説明

スピーカ装置

【課題】 スピーカ装置において、振動膜の機械的強度を向上させて、外径形状の小型化を図れるようにする。
【解決手段】 支持部1はスピーカ用マグネット部3を支持するとともに、振動膜5の外周縁を支持する。振動膜5はドーム部9とこの周囲に環状のエッジ部11とを一体的かつ同心円状に有する。そのドーム部9とエッジ部11の境目近傍に、ボイスコイル7の端面を支持させてマグネット部3を囲む。その振動膜5のドーム部9は、環状部19の内側に凹状又は凸状の溝部21を放射状に多数配列形成した構成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスピーカ装置に係り、例えば小型電子機器に内蔵されるスピーカやヘッドホン用のイヤホーンに用いて好適するスピーカ装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スピーカ装置は、例えば図4Aに示すように、カップ状の支持部1の中にスピーカ用マグネット部3を配置し、このマグネット部3の先端を覆うように振動膜5を配置してこの周縁部を支持部1の先端に固定し、振動膜5にボイスコイル7を固定してマグネット部3と僅かな間隔で囲む構成が良く知られている。
【0003】
しかも、その振動膜5は、この振動膜5自体の機械的強度を向上させる観点から、環状のエッジ部11の内側に一体的に球面状ドーム部9を凸設又は凹設するとともに、図4Bに示すように、エッジ部11には多数の凹状又は凸状の溝部13を渦巻き状に形成し、ドーム部9とエッジ部11の境目に上述したボイスコイル7の端面を支持させている。
【0004】
なお、図4Bに示す振動膜5は裏側からみた状態で図示されている(以下同じ)。
【0005】
例えば、特開2002−281594号公報(特許文献1)は、このような構成の一般的な公知例である。
【特許文献1】特開2002−281594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来のスピーカ装置では、振動膜5の強度不足に起因し、図5Aに示すように、中音域から高音域にかけて分割振動による周波数特性の乱れを生じ易い難点がある。なお、図5Aは分割振動による影響を誇張して図示したものである(図5Bも同様)。
【0007】
もっとも、振動膜5においてエッジ部11よりもドーム部9の凸設又は凹設寸法を大きくすれば、多少、分割振動を抑えることが可能であるが、ドーム部9の凸設又は凹設寸法を大きくすると、振動膜5が突出し過ぎたり、振動膜5とマグネット部3間の間隔を広げる必要が生じ、外形形状が大型化する難点がある。
【0008】
そのため、上述した分割振動の発生を効果的に抑えることが困難であったり、入力する音声信号が大きくなると、ローリング効果等により、図5Bに示すように、信号の前後に不規則波形Sが生じ易く、発音が歪み易く、音質が低下し易い難点もあった。
【0009】
本発明はそのような課題を解決するためになされたもので、小型化が容易で発音特性の良好なスピーカ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのような課題を解決するために本発明に係るスピーカ装置は、支持部と、この支持部に支持されたスピーカ用マグネット部と、このマグネット部を囲むように配置された円筒状のボイスコイルと、ドーム部とこの周囲に環状のエッジ部を一体的かつ同心円状に有し、当該ドーム部とエッジ部の境目を形成する環状部近傍にそのボイスコイルの端面が支持されるとともにエッジ部の外周縁がその支持部に支持された振動膜とを具備し、そのドーム部には、環状部の内側に仮想的に形成した同心円を横切る凹状又は凸状の溝部を環状に複数配列形成したものである。
【0011】
本発明のスピーカ装置では、上記ドーム部の溝部が放射状に形成された構成も可能である。
【0012】
本発明のスピーカ装置では、上記ドーム部が凹状の溝部と凸状の溝部が隣合って形成されてなる構成も可能である。
【発明の効果】
【0013】
このような本発明に係るスピーカ装置では、支持部にスピーカ用マグネット部を支持し、振動膜の外周縁を支持部に支持させ、振動膜にはドーム部の周囲に環状のエッジ部を一体的かつ同心円状に設け、そのドーム部とエッジ部の境目近傍にボイスコイルの端面を支持させてマグネット部を囲ませ、その振動膜のドーム部には、環状部の内側に仮想的に形成した同心円を横切る凹状又は凸状の溝部を環状に多数配列形成したから、振動膜の機械的強度が向上し、小型化が容易であるうえ発音特性も良好となる。
【0014】
本発明のスピーカ装置では、上記溝部が放射状に形成された構成では、特に、振動膜が全体に均一な機械的強度となり易いから、良好な音圧特性の維持が可能である。
【0015】
本発明のスピーカ装置では、上記ドーム部が凹状と凸状の溝部を隣合って形成させる構成では、特に、振動膜の機械的強度が良好で、小型化に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、従来例と共通する部分には同一の符号を付す。
【0017】
図1は本発明に係るスピーカ装置の実施の形態をイヤホーン1を例にして示す断面図である。
【0018】
図1において、扁平な支持部1は合成樹脂又は金属板からカップ状に成型加工されてなり、幅広の凹部15と、この凹部15を形成する側壁先端が更に幅広になってから立ち上がるように成形されている。
【0019】
支持部1の凹部15中央部には、従来公知のスピーカ用マグネット部3が固定されている。
【0020】
支持部1の立ち上がり開放先端部17には、マグネット部3の先端および凹部15を覆うように振動膜5の周縁部が固定されている。
【0021】
振動膜5は、例えばポリエステル樹脂フィルム等から成形加工されてなり、内側の球面状ドーム部9とこの外周に一体的かつ環状に形成された帯状のエッジ部11を有しほぼ円板状に形成されており、例えばドーム部9がエッジ部11より凸設されている。ドーム部9がエッジ部11より凹設される構成も可能である。
【0022】
なお、エッジ部11も多少球面化されているが、ドーム部9も曲面のほうがエッジ部11のそれより大きくなっている。
【0023】
ドーム部9の周囲のエッジ部11には、図2に示すように、エッジ部11に多数の凹状又は凸状の溝部13が渦巻き状に形成されている。
【0024】
振動膜5の裏側において、ドーム部9とエッジ部11の境目に形成された環状部19にはボイスコイル7の端面が固定されており、ボイスコイル7がマグネット部3と僅かな間隔で囲むように垂下している。
【0025】
振動膜5のドーム部9には、環状部19の内側に仮想的に同心円を形成した場合、この同心円を横切る凹状又は凸状の溝部21を放射状に多数配列されている。
【0026】
図2では、凹状と凸状の溝部21が隣合って形成され、内外に細長い楕円溝を連続的に配列した一種の花びらが放射状に形成されたようになっている。
【0027】
このような構成のスピーカ装置は、ボイスコイル7に音声信号を印加すると、マグネット部3とボイスコイル7との間で反発力および吸引力が生じ、ボイスコイル7に固定された振動膜5が振動して発音するのは、従来構成と同様である。
【0028】
ただし、振動膜5のドーム部9には、多数の溝部21が放射状に配列されているから、ドーム部9の剛性が高くなって機械的強度が向上する。
【0029】
このような本発明のスピーカ装置では、支持部1にスピーカ用マグネット部3を支持させ、振動膜5の外周縁を支持部1に開放先端部17に支持させ、振動膜5にはドーム部9とこの周囲に環状のエッジ部11とを一体的かつ同心円状に設け、そのドーム部9とエッジ部11の境目近傍にボイスコイル7の端面を支持させてマグネット部3を囲ませ、その振動膜5のドーム部9には、環状部19の内側に凹状又は凸状の溝部21を放射状に多数配列形成した構成を有している。
【0030】
そのため、振動膜5、特にドーム部9の機械的強度が向上し、振動膜5においてドーム部9の凸設寸法を大きくしなくとも、分割振動を抑えることが十分可能であり、ドーム部9を大きく突出させる必要がなくなったり、振動膜5とマグネット部3の間隔を狭めることが可能で、外形形状の大型化を抑えることが容易であるし、発音特性も良好となる。
【0031】
すなわち、本発明のスピーカ装置では、振動膜5の機械的強度が向上し、小型化および耐入力性や過渡特性が向上し、例えば、従来のスピーカ装置に対して、同じ性能を維持させる場合には、形状を大幅に薄型化することが可能であるし、同じ寸法形状を維持させる場合には、音質を向上させることが可能である。
【0032】
本発明のスピーカ装置は、振動膜5のドーム部9に形成した溝部21に特徴があり、その形状は図2に限定されず、例えば図3に示すように、単に放射状に溝部21を形成する構成も可能である。
【0033】
要は、ドーム部9において、環状部19の内側に仮想的に形成した同心円を横切る凹状又は凸状の溝部21を環状かつ放射状に多数配列すれば本発明の目的達成が可能である。
【0034】
本発明のスピーカ装置は、種々のスピーカやイヤホーンにおいて広く実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るスピーカ装置の実施の形態を示す断面図である。
【図2】本発明のスピーカ装置における振動膜を示す斜視図である。
【図3】本発明のスピーカ装置における他の振動膜を示す斜視図である。
【図4】従来のスピーカ装置を示す断面図である。
【図5】従来のスピーカ装置の特性図である。
【符号の説明】
【0036】
1 支持部
3 マグネット部
5 振動膜
7 ボイスコイル
9 ドーム部
11 エッジ部
13、21 溝部
15 凹部
17 開放先端部
19 環状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部と、
この支持部に支持されたスピーカ用マグネット部と、
このマグネット部を囲むように配置された筒状のボイスコイルと、
ドーム部とこの周囲に環状のエッジ部を一体的かつ同心円状に有し、前記ドーム部とエッジ部の境目を形成する環状部近傍に前記ボイスコイルの端面が支持されるとともに、前記エッジ部の外周縁が前記支持部に支持された振動膜と、
を具備し、
前記ドーム部には、前記環状部の内側に仮想的に形成した同心円を横切る凹状又は凸状の溝部を環状に複数配列形成してなることを特徴とするスピーカ装置。
【請求項2】
前記ドーム部の前記溝部は、放射状に形成してなる請求項1記載のスピーカ装置。
【請求項3】
前記ドーム部は、凹状の前記溝部と凸状の前記溝部が隣合って形成されてなる請求項1又は2記載のスピーカ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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