スプリンクラーヘッド着脱用レンチ
【課題】 内部にノズルを有しており給水配管とネジ接続される本体が天井内に設置され、本体の外周部を覆う有底円筒形状のカップ材の底面側が本体外部に係合されており、カップ材の底面付近には本体を給水配管へ接続するためのレンチ係合部が設置されたスプリンクラーヘッドと、該スプリンクラーヘッドを配管に着脱するためのレンチの係合状態を目視によって容易に確認可能なスプリンクラーヘッド着脱用レンチを提供する。
【解決手段】 レンチRは、先端部がレンチ係合部(開口6Fの縁)と係合する爪R1を備えた筒状で、外周部に係合確認部R2が設置されている。
【解決手段】 レンチRは、先端部がレンチ係合部(開口6Fの縁)と係合する爪R1を備えた筒状で、外周部に係合確認部R2が設置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火用のスプリンクラーヘッドを配管に着脱する際に用いられるレンチ工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スプリンクラーヘッドは、建物内の天井面や壁面に設置され、一端に給水源に続いた配管と接続可能なノズルを有し、他端には感熱作動部が設けられている。平時において感熱作動部はノズルを閉止する弁体を支持している。
【0003】
上記スプリンクラーヘッドの一例として、天井面や壁面に埋め込まれた状態で設置され、スプリンクラーヘッドをカバープレートで覆い隠したコンシールド型スプリンクラーヘッドがある。コンシールド型スプリンクラーヘッドは、意匠性に優れたスプリンクラーヘッドとして用いられており、例えば特許文献1に記載されたものがある。特許文献1のコンシールド型スプリンクラーヘッドは、作動時に内部に収容されているデフレクターが突出する所謂フラッシュ型スプリンクラーヘッドの外部に筒部材を設けて、該筒部材の下部にカバープレートとの係合部が設けられている。
【0004】
図15に示すスプリンクラーヘッドは特許文献1のコンシールド型スプリンクラーヘッドであり、フラッシュ型スプリンクラーヘッドSH(以下「スプリンクラーヘッドSH」)の外側に有底円筒形状の筒部材Aが設けられている。該筒部材Aの下部には、二点鎖線で示す筒状のリテーナーBが接続され、さらにリテーナーBの下端にはスプリンクラーヘッドSHを覆い隠すカバープレートPが低融点合金により接合して設置されている。
【0005】
図15(a)はリテーナーBを筒部材Aに接続する前の状態であり、スプリンクラーヘッドSHには保護キャップCが装着されている。同図(b)は、(a)の底面図であり、スプリンクラーヘッドSHの本体フランジ部Fの外周部に等間隔に形成された複数のレンチ係合部Kが保護キャップCの外周より外側に位置しており、スプリンクラーヘッドSHに保護キャップCが装着された状態でレンチ係合部Kにレンチを係止可能な構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2010/002722号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のスプリンクラーヘッドは、保護キャップCがスプリンクラーヘッドに装着された状態でレンチをスプリンクラーヘッドに係合できる構造であったが、レンチとスプリンクラーヘッドの係合部Kが筒部材Aの底面付近にあり係合状態が目視で確認しにくいものであった。特に、配管に接続されているスプリンクラーヘッドを取り外す際には、スプリンクラーヘッドのレンチ係合部Kが天井裏の奥に配置されているので目視による確認は困難であった。
【0008】
ゆえに作業者は、レンチとスプリンクラーヘッドの係合状態を確認するために、レンチを筒部材A内に挿入後、レンチを回転させて係合状態を確認するという手間が発生していた。
【0009】
そこで本発明では、上記問題に鑑み、スプリンクラーヘッドとレンチの係合状態を目視によって容易に確認可能なスプリンクラーヘッド着脱用レンチを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は以下のスプリンクラーヘッド着脱用レンチを提供する。
本発明は、内部にノズルを有しており給水配管とネジ接続される本体が天井内に設置され、本体の外周部を覆う有底円筒形状のカップ材の底面側が本体外部に係合されており、カップ材の底面付近には本体を給水配管へ接続するためのレンチ係合部が設置されたスプリンクラーヘッドに用いられるスプリンクラーヘッド着脱用レンチであり、筒形状で先端部にはレンチ係合部と係合する爪を備え、外周部に爪とスプリンクラーヘッドの係合状態を確認可能な係合確認部が設置されていることを特徴とする。
これによれば、スプリンクラーヘッド着脱用レンチの先端部が本体のレンチ係合部と正しく係合した場合には外周部に設けた係合確認部とカップ材の開口端の位置関係によって、本体とスプリンクラーヘッド着脱用レンチが係合しているか否かを判断できるので目視により容易に係合状態を確認することができる。
【0011】
前記本発明については、係合確認部はスプリンクラーヘッド着脱用レンチの外方に突出して形成しており、スプリンクラーヘッド着脱用レンチの中心軸と平行な方向に延出された所定高さを有する段部として構成可能である。
これによれば、係合確認部を段部として構成したことで、カップ材の開口端が係合確認部の段部端面に載置された状態においては本体の係合部とスプリンクラーヘッド着脱用レンチが係合しており、カップ材の開口端が係合確認部の段部端面に載置していない場合は、係合状態が不完全であると判断できる。
【0012】
また、段部の高さが天井下面に対するヘッドの取り付け範囲として利用でき、スプリンクラーヘッドの本体を給水配管へ取付ける際に高さ調整作業の目安となるので、スプリンクラーヘッドの高さ調整の精度や作業性が向上する。
【0013】
前記本発明については、本体のノズル出口側に設置した感熱分解部を覆い隠す保護キャップとの係合部を設けることができる。
これによれば、保護キャップとスプリンクラーヘッド着脱用レンチが係合可能となり、スプリンクラーヘッド着脱用レンチ内でスプリンクラーヘッドが傾いたり、空回りすることを防ぎ、スプリンクラーヘッド着脱用レンチ内にスプリンクラーヘッドを安定して固定できる。従って給水配管へスプリンクラーヘッドを着脱する時の作業性が向上する。
【0014】
保護キャップとの係合部はスプリンクラーヘッド着脱用レンチの周面や底面に設けることができ、係合状態をスプリンクラー着脱用レンチの外部から目視可能な位置に設置することも可能である。具体的には、スプリンクラーヘッド着脱用レンチの外周面に保護キャップとの係合部を設けることで構成可能である。あるいは、スプリンクラーヘッド着脱用レンチの底面に貫通して保護キャップとの係合部を設けても構成することができる。
【0015】
前記本発明については、係合確認部と爪がスプリンクラーヘッド着脱用レンチの筒軸と平行な同一線上に配置することができる。
これによれば、作業者がカップ材内部にスプリンクラーヘッド着脱用レンチの爪部分を挿入した状態において係合確認部の位置により爪の位置を目視により認識することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、スプリンクラーヘッドの本体とスプリンクラーヘッド着脱用レンチの係合状態を目視によって容易に確認可能となり、スプリンクラーヘッドを給水配管へ取付け・取外し時の作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a):本発明のスプリンクラーヘッド着脱用レンチの側面図、(b):(a)のZ−Z断面図
【図2】スプリンクラーヘッドの断面図
【図3】図2のスプリンクラーヘッドの本体の正面図
【図4】図3の側面図
【図5】感熱分解部の断面図
【図6】感熱分解部の分解斜視図
【図7】シリンダー・プランジャーの分解断面図
【図8】図2のスプリンクラーヘッドの施工時における断面図
【図9】図8のX−X断面図
【図10】(a):スプリンクラーヘッドに保護キャップを装着した状態の断面図、(b):(a)の底面図
【図11】図10の保護キャップとスプリンクラーヘッド着脱用レンチの側面図
【図12】スプリンクラーヘッドを給水配管に接続する際の断面図
【図13】給水配管に接続されたスプリンクラーヘッドを取外す際の断面図
【図14】給水配管に接続されたスプリンクラーヘッドにスプリンクラーヘッド着脱用レンチを係合させた状態の側面図
【図15】従来のスプリンクラーヘッドの断面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のスプリンクラーヘッド着脱用レンチ(以下、「レンチ」に省略)は、スプリンクラーヘッドのカップ材の底面と係合する構造である。以下にレンチの構造を説明する。
【0019】
図1に示すレンチRは筒状であり、一端にはスプリンクラーヘッドS1のサポートカップ底面と係合可能な爪R1が均等間隔で複数形成されている。各々の爪R1の外周面下方には係合確認部として段部R2が外方に突出して形成されている。爪R1と段部R2はZ−Z直線上に配置されており、Z−Z直線はレンチRの筒軸Yと平行な位置関係となっている。
【0020】
上記の構成としたことで、前述の特許文献1のスプリンクラーヘッド(図15)にレンチRを用いる場合に、爪R1が筒部材Aの中に挿通され爪R1が目視できない状態でも段部R2の位置により爪R1の位置を作業者が把握することができる。
【0021】
段部R2の代わりに、爪R1から筒軸Yと平行に他端側へ伸びる線をレンチRの外周面に凹凸により設けることもできる。あるいは前述の線を凹凸ではなく印刷や塗装により設けることも可能である。
【0022】
段部R2はレンチRの筒軸Yと平行な方向に所定の高さR3を有している。これは段部の高さR3が天井Wの下面に対するスプリンクラーヘッドS1の取り付け範囲を示しており、スプリンクラーヘッドS1の本体を給水配管へ取付ける際に高さ調整作業の目安となるので、スプリンクラーヘッドS1の高さ調整の精度や作業性を向上することができる。
【0023】
さらに各々の段部R2の間には刻印や塗装、印刷等によって取り付け範囲を示す表示を行うことができる。図1(a)においては突起TによりレンチRの外周面に取り付け範囲を示している。
【0024】
また各々の爪R1の間には切欠きが形成されており、この切欠きが後述する保護キャップ30との係合部R4となっている。切欠きの形状は保護キャップ30の側面に形成された突出部31の形状と略等しく、保護キャップ係合部R4に突出部31を係合することができ、保護キャップ30を装着したスプリンクラーヘッドS1をレンチR内に安定して固定することができる。
【0025】
レンチRの爪R1が形成された側と反対側の端は底面となっており、該底面にはレンチハンドルが接続可能な角穴R5が穿設されている。
【0026】
続いてレンチRと係合可能なスプリンクラーヘッドS1の構造について説明する。
【0027】
スプリンクラーヘッドS1は、本体1、弁体3、感熱分解部4、デフレクター5、サポートカップ6(カップ材)、カバープレート7を備えており、コンシールド型スプリンクラーヘッドとして構成されている。
【0028】
図2から図4に示す本体1は中空状であり、一端は充水された配管と接続可能な牡ネジが形成された配管接続部1Aとなっている。配管接続部1Aの他端側は放水口1Bとなっている。放水口1Bの端は弁体3によって閉塞されている。
【0029】
配管接続部1Aと放水口1Bの間には外周部の断面形状が多角形であるサポートカップ係止部1Cが形成されている。サポートカップ係止部1Cより放水口1B側には、サポートカップ係止部1Cの外周部より大きな外周を有する鍔部が形成されており、その鍔部の縁から放水側に向けて筒状のフレーム部2が形成されている。本体1は前述の配管接続部1Aと配管接続部1Aより大きな外周面を有するフレーム部2とで構成されている。
【0030】
フレーム部2の外周横断面形状は、円の2箇所を平行に切欠いた形状をしており、具体的には切欠かれた2箇所の直線部と各直線部の間の円弧部とが形成されている。従ってフレーム部2の外周面には断面円弧状の曲面部2Aと断面直線状の平面部2Bが形成されている。平面部2Bはフレーム部2の外周面を配管接続部1Aの側から後述する梁状部2Jまで切り欠くように形成された切欠面部として形成されており、そこに開口2Eが形成されている。フレーム部2の下部の外周断面形状は、平面部2Bが無くなり曲面部2Aと同じ半径寸法である円形となっている。即ち平面部2Bの下方にはフレーム部2の周方向に沿って架設した円弧状部分でなる梁状部2Jが形成されている。この梁状部2Jはフレーム部2の筒軸を中心とする対向位置に形成されている。
【0031】
フレーム部2の内周下部(曲面部2Aの下部と梁状部2Jの内周面)には内側に向かって拡張して形成された内方フランジ2Cが形成されている。曲面部2Aの下部に位置する内方フランジ2Cにはレバー挿通溝2D、2Dが形成されている(図2)。
【0032】
レバー挿通溝2Dから略90°回転したフレーム部2の平面部2Bには開口2Eが形成されている。開口2Eはフレーム部2の内側を曲線部2Aの外径寸法より小さく且つ2つの平面部2B間の寸法より大きい径寸法で切削することで形成される。
【0033】
開口2Eの下方に位置する梁状部2Jの内方フランジ2Cは、後述する感熱分解部4のレバー11が係止されるレバー係止部2Fとなる。開口2Eの下方の梁状部2Jにレバー係止部2Fを設けたことで、レバー係止部2Fに放水口1B側からフレーム部2の下端側へ荷重を印加すると、梁状部2Jは印加された荷重によって弾性変形するが、開口2Eを設けない場合と比較して梁状部2Jの弾性変形による変形量を大きくすることができる。
【0034】
レバー挿通溝2Dの外周側にはフレーム部2の下端より下方へ垂下して形成されたデフレクター係止部2Gが形成されている。フレーム部2と放水口1Bとの境には、弁体3が収容可能な段部2Hが形成されている。段部2Hにより弁体3が振動や衝撃等によって放水口1Bから位置ずれした際の移動を段部2H内に留めて弁体3が放水口1Bから位置ずれして放水口1B内の水が漏れることを防止している。
【0035】
弁体3は円盤形状であり、前述の段部2Hに収容される。弁体3は後述するコンプレッションスクリュー21により放水口1Bの端に押圧され放水口1Bを閉塞している。
【0036】
感熱分解部4はフレーム部2の梁状部2Jに形成された内方フランジ2C(レバー係止部2F)に係止され、火災時には火災の熱によって分解作動して弁体3を解放する。感熱分解部4は、レバー11、支持板12、バランサー13、シリンダー14、プランジャー15、低融点合金16、セットスクリュー17から構成される。
【0037】
感熱分解部4は図5に示すようなユニット部品として構成され、ユニット部品として保管、運搬が可能である。スプリンクラーヘッドの組立時においても図5で示すユニット部品の状態で本体1に組み込まれる。
【0038】
レバー11は、一対で用いられており一端が内方フランジ2Cに係止され外方に屈曲した形状をしている。レバー11の上部には左右対称に設けられた突起11Aが形成され(図6)、下部には矩形の穴11Bが穿設されている。一対のレバー11の間には支持板12とバランサー13が係止され、支持板12は突起11Aと係止し、バランサー13は下部の穴11Bに係止される。バランサー13の中心部には穴13Aが穿設されており、該穴13Aにシリンダー14が挿入される。
【0039】
シリンダー14は円筒形状をしており、内部には段が形成され、大径部14Aと小径部14Bが形成されている。大径部14Aには円環状の低融点合金16が収容されている。また大径部14A側の端には鍔部14Cが形成されており、該鍔部14Cがバランサー13の穴13Aと係合する。小径部14Bの内径は環状の低融点合金16の内径と略等しい。
【0040】
小径部14Bの先端はヒートコレクター18、19を挟んだ状態で折り曲げられ、ヒートコレクター18、19がシリンダー14に設置される。ヒートコレクター18、19は熱伝導性が良好な銅や銅合金等の金属から形成され、火災による熱を吸収してシリンダー14内の低融点合金16に伝える作用を有する。
【0041】
プランジャー15の外周部は段により大径部15Aと小径部15Bが形成されている。大径部15の外径はシリンダー14の大径部14Aの内径より僅かに小さく形成される。小径部15Bの外径はシリンダー14の小径部の内径および低融点合金16の内径より僅かに小さく形成される。
【0042】
プランジャー15は、シリンダー14の大径部14A側から挿通され、小径部15Bと、大径部15Aと小径部15Bの境の段部15Cとが低融点合金16に接触する。プランジャー15をシリンダー14に挿通した状態において、プランジャー15の外周面はシリンダー14Bおよび低融点合金16の内周面と摺動可能となっている。
【0043】
プランジャー15には貫通穴15Dが穿設されており、貫通穴15Dの中間にはセットスクリュー17の先端が接触する段部15Eが形成されている。
【0044】
セットスクリュー17は筒形をしており外部には牡ネジ17Aが螺刻されている。牡ネジ17Aを支持板12の牝ネジ12Aに螺入すると、セットスクリュー17の先端がプランジャー15の段部15Eを押圧するので低融点合金16はプランジャー15の段部15Eとシリンダー14の底部14Dにより圧縮方向の力が作用した状態にある。
【0045】
また一対のレバー11に係合した支持板12とバランサー13もレバー11との係止が強まる方向へ力が印加され、レバー11と支持板12、バランサー13の係合状態が保持される。これにより感熱分解部4がユニットとして構成される。
【0046】
感熱分解部4と弁体3の間にはサドル20が設置される。サドル20は金属の板材から形成されており、一面には一対のレバー11が係合する凹部20Aが形成されている。凹部20A、20Aの間には、牝ネジ20Bが螺刻されており、該牝ネジ20Bにはコンプレッションスクリュー21が螺入されている。
【0047】
コンプレッションスクリュー21を感熱分解部4側から弁体3に向かって牝ネジ20Bに螺入すると、コンプレッションスクリュー21の先端が弁体3を押圧して、弁体3が放水口1Bの端に押圧され放水口1Bを閉塞するとともに、一対のレバー11が係止されているフレーム部2の内方フランジ2Cを下方に押圧する。これによって梁状部2Jが弾性変形し極僅かな変位が生じる。このような梁状部2Jのたわみによる変位によって、分解作動時に感熱分解部4の構成部品をフレーム部2の外にはじき飛ばすバネ力が生じる。
【0048】
デフレクター5は、平板状で周囲に複数のスリット5Aが形成されている。デフレクター5にはガイドピン5Cが嵌合される穴5B、5Bが穿設されており、該穴5Bにガイドピン5Cの一端が挿通され、カシメ固定される。ガイドピン5Cは本体1のデフレクター係止部2Gに穿設された穴5Eに挿通されている。ガイドピン5Cは穴5Eに挿通された状態で摺動可能である。ガイドピン5Cの他端側には鍔部5Dが形成されており、本体1のデフレクター係止部2Gの穴5Eの端面に係止可能である。
【0049】
サポートカップ6(カップ材)は、本体1のフレーム部2の外側を覆う有底円筒形状の部材である。サポートカップ6の底部6Aには前述の本体1のサポートカップ係止部1Cと嵌合可能な開口6Bが形成されている。サポートカップ係止部1Cと開口6Bを嵌合させることで、サポートカップ6が本体1に対して回転することを防止できる。
【0050】
開口6Bの周縁には外側へ向かって立設した筒状部6Cが形成されている。筒状部6Cの端面の位置はサポートカップ係止部1Cの端面より配管接続部1A側にあり、筒状部6Cの端は本体1の配管接続部1Aとサポートカップ係止部1Cとの間の括れ部1D付近に位置する。筒状部6Cの根元の数箇所に切り込みを入れた後、切り込みの上部を外周側から括れ部1D側に押圧して切り込みの上部を括れ部1D側に変形させ係合部6Dを形成することで係合部6Dと括れ部1Dが係合され、サポートカップ6を本体1に固定設置することができる。
【0051】
サポートカップ6の底面内側には前述の開口6Bと同様な開口が形成されたベースプレート6Eが設置されている。またサポートカップ6の底面6Aの周縁付近には均等間隔で複数の開口6Fが穿設されている。開口6Fはサポートカップの底面6Aから側面6Gにまで及んでいる。側面6Gの端面側には螺旋溝6Hが形成されている。
【0052】
ベースプレート6Eを介してサポートカップ6の開口6Bと本体1のサポートカップ係止部1Cを嵌合させると、図9にて点線で示すように本体1のデフレクター係止部2Gは2つの開口6F、6F間に配置される。これにより、デフレクター係止部2Gの穴5Eに挿通されるガイドピン5Cをサポートカップ6の底面側に移動させた際には、鍔部5Dがベースプレート6Eに接触するのでガイドピン5Cは開口6Fより上方への移動を阻止される。さらに、ガイドピン5Cの下端側に設置されたデフレクター5が感熱分解部4のヒートコレクター19と干渉することを防止できる。
【0053】
カバープレート7は、サポートカップ6内の本体1や感熱分解部4、デフレクター5を覆い隠す薄板状の蓋7Aと、円筒形状のリテーナー7Bから構成される。カバープレート7は、本体1の配管接続部1Aを消火設備配管に接続した後にサポートカップ6に接続されることから、前述の本体1やサポートカップ6とは別部品として組立てられる。
【0054】
蓋7Aは円盤形状であり材質は熱を伝播しやすい銅や銅合金を用いる。リテーナー7Bは筒状であり下端から垂下した複数の脚の先端が折り曲げられ、蓋7Aとの接続面7Cが形成されている。接続面7Cと蓋7Aは低融点合金7Dにより接合される。低融点合金7Dは前述のシリンダー14内の低融点合金16より融点が低いものを用いる。
【0055】
リテーナー7Bの周面には前述のサポートカップ6の螺旋溝6Hと螺合可能な突起7Eが形成されている。該突起7Eはリテーナー7Bの周面に切り込みを入れ、突起7Eが斜め下方に突出するように形成されている。
【0056】
スプリンクラーヘッドS1には、図10に示すように感熱分解部4を外的衝撃から保護するための保護キャップ30が装着される。
【0057】
図10および図11に示す保護キャップ30は有低円筒形状をしており、側面には外周方向へ延出した突出部31が複数形成されている。該突出部31の先端は前述の開口6Fの縁に係合されるもので、設置箇所および位置が開口6Fと対応している。突出部31は2つの側面部32と、側面部32、32の間の外面部33から構成されている。
【0058】
側面部32の先端部32Aは、保護キャップ30の開口部(図中上方)よりも突出して形成されており、サポートカップ6の開口6Fの間の梁部6Jの縁に係止される。先端部32Aには梁部6Jとの係合状態を維持可能な段32Bが形成されている。保護キャップ30がサポートカップ6の梁部6Jに係合されたことでサポートカップ6の下端開口から上端の底部6Aに穿設された開口6Fまで貫通可能な空間35が存在する。また保護キャップ30の外面部33はサポートカップ6の内周面と近接して設置される。
【0059】
図10(b)は、図10(a)のスプリンクラーヘッドを保護キャップ30底面側から見た状態を表している。図10(b)において、保護キャップ30の突出部31の間にサポートカップ6の開口6Fへ貫通可能な空間35が形成されており、該空間35にレンチRの爪R1が挿通可能な状態となっている。該空間35に挿通させたレンチRは保護キャップ30の側面部32を介して開口6Fの縁(梁部6Jの縁)に係合可能である。従って、スプリンクラーヘッドS1が保護キャップ30を装着した状態で、レンチRにより給水配管への取付けを行なうことができる。
【0060】
また、レンチRの先端の爪R1を空間Sに挿通させる際に、突出部31の側面部32、32によって爪R1が開口6Fに導かれ、側面部32、32がガイドの役割をすると共に、レンチRのキャップ係合部R4が突出部31の側面部32と係合され、レンチR内に保護キャップ30を装着したスプリンクラーヘッドS1が安定して配置される。
【0061】
次に、レンチRを用いてスプリンクラーヘッドを給水配管に接続する手順について説明する。
【0062】
先ず、レンチR内に保護キャップ30が装着されたスプリンクラーヘッドS1を挿入する(図12)。レンチRに保護キャップ30を挿入すると保護キャップ30の突出部31がレンチRの保護キャップ係合部R4と係合するとともに爪R1はサポートカップ6の開口6Fへ挿通される。また、サポートカップ6の開口端はレンチRの段部R2の端面に載置される。
【0063】
この状態でサポートカップ6の開口6Bから突出している牡ネジ1Aを図8にて二点鎖線で示す給水配管に螺合させる。具体的には図12のレンチRを回転させるとレンチR内のスプリンクラーヘッドS1が供回りして牡ネジ1Aが給水配管に螺合する。その際、レンチRの外周面の段部R2の高さR3の範囲内に天井Wの下面が位置するように調整する。この位置調整によって室内に設置されるスプリンクラーヘッドS1の設置高さを所定範囲内に均一化することができる。
【0064】
最後に保護キャップ30をスプリンクラーヘッドS1から取外し、カバープレート7をサポートカップ6の螺旋溝6Hに螺入させ、カバープレート7の蓋7Aが天井Wに近接する位置に調整する(図1)。これによりスプリンクラーヘッドの設置が完了する。
【0065】
続いて、天井裏の給水配管に設置されているスプリンクラーヘッドをレンチRによって取外す手順について説明する。
【0066】
スプリンクラーヘッドS1を取外す前に給水配管内の水は排水しておく。次にカバープレート7を回転させてリテーナー7Bをサポートカップ6から取外してレンチRをサポートカップ6内に挿通させる。その際、図13に示すように下方に延出しているガイドピン5Cの位置にキャップ係合部R4を沿わせてレンチRをサポートカップ6内に挿通させるとサポートカップ6の開口6Fの位置に爪R1が挿通される(図14)。
【0067】
サポートカップ6の開口端がレンチRの段部R2の端面に載置されていることを確認してレンチRを牡ネジ1Aが緩む方向へ回転させる。レンチRの回転とともにスプリンクラーヘッドS1も回転し、牡ネジ1Aが給水配管から外れる。これによりスプリンクラーヘッドの取り外し作業が完了する。
【符号の説明】
【0068】
R スプリンクラーヘッド着脱用レンチ
R1 爪
R2 段部
R3 段部の高さ
R4 保護キャップとの係合部
R5 角穴
S1 スプリンクラーヘッド
1 本体
3 弁体
4 感熱分解部
5 デフレクター
6 サポートカップ(カップ材)
6F 開口
7 カバープレート
30 保護キャップ
31 突出部
35 空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火用のスプリンクラーヘッドを配管に着脱する際に用いられるレンチ工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スプリンクラーヘッドは、建物内の天井面や壁面に設置され、一端に給水源に続いた配管と接続可能なノズルを有し、他端には感熱作動部が設けられている。平時において感熱作動部はノズルを閉止する弁体を支持している。
【0003】
上記スプリンクラーヘッドの一例として、天井面や壁面に埋め込まれた状態で設置され、スプリンクラーヘッドをカバープレートで覆い隠したコンシールド型スプリンクラーヘッドがある。コンシールド型スプリンクラーヘッドは、意匠性に優れたスプリンクラーヘッドとして用いられており、例えば特許文献1に記載されたものがある。特許文献1のコンシールド型スプリンクラーヘッドは、作動時に内部に収容されているデフレクターが突出する所謂フラッシュ型スプリンクラーヘッドの外部に筒部材を設けて、該筒部材の下部にカバープレートとの係合部が設けられている。
【0004】
図15に示すスプリンクラーヘッドは特許文献1のコンシールド型スプリンクラーヘッドであり、フラッシュ型スプリンクラーヘッドSH(以下「スプリンクラーヘッドSH」)の外側に有底円筒形状の筒部材Aが設けられている。該筒部材Aの下部には、二点鎖線で示す筒状のリテーナーBが接続され、さらにリテーナーBの下端にはスプリンクラーヘッドSHを覆い隠すカバープレートPが低融点合金により接合して設置されている。
【0005】
図15(a)はリテーナーBを筒部材Aに接続する前の状態であり、スプリンクラーヘッドSHには保護キャップCが装着されている。同図(b)は、(a)の底面図であり、スプリンクラーヘッドSHの本体フランジ部Fの外周部に等間隔に形成された複数のレンチ係合部Kが保護キャップCの外周より外側に位置しており、スプリンクラーヘッドSHに保護キャップCが装着された状態でレンチ係合部Kにレンチを係止可能な構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2010/002722号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のスプリンクラーヘッドは、保護キャップCがスプリンクラーヘッドに装着された状態でレンチをスプリンクラーヘッドに係合できる構造であったが、レンチとスプリンクラーヘッドの係合部Kが筒部材Aの底面付近にあり係合状態が目視で確認しにくいものであった。特に、配管に接続されているスプリンクラーヘッドを取り外す際には、スプリンクラーヘッドのレンチ係合部Kが天井裏の奥に配置されているので目視による確認は困難であった。
【0008】
ゆえに作業者は、レンチとスプリンクラーヘッドの係合状態を確認するために、レンチを筒部材A内に挿入後、レンチを回転させて係合状態を確認するという手間が発生していた。
【0009】
そこで本発明では、上記問題に鑑み、スプリンクラーヘッドとレンチの係合状態を目視によって容易に確認可能なスプリンクラーヘッド着脱用レンチを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は以下のスプリンクラーヘッド着脱用レンチを提供する。
本発明は、内部にノズルを有しており給水配管とネジ接続される本体が天井内に設置され、本体の外周部を覆う有底円筒形状のカップ材の底面側が本体外部に係合されており、カップ材の底面付近には本体を給水配管へ接続するためのレンチ係合部が設置されたスプリンクラーヘッドに用いられるスプリンクラーヘッド着脱用レンチであり、筒形状で先端部にはレンチ係合部と係合する爪を備え、外周部に爪とスプリンクラーヘッドの係合状態を確認可能な係合確認部が設置されていることを特徴とする。
これによれば、スプリンクラーヘッド着脱用レンチの先端部が本体のレンチ係合部と正しく係合した場合には外周部に設けた係合確認部とカップ材の開口端の位置関係によって、本体とスプリンクラーヘッド着脱用レンチが係合しているか否かを判断できるので目視により容易に係合状態を確認することができる。
【0011】
前記本発明については、係合確認部はスプリンクラーヘッド着脱用レンチの外方に突出して形成しており、スプリンクラーヘッド着脱用レンチの中心軸と平行な方向に延出された所定高さを有する段部として構成可能である。
これによれば、係合確認部を段部として構成したことで、カップ材の開口端が係合確認部の段部端面に載置された状態においては本体の係合部とスプリンクラーヘッド着脱用レンチが係合しており、カップ材の開口端が係合確認部の段部端面に載置していない場合は、係合状態が不完全であると判断できる。
【0012】
また、段部の高さが天井下面に対するヘッドの取り付け範囲として利用でき、スプリンクラーヘッドの本体を給水配管へ取付ける際に高さ調整作業の目安となるので、スプリンクラーヘッドの高さ調整の精度や作業性が向上する。
【0013】
前記本発明については、本体のノズル出口側に設置した感熱分解部を覆い隠す保護キャップとの係合部を設けることができる。
これによれば、保護キャップとスプリンクラーヘッド着脱用レンチが係合可能となり、スプリンクラーヘッド着脱用レンチ内でスプリンクラーヘッドが傾いたり、空回りすることを防ぎ、スプリンクラーヘッド着脱用レンチ内にスプリンクラーヘッドを安定して固定できる。従って給水配管へスプリンクラーヘッドを着脱する時の作業性が向上する。
【0014】
保護キャップとの係合部はスプリンクラーヘッド着脱用レンチの周面や底面に設けることができ、係合状態をスプリンクラー着脱用レンチの外部から目視可能な位置に設置することも可能である。具体的には、スプリンクラーヘッド着脱用レンチの外周面に保護キャップとの係合部を設けることで構成可能である。あるいは、スプリンクラーヘッド着脱用レンチの底面に貫通して保護キャップとの係合部を設けても構成することができる。
【0015】
前記本発明については、係合確認部と爪がスプリンクラーヘッド着脱用レンチの筒軸と平行な同一線上に配置することができる。
これによれば、作業者がカップ材内部にスプリンクラーヘッド着脱用レンチの爪部分を挿入した状態において係合確認部の位置により爪の位置を目視により認識することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、スプリンクラーヘッドの本体とスプリンクラーヘッド着脱用レンチの係合状態を目視によって容易に確認可能となり、スプリンクラーヘッドを給水配管へ取付け・取外し時の作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a):本発明のスプリンクラーヘッド着脱用レンチの側面図、(b):(a)のZ−Z断面図
【図2】スプリンクラーヘッドの断面図
【図3】図2のスプリンクラーヘッドの本体の正面図
【図4】図3の側面図
【図5】感熱分解部の断面図
【図6】感熱分解部の分解斜視図
【図7】シリンダー・プランジャーの分解断面図
【図8】図2のスプリンクラーヘッドの施工時における断面図
【図9】図8のX−X断面図
【図10】(a):スプリンクラーヘッドに保護キャップを装着した状態の断面図、(b):(a)の底面図
【図11】図10の保護キャップとスプリンクラーヘッド着脱用レンチの側面図
【図12】スプリンクラーヘッドを給水配管に接続する際の断面図
【図13】給水配管に接続されたスプリンクラーヘッドを取外す際の断面図
【図14】給水配管に接続されたスプリンクラーヘッドにスプリンクラーヘッド着脱用レンチを係合させた状態の側面図
【図15】従来のスプリンクラーヘッドの断面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のスプリンクラーヘッド着脱用レンチ(以下、「レンチ」に省略)は、スプリンクラーヘッドのカップ材の底面と係合する構造である。以下にレンチの構造を説明する。
【0019】
図1に示すレンチRは筒状であり、一端にはスプリンクラーヘッドS1のサポートカップ底面と係合可能な爪R1が均等間隔で複数形成されている。各々の爪R1の外周面下方には係合確認部として段部R2が外方に突出して形成されている。爪R1と段部R2はZ−Z直線上に配置されており、Z−Z直線はレンチRの筒軸Yと平行な位置関係となっている。
【0020】
上記の構成としたことで、前述の特許文献1のスプリンクラーヘッド(図15)にレンチRを用いる場合に、爪R1が筒部材Aの中に挿通され爪R1が目視できない状態でも段部R2の位置により爪R1の位置を作業者が把握することができる。
【0021】
段部R2の代わりに、爪R1から筒軸Yと平行に他端側へ伸びる線をレンチRの外周面に凹凸により設けることもできる。あるいは前述の線を凹凸ではなく印刷や塗装により設けることも可能である。
【0022】
段部R2はレンチRの筒軸Yと平行な方向に所定の高さR3を有している。これは段部の高さR3が天井Wの下面に対するスプリンクラーヘッドS1の取り付け範囲を示しており、スプリンクラーヘッドS1の本体を給水配管へ取付ける際に高さ調整作業の目安となるので、スプリンクラーヘッドS1の高さ調整の精度や作業性を向上することができる。
【0023】
さらに各々の段部R2の間には刻印や塗装、印刷等によって取り付け範囲を示す表示を行うことができる。図1(a)においては突起TによりレンチRの外周面に取り付け範囲を示している。
【0024】
また各々の爪R1の間には切欠きが形成されており、この切欠きが後述する保護キャップ30との係合部R4となっている。切欠きの形状は保護キャップ30の側面に形成された突出部31の形状と略等しく、保護キャップ係合部R4に突出部31を係合することができ、保護キャップ30を装着したスプリンクラーヘッドS1をレンチR内に安定して固定することができる。
【0025】
レンチRの爪R1が形成された側と反対側の端は底面となっており、該底面にはレンチハンドルが接続可能な角穴R5が穿設されている。
【0026】
続いてレンチRと係合可能なスプリンクラーヘッドS1の構造について説明する。
【0027】
スプリンクラーヘッドS1は、本体1、弁体3、感熱分解部4、デフレクター5、サポートカップ6(カップ材)、カバープレート7を備えており、コンシールド型スプリンクラーヘッドとして構成されている。
【0028】
図2から図4に示す本体1は中空状であり、一端は充水された配管と接続可能な牡ネジが形成された配管接続部1Aとなっている。配管接続部1Aの他端側は放水口1Bとなっている。放水口1Bの端は弁体3によって閉塞されている。
【0029】
配管接続部1Aと放水口1Bの間には外周部の断面形状が多角形であるサポートカップ係止部1Cが形成されている。サポートカップ係止部1Cより放水口1B側には、サポートカップ係止部1Cの外周部より大きな外周を有する鍔部が形成されており、その鍔部の縁から放水側に向けて筒状のフレーム部2が形成されている。本体1は前述の配管接続部1Aと配管接続部1Aより大きな外周面を有するフレーム部2とで構成されている。
【0030】
フレーム部2の外周横断面形状は、円の2箇所を平行に切欠いた形状をしており、具体的には切欠かれた2箇所の直線部と各直線部の間の円弧部とが形成されている。従ってフレーム部2の外周面には断面円弧状の曲面部2Aと断面直線状の平面部2Bが形成されている。平面部2Bはフレーム部2の外周面を配管接続部1Aの側から後述する梁状部2Jまで切り欠くように形成された切欠面部として形成されており、そこに開口2Eが形成されている。フレーム部2の下部の外周断面形状は、平面部2Bが無くなり曲面部2Aと同じ半径寸法である円形となっている。即ち平面部2Bの下方にはフレーム部2の周方向に沿って架設した円弧状部分でなる梁状部2Jが形成されている。この梁状部2Jはフレーム部2の筒軸を中心とする対向位置に形成されている。
【0031】
フレーム部2の内周下部(曲面部2Aの下部と梁状部2Jの内周面)には内側に向かって拡張して形成された内方フランジ2Cが形成されている。曲面部2Aの下部に位置する内方フランジ2Cにはレバー挿通溝2D、2Dが形成されている(図2)。
【0032】
レバー挿通溝2Dから略90°回転したフレーム部2の平面部2Bには開口2Eが形成されている。開口2Eはフレーム部2の内側を曲線部2Aの外径寸法より小さく且つ2つの平面部2B間の寸法より大きい径寸法で切削することで形成される。
【0033】
開口2Eの下方に位置する梁状部2Jの内方フランジ2Cは、後述する感熱分解部4のレバー11が係止されるレバー係止部2Fとなる。開口2Eの下方の梁状部2Jにレバー係止部2Fを設けたことで、レバー係止部2Fに放水口1B側からフレーム部2の下端側へ荷重を印加すると、梁状部2Jは印加された荷重によって弾性変形するが、開口2Eを設けない場合と比較して梁状部2Jの弾性変形による変形量を大きくすることができる。
【0034】
レバー挿通溝2Dの外周側にはフレーム部2の下端より下方へ垂下して形成されたデフレクター係止部2Gが形成されている。フレーム部2と放水口1Bとの境には、弁体3が収容可能な段部2Hが形成されている。段部2Hにより弁体3が振動や衝撃等によって放水口1Bから位置ずれした際の移動を段部2H内に留めて弁体3が放水口1Bから位置ずれして放水口1B内の水が漏れることを防止している。
【0035】
弁体3は円盤形状であり、前述の段部2Hに収容される。弁体3は後述するコンプレッションスクリュー21により放水口1Bの端に押圧され放水口1Bを閉塞している。
【0036】
感熱分解部4はフレーム部2の梁状部2Jに形成された内方フランジ2C(レバー係止部2F)に係止され、火災時には火災の熱によって分解作動して弁体3を解放する。感熱分解部4は、レバー11、支持板12、バランサー13、シリンダー14、プランジャー15、低融点合金16、セットスクリュー17から構成される。
【0037】
感熱分解部4は図5に示すようなユニット部品として構成され、ユニット部品として保管、運搬が可能である。スプリンクラーヘッドの組立時においても図5で示すユニット部品の状態で本体1に組み込まれる。
【0038】
レバー11は、一対で用いられており一端が内方フランジ2Cに係止され外方に屈曲した形状をしている。レバー11の上部には左右対称に設けられた突起11Aが形成され(図6)、下部には矩形の穴11Bが穿設されている。一対のレバー11の間には支持板12とバランサー13が係止され、支持板12は突起11Aと係止し、バランサー13は下部の穴11Bに係止される。バランサー13の中心部には穴13Aが穿設されており、該穴13Aにシリンダー14が挿入される。
【0039】
シリンダー14は円筒形状をしており、内部には段が形成され、大径部14Aと小径部14Bが形成されている。大径部14Aには円環状の低融点合金16が収容されている。また大径部14A側の端には鍔部14Cが形成されており、該鍔部14Cがバランサー13の穴13Aと係合する。小径部14Bの内径は環状の低融点合金16の内径と略等しい。
【0040】
小径部14Bの先端はヒートコレクター18、19を挟んだ状態で折り曲げられ、ヒートコレクター18、19がシリンダー14に設置される。ヒートコレクター18、19は熱伝導性が良好な銅や銅合金等の金属から形成され、火災による熱を吸収してシリンダー14内の低融点合金16に伝える作用を有する。
【0041】
プランジャー15の外周部は段により大径部15Aと小径部15Bが形成されている。大径部15の外径はシリンダー14の大径部14Aの内径より僅かに小さく形成される。小径部15Bの外径はシリンダー14の小径部の内径および低融点合金16の内径より僅かに小さく形成される。
【0042】
プランジャー15は、シリンダー14の大径部14A側から挿通され、小径部15Bと、大径部15Aと小径部15Bの境の段部15Cとが低融点合金16に接触する。プランジャー15をシリンダー14に挿通した状態において、プランジャー15の外周面はシリンダー14Bおよび低融点合金16の内周面と摺動可能となっている。
【0043】
プランジャー15には貫通穴15Dが穿設されており、貫通穴15Dの中間にはセットスクリュー17の先端が接触する段部15Eが形成されている。
【0044】
セットスクリュー17は筒形をしており外部には牡ネジ17Aが螺刻されている。牡ネジ17Aを支持板12の牝ネジ12Aに螺入すると、セットスクリュー17の先端がプランジャー15の段部15Eを押圧するので低融点合金16はプランジャー15の段部15Eとシリンダー14の底部14Dにより圧縮方向の力が作用した状態にある。
【0045】
また一対のレバー11に係合した支持板12とバランサー13もレバー11との係止が強まる方向へ力が印加され、レバー11と支持板12、バランサー13の係合状態が保持される。これにより感熱分解部4がユニットとして構成される。
【0046】
感熱分解部4と弁体3の間にはサドル20が設置される。サドル20は金属の板材から形成されており、一面には一対のレバー11が係合する凹部20Aが形成されている。凹部20A、20Aの間には、牝ネジ20Bが螺刻されており、該牝ネジ20Bにはコンプレッションスクリュー21が螺入されている。
【0047】
コンプレッションスクリュー21を感熱分解部4側から弁体3に向かって牝ネジ20Bに螺入すると、コンプレッションスクリュー21の先端が弁体3を押圧して、弁体3が放水口1Bの端に押圧され放水口1Bを閉塞するとともに、一対のレバー11が係止されているフレーム部2の内方フランジ2Cを下方に押圧する。これによって梁状部2Jが弾性変形し極僅かな変位が生じる。このような梁状部2Jのたわみによる変位によって、分解作動時に感熱分解部4の構成部品をフレーム部2の外にはじき飛ばすバネ力が生じる。
【0048】
デフレクター5は、平板状で周囲に複数のスリット5Aが形成されている。デフレクター5にはガイドピン5Cが嵌合される穴5B、5Bが穿設されており、該穴5Bにガイドピン5Cの一端が挿通され、カシメ固定される。ガイドピン5Cは本体1のデフレクター係止部2Gに穿設された穴5Eに挿通されている。ガイドピン5Cは穴5Eに挿通された状態で摺動可能である。ガイドピン5Cの他端側には鍔部5Dが形成されており、本体1のデフレクター係止部2Gの穴5Eの端面に係止可能である。
【0049】
サポートカップ6(カップ材)は、本体1のフレーム部2の外側を覆う有底円筒形状の部材である。サポートカップ6の底部6Aには前述の本体1のサポートカップ係止部1Cと嵌合可能な開口6Bが形成されている。サポートカップ係止部1Cと開口6Bを嵌合させることで、サポートカップ6が本体1に対して回転することを防止できる。
【0050】
開口6Bの周縁には外側へ向かって立設した筒状部6Cが形成されている。筒状部6Cの端面の位置はサポートカップ係止部1Cの端面より配管接続部1A側にあり、筒状部6Cの端は本体1の配管接続部1Aとサポートカップ係止部1Cとの間の括れ部1D付近に位置する。筒状部6Cの根元の数箇所に切り込みを入れた後、切り込みの上部を外周側から括れ部1D側に押圧して切り込みの上部を括れ部1D側に変形させ係合部6Dを形成することで係合部6Dと括れ部1Dが係合され、サポートカップ6を本体1に固定設置することができる。
【0051】
サポートカップ6の底面内側には前述の開口6Bと同様な開口が形成されたベースプレート6Eが設置されている。またサポートカップ6の底面6Aの周縁付近には均等間隔で複数の開口6Fが穿設されている。開口6Fはサポートカップの底面6Aから側面6Gにまで及んでいる。側面6Gの端面側には螺旋溝6Hが形成されている。
【0052】
ベースプレート6Eを介してサポートカップ6の開口6Bと本体1のサポートカップ係止部1Cを嵌合させると、図9にて点線で示すように本体1のデフレクター係止部2Gは2つの開口6F、6F間に配置される。これにより、デフレクター係止部2Gの穴5Eに挿通されるガイドピン5Cをサポートカップ6の底面側に移動させた際には、鍔部5Dがベースプレート6Eに接触するのでガイドピン5Cは開口6Fより上方への移動を阻止される。さらに、ガイドピン5Cの下端側に設置されたデフレクター5が感熱分解部4のヒートコレクター19と干渉することを防止できる。
【0053】
カバープレート7は、サポートカップ6内の本体1や感熱分解部4、デフレクター5を覆い隠す薄板状の蓋7Aと、円筒形状のリテーナー7Bから構成される。カバープレート7は、本体1の配管接続部1Aを消火設備配管に接続した後にサポートカップ6に接続されることから、前述の本体1やサポートカップ6とは別部品として組立てられる。
【0054】
蓋7Aは円盤形状であり材質は熱を伝播しやすい銅や銅合金を用いる。リテーナー7Bは筒状であり下端から垂下した複数の脚の先端が折り曲げられ、蓋7Aとの接続面7Cが形成されている。接続面7Cと蓋7Aは低融点合金7Dにより接合される。低融点合金7Dは前述のシリンダー14内の低融点合金16より融点が低いものを用いる。
【0055】
リテーナー7Bの周面には前述のサポートカップ6の螺旋溝6Hと螺合可能な突起7Eが形成されている。該突起7Eはリテーナー7Bの周面に切り込みを入れ、突起7Eが斜め下方に突出するように形成されている。
【0056】
スプリンクラーヘッドS1には、図10に示すように感熱分解部4を外的衝撃から保護するための保護キャップ30が装着される。
【0057】
図10および図11に示す保護キャップ30は有低円筒形状をしており、側面には外周方向へ延出した突出部31が複数形成されている。該突出部31の先端は前述の開口6Fの縁に係合されるもので、設置箇所および位置が開口6Fと対応している。突出部31は2つの側面部32と、側面部32、32の間の外面部33から構成されている。
【0058】
側面部32の先端部32Aは、保護キャップ30の開口部(図中上方)よりも突出して形成されており、サポートカップ6の開口6Fの間の梁部6Jの縁に係止される。先端部32Aには梁部6Jとの係合状態を維持可能な段32Bが形成されている。保護キャップ30がサポートカップ6の梁部6Jに係合されたことでサポートカップ6の下端開口から上端の底部6Aに穿設された開口6Fまで貫通可能な空間35が存在する。また保護キャップ30の外面部33はサポートカップ6の内周面と近接して設置される。
【0059】
図10(b)は、図10(a)のスプリンクラーヘッドを保護キャップ30底面側から見た状態を表している。図10(b)において、保護キャップ30の突出部31の間にサポートカップ6の開口6Fへ貫通可能な空間35が形成されており、該空間35にレンチRの爪R1が挿通可能な状態となっている。該空間35に挿通させたレンチRは保護キャップ30の側面部32を介して開口6Fの縁(梁部6Jの縁)に係合可能である。従って、スプリンクラーヘッドS1が保護キャップ30を装着した状態で、レンチRにより給水配管への取付けを行なうことができる。
【0060】
また、レンチRの先端の爪R1を空間Sに挿通させる際に、突出部31の側面部32、32によって爪R1が開口6Fに導かれ、側面部32、32がガイドの役割をすると共に、レンチRのキャップ係合部R4が突出部31の側面部32と係合され、レンチR内に保護キャップ30を装着したスプリンクラーヘッドS1が安定して配置される。
【0061】
次に、レンチRを用いてスプリンクラーヘッドを給水配管に接続する手順について説明する。
【0062】
先ず、レンチR内に保護キャップ30が装着されたスプリンクラーヘッドS1を挿入する(図12)。レンチRに保護キャップ30を挿入すると保護キャップ30の突出部31がレンチRの保護キャップ係合部R4と係合するとともに爪R1はサポートカップ6の開口6Fへ挿通される。また、サポートカップ6の開口端はレンチRの段部R2の端面に載置される。
【0063】
この状態でサポートカップ6の開口6Bから突出している牡ネジ1Aを図8にて二点鎖線で示す給水配管に螺合させる。具体的には図12のレンチRを回転させるとレンチR内のスプリンクラーヘッドS1が供回りして牡ネジ1Aが給水配管に螺合する。その際、レンチRの外周面の段部R2の高さR3の範囲内に天井Wの下面が位置するように調整する。この位置調整によって室内に設置されるスプリンクラーヘッドS1の設置高さを所定範囲内に均一化することができる。
【0064】
最後に保護キャップ30をスプリンクラーヘッドS1から取外し、カバープレート7をサポートカップ6の螺旋溝6Hに螺入させ、カバープレート7の蓋7Aが天井Wに近接する位置に調整する(図1)。これによりスプリンクラーヘッドの設置が完了する。
【0065】
続いて、天井裏の給水配管に設置されているスプリンクラーヘッドをレンチRによって取外す手順について説明する。
【0066】
スプリンクラーヘッドS1を取外す前に給水配管内の水は排水しておく。次にカバープレート7を回転させてリテーナー7Bをサポートカップ6から取外してレンチRをサポートカップ6内に挿通させる。その際、図13に示すように下方に延出しているガイドピン5Cの位置にキャップ係合部R4を沿わせてレンチRをサポートカップ6内に挿通させるとサポートカップ6の開口6Fの位置に爪R1が挿通される(図14)。
【0067】
サポートカップ6の開口端がレンチRの段部R2の端面に載置されていることを確認してレンチRを牡ネジ1Aが緩む方向へ回転させる。レンチRの回転とともにスプリンクラーヘッドS1も回転し、牡ネジ1Aが給水配管から外れる。これによりスプリンクラーヘッドの取り外し作業が完了する。
【符号の説明】
【0068】
R スプリンクラーヘッド着脱用レンチ
R1 爪
R2 段部
R3 段部の高さ
R4 保護キャップとの係合部
R5 角穴
S1 スプリンクラーヘッド
1 本体
3 弁体
4 感熱分解部
5 デフレクター
6 サポートカップ(カップ材)
6F 開口
7 カバープレート
30 保護キャップ
31 突出部
35 空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にノズルを有しており給水配管とネジ接続される本体が天井内に設置され、本体の外周部を覆う有底円筒形状のカップ材の底面側が本体外部に係合されており、カップ材の底面付近には本体を給水配管へ接続するためのレンチ係合部が設置されたスプリンクラーヘッドに用いられるスプリンクラーヘッド着脱用レンチであり、筒形状で先端部にはレンチ係合部と係合する爪を備え、外周部に爪とスプリンクラーヘッドの係合状態を確認可能な係合確認部が設置されていることを特徴とするスプリンクラーヘッド着脱用レンチ。
【請求項2】
係合確認部はスプリンクラーヘッド着脱用レンチの外方に突出して形成しており、スプリンクラーヘッド着脱用レンチの中心軸と平行な方向に延出された所定高さを有する段部である請求項1記載のスプリンクラーヘッド着脱用レンチ。
【請求項3】
本体のノズル出口側に設置した感熱分解部を覆い隠す保護キャップとの係合部が設けられた請求項1または請求項2記載のスプリンクラーヘッド着脱用レンチ。
【請求項4】
係合確認部と爪がスプリンクラーヘッド着脱用レンチの筒軸と平行な同一線上に配置されている請求項1から請求項3の何れか1項記載のスプリンクラーヘッド着脱用レンチ。
【請求項1】
内部にノズルを有しており給水配管とネジ接続される本体が天井内に設置され、本体の外周部を覆う有底円筒形状のカップ材の底面側が本体外部に係合されており、カップ材の底面付近には本体を給水配管へ接続するためのレンチ係合部が設置されたスプリンクラーヘッドに用いられるスプリンクラーヘッド着脱用レンチであり、筒形状で先端部にはレンチ係合部と係合する爪を備え、外周部に爪とスプリンクラーヘッドの係合状態を確認可能な係合確認部が設置されていることを特徴とするスプリンクラーヘッド着脱用レンチ。
【請求項2】
係合確認部はスプリンクラーヘッド着脱用レンチの外方に突出して形成しており、スプリンクラーヘッド着脱用レンチの中心軸と平行な方向に延出された所定高さを有する段部である請求項1記載のスプリンクラーヘッド着脱用レンチ。
【請求項3】
本体のノズル出口側に設置した感熱分解部を覆い隠す保護キャップとの係合部が設けられた請求項1または請求項2記載のスプリンクラーヘッド着脱用レンチ。
【請求項4】
係合確認部と爪がスプリンクラーヘッド着脱用レンチの筒軸と平行な同一線上に配置されている請求項1から請求項3の何れか1項記載のスプリンクラーヘッド着脱用レンチ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
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【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−239572(P2012−239572A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111086(P2011−111086)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000199186)千住スプリンクラー株式会社 (87)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000199186)千住スプリンクラー株式会社 (87)
【Fターム(参考)】
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