説明

スピーカシステム及びそれに用いられるエンクロージャー

【課題】低音域及び高音域を補強することができる多面体形状のスピーカシステム及びそれに用いられるエンクロージャーを提供すること。
【解決手段】本発明は、多面体上の各面が対向面を持つ6、8、10、又は12面体のエンクロージャーを基本構造とするスピーカシステムである。たとえば、12面体のエンクロージャーを基本構造とするスピーカシステム1は、多面体上で対向する面同士にそれぞれ配置された中低音用又は低音用の偶数個の第1のスピーカユニット5x,5yと、多面体上の一面に配置された中高音用又は高音用の第2のスピーカユニット6と、第2のスピーカユニット6に対向する面に配置されたポート部8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカシステム及びそれに用いられるエンクロージャーに関し、より特定的には、多面体形状のスピーカシステム及びそれに用いられるエンクロージャーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の多面体形状のスピーカシステムは、基本的には、無指向性を実現するために、用いられることがほとんどであった。そのため、低音再生や高音再生の補強を考慮することなく、多面体形状のスピーカシステムを設計するのが一般的であった。しかし、多面体形状のスピーカシステムにおいても、低音再生や高音再生を補強したいというニーズが存在する。このニーズに関連して、従来、特許文献1及び特許文献2に記載のスピーカシステムが提案されている。
【0003】
特許文献1では、略球形のエンクロージャーにスピーカユニットを配置すると共に、当該エンクロージャーにバスレフダクトを設けて、低音域を補強するスピーカシステムが開示されている。
【0004】
特許文献2では、32面体のエンクロージャーにおいて、5角形で構成される面に低音域用又は中低音域用のスピーカユニットを配置して、6角形で構成される面に中高音域用又は高音域用のスピーカユニットを配置しているスピーカシステムが開示されている。特許文献2に記載のスピーカシステムは、音の再生帯域幅をスピーカ体の全周囲に広げることができる。
【0005】
特許文献3に記載のスピーカシステムは、互いに傾斜した二つの中低音用スピーカユニットと、当該二つの中低音用スピーカユニットの間に配置された中高音用スピーカユニットと、当該中高音用スピーカユニットの背面側に配置されたダクトとを備える。なお、特許文献3に記載のスピーカシステムは、エンクロージャーの前面方向の指向性を有し、無指向性のスピーカシステムではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4157153号公報
【特許文献2】特開平9−70092号公報
【特許文献3】特開平11−98588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のスピーカシステムでは、エンクロージャーにバスレフダクトを設けているので低音域は補強される。しかし、特許文献1に記載のスピーカシステムでは、高音域は補強されない。
【0008】
特許文献2に記載のスピーカシステムでは、低音域用のスピーカユニット及び高音域用のスピーカユニットが配置されるため、低音域及び高音域が補強される。しかし、特許文献2に記載のスピーカシステムでは、複数の低音域用のスピーカユニット及び高音域用のスピーカユニットが配置されており、製造コストが高くなる。
【0009】
特許文献3に記載のスピーカシステムは、エンクロージャーの前面方向の指向性を有し、無指向性のスピーカシステムではないため、特許文献3に開示されている構造を無指向性のスピーカシステムにそのまま適用することはできない。
【0010】
それゆえ、本発明の目的は、低音域及び高音域を補強することができる多面体形状のスピーカシステム及びそれに用いられるエンクロージャーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような特徴を有する。本発明は、多面体上の各面が対向面を持つ6、8、10、又は12面体のエンクロージャーを基本構造とするスピーカシステムであって、多面体上で対向する面同士にそれぞれ配置された中低音用又は低音用の偶数個の第1のスピーカユニットと、多面体上の一面に配置された中高音用又は高音用の第2のスピーカユニットと、第2のスピーカユニットに対向する面に配置されたポート部とを備える。
【0012】
好ましくは、第2のスピーカユニットが聴取者側を向くように、上方から吊り下げられるための吊し部材をさらに備えると良い。
【0013】
好ましくは、エンクロージャーは、吊し部材による支持部分から支持部分に点対称に対向する箇所まで、支柱部材を内部に含むと良い。
【0014】
好ましくは、支柱部材は、天然無垢材、又は天然無垢材の集成材から形成されると良い。
【0015】
好ましくは、支柱部材は、円柱状であると良い。
【0016】
好ましくは、ポート部は、支柱部材を挟むように平行に配置された2本のバスレフポートであると良い。
【0017】
好ましくは、吊し部材は、スピーカシステムを床又は机上に設置する場合、支柱部材の一端側に取り付けられ、スピーカシステムを天井から吊り下げて設置する場合、支柱部材の他端側から取り付けられると良い。
【0018】
好ましくは、複数個の第1のスピーカユニットにおいて、対向面に配置された二つの第1のスピーカユニット同士は、同相であると良い。
【0019】
好ましくは、対向面に配置された二つの第1のスピーカユニットまでのアンプからの配線の長さは、略同一であると良い。
【0020】
また、本発明は、スピーカシステムに用いられる多面体を基本構造とする6、8、10、又は12面体のエンクロージャーであって、多面体上の各面は、対向面を持ち、多面体上の偶数個の面は、中低音用又は低音用スピーカユニットを偶数個配置するための面であり、多面体上の一面は、中高音用又は高音用スピーカユニットを配置するための面であり、中高音用又は高音用スピーカユニットを配置するための面に対向する面には、ポート部が配置されていることを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、多面体のエンクロージャーを基本構造とするスピーカシステムであって、エンクロージャーの少なくとも一つの頂点に、エンクロージャーを上方から吊り下げるための吊し部材と、吊し部材による支持部分から支持部分に点対称に対向する箇所まで、エンクロージャー内部に設けられた支柱部材とを備える。
【0022】
また、本発明は、スピーカシステムに用いられる多面体を基本構造とするエンクロージャーであって、エンクロージャーの少なくとも一つの頂点に、エンクロージャーを上方から吊り下げるための吊し部材と、吊し部材による支持部分から支持部分に点対称に対向する箇所まで、エンクロージャー内部に設けられた支柱部材とを備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、多面体上で対向する面同士に、偶数個の第1のスピーカユニットがそれぞれ配置されている。そのため、対向する第1のスピーカユニット同士の反作用力が打ち消し合い、エンクロージャー全体の振動を抑えつつ、少なくとも水平面方向に無指向性を有することとなる。加えて、第2のスピーカユニットとポート部とが対向するように配置されているので、同軸方向に高音及び低音が補強されることとなる。よって、低音域及び高音域を補強することができる多面体形状のスピーカシステム及びそれに用いられるエンクロージャーが提供されることとなる。いわば、無指向性でありながら、同軸スピーカシステムの特徴を備えるスピーカシステムが提供されることとなる。
【0024】
第2のスピーカユニットを聴取者側に向くように吊り下げることによって、聴取者には低音から高音までが聴取され、かつ、空間全体には無指向性に音が広がるスピーカシステムが提供されることとなる。
【0025】
支柱部材がエンクロージャーの内部に含まれることによって、エンクロージャー全体の振動を更に抑えることができ、音質が向上する。
【0026】
支柱部材の素材を天然無垢材、又は天然無垢材の集成材とすることによって、音質がさらに向上する。
【0027】
支柱部材を円柱状にすることによって、内部定在波の発生を抑えることが可能となる。
【0028】
ポート部を支柱部材を挟むように平行に配置された2本のバスレフポートとすることによって、支柱部材に邪魔されることなく、低音補強を実現することが可能となる。
【0029】
対向面に配置された二つの第1のスピーカユニット同士を同相とすることによって、反作用力の打ち消し合いを確実なものとすることができる。
【0030】
対向面に配置された二つの第1のスピーカユニットまでのアンプからの配線の長さを略同一とすることによって、反作用力の打ち消し合いをさらに確実なものとすることができる。
【0031】
エンクロージャーの上方から吊り下げる吊し部材を設けて、当該吊し部材による支持部分から点対称に対向する箇所まで支柱部材を設けることによって、吊り下げて多面体のスピーカシステムを設置する場合、エンクロージャー全体の振動を抑えることができる。
【0032】
本発明のこれらおよび他の目的、特徴、局面、効果は、添付図面と照合して、以下の詳細な説明から一層明らかになるであろう。

【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係るスピーカシステム1の斜視図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施形態に係るスピーカシステム1の斜視図である。
【図3】図3は、図1におけるA−A線で切断したときのエンクロージャー4の内部構造を示す一片側斜視図である。
【図4】図4は、図1におけるA−A線で切断したときのエンクロージャー4の内部構造を示す他片側斜視図である。
【図5】図5は、第1のスピーカユニット5x,5y及び第2のスピーカユニット6の配線を示す回路図である。
【図6】図6は、スピーカシステム1を天井に設置する場合の様子を示す斜視図である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施形態に係るスピーカシステムで用いられるエンクロージャー4aの斜視図である。
【図8】図8は、本発明の第2の実施形態に係るスピーカシステムで用いられるエンクロージャー4aの斜視図である。
【図9】図9は、本発明の第3の実施形態に係るスピーカシステムで用いられるエンクロージャー4bの斜視図である。
【図10】図10は、本発明の第3の実施形態に係るスピーカシステムで用いられるエンクロージャー4bの斜視図である。
【図11】図11は、本発明の第4の実施形態に係るスピーカシステムで用いられるエンクロージャー4cの斜視図である。
【図12】図12は、本発明の第4の実施形態に係るスピーカシステムで用いられるエンクロージャー4cの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(第1の実施形態)
図1及び図2は、本発明の第1の実施形態に係るスピーカシステム1の斜視図である。スピーカシステム1は、T字状の吊し部材3によって、スタンド2に吊り下げられている。スピーカシステム1は、エンクロージャー4と、5個の第1のスピーカユニット5xと、5個の第1のスピーカユニット5yと、1個の第2のスピーカユニット6と、2本のバスレフポート7,7からなるポート部8とを備える。第1のスピーカユニット5x,5yは、中低音用又は低音用のスピーカユニットである。第2のスピーカユニットユニット6は、中高音用又は高音用のスピーカユニットユニットである。中低音用スピーカユニットとしては、フルレンジのスピーカユニットを用いると良い。低音用のスピーカユニットとしては、ウーハーを用いると良い。中高音用又は高音用スピーカユニットとしては、たとえば、ドーム型ツィーターを用いると良い。エンクロージャー4の材質としては、周知のエンクロージャーに用いられるあらゆる素材が利用可能である。
【0035】
図3は、図1におけるA−A線で切断したときのエンクロージャー4の内部構造を示す一片側斜視図である。図4は、図1におけるA−A線で切断したときのエンクロージャー4の内部構造を示す他片側斜視図である。図3及び図4において、第1のスピーカユニット5xが配置される穴を5aで示し、第1のスピーカユニット5yが配置される穴を5bで示し、第2のスピーカユニット6が配置される穴を6aで示す。
【0036】
エンクロージャー4は、略正12面体である。したがって、エンクロージャー4上の各面は、必ず対向面を持つ。ここで対向面とは、ある面に対して、平行に存在する面のことをいう。第2のスピーカユニットユニット6とポート部8とは、エンクロージャー4上で対向する面同士に配置されている。すなわち、第2のスピーカユニットユニット6とポート部8とは、同軸上に配置されている。
【0037】
第2のスピーカユニット6が配置されている5角形の面の回りに、5個の第1のスピーカユニット5xが配置されている。ポート部8が配置されている5角形の面の回りに、5個の第1のスピーカユニット5yが配置されている。したがって、エンクロージャー4上において、ある一つの第1のスピーカユニット5xに対して、必ず、対向面に配置された別の第1のスピーカユニット5yが存在することとなる。
【0038】
図5は、第1のスピーカユニット5x,5y及び第2のスピーカユニット6の配線を示す回路図である。第2のスピーカユニット6の周りに存在する5個の第1のスピーカユニット5x同士は、直列に接続されている。ポート部8の周りに存在する5個の第1のスピーカユニット5y同士は、直列に接続されている。5個の第1のスピーカユニット5xと5個の第1のスピーカユニット5yとは、同相でかつ並列に接続されている。さらに、好ましくは、対向面同士に配置された第1のスピーカユニット5xと5yとは、アンプからの配線の長さが略同一になるように、接続されている。したがって、第1のスピーカユニット5xの裏面から生じる反作用力は、対向する面に配置された別の第1のスピーカユニット5yの裏面から生じる反作用力と、同時期にかつ同程度の力で生じることとなる。よって、第1のスピーカユニット5xの裏面から生じる反作用力は、対向する面に配置された別の第1のスピーカユニット5yの裏面から生じる反作用力と打ち消し合うこととなる。そのため、エンクロージャー4の振動は、最小限に抑えられる。
【0039】
エンクロージャー4は、第2のスピーカユニット6が配置されている面にある角部10から、当該角部10に対して点対称に存在する(ポート部が配置されている面にある)角部11にまで連接される支柱部材9を内部に含む。2本の平行するバスレフポート7,7は、支柱部材9を挟むように、配置されている。バスレフポート7,7のサイズ(長さや太さ)は、ヘルムホルツの共鳴に基づく反共振周波数を求める計算式によって、適宜、計算される。第2のスピーカユニット6及び第1のスピーカユニット5x,5yから生じる低音は、バスレフポート7,7によって補強され、ポート部8から出力される。
【0040】
図1に示すように、スピーカシステム1を床や机上に設置する場合、角部10に設けられたねじ穴にT字状の吊し部材3を取り付けて、スタンド2に吊し部材3を引っ掛ける。このとき、第2のスピーカユニット6は、聴取者の方向を向くように、斜め上方を向く。
【0041】
図6は、スピーカシステム1を天井に設置する場合の様子を示す斜視図である。スピーカシステムを天井に設置する場合、角部11に設けられたねじ穴にフック状の吊し部材3aを取り付けて、天井から吊り下げられた鎖などの部材に、吊し部材3aを引っ掛ける。このとき、第2のスピーカユニット6は、聴取者の方向を向くように、斜め下方を向く。
【0042】
図1及び図6に示すように、スピーカシステム1が吊り下げられて設置される場合、支柱部材9は、吊し部材3又は3aから、鉛直上下方向に位置することとなる。支柱部材9は、エンクロージャー4を強固にする。そのため、対向する第1のスピーカユニット5x,5y同士による反作用力の消滅だけでなく、支柱部材9によって、エンクロージャー4全体の振動を抑えることが可能となる。ただし、支柱部材9によって、音波による振動がポート部8に伝わることが妨げられる可能性があるので、好ましくは、バスレフポート7,7は、支柱部材9を避けて、支柱部材9を挟むように配置されるのが良い。支柱部材9は、好ましくは、ウォールナット、メープル、マホガニー、ラバーウッド、スプールス、黒檀、松材等の楽器にも使用される良質な響きを発生し得る天然無垢材、あるいはそれらの集成材から形成すると良く、これにより、より音質が向上する。また、支柱部材9は、内部定在波による悪影響をできるだけ回避するために、円柱状であると良い。また、支柱部材9に吸音材を巻き付けることによって、効果的に内部定在波を防ぐことができる。
【0043】
このように、第1の実施形態においては、第1のスピーカユニット5x,5yが配置されている水平面においては、無指向性が実現される。加えて、第2のスピーカユニット6及びポート部8が配置されている同軸方向においては、高音及び低音が補強されることとなる。吊し部材3,3aを適切な位置に配置することによって、スピーカユニットシステム1を床や机上に設置した場合、聴取者側に第2のスピーカユニット6を向けることができ、かつ、スピーカシステム1を天井に設置した場合、聴取者側に第2のスピーカユニット6を向けることができる。よって、聴取者は、高音から低音までの音を視聴することができる。そのため、第1の実施形態によって、空間全体に対して音が無指向性に広がると同時に、聴取者に向かっては同軸スピーカシステムのように、低音から高音までの音が発せられるスピーカシステム1が提供されることとなる。よって、本発明の目的である、低音域及び高音域を補強することができる多面体形状のスピーカシステム1及びそれに用いられるエンクロージャー4が提供されたことになる。
【0044】
支柱部材9によって、エンクロージャー4がより強固なものとなる。従来の多面体スピーカシステムの場合、下から支えるスタンドが一般的であった。しかし、従来のスタンドは、振動時にバランスが崩れるのを防止するために、スピーカシステムよりも重くなければならなかった。したがって、従来のスタンドは、取り扱い難く不便であった。第1の実施形態によれば、スピーカシステム1をスタンド2又は天井から吊し部材3,3aによって吊り下げるだけで良い。したがって、スピーカシステム1は、従来のスピーカシステムに比べて、非常に取り扱い易いと言える。特に、支柱部材9を設けることによって、吊り下げて音を発する際に生じる振動が防止され、音質をさらに向上させることが可能となる。なお、支柱部材9は、本発明における必須の構成要素ではない。支柱部材9を設けなくても、低音から高音までの音の再生は可能である。
【0045】
(第2の実施形態)
図7及び図8は、本発明の第2の実施形態に係るスピーカシステムで用いられるエンクロージャー4aの斜視図である。図7及び図8において、第1の実施形態と同様の機能を有する部分については、同一の参照符号を付し、説明を省略する。第2の実施形態において、エンクロージャー4aは、略正6面体である。このように、略正6面体のエンクロージャー4aを用いたとしても、第1のスピーカユニットが配置されている水平面で無指向性を実現することができ、かつ、第2のスピーカユニット及びポート部8が配置されている同軸方向において、低音から高音までの音を再生することができる。なお、第2の実施形態においても、床や机上に設置する場合は角部10に吊し部材3が取り付けられ、天井に設置する場合は角部11に吊し部材3aが取り付けられると、聴取者側に第2のスピーカユニット6が向くこととなる。
【0046】
(第3の実施形態)
図9及び図10は、本発明の第3の実施形態に係るスピーカシステムで用いられるエンクロージャー4bの斜視図である。図9及び図10において、第1の実施形態と同様の機能を有する部分については、同一の参照符号を付し、説明を省略する。第3の実施形態において、エンクロージャー4bは、略正6面体の対向する二つの角を三角形状に切り落とした8面体である。このように、8面体のエンクロージャー4bを用いたとしても、第1のスピーカユニットが配置されている水平面で無指向性を実現することができ、かつ、第2のスピーカユニット及びポート部8が配置されている同軸方向において、低音から高音までの音を再生することができる。なお、第3の実施形態では、第2のスピーカユニットの上下向きはないので、床や机上及び天井に設置する場合、角部10に吊し部材3が取り付けられれば良い。
【0047】
なお、第3の実施形態において、角部13から角部14にかけて支柱部材が設けられていても良い。この場合は、第2のスピーカユニットの上下向きがあるので、聴取者に第2のスピーカユニットが向くように、床や机上に設置する場合は角部13に吊し部材を取り付け、天井に設置する場合は角部14に吊し部材が取り付けられると良い。この場合も、2本のバスレフポートは、支柱部材を避けるように平行に配置されるのが好ましい。
【0048】
(第4の実施形態)
図11及び図12は、本発明の第4の実施形態に係るスピーカシステムで用いられるエンクロージャー4cの斜視図である。図11及び図12において、第1の実施形態と同様の機能を有する部分については、同一の参照符号を付し、説明を省略する。第4の実施形態において、エンクロージャー4cは、略正8面体の対向する二つの角を四角形に切り落とした10面体である。このように、10面体のエンクロージャー4cを用いたとしても、第1のスピーカユニットが配置されている水平面で無指向性を実現することができ、かつ、第2のスピーカユニット及びポート部8が配置されている同軸方向において、低音から高音までの音を再生することができる。なお、第4の実施形態では、第2のスピーカユニットの上下向きはないので、床や机上及び天井に設置する場合、角部10に吊し部材3が取り付けられれば良い。
【0049】
なお、第4の実施形態において、角部15から角部16にかけて支柱部材が設けられていても良い。この場合は、第2のスピーカユニットの上下向きがあるので、聴取者に第2のスピーカユニットが向くように、床や机上に設置する場合は角部15に吊し部材を取り付け、天井に設置する場合は角部16に吊し部材が取り付けられると良い。この場合も、2本のバスレフポートは、支柱部材を避けるように平行に配置されるのが好ましい。
【0050】
第1〜第4の実施形態に示したように、本発明に係るスピーカシステムは、多面体上の各面が対向面を持つ6、8、10、又は12面体のエンクロージャーを基本構造とする。ただし、多面体の角部分を面取りしたり、他の多面体状、球体状又は略球体状の枠体にエンクロージャーを入れるなどしてスピーカシステムを構成することができる。したがって、エンクロージャーの外形に拘泥されることなく、複数のスピーカユニットが配置されている形状が本質的に何面体であるかという点に着目して、エンクロージャーの基本構造を考慮しなければならない。
【0051】
たとえば、エンクロージャーの外形が球体であったとしても、第2のスピーカユニット6とポート部8とが同軸状に配置され、かつ、当該同軸の周りに第1のスピーカユニット5xとそれに点対称に対向するように配置された第1のスピーカユニット5yとが5個ずつ設けられていれば、基本構造が12面体のエンクロージャーを用いたスピーカシステム1であると言える。また、仮に、第1のスピーカユニット5xとそれに点対称に対向するように配置された第1のスピーカユニット5yとが4個ずつであったとしても、5個ずつ配置した場合の基本構造が12面体のエンクロージャーであれば、第1の実施形態に係る発明の範囲に属することとなる。したがって、本発明には、少なくとも下記のようなパターンのスピーカシステムが含まれることとなる。当然、下記はあくまでも例示であって、本発明を限定するものではない。
【0052】
(第1の実施形態に係る発明に少なくとも含まれるスピーカシステムの例)
第2のスピーカユニット6とポート部8とが同軸上にあり、かつ当該同軸上に点対称に対応するように配置された第1のスピーカユニット5xと第1のスピーカユニット5yとが1個ずつある場合。
第2のスピーカユニット6とポート部8とが同軸上にあり、かつ当該同軸上に点対称に対応するように配置された第1のスピーカユニット5xと第1のスピーカユニット5yとが2個ずつある場合。
第2のスピーカユニット6とポート部8とが同軸上にあり、かつ当該同軸上に点対称に対応するように配置された第1のスピーカユニット5xと第1のスピーカユニット5yとが3個ずつある場合。
第2のスピーカユニット6とポート部8とが同軸上にあり、かつ当該同軸上に点対称に対応するように配置された第1のスピーカユニット5xと第1のスピーカユニット5yとが4個ずつある場合。
第2のスピーカユニット6とポート部8とが同軸上にあり、かつ当該同軸上に点対称に対応するように配置された第1のスピーカユニット5xと第1のスピーカユニット5yとが5個ずつある場合。
【0053】
(第2の実施形態に係る発明に少なくとも含まれるスピーカシステムの例)
第2のスピーカユニット6とポート部8とが同軸上にあり、かつ当該同軸上に点対称に対応するように配置された第1のスピーカユニット5xと第1のスピーカユニット5yとが1個ずつある場合。
第2のスピーカユニット6とポート部8とが同軸上にあり、かつ当該同軸上に点対称に対応するように配置された第1のスピーカユニット5xと第1のスピーカユニット5yとが2個ずつある場合。
【0054】
(第3の実施形態に係る発明に少なくとも含まれるスピーカシステムの例)
第2のスピーカユニット6とポート部8とが同軸上にあり、かつ当該同軸上に点対称に対応するように配置された第1のスピーカユニット5xと第1のスピーカユニット5yとが1個ずつある場合。
第2のスピーカユニット6とポート部8とが同軸上にあり、かつ当該同軸上に点対称に対応するように配置された第1のスピーカユニット5xと第1のスピーカユニット5yとが2個ずつある場合。
第2のスピーカユニット6とポート部8とが同軸上にあり、かつ当該同軸上に点対称に対応するように配置された第1のスピーカユニット5xと第1のスピーカユニット5yとが3個ずつある場合。
【0055】
(第4の実施形態に係る発明に少なくとも含まれるスピーカシステムの例)
第2のスピーカユニット6とポート部8とが同軸上にあり、かつ当該同軸上に点対称に対応するように配置された第1のスピーカユニット5xと第1のスピーカユニット5yとが1個ずつある場合。
第2のスピーカユニット6とポート部8とが同軸上にあり、かつ当該同軸上に点対称に対応するように配置された第1のスピーカユニット5xと第1のスピーカユニット5yとが2個ずつある場合。
第2のスピーカユニット6とポート部8とが同軸上にあり、かつ当該同軸上に点対称に対応するように配置された第1のスピーカユニット5xと第1のスピーカユニット5yとが3個ずつある場合。
第2のスピーカユニット6とポート部8とが同軸上にあり、かつ当該同軸上に点対称に対応するように配置された第1のスピーカユニット5xと第1のスピーカユニット5yとが4個ずつある場合。
【0056】
なお、本発明に用いられるエンクロージャーは、多面体上の各面が対向面を持つ6、8、10、又は12面体であれば良く、第1〜第4の実施形態で示したエンクロージャーに限定されるものではない。
【0057】
なお、6、8、10、又は12面体に限定されることなく、多面体のエンクロージャーを基本構造とするスピーカシステムにおいて、エンクロージャーの少なくとも一つの頂点に、エンクロージャーを上方から吊り下げるための吊し部材と、吊し部材による支持部分から支持部分に点対称に対向する箇所まで、エンクロージャー内部に設けられた支柱部材とを設けることによって、吊り下げて多面体のスピーカシステムを設置する場合、エンクロージャー全体の振動を抑えることができる。
【0058】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、スピーカシステム及びそれに用いられるエンクロージャーであり、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 スピーカシステム
2 スタンド
3 吊し部材
4,4a,4b,4c エンクロージャー
5x,5y 第1のスピーカユニット
5a,5b 穴
6 第2のスピーカユニット
6a 穴
7 バスレフポート
8 ポート部
9 支柱部材
10,11,13,14,15,16 角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多面体上の各面が対向面を持つ6、8、10、又は12面体のエンクロージャーを基本構造とするスピーカシステムであって、
多面体上で対向する面同士にそれぞれ配置された中低音用又は低音用の偶数個の第1のスピーカユニットと、
多面体上の一面に配置された中高音用又は高音用の第2のスピーカユニットと、
前記第2のスピーカユニットに対向する面に配置されたポート部とを備える、スピーカシステム。
【請求項2】
前記第2のスピーカユニットが聴取者側を向くように、上方から吊り下げられるための吊し部材をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載のスピーカシステム。
【請求項3】
前記エンクロージャーは、前記吊し部材による支持部分から前記支持部分に点対称に対向する箇所まで、支柱部材を内部に含むことを特徴とする、請求項2に記載のスピーカシステム。
【請求項4】
前記支柱部材は、天然無垢材、又は前記天然無垢材の集成材から形成されることを特徴とする、請求項3に記載のスピーカシステム。
【請求項5】
前記支柱部材は、円柱状であることを特徴とする、請求項3又は4に記載のスピーカシステム。
【請求項6】
前記ポート部は、前記支柱部材を挟むように平行に配置された2本のバスレフポートであることを特徴とする、請求項3〜5のいずれかに記載のスピーカシステム。
【請求項7】
前記吊し部材は、
前記スピーカシステムを床又は机上に設置する場合、前記支柱部材の一端側に取り付けられ、
前記スピーカシステムを天井から吊り下げて設置する場合、前記支柱部材の他端側から取り付けられることを特徴とする、請求項3〜6のいずれかに記載のスピーカシステム。
【請求項8】
前記複数個の第1のスピーカユニットにおいて、対向面に配置された二つの前記第1のスピーカユニット同士は、同相であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のスピーカシステム。
【請求項9】
対向面に配置された二つの前記第1のスピーカユニットまでのアンプからの配線の長さは、略同一であることを特徴とする請求項8に記載のスピーカシステム。
【請求項10】
スピーカシステムに用いられる多面体を基本構造とする6、8、10、又は12面体のエンクロージャーであって、
多面体上の各面は、対向面を持ち、
多面体上の偶数個の面は、中低音用又は低音用スピーカユニットを偶数個配置するための面であり、
多面体上の一面は、中高音用又は高音用スピーカユニットを配置するための面であり、
中高音用又は高音用スピーカユニットを配置するための面に対向する面には、ポート部が配置されていることを特徴とする、エンクロージャー。
【請求項11】
多面体のエンクロージャーを基本構造とするスピーカシステムであって、
前記エンクロージャーの少なくとも一つの頂点に、前記エンクロージャーを上方から吊り下げるための吊し部材と、
前記吊し部材による支持部分から前記支持部分に点対称に対向する箇所まで、前記エンクロージャー内部に設けられた支柱部材とを備える、スピーカシステム。
【請求項12】
スピーカシステムに用いられる多面体を基本構造とするエンクロージャーであって、
前記エンクロージャーの少なくとも一つの頂点に、前記エンクロージャーを上方から吊り下げるための吊し部材と、
前記吊し部材による支持部分から前記支持部分に点対称に対向する箇所まで、前記エンクロージャー内部に設けられた支柱部材とを備える、エンクロージャー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−18998(P2011−18998A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160933(P2009−160933)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(509191920)
【Fターム(参考)】