説明

スピーカーグリル用多孔シートの製造方法およびスピーカーグリル用多孔シート

【課題】 開口率を向上させることのできるスピーカーグリル用多孔シートの製造方法を提供する。
【解決手段】 複数の孔部を有するシート部材と、鞘部の融点が芯部の融点よりも低い芯鞘構造を有する樹脂製の線状部材で形成されたメッシュ部材とを重ねる第1の工程と、第1の工程後のシート部材及びメッシュ部材に対して、鞘部の融点以上で、かつ芯部の融点よりも低い温度で加熱処理を行う第2の工程と、第1の工程後のシート部材及びメッシュ部材に対して加圧処理を行う第3の工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に音抜け性に優れたスピーカーグリル用の多孔シート及びこの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の音響機器では、音抜けの精度を上げるために、複数の小孔が形成されたプラスチック板や金属板がスピーカーグリルとして用いられているが、この小孔を介して外部からの塵埃などが音響機器内に侵入し、不具合を起こすことがある。
【0003】
そこで、スピーカーグリルの裏面に、防塵目的のために、目の粗いメッシュや編物が張り付けられている。ここで、メッシュ等をスピーカーグリルに貼り付ける場合には、接着剤やバインダーが用いられているが、接着剤等の量が多ければ、接着剤等がスピーカーグリルの小孔にはみ出して小孔を塞いでしまうことがある。一方、接着剤等の量や接着剤等を塗布する面積を減らせば、スピーカーグリル及びメッシュの密着性が低下してしまう。
【0004】
ここで、スピーカーグリル及びメッシュの密着性を向上させるために、ホットメルトを全面に付着させたメッシュとスピーカーグリルを加熱接着させるという方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−251783号公報(段落番号0036,0049,0050、図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ホットメルトを用いた場合でも、接着時の加熱によって溶融したホットメルトが広がり、スピーカーグリルの小孔を塞いでしまう。ここで、ホットメルトが溶けて広がっても、小孔を塞いでしまわないようにするために、メッシュを構成する糸を細くしたり、ホットメルトを塗布する量を減らしたりすることが考えられる。
【0006】
しかし、前者の場合には、細糸で目の粗い織物を製造するのは困難であるとともに、細糸にすることでメッシュの強度が低下してしまう。また、後者の場合には、メッシュに対してホットメルトを薄く均一に塗布することは困難である。
【0007】
また、ホットメルトが溶けて広がる場合には、小孔を塞いでしまう部分があったり、小孔を塞がない部分があったりし、メッシュを貼り付けた状態における小孔の径に大きなバラツキが生じてしまう。
【0008】
また、スピーカーグリルは様々なデザインが施されるものであるため、そのデザインや色に合わせてメッシュの色を変える必要性が出てくるが、ホットメルトへの着色には限度があり、不鮮明な色になってしまう。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、主に開口率を向上させることのできるスピーカーグリル用多孔シート及びこの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】

第1の発明は、複数の孔部を有するシート部材と、鞘部の融点が芯部の融点よりも低い芯鞘構造を有する樹脂製の線状部材で形成されたメッシュ部材とを重ねて、前記シート部材及び前記メッシュ部材に対して、前記鞘部の融点以上で、かつ前記芯部の融点よりも低い温度で加熱しながら加圧することを特徴とするスピーカーグリル用多孔シートの製造方法である。
【0011】
第2の発明は、複数の孔部を有するシート部材と、鞘部の融点が芯部の融点よりも低い芯鞘構造を有する樹脂製の線状部材で形成されたメッシュ部材とを重ねる第1の工程と、該第1の工程後の前記シート部材及び前記メッシュ部材に対して、前記鞘部の融点以上で、かつ前記芯部の融点よりも低い温度で加熱処理を行う第2の工程と、前記第1の工程後の前記シート部材及び前記メッシュ部材に対して加圧処理を行う第3の工程とを有することを特徴とするスピーカーグリル用多孔シートの製造方法である。
【0012】
第3の発明は、上記第1及び第2の発明において、前記鞘部及び前記芯部の融点の差が20℃以上であることを特徴とするスピーカーグリル用多孔シートの製造方法である。
【0013】
第4の発明は、複数の孔部を有するシート部材と、鞘部の融点が芯部の融点よりも低い芯鞘構造を有する樹脂製の線状部材で形成されたメッシュ部材とを備え、前記メッシュ部材の鞘部が前記シート部材に融着していることを特徴とするスピーカーグリル用多孔シートである。
【0014】
第5の発明は、上記第4の発明において、前記鞘部及び前記芯部の融点の差が20℃以上であることを特徴とするスピーカーグリル用多孔シートである。
【0015】
なお、上記方法で製造されたスピーカーグリル用多孔シートは、例えば、切断等によって所定の形状に形成することで、スピーカーグリルとして用いることができる。このスピーカーグリルは、携帯用電子機器に内蔵されるスピーカーやイヤホン等のスピーカー装置に組み込むことができる。
【0016】
また、上記第1及び第2の発明において、前記鞘部の厚みが前記芯部の太さよりも小さい芯鞘構造の線状部材で形成された前記メッシュ部材を前記シート部材と重ねることができる。そして、前記鞘部の厚みは、少なくとも前記シート部材の孔部の大きさに応じて決定することができる。
【0017】
さらに、前記メッシュ部材を着色することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、シート部材及びメッシュ部材に対して、鞘部の融点以上で、かつ芯部の融点よりも低い温度で加熱処理するとともに、加圧処理することにより、シート部材における鞘部をメッシュ部材と融着することができる。
【0019】
ここで、芯鞘構造を有する樹脂製の線状部材によってメッシュ部材を形成することで、鞘部の融解によってシート部材の孔部を塞いでしまうのを抑制することができる。これにより、スピーカーグリルとして用いたときの音抜け性を向上させることができる。
【0020】
しかも、メッシュ部材を構成する線状部材を樹脂で形成することにより、線状部材に様々な色を付けることができる。これにより、シート部材の色に対応した色を有するメッシュ部材を用いることができ、スピーカーグリルとして用いたときの美観を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0022】
本発明の実施例1であるスピーカーグリル用多孔シートの製造方法について、図を参照して説明する。
【0023】
図1は、本実施例の製造方法の工程を示した工程図である。
【0024】
スピーカーグリルの本体となるシート部材1は、合成樹脂で構成されており、合成樹脂としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリアセタール、ウレタンなどがある。
【0025】
シート部材1には、複数の小孔1aが形成されている。ここで、平板状の部材に対して、ドリルやパンチングなどを用いて複数の小孔1aを形成することで、シート部材1が成型される。各小孔1aの大きさ(径)や形状については、スピーカーグリルの使用目的に応じて適宜設定することができる。例えば、シート部材1の全面において、同じ径の小孔1aを形成したり、互いに異なる径の小孔1aを形成したりすることができる。
【0026】
ここで、小孔1aが大きすぎると美観を損ね、小孔1aが小さすぎると音抜け性が悪くなるため、これらを考慮にいれた上で小孔1aの大きさなどを設定することが好ましい。具体的には、小孔1aの径を0.1〜1.2mmに設定するのが好ましい。
【0027】
防塵用メッシュ2は、23〜135デシテックスの芯鞘構造糸で製織されたメッシュである。芯鞘構造糸は、図2(A)に示すように中央に設けられた芯部2aと、この芯部2aを覆う鞘部2bとで構成されており、図2(B)の断面図に示すように、鞘部2bの厚みd2は、芯部2aの太さd1よりも小さくなっている。
【0028】
防塵用メッシュ2のメッシュ数は50〜200メッシュが好ましい。ここで、シート部材1の所定面積内に形成された小孔1aが、防塵用メッシュ2によって80%以上、塞がれてしまうと、音抜け性が悪くなってしまう。このため、シート部材1の所定面積内において小孔1aが占める面積の80%以上が、防塵用メッシュ2によって塞がれてしまわないように、防塵用メッシュ2のメッシュ数を設定する必要がある。
【0029】
防塵用メッシュ2を構成する芯鞘構造糸の材質としては、ポリエステルやナイロンなどの合成樹脂が用いられる。また、芯鞘構造糸を、モノフィラメントとしてもよいし、マルチフィラメントとしてもよい。マルチフィラメントを用いれば、後述するようにシート部材1及び防塵用メッシュ2を貼り合わせる際に、シート部材1との密着性を向上させることができる。
【0030】
また、芯鞘構造糸の芯部2aに用いられる樹脂の融点は、鞘部2bに用いられる樹脂の融点よりも高くなっている。これは、後述するようにシート部材1及び防塵用メッシュ2を加熱処理する際に、鞘部2bだけを溶融させて、この溶融した樹脂によってシート部材1との接着を行うためである。具体的には、芯部2aの融点が、鞘部2bの融点よりも20℃以上、好ましくは30℃以上高くなるように設定すれば、鞘部2bだけを効率良く溶融させることができる。
【0031】
防塵用メッシュ2は、上述したように樹脂で構成された芯鞘構造糸で形成されているため、防塵用メッシュ2を容易に着色することができる。例えば、防塵用メッシュ2に対して、シート部材1の色合いに応じた色を付けたり、画像を形成したりすることができる。これによって、シート部材1及び防塵用メッシュ2によって構成されるスピーカーグリルを美観に優れたものとすることができる。
【0032】
ここで、防塵用メッシュ2に着色を行う方法としては、防塵用メッシュ2の製織後に昇華性染料によって染色する方法や、紡糸時に顔料で先に色をつける原着染めなどの公知の手法が用いられる。
【0033】
上述した構成のシート部材1及び防塵用メッシュ2は、図1の矢印で示す方向に搬送され、互いに重ね合わされた状態で一対の加熱・加圧ロール3に通される。防塵用メッシュ2の芯鞘構造糸のうち鞘部2bは、加熱・加圧ロール3による加熱処理によって溶融する。また、シート部材1及び防塵用メッシュ2が重なる方向における加圧処理によって、溶融した鞘部2bがシート部材1に付着するとともに、シート部材1及び防塵用メッシュ2が圧接する。
【0034】
そして、加熱・加圧ロール3を通過した後の冷却によって、溶融した鞘部2bが固まり、これにより防塵用メッシュ2及びシート部材1が固着される。
【0035】
ここで、上述した加熱処理における加熱温度としては、シート部材1及び防塵用メッシュ2(芯鞘構造糸)の芯部が溶融せず、防塵用メッシュ2の鞘部2bのみが溶融する温度に設定する。設定される加熱温度は、シート部材1及び防塵用メッシュ2の材質によって変わるが、具体的には、60〜200℃の温度範囲内で設定することができる。
【0036】
上述した処理によってシート部材1及び防塵用メッシュ2が一体となったスピーカーグリル用多孔シートは、任意の大きさ、すなわち、スピーカーグリルが組み込まれるスピーカー装置の大きさにカットされることで、スピーカーグリルとなる。このスピーカーグリルは、音響システムで用いられる箱型のスピーカー、携帯電子機器(携帯電話や携帯ゲーム機)に内蔵されるスピーカーユニット、イヤホンなどのスピーカー装置に組み込まれる。
【0037】
本実施例によれば、防塵用メッシュ2を構成する芯鞘構造糸のうち鞘部2bだけを溶融させることによって、シート部材1及び防塵用メッシュ2を接着させている。ここで、芯鞘構造糸を用いると、紡糸時の段階において鞘部2bの厚みd2(図2参照)、すなわち、上述した加熱処理時に溶け出す鞘部2bの量を適宜設定することができる。
【0038】
したがって、加熱処理時に鞘部2bが溶け出しても、シート部材1の小孔1aを塞いでしまわないように、鞘部2bの厚みを設定することができる。すなわち、小孔1aの大きさ(径)に基づいて、鞘部2bの厚みを設定することができる。
【0039】
例えば、小孔1aが小型であり、シート部材1において小孔1aが占める割合が比較的小さければ、鞘部2bが溶け出しても小孔1aを塞ぐ可能性は低くなるため、このような場合には、鞘部2bの厚みを厚く設定することができる。また、小孔1aが大型であり、シート部材1において小孔1aが占める割合が比較的大きければ、鞘部2bが溶け出して小孔1aを塞ぐ可能性が高くなるため、このような場合には、鞘部2bの厚みを薄く設定することができる。
【0040】
一方、鞘部2bの溶け出す量が少ないと、シート部材1及び防塵用メッシュ2の接着性が低下してしまうため、この点も考慮に入れて鞘部2bの厚みd2を設定する必要がある。
【0041】
このように設定することで、シート部材1及び防塵用メッシュ2の接着性を向上させた状態において、シート部材1の開口率を従来に比べて向上させることができ、本実施例のスピーカーグリルをスピーカー装置に組み込んだときの音抜け性能を向上させることができる。
【0042】
ここで、芯部2aの太さd1を所定値以上に設定するとともに、鞘部2bの厚みd2を芯部2aの太さd1よりも小さい値に設定することができる。このように設定すれば、芯部2aによって防塵用メッシュ2の強度を確保しつつ、溶融した鞘部2bによってシート部材1の小孔1aを塞いでしまうのを抑制することができる。
【0043】
しかも、防塵用メッシュ2をシート部材1に貼り付けることによって、外部からスピーカー装置内に塵埃などが侵入するのを抑制することができる。
【0044】
また、芯鞘構造糸を樹脂で形成することによって、芯鞘構造糸を簡単に着色することができるため、一体感があり、美観に優れたスピーカーグリルを製造することができる。
【0045】
さらに、本実施例では、芯鞘構造糸を用いて防塵用メッシュ2を製織するだけでよく、従来のように製織した後にホットメルトを塗布する処理が不要となるため、製造工数を低減することができる。また、ホットメルトを塗布するための特別な装置が不要になるため、製造コストを低減することができる。この点において、本実施例における製造方法は、小ロット生産に好適である。
【0046】
上述した本実施例では、一対の加熱・加圧ロール3によって、シート部材1及び防塵用メッシュ2を重ねて加熱処理および加圧処理を行っているが、これらの工程を同時に行わなくてもよい。
【0047】
すなわち、まず、シート部材1及び防塵用メッシュ2を重ね合わせ、重ね合わせた状態のシート部材1及び防塵用メッシュ2に対して、加圧処理や加熱処理を順次行うようにしてもよい。言い換えれば、シート部材1及び防塵用メッシュ2の搬送経路における異なる位置において、重ね合わせ処理、加熱処理および加圧処理を行うことができる。
【0048】
また、本実施例では、一対の加熱・加圧ロール3を用いてシート部材1側及び防塵用メッシュ2側から加熱しているが、防塵用メッシュ2がシート部材1に接着すればよいため、防塵用メッシュ2側からのみ加熱してもよい。
【0049】
次に、本実施例における具体的な製造方法について説明する。
【0050】
厚さ250μmのポリエステルシート(東レ(株)製、ルミラー(登録商標))の全面に、パンチングにてφ0.5mmの複数の小孔を形成した。インクジェットプリンタにて黒色に印刷された、厚さ150μmの2枚の転写シートを用意した。
【0051】
各転写シートの印刷面がポリエステルシートに接触するように、2枚の転写シートでポリエステルシートを挟み、1.5m/minの搬送速度で加熱・加圧ロールの間を通した。ここで、加熱・加圧ロールにおける加熱温度を195℃に設定した。これにより、転写シート上の黒色成分がポリエステルシートに移り、ポリエステルシートが黒色に染色される。
【0052】
黒色のポリエステルシートは、転写シートをはがし、自然冷却させた後、ロールに巻き取った。
【0053】
一方、芯部として、融点が210℃のポリエステルを用い、鞘部として、融点が180℃のポリエステルを用いた芯鞘構造糸を4f 16デシテックスのマルチフィラメントにし、100メッシュの平織りに製織することで、防塵用メッシュを作成した。
【0054】
防塵用メッシュと黒色のポリエステルシートを、重ねた状態で加熱・加圧ロール3を通過させた。ここで、加熱温度を190℃に設定し、搬送速度を1.2m/minに設定した。これにより、スピーカーグリル用多孔シートが形成される。
【0055】
(比較例1)
上述した実施例1と同じポリエステルシートに、従来の防塵用メッシュを加熱接着させた。加熱接着させる方法は、実施例1と同様であり、ポリエステルシート及び防塵用メッシュを加熱・加圧ロールに通した。比較例における防塵用メッシュは、全面にホットメルトが付着された70メッシュのポリエステルマルチフィラメントから構成されている。
【0056】
図3は、本実施例の製造方法によって製造されたスピーカーグリル用多孔シートを示す正面図であり、図4は、比較例1の製造方法によって製造されたスピーカーグリル用多孔シートを示す正面図である。
【0057】
比較例1では、図4に示すように、ポリエステルシートの小孔が、溶融したホットメルトによって塞がれていることが分かる。一方、本実施例では、図3に示すように、防塵メッシュにおける芯鞘構造糸の鞘部が溶融しても、ポリエステルシートの小孔を塞いでいないことが分かる。すなわち、本実施例では、比較例1に比べて、スピーカーグリルの開口率が高いことが分かる。
【0058】
一方、図5は、上述した本実施例及び比較例1のスピーカーグリルにおける開口率を示すグラフである。縦軸は、スピーカーグリル用多孔シートの所定面積内に位置するすべての小孔のうち任意の径以上の小孔が占める割合を表す。また、横軸はスピーカーグリル用多孔シートにおける小孔の径を示す。
【0059】
ここでの小孔は、ポリエステルシートに形成された小孔ではなく、ポリエステルシートの小孔であって、防塵用メッシュによって塞がれていない部分を示す。また、図5中の実線は本実施例を示し、点線は比較例1を示す。
【0060】
図5に示すように、本実施例のグラフは、比較例1のグラフに対して図中右側にシフトしている。これは、本実施例のスピーカーグリル用多孔シートにおける開口率が、比較例1に比べて高いことを示している。すなわち、音抜け性に優れていることが分かる。
【0061】
具体的には、比較例1では、φ250μm以上の小孔1aはほとんど存在しなかった。一方、本実施例では、φ250μm以上の小孔1aが略18%存在した。また、本実施例では、φ200μm以上の小孔1aが略40%を占めているのに対して、比較例では概ね0%となっている。
【0062】
一方、縦軸の値が80%から20%近傍となる範囲内において、本実施例では、φ175〜225μmの範囲内でグラフの傾きが急になっているのに対し、比較例1では、φ50〜φ250μmの範囲内でグラフの傾きが本実施例に比べてなだらかに変化している。すなわち、縦軸の値が80%から20%近傍の範囲に対応した小孔の径の範囲は、本実施例(D1)の方が比較例1(D2)よりも狭くなっている。
【0063】
これは、本実施例の方が、径の概ね揃った小孔が形成されていることを示す。言い換えれば、本実施例では、比較例1に比べて小孔の径のバラツキが小さいことを示す。
【0064】
ここで、小孔の径のバラツキが大きくなるほど、音抜け性が低下することになるが、本実施例では、上述したように比較例1に比べて小孔の径のバラツキが小さくなっており、音抜け性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施例1であるスピーカーグリル用多孔シートの製造工程を示す図である。
【図2】芯鞘構造糸の斜視図(A)及び断面図(B)である。
【図3】本実施例の製造方法によって製造されたスピーカーグリル用多孔シートを示す正面図である。
【図4】従来の製造方法によって製造されたスピーカーグリル用多孔シートを示す正面図である。
【図5】スピーカーグリル用多孔シートにおける小孔の径と、すべての小孔のうち所定の径以上の小孔が占める割合との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1:シート部材
2:防塵用メッシュ
2a:芯部
2b:鞘部
3:加熱・加圧ロール



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の孔部を有するシート部材と、鞘部の融点が芯部の融点よりも低い芯鞘構造を有する樹脂製の線状部材で形成されたメッシュ部材とを重ねて、前記シート部材及び前記メッシュ部材に対して、前記鞘部の融点以上で、かつ前記芯部の融点よりも低い温度で加熱しながら加圧することを特徴とするスピーカーグリル用多孔シートの製造方法。
【請求項2】
複数の孔部を有するシート部材と、鞘部の融点が芯部の融点よりも低い芯鞘構造を有する樹脂製の線状部材で形成されたメッシュ部材とを重ねる第1の工程と、
該第1の工程後の前記シート部材及び前記メッシュ部材に対して、前記鞘部の融点以上で、かつ前記芯部の融点よりも低い温度で加熱処理を行う第2の工程と、
前記第1の工程後の前記シート部材及び前記メッシュ部材に対して加圧処理を行う第3の工程とを有することを特徴とするスピーカーグリル用多孔シートの製造方法。
【請求項3】
前記鞘部及び前記芯部の融点の差が20℃以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスピーカーグリル用多孔シートの製造方法。
【請求項4】
複数の孔部を有するシート部材と、
鞘部の融点が芯部の融点よりも低い芯鞘構造を有する樹脂製の線状部材で形成されたメッシュ部材とを備え、
前記メッシュ部材の鞘部が前記シート部材に融着していることを特徴とするスピーカーグリル用多孔シート。
【請求項5】
前記鞘部及び前記芯部の融点の差が20℃以上であることを特徴とする請求項4に記載のスピーカーグリル用多孔シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−297648(P2006−297648A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−119564(P2005−119564)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(391018341)NBC株式会社 (59)
【Fターム(参考)】