説明

スプリンクラーヘッド

【課題】 グラスバルブの感度を維持しつつ、天井面からの露出部分を極力少なくして意匠的な見栄えの良いスプリンクラーヘッドを得ること。
【解決手段】 グラスバルブの上半部の周囲を覆う筒状のデフレクター部を設けると共に、該デフレクター部の周囲に複数の開口部を均等間隔で設け、上記デフレクター部の内部に上記グラスバルブの破壊時に落下してきた上記弁体を受け止めて支持する弁体支持部を設け、上記グラスバルブ支持フレームは上記デフレクター部の下部から下方向けて設けられ、当該デフレクター部の下側において上記フレームの下端中央部を以って上記グラスバルブの下端部を支持するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火設備として用いられるスプリンクラーヘッドに関するものであり、特にグラスバルブを用いたスプリンクラーヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱感知ヒューズとしてグラスバルブを使用したスプリンクラーヘッドは、ヘッドのフランジ部から下方向きにグラスバルブを複数のグラスバルブ支持フレームで保持し、上記天井面からグラスバルブ及び上記フレームの全てが露出した状態で上記天井面に設置する形式のものが提案されている(特許文献1)。
【0003】
また、意匠的な見栄えを良くするという要請から、グラスバルブの略半分を天井内に埋め込み、天井面からの露出を小さくしたスプリンクラーヘッド(特許文献2)、或はグラスバルブの略半分が天井内に位置するように構成し、グラスバルブの感熱動作を促進するためにグラスバルブを機械的に破壊する損傷手段を設けたスプリンクラーヘッド(特許文献3)等が提案されている。
【0004】
一方、散水時にスプリンクラーヘッドの高さに拘わらず消火水の散水範囲を均一化する目的で、散水用デフレクターにスリット穴を設けたスプリンクラーヘッドが提案されている(特許文献4)。
【0005】
【特許文献1】特開平8−38643号公報
【特許文献2】特開平11−285547号公報
【特許文献3】特開2001−61988号公報
【特許文献4】特開2001−95944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1の技術は、グラスバルブの感度を維持するため、グラスバルブの全てが天井面から下方に露出する構成となっており、このため天井面に取り付けた際の意匠的な見栄えが悪いという課題があった。
【0007】
上記特許文献2の技術は、上記特許文献1の課題を解決すべく、グラスバルブの略半分を天井内に埋め込んで天井面からの露出を少なくし意匠的な見栄えを向上したものであるが、グラスバルブを天井内に埋め込むと、グラスバルブの熱感知の感度が悪化するという課題がある。
【0008】
そこで、特許文献3のヘッドはグラスバルブの機械的な損傷手段を設けることにより、感熱動作を促進する構成を備えるが、スプリンクラーヘッド自体の機械的構成が複雑化するし、地震等の震動により機械的な位置ずれが生じた場合等、動作の信頼性が低下するおそれがある。
【0009】
一方、特許文献4のようにスリット穴を設けたデフレクターを使用したスプリンクラーヘッドが提案されているが、熱感知部材として半田ヒューズを使用しており、グラスバルブには適用し難いものであった。
【0010】
本発明は、グラスバルブを使用したスプリンクラーヘッドに関し、露出部分を少なくして意匠的な見栄えを向上させ、同時に確実な熱感知動作を行い得るスプリンクラーヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記問題点を解決するために、
第1に、放水口を閉鎖する弁体と、グラスバルブ支持フレームの下端中央部との間にグラスバルブを立設状態で支持するスプリンクラーヘッドにおいて、上記グラスバルブの上半部の周囲を覆う筒状のデフレクター部を設けると共に、該デフレクター部の周囲に複数の開口部を均等間隔で設け、かつ上記デフレクター部の内部に上記グラスバルブの破壊時に落下してきた上記弁体を受け止めて支持する弁体支持部を設け、かつ上記グラスバルブ支持フレームは上記デフレクター部の下部から下方向けて設けられ、当該デフレクター部の下側において、上記フレームの下端中央部を以って上記グラスバルブの下端部を支持するものであることを特徴とするスプリンクラーヘッドにより構成される。
【0012】
上記弁体支持部は、例えばデフレクター部の底面(3e)により構成することができる。このように構成すると、グラスバルブの上半部が筒状のデフレクター部で覆われており、この状態で天井面の位置をこのデフレクター部の側面における上記開口部を塞がない位置に設定することにより、スプリンクラーヘッドの天井面からの突出を極力抑えながら、上記デフレクター部周囲の開口部からグラスバルブに熱を伝達することができ、感度の高いスプリンクラーヘッドを実現することができる。
【0013】
第2に、上記デフレクター部の開口部はデフレクター部の下半部側に設けられ、各開口部の上縁位置に天井面が位置し得るように構成したものであることを特徴とする上記第1記載のスプリンクラーヘッドにより構成される。
【0014】
このように構成すると、天井面の位置を上記開口部の上端に合わせることにより、スプリンクラーヘッドの天井面からの突出を最小減に抑えつつ、感度の高いスプリンクラーヘッドを実現することができる。
【0015】
第3に、上記弁体は上記放水口を閉鎖する閉鎖部と、該閉鎖部の周囲に設けられた上記放水口より大径の盤状部とにより構成し、上記盤状部の上面にその中心部から周縁方向に向かう下り傾斜面を形成し、当該下り傾斜面は、上記グラスバルブが破壊して上記弁体が上記弁体支持部に支持された状態において、上記デフレクター部の中央部から各開口部の方向に向かうように構成されていることを特徴とする上記第1又は2記載のスプリンクラーヘッドにより構成される。
【0016】
上記閉鎖部は、例えば弁体(8)のガスケット(11)とガスケット保持用突起(8a)により構成することができる。上記盤状部は例えばホルダー盤(8c)により構成することができる。このように構成すると、消火水がデフレクター部の開口部の形成された全周囲方向に誘導され、均一な放水を行うことができる。
【0017】
第4に、上記弁体における上記盤状部の盤面に複数の通水小孔を貫設し、上記グラスバルブが破壊して上記弁体が上記弁体支持部に支持された状態において、上記放水口から上記開口部を介して外方向に流れる放水経路と、上記放水口から上記通水小孔を介して下方向に流れる放水経路が形成されるものであることを特徴とする上記第1〜3の何れかに記載のスプリンクラーヘッドにより構成される。
【0018】
このように構成すると、上記開口部を介して360度の全周に亙って散水することができると共に、下方向にも散水することができ、効果的な消火を行うことができる。尚、通水小孔を均等間隔で設けることにより下方向にも均一に散水することができる。
【0019】
第5に、上記各開口部を側面開口部と下向開口部により構成し、上記開口部における側面開口部から下向開口部に至る一対の角部に面取部を形成し、これにより当該角部において上記開口部が外側方向に向けて拡径されていることを特徴とする上記第1〜4の何れかに記載のスプリンクラーヘッドにより構成される。
【0020】
このように構成すると、開口部の角度が外側方向に向けて拡径されているため、開口部から外方向に広がる方向に放水を行うことができ、これにより360度に亙って均一に散水することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、上述のように構成されるものであるから、グラスバルブを使用したスプリンクラーヘッドにおいて、該ヘッドの天井面からの突出を極力抑えて意匠的な見栄えを向上し得ると共に、感度の高いスプリンクラーヘッドを実現することができる。
【0022】
また、弁体に下り傾斜面を設けたので、消火水が該下り傾斜面を介して開口部方向に誘導され、デフレクター部の全周に亙り均一な散水を行うことができる。
【0023】
また、弁体に設けられた通水小孔を介して下方にも散水することができ、効果的な消火を行うことができる。
【0024】
また、開口部の角部が外側方向に向けて拡径されているため、開口部から外方向に広がる方向に放水を行うことができ、これにより360度に亙って均一に散水することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0026】
図1、図2は本発明に係るスプリンクラーヘッド1を示すものであり、これらの図において、2は上記ヘッド1の本体であり、図示しないスプリンクラー配管に螺合するための雄螺子2a’が形成された円筒状雄螺子部2aと、該雄螺子部2aの下端に設けられ当該雄螺子部2aよりも大径のナット部2bとから構成されている。この本体2はその中心部に上下方向に貫通する通水路2cが形成されており(図3参照)、上記本体2の下面2d中央部にはボス部2eが下方向けて突出形成され、上記通水路2cは該ボス部2e中央を下向きに貫通している。この通水路2c下端のボス部2eに放水口2e’が形成されている。
【0027】
また、上記ナット部2bの内周には、上記下面2dに至る雌螺子部2b’が形成されており、当該雌螺子部2b’には後述のデフレクター3が螺合される。
【0028】
2e”は上記ボス部2eの放水口2e’周囲に設けられた円環状凹部であり、当該凹部2e”には後述のリング状ガスケット11が嵌合装着される。
【0029】
3はデフレクターであり、上部側のデフレクター部3aと、4本のグラスバルブ支持フレーム3cからなる下部側のフレーム部3bとから構成されている。上記デフレクター部3aは、上下開口の円筒状をなし、上側開口部3cの上端外周面に雄螺子部3a’が形成されており、該雄螺子部3a’を以って上記ナット部2bの上記雌螺子部2b’に螺合され、これにより上記デフレクター3は、上記本体2に一体的に結合されている。
【0030】
このデフレクター部3aの内周の下端には水平方向段状の底面3eが形成されており、当該底面3eの中央側に円形の中央開口部3dが開口形成されている。よって当該中央開口部3dの直径は上記上側開口部3cの直径より小であるが、上記本体2の上記放水口2e’の直径より大径になるように形成されている。
【0031】
また、グラスバルブ9の破壊時には放水口2e’を閉鎖していた弁体8が落下してくるが、上記底面3eは上記弁体8のホルダー盤8cの周縁を支持して当該弁体8を受け止める作用を有しており(図3(b)参照)、当該底面3eにより弁体支持部が構成されている。
【0032】
4は、上記デフレクター部3aの下端部外周に一定間隔をおいて全周に亙り複数個設けられた放水用の開口部である。これらの開口部4は、その1個の形状に着目すると、外周方向に開口した側面開口部4aと、下向きに開口した下向開口部4bにより構成されている。上記側面開口部4aは、上記外周面に上下方向に略縦長の長方形状に貫通して設けられており、当該開口部4aの上縁は、上記デフレクター部3aの上記ナット部2bから下方の側面部分の略半分の高さまで達している。
【0033】
上記下向開口部4bは、上記デフレクター部3aの下面3fにおいて下向きに略長方形状に開口しており、さらに当該下向開口部4bは上記下面3fを上記デフレクター部3aの中心部方向に開口され、その奥部側面4b’は下面3fの半径方向の略中央部まで至っている。これにより、上記下面3fの内側の上記中央開口部3dの周縁部には、上記下向開口部4bが開口されていない環状部3f’が形成されている(図1、図6)。
【0034】
そして上記開口部4は上記デフレクター部3aの全周に亙り一定間隔を以って複数個(本実施形態では16個)形成されている。
【0035】
さらに、上記開口部4の形状に着目すると、各々の開口部4の左右の先端角部に面取部4’が形成されている。よって、図5に示すように、上記開口部4における対向する先端角部が半径方向外側にテーパー状に広がった形状となっている。即ち、上記角部において上記開口部が外側方向に向けて拡径されている。かかる構成により、矢印B,B’に消火水の放水方向を示すように、1個の開口部4から放水される消火水の方向を左右に広げることができ、この結果デフレクター部3aの360度の全周に亙り満遍なく放水を行うことができる。即ち、隣接する開口部4,4の面取部4’、4’において、矢印B,B’方向の放水により、360度に亙り途切れることなく散水することができる。
【0036】
上記4本のグラスバルブ支持フレーム3cは、上記下面3fの環状部3f’において90度毎の間隔をおいた位置より下向きに設けられており、各フレーム3cはその途中で中心部方向に屈曲し、各フレーム3cの下端はデフレクター3の中央位置において一体的に集合して下端中央部5を形成している。この下端中央部5の中心には上下方向貫通孔が形成されその貫通孔内周には雌螺子部5aが形成されている。
【0037】
6は、グラスバルブ受部材であり、周囲に雄螺子部6aが形成されると共に上面に凹部6bが形成されている。このグラスバルブ受部材6は、その雄螺子部6aを以って上記中央受部5の雌螺子部5aに螺着され、その凹部6bを上記中央受部5の上面5bに臨出させている。
【0038】
8は円盤状の弁体であり(図4参照)、上面中央にガスケット保持用突起8aが突出形成されると共に、下面側の中央にはグラスバルブ保持用ボス8bが下向きに突出形成されており、火災警戒時においては該ボス8bの中心穴8b’内にグラスバルブ9の上端部が位置するように構成されている。上記ガスケット保持用突起8aには、リング状ガスケット11が嵌着されており、上記ガスケット11を上記放水口2e’の凹部2e”に嵌合することで、当該弁体8により上記放水口2e’を閉鎖し得るように構成されている。尚、上記ガスケット11とガスケット保持用突起8aにより上記放水口2e’を閉鎖する閉鎖部が形成されている。
【0039】
この閉鎖部の周囲、即ち上記ガスケット保持用突起8a部分の周囲には、上記放水口2e’の直径よりも大径の円盤状のホルダー盤(盤状部)8cが形成されている。このホルダー盤8cの上面側は、その断面図に示すように、盤面中央部から周縁にいくにつれて外周方向に下り傾斜となる下り傾斜面8c’が形成されており、水平な下面8’に対して周縁に行くにつれてその厚みが徐々に薄くなるように形成されている。
【0040】
この下り傾斜面8c’は、グラスバルブ9が破壊されて当該弁体8が上記底面3e上に落下したとき(図3(b)参照)、上記デフレクター部3a中央部から各開口部4の方向に下り傾斜となるような傾斜面により構成されている。これにより、放水口2e’から当該下り傾斜面8c’を介して各開口部4へ向かう放水経路Cが形成される。
【0041】
10は上記弁体8のホルダー盤8cの盤面に貫通形成された円形の通水小孔であり、等間隔で4個形成されている。この4つの通水小孔10の直径は、図3(b)に示すように、グラスバルブ9が破壊して弁体8が上記底面3e上に落下したとき、上記中央開口部3dの周縁より内側に開口10’が形成されるような大きさ(直径)に形成される。これにより、上記弁体8が上記底面3eに落下してその周縁を支持された状態において、消火水が上記通水小孔10の開口10’を介して下向きの放水経路Dが形成されるように構成されている。即ち、上記通水小孔10の大きさは、上記中央開口部3dの周縁より内側に開口10’が形成されるような大きさであればよく、円形には限定されないし、その数も4個に限定されない。
【0042】
このホルダー盤8cにおける通水小孔10の数の増減により、下向きの放水量を加減することができる。即ち、同一高さからの放水する場合においては、通水小孔10の数を増やすと下向きの放水量が増加して上記開口部4から半径方向への放水量(矢印C方向)が減少するため散水エリアE(図7)の面積が小さくなる。一方、通水小孔10の数を減らすと上記開口部4から半径方向への放水量が増加して散水エリアEの面積を大きくし得る。
【0043】
上記リング状ガスケット11は、上記ガスケット保持用突起8aの周縁に密着状態で嵌着されると共に、図3(a)に示すように、上記放水口2e’の凹部2e”に嵌合して上記ホルダー盤8と共に上記放水口2e’を下側から閉止するものである。
【0044】
上記グラスバルブ9は、上記弁体8により上記放水口2e’を閉鎖した状態で、その上端部を上記弁体8のボス8bで支持されると共に、その下端部を上記グラスバルブ受部材6の上記凹部6bに支持されており、これにより上記ボス8bと上記凹部6bとの間に立設した状態で支持される。火災警戒状態では、上記スプリンクラー配管内の消火水が上記本体2内に充満し、上記弁体8を介して上記グラスバルブ9に所定圧力が印加された状態となっている。
【0045】
上記フレーム部3bの4本のグラスバルブ保持フレーム3cは90度の間隔をおいて設けられており、各フレーム3c間には十分な間隔を有するように構成されている。さらに上記支持フレーム3cは、上記デフレクター部3aの下側に設けられている。これは、グラスバルブ9が破壊されたとき、その破片がデフレクター部3aの開口部4に極力入り込まないようにすると共に、上記破片が各フレーム3c間から容易に落下して当該破片が散水の障害とならないように考慮したものである。
【0046】
12は、上記中央受部5の下面側に設けられた集熱板であり、火災の熱を集熱する作用を有すると共に上記グラスバルブ9の保護並びに上記グラスバルブ9を隠して天井面Sの景観を良好に維持するためのものである。
【0047】
本発明のスプリンクラーヘッド1は、上述のように構成されるものであるため、該ヘッド1を天井面Sに設置する場合は、図2に示すデフレクター3のデフレクター部3aの周囲にリング状のシーリングプレート13を装着した状態で、当該ヘッド1を天井面Sに図2に示すように設置する。この場合、天井面Sは、図2に示す位置、即ち、デフレクター部3aの開口部4の側面開口部4aの上縁の高さに位置させることができる。この設置状態においてグラスバルブ9はその上端部が天井面Sの内側に位置しているため、スプリンクラーヘッド1の天井面Sから下側の露出部分(図2における長さh1)を少なくすることができる。
【0048】
さらに上記スプリンクラーヘッド1の上記露出部分h1において、上記グラスバルブ9の略上半部分が上記デフレクター部3a内に収納されている状態となるので、天井面S下における上記グラスバルブ9の露出部をさらに少なくすることができ、意匠的な景観を向上させることができる。即ち、円筒状のデフレクター部3aは、上記天井面Sから若干露出する程度なので、デフレクター部3aの露出部分が天井面Sと視覚的に一体化して、フレーム部3bのみが天井面Sから露出しているようなデザインとなり、全体としてはフレーム部3bのみ(図2における長さh2)が天井面Sから露出している感覚となる。よって、従来のグラスバルブ全体が露出しているスプリンクラーヘッドに比べて天井面Sにおける意匠的な景観を飛躍的に向上させることができる。
【0049】
さらに、このようにグラスバルブ9の露出を少なくしても、上記グラスバルブ9を覆う上記デフレクター部3aの全周に開口部4が複数形成されているため、火災発生時において、火災による熱は、上記各開口部4を介してグラスバルブに伝達され、グラスバルブ9の熱感知の感度が低下することはない。即ち、火災発生時においては、火災の熱はフレーム3cの間からグラスバルブ9に伝達されると共に、さらに上記デフレクター部3aの開口部4(側面開口部4a及び下向開口部4b)からもグラスバルブ9の全周に伝達されるので、グラスバルブ9の熱感知の感度は何ら低下することはない。即ち、グラスバルブ9を全部露出した場合と同等の感度を維持し得る。
【0050】
よって、火災発生時は、火災による熱が上記フレーム3cの間、及び上記デフレクター部3aの複数の開口部4からグラスバルブ9に伝達され、所定の温度に達すると、上記グラスバルブ9が破壊して、水圧により弁体8が底面3e上に落下する(図3(b)の状態)。
【0051】
すると、本体2の通水路2c内の消火水が放水口2e’から放水され、当該消火水は、ホルダー盤8cの上面の下り傾斜面8c’を伝って、上記デフレクター部3aの開口部4から360度の全周に亙り放水される。また、上記下り傾斜面8c’により上記放水口2e’からの落下する消火水の反射が抑えられ、消火水を円滑に開口部4方向に導くことができる。このとき、各開口部4には面取部4’が形成されているので、図5に示すように消火水は矢印A方向の半径方向外側に放水されると共に、矢印B,B’方向(拡散方向)にも放水される。よってデフレクター部3aの全周に亙り放水が途切れることがなく、360度の全周に亙り満遍なく円形状に散水を行うことができる(図7参照)。また、上記ホルダー盤8の上面は上記複数の開口部4の方向に向かう下り傾斜面8c’が形成されているので、消火水は上記下り傾斜面8c’によりデフレクター部3aの各開口部4方向に360度に亙って略均等に導かれる。
【0052】
さらに、上記放水口2e’から放水された消火水は、ホルダー盤8cの4つの通水小孔10の開孔10’から下方向けて放水される(矢印D方向)。この消火水は、上記フレーム3cの間から略下方向けて放水され、また通水小孔10が均等間隔で設けられているので、散水エリアEの内側にも均一に放水することができ、火災を確実に消火することができる。
【0053】
本発明は、上述のように構成されるものであるから、グラスバルブ9を使用したスプリンクラーヘッド1において、該ヘッド1の天井面Sからの突出を極力抑えて意匠的な見栄えを向上し得ると共に、従来型のスプリンクラーヘッドと同様の感度を有する高感度のスプリンクラーヘッドを実現することができる。また、グラスバルブ9の破片が散水障害となることをも防止することができる。
【0054】
また、弁体8に下り傾斜面8c’を設けたので、落下してくる消火水の反射を抑えて、消火水を下り傾斜面8c’を介して開口部4方向に誘導することができ、デフレクター部3aの全周から均一な散水を行うことができる。
【0055】
また、弁体8に設けられた通水小孔10を介して下方にも散水することができ、効果的な消火を行うことができる。また、通水小孔10の大きさ或は数を調整することにより、散水エリアEの大きさを調整することもできる。
【0056】
また、開口部4の角部が外側方向に向けて拡径されているため、開口部4から半径方向及び拡散方向に散水を行うことができ、これにより360度に亙って途切れることなく均一に散水することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係るスプリンクラーヘッドは、天井面に設置したとき天井面からの突出を極力抑えて意匠的な見栄えを向上することができると共にグラスバルブの感度を維持し得るため、各種のオフィスやショールーム、その他、個人住宅にも使用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係るスプリンクラーヘッドの斜視図である。
【図2】同上ヘッドの側面図である。
【図3】同上ヘッドの側面断面図であり、(a)は火災警戒状態、(b)はグラスバルブの破壊後の放水状態を示す。
【図4】弁体の斜視図である。
【図5】同上ヘッドのデフレクター部の開口部近傍の底面図である。
【図6】図2のX−X線断面図である。
【図7】同上ヘッドの散水状態を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1 スプリンクラーヘッド
2e’ 放水口
3a デフレクター部
3c グラスバルブ支持フレーム
3e 底面
4 開口部
4a 側面開口部
4b 下向開口部
4’ 面取部
8 弁体
8a ガスケット保持用突起
8c ホルダー盤
8c’ 下り傾斜面
9 グラスバルブ
10 通水用小孔
11 ガスケット
C,D 放水経路
5 下端中央部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放水口を閉鎖する弁体と、グラスバルブ支持フレームの下端中央部との間にグラスバルブを立設状態で支持するスプリンクラーヘッドにおいて、
上記グラスバルブの上半部の周囲を覆う筒状のデフレクター部を設けると共に、該デフレクター部の周囲に複数の開口部を均等間隔で設け、
かつ上記デフレクター部の内部に上記グラスバルブの破壊時に落下してきた上記弁体を受け止めて支持する弁体支持部を設け、
かつ上記グラスバルブ支持フレームは上記デフレクター部の下部から下方向けて設けられ、当該デフレクター部の下側において、上記フレームの下端中央部を以って上記グラスバルブの下端部を支持するように構成したものであることを特徴とするスプリンクラーヘッド。
【請求項2】
上記デフレクター部の開口部はデフレクター部の下半部側に設けられ、各開口部の上縁位置に天井面が位置し得るように構成したものであることを特徴とする請求項1記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項3】
上記弁体は上記放水口を閉鎖する閉鎖部と、該閉鎖部の周囲に設けられた上記放水口より大径の盤状部とにより構成し、
上記盤状部の上面にその中心部から周縁方向に向かう下り傾斜面を形成し、
当該下り傾斜面は、上記グラスバルブが破壊して上記弁体が上記弁体支持部に支持された状態において、上記デフレクター部の中央部から各開口部の方向に向かうように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項4】
上記弁体における上記盤状部の盤面に複数の通水小孔を貫設し、
上記グラスバルブが破壊して上記弁体が上記弁体支持部に支持された状態において、上記放水口から上記開口部を介して外方向に流れる放水経路と、上記放水口から上記通水小孔を介して下方向に流れる放水経路が形成されるものであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項5】
上記各開口部を側面開口部と下向開口部により構成し、上記開口部における側面開口部から下向開口部に至る一対の角部に面取部を形成し、これにより当該角部において上記開口部が外側方向に向けて拡径されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のスプリンクラーヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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