説明

スプリンクラー装置の固定装置及び固定方法

【課題】水道連結型のスプリンクラー装置を野縁にしっかりと固定することができると共にスプリンクラー装置の設置位置の調整が容易な固定装置及び固定方法を提供する。
【解決手段】本発明による固定装置(10)は、野縁(6)に固定される一対のレール(12,14)と、一対のレール(12,14)に固定される固定部材(20)を有し、固定部材(20)にスプリンクラー装置(2)が固定される。スプリンクラー装置(2)は、2つの接続ポート(34a,34b)を有する継手(30)と、2つの接続ポートに接続される樹脂製のホース(32)を有する。固定部材(20)は、それが一対のレール(12,14)に仮固定されている状態において、一対のレール(12,14)に沿って摺動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラー装置を野縁に固定するための固定装置及び固定方法に関し、更に詳細には、水道連結型のスプリンクラー装置を天井パネルの上側からの作業によって野縁に固定するための固定装置及び固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火災を自動的に検出して天井等から散水するスプリンクラー装置が知られている。スプリンクラー装置は、水を噴射するスプリンクラーヘッドと、スプリンクラーヘッドに水を供給するために天井パネルの上側に通されるスプリンクラー配管とを有している。具体的には、スプリンクラー配管の大部分は、吊り具等によって吊られ、スプリンクラーヘッド及びその周囲のスプリンクラー配管は、天井パネルを上側から支持するために互いに平行に配置された野縁に固定装置を介して固定されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0003】
また、従来のスプリンクラー装置では、各々に専用のポンプユニットや貯水槽等の周辺設備を設置することが一般的であったため、周辺設備に高額な費用がかかっていた。これに対し、近年、周辺設備を共有するようにして、周辺設備に比較的低額な費用しかかからない水道連結型のスプリンクラー装置が用いられるようになってきた。このような水道連結型のスプリンクラー装置では、複数のスプリンクラー装置がスプリンクラー配管で直列に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭第55−23560号公報(図1)
【特許文献2】特開平第7−151269号公報(図1)
【特許文献3】特開2003−210604号公報(図5)
【特許文献4】特開2005−319278号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
専用の周辺設備を設置していた従来のスプリンクラー装置では、水が流入する1つの接続ポートだけが必要であったのに対し、水道連結型のスプリンクラー装置では、水が流入する接続ポートと流出する接続ポートの2つが必要になる。このため、水道連結型のスプリンクラー装置では、スプリンクラー配管から受ける力が従来のスプリンクラー配管から開ける力よりも増大し、従来のスプリンクラー装置を天井パネルに固定する方法では、野縁に対するスプリンクラー装置のしっかりとした固定が難しいことがあった。
【0006】
一方、スプリンクラーの設置位置は、散水対象の部屋に散水の死角ができないよう且つ設置個数が最小になるように定められるので、スプリンクラー装置の設置位置を調整できることも必要である。
【0007】
そこで、本発明の目的は、水道連結型のスプリンクラー装置を野縁に確実に固定することができると共にスプリンクラー装置の設置位置の調整が容易な固定装置及び固定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明による水道連結型のスプリンクラー装置の固定装置は、天井パネルの上側からの作業によって野縁に対して固定することを可能にし、天井パネルを保持する野縁に固定され且つ互いに間隔をおいて配置された一対のレールと、一対のレールの間を橋渡しするように一対のレールに固定される固定部材とを有し、一対のレールは、隣接した野縁の一方から他方に延び、スプリンクラー装置は、固定部材の下側に配置されるスプリンクラーヘッドが固定され且つ固定部材の上側に固定される、2つの接続ポートを有する継手と、天井パネルに沿って延び且つ2つの接続ポートにそれぞれ接続される樹脂製のホースとを有し、固定部材は、それが一対のレールに仮固定されている状態において、一対のレールに沿って摺動可能であることを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明による固定装置では、従来のスプリンクラー装置の固定装置と違って、互いに間隔をおいて配置された一対のレールが隣接した野縁の一方から他方に延び、野縁に4箇所で固定されているので、接続ポートが2つある水道連結型のスプリンクラー装置を野縁に確実に固定することができる。また、固定部材が、一対のレールに仮固定されている状態において、一対のレールに沿って摺動可能であるので、スプリンクラー装置を、それからの散水のために天井パネルに形成される開口のほぼ中心の任意の方向に容易に位置合せして固定することができる。また、スプリンクラー装置を樹脂製のホースを介して隣のスプリンクラー装置と直列に接続する場合、スプリンクラー装置を樹脂製ホースの長さや曲がりに対応した位置に容易に位置合せすることができる。
【0010】
本発明の固定装置において、好ましくは、継手は、それを固定部材に仮固定している間、固定部材に対して回転可能である。
【0011】
このように構成された固定装置では、継手に接続される樹脂製ホースの長さや曲がりによって生じる向きに応じて、継手が回転し、その後、最も適当な向きで継手を固定することができる。そのため、スプリンクラー装置を樹脂製のホースを介して隣のスプリンクラー装置と直列に接続する場合、スプリンクラー装置を樹脂製ホースの向きに対応した位置に容易に位置合せすることができる。
【0012】
本発明の固定装置において、好ましくは、更に、野縁に取付けられるブラケットを有し、ブラケットは、一対のレールが延びる方向と垂直な方向に一対のレールが移動することを規制する規制部を有する。
【0013】
このように構成された固定装置では、一対のレールを野縁に固定する位置の確認が容易になる。
【0014】
本発明の固定装置において、好ましくは、更に、レバー式の締付け具を有し、レバー式の締付け具は、一対のレールの各々を、野縁又はそれに取付けられたブラケットに押付けて固定する。レバー式の締付け具は、好ましくは、回動軸線を中心に互いに回動可能に取付けられた回動レバーと、野縁又はそれに取付けられたブラケットに引掛けられる引掛け部とを有し、回動レバーは、レールと当接箇所で当接する脚部を有し、脚部の輪郭は、回動レバーを上側から前記レールに近づけるように回動させたときに、引掛け部を引っ張る力が増大するように回動軸線と当接箇所との間の距離が増大し、且つ、回動レバーを更に回動させたときに、距離が減少するように定められる。
【0015】
このように構成された固定装置では、レールを確実かつ容易に野縁に固定することができる。
【0016】
また、上記目的を達成するために、本発明による水道連結型のスプリンクラー装置を天井パネルの上側からの作業によって野縁に対して固定することを可能にする固定方法は、固定部材を、一対のレールの間を橋渡しするように一対のレールに仮固定する工程と、一対のレールを、天井パネルを上側から保持する野縁に固定する工程と、2つの接続ポートを有し且つスプリンクラーヘッドが固定される継手を、固定部材に仮固定する工程と、固定部材を一対のレールに沿って移動させ、継手に、天井パネルに沿って延びる樹脂製のホースを接続する工程と、継手に樹脂製のホースを接続した後、固定部材を一対のレールに沿って移動させ、スプリンクラーヘッドからの散水のために天井パネルに設けられている開口に合わせて、固定部材を一対のレールに固定する工程と、固定部材を一対のレールに固定した後、仮固定されていた継手を固定部材に固定する工程と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によるスプリンクラー装置の固定装置及び固定方法によれば、水道連結型のスプリンクラー装置を野縁に確実に固定することができると共にスプリンクラー装置の設置位置の調整が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】住宅用のスプリンクラー装置の配管の一例の概略図である。
【図2】スプリンクラー装置のための固定構造を示す正面図である。
【図3】図2に示す固定構造の平面図である。
【図4】図2の線IV−IVにおける断面図である。
【図5】図2の線V−Vにおける断面図である。
【図6】締付け具の拡大斜視図である。
【図7】木製の野縁に取付けられるレールを示す正面図である。
【図8】木製の野縁に取付けられるレールを示す平面図である。
【図9】木製の野縁に取付けられるレールを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照して、スプリンクラー装置のための本発明による固定装置の実施形態を説明する。図1は、住宅用のスプリンクラー装置の配管の一例の概略図である。図2は、スプリンクラー装置のための固定構造を示す正面図である。図3は、図2に示す固定構造の平面図である。図4は、図2の線IV−IVにおける断面図であり、図5は、図2の線V−Vにおける断面図である。図6は、後述する締付け具の拡大斜視図である。
【0020】
図1に示すように、住宅用のスプリンクラー装置のための配管100は、水道管101からの分岐管102に止水栓103を介して取付けられた分岐ヘッダー104と、分岐ヘッダー104から停滞水防止継手105を介してトイレのタンク106まで延びるスプリンクラー配管107と、停滞水防止継手105に取付けられたスプリンクラーヘッド108とを有している。スプリンクラー配管107は、主に、天井パネル109の上側、即ち、裏側を通っている。
【0021】
止水栓103が開いているとき、トイレの使用のたびに、スプリンクラー配管107の中を水が流れ、スプリンクラー装置が火災を感知したとき、停滞水防止継手105を介してスプリンクラーヘッド108から散水される。
【0022】
図2〜図5に示すように、スプリンクラー装置のための固定構造1は、スプリンクラー装置2と、天井パネル4と、天井パネル4を上側から保持する野縁6、7と、スプリンクラー装置2からの散水及びその取付けのために天井パネル4に形成される開口8と、本発明による固定装置の実施形態である固定装置10とを有している。
【0023】
天井パネル4は、例えば、石膏ボード、コンパネ等で作られた厚さが約9〜25mmの板材である。天井パネル4は、野縁6、7にビス等によって固定されている。
【0024】
野縁6、7は、互いに平行に天井パネル4に沿って延びる複数の棒状の部材である。野縁6、7は、引掛け部を有する鋼材で作られていることが好ましい。野縁6、7はそれぞれ、開口6a、7aを有する上面6b、7bと、開口6a、7aに設けられ且つ後述する締付け具56を引掛けるための引掛け部6c、7cを有している。
【0025】
開口8の形状及び寸法は、スプリンクラー装置2による散水が可能であれば、任意である。例えば、開口8は、円形であり、その直径は、40〜60mmである。後述するように、この開口8は、それよりも大きく天井パネル4にあけられた開口8aによって生じたパネル部分44bに設けられることが好ましい。
【0026】
固定装置10は、野縁6、7に固定された一対のレール12、14を有している。詳細には、一対のレール12、14は、互いに間隔をおいて平行に配置された矩形断面の2本の棒状部材である。レール12、14は、軽量化のために、中空であることが好ましい。レール12、14はまた、隣り合った野縁6、7の一方の野縁6の上から他方の野縁7の上に延びている。
【0027】
また、固定装置10は、一対のレール12、14の間を橋渡しするように一対のレール12、14に固定される固定部材20を有している。固定部材20は、レール12、14の上に乗せられる下面20aを有し、レール12、14は、固定部材20を乗せる上面12a、14aを有している。固定部材20は、例えば、アルミニウム又はステンレスの板材で作られる。
【0028】
また、固定部材20は、一対のレール12、14を予め決められたピッチPで受入れる受け部を有している。詳細には、固定部材は、レール12、14を越えてから下方に延びる第1の延長部20cと、レール12、14を越える前に下方に延び、次いで、レール12、14の下方に延びる第2の延長部20dと、引張りばね46(後述)の一方の端部を支持するために上向きに延びる延長部20eとを有している。第1の延長部20cと第2の延長部20dとの間の野縁方向Aの距離D1は、レール12、14の幅Wよりも僅かに大きいことが好ましい。レール12のための第1の延長部20c及び第2の延長部20dと、レール14のための第1の延長部20c及び第2の延長部20dとは、一対のレール12、14を予め決められたピッチPで受入れるように配置され、好ましくは、レール12、14が延びる方向に間隔をおいて2箇所ずつ設けられる。かくして、第1の延長部20c及び第2の延長部20dは、上記受け部を構成する。第2の延長部20dは、レール12、14を下方から押付けるためのネジ21が螺合するねじ山付きの孔20fを有している。
【0029】
固定部材20は、ネジ21によってレール12、14に押付けられることによって固定されている。ネジ21は、ねじ山付きの孔20fからはずれて落下することを防止するためのはずれ防止部(図示せず)を有していることが好ましい。
【0030】
固定部材20は、それがネジ21によってレール12、14に固定されているとき、天井パネル4の開口8の上側に位置している。また、ネジ21を完全に締付けない状態、即ち、固定部材20が一対レール12、14に仮固定されている状態において、レールの長手方向に摺動可能である。
【0031】
固定部材20は、スプリンクラー装置2を固定するための下面20a、上面20b、及び貫通孔24を有している。貫通孔24は、固定部材20の中央に設けられている。貫通孔24は、一対の棒状部12、14を橋渡しする方向Aに長孔になっていることが好ましい。
【0032】
スプリンクラー装置2は、固定部材20の下側に配置されるスプリンクラーヘッド26に向かって固定部材20の上側から下側に延び且つ固定部材20に固定されるスプリンクラー配管28を有している。詳細には、スプリンクラー配管28は、大部分が固定部材20の上側に位置した状態で固定された配管接続部30と、天井パネルに沿って延びる樹脂製のホース32を有している。
【0033】
配管接続部30は、好ましくは、停滞水防止継手である。停滞水防止継手30は、概略的には、T字形をなし、下方に延びる下方管状部分30aと、側方に延びる2つの側方管状部分30bとを有している。下方管状部分30aは、固定部材20の上面20bと当接する段付き部30cと、且つ固定部材20の貫通孔24の中を下方に延びる延長部30dを有している。延長部30dは、散水機構を備えたスプリンクラーヘッド26がねじ込まれる雌ネジ部30eと、停滞水防止継手30を固定部材20に締付け固定するためのナット30fが螺合する雄ネジ部30gとを有している。スプリンクラーヘッド26は、延長部分30dに当接して位置決めされることが好ましい。停滞水防止継手30は、それがナット30fによって固定部材20に完全に締付け固定されていない状態、即ち、仮固定された状態で、貫通孔24を中心に回転可能である。
【0034】
2つの側方管状部分30bは、一方の側に向けられた接続ポート34aと、その反対側に向けられた接続ポート34bとを有している。
【0035】
樹脂製のホース32は、さや管36に入れられていることが好ましく、防災継手38等を介して、接続ポート34a、34bに接続されている。また、停滞水防止継手30及びそれとホース32との接続部の周りに、保温カバー40が設けられていることが好ましい。保温カバー40は、2つ割りになっており、停滞水防止継手30を挟むように覆うことが可能である。保温カバー40は、例えば、発泡ポリスチレンで作られている。
【0036】
スプリンクラー配管28は、固定部材20よりも上側に位置するいくつかの箇所に、配管作業を行う配管作業箇所42を有している。本実施形態では、配管作業箇所42は、停滞水防止継手30を固定部材20に取付ける箇所30c、樹脂製のホースを防災継手38を介して接続ポート34a、34bに接続する箇所、保温カバー40を取付ける箇所等である。
【0037】
固定構造1は、更に、天井パネルに、開口8よりも大きくあけられた開口8aに取付けられる下カバー44と、下カバー44を天井パネル4に向かって押付けるために、下カバー44と固定部材20の延長部20eとの間に配置された引張りばね46とを有している。下カバー44は、天井パネル4に下側から当接可能な環状部44aと、開口8aをあけたときに生じ且つ環状部44aの内側に配置され且つ開口8が設けられた円形のパネル部分44bと、開口8を閉鎖するコンシールド44cとを有していることが好ましい。
【0038】
固定装置10は、更に、野縁6、7に固定されるブラケット64を有していることが好ましい。ブラケット64は、野縁6、7に引掛けることが可能な第1の水平部64aと、野縁6に側方から当接する垂直部64bと、棒状部12、14を載せることができる上面64dを有する第2の水平部64cとを有している。第1の水平部64aの先端から下側に延長部が延びていることが好ましい。垂直部64bは、ブラケット64を野縁6に側方からねじで留めるための孔64eを有している。
【0039】
ブラケット64は、更に、一対のレール12、14を位置決めするための規制部を有している。具体的には、垂直部64bから上側に延び且つ野縁方向Aに間隔をおいて配置された4つの上向き延長部64fを有しており、上記規制部は、隣接した上向き延長部64fの側縁65によって構成されている(図5参照)。本実施形態では、隣接した上向き延長部64fの間の距離D2は、レール12、14の幅Wよりも僅かに大きく、かくして、隣接した上向き延長部64fの間にレール12、14を配置したときに、一対のレール12、14が、予め決められたピッチPに位置決めされる。また、ブラケット64の取付け位置が正確であれば、隣接した上向き延長部64fの間にレール12、14を配置したときに、レール12、14が、野縁方向Aに対して垂直な方向に位置決めされる。変形例として、レール12、14を上向き延長部64fの側縁65に当接させることによって、一対のレール12、14を位置決めしてもよい。この場合、中央寄りの上向き延長部64fだけが設けられてもよいし、両側の上向き延長部64fだけが設けられてもよい。ブラケット64は、1枚の板材から形成されていることが好ましい。
【0040】
一対のレール12、14は、レバー式の締付け具56によって野縁6、7に押付けられるように固定されている。レバー式の締付け具56は、レバーを回動させることによって、レール12、14を野縁6、7の上面6b、7bに押付けて固定する種類のものであることが好ましい。具体的には、図6に示すように、締付け具56は、回動軸線56cを中心に互いに回動可能に取付けられた回動レバー56aと、引掛け部56bとを有している。回動レバー56aは、回動軸線56cの近くに設けられた脚部56dを有し、それから一方の方向に延びている。
【0041】
脚部56dは、レール12、14の上面12b、14bに当接箇所で当接し、その上を転動且つ摺動可能である。脚部56dの輪郭は、回動レバー56aを上側からレール12、14に近づけるように回動させたときに、引掛け部56bを引っ張る力が増大するように回動軸線56cと当接箇所との間の距離が増大し、且つ、回動レバー56を更に回動させたときに、かかる距離が減少するように定められている。本実施形態では、回動レバー56aが水平方向に向けられたときに、かかる距離は最大になる。
【0042】
引掛け部56bは、折り曲げられた棒材からなり、回動軸線56c一方の側から下側に延びる第1の側部56eと、回動軸線56cの他方の側から下側に延びる第2の側部56fと、第1の側部の端部と第2の側部の端部とをほぼ横方向に連結するループ部56gとを有している。第1の側部56e及び第2の側部56fは、J字形に延び、即ち、回動軸線56cから下側に延びた後、回動レバー56aが回動軸線56cから延びる方向と反対方向に少し上側に延びている。回動レバー56a、第1の側部56e、第2の側部56f及びループ部56gによって囲まれる空間は、その中を棒状部12、14が通り抜けることができる形状及び大きさであることが好ましい。締付け具56の引掛け部56bは、野縁6、7の引掛け部6c、7cに引掛けられる。
【0043】
次に、スプリンクラー装置を天井パネルに固定する方法を説明する。
【0044】
スプリンクラー装置2を設置する箇所を、隣接した野縁6、7の間に決定し、それに応じて、天井パネル4に開口8aをあけ、パネル部分44bを形成する。また、スプリンクラー装置2からの散水のための開口8をパネル部分44bに形成する。
【0045】
次いで、開口8の近傍の天井パネル4に設けられた点検口から固定部材20を天井パネル4の上方に移動させる。そして上方の空間(いわゆる天井裏)において、固定部材20を、一対のレール12、14の間を橋渡しするように一対のレール12、14に仮固定する工程を行う。詳細には、固定部材20の第1の延長部20cと第2の延長部20dとの間にレール12、14を挿入する。
【0046】
次いで、一対のレール12、14を、天井パネル4を上側から保持する野縁6、7に固定する工程を行う。具体的には、まず、ブラケット64の上側水平部64aを野縁6、7に引掛けると共に、ブラケット64を、取付け工具、例えば、電動ドリルによって垂直部64bの側方から野縁6、7にねじ止め固定する。
【0047】
次いで、一対のレール12、14の両端部に、締付け具56の引掛け部56bを嵌めておき、一対のレール12、14を隣接した野縁の一方6の上から他方7の上に延びるように野縁6、7の上に載せる。このとき、一対のレール12、14の両端部をブラケット64の規制部、即ち、側縁65によって、一対のレール12、14をブラケット64に対して位置決めし、即ち、棒状部材12、14の野縁方向Aの移動が阻止される。それにより、一対のレール12、14の野縁6、7への位置決めが一層容易になる。一対のレール12、14が所定の場所にピッチPで位置決めされる。
【0048】
次いで、一対のレール12、14を締付け具56で野縁6、7に固定する。詳細には、締付け具56のループ部56gを野縁6、7の引掛け部6c、7cに引掛け、回動レバー56aを上向きから下側に水平方向を越えるまで回動させる。回動レバーは、それがレール12、14に当接するまで回動することが可能である。この状態において、引掛け部6c、7cが上側に引っ張られると共に、レール12、14が野縁6、7に押付けられて固定される。また、回動レバー56aが水平方向を越えるまで回動されているので、回動レバー56aが上向きに戻ることが防止される。
【0049】
次いで、2つの接続ポート34a、34bを有し且つスプリンクラーヘッド26が固定される停滞水防止継手30を、固定部材20に仮固定する工程を行う。詳細には、停滞水防止継手30の延長部30dを、固定部材20の貫通孔24に通し、ナット30fを延長部30dの雄ネジ部30gに螺合させ、固定部材20を締付ける。それにより、停滞水防止継手30が固定部材に固定される。本実施形態では、ナット30fを完全に締付けない状態、即ち、停滞水防止継手30を固定部材20に仮固定する。それにより、停滞水防止継手30は、固定部材20に対して回転可能である。
【0050】
次いで、固定部材20を一対のレール12、14に沿って移動させ、停滞水防止継手30に、天井パネル4に沿って延びる樹脂製のホース32を接続する工程を行う。詳細には、固定部材20を一対のレール12、14に沿って適当な位置まで移動させ、さや管36に通した樹脂性のホース32と停滞水防止継手30の接続ポート34a、34bとを防災継手38を介して接続する。また、保温カバー40を、停滞水防止継手30の周り及びそれとホース32との接続部の周りに取付ける。
【0051】
樹脂のホース32は、ある程度の可撓性があるけれども、長さが決まっているため、停滞水防止継手30の位置が変化すると、ホースに働く力が変化する。本実施形態では、ホースに働く力が変化する際、ホース32に働く力が釣り合うように、停滞水防止継手30が固定部材20に対して回転する。従って、ホースに不釣合いな力が働いた状態で停滞水防止継手30を固定部材20に固定することが防止される。
【0052】
次いで、固定部材20を一対のレール12、14に沿って移動させ、スプリンクラーヘッド26からの散水のために天井パネル4に設けられている開口8に合わせて、固定部材20を一対のレール12、14に固定する工程を行う。固定部材20は、一対のレール12、14にネジ21によって固定されることが好ましい。ネジ21は、トルクリミッタ付きの電動ねじ回し等によって、一定のトルクで締付けられることが好ましい。
【0053】
次いで、仮固定されていた継手30を固定部材20に固定する工程を行う。具体的には、ナット30fを締め付け、停滞水防止継手30を固定部材20に固定する。その後、天井パネルの下側からスプリンクラーヘッド26を停滞水防止継手30の雌ネジ部30eにねじ込んで、固定する。なお、スプリンクラーヘッド26は、天井パネルの下側に延びる形態となるため、固定作業は、天井パネルの下側からが好ましいが、天井パネルの下側の部屋の状況によっては、天井パネルの上側から開口の隙間から手を伸ばし、固定作業を行ってもよい。
【0054】
最後に、引張りばね46の一方の端部を取付け部材20の延長部20eに引掛け、他方の端部を引張り状態で下カバー44に引掛ける。手を離すと、下カバー44は、引張りばね46によって天井パネル4に押付けられる。
【0055】
上述した固定構造及び固定方法では、従来のスプリンクラー装置の固定装置と違って、互いに間隔をおいて配置された一対のレール12、14が隣接した野縁の一方6から他方7に延び、野縁6、7に4箇所で固定されているので、2つの接続ポート34a、34bがある水道連結型のスプリンクラー装置2を野縁6、7に確実に固定することができる。
【0056】
また、固定部材20が、一対のレール12、14に仮固定されている状態において、一対のレール12、14に沿って摺動可能であるので、スプリンクラー装置2を、それからの散水のために天井パネルに形成される開口8のほぼ中心の任意の方向に容易に位置合せして固定することができる。また、スプリンクラー装置2を樹脂製のホース32を介して隣のスプリンクラー装置と直列に接続する場合、スプリンクラー装置2を樹脂製ホース32の長さや曲がりに対応した位置に容易に位置合せすることができる。
【0057】
更に、停滞水防止継手30に接続される樹脂製ホース32の長さや曲がりによって生じる向きに応じて、停滞水防止継手30が回転し、その後、最も適当な向きで停滞水防止継手30を固定することができる。そのため、スプリンクラー装置2を樹脂製のホース32を介して隣のスプリンクラー装置と直列に接続する場合、スプリンクラー装置2を樹脂製ホース32の向きに対応した位置に容易に位置合せすることができる。
【0058】
また、既存の野縁6を切断することなしに、スプリンクラー装置2を天井パネル4に固定することができる。逆に、既存の野縁6の寸法が分かっているため、レール12、14、固定部材20を介してスプリンクラーヘッドの高さ方向位置を予め設定することができる。また、固定部材20が、一対のレール12、14の上に乗せられて固定されるので、固定部材20の上面20bを水平方向に配置することが容易であり、その結果、スプリンクラーヘッド26の取付け方向、即ち、散水方向が設計通りになるように、固定部材20に固定することができる。
【0059】
次に図7〜図9を参照して、野縁6が木材でできている場合を説明する。図7〜図9はそれぞれ、木製の野縁に取付けられるレールを示す正面図、平面図及び側面図である。
【0060】
固定装置10は、取付けブラケット54を介して野縁6’に固定されている。取付けブラケット54は、野縁6’に引掛けることが可能な上側水平部54aと、野縁6’に側方から当接する垂直部54bと、レール12、14の端部を乗せることができる上面54dを有する下側水平部54cとを有している。垂直部54bは、取付けブラケット54を野縁6’に側方からねじで留めるための孔54eを有している。
【0061】
取付けブラケット54は、一対のレール12、14が延びる方向と垂直な方向、即ち、野縁6’が延びる方向(野縁方向)Aに一対のレール12、14が移動することを規制する規制部55を有している。具体的には、ブラケット54は、下側水平部54cの先端から上側に延び且つ野縁方向Aに間隔をおいて配置された3つの上向き延長部54fを有しており、上記規制部は、隣接した上向き延長部54fの側縁55によって構成されている。本実施形態では、隣接した上向き延長部54fの間の距離D3は、レール12、14の幅Wよりも僅かに大きく、かくして、隣接した上向き延長部54fの間にレール12、14を配置したときに、レール12、14が、予め決められたピッチPに位置決めされる。また、ブラケット54の取付け位置が正確であれば、隣接した上向き延長部54fの間にレール12、14を配置したときに、レール12、14が、野縁方向Aに対して垂直な方向に位置決めされる。変形例として、レール12、14を上向き延長部54fの側縁55に当接させることによって、レール12、14の野縁方向Aの移動を規制してもよい。この場合、中央の上向き延長部54fだけが設けられてもよいし、両側の上向き延長部54fだけが設けられてもよい。
【0062】
取付けブラケット54は、更に、下側水平部54cの先端から下方に延び且つ野縁方向Aに間隔をおいて配置された2つの下向き延長部54gを有している。下向き延長部54gは、好ましくは、レール12、14の下方に配置され、かくして、隣接した上向き延長部54fの間に配置されている。取付けブラケット54は、1枚の板材から形成されていることが好ましい。
【0063】
野縁6’が木材でできている場合、一対のレール12、14を、天井パネル4を上側から保持する野縁6’に固定する工程において、固定部材20、レール12、14及び締付け具56を一体にした状態で、レール12、14の両端部をブラケット54の下側水平部54cに乗せる。このとき、レール12、14をブラケット54の規制部、即ち、隣接した上向き延長部54fの側縁55の間に配置することにより、レール12、14を所定の場所にピッチPで位置決めされると共に、棒状部12、14の野縁方向Aの移動が阻止される。それにより、レール12、14の野縁6’への固定が一層容易になる。次いで、締付け具56のループ部56gをブラケット54の下向き延長部54gに引掛け、回動レバー56aを上向きから下方に水平方向を越えるまで回動させる。
【0064】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0065】
本発明の実施形態では停滞水防止継手30に設けられた2つの接続ポート34aと34bは互いに反対方向(約180度)に位置しているが、この方向に限定されず、設置現場の特性により、120度や90度など様々な角度方向とすることができる。
【0066】
また、本発明の実施の形態では、固定部材20をレール12、14に固定する際に下方からネジ21による締め付け固定をしているが、これに限定されず、ネジ21の締め付け方向をレール12、14の水平方向からとしても良い。さらにネジ固定ではなく、固定部材20にクリップの嵌めこみ分を備え、クリップによってレール12、14の側面から挟み込むことで固定しても良い。このようにすると、施工性が高まり、特に固定装置の上方せある天井パネル4の上方からの施工が容易になる。
【符号の説明】
【0067】
2 スプリンクラー装置
4 天井パネル
6、6’、7 野縁
8 開口
10 固定装置
12、14 一対のレール
20 固定部材
26 スプリンクラーヘッド
30 停滞水防止継手(継手)
32 ホース
34a、34b 接続ポート
54 取付けブラケット
55 側縁(規制部)
56 締付け具
56a 回動レバー
56b 引掛け部
56c 回動軸線
56d 脚部
64 ブラケット
65 側縁(規制部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道連結型のスプリンクラー装置を、天井パネルの上側からの作業によって天井パネルに対して固定することを可能にする固定装置であって、
天井パネルを保持する野縁に固定され且つ互いに間隔をおいて配置された一対のレールと、前記一対のレールの間を橋渡しするように前記一対のレールに固定される固定部材とを有し、前記一対のレールは、隣接した野縁の一方から他方に延び、
スプリンクラー装置は、前記固定部材の下側に配置されるスプリンクラーヘッドが固定され且つ前記固定部材の上側に固定される、2つの接続ポートを有する継手と、天井パネルに沿って延び且つ前記2つの接続ポートにそれぞれ接続される樹脂製のホースとを有し、
前記固定部材は、それが前記一対のレールに仮固定されている状態において、前記一対のレールに沿って摺動可能であることを特徴とする、固定装置。
【請求項2】
前記継手は、それを前記固定部材に仮固定している間、前記固定部材に対して回転可能であることを特徴とする、請求項1に記載の固定装置。
【請求項3】
更に、前記野縁に取付けられるブラケットを有し、前記ブラケットは、前記一対のレールが延びる方向と垂直な方向に前記一対のレールが移動することを規制する規制部を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の固定装置。
【請求項4】
更に、レバー式の締付け具を有し、前記レバー式の締付け具は、前記一対のレールの各々を、野縁又はそれに取付けられた取付けブラケットに押付けて固定することを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の固定装置。
【請求項5】
前記レバー式の締付け具は、回動軸線を中心に互いに回動可能に取付けられた回動レバーと、野縁又はそれに取付けられた前記取付けブラケットに引掛けられる引掛け部とを有し、前記回動レバーは、前記レールと当接箇所で当接する脚部を有し、前記脚部の輪郭は、前記回動レバーを上側から前記レールに近づけるように回動させたときに、前記引掛け部を引っ張る力が増大するように前記回動軸線と当接箇所との間の距離が増大し、且つ、前記回動レバーを更に回動させたときに、前記距離が減少するように定められることを特徴とする請求項4記載の固定装置。
【請求項6】
水道連結型のスプリンクラー装置を、天井パネルの上側からの作業によって天井パネルに対して固定することを可能にする固定方法であって、
固定部材を、前記一対のレールの間を橋渡しするように前記一対のレールに仮固定する工程と、
一対のレールを、天井パネルを上側から保持する野縁に固定する工程と、
2つの接続ポートを有し且つスプリンクラーヘッドが固定される継手を、前記固定部材に仮固定する工程と、
前記固定部材を前記一対のレールに沿って移動させ、前記継手に、前記天井パネルに沿って延びる樹脂製のホースを接続する工程と、
前記継手に樹脂製のホースを接続した後、前記固定部材を前記一対のレールに沿って移動させ、スプリンクラーヘッドからの散水のために天井パネルに設けられている開口に合わせて、前記固定部材を前記一対のレールに固定する工程と、
前記固定部材を前記一対のレールに固定した後、仮固定されていた前記継手を前記固定部材に固定する工程と、を有することを特徴とする固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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