説明

スプリンクラーヘッド

【課題】安定的に作動し、信頼性に優れ、且つ、構造が簡素なスプリンクラーヘッドを提供する。
【解決手段】スプリンクラーヘッド10は、平常時には、封止板16で流路Fを密封することにより、消火用水Wを止水する。火災発生時には、火災による熱が感熱板26によって感知され、燃焼室24内に充填された燃焼剤28に伝熱される。これにより、自動着火成分を含む燃焼剤28が所定温度以上となると、燃焼剤28が着火し、爆圧若しくはガス圧によって封止板16が破断されて流路Fが開封される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災発生時に消火用水を散水して消火を行うスプリンクラーヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
スプリンクラーヘッドは、スプリンクラー配管における所定の位置に配設されている。このスプリンクラーヘッドは、平常時にはスプリンクラー配管の内部に充填された高圧の消火用水を止水し、火災発生時には高圧の消火用水を解放して散水し、消火を行う。一般にスプリンクラーヘッドは、弁体によりノズルを密封して止水を行う止水部と、感熱分解部とを有する構造となっている。感熱分解部は、平常時は弁体がノズルに押し付けられるように止水部を保持しており、火災発生時には火災による熱で作動分解して止水部の保持を解除する。これにより、弁体がノズルより開放されて消火用水が散水される。
【0003】
スプリンクラーヘッドの感熱分解部に使用される感熱材料としては、液体と低融点合金がある。液体の感熱材料としては、通常、アルコールやエーテル等の揮発性の液体が用いられる。このような液体を感熱分解部に使用したスプリンクラーヘッドはグラスバルブ式と称される。このグラスバルブ式のスプリンクラーヘッドでは、ガラス製のアンプル内に液体が少量の空気と共に充填されており、このアンプルが弁体を保持する。火災発生時には、内部の液体の気化によってアンプルの内圧が高まり、アンプルが破壊される。これにより、弁体が開放されて水が散水される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、感熱分解部に低融点合金を用いたスプリンクラーヘッドは、ヒュージブルリンク式と圧縮式とに分けられる。
【0005】
ヒュージブルリンク式のスプリンクラーヘッドは、2枚の金属板を低融点合金で接着したヒュージブルリンクを有するものである。このスプリンクラーヘッドでは、それぞれの金属板の端部にレバーが係合されており、一方のレバーが弁体を保持すると共に、もう一方のレバーがヘッド本体に接触して弁体を保持する力を支えている。火災発生時には、火災の熱で低融点合金が溶融し、ヒュージブルリンクが分離してレバーが外れることにより、弁体が開放されて水が散水される(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
一方、圧縮式のスプリンクラーヘッドは、低融点合金が充填されたシリンダーと、その低融点合金を圧縮するように押圧するプランジャーとを有するものである。このスプリンクラーヘッドでは、これらシリンダー及びプランジャーを含む多数の構成部品により組み上げられた感熱分解部が止水部を保持する構造となっている。火災発生時には、シリンダー内の低融点合金が溶融してプランジャーがシリンダー内に没入することにより、感熱分解部の構成部品がバランスを崩して分解し、止水部の保持が解除されて水が散水される(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−285547号公報
【特許文献2】特開平5−345047号公報
【特許文献3】特開2008−194481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
グラスバルブ式のスプリンクラーヘッドは、上述したようにアンプル内の液体が気化してその圧力でアンプルを破壊する構造である。このため、アンプルの厚さ・強度、内部の液体量・空気量等が多少相違するだけで、アンプルが破壊するまでの時間にばらつきが出てしまう。その結果、一定温度で必ず作動するとは限らず、安定性に欠けるという問題があった。
【0009】
一方、ヒュージブルリンク式のスプリンクラーヘッドは、感熱分解部に低融点合金を用いており、当該低融点合金は配合組成や配合比率等によって融点が定まっていることから、グラスバルブ式に比べて作動温度にばらつきが生じにくく、安定性に優れるという利点を有している。しかしながら、ヒュージブルリンクの低融点合金による接着部分には、弁体を密閉するための力が常時作用しているため、長期間経過する間に部品変形・劣化等によるクリープ現象が生じて接着部分が剥離してしまうおそれがあり、信頼性に欠けるという問題があった。
【0010】
他方、圧縮式のスプリンクラーヘッドは、ヒュージブルリンク式と同様に、低融点合金を用いているため作動温度は正確である。しかも、低融点合金をシリンダー内に充填してそれをプランジャーで押圧する構造であることから、長期間低融点合金に力が作用してもクリープ現象は生じず、信頼性にも優れている。しかしながら、圧縮式のスプリンクラーヘッドでは、感熱分解部が多数の精密な部品により精巧に組み上げられた構造となっているため、このような構造の複雑さに起因して以下のような問題が生じていた。すなわち、ヘッドに衝撃が加わった場合には、複雑に組み上げられた感熱分解部の構成部品同士の当たりにズレが生じたり、あるいは部品同士のなじみが変化する等の悪影響が生じ、止水部を保持する保持力が低下して水漏れを招くおそれがあり、衝撃に弱いという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、安定的に作動し、信頼性に優れ、且つ、構造が簡素なスプリンクラーヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、第1発明のスプリンクラーヘッドは、平常時にはスプリンクラー配管の内部に充填された高圧の消火用水を止水し、火災発生時には前記消火用水を散水して消火を行うスプリンクラーヘッドであって、前記スプリンクラー配管に接続されたノズルと、前記ノズルの先端に設けられたハウジングと、前記ノズル又は前記ハウジングの内部に設けられ、前記消火用水の流路を密封して止水を行う封止板と、を有し、前記ハウジングに、前記封止板により前記流路が密封された状態において、前記封止板の下流側に位置する燃焼室で燃焼剤を燃焼させることにより、前記流路を開封する開封装置を設けたことを特徴とする。
【0013】
本願第1発明のスプリンクラーヘッドは、平常時には、流路を密封する封止板によりスプリンクラー配管の内部に充填された高圧の消火用水を止水する。一方、火災発生時には、ハウジングに設けた開封装置が、流路が密封された状態において封止板の下流側に位置する燃焼室で燃焼剤を燃焼させることにより、流路を開封する。これにより、消火用水が散水されて消火が行われる。
【0014】
燃焼剤としては、火薬若しくはガス発生剤を用いることが可能であり、開封装置は、火薬であればその爆圧によって、ガス発生剤であればそのガス圧によって流路を開封する。ここで、開封装置の作動方式を、例えば火災による熱を検出するセンサ手段を別途設けてその作動信号により燃焼剤を燃焼させる方式とする場合には、作動温度はほぼ一定となる。また、例えば開封装置に感熱板を設け、この感熱板からの伝熱により自動着火成分を含む燃焼剤が所定温度となった時点で燃焼を開始する方式とする場合には、自動着火成分の種類やその配合比率等によって燃焼剤の燃焼開始温度が定まることから、作動温度にはばらつきが生じにくい。したがって、本願第1発明のスプリンクラーヘッドは、作動の安定性に優れている。また、燃焼剤の燃焼により瞬時に流路を開封できる構造のため、早期に消火を行うことができる。さらに、封止板の開封後には燃焼室内あるいは燃焼室周囲に消火用水を流入させて燃焼剤を冷却することができるため、燃焼剤の温度が必要以上に上昇することを防止でき、安全性が高い。
【0015】
また、平常時は封止板により流路を密封して止水する構造であるため、封止板を鋼等の強度が大きな材料で構成することで、高圧の消火用水による力が長期間作用しても、部品変形・劣化等によるクリープ現象の発生を防止することが可能となり、信頼性にも優れている。
【0016】
さらに、燃焼剤の燃焼により流路を開封する構造であるため、開封装置は封止板の下流側に燃焼剤を充填させた燃焼室を備えた構造とすれば足り、構造を大幅に簡素化することができる。その結果、圧縮式のように精密な部品を組み上げた構造とする必要がないため、衝撃に強い構造とすることができる。また、従来のスプリンクラーヘッドと異なり感熱分解部が分解して落下する構造でないため、作動時の部品飛散を最小限とすることができる。さらに、高い部品精度が不要であり、且つ、部品点数を少なくできることから、組立に要する工数やコストを削減することができる。
【0017】
以上のように、本願第1発明のスプリンクラーヘッドによれば、安定的に作動し、信頼性に優れ、且つ、構造を簡素にすることができる。
【0018】
第2発明のスプリンクラーヘッドは、上記第1発明において、前記開封装置は、火災による熱を感知する感熱板を有しており、前記感熱板からの伝熱により、自動着火成分を含む前記燃焼剤が所定温度以上となった際に、前記燃焼剤を燃焼させて前記流路を開封することを特徴とする。
【0019】
本願第2発明のスプリンクラーヘッドにおいては、開封装置が感熱板を有しており、この感熱板からの伝熱により自動着火成分を含む燃焼剤が所定温度以上となった際に、燃焼剤を燃焼させて流路を開封する。燃焼剤は、自動着火成分の種類やその配合比率等によって燃焼開始温度が定まることから、上記構成とすることで作動温度を安定させることができる。また、別途センサ手段を設けて作動信号により作動させる構造に比べ、センサ手段や回路・配線等が不要となるため、さらなる構造の簡素化及びコスト削減を図ることができる。さらに、感熱板に熱伝導率のよい材料を用いれば、火災による熱を燃焼剤に迅速に伝熱できるので、作動の安定性向上や早期消火に大きな効果を期待できる。
【0020】
第3発明のスプリンクラーヘッドは、上記第1発明において、前記開封装置は、火災による熱を検出するセンサ手段からの作動信号により、前記燃焼剤を燃焼させて前記流路を開封することを特徴とする。
【0021】
本願第3発明のスプリンクラーヘッドにおいては、火災による熱を検出するセンサ手段を別途設けておき、火災発生時にはこのセンサ手段が作動信号をスプリンクラーヘッドの開封装置に出力する。開封装置はこのセンサ手段からの作動信号を入力すると、燃焼剤を燃焼させて流路を開封する。このようにセンサ手段を用いることにより、ほぼ一定の作動温度でスプリンクラーヘッドを作動させることができるので、作動の安定性をさらに高めることができる。
【0022】
第4発明のスプリンクラーヘッドは、上記第1乃至第3発明のいずれかにおいて、前記封止板は、金属材料で構成され、前記ハウジングに溶接により固定されており、前記開封装置は、前記封止板を破断することにより前記流路を開封することを特徴とする。
【0023】
本願第4発明のスプリンクラーヘッドにおいては、開封装置が燃焼剤を燃焼させることにより封止板を破断させ、これによって流路を開封する。このように封止板を破断する構造とすることで、封止板による流路の密封を確実に解除することができる。また、金属材料で構成された封止板を溶接によりハウジングに堅固に固定して密封する構造であるので、例えば封止板をノズルの先端に押し付けて密封する構造のように、外部からの衝撃により封止板とノズルとの当たりにズレが生じるようなことがなく、水漏れが生じるおそれを大幅に低減できる。
【0024】
第5発明のスプリンクラーヘッドは、上記第4発明において、前記封止板は、破断溝を有しており、前記開封装置は、前記封止板を前記破断溝に沿って破断することにより前記流路を開封することを特徴とする。
【0025】
本願第5発明のスプリンクラーヘッドにおいては、予め封止板に破断溝が形成されており、開封装置は封止板を破断溝に沿って破断することにより流路を開封する。これにより、封止板の破断を円滑に行うことができるようになり、開封不良が生じることを抑制できる。また、破断溝の形態により、破断後の封止板の形状・大きさ・数等を調整することができるので、例えば開封後の流路の開口面積を調整して消火用水の通水量を調整する等が可能となる。さらに、破断溝の幅や深さ、長さ等に応じて、封止板の強度を調節できる効果もある。
【0026】
第6発明のスプリンクラーヘッドは、上記第1乃至第3発明のいずれかにおいて、前記開封装置は、前記燃焼室を内部に有し、前記封止板の少なくとも一部を上面で支持する略箱状の支持体を有しており、前記燃焼剤の燃焼により前記支持体を変形させ、前記封止板の支持を解除することにより前記流路を開封することを特徴とする。
【0027】
本願第6発明のスプリンクラーヘッドにおいては、開封装置が封止板の少なくとも一部を上面で支持する略箱状の支持体を有している。この支持体は、その内部に燃焼室を有しており、火災発生時には燃焼剤の燃焼により変形し、封止板の支持を解除する。これにより、封止板は消火用水の圧力によって破断され、流路が開封される。
【0028】
このような構造とすることにより、燃焼剤の燃焼を支持体の内部空間のみで行うことができるため、燃焼ガスや排煙が外部に排出されることを防止できる。
【0029】
第7発明のスプリンクラーヘッドは、上記第1乃至第6発明のいずれかにおいて、前記ハウジングは、側面における周方向複数箇所に所定間隔で形成された、前記消火用水を外部に放出する放水孔を有することを特徴とする。
【0030】
本願第7発明のスプリンクラーヘッドにおいては、火災発生時に流路が開封されると、スプリンクラー配管より供給された消火用水がノズル及びハウジング内の流路を通り、ハウジングの側面における周方向複数箇所に所定間隔で形成された放水孔を介して外部に放出される。このように、ハウジングの側面に設けた複数の放水孔から消火用水を周囲に放出する構造とすることで、例えば消火用水をノズルより下方に放出して散水板に衝突させて散水する構造に比べ、散水板に衝突させる前にある程度四方に分散することができるため、消火用水を効果的に分散することができる。
【0031】
第8発明のスプリンクラーヘッドは、上記第7発明において、前記放水孔より放出された消火用水を分散させる散水板を有することを特徴とする。
【0032】
本願第8発明のスプリンクラーヘッドにおいては、ハウジングの放水孔より周囲に放出された消火用水が、散水板に衝突してさらに分散される。これにより、消火用水を効果的に分散し、消火機能を向上することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、安定的に作動し、信頼性に優れ、且つ、構造を簡素にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態のスプリンクラーヘッドの概略構造を示す側断面図である。
【図2】スプリンクラーヘッドへ組み込んだ際に下側となる方向から見た封止板の外観構成を表す斜視図である。
【図3】スプリンクラーヘッドの動作状態を表す側断面図である。
【図4】封止板を円環状の支持部材に固定する場合のスプリンクラーヘッドの側断面図である。
【図5】支持部材と封止板の外観構成を概略的に表す斜視図である。
【図6】封止板を円環状の支持部材に固定する場合のスプリンクラーヘッドの動作状態を表す側断面図である。
【図7】封止板を支持する支持体を変形させて開封する場合のスプリンクラーヘッドの側断面図である。
【図8】封止板を支持する支持体を変形させて開封する場合のスプリンクラーヘッドの動作状態を表す側断面図である。
【図9】センサ手段からの作動信号により開封する場合のスプリンクラーヘッドの側断面図である。
【図10】センサ手段からの作動信号により開封する場合のスプリンクラーヘッドの動作状態を表す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において空間内の方向を示すために使用する「上」「下」は、各図における「上」「下」方向にそのまま対応する。
【0036】
図1は、本実施形態のスプリンクラーヘッド10の概略構造を示す側断面図である。また図2は、スプリンクラーヘッド10へ組み込んだ際に下側となる方向から見た封止板16の外観構成を表す斜視図である。
【0037】
本実施形態のスプリンクラーヘッド10は、湿式スプリンクラー設備に用いられる、いわゆる閉鎖式のスプリンクラーヘッドである。図示は省略するが、一般にスプリンクラー設備は、貯水槽等の水源、ポンプ、スプリンクラー配管、及びスプリンクラーヘッド等から構成される。スプリンクラーヘッドは、例えば天井内部に配設されたスプリンクラー配管の所定位置に取り付けられており、このスプリンクラー配管がポンプへと接続されている。湿式スプリンクラー設備においては、スプリンクラー配管に消火用水が充填されている。この消火用水はポンプにより常に加圧された状態に保持されており、その高圧の消火用水をスプリンクラーヘッド自体で止水している。火災が発生すると、スプリンクラーヘッドは高圧の消火用水を解放して散水し、消火を行う。スプリンクラーヘッドからの散水によりスプリンクラー配管内部の水圧が低下すると、ポンプが起動する。そして起動したポンプにより水源の消火用水がスプリンクラー配管内へと送水され、スプリンクラーヘッドからの散水が継続される。
【0038】
図1に示すように、スプリンクラーヘッド10は、ノズル12と、ハウジング14と、封止板16とを有している。ノズル12は、上下方向両端が開口した略円筒状の部材であり、ハウジング14は、上端が開口し、下端に底部14aを有する有底円筒状の部材である。ノズル12の上部の外周面にはねじ部(図示略)が形成されており、スプリンクラー配管の取付口(図示略)に螺合により接続される。また、ノズル12の下端である口部12aの内周面には雌ねじ部(図示略)が形成されており、ハウジング14の上部の外周面にはこれに対応した雄ねじ部(図示略)が形成されている。これらのねじ部が螺合部18において螺合することで、ハウジング14はノズル12の先端に接続されている。
【0039】
図2に示すように、封止板16は円板状であり、鋼等の強度が大きな金属材料で構成されている。この封止板16は、ハウジング14の上端に溶接により固定されており、ハウジング14がノズル12の口部12aに接続されることで、消火用水Wの流路Fを密封して止水する。このとき、封止板16の外周面にはOリング等のシール材(図示略)が設けられており、密封性を高めている。また封止板16の、スプリンクラーヘッド10に組み込まれた際に下側となる下面16aには、破断溝20が形成されている。この破断溝20は、後述する開封装置22による封止板16の破断を円滑に行うための溝であり、この例では封止板16を略二等分するようにその中心線となる位置に直線状に1本形成されている。破断溝20の幅や深さは、消火用水の圧力や後述する開封装置22の燃焼剤28の量等を考慮し、封止板16が適切な強度となるように調整されている。
【0040】
なお、上記では封止板16をハウジング14の上端に固定する構造としたが、ノズル12側に固定してもよい。あるいは、どちらにも固定せず、ノズル12の内側に円環状の受け部を形成し、このノズル12の受け部とハウジング14の上端部とで挟み込む形で封止板16を固定してもよい。
【0041】
また、破断溝20は必ずしも形成する必要はないが、封止板16の破断を円滑に行うために形成するのが好ましい。特に、破断溝20を形成することにより、破断後の封止板16の形状・大きさ・数等を調整することができるので、そのような目的に応じて、本数を増やしたり、屈曲・湾曲させたりといったように、破断溝20の形態を適宜設定してもよい。
【0042】
ハウジング14の径方向中心側には、開封装置22が設けられている。この開封装置22は、封止板16を破断することにより消火用水Wの流路Fを開封する装置であり、燃焼室24と、感熱板26とを有している。燃焼室24は、ハウジング14の底部14aを貫通して設けられており、封止板16の下流側に位置している。燃焼室24の内部には燃焼剤28が充填されており、燃焼室24の上端は封止板16の下面16a近傍で開口している。このような構造とすることにより、後述するように燃焼剤28の燃焼により発生する爆風やガスの大部分を封止板16に衝突させて、爆圧やガス圧を封止板16の破断に効果的に作用させることができる一方で、爆風若しくはガスの一部を、燃焼室24の上端と封止板16の下面16aとの隙間より燃焼室24の周囲に流出させて、後述する吸湿防止シール34の開封を行うことが可能となっている。
【0043】
燃焼室24の底部24aには、感熱板26が接触して設けられている。感熱板26は、熱伝導率の高い金属材料によって構成されており、火災による熱を感知し、その熱を燃焼剤28に伝熱する。
【0044】
燃焼剤としては、火薬若しくはガス発生剤あるいはそれらの両方を用いることができる。この燃焼剤は自動着火成分を含んでおり、感熱板26からの伝熱により所定温度以上となった際に着火し、火薬であれば爆圧により、ガス発生剤であればガス圧によって、封止板16を破断溝20に沿って破断する。なお、本実施形態の燃焼剤としては、欧州連合のRoHS(Restriction of Hazardous Substances)、日本版RoHSと呼ばれるJ−MOSSや中国版RoHS指令により指定された、鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭化ビフェニル、ポリ臭化ジフェニルエーテル等の有害物質が含まれない組成である火薬剤やガス発生剤が用いられる。
【0045】
ハウジング14の側面部14b(側面)には、消火用水Wを外部に放出する放水孔32が、周方向複数箇所に所定間隔で形成されている。これらの放水孔32は、火災発生時に封止板16が破断されて流路Fが開封されると、スプリンクラー配管より供給された消火用水Wをスプリンクラーヘッド10の周囲に放出する。なお、各放水孔32の内周面側には、吸湿防止シール34が貼られている。この吸湿防止シール34は、平常時に燃焼剤28が吸湿しないように放水孔32を密封する。火災発生時には、燃焼剤28の燃焼による爆圧若しくはガス圧により破裂し、放水孔32が開封される。
【0046】
燃焼室24の側面部24bには、放水孔32より放出された消火用水Wを分散させる散水板36が設けられている。この散水板36は、中心部に燃焼室24を貫通させる開口が形成された略円形の円板部36aと、この円板部36aの周囲に所定間隔で上向きに傾斜して設けられた突起部36bとを有している。放水孔32よりハウジング14の周囲に放出された消火用水Wは、散水板36の突起部36bに衝突することにより分散され、散水される。
【0047】
次に、上記構成であるスプリンクラーヘッド10の動作について図3を用いて説明する。図3はスプリンクラーヘッド10の動作状態を表す側断面図であり、図3(a)は平常時、図3(b)は着火時、図3(c)は開封後の状態を表している。
【0048】
図3(a)に示すように、平常時は、封止板16により流路Fが密封され、消火用水Wは止水されている。このとき、前述したようにハウジング14の放水孔32は吸湿防止シール34により密封されている。
【0049】
火災が発生すると、火災による熱が開封装置22の感熱板26によって感知され、燃焼室24内に充填された燃焼剤28に伝熱される。これにより、自動着火成分を含む燃焼剤28が所定温度以上となると、図3(b)に示すように、流路Fが密封された状態において封止板16の下流側に位置する燃焼室24内で燃焼剤28が着火される。これにより、燃焼剤28が火薬であれば爆風が、ガス発生剤であれば発生したガスが、燃焼室24の上端の開口から上方に放出されて封止板16の下面16aに衝突する。このとき、爆風若しくはガスの一部は、燃焼室24の上端と封止板16の下面16aとの隙間より燃焼室24の周囲に流出する。
【0050】
これにより、図3(c)に示すように、燃焼剤28の燃焼による爆圧若しくはガス圧によって、封止板16が破断溝20に沿って破断し、消火用水Wの流路Fが開封される。このとき、破断された封止板16は、溶接によりハウジング14の上端に固定された部分はそのままで、破断側が上方に押し上げられた状態となる。また、燃焼室24の周囲に流出した爆風若しくはガスにより、吸湿防止シール34が破裂して放水孔32が開封される。これにより、スプリンクラー配管から供給された消火用水Wが、ノズル12及びハウジング14内の流路Fを通り、放水孔32を介して外部に放出され、散水板36の突起部36bに衝突して散水される。なお、消火用水Wは燃焼室24内にも流入し、燃焼後の燃焼剤28を冷却する。
【0051】
以上説明した実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。すなわち、本実施形態のスプリンクラーヘッド10においては、火災発生時には、火災による熱が感熱板26によって感知され、燃焼室24内に充填された燃焼剤28に伝熱される。これにより、自動着火成分を含む燃焼剤28が所定温度以上となると、燃焼剤28が着火し、爆圧若しくはガス圧によって封止板16が破断されて流路Fが開封される。このとき、自動着火成分の種類やその配合比率等によって燃焼剤28の燃焼開始温度はほぼ一定に定まることから、スプリンクラーヘッド10の作動温度にはばらつきが生じにくい。したがって、スプリンクラーヘッド10は作動の安定性に優れている。また、燃焼剤28の燃焼により瞬時に流路Fを開封できる構造のため、早期に消火を行うことができる。さらに、開封後には燃焼室24内に消火用水Wを流入させて燃焼剤28を冷却することができるため、燃焼剤28の温度が必要以上に上昇することを防止でき、安全性が高い。
【0052】
またスプリンクラーヘッド10は、封止板16として鋼板等の強度が大きな金属板を用いており、この封止板16を溶接によりハウジング14に堅固に固定して、消火用水Wを止水する。これにより、高圧の消火用水Wによる力が封止板16に長期間作用しても、部品変形・劣化等によるクリープ現象の発生を防止することができ、信頼性にも優れている。
【0053】
さらに、燃焼剤28の燃焼により流路Fを開封する構造であるため、開封装置22は封止板16の下流側に燃焼剤28を充填させた燃焼室24を備えた構造とすれば足り、構造を大幅に簡素化することができる。その結果、圧縮式のように精密な部品を組み上げた構造とする必要がないため、衝撃に強い構造とすることができる。また、従来のスプリンクラーヘッドと異なり感熱分解部が分解して落下する構造でないため、作動時の部品飛散を最小限とすることができる。例えば本実施形態では、消火用水Wと共に飛散する部材は破裂した吸湿防止シール34のみである。さらに、高い部品精度が不要であり、且つ、部品点数を少なくできることから、組立に要する工数やコストを削減することができる。
【0054】
以上のように、本実施形態のスプリンクラーヘッド10によれば、安定的に作動し、信頼性に優れ、且つ、構造を簡素にすることができる。
【0055】
また次のような効果も得ることができる。すなわち、従来の低融点合金を用いたスプリンクラーヘッドでは、低融点合金として用いるはんだ合金に鉛やカドミウム等の有害物質が含まれる場合、環境への負担及び廃棄処理コストが増大するという問題があり、鉛やカドミウム等を含まない鉛フリーはんだ合金を用いた場合には、クリープ特性が劣り信頼性が低下するという問題があった。これに対し、本実施形態では、前述したように燃焼剤28として鉛やカドミウム等の有害物質を含まない火薬剤やガス発生剤を使用しており、その上で上述したようにクリープ特性にも優れている。したがって、環境への負担や廃棄処理コストを低減しつつ、信頼性を維持することができる。
【0056】
さらに、燃焼剤28の燃焼により封止板16を破断させるスプリンクラーヘッド構造としては、例えば燃焼室28を封止板16の上流側に設置する構造も考えられるが、本実施形態はこのような構造よりも次のような点で優れている。すなわち、この場合には爆圧を水中を通して封止板16に伝えることになるが、爆圧が直接消火用水中に伝わるため、上流側のスプリンクラー配管や他の機器等に圧力変動による悪影響を与えるおそれがある。本実施形態では燃焼室28を封止板16の下流側に設けるため、このような影響を抑制できる。また、封止板16の上流側に燃焼室28を設ける場合、燃焼室28が比較的上方に配置されるため、構造的に下端に設けた感熱板26からの伝熱による作動方式を取りにくくなる。このため、外部に設けたセンサ手段からの作動信号を受けて作動する方式を取ることになり、作動方式の選択の幅が狭まる。これに対し、本実施形態ではいずれの作動方式も選択することが可能であり、選択の幅が広い。特に、感熱板26からの伝熱による作動方式を選択できることに意義があり、後述するように構造の簡素化に大きな効果がある。
【0057】
また、本実施形態では特に、開封装置22が感熱板26を有しており、この感熱板26からの伝熱により自動着火成分を含む燃焼剤28が所定温度以上となった際に、燃焼剤28を燃焼させて流路Fを開封する。これにより、別途感熱センサを設けて作動信号により開封装置22を作動させる構造に比べ、感熱センサや回路・配線等が不要となるため、さらなる構造の簡素化及びコスト削減を図ることができる。さらに、感熱板26に熱伝導率のよい材料を用いるので、火災による熱を燃焼剤28に迅速に伝熱でき、作動の安定性向上や早期消火に大きな効果を期待できる。
【0058】
また、本実施形態では特に、開封装置22が封止板16を破断させて流路Fを開封する。このように封止板16を破断する構造とすることで、封止板16による流路Fの密封を確実に解除することができる。また、金属材料で構成された封止板16を溶接によりハウジング14に堅固に固定して密封する構造であるので、例えば封止板16をノズル12の先端に押し付けて密封する構造のように、外部からの衝撃により封止板16とノズル12との当たりにズレが生じるようなことがなく、水漏れが生じるおそれを大幅に低減できる。
【0059】
また、本実施形態では特に、封止板16に破断溝20が形成されており、開封装置22は封止板16を破断溝20に沿って破断することにより流路Fを開封する。これにより、封止板16の破断を円滑に行うことができるようになり、開封不良が生じることを抑制できる。また、破断溝20の形態により、破断後の封止板16の形状・大きさ・数等を調整することができるので、例えば開封後の流路Fの開口面積を調整して消火用水Wの通水量を調整する等が可能となる。この場合、例えば燃焼剤28による爆圧若しくはガス圧も併せて調整して開封後の封止板16の角度まで調整すれば、さらに消火用水Wの通水量を微調整することも可能である。また、破断溝20の幅や深さ、長さ等に応じて、封止板16の強度を調節できる効果もある。
【0060】
また、本実施形態では特に、ハウジング14の側面部14bにおける周方向複数箇所に所定間隔で放水孔32を形成し、これらの放水孔32から消火用水Wを周囲に放出する。これにより、例えば消火用水Wをノズル12より下方に放出し、散水板36に衝突させて散水する構造に比べ、散水板36に衝突させる前にある程度四方に分散することができるため、消火用水Wを効果的に分散することができる。
【0061】
また、本実施形態では特に、散水板36を設け、ハウジング14の放水孔32より周囲に放出された消火用水Wを散水板36に衝突させてさらに分散する。これにより、消火用水Wを効果的に分散し、消火機能を向上することができる。
【0062】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
【0063】
(1)封止板を円環状の支持部材に固定する場合
図4は、本変形例のスプリンクラーヘッド10Aの側断面図であり、図5は、支持部材38と封止板40の外観構成を概略的に表す斜視図である。図4に示すように、本変形例のスプリンクラーヘッド10Aでは、中心部に開口38aを有する円環状の支持部材38がハウジング14の上端に溶接により固定されており、この支持部材38によって封止板40が固定支持されている。なお、支持部材38をノズル12側に固定する構造としてもよい。
【0064】
図5に示すように、封止板40は円板状であり、金属材料で構成されている。封止板40の外径は支持部材38の開口38bの内径よりも所定量大きくなっており、その溶接代を利用して、支持部材38における、スプリンクラーヘッド10に組み込まれた際に上側となる上面38bに、開口38aを閉塞するように溶接により固定されている。このような構造により、ハウジング14がノズル12の口部12aに接続されることで、封止板40が消火用水Wの流路Fを密封して止水する。
【0065】
なお、本変形例の封止板40の厚みは前述した実施形態の封止板16よりも薄くなっている。これは、本変形例では封止板40で消火用水Wの圧力を支える部分が開口38aの面積分のみであり、前述の実施形態の封止板16のように流路Fの断面積全体を支える必要がないためである。このため、封止板40の強度は封止板16よりも小さくなっており、図4に示すように、封止板40は消火用水Wの圧力により下方に膨らむように湾曲した状態で止水する。上記以外の構成については、前述の実施形態のスプリンクラーヘッド10と同様である。
【0066】
次に、上記構成であるスプリンクラーヘッド10Aの動作について図6を用いて説明する。図6はスプリンクラーヘッド10Aの動作状態を表す側断面図であり、図6(a)は平常時、図6(b)は着火時、図6(c)は開封後の状態を表している。
【0067】
図6(a)に示すように、平常時は、封止板40により流路Fが密封され、消火用水Wは止水されている。このとき、前述したように封止板40は消火用水Wの圧力により下方に湾曲している。火災が発生すると、図6(b)に示すように燃焼室24内で燃焼剤28が着火され、爆風若しくはガスが封止板40に衝突する。このとき、封止板40が下方に膨らむように湾曲しているため、爆圧若しくはガス圧を封止板40に効果的に作用させることができる。これにより、図6(c)に示すように封止板40が破断し、消火用水Wの流路Fが開封される。
【0068】
以上説明した変形例によれば、上述したように封止板40の強度を小さくすることができるので、その分だけ開封装置22における封止板40の破断に必要な燃焼剤28の量を少なくできるという利点がある。
【0069】
(2)封止板を支持する支持体を変形させて開封する場合
図7は、本変形例のスプリンクラーヘッド10Bの側断面図である。図7に示すように、本変形例のスプリンクラーヘッド10Bでは、ハウジング14が底部14aのさらに下方に傾斜面14cを有しており、この傾斜面14cによって開封装置22の支持体42が支持されている。この支持体42は、その内部に燃焼室を有する略箱状の部材であり、その燃焼室内に燃焼剤28が充填されている。支持体42は、図示は省略するが、側面42aに略水平方向に溝を形成する等によって内圧が高まった際に側面42aが屈曲する構造となっており、後述の図8(c)に示すように、燃焼剤28の燃焼時に上下方向に潰れるように変形する。
【0070】
また支持体42の上部は、ハウジング14の底部14aに形成された開口44に嵌合されており、支持体42の変形前の状態において、その上面42bが底部14aの内面と同一高さとなるように構成されている。またハウジング14の底部14aには、支持体42の嵌合部を覆うように封止板46が設けられている。この封止板46は、周縁部分が底部14aに固定されており、中央部分は支持体42の上面42bによって支持されている。図示は省略するが、封止板46の周縁部分と底部14aとの間には適宜のシール材が設けられており、密封性を高めている。このような構造により、封止板46が消火用水Wの流路Fを密封して止水する。なお、封止板46は、厚みを薄くする、あるいは金属以外(樹脂等)の材料で構成する等により、前述の封止板40よりもさらに強度が小さくなるように構成されており、支持体42が変形して支持が解除された際には消火用水Wの圧力によって破断する。
【0071】
感熱板26は感知した火災による熱を燃焼剤28に伝熱する。また、放水孔32はハウジング14の傾斜面14cの周方向複数箇所に所定間隔で形成されており、散水板36はハウジング14の傾斜面14cに設けられている。なお、本変形例では、燃焼剤28が支持体42内に密封されているので、放水孔32を密封する吸湿防止シール34は不要である。上記以外の構成については、前述の実施形態のスプリンクラーヘッド10と同様である。
【0072】
次に、上記構成であるスプリンクラーヘッド10Bの動作について図8を用いて説明する。図8はスプリンクラーヘッド10Bの動作状態を表す側断面図であり、図8(a)は平常時、図8(b)は着火時、図8(c)は開封後の状態を表している。
【0073】
図8(a)に示すように、平常時は、封止板46により流路Fが密封され、消火用水Wは止水されている。このとき、前述したように封止板46の中央部分は支持体42により支持されている。火災が発生すると、図8(b)に示すように支持体42内の燃焼室で燃焼剤28が着火され、支持体42の内圧が上昇する。これにより、図8(c)に示すように支持体42が上下方向に潰れるように変形し、封止板46の支持を解除する。その結果、封止板46が消火用水Wの圧力により破断し、消火用水Wの流路Fが開封される。
【0074】
本変形例によれば、燃焼剤28の燃焼を支持体42の内部空間のみで行うため、燃焼ガスや排煙が外部に排出されることを防止できるという利点がある。
【0075】
(3)センサ手段からの作動信号により開封する場合
以上説明した実施形態や変形例においては、感熱板26からの伝熱によりスプリンクラーヘッドが作動する構造としたが、これに限らず、火災による熱を検出するセンサ手段を別途設けておき、その作動信号によりスプリンクラーヘッドを作動させてもよい。
【0076】
図9は、このような変形例の一例であるスプリンクラーヘッド10Cの概略構造を示す側断面図である。本変形例のスプリンクラーヘッド10Cにおいては、開封装置22の燃焼室24がハウジング14の内部に設けられており、この燃焼室24の下方において、放水孔32が側面部14bの周方向複数箇所に所定間隔で形成されている。燃焼室24の上部及び下部には2枚の封止板48,50がそれぞれ燃焼室24を上下方向に挟むように設けられており、これら封止板48,50が燃焼室24の天井部及び底部を構成している。封止板48,50は共に金属材料で構成されており、ハウジング14の内面に溶接により固定されている。なお、ここでは図示していないが、前述の実施形態と同様に封止板48,50に破断溝を形成してもよい。上側の封止板48とハウジング14との境界部分には適宜のシール材(図示略)が設けられており、密封性を高めている。このような構造により、封止板48が消火用水Wの流路Fを密封して止水する。
【0077】
ハウジング14の側面部14bには、燃焼室24に対応する位置に、イグナイタ30が取付具52により側面部14b及び燃焼室24の側面部24bを貫通して設けられている。また本変形例では、感熱板26の代わりに、スプリンクラーヘッド10Cの外部における適宜の箇所に、火災による熱を検出する感熱センサ54及び制御部56が設けられている。制御部56は、イグナイタ30と配線58により接続されており、感熱センサ54からの検知信号により所定温度以上になったことを検知すると、作動信号をイグナイタ30に出力する。これにより、燃焼室24内に充填された燃焼剤28が着火され、爆圧若しくはガス圧によって封止板48,50がそれぞれ破断される。なお、感熱センサ54と制御部56とが特許請求の範囲に記載のセンサ手段を構成する。
【0078】
なお、本変形例では、散水板36はハウジング14の側面14bに、放水孔32より下方位置となるように設けられている。また、燃焼剤28が燃焼室24内に密封されているので、放水孔32を密封する吸湿防止シール34は不要である。上記以外の構成については、前述の実施形態のスプリンクラーヘッド10と同様である。
【0079】
次に、上記構成であるスプリンクラーヘッド10Cの動作について図10を用いて説明する。図10はスプリンクラーヘッド10Cの動作状態を表す側断面図であり、図10(a)は平常時、図10(b)は着火時、図10(c)は開封後の状態を表している。
【0080】
図10(a)に示すように、平常時は、封止板48により流路Fが密封され、消火用水Wは止水されている。感熱センサ54からの検知信号により制御部56が火災を検知すると、作動信号をイグナイタ30に出力する。これにより、図10(b)に示すように燃焼室24内で燃焼剤28が着火され、爆風若しくはガスが封止板48,50に衝突する。その結果、図10(c)に示すように封止板48,50が共に破断し、消火用水Wの流路Fが開封される。
【0081】
本変形例によれば、感熱センサ54及び制御部56を用いるので、ほぼ一定の作動温度でスプリンクラーヘッド10Cを作動させることができる。これにより、感熱板26からの伝熱で作動させる構造に比べて、さらに作動の安定性を高めることができるという利点がある。
【0082】
なお、本変形例のヘッド構造に限らず、前述した実施形態や変形例のヘッド構造において、感熱センサ54及び制御部56を用いた作動方式としてもよい。
【0083】
(4)その他
以上においては、天井に設けられたスプリンクラーヘッドから消火用水Wを下方に散水する場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限らず、壁に設置され横方向に散水するスプリンクラーヘッドや、床に設置され上方に散水するスプリンクラーヘッドに対しても適用することが可能である。
【0084】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0085】
10 スプリンクラーヘッド
10A スプリンクラーヘッド
10B スプリンクラーヘッド
10C スプリンクラーヘッド
12 ノズル
14 ハウジング
14b 側面部(側面)
16 封止板
20 破断溝
22 開封装置
24 燃焼室
26 感熱板
28 燃焼剤
32 放水孔
36 散水板
40 封止板
42 支持体
46 封止板
48 封止板
50 封止板
54 感熱センサ(センサ手段)
56 制御部(センサ手段)
F 流路
W 消火用水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平常時にはスプリンクラー配管の内部に充填された高圧の消火用水を止水し、火災発生時には前記消火用水を散水して消火を行うスプリンクラーヘッドであって、
前記スプリンクラー配管に接続されたノズルと、
前記ノズルの先端に設けられたハウジングと、
前記ノズル又は前記ハウジングの内部に設けられ、前記消火用水の流路を密封して止水を行う封止板と、
を有し、
前記ハウジングに、
前記封止板により前記流路が密封された状態において、前記封止板の下流側に位置する燃焼室で燃焼剤を燃焼させることにより、前記流路を開封する開封装置を設けた
ことを特徴とするスプリンクラーヘッド。
【請求項2】
請求項1記載のスプリンクラーヘッドにおいて、
前記開封装置は、
火災による熱を感知する感熱板を有しており、
前記感熱板からの伝熱により、自動着火成分を含む前記燃焼剤が所定温度以上となった際に、前記燃焼剤を燃焼させて前記流路を開封する
ことを特徴とするスプリンクラーヘッド。
【請求項3】
請求項1記載のスプリンクラーヘッドにおいて、
前記開封装置は、
火災による熱を検出するセンサ手段からの作動信号により、前記燃焼剤を燃焼させて前記流路を開封する
ことを特徴とするスプリンクラーヘッド。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のスプリンクラーヘッドにおいて、
前記封止板は、
金属材料で構成され、前記ハウジングに溶接により固定されており、
前記開封装置は、
前記封止板を破断することにより前記流路を開封する
ことを特徴とするスプリンクラーヘッド。
【請求項5】
請求項4記載のスプリンクラーヘッドにおいて、
前記封止板は、
破断溝を有しており、
前記開封装置は、
前記封止板を前記破断溝に沿って破断することにより前記流路を開封する
ことを特徴とするスプリンクラーヘッド。
【請求項6】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のスプリンクラーヘッドにおいて、
前記開封装置は、
前記燃焼室を内部に有し、前記封止板の少なくとも一部を上面で支持する略箱状の支持体を有しており、
前記燃焼剤の燃焼により前記支持体を変形させ、前記封止板の支持を解除することにより前記流路を開封する
ことを特徴とするスプリンクラーヘッド。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載のスプリンクラーヘッドにおいて、
前記ハウジングは、
側面における周方向複数箇所に所定間隔で形成された、前記消火用水を外部に放出する放水孔を有する
ことを特徴とするスプリンクラーヘッド。
【請求項8】
請求項7記載のスプリンクラーヘッドにおいて、
前記放水孔より放出された消火用水を分散させる散水板を有する
ことを特徴とするスプリンクラーヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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