格子定数よりも格子定数が小さく、歪み超格子層の少なくとも井戸層の格子定数よりも小さい格子定数を有する結晶であれば、任意組成比のGaAsP(2元を含む)を用いることででき、歪み超格子層も任意組成比のGaAsP/GaAsP超格子を用いることができる。また、中間層も、格子定数の上述した関係を満たすのであれば、GaAsP、GaInP, GaInAs(いずれも2元系を含む)を用いることができる。基板には、GaP、その他の基板を用いても良い。
【実施例2】
【0061】
実施例2は、図7に示すように、GaAs基板と、GaInP/GaInAs歪み超格子層を用いたスピン偏極電子発生素子である。電子源の目的によっては、フォトカソードから取り出せる電流を大きくする必要がある。その一つの方法は、励起光のパワーを大きくすることである。また、電子顕微鏡への応用などを想定した場合、大型のレーザーではなく、小型で汎用性の高い半導体レーザーの利用が有効である。半導体レーザーにおいては、発光波長900 〜1000nmで数W の出力を持つ汎用品が多く存在する。したがって、この波長域の励起光により電子が励起される歪み超格子の利用が有効である。また、小型化のためには透過型が必須である。
【0062】
図7に示すように、本実施例のスピン偏極電子発生素子は、GaAsから成る基板11上に、厚さ500nm のInAsから成る中間層21が形成され、その上に、厚さ1 μm のバッファ層31が形成され、そのバッファ層31の上に歪み超格子層41が形成され、その歪み超格子層41の上にキャップ層51が形成されている。バッファ層31は、Znが濃度1.5 ×1018cm-3に添加された厚さ1 μm のGa0.4In0.6Pで構成されている。また、歪み超格子層41は、厚さ4nm のGa0.4In0.6Asから成る井戸層411と、厚さ4nm のGa0.4In0.6P から成る障壁層412を1組として、12組で構成され、総合厚さは、96nmである。また、井戸層411と障壁層412には、共に、Znが濃度1.5 ×1018cm-3で添加されている。そして、歪み超格子層41の上には、厚さ5nm のZnが濃度6 ×1019cm-3で添加されたGaAsから成るキャップ層51が形成されている。
【0063】
この構造のスピン偏極電子発生素子は、900-1000nmの励起光で励起される。この波長範囲の光を透過する基板としては、GaAs基板が適切である。しかし、この場合も、バッファ層の格子定数は基板の格子定数よりも大きくなる。そのため、本発明による中間層が有効となる。このような汎用な高強度半導体レーザーの利用は、これまでも望まれてきたが、本発明によって、高い偏極度を維持したまま、初めて実現できる構造である。上記組成のバッファ層31と中間層21との組み合わせでは、バッファ層の臨界膜厚は、式(7) に基づき、1nm である。しかし、バッファ層31が歪み超格子の厚さに対して薄すぎると、歪み超格子に掛かるべき歪みがバッファ層に掛かって好ましくないという理由から、バッファ層の厚さは歪み超格子の厚さの10倍程度が望ましいので、バッファ層の厚さを1ミクロンとした。この厚さの違いにより、約90%の歪みが歪み超格子に掛かり、バッファ層には約10%の歪みが掛かることになる。バッファ層の厚さは、素子全体の大きさが大き過ぎない範囲であれば、いくらでも厚くて構わない。
【0064】
本実施例において、中間層の望ましい厚さは、250nm以上、500nm以下である。
【0065】
中間層の厚さが、250nmよりも薄いと、バッファ層の歪みに対する中間層の歪みを5%よりも小さくすることができないので、望ましくない。また、中間層の厚さは、基板の裏面から励起光を導入する場合に、光損失を低減するために、なるべく薄い方が望ましい。中間層が500nmよりも厚いと、光損失が大きくなり、望ましいくない。さらに、望ましくは、250nm以上400nm以下である。この実施例において、バッファ層は、中間層の格子定数よりも格子定数が小さく、歪み超格子層の少なくとも井戸層の格子定数よりも小さい格子定数を有する結晶であれば、任意組成比のGaInP(2元を含む)を用いることででき、歪み超格子層も任意組成比のGaInP/GaInP超格子を用いることができる。また、中間層も、格子定数の上述した関係を満たすのであれば、GaAsP、GaInP, GaInAs(いずれも2元系を含む)を用いることができる。基板には、GaAs、その他の基板を用いても良い。
【実施例3】
【0066】
実施例3は、図8に示すように、GaN 基板と、GaN/GaInN 歪み超格子層を用いたスピン偏極電子発生素子である。図8に示すように、本実施例のスピン偏極電子発生素子は、GaN から成る基板12上に、厚さ500nm のInN から成る中間層22が形成され、その上に、厚さ1 μm のバッファ層32が形成され、そのバッファ層32の上に歪み超格子層42が形成され、その歪み超格子層42の上にキャップ層52が形成されている。バッファ層32は、Mgが濃度1.5 ×1018cm-3に添加された厚さ1 μm のGaN で構成されている。また、歪み超格子層42は、厚さ4nm のGa0.8In0.2N から成る井戸層421と、厚さ4nm のGaN から成る障壁層422を1組として、12組で構成され、総合厚さは、96nmである。また、井戸層421と障壁層422には、共に、Mgが濃度1.5 ×1018cm-3で添加されている。そして、歪み超格子層42の上には、厚さ5nm のMgが濃度6 ×1019cm-3で添加されたGa0.7In0.3N から成るキャップ層52が形成されている。
【0067】
一般に、バンドギャップが大きいほど、フォトカソード表面からの電子の取出しが容易になり、量子効率が良くなることが知られている。また、寿命も長くなることが知られている。そのため、ワイドバンドギャップ材料は期待されている。この材料系で、結晶性などを考慮したときに最も実現可能な超格子層は、GaN/GaInN である。また、基板にはGaN かAlN を用いることになり、やはりこの場合も、バッファ層の格子定数は基板の格子定数よりも大きくなる。そのため、本発明による中間層が有効となる。上記組成のバッファ層31と中間層21との組み合わせでは、バッファ層の臨界膜厚は、式(7) に基づき、1nm である。しかし、バッファ層31が歪み超格子の厚さに対して薄すぎると、歪み超格子に掛かるべき歪みがバッファ層に掛かって好ましくないという理由から、バッファ層の厚さは歪み超格子の厚さの10倍程度が望ましいので、バッファ層の厚さを1ミクロンとした。この厚さの違いにより、約90%の歪みが歪み超格子に掛かり、バッファ層には約10%の歪みが掛かることになる。バッファ層の厚さは、素子全体の大きさが大き過ぎない範囲であれば、いくらでも厚くて構わない。
【0068】
本実施例において、中間層の望ましい厚さは、85nm以上、500nm以下である。中間層の厚さが、85nmよりも薄いと、バッファ層の歪みに対する中間層の歪みを5%よりも小さくすることができないので、望ましくない。また、中間層の厚さは、中間層で吸収する波長の励起光を基板の裏面から導入する場合に、光損失を低減するために、なるべく薄い方が望ましい。たとえば、波長430mmを用いる場合には、中間層が500nmよりも厚いと、光損失が大きくなり、望ましいくない。さらに、望ましくは、85nm以上400nm以下である。この実施例において、バッファ層は、中間層の格子定数よりも格子定数が小さく、歪み超格子層の少なくとも井戸層の格子定数よりも小さい格子定数を有する結晶であれば、任意組成比のAlGaN, GaInN(いずれも2元系を含む)を用いることででき、歪み超格子層も任意組成比のAlGaN/AlGaN超格子、GaInN/AlGaNの超格子を用いることができる。また、中間層も、格子定数の上述した関係を満たすのであれば、GaInN、AlGaN, AlGaInN(いずれも2元系を含む)を用いることができる。基板には、GaNの他、サファイア、SiCなど、その他の基板を用いても良い。
【実施例4】
【0069】
井戸層組成をGa0.9In0.1Asとした以外は、実施例2と同様とした。
実施例2より本実施例のほうが、励起波長900nmにより適切な素子が作成できた。
【0070】
以上述べた全ての実施例において、歪み超格子層の組成や組成比は一例であって、他の組成比であっても良いし、組成が上記実施例と異なっていても良い。また、全実施例で、中間層は、2元系材料を選択しているが、バッファ層の格子定数よりも、中間層の格子定数の方が大きいものであれば、この中間層も3元、4元系の材料を選択することも可能である。また、中間層の格子定数は、バッファ層の格子定数に対して、0.1% 以上( 中間層の格子定数−バッファ層の格子定数)/バッファ層の格子定数)であることが望ましい。さらに、望ましくは、0.5% 以上である。
【0071】
また、基板、中間層、バッファ層の組成及び組成比は、励起光を吸収することのない、組成又は組成比であって、中間層の格子定数が、バッファ層の格子定数よりも大きい材料を使用することが、望ましい。この場合に、スピン偏極電子の外部量子効率を大きく向上させることができる。
【0072】
製造方法については、MOCVD 法など、公知の方法を用いることができ、良く知られているので記載を省略した。
【実施例5】
【0073】
次に、本発明のスピン偏極電子発生素子を用いたスピン偏極電子発生装置について説明する。図9は、スピン偏極電子線発生装置100の構成を説明する概念図である。このスピン偏極電子線発生装置100は、図示しない排気系に接続されて超高真空に維持される気密な真空容器112を備えている。この真空容器112は、励起光Lが入射される開口114を形成する筒状のポート116と、Mott散乱偏極度測定装置或いは投影型表面電子顕微鏡(LEEM)などのスピン偏極電子線利用機器に接続されて真空容器112内で発生させられたスピン偏極電子線Bをそれらの機器へ導くための筒状の接続用のポート118とが設けられている。上記ポート116の開口114は、石英などの透光板119によって気密に閉じられている。
【0074】
上記排気系は、高真空とするために真空容器112内を排気するターボポンプとロータリポンプとが直列に接続された粗排気系と、真空容器112全体を200℃程度でベーキングした後に排気して真空容器112内を10-10 Pa台の超高真空とするためにイオンポンプとNEG ポンプとを用いる本排気系とから構成される。
【0075】
上記真空容器112には、図10に示す素子保持装置120によって上記開口114の中心位置となるように保持される偏極電子線発生素子122と、図示しない支持装置によって支持されて上記偏極電子線発生素子122からスピン偏極電子線Bを引き出すための電界を印加する円筒状のアノード電極124と、アノード電極124により引き出されたスピン偏極電子線Bを収束させるための円筒状のソレノイドレンズ126と、ポート118へ向かうように上記スピン偏極電子線Bの進行方向を直角に曲げて偏極電子のスピン軸を進行方向に対してたとえば直角とするための偏向電磁石(スピンマニピュレータ)128とが、一直線上に所定の間隔で配置されている。また、真空容器112において、上記ポート118と偏向電磁石(スピンマニピュレータ)128との間には、スピン偏極電子線Bのスピンの向き(方位角)を制御するための円筒状のソレノイドレンズ130が配設されている。
【0076】
図10に詳しく示すように、偏極電子源素子保持装置120は、円筒状の一端部が外向きに突き出してポート116に固定されているカソードホルダ132と、そのカソードホルダ132を介して真空容器112のポート116に固定されて上記偏極電子線発生素子122をその両端面が露出するように周縁部で保持し位置決めする保持ブロック134と、前記円筒状のアノード電極124と同心となるように上記カソードホルダ132に嵌め着けられたカソード電極136とを備えている。カソード電極136は周壁部136aと底壁部136bとを有する有底円筒状を成し、その底壁部136bは、偏極電子線発生素子122の中央部を露出させるために中央部に貫通して形成された中央穴136cと、外周部から中央穴136cに向かうに従って薄くなる厚み形状とを備えている。前記アノード電極124は、カソード電極136へ向かうに従って小径となるテーパ形状を備え、上記中央穴136cから露出した偏極電子線発生素子122付近の電界強度が最も大きくなるようにされている。上記アノード電極124およびカソード電極136は、暗電流を抑制するためにその表面が鏡面仕上げされたものであり、たとえばステンレス鋼により構成される。
【0077】
上記保持ブロック134には、それにより保持されている偏極電子線発生素子122の基板側表面すなわち裏面の中央部を露出させるために貫通して形成された貫通穴138と、その貫通穴138の外周側に位置して保持ブロック134内に嵌め着けられた円筒状のヒータ140とが設けられている。上記保持ブロック134はたとえば偏極電子線発生素子122の構成元素に対して非反応性の金属材料たとえばモリブデン、タンタル等により構成されている。
【0078】
また、真空容器112のポート116内には、偏極電子線発生素子122の非基板側表面すなわち電子放出側表面を負の電子親和性(NEA :Negative Electron Affinity) 表面とするために、アノード電極124およびカソード電極136付近でセシウムCsおよび酸素Oを放出するセシウム放出装置144および図示はしていないが酸素Oを導入する装置がそれぞれ設けられている。セシウム放出装置144は、たとえば、CsCrO4 および還元剤がゲッター剤とともにニクロム製スリーブ内に収容されることにより構成され、そのヒータの通電加熱によりCsCrO4 を還元させることでセシウムCsを放出する。偏極電子線発生素子122の清浄にされた表面層の表面にセシウムCsおよび酸素Oが付加されることによりおよそ数原子層の厚さを持つ電気2重層ポテンシャルが形成されて真空順位が下げられる。すなわち、真空中へ伝導帯にある偏極電子が放出されるための電子親和性が負とされて、スピン偏極電子線Bを得るための量子効率が高められる。なお、酸素Oを導入する代りに、三フッ化窒素NF3 などのフッ化窒素を導入する装置を設けて、前記電子放出側表面にセシウムCsおよびフッ化窒素を付加しても、同様の効果が得られる。
【0079】
前記励起光Lは、励起光入射装置146により発生させられて偏極電子線発生素子122の基板側表面すなわち裏面に入射させられるようになっている。励起光入射装置146は、たとえばレーザ光源148と、そのレーザ光源148から出力されたレーザ光を直線偏光から円偏光に変換して励起光Lとするための直線偏光子150およびλ/4波長板152と、その励起光Lを収束させるためにカソードホルダ132から透光板119側へ突設されたレンズ支持部156により前記アノード電極124と同心に支持されることにより真空容器112内に配置されたレンズ154とを備え、収束レンズ154は、ポート116の開口114を塞ぐように設けられた透光板119および保持ブロック134に形成された貫通穴138を通して、励起光Lを小さなスポット径で偏極電子線発生素子122の基板側から入射させ、超格子半導体光電層166に収束させる。収束レンズ154と偏極電子線発生素子122との間の距離すなわち焦点距離fは、上記透光板119の厚み寸法と保持ブロック134の厚み寸法とを加えた値よりも大きいが、アノード電極124、ソレノイドレンズ126、および偏向電磁石(スピンマニピュレータ)128を通して偏極電子線発生素子122の非基板側表面に収束する場合に比較して、大幅に短縮されている。この装置例よりさらに収束レンズ154と偏極電子線発生素子122の距離を短くすることは可能であり、たとえば負の電子親和性表面処理(NEA 活性化)は別の真空容器で行った偏極電子線発生素子122をロードロック機構によりカソード電極136にセットする方式を採用すると円筒状のヒータ140は不要となり、収束レンズ154と偏極電子線発生素子122との間の距離を数mm以内にすることができる。
【0080】
なお、励起光入射装置146の収束レンズ154は、真空容器112の外部に設けても良い。また、ポート118に、Mott散乱偏極度測定装置或いは投影型表面電子顕微鏡(LEEM)などを接続することにより、本スピン偏極電子発生装置をMott散乱偏極度測定装置や、投影型表面電子顕微鏡などのスピン偏極電子線応用装置とすることができる。
【0081】
本実施例のスピン偏極電子発生装置は、スピン偏極電子発生素子と、該スピン偏極電子発生素子の半導体光電層に励起光を入射させる励起光入射装置とを含み、該半導体光電層に励起光が収束されることによって該半導体光電層からスピン方向が偏在しているスピン偏極電子を発生させ、励起光入射装置は、スピン偏極電子発生素子の基板側から半導体光電層に励起光を収束させる構成である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、スピントロニクスや磁気記録媒体材料における磁区構造を観察する電子顕微鏡の偏極電子源に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、バッファ層と、バッファ層上に形成された歪み超格子層とを有するスピン偏極電子発生素子において、
前記基板と前記バッファ層との間に、前記バッファ層を構成する結晶の格子定数よりも大きな格子定数を有する結晶から成る中間層を介在させたことを特徴とするスピン偏極電子発生素子。
【請求項2】
前記中間層の厚さは、臨界膜厚以上の厚さを有することを特徴とする請求項1に記載のスピン偏極電子発生素子。
【請求項3】
前記バッファ層には、引張歪みにより基板に垂直な方向へのクラックが発生していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスピン偏極電子発生素子。
【請求項4】
前記中間層は、前記バッファ層に係る引張歪みが緩和される時に、前記バッファ層から歪みを受けない厚さであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のスピン偏極電子発生素子。
【請求項5】
前記スピン偏極電子発生素子は前記基板の裏面から励起光を前記歪み超格子層に入射させるものであり、前記中間層の厚さは、前記励起光を50% 〜100%透過させる厚さであることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のスピン偏極電子発生素子。
【請求項6】
前記基板は、GaP から成り、前記バッファ層は、GaAsxP1-x(0≦x≦1) 、GayIn1-yP (0≦y≦1)又は GazIn1-zAs(0≦z≦1)から成り、前記中間層は、前記バッファ層の格子定数よりも、格子定数が大きい、一般式、AlGaInAsPで表される2元、3元、4元、5元の化合物から成ることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のスピン偏極電子発生素子。
【請求項7】
前記中間層は、GaAsから成ることを特徴とする請求項6に記載のスピン偏極電子発生素子。
【請求項8】
前記基板は、GaAsから成り、前記バッファ層は、GaAsxP1-x (0≦x≦1) 、GayIn1-yP (0≦y≦1)又は GazIn1-zAs(0≦z≦1)、前記中間層は、前記バッファ層の格子定数よりも、格子定数が大きい、一般式、AlGaInAsPで表される2元、3元、4元、5元の化合物から成ることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のスピン偏極電子発生素子。
【請求項9】
前記中間層は、InAsから成ることを特徴とする請求項8に記載のスピン偏極電子発生素子。
【請求項10】
前記基板は、GaN から成り、前記バッファ層は、AlxGa1-xN(0≦x≦1)又はGayIn1-yN(0≦y≦1)から成り、前記中間層は、前記バッファ層の格子定数よりも、格子定数が大きい、一般式、AlGaInNで表される2元、3元、4元の化合物から成ることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のスピン偏極電子発生素子。
【請求項11】
前記中間層は、InN から成ることを特徴とする請求項10に記載のスピン偏極電子発生素子。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載のスピン偏極電子発生素子を用いたスピン偏極電子発生装置。
【請求項13】
前記スピン偏極電子発生装置は、前記スピン偏極電子発生素子をスピン偏極電子源とした電子顕微鏡であることを特徴とする請求項12に記載のスピン偏極電子発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−266809(P2009−266809A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73929(P2009−73929)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【出願人】(391002487)学校法人大同学園 (23)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】