説明

スピーカ装置および映像表示装置

【課題】枠体の開口領域内の所望の位置に音像中心位置を設定することができる。
【解決手段】正方形の枠の各辺を構成する中空部材1a〜1dのそれぞれに1辺当たり8個のスピーカユニットSP0〜SP32が開口領域を臨むように取り付けられている。枠内の開口に設定される音像中心位置21が設定される。音像中心位置15のy座標の位置(y=2)で対向するスピーカユニットSP2およびSP21と、x座標の位置(x=5)で対向するスピーカユニットSP13およびSP26が選択的に駆動される。対向する対のスピーカユニットに入力される駆動信号のゲインを制御することによって、音像中心位置15に音像を作り出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所望の位置に音像を定位させるようにしたスピーカ装置およびこのスピーカ装置を音声再生に使用する映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホームシアターの発達によって大スクリーンによって映像を再生し、視聴することが普及しつつある。映像の大画面の再生と共に、オーディオ再生をより高品質で、臨場感に富むものとする要請がある。
【0003】
図22は、下記の特許文献1に記載されているような、多数のスピーカユニットSP0,SP2,SP3,・・・・,SPnを2次元状に配列したスピーカパネルを示している。特許文献1では、各スピーカユニットを個別のキャビネットに収納し、スピーカパネルをプロジェクタのスクリーンを背後に設置している。
【0004】
【特許文献1】特開2004−193811号公報
【0005】
また、スピーカ音源が存在しない位置に音像を生じさせる方法として下記の特許文献2に記載されているようなアレイスピーカが提案されている。
【0006】
【特許文献2】特開2004−172661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されているようなスピーカユニットを2次元状に配列し、全体としてパネル状のスピーカ装置は、薄型のパネルの形状であるため、ボックス型スピーカと比較してスピーカの存在感を比較的小さくすることができる。そして、スピーカを選択的に駆動することによって、2次元的に所望の位置に音像を定位させることができる。例えば、何れか1つのスピーカユニットのみ駆動すればスクリーン上の1点に音像を定位させることができる。しかしながら、スピーカユニットの個数が増大し、アンプ、信号処理部等の回路構成の規模の増大、消費電力の増大の問題があった。
【0008】
また、アレイスピーカによりビーム状の指向特性を形成した場合には、音像を絞ることができるものの、ビームの延長線上にユーザが位置していないと、音像を生じさせた効果を得ることができない問題があった。すなわち、その効果を享受できる聴取位置が限定されてしまう問題があった。
【0009】
したがって、この発明の目的は、スピーカユニット数が増加することによる問題が比較的少なく、聴取位置の制限が厳しくないスピーカ装置および映像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、この発明は、それぞれの主軸が枠体の開口領域を臨むように、枠体に複数のスピーカユニットが取り付けられ、
複数のスピーカユニット中で、音像を作り出すべき設定位置を通過するように結ばれた少なくとも一対のスピーカユニットが選択的に駆動されるスピーカ装置である。
【0011】
一つの形態として、枠体がほぼ矩形の枠であり、枠体の各辺を構成する中空部材に、その放射方向が対向する辺を向くように、複数のスピーカユニットを並べて設け、
設定位置を通過するx方向およびx方向と直交するy方向の線上に位置する対向する2組のスピーカユニットが選択的に駆動されるスピーカ装置が提供される。
【0012】
また、この発明は、映像観察部の周囲を取り囲むように、枠体が設けられ、
それぞれの主軸が枠体の映像観察部を臨むように、枠体に複数のスピーカユニットが取り付けられ、
映像表示部に表示される映像内で、音像を作り出すべき設定位置が規定され、
複数のスピーカユニット中で、設定位置を通過するように結ばれた少なくとも一対のスピーカユニットが選択的に駆動される映像表示装置である。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、枠の開口部分の所望の位置に音像を作り出すことができる。この発明では、スピーカユニットの正面軸が直接ユーザに向かないので、定位感にとって重要な高域部分の直接放射がユーザに向かないことによって、スピーカユニットから音が発生している感じを軽減でき、枠の開口部分内の設定位置に音像を作り出すことができる。また、スピーカユニットが視覚的にユーザから見えないので、視覚上でもスピーカユニットから音が発生している感じを軽減できる。さらに、枠の開口部分には、スピーカユニットが設けられないので、ユニット数を少なくでき、回路規模を小さくでき、消費電力を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、一実施の形態によるスピーカ装置の全体の斜視図と一部断面図である。図2は、一実施の形態によるスピーカ装置の全体を示し、内部のスピーカユニットを表現した斜視図である。
【0015】
一実施の形態では、ほぼ矩形の枠例えば1辺が70cmの正方形の枠の各辺を構成する中空部材1a,1b,1cおよび1dのそれぞれに複数例えば1辺当たり8個の口径が数cmのスピーカユニットがそれぞれの主軸が枠体の開口領域を臨むように取り付けられている。中空部材1aに設けられているスピーカユニットをSP0〜SP7と表し、中空部材1bに設けられているスピーカユニットをSP8〜SP15と表し、中空部材1cに設けられているスピーカユニットをSP16〜SP23と表し、中空部材1dに設けられているスピーカユニットをSP24〜SP31と表す。これらのスピーカユニットSP0〜SP31は、同一の特性のものである。但し、所望の再生特性を得るために、設置される位置等に応じてスピーカユニットの特性を異ならせても良い。
【0016】
図1Bは、図1Aの一点鎖線で示す位置で中空部材1aを水平に切断した場合の断面を示す。図1Bおよび図3に示すように、中空部材1a〜1dの断面は、枠の開口に向かって幅が徐々に狭くなる台形状とされ、台形の上辺に形成された開口に各スピーカユニットが取り付けられている。すなわち、その放射方向が対向する辺に向くように、各辺のスピーカユニットが並べて取り付けられている。
【0017】
中空部材1a〜1dは、内部が仕切られず、辺同士の端面が閉塞され、各辺に対応する中空部材がモジュールとされ、モジュール同士を接続することでスピーカ装置が組み立てられる。但し、端面に取り付け用の穴等が設けられていても良く、また、適当な数のスピーカユニット毎に隔壁を設けても良い。中空部材1a〜1dは、合成樹脂成形、木材加工品等で作製されている。
【0018】
図1および図2では省略されているが、各中空部材に取り付けられたスピーカユニットSP0〜SP31の前面を覆うように、装飾布2が取り付けられている。装飾布2は、好ましくは、中空部材1a〜1dの表面と視覚的に区別できない程度に、色および質感が選定される。
【0019】
なお、使用するスピーカユニットの種類、個数等は、一実施の形態に限定されるものではない。スピーカユニットとしては、ダイナミックスピーカに限らず、ホーンスピーカ、コンデンサスピーカ等を使用しても良く、また、枠形状を長方形としても良い。枠形状の内側の開口は、開放されたものに限らず、後述するアプリケーションの例のように、スクリーン等の表示部や、ガラス等が配置されて塞がれていても良い。さらに、中空部材の断面が台形である必要はなく、断面形状が矩形であっても良い。また、中空部材の断面を三角形とし、1辺に形成した開口にスピーカユニットを取り付けるようにしても良い。
【0020】
図3は、二つのスピーカ間の所望の位置に音像を定位させる方法を二つのスピーカを使用した場合を例に説明するものである。このような操作は、パンニング、またはバンポットと称される。例えばキャビネットにスピーカユニットが収納されたスピーカSPLおよびSPRが左右に離れて設置されている。音源11からの左チャンネルの信号Lchがゲイン調整部12Lおよびアンプ13Lを介してスピーカSPLに入力され、右チャンネルの信号Rchがゲイン調整部12Rおよびアンプ13Rを介してスピーカSPRに入力される。
【0021】
図4Aは、ゲイン調整部12LのゲインGL(実線)とゲイン調整部12RのゲインGR(破線)とを可変してスピーカSPLおよびSPRに入力される信号のレベル関係を制御して所望の位置に音像を定位させる一例である。図4Aの縦軸に示すように、ゲインGLおよびGRは、0から1の範囲までの値を持つことが可能とされている。図4Aの横軸は、スピーカSPLおよびSPRの前方の聴取位置を示し、LがスピーカSPLの正面位置であり、Cが中心位置であり、RがスピーカSPRの正面位置である。図4Aに示すように、ゲインGLを1から0に一定の傾きで減少させると共に、ゲインGRを0から1に一定の傾きで増加させると、音像の位置をL→C→Rと変化させることができる。
【0022】
図4Bに示すように、ゲインGLを1に保持しながらゲインGRを0から1に変化させると、音像位置をL→Cに変化させることができ、ゲインGRを1に保持しながらゲインGLを1から0に変化させると、音像位置をC→Rに変化させることができる。さらに、図4Cに示すように、ゲインGLおよびGRを曲線的に変化させても音像位置をL→C→Rと変化させることができる。
【0023】
上述した2チャンネルスピーカを使用した音像位置の制御の方法を図1および図2に示すスピーカ装置に対して拡張する。すなわち、枠状の中空部材1a〜1dに取り付けられたスピーカユニットSP0〜SP31を使用して、枠内の開口の所望の位置に音像を定位させるようになされる。この発明では、複数のスピーカユニットSP0〜SP31の中で、音像を作り出すべき設定位置を通過するように結ばれた少なくとも一対のスピーカユニットが選択的に駆動される。一実施の形態では、枠を構成する4辺の中空部材の内で、対向する2辺に取り付けられて正面同士が向き合う1組のスピーカユニットと、他の対向する2辺に取り付けられて正面同士が向き合う1組のスピーカユニットとを使用して枠内の開口の位置に音像を形成する。
【0024】
図5に示すように、枠内に設定される音像中心位置を参照符号21で示す。音像中心位置21は、スピーカユニットの個数で定まる2次元座標上に設定可能とされている。一般的には、対向する2辺のスピーカユニットの個数をそれぞれmおよびnとすると、2次元平面上に座標(x,y)(x=0,1,2,・・・,m−1)(y=0,1,2,・・・,n−1)が設定される。一実施の形態では、(m=8,n=8)とされ、(8×8)の座標上で音像中心位置が設定可能とされる。
【0025】
図5に示す例では、音像中心位置15が(x=5,y=2)に設定されている。音像中心位置15のy座標の位置(y=2)で対向するスピーカユニットSP2およびSP21と、x座標の位置(x=5)で対向するスピーカユニットSP13およびSP26が選択的に駆動される。対向する対のスピーカユニットに入力される駆動信号のゲインを、図4を参照して説明したように制御することによって、音像中心位置15に音像を作り出すことができる。
【0026】
例えば図4Aに示すような相補的且つ直線的なゲイン制御を使用する場合には、スピーカユニットSP2に対する入力信号のゲインG2とスピーカユニットSP21に対する入力信号のゲインG21とが(G2=5/7,G2=2/7)に設定される。スピーカユニットSP26に対する入力信号のゲインG26とスピーカユニットSP13に対する入力信号のゲインG13とが(G26=5/7,G13=2/7)に設定される。このように、中心部材1a〜1dによって構成される枠状の開口内に、スピーカユニットの個数と位置に応じて座標位置が規定され、所望の座標位置の音像中心位置15で直交するx方向の線およびy方向の線のそれぞれの両端に位置する2組のスピーカユニットSPa,SPb,SPc,SPdが選択的に駆動され、さらに、選択されたスピーカユニットSPa〜SPdの駆動信号に対して音像中心位置15のx座標およびy座標に応じて制御されたゲインを乗じることで、所望の音像中心位置15を設定することができる。
【0027】
図6は、一実施の形態における駆動部の構成の第1の例を示す。例えばCD(コンパクトディスク)プレーヤー、MD(ミニディスク)プレーヤー等の再生装置からのディジタルオーディオ信号を変換したアナログオーディオ信号が音源21から出力される。アナログオーディオ信号が4個の信号路に分割され、ゲイン調整部22a,22b,22c,22dにそれぞれ供給される。ゲイン調整部22aおよび22bは、x方向で対向するスピーカユニットのグループ、すなわち、中心部材1aに取り付けられたスピーカユニットSP0〜SP7と中心部材1cに取り付けられたスピーカユニットSP16〜SP23とのそれぞれに対するゲインを調整する。ゲイン調整部22cおよび22dは、y方向で対向するスピーカユニットのグループ、すなわち、中心部材1bに取り付けられたスピーカユニットSP8〜SP15と中心部材1dに取り付けられたスピーカユニットSP24〜SP31とのそれぞれに対するゲインを調整する。
【0028】
ゲイン調整部22a〜22dの出力信号がアンプ23a〜23dをそれぞれ介してスピーカ選択スイッチ24a、24b,24c,24dに供給される。スピーカ選択スイッチ24a〜24dは、各辺(各中心部材)に取り付けられているスピーカユニットのグループから一つのスピーカユニットに対して選択的に駆動信号を供給するものである。スピーカ選択スイッチ24a〜24dからそれぞれスピーカユニットSPa,SPb,SPc,SPdに対する駆動信号Sa,Sb,Sc,Sdが出力される。図5の例では、スピーカユニットSPaがSP2であり、SPbがSP21であり、SPcがSP26であり、SPdがSP13である。
【0029】
音像中心位置の座標に対応したコントロール信号CTが位置指定コントローラ25によって生成される。位置指定コントローラ25の構成は、後述するようなアプリケーションに応じたものとされる。ユーザが意図した位置に音像中心位置を設定する場合には、設定操作に対応してコントロール信号CTが形成される。また、スクリーン上に再生される画像と連動して音像中心位置を設定するように、自動的にコントロール信号CTを生成しても良い。コントロール信号CTは、音像中心位置のx座標およびy座標を規定できるように、例えば数ビットのディジタル信号の形態とされる。
【0030】
位置指定コントローラ25からのコントロール信号CTによって、ゲイン調整部22a〜22dのそれぞれのゲインが設定される。x方向で対向するスピーカユニットのグループに対するゲインがゲイン調整部22aおよび22bによって調整され、y方向で対向するスピーカユニットのグループに対するゲインがゲイン調整部22cおよび22dによって調整される。
【0031】
また、位置指定コントローラ25からのコントロール信号CTによって、スピーカ選択スイッチ24a〜24dのそれぞれの選択状態が制御される。スピーカ選択スイッチ24aおよび24bによってx方向に対向する1対のスピーカユニットSPaおよびSPbが選択され、スピーカ選択スイッチ24cおよび24dによってy方向に対向する1対のスピーカユニットSPcおよびSPdが選択される。
【0032】
上述したように、コントロール信号CTによってゲイン調整部22a〜22dのゲインとスピーカ選択スイッチ24a〜24dの選択状態が制御され、枠内の所望の位置に音像像を作り出すことができる。なお、スピーカ選択とゲイン調整との処理の順序を逆とすることも可能である。
【0033】
図7は、駆動部の構成の第2の例を示す。第2の例は、図6におけるゲイン調整部22a〜22dを省略した構成である。音源21からのオーディオ信号が共通のアンプ26を介してパラレル・シリアル接続部27に対して供給される。パラレル・シリアル接続部27は、同一のパワーで一対のスピーカユニットが駆動されることを利用してスピーカ選択スイッチ24a〜24dにより切り換える信号線の本数を減少させるものである。
【0034】
図7に示すように、駆動信号を同一のレベルとし、駆動されるスピーカを選択する構成によって、所望の音像中心位置に音像を作り出すことができる。
【0035】
図5は、一つの音像中心位置15に音像が作り出される例であるが、同時に複数の音像中心位置に音像を作ることも可能である。例えば5箇所の音像中心位置に音像を作成する場合では、スピーカユニットSP0〜SP31に対する駆動信号の供給のために、図8に示す構成が備えられる。図8において、AD0〜AD31が加算回路をそれぞれ示し、AP0〜AP31がアンプをそれぞれ示し、アンプAP0〜AP31の出力信号がスピーカユニットSP0〜SP31に対して供給される。5箇所の音像中心位置は、x方向またはy方向の同一線上に並ぶ場合もありうるので、加算回路AD0〜AD31には、それぞれ5個のオーディオ信号が入力可能とされている。
【0036】
図9は、5箇所の音像中心位置を設定する場合の信号処理部の構成を示す。各音像中心位置に対応して信号処理部PR1,PR2,PR3,PR4,PR5が備えられている。これらの信号処理部PR1〜PR5は、互いに同一の構成であり、上述した図6と同様の構成を有している。
【0037】
すなわち、信号処理部PR1では、第1の音源211からのオーディオ信号が4個のゲ
イン調整部を有するゲイン調整段221を介して4個のスピーカ選択スイッチを有するス
ピーカ選択段241に供給される。必要に応じて4個の信号路のそれぞれに対してアンプ
が挿入される。ゲイン調整段221のゲイン調整部とスピーカ選択段241のスピーカ選択スイッチとには、位置コントローラ251からのコントロール信号CT1が供給される。
コントロール信号CT1は、第1の音像中心位置を規定する信号である。スピーカ選択段241の各スピーカ選択スイッチから第1の音像を第1の音像中心位置に作り出すための
出力オーディオ信号Sa1,Sb1,Sc1,Sd1が取り出される。
【0038】
出力オーディオ信号Sa1およびSb1が第1の音像中心位置を通るx方向で対向する1対のスピーカユニットに対してそれぞれ供給され、出力オーディオ信号Sc1およびSd1が第1の音像中心位置を通るy方向で対向する一対のスピーカユニットに対してそれぞれ供給される。
【0039】
信号処理部PR1と同様に音源212、ゲイン調整段222、スピーカ選択段242およ
び位置コントローラ252を有する信号処理部PR2によって、第2の音像中心位置に音
像を作り出すための出力オーディオ信号Sa2〜Sd2が生成され、2組(4個)のスピーカユニットに対してそれぞれ供給される。さらに、信号処理部PR3,PR4,PR5のそれぞれによって、第3、第4および第5の音像中心位置に音像を作り出すための出力オーディオ信号が形成される。
【0040】
上述した図9に示す構成の信号処理部によって複数の音像中心位置にそれぞれ音像を作り出すことができる。図10は、複数の音像を作り出すための信号処理部の他の構成を示す。
【0041】
複数の音源を独立に出力することができるマルチチャンネルソース31からの各チャンネルのオーディオ信号がミキサ群32の各ミキサに入力される。ミキサ群32は、スピーカユニットの個数に対応する個数例えば32個のミキサを有する。ミキサ群32の各ミキサの出力信号がアンプ群33の32個のアンプにそれぞれ入力される。アンプ群33の各アンプの出力オーディオ信号がスピーカユニットSP0〜SP31に対してそれぞれ供給される。
【0042】
ミキサ群32の各ミキサは、例えば5チャンネルのオーディオ信号をA1,A2,A3,A4,A5とし、混合比をm1,m2,m3,m4,m5とすると、下記の式で表される混合信号Soutを出力する。
【0043】
Sout=m1A1+m2A2+m3A3+m4A4+m5A5
【0044】
各ミキサの混合比m1〜m5が図示しない位置コントローラによって生成されたミキサコントロール信号Cmixによって制御される。ミキサコントロール信号Cmixは、各ミキサの混合比を別個に制御することができる。例えば32個のミキサに対応した32個の混合比のコントロール信号を含む。混合比m1〜m5としては、0の値をとりうることができる。例えば音像を作り出すのに寄与しないスピーカユニットに接続されているミキサの場合では、混合比m1〜m5が全て0とされる。すなわち、ミキサ群32は、ゲイン調整部としての機能のみならず、ミキサ選択スイッチとしての機能を有する。
【0045】
上述した枠形状のスピーカ装置を使用して枠の開口部分の所望の位置に音像を作り出すことができ、また、スピーカの正面軸を聴取者に直接向ける従来構成と比較してスピーカユニットから音が発生している感じを低減できる。特に、定位感にとって重要な高域部分の直接放射を視聴者に向けないことによって、スピーカユニットから音が放射されている感覚を弱めることができ、対向する二つのスピーカユニットによって設定した位置に効果的に音像を作り出すことができる。
【0046】
また、スピーカユニットがユーザにとって見えにくい箇所に設置できるので、視覚的にもスピーカユニットに音が定位することを軽減でき、設定した位置に効果的に音像を作り出すことができる。これらのこの発明による効果は、以下に説明するいくつかの応用例によってより一層理解される。
【0047】
図11に示す第1の応用例は、大型画面のテレビジョン受像機41に対してこの発明を適用したものである。背面投射型の表示装置、所謂リアプロタイプのプロジェクタの場合もテレビジョン受像機と同様にこの発明を適用できる。テレビジョン受像機41の前面の表示部42の周囲を取り囲むように、上述した枠形状のスピーカ装置SP(図1、図2参照)が取り付けられている。図12に示すように、テレビジョン受像機41に対してスピーカ装置SPを装着離脱自在な構成としても良い。
【0048】
表示部42に表示される映像に付随するステレオ2チャンネルオーディオ信号、マルチチャンネルオーディオ信号等から音源の位置を推定処理して位置コントロール信号を生成し、位置コントロール信号によって、既述したように、スピーカ装置SPを構成するスピーカユニットに対する駆動信号のゲインおよびスピーカ選択が制御される。その結果、映像中の音源の位置に対応した位置に音像を作り出すことができ、臨場感溢れる再生を楽しむことができる。また、予め音源の位置を示すメタデータを有するビデオソフトを作成すれば、メタデータから位置コントロール信号を得ることができる。例えば動画像の符号化方式の一つであるMPEG(Moving Picture Experts Group)-4 AVC(またはH.264)符号化のフ
ォーマットでは、メタデータに関して規定されている。
【0049】
図13は、スピーカ装置SPの枠内の開口にスクリーン43を貼り付けて、プロジェクタ44によって映像を投射するプロジェクタ装置を構成した例を示す。スクリーン43は、背面投射型のものが示されているが、反射型であっても良い。スクリーン43上に投射される映像の音源の位置に応じた位置コントロール信号をメタデータから生成、またはマルチチャンネルのオーディオ信号から推定し、位置コントロール信号によってスピーカ装置SPを構成するスピーカユニットに対する駆動信号のゲインおよびスピーカ選択が制御される。制御の結果、音源の位置に応じて音像が作り出される。
【0050】
図14は、業務用に使用する映画スクリーン45を枠形スピーカ装置SPの開口内に設け、映写機46によってスクリーン45上に映像例えばコンサートのライブ映像を表示する例である。複数の演奏者47a、47bおよび47cが表示されているので、各演奏者の位置の情報から位置コントロール信号を生成し、位置コントロール信号によってスピーカ装置SPを構成するスピーカユニットに対する駆動信号のゲインおよびスピーカ選択が制御され、各演奏者が受け持っている演奏の音像が演奏者の位置とほぼ一致するように作り出される。一例として、演奏中の演奏者の位置は、予め作成された位置情報にしたがうものとされ、この位置情報を利用して位置コントロール信号を生成することができる。
【0051】
図15は、デスクトップ型のパーソナルコンピュータに対してこの発明を適用した例を示す。液晶ディスプレイ48の表示面の周囲に枠形スピーカ装置SPが取り付けられる。参照符号49がコンピュータ本体を示し、参照符号50がキーボードを示す。パーソナルコンピュータによってアプリケーションを動作させている時に、そのアプリケーションの表示位置をOS(Operating System)経由で読み取り、読み取った位置に音像を作り出すようになされる。
【0052】
特に、複数のアプリケーションを起動させて、ディスプレイ48上に複数のウインドウが同時に表示され、各アプリケーションから独立に音を発生する場合には、音像位置を各ウインドウに対応させることによって、音像が分離され、パーソナルコンピュータ上での作業を効率的に行うことができる。例えば操作時の警告音が発生する位置が操作しているアプリケーションのウインドウに対応して発生するので、操作性を向上することができる。
【0053】
図16は、PDA(Personal Digital Assistants)、携帯型ナビゲーション装置等のモ
バイル機器51に対してこの発明を適用した例を示す。モバイル機器51のディスプレイ52の周囲に枠形スピーカ装置SPを取り付ける。ディスプレイ52に表示される地図の主要な場所毎に音像を作り出すようになされる。そして、表示されている地図上で移動している自分の位置と接近した主要な場所に音像が作り出される。好ましくは、主要な場所毎に異なる音源が使用される。モバイル機器51の操作感およびディスプレイ52の視認性を向上できる。
【0054】
図17は、電子ブック装置53に対してこの発明を適用した例を示す。電子ブック装置53は、専用の装置に限らず、PDAの機能の一つとして電子ブック機能を持つ装置であっても良い。電子ブック装置53のディスプレイ54の周囲に枠形スピーカSPが取り付けられる。電子ブック装置53の動作モードの一つとして、表示されている書物を読む音声が発声される、自動読み上げ機能がある。自動読み上げ機能では、読む速度が決まっているので、読む位置の変化に対応して位置コントロール信号を発生させることができる。位置コントロール信号によってスピーカユニットに対する駆動信号のゲインおよびスピーカ選択を制御することによって、現在読まれている位置に同期して音声の位置を変化させることができる。このように、読み上げている文字の位置と音像の位置とが一致するので、読む効率が良くなり、また、ユーザが現在読んでいる位置を直ぐに認識できるので、ユーザの疲労を軽減することができる。
【0055】
図18は、枠形スピーカ装置SPの枠内に絵本、紙芝居、写真アルバム等の印刷物55を配置し、印刷物55の解説の音声等を印刷物55の印刷内容の配置に応じた位置に発生させたり、写真の内容に応じた音を写真の貼ってある位置に発生させるようにした例である。印刷物55としての絵本の解説の音声等を子供に聞かせる場合に、子供の理解が速くなることが期待できる。また、写真アルバムを楽しんで見ることができる。
【0056】
図19は、空港等に設置されている危険物探知機56に対してこの発明を適用した例を示す。危険物探知機56の人が通るゲートに枠形スピーカ装置SPが取り付けられる。危険物探知機56は、中を通る人が金属製物体のような危険物を身につけていると、その位置57を探知することができる。この危険物の探知に基づいて位置コントロール信号を生成し、位置コントロール信号によって、スピーカ装置SPのスピーカユニットを駆動する信号のゲインおよびスピーカ選択が制御される。その結果、危険物が探知された時に、単に警報音が鳴るのみならず、危険物の位置57から警報音が聞こえるので、危険物の特定作業が容易となる。危険物探知機56と同様に万引き防止ゲートに対してもこの発明を適用することができる。
【0057】
図20は、テーブル型電子ゲーム装置58に対してこの発明を適用した例を示す。このゲーム装置58は、ディスプレイ59上にコンピュータグラフィックによって例えばエアホッケーゲームの画面を表示し、ディスプレイ59を挟んで対向する二人のプレーヤーがディスプレイ59の表示画面上で相手方のゴールに仮想的なパック60を打ち込むことを競うゲームを提供する。ディスプレイ59の周囲に枠形スピーカSPが取り付けられる。そして、スピーカ装置SPによって、パック60の位置の変化に応じて位置が変化する音例えばパックを打った時の音を発生させることによって、恰も実際にパックを打っているように感じることができ、ゲームの臨場感を向上することができる。
【0058】
図21は、展望台、観光地等の外の景色を見るための景色鑑賞用窓61に対してこの発明を適用した例を示す。窓ガラス62を通じて外の景色を見ることが可能とされている。景色の解説の音声を発生するスピーカとして、窓の枠に沿って窓の内側に枠形スピーカ装置SPが取り付けられる。現在解説している対象物(矢印で示す)の位置に解説音声の音像を作り出すように、なされる。解説音声を聞いている人は、解説の対象物を容易に識別することができる。
【0059】
この発明は、上述したこの発明の実施の形態に限定されるものでは無く、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば枠体の形状としては、多角形、円形、楕円であっても良い。また、音像中心位置は、点に限らず、部分的領域であっても良い。この場合には、複数のスピーカユニット同士が対向され、駆動される。すなわち、作り出される音像がより大きなものとなる。また、各辺の中空部材に対して1列にスピーカユニットを並べているが、2列以上平行に並べても良い。さらに、この発明の実施の形態で説明された駆動部の回路構成は、その一部または全体の処理をコンピュータのソフトウェア処理で実現するようにしても良い。例えば図10の構成におけるミキサ群32は、パーソナルコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)等によって実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】この発明の一実施の形態におけるスピーカ装置の全体の斜視図と一部断面図である。
【図2】この発明の一実施の形態におけるスピーカ装置の内部のスピーカユニットを表現した斜視図である。
【図3】2チャンネル再生により音像の位置を制御するための構成例を示すブロック図である。
【図4】2チャンネル再生により音像の位置を制御する動作を説明するための略線図である。
【図5】この発明の一実施の形態における音像の位置の制御を説明するための略線図である。
【図6】この発明の一実施の形態におけるスピーカ装置を駆動する信号を生成するための構成の一例を示すブロック図である。
【図7】この発明の一実施の形態におけるスピーカ装置を駆動する信号を生成するための構成の他の例を示すブロック図である。
【図8】この発明の一実施の形態におけるスピーカ装置を駆動する信号を生成するための構成のさらに他の例のスピーカユニット部分の構成を示すブロック図である。
【図9】この発明の一実施の形態におけるスピーカ装置を駆動する信号を生成するための構成のさらに他の例の信号処理部の構成を示すブロック図である。
【図10】この発明の一実施の形態におけるスピーカ装置を駆動する信号を生成するための構成のよりさらに他の例を示すブロック図である。
【図11】この発明をテレビジョン受像機に適用した応用例の説明に用いる略線図である。
【図12】この発明をテレビジョン受像機に適用した応用例の説明に用いる略線図である。
【図13】この発明をプロジェクタに適用した応用例の説明に用いる略線図である。
【図14】この発明を映画に適用した応用例の説明に用いる略線図である。
【図15】この発明をパーソナルコンピュータに適用した応用例の説明に用いる略線図である。
【図16】この発明をモバイル機器に適用した応用例の説明に用いる略線図である。
【図17】この発明を電子ブック装置に適用した応用例の説明に用いる略線図である。
【図18】この発明を絵本等の印刷物に適用した応用例の説明に用いる略線図である。
【図19】この発明を危険物探知機に適用した応用例の説明に用いる略線図である。
【図20】この発明をテーブル型電子ゲーム装置に適用した応用例の説明に用いる略線図である。
【図21】この発明を景色鑑賞用窓に適用した応用例の説明に用いる略線図である。
【図22】従来のスピーカ装置の一例の斜視図である。
【符号の説明】
【0061】
SP0〜SP31,SPn・・・スピーカユニット
CT・・・位置コントロール信号
AP0〜AP31・・・アンプ
PR1〜PR5・・・信号処理部
1a〜1d・・・中空部材
15・・・音像中心位置
21,211,212・・・音源
22a〜22d・・・ゲイン調整部
221,222・・・ゲイン調整段
23a〜23d・・・アンプ
24a〜24d・・・スピーカ選択スイッチ
241,242・・・スイッチ選択段
26・・・アンプ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの主軸が枠体の開口領域を臨むように、上記枠体に複数のスピーカユニットが取り付けられ、
上記複数のスピーカユニット中で、音像を作り出すべき設定位置を通過するように結ばれた少なくとも一対の上記スピーカユニットが選択的に駆動されるスピーカ装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記枠体がほぼ矩形の枠であり、上記枠体の各辺を構成する中空部材に、その放射方向が対向する辺を向くように、上記複数のスピーカユニットを並べて設け、
上記設定位置を通過するx方向およびx方向と直交するy方向の線上に位置する対向する2組のスピーカユニットが選択的に駆動されるスピーカ装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
上記設定位置に対応して上記一対のスピーカユニットに対する駆動信号のゲインを制御することによって、上記設定位置に音像を作り出すようにしたスピーカ装置。
【請求項4】
請求項3において、
上記設定位置に対応する位置コントロール信号によって上記一対のスピーカユニットの選択と上記ゲインとが制御されるスピーカ装置。
【請求項5】
請求項1または2において、
複数の設定位置に対応してスピーカユニットの対が複数組選択されるスピーカ装置。
【請求項6】
映像観察部の周囲を取り囲むように、枠体が設けられ、
それぞれの主軸が上記枠体の上記映像観察部を臨むように、上記枠体に複数のスピーカユニットが取り付けられ、
上記映像表示部に表示される映像内で、音像を作り出すべき設定位置が規定され、
上記複数のスピーカユニット中で、上記設定位置を通過するように結ばれた少なくとも一対の上記スピーカユニットが選択的に駆動される映像表示装置。
【請求項7】
請求項6において、
上記枠体がほぼ矩形の枠であり、上記枠体の各辺を構成する中空部材に、その放射方向が対向する辺を向くように、上記複数のスピーカユニットを並べて設け、
上記設定位置を通過するx方向およびx方向と直交するy方向の線上に位置する対向する2組のスピーカユニットが選択的に駆動される映像表示装置。
【請求項8】
請求項6または7において、
上記設定位置に対応する位置コントロール信号によって上記一対のスピーカユニットの選択と、選択された上記一対のスピーカユニットに対する駆動信号のゲインとが制御され、
上記位置コントロール信号が上記映像観察部を通じて観察される映像に基づいて予め作成される映像表示装置。
【請求項9】
請求項8において、
複数の設定位置に対応して上記スピーカユニットの対が複数組選択され、
各組の上記スピーカユニットがそれぞれ上記位置コントロール信号によって制御される映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2007−134939(P2007−134939A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−325775(P2005−325775)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】