説明

スプリンクラヘッド

【課題】
散水分布をむらなく適正に行い得るスプリンクラヘッドを提供する。
【解決手段】
スプリンクラヘッドSPは、給水配管に螺着された本体2と、該本体2に固定されたフレーム5と、該フレーム5の端部に固定されたデフレクタ4と、定常状態あっては弁体3を付勢して散水不可にし、例えば火災発生時に熱を検知して弁体3を開状態にして散水可能にする感熱開弁手段6とを備えている。前記フレーム5の散水時に放水が当たる部分には、金属からなるフレーム5の外側面を覆うように樹脂層13が形成され、砂型によるフレーム製造時に発生しがちな変形、表面の凹凸を樹脂層13により補正するようになっている。従って、散水時に放水された水は不所望に拡散することなく、デフレクタ4に流され、デフレクタ4によって広範囲に万遍なく適正に散水される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火設備に用いられるスプリンクラヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のスプリンクラヘッドには、給水管に連結される、ヘッド本体に設けられた放水口を開閉する弁体と、前記本体に複数本のフレームを介して固定されるデフレクタと、前記弁体とデフレクタとの間に配設された感熱開弁部材と、を備えたものがある。
【0003】
前記スプリンクラヘッドにあっては、火災発生に伴い周囲の温度が上昇すると感熱開弁部材が熱を感知してはじけ、弁体が本体上から落下する。この結果、放水口が開口状態になり、放水口からデフレクタに向けて放水が行われる。
放出された消火用の水はデフレクタに衝突し、次いでデフレクタの外周縁部に間歇的に設けた爪により放出方向を規制されながら飛散する。飛散する水量は、むらなく均一であることが望ましい。
【0004】
実公昭56−48288号公報には、消火用放水の均一化を図るように構成したスプリンクラヘッドの一例が開示されている。
即ち、フレームヨークによる散水分布の方向性を修正し、高水圧における散水を均一にするサブデフレクターをメインデフレクターに隣接して設置したことを特徴とするものである。この構成によれば、サブデフレクターに設けた屈曲した先端部で跳飛ばされた水を捕らえ、それをメインデフレクターに送ることができる。故に、高水圧下でも、正常圧の散布と同様均一な散布ができる。
【0005】
【特許文献1】実公昭56−48288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、本発明者の検討によると、散水の均一化について新たな問題点が明らかになった。
即ち、散水分布はデフレクタのみに依存するのではなく、フレームの形状、寸法精度、更に表面仕上がり等に依存することが判明した。
散水する際、放水口から放水された水は、先ずフレームに当たり、分水されてデフレクタに当たるように流れる。従って、フレームにおける散水が当たる部分(以下において散水分布に寄与する部分という)は、形状、表面仕上がり等が設計通りに形成されていなければならない。
【0007】
前記フレームを含むスプリンクラヘッドは、例えば真鍮、青銅、黄銅等を材料とした鋳物であり、一般に砂型を用いて製造される。しかし、砂型や湯の流れの管理は難しく、これが部品精度が上がらない原因になっていた。
例えば、砂型によるフレームの製造工程において、フレームの先端部分が尖頭状になっていない、先端部分の変形、更に先端部分の一部が欠ける等の不完全部分のある不良品が生じる場合がある。
【0008】
フレーム製造工程にあっては、砂型に溶融した真鍮等の金属を流し込み、固まった段階で砂型を崩してフレームを取り出す。しかし、工程上、完全に固まる前に取り出すことがあり、この場合、フレームが完全に冷えていないため、フレームを取り出してから冷えていく間に変形してしまうことがあった。
また、砂型の状態が完全でない場合は、フレームの一部分が欠けたり、部分的に凹凸部が形成されたりする。更に砂型に空気溜まりがあれば、これも一部が欠ける原因になり、フレーム中に隙間が形成されることもある。又、製造方法の違いによって、寸法精度は大きく異なる。

【0009】
前記フレームの変形や凹凸部等が、フレームの散水分布に寄与する部分に形成されてしまうと、放水された水がデフレクタ方向に正確に流れず、適正な散水分布が得られない。
【0010】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は散水分布の良好なスプリングクラヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、放水口を有するヘッド本体と、一端が前記ヘッド本体に固定され他端が連結部により連結された複数本のフレームと、前記連結部に固着されたデフレクタとを備えたスプリンクラヘッドにおいて、前記フレームの前記放水口からの放水が当たる部分に、樹脂層を形成したことを特徴とするものである。
【0012】
この発明において、前記樹脂層は、前記フレームの前記放水口からの放水が当たる部分の外側面を被覆するように形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
更に本発明は、前記放水口を塞ぐ弁体と、該弁体と前記連結部との間に介在するように配設され、無放水時に前記放水口を塞ぐように前記弁体を支持する感熱開弁手段とを備え、前記放水口からの放水が当たる部分は、前記感熱開弁手段の前記連結部側の端部近傍から前記デフレクタ側に向かって設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は前記のように構成したので、下記のような種々の効果を奏する。
即ち、フレームの放水口からの放水が当たる部分の外側面に樹脂層を形成した。その結果、フレーム自体の外側面に凹凸が形成されていても、また尖頭部分が砂型により丸く変形するようなことがあっても、樹脂層により設計通りの形状に補正することができる。又、この樹脂層の寸法精度は高い。従って、放水された水は、表面仕上がりが滑らかで変形のないフレームに当たってからデフレクタ方向に流されることになり、適正な散水分布を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明者は、前記問題を解決するため研究、実験を重ねた結果、次のようにすればよいことがわかった。フレームを砂型により製造し、フレームのうちの散水分布に寄与する部分の外側面について、金型を用いて樹脂層を形成する。金型は寸法精度が良好で、樹脂の粘性が低い。従って、フレームの外側面に凹凸や変形があっても、前記散水分布に寄与する部分の表面を均一に樹脂が流れるため、滑らかになり、変形も是正されるので、放水された水をデフレクタ方向にむらなく流すことができる。
【0016】
以下に、本発明の第1実施例を図1〜図4を参照して詳細に説明する。
スプリンクラヘッドSPは、放水口1を有する筒状のヘッド本体2と、該放水口1を塞ぐ弁体3と、該放水口1と対向する位置に固定されたデフレクタ4と、該デフレクタ4とヘッド本体2とを連結するフレーム5と、弁体3を閉弁方向に押圧する感熱開弁部材6とを備えている。
【0017】
なお、ヘッド本体2の外側面には図1に示すようにねじ部11が形成され、図示しない給水配管に螺着するようになっている。放水口1は、図4に示すようにヘッド本体2の中心部を長手方向に貫通しているが、図4の下端側に示した給水側が大径で放水側が小径に形成されている。
弁体3は、前記放水口1の小径側に挿入される弁本体(図示省略)と、図1に示すように放水口1の上部に露出する大径部3aを備えている。
【0018】
フレーム(アーム)ともいう)5は、本実施例では180°間隔で2本が設けられているが、120°間隔で3本にしてもよく、それ以上にしてもよい。フレーム5は、ヘッド本体2に固定される基部に補強部5aが設けられ、感熱開弁部材6の上端近傍から図1及び図4に示すように互いに対向する方向に、言い換えれば中心方向に向けて湾曲するように形成されている。この湾曲する部分、即ち図1に斜線で示した部分が、本発明の放水口からの放水が当たる部分に、或いは散水分布に寄与する部分に相当する。このようにフレーム5の上部側は、中心方向に向けて湾曲され、その端部同士は中心で連結して連結部を構成している。
【0019】
また、フレーム5の上部の中心にねじ穴5bが形成されている。フレーム5の上端部(連結部)にデフレクタ4が加締め(カシメ)止め等により固定される。デフレクタ4は円板状に形成され、外周囲に高さの異なる爪4aが間欠的に形成されている。
【0020】
連結部のねじ穴5bには、図1に一部が露呈されているように止めねじ12がねじ込まれている。そして、止めねじ12の下端と弁体3に設けた大径部3aとの間に感熱開弁部材6が配設される。感熱開弁部材6はグラスバルブであり、定常状態(無放水時)にあっては、止めねじ12によってその上端が押さえられ、放水口1を塞ぐように弁体3を支持している。
しかし、火災等により発生した高熱を感知すると破砕し、前記弁体3の付勢を解除する。この結果、弁体3が弾け飛び、散水が行われるようになる。なお、感熱開弁部材6は半田によるリンク機構で構成しても良い。
【0021】
ところで、図1に斜線で示した放水が当たる部分は、図2及び図3に断面構造を示したようにフレーム5の外側面を樹脂層13で覆った構成になっている。この樹脂層が設けられる、フレームの放水口からの放水が当たる部分は、感熱開弁部材6の連結部側の端部近傍のデフレクタ側に向かっている。フレーム5は、前記のように砂型を用いて製造される。これに対し、樹脂層13は、フレーム5を金型内に位置決めし、その周囲に樹脂を注入して形成される。
ここで図2を参照して、図1に示したA−A線に沿う断面構造を説明すると、フレーム5の先端部分は砂型により丸くなっている。しかし、樹脂層13の先端部13aは、尖頭状、或いは鋭角に形成され分流が良好に行われるようになっている。また、両側面13bの表面も滑らかになり、水の流れが良くなるので、不所望な方向への水の飛び散りを低減することができる。
【0022】
一方、図3を参照して、図1に示したB−Bに沿う断面構造を説明すると、仮に砂型によってフレーム5の表面に凹み部分5cが形成されたとしても、樹脂層13が充填され、樹脂層13の表面に凹みが表れず、しかも金型によって滑らかに形成される。更に、フレーム5の肉厚にむらがあっても、樹脂層13によって均一な肉厚に補正される。
従って、散水時における水の流れが安定し、不所望な方向への水の流れや飛び散りを低減することができる。
【0023】
以下に、本実施例の散水動作を説明する。
定常状態にあっては、図1に示すように弁体3の大径部3aと止めねじ12との間に感熱開弁部材6が介在する。本体2は図示しない給水配管に接続されているので、水圧により弁体3は図1の上方に付勢されている。しかし、感熱開弁部材6が止めねじ12を支点として弁体3を押圧するように作用するので、弁体3によって放水口1が閉塞され、放水や漏水が阻止される。なお、スプリンクラヘッドは、図のように上向きで取付けてもよいが、デフレクタを下側に向けて設置されることの方が多い。
【0024】
火災発生時にあっては、周囲温度が上昇し所定温度に達すると感熱開弁部材6内の液体が膨張し、内部圧力が上昇して感熱開弁部材6が破壊する。この結果、弁体3の付勢が解除され、弁体3は水圧によって弾き飛ばされる。
【0025】
この結果、図4に示すように放水口1から高圧の消火用水Wがデフレクタ4方向に向けて放水され、フレーム5の放水が当たる部分によってデフレクタ4に当たるように分流される。
ここで説明の便宜のため分流した放水をWaとすると、放水Waが当たる部分において図2に示すように鋭角の先端部13aによって放水流が滞留なく、且つ流れ方向が不所望に変わることなく分流し、分流した後は滑らかな両側面13bに沿ってデフレクタ4に向けて流れるようになる。
【0026】
デフレクタ4に当たった放水Waは、デフレクタ4に形成した爪4aにより更に分流され、広い範囲にわたって万遍なく散水される。従って、散水量が偏ることがなく、散水による適正な消火活動を効率よく行うことができる。
【0027】
前記実施例では、真鍮、又は青銅との合金によりフレーム5のうち、放水が当たる部分の外側面に樹脂層13を形成した構成であり、金属の強度と樹脂の加工性の良さとの両利点を利用できる。フレーム5は、所望の強度、即ち高圧の散水が当たっても破壊しない程度に細くすることができる。樹脂層13の材質については、耐熱性に優れたものがよく、例えば、ポリカーボネート等が好ましい。
【0028】
この発明の実施例は、上記に限定されるものではなく,例えば、アームの放水の当たる部分を、設計形状より小さく形成し、該アームを樹脂で被覆することにより、該アームの形状を設計形状にしても良い。また、感熱開弁部材及び弁体を有しない開放型のスプリンクラヘッドに本発明を適用しても良い。この場合には、連結部の上方に形成され、放水口と対向する位置に設けられるコーンに樹脂層を設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施例を示すスプリンクラヘッドの側面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う拡大断面図である。
【図3】図1のB−B線に沿う断面図である。
【図4】スプリンクラヘッドの断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 放水口
2 本体
3 弁体
3a 大径部
4 デフレクタ
4a 爪
5 フレーム
5b 散水口
6 感熱開弁部材
11 ネジ部
12 バルブ受
13 樹脂層
SP スプリンクラヘッド
W 放水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放水口を有するヘッド本体と、一端が前記ヘッド本体に固定され他端が連結部により連結された複数本のフレームと、前記連結部に固着されたデフレクタとを備えたスプリンクラヘッドにおいて、
前記フレームの前記放水口からの放水が当たる部分に、樹脂層を形成したことを特徴とするスプリンクラヘッド。
【請求項2】
前記樹脂層は、前記フレームの前記放水口からの放水が当たる部分の外側面を被覆するように形成されていることを特徴とする請求項1記載のスプリンクラヘッド。
【請求項3】
前記放水口を塞ぐ弁体と、該弁体と前記連結部との間に介在するように配設され、無放水時に前記放水口を塞ぐように前記弁体を支持する感熱開弁部材とを備え、前記放水口からの放水が当たる部分は、前記感熱開弁部材の前記連結部側の端部近傍から前記デフレクタ側に向かって設けられていることを特徴とする請求項2記載のスプリンクラヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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