説明

スプリンクラ制御盤

【課題】 物や手などがあたったりして、火災でもない状態で、電動弁が開放してしまうのを防止する。
【解決手段】 スプリンクラヘッドが接続された二次側配管の基端側に設けられた電動弁を開閉するスプリンクラ制御盤において、電動弁を開放または閉止するための操作スイッチを設ける。この操作スイッチは、所定時間、例えば3秒以上押されないと、電動弁の開閉を行わない。
スイッチの操作時間が短い場合には、正しく操作する旨の音声警報が出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラ消火設備に設けられるスプリンクラ制御盤に関する。
【背景技術】
【0002】
建物に設置される消火設備として、特許文献1に示すようなスプリンクラ消火設備がある。このスプリンクラ消火設備は、元弁と、その元弁の二次側に配管を介して設けられるスプリンクラヘッドと、元弁の一次側に配管を介して設けられる給水源としての水道配管と、スプリンクラヘッドが設置される室内に設けられる火災感知器とを備えている。このスプリンクラ消火設備においては、元弁の二次側配管を常時乾式とすることで、室内で漏水が生じるのと、配管内に停滞水が生じるのを防止している。
【0003】
このスプリンクラ消火設備においては、火災感知器が室内の火災を検知すると、制御盤が元弁を開放するように制御し、スプリンクラヘッド側に水を送る。その後、スプリンクラヘッドが開放すれば、室内に放水され、火災を消火する。
【0004】
通常は、火災感知器が動作したときに、制御盤が元弁を開放するように制御するが、制御盤のスイッチを押して、手動によって元弁を開放する場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2517684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
制御盤のスイッチを押すことで、元弁が開放されると、制御盤のスイッチに物や指があたることで、簡単に元弁が開放されてしまう。その場合には、火災でない状態で、元弁の二次側配管に水が送水されることになり、配管内を乾式状態に戻すために、排水処理を行うなどの手間が生じる。
【0007】
そこで、物や手などがあたったりして、火災でもない状態で、元弁が開放してしまうのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、スプリンクラヘッドが接続された二次側配管の基端側に設けられた開閉弁を開閉するスプリンクラ制御盤において、開閉弁を開放または閉止するための操作スイッチと、操作スイッチが操作された際にスタートし、操作スイッチが操作されている間は動作するタイマと、タイマにより所定時間、前記操作スイッチが操作された状態であることを判別する判別部と、判別部により、前記操作スイッチが所定時間にわたって、操作されたことを判別したら、開閉弁を制御する開閉弁制御部とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は以上のように構成され、操作スイッチが、所定時間にわたって操作されない限り、開閉弁(電動弁)は、開閉されない。このため、操作スイッチに物や手などがあたったりして、火災発生中に、開閉弁が閉止されたり、火災でもない状態で、開閉弁が開放してしまうのを防止することができる。また、操作スイッチは、所定時間にわたって、操作されなかった場合には、操作スイッチを正しく操作する旨の警報を行うので、使用者は、操作の過ちに気づき、次操作で正しく操作スイッチを操作することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のスプリンクラ制御盤が使用される消火設備のシステムである。
【図2】本発明のスプリンクラ制御盤のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1、図2に基づいて本実施の形態のスプリンクラ制御盤を説明する。まず図1を使用して、本実施の形態に係るスプリンクラ制御盤7が設置される消火設備のシステムについて説明する。
【0012】
1は室内の天井に設置されたスプリンクラヘッドである。スプリンクラヘッド1としては、下部に火災時の熱で落下するカバーを備えたコンシールド型のスプリンクラヘッドが使用される。このコンシールド型のスプリンクラヘッド1は、接点機構を有しており、火災時にカバーが落下すると、接点を閉じて、火災信号を出力する。
【0013】
スプリンクラヘッド1は、二次側配管2に設けられ、二次側配管2の基端側には、開閉弁としての電動弁3が設けられる。電動弁3の一次側には、一次側配管4が設けられ、その基端側には給水源5としての水道配管が設けられる。
【0014】
6は火災感知器で、スプリンクラヘッド1と同じ室内に設置される。7はスプリンクラ制御盤で、スプリンクラヘッド1や火災感知器6からの火災信号を受信して、火災信号を受信したときに、火災警報を出力するとともに、開閉弁3を開放するように制御する。
【0015】
室内には、火災感知器6かコンシールド型のスプリンクラヘッド1のいずれか一方が設置されればよい。但し、通常型の接点機構を有しないスプリンクラヘッド1が使用される場合には、火災感知器6が必要となる。
【0016】
次に、図2を使用して、スプリンクラ制御盤7の構成について説明する。スプリンクラ制御盤7は、操作部11、タイマ12、制御部13(判別部)、開閉弁制御部としての電動弁制御部14、警報部15、火災信号受信部16とから構成されており、各構成要素は制御部13によって制御される。
【0017】
操作部11は、スプリンクラ制御盤7の盤面に設けられた各種操作スイッチの総称である。操作部11には、電動弁3を開放するための電動弁開放スイッチ11a、電動弁3を閉止するための電動弁閉止スイッチ11bが設けられ、それ以外に、音響停止スイッチ、復旧スイッチ、試験スイッチなどが設けられる。電動弁開放スイッチ11a、電動弁閉止スイッチ11bは、操作スイッチの一例である。
【0018】
タイマ12は、電動弁開放スイッチ11a,電動弁閉止スイッチ11bが操作される際、スイッチの長押しされている時間を計測するものである。具体的には、電動弁開放スイッチ11a又は電動弁閉止スイッチ11bが操作された際に計時開始(スタート)し、電動弁開放スイッチ11a,電動弁閉止スイッチ11bが操作されている間は動いて、長押しの時間を計測するものである。タイマ12は、電動弁開放スイッチ11a,電動弁閉止スイッチ11bが押されなくなった場合は、停止して、時間の計測をやめる。
【0019】
判別部としての制御部13は、タイマ12の計測値をもとに、所定時間、例えば3秒間、電動弁開放スイッチ11a,電動弁閉止スイッチ11bが操作された状態であるかどうかを判別する。
【0020】
電動弁制御部14は、制御部13により、電動弁開放スイッチ11a,電動弁閉止スイッチ11bが所定時間(3秒間)以上にわたって、操作されたことが判別されたら、その操作部11のスイッチ11a,11bに応じるように電動弁3を制御する。
【0021】
警報部15は、電動弁制御部14により、電動弁3が制御される際、電動弁3が動作した旨の警報を行うものである。ここで、電動弁3が動作した旨の警報とは、「電動弁が開きました」という音声メッセージ、または、「電動弁が閉まりました」という音声メッセージのことである。
【0022】
この警報部15は、電動弁開放スイッチ11a,電動弁閉止スイッチ11bの操作時間が所定時間(3秒間)未満であることを制御部13が判別した場合にも警報を行う。この際に行われる警報は、操作スイッチを正しく操作する旨の警報であり、
例えば、「電動弁を開くには3秒以上押して下さい」という音声メッセージ、または、「電動弁を閉めるには3秒以上押して下さい」という音声メッセージである。
【0023】
火災信号受信部16は、スプリンクラヘッド1や火災感知器6からの火災信号を受信するものである。
【0024】
次にスプリンクラ制御盤7の動作について説明する。まず、室内で火災が発生すると、火災感知器6が動作して、火災信号を出力する。また、コンシールド型のスプリンクラヘッド1も火災信号を出力する。これら火災信号は、スプリンクラ制御盤7の火災信号受信部16で受信される。火災信号受信部16が火災信号を受信すると、制御部13が警報部15を動作させ、火災警報を行う。
【0025】
また、スプリンクラ制御盤7は、火災信号を受信すると、電動弁制御部14から開放信号を出力して、電動弁3へ出力する。開放信号によって電動弁3は開放され、電動弁3の開放により、給水源5側からの水が、スプリンクラヘッド1へと送水され、二次側配管2内に充水される。続いてスプリンクラヘッド1が動作すると、スプリンクラヘッド1から放水が行われ、火災を消火する。
【0026】
スプリンクラヘッド1の放水によって火災が消火した場合には、スプリンクラ制御盤7の電動弁閉止スイッチ11bを長押し操作して、電動弁3を閉止することが可能である。電動弁閉止スイッチ11bは、二次側配管2およびスプリンクラヘッド1への給水を停止するものであるから、火災発生中には、操作部11の電動弁閉止スイッチ11bに誤って触れて電動弁3が閉止されないようにするべきである。そこで、本発明においては、電動弁閉止スイッチ11bは、例えば3秒以上にわたって、スイッチが長押しされないと、電動弁3を閉止しないようにしてある。
【0027】
具体的には、電動弁閉止スイッチ11bが押されると、制御部13によって、タイマ12が計時開始(スタート)する。このタイマ12は、電動弁閉止スイッチ11bが操作されている間は継続して動いており、電動弁閉止スイッチ11bが押されている時間を計測できる。
【0028】
電動弁閉止スイッチ11bが継続して操作され続けた場合、つまり、タイマ12により所定時間である3秒間以上、電動弁閉止スイッチ11bが操作された状態であることを制御部(判別部)13が判別すると、制御部13は、電動弁制御部14から閉止信号を出力して電動弁3を閉止するように制御する。
【0029】
この際、警報部15からは、電動弁閉止スイッチ11bを正しく操作した旨の警報として、「電動弁が閉まりました」という音声メッセージが出力される。このため、スプリンクラ制御盤7を操作した人は、電動弁3の閉止を確認することができる。
【0030】
ところで、電動弁閉止スイッチ11bの押す時間が短く、3秒未満であった場合には、電動弁3は閉止されない。この場合には、電動弁閉止スイッチ11bが押された際に、同様に、タイマ12が計時開始(スタート)するが、電動弁閉止スイッチ11bが押されなくなった時点で、タイマ12が停止する。制御部13は、タイマ12の計測値が、所定時間である3秒を超えたかどうかを判別し、3秒未満であるため、電動弁制御部14については制御を行わない。
【0031】
そして、警報部15から、「電動弁を閉めるには3秒以上押して下さい」という音声メッセージを出力して、スプリンクラ制御盤7の操作者に、操作スイッチの長押しをするように警報する。このため、スプリンクラ制御盤7の操作者は、操作の仕方に不備があったと判断でき、その後の操作で、正しく操作スイッチを操作することが可能となる。
【0032】
なお、電動弁3の閉止については、電動弁閉止スイッチ11bの3秒以上の長押し操作が必要となるが、電動弁3の開放についても同様であって、電動弁3の開放には、電動弁開放スイッチ11aの長押し操作が必要となる。
【0033】
背景技術で説明したように、乾式のスプリンクラ消火設備においては、二次側配管を乾式状態にする必要があることから、通常状態においては、操作部11の電動弁開放スイッチ11aに誤って手が触れて電動弁3が開放することのないようにするべきである。
【0034】
そこで、本発明においては、電動弁開放スイッチ11aの押す時間が短く、例えば3秒未満であった場合には、電動弁3を開放しないようにしてある。電動弁開放スイッチ11aが押された際、タイマ12がスタートするが、電動弁開放スイッチ11aが押されなくなった時点で、タイマ12が停止する。制御部13は、タイマ12の計測値が、所定時間である3秒を超えたかどうかを判別し、3秒未満のときには、電動弁制御部14については制御を行わないので、電動弁3が開放することはない。このため、操作スイッチに物や手などが一時的にあたったりして、火災でもない状態で、電動弁3が開放してしまうのを防止することができる。
【0035】
ところで、この場合には、警報部15から、「電動弁を開くには3秒以上押して下さい」という音声メッセージが出力される。
【0036】
なお、もしここで実際に、火災感知器6が動作しないような小さな火災が発生したことを、室内の人が発見して、手動で電動弁3を開放するような場合には、この音声メッセージを聞くことで、自分の操作が不十分であると判断できる。そして、次のスイッチ操作で、正しい操作を行うことが可能となる。
【0037】
電動弁開放スイッチ11aが、3秒以上にわたって継続して操作された場合には、タイマ12により計測値が3秒以上となるので、制御部13は、電動弁開放スイッチ11aの所定時間以上の操作があったものと判別して、電動弁制御部14から電動弁3を開放するように制御する。この際、警報部15からは、電動弁開放スイッチ11aを正しく操作した旨の警報として、「電動弁が開きました」という音声メッセージが出力される。このため、スプリンクラ制御盤7を操作した人は、電動弁3の開放を確認することができる。
【0038】
本実施形態においては、タイマを別途設けた場合で説明したが、制御部については、タイマ内蔵のマイコンで構成するようにしてもよい。また、操作スイッチが3秒未満のときに出力される音声メッセージについては、その音声メッセージを聞き漏らすことのないように、話速変換機能を設けて、通常の警報よりも話すスピードを遅くして、音声メッセージを出力するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 スプリンクラヘッド、 2 二次側配管、 3 電動弁、
4 一次側配管、 5 給水源、 6 火災感知器、
7 スプリンクラ制御盤、 11 操作部、
11a 電動弁開放スイッチ、 11b 電動弁閉止スイッチ、
12 タイマ、 13 制御部、 14 電動弁制御部、
15 警報部、 16 火災信号受信部、 tt

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプリンクラヘッドが接続された二次側配管の基端側に設けられた開閉弁を開閉するスプリンクラ制御盤において、
前記開閉弁を開放または閉止するための操作スイッチと、
該操作スイッチが操作された際に計時開始し、操作スイッチが操作されている間は動作するタイマと、
該タイマにより所定時間、前記操作スイッチが操作された状態であることを判別する判別部と、
前記判別部により、前記操作スイッチが所定時間にわたって、操作されたことを判別したら、前記開閉弁を制御する開閉弁制御部とを備えたことを特徴とするスプリンクラ制御盤。
【請求項2】
前記開閉弁制御部により、前記開閉弁が制御される際、前記開閉弁が動作した旨の警報を行う警報部を備えたことを特徴とする請求項1記載のスプリンクラ制御盤。
【請求項3】
前記判別部が、前記タイマが計時開始してから、前記操作スイッチが所定時間にわたって、操作されなかったことを判別したら、警報部が前記操作スイッチを正しく操作する旨の警報を行うことを特徴とする請求項1又は2記載のスプリンクラ制御盤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−87770(P2011−87770A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−243912(P2009−243912)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】