説明

スプリングシートおよびダンパーディスク組立体

【課題】スプリングシートの剛性を高める。
【解決手段】第2スプリングシート62は、第1支持部63と第2支持部64と補強プレート66とを有している。第1支持部63は第2コイルスプリング61aの端部を回転方向に支持する。第2支持部64は、第1支持部63から回転方向に延び、第2コイルスプリング61aの端部を半径方向に支持する。補強プレート66の少なくとも一部は、第1支持部63および第2支持部64のうち少なくとも一方に埋め込まれている。補強プレート66は第1支持部63および第2支持部64とともに第2コイルスプリング61aの端部を直接的あるいは間接的に支持している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリングシートおよびダンパーディスク組立体、特に、捩り振動を吸収および減衰するスプリングを支持するためのスプリングシートに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンで発生した動力を伝達するために、車両には、クラッチディスク組立体、フライホイール組立体およびトルクコンバータのロックアップ装置などの動力伝達装置が搭載されている。これらの動力伝達装置には、捩り振動などを吸収および減衰するためにダンパーディスク組立体が設けられている。
【0003】
この種のダンパーディスク組立体は主に、入力回転体と、出力回転体と、複数のコイルスプリングと、を有している。コイルスプリングは、入力回転体に形成される保持部により回転方向に圧縮可能に保持されている。コイルスプリングは出力回転体に形成される窓部内に配置されている。入力および出力回転体が相対回転すると、両回転体の間でコイルスプリングが回転方向に圧縮される。これにより、入力回転体に入力された捩り振動が吸収および減衰される。
【0004】
しかし、コイルスプリングには遠心力が作用するため、コイルスプリングが圧縮する際に、コイルスプリングが半径方向外側に移動する。この結果、例えば、コイルスプリングが保持部と摺動し、コイルスプリングと入力回転体との間に大きな摩擦抵抗が発生する。この摩擦抵抗により、ダンパーディスク組立体の捩り振動減衰性能が低下する。
【0005】
そこで、従来のダンパーディスク組立体には、コイルスプリングの両端に1対のスプリングシートが装着されている(例えば、特許文献1を参照)。スプリングシートの材質としては、例えば樹脂や金属などが考えられる。
【0006】
特許文献1に記載のスプリングシートは、コイルスプリングの半径方向外側に配置される摺動部を有している。摺動部はコイルスプリングの端部を半径方向に支持している。これにより、コイルスプリングが保持部と摺動するのを防止できる。
【特許文献1】特開2004−183871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、スプリングシートの剛性が比較的低い場合、コイルスプリングに作用する遠心力が大きくなると、半径方向外側への大きな荷重が摺動部に作用し、摺動部が半径方向外側へ弾性変形する。この結果、例えば、摺動部が保持部と摺動し、スプリングシートと入力回転体との間で摩擦抵抗が発生する。この摩擦抵抗は、ダンパーディスク組立体の捩り振動減衰性能が低下する要因となり得る。すなわち、スプリングシートの剛性が低い場合、ダンパーディスク組立体の捩り振動減衰性能が低下するおそれがある。
【0008】
本発明の課題は、スプリングシートの剛性を高めることにある。
【0009】
本発明の別の課題は、ダンパーディスク組立体の捩り振動減衰性能の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明に係るスプリングシートは、捩り振動を吸収および減衰するスプリングを支持するための部材であって、樹脂製の第1支持部と、樹脂製の第2支持部と、金属製の補強プレートと、を備えている。第1支持部はスプリングの端部をスプリングの軸線方向に支持している。第2支持部は、第1支持部から軸線方向に延び、軸線方向に垂直な第1方向にスプリングの端部を支持している。補強プレートの少なくとも一部は、第1および第2支持部のうち少なくとも一方に埋め込まれている。補強プレートは第1および第2支持部とともにスプリングの端部を直接的あるいは間接的に支持している。
【0011】
このスプリングシートは、補強プレートの少なくとも一部が、第1および第2支持部のうち少なくとも一方に埋め込まれている。このため、従来品に比べてスプリングシート全体の剛性を高めることができる。
【0012】
ここで、例えば、「補強プレートが第1および第2支持部に埋め込まれる」とは、補強プレートが第1および第2支持部に完全に埋め込まれている場合の他に、補強プレートの一部が第1および第2支持部から露出している場合も含んでいる。「補強プレートがスプリングの端部を直接的に支持する」とは、補強プレートがスプリングの端部と当接した状態で端部を支持していることを意味している。「補強プレートがスプリングの端部を間接的に支持する」とは、補強プレートがスプリングの端部と当接していない状態で端部を支持していることを意味している。
【0013】
また、「軸線」とは、例えば、コイル状に巻かれたスプリングの中心点の集まりを意味している。「軸線方向」とは、軸線が延びている方向を意味している。例えば、圧縮スプリングの場合、軸線方向はスプリングが圧縮される方向とほぼ一致する。
【0014】
第2の発明に係るスプリングシートは、第1の発明に係るスプリングシートにおいて、補強プレートが第1部分と第2部分とを有している。第1部分はスプリングの端部を軸線方向に支持している。第2部分は、第1部分から軸線方向に延びており、スプリングの端部を第1方向に支持している。
【0015】
第3の発明に係るスプリングシートは、第2の発明に係るスプリングシートにおいて、第1部分が第1支持部に埋め込まれている。第2部分の少なくとも一部は、スプリングの端部と当接可能なように第2支持部から露出している。
【0016】
第4の発明に係るスプリングシートは、第1から第3のいずれかの発明に係るスプリングシートにおいて、少なくとも1つの補強部をさらに備えている。補強部は、第1および第2支持部を連結するように第1および第2支持部と一体成形されており、第2支持部から第1方向に延びている。
【0017】
第5の発明に係るスプリングシートは、第4の発明に係るスプリングシートにおいて、補強プレートが少なくとも1つの第3部分をさらに有している。第3部分は、第1部分から軸線方向に延びており、補強部に埋め込まれている。
【0018】
第6の発明に係るスプリングシートは、第1から第5のいずれかの発明に係るスプリングシートにおいて、第1支持部が第1支持部本体と第1支持突起とを有している。第1支持部本体はスプリングの端部と軸線方向に当接している。第1支持突起は第1支持部本体からスプリング側に突出している。第1支持突起は、スプリングの端部、または、スプリングの内周側に配置されスプリングの内径よりも外径が小さい小スプリングの端部、に嵌め込まれている。
【0019】
第7の発明に係るスプリングシートは、入力回転体と、出力回転体と、少なくとも1つのスプリングと、第1から第6のいずれかの発明に係る1対のスプリングシートと、を備えている。出力回転体は入力回転体に対して回転可能に配置されている。スプリングは入力および出力回転体の間で回転方向に圧縮可能なように配置されている。1対のスプリングシートはスプリングの端部に装着されている。
【0020】
このダンパーディスク組立体では、第1から第6のいずれかの発明に係るスプリングシートを有しているため、第2支持部が半径方向外側へ弾性変形するのを抑制できる。これにより、スプリングシートと入力回転体、あるいはスプリングシートと出力回転体の摺動を抑制でき、捩り振動減衰性能の向上を図ることができる。
【0021】
ここで、入力および出力回転体の回転方向は、スプリングの軸線方向とほぼ一致している。入力および出力回転体の半径方向は、第1方向とほぼ一致している。入力および出力回転体の軸方向は、第2方向とほぼ一致している。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るスプリングシートでは、剛性を高めることができる。
【0023】
本発明に係るダンパーディスク組立体では、捩り振動減衰性能の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0025】
<ダンパーディスク組立体の構成>
図1〜図4を用いて、本発明の一実施形態に係るダンパーディスク組立体1の構成について説明する。図1はダンパーディスク組立体1の平面概略図である。図2は、ダンパーディスク組立体1の縦断面概略図であり、図1のA−A断面図である。図3および図4はダンパーディスク組立体1の部分断面図である。図1はダンパーディスク組立体1にトルクが入力されていない中立状態を示している。
【0026】
なお、以下の説明において、「回転方向」、「半径方向(第1方向)」、「軸方向(第2方向)」とは、特に断らない限り、ダンパーディスク組立体1における各方向を意味している。
【0027】
ダンパーディスク組立体1は、トルクを伝達するとともに捩り振動を吸収および減衰するための機構である。図2に示すように、例えば、ダンパーディスク組立体1は環状のフライホイール10にリベット11により固定されている。フライホイール10は、大きなイナーシャを実現するための部材であり、フレキシブルプレート(図示せず)を介してクランクシャフト(図示せず)に固定されている。フライホイール10は、ダンパーディスク組立体1の入力側に設けられている。
【0028】
図1および図2に示すように、ダンパーディスク組立体1は主に、入力回転体としての入力プレート2と、出力回転体としてのハブ3と、2つの第1スプリング組立体5と、2つの第2スプリング組立体6と、2つの第3コイルスプリング7と、を有している。第1スプリング組立体5、第2スプリング組立体6および第3コイルスプリング7は、入力プレート2およびハブ3の間で回転方向に並列に圧縮される。
【0029】
図2に示すように、入力プレート2は、第1プレート21と、第1プレート21のトランスミッション側に配置された第2プレート22と、を有している。第1プレート21および第2プレート22は、環状のプレート部材であり、リベット29により互いに固定されている。入力プレート2の外周部はフライホイール10にリベット11により固定されている。
【0030】
入力プレート2は、第1スプリング組立体5、第2スプリング組立体6および第3コイルスプリング7を回転方向に弾性変形可能に保持している。具体的には図1〜図4に示すように、第1プレート21は、2つの第1保持部23aと、2つの第2保持部24aと、2つの第3保持部25aと、を有している。第2プレート22は、2つの第1保持部23bと、2つの第2保持部24bと、2つの第3保持部25bと、を有している。第1保持部23aおよび第1保持部23bにより第1スプリング組立体5が保持されている。第2保持部24aおよび第2保持部24bにより第2スプリング組立体6が保持されている。第3保持部25aおよび第3保持部25bにより第3コイルスプリング7が保持されている。
【0031】
ハブ3は、入力プレート2に対して回転可能に配置されており、出力シャフト(図示せず)に連結されている。具体的には図1〜図4に示すように、ハブ3は主に、筒状のボス部31と、ボス部31から半径方向外側へ延びる環状のフランジ部32と、を有している。
【0032】
ボス部31は、第1プレート21および第2プレート22の内周側に配置されており、出力シャフト(図示せず)にスプライン係合している。フランジ部32は、第1プレート21および第2プレート22の軸方向間に配置されており、2つの第1窓部33と、2つの第2窓部34と、2つの第1突起35と、2つの第2突起36と、を有している。
【0033】
第1窓部33内には第1スプリング組立体5が配置されている。第1窓部33の回転方向の長さは、第1保持部23aおよび23bの回転方向の長さとほぼ同じであり、第1スプリング組立体5の自由長とほぼ同じである。これらの構成により、中立状態における入力プレート2およびハブ3の回転方向の相対位置が決定される。
【0034】
第2窓部34内には第2スプリング組立体6が配置されている。第2窓部34の回転方向の長さは、第2保持部24aおよび24bの回転方向の長さよりも長く、第2スプリング組立体6の自由長よりも長い。中立状態において、第2スプリング組立体6と第2窓部34の縁との間には、回転方向に隙間が確保されている。
【0035】
第1突起35は、2つの第2突起36の回転方向間に所定の間隔をあけて配置されている。第3コイルスプリング7、第3保持部25aおよび25bは、第1突起25および第2突起36の回転方向間に配置されている。中立状態において、第1突起25と第3コイルスプリング7との間、および第2突起36と第3コイルスプリング7との間には、回転方向に隙間が確保されている。
【0036】
入力プレート2がハブ3に対して回転すると、第1スプリング組立体5、第2スプリング組立体6および第3コイルスプリング7が順番に圧縮を開始する。これにより、ダンパーディスク組立体1において3段階の捩り剛性を有する捩り特性が実現されている。
【0037】
図1および図3に示すように、第1プレート21は、環状の第1外周部26aと、第1外周部26aから半径方向内側へ延びる第1突出部27aと、をさらに有している。第2プレート22は、環状の第2外周部26bと、第2外周部26bから半径方向内側へ延びる第2突出部27bから半径方向内側へ延びる第2突出部27bと、を有している。第1突出部27aおよび第2突出部27bは、軸方向に当接した状態で、リベット29により互いに固定されている。第1突出部27aおよび第2突出部27bは、第1突起35および第2突起36と回転方向に当接可能である。これにより、入力プレート2およびハブ3の相対回転が所定角度の範囲内で規制されている。
【0038】
<摩擦発生機構>
ダンパーディスク組立体1は、ヒステリシストルクを発生させる摩擦発生機構8をさらに有している。摩擦発生機構8は、第1スプリング組立体5、第2スプリング組立体6および第3コイルスプリング7と並列に作用するように設けられている。具体的には図3および図4に示すように、摩擦発生機構8は主に、第1摩擦ワッシャ81と、第2摩擦ワッシャ82と、第3摩擦ワッシャ83と、フリクションプレート84と、第1コーンスプリング85と、第2コーンスプリング86と、を有している。
【0039】
第1摩擦ワッシャ81は、低ヒステリシストルクを発生させるための環状の部材であり、フランジ部32および第1プレート21の軸方向間に配置されている。第1摩擦ワッシャ81は第1コーンスプリング85によりフランジ部32の内周部に押し付けられている。
【0040】
第2摩擦ワッシャ82は、高ヒステリシストルクを発生させるための環状の部材であり、第1摩擦ワッシャ81の外周側に配置されている。第2摩擦ワッシャ82は、第1摩擦ワッシャ81および第1プレート21と一体回転可能に設けられている。すなわち、第1摩擦ワッシャ81および第2摩擦ワッシャ82は入力プレート2と一体で回転する。第2摩擦ワッシャ82は第2コーンスプリング86によりフリクションプレート84に押し付けられている。
【0041】
第3摩擦ワッシャ83およびフリクションプレート84は、高ヒステリシストルクを発生させるための部材であり、一体で回転する。第3摩擦ワッシャ83は、フランジ部32および第2プレート22の軸方向間に配置された環状の部材であり、ハブ3に対して所定角度の範囲内で回転可能に設けられている。具体的には、第3摩擦ワッシャ83は、環状の本体部83aと、本体部83aから軸方向に突出する複数のストッパ部83bと、を有している。ストッパ部83bはフランジ部32に形成された複数の孔37を貫通している。孔37は、回転方向に長く、概ね楕円形である。ストッパ部83bの断面形状は、回転方向に長く、概ね楕円形である。ストッパ部83bと孔37の縁との間には、回転方向に隙間が確保されている。
【0042】
ストッパ部83bのエンジン側には、ストッパ部83bよりも外径が小さい先端部83cが形成されている。先端部83cは、フリクションプレート84に形成された孔84aに挿入されている。先端部83cおよび孔84aの回転方向の寸法はほぼ同じである。このため、第3摩擦ワッシャ83およびフリクションプレート84は一体で回転する。
【0043】
フリクションプレート84は、第2摩擦ワッシャ82を介して第2コーンスプリング86によりトランスミッション側に押されている。フリクションプレート84は、第2摩擦ワッシャ82とストッパ部83bとの間に挟み込まれている。フリクションプレート84およびフランジ部32の間には、軸方向に隙間が確保されている。先端部83cおよび第2摩擦ワッシャ82の間には、軸方向に隙間が確保されている。
【0044】
以上のように、第2摩擦ワッシャ82、第2コーンスプリング86、第3摩擦ワッシャ83およびフリクションプレート84により、高ヒステリシストルクを発生させる大摩擦発生機構8aが実現されている。小摩擦発生機構8bにより発生するヒステリシストルクは、大摩擦発生機構8aにより発生ヒステリシストルクよりも大幅に低い。
【0045】
入力プレート2およびハブ3が相対回転すると、基本的に、大摩擦発生機構8aおよび小摩擦発生機構8bが作動する。これにより、捩り振動を効果的に吸収および減衰することができる。
【0046】
また、図1に示すように、ストッパ部83bおよび孔37の回転方向間に隙間が確保されている。このため、この隙間に対応する捩り角度の範囲内では、第3摩擦ワッシャ83およびフリクションプレート84は入力プレート2および第2摩擦ワッシャ82と一体回転する。この結果、第1摩擦ワッシャ81およびハブ3の間でのみ摩擦抵抗が発生する。すなわち、第3摩擦ワッシャ83、フリクションプレート84および孔37により、所定角度の範囲内で高ヒステリシストルクの発生を抑制する摩擦抑制機構9が実現されている。これにより、エンジンの燃焼変動に起因する微小捩り振動を効果的に吸収および減衰することができる。
【0047】
<スプリング組立体の構成>
図1〜図7を用いて、第1スプリング組立体5および第2スプリング組立体6の構成について説明する。図5は第1スプリング組立体5の断面図である。図6は第2スプリング組立体6の断面図である。図7は第2スプリング組立体6の第2スプリングシート62の平面図(右側)および断面図(左側)である。図7の断面図は図7の平面図におけるB−B断面図である。
【0048】
(1)第1スプリング組立体5
図5に示すように、第1スプリング組立体5は主に、第1コイルスプリング51と、第1コイルスプリング51の両端に装着された1対の第1スプリングシート52と、を有している。
【0049】
第1スプリングシート52は、樹脂製の部材であり、第1コイルスプリング51の端部を回転方向に支持する第1支持部53と、第1コイルスプリング51の半径方向外側に配置された第2支持部54と、第2支持部54から半径方向内側へ延びる1対の補強部55と、を有している。第1スプリングシート52は、例えば射出成形などにより一体成形されている。
【0050】
第1支持部53は、概ね円板状の第1支持部本体53aと、第1支持部本体53aから第1コイルスプリング51側に突出した第1支持突起53bと、第1支持突起53bと反対側に突出した第2支持突起53cと、突出部53dと、を有している。
【0051】
第1支持突起53bは、第1コイルスプリング51の端部に嵌め込まれており、第1コイルスプリング51の端部を半径方向および軸方向に支持している。第2支持突起53cは、フランジ部32に対する第1スプリングシート52の半径方向の移動を防止するための部分であり、第1窓部33の切欠き38に嵌め込まれている。突出部53dは、第1支持部本体53aから回転方向に突出した部分であり、第2支持突起53cから半径方向外側へ延びている。
【0052】
第2支持部54は、第1コイルスプリング51の端部を覆う部分であり、第2支持部本体54aと、突出部54bと、を有している。第2支持部本体54aは第1支持部53から回転方向に延びている。第2支持部本体54aの断面形状は、第1コイルスプリング51の外形に沿った円弧状である。図4に示すように、回転方向から見た場合、第2支持部本体54aは第1コイルスプリング51の外周部の約1/4を覆っている。
【0053】
突出部54bは第2支持部本体54aから半径方向外側へ突出している。突出部54bは、回転方向に延びており、第1支持部53の突出部53dと一体となっている。言い換えると、突出部53dは突出部54bおよび第2支持突起53cを連結している。
【0054】
第2支持部本体54aの半径方向外側には、1対の摺動面54cが形成されている。1対の摺動面54cは、突出部54bの軸方向両側に配置されており、第1保持部23aおよび23bと当接している。このため、第1スプリングシート52の半径方向および軸方向の位置決めは、第1保持部23aおよび23bにより行われている。
【0055】
また、第2支持突起53c、突出部54bおよび53dは、第1プレート21および第2プレート22の軸方向間(より詳細には、第1保持部23aおよび23bの根元部分23eおよび23fの軸方向間)に配置されている。第1スプリングシート52がフランジ部32に押されて入力プレート2に対して回転方向に移動する場合、第1保持部23aおよび23bの根元部分の間を突出部54bが回転方向に移動する。すなわち、第2支持突起53c、突出部54bおよび53dにより、入力プレート2に対して第1スプリングシート52が第1コイルスプリング51の軸線L1回りに回転するのを防止できる。これにより、第1スプリングシート52の動作の安定化を図ることができる。
【0056】
補強部55は、第1支持部53および第2支持部54を連結するように、第1支持部53および第2支持部54と一体成形されている。補強部55は、半径方向に延びる板状の部分であり、第2支持部54と同様に第1支持部53から回転方向に延びている。図5に示すように、補強部55は回転方向に円弧状に延びている。1対の補強部55は第1コイルスプリング51の端部を軸方向に支持している。より詳細には、補強部55の第1支持部53周辺の根元部分は第1コイルスプリング51の端部と軸方向に当接している。
【0057】
補強部55は、第2支持部54から軸方向の第1コイルスプリング51と反対側に突出している。エンジン側の補強部55は、第1保持部23aに形成された第1開口23c内に配置されており、第1保持部23aよりもエンジン側に突出している。トランスミッション側の補強部55は、第1保持部23bに形成された第1開口23d内に配置されており、第1保持部23bよりもトランスミッション側に突出している。
【0058】
補強部55により第1スプリングシート52全体の剛性が高まる。これにより、遠心力により第2支持部54が半径方向外側へ弾性変形するのを抑制することができる。
【0059】
(2)第2スプリング組立体6
図6および図7に示すように、第2スプリング組立体6は主に、第2コイルスプリング61aと、第4コイルスプリング61bと、第2コイルスプリング61aおよび第4コイルスプリング61bの両端に装着された1対の第2スプリングシート62と、を有している。第4コイルスプリング61bは第2コイルスプリング61aの内周側に配置されている。第4コイルスプリング61bの外径は、第2コイルスプリング61aの内径よりも小さい。
【0060】
第2スプリングシート62は、第2コイルスプリング61aおよび第4コイルスプリング61bの端部を回転方向に支持する第1支持部63と、第2コイルスプリング61aの半径方向外側に配置された第2支持部64と、第2支持部64から半径方向内側へ延びる1対の補強部65と、補強プレート66と、を有している。補強プレート66は、補強プレート66以外の部分よりも剛性が高い材質により構成されている。例えば、補強プレート66は金属製であり、補強プレート66以外の部分は樹脂製である。第2スプリングシート62の補強プレート66以外の部分は、例えば射出成形などにより一体成形されている。
【0061】
第1支持部63は、概ね円板状の第1支持部本体63aと、第1支持部本体63aから第2コイルスプリング61a側に突出した第1支持突起63bと、第1支持突起63bと反対側に突出した第2支持突起63cと、突出部63dと、を有している。
【0062】
第1支持突起63bは、第4コイルスプリング61bの端部に嵌め込まれており、第4コイルスプリング61bの端部を半径方向および軸方向に支持している。第2支持突起63cは、第2スプリングシート62のフランジ部32に対する半径方向の移動を防止するための部分である。第2スプリング組立体6が作動する際には、第2支持突起6cは第2窓部34の切欠き39に嵌まり込む。突出部63dは、第1支持部本体63aから回転方向に突出した部分であり、第2支持突起63cから半径方向外側へ延びている。
【0063】
第2支持部64は、第2コイルスプリング61aの端部を覆う部分であり、第2支持部本体64aと、突出部64bと、を有している。第2支持部本体64aは第1支持部63から回転方向に延びている。第2支持部本体64aの断面形状は、第2コイルスプリング61aの外形に沿った円弧状である。図3に示すように、回転方向から見た場合、第2支持部本体64aは第2コイルスプリング61aの外周部の約1/4を覆っている。
【0064】
突出部64bは第2支持部本体64aから半径方向外側へ突出している。突出部64bは、回転方向に延びており、第1支持部63の突出部63dと一体となっている。言い換えると、突出部63dは突出部64bおよび第2支持突起63cを連結している。
【0065】
第2支持部本体64aの半径方向外側には、1対の摺動面64cが形成されている。1対の摺動面64cは、突出部64bの軸方向両側に配置されており、第2保持部24aおよび24bと当接している。このため、第2スプリングシート62の半径方向および軸方向の位置決めは、第2保持部24aおよび24bにより行われている。
【0066】
また、第2支持突起63c、突出部64bおよび63dは、第1プレート21および第2プレート22の軸方向間(より詳細には、第2保持部24aおよび24bの根元部分24eおよび24fの軸方向間)に配置されている。第2スプリングシート62がフランジ部32に押されて入力プレート2に対して回転方向に移動する場合、第2保持部24aおよび24bの根元部分の間を突出部64bが回転方向に移動する。すなわち、第2支持突起63c、突出部64bおよび63dにより、入力プレート2に対して第2スプリングシート62が第2コイルスプリング61aの軸線L2回りに回転するのを防止できる。これにより、第2スプリングシート62の動作の安定化を図ることができる。
【0067】
補強部65は、第1支持部63および第2支持部64を連結するように、第1支持部63および第2支持部64と一体成形されている。補強部65は、半径方向に延びる板状の部分であり、第2支持部64と同様に第1支持部63から回転方向に延びている。図5に示すように、補強部65は回転方向に円弧状に延びている。1対の補強部65は第2コイルスプリング61aの端部を軸方向に支持している。より詳細には、補強部65の第1支持部63周辺の根元部分は第2コイルスプリング61aの端部と軸方向に当接している。
【0068】
補強部65は、第2支持部64から軸方向の第2コイルスプリング61aと反対側に突出している。エンジン側の補強部65は、第2保持部24aに形成された第2開口24c内に配置されており、第2保持部24aよりもエンジン側に突出している。トランスミッション側の補強部65は、第2保持部24bに形成された第2開口24d内に配置されており、第2保持部24bよりもトランスミッション側に突出している。
【0069】
補強部65により第2スプリングシート62全体の剛性が高まる。これにより、遠心力により第2支持部64が半径方向外側へ弾性変形するのを抑制することができる。
【0070】
図6および図7に示すように、第2スプリングシート62の剛性をさらに高めるために、補強プレート66が第1支持部63および第2支持部64に埋め込まれている。具体的には図7に示すように、補強プレート66は、第1支持部63に設けられた第1部分66aと、第2支持部64に設けられた第2部分66bと、を有している。第1部分66aは第2コイルスプリング61aの端部を回転方向に間接的に支持している。第2部分66bは第2コイルスプリング61aの端部を半径方向に直接的に支持している。
【0071】
第1部分66aは、第1孔66cと第2孔66dと第3孔66eとを有している。第1支持部本体63aには第1孔63eと第2孔63fとを有している。第1孔66cは第1孔63eに対応する位置に配置されており、第2孔66dは第2孔63fに対応する位置に配置されている。第3孔66eは第1支持突起63bに対応する位置に配置されている。第1孔66cおよび第2孔66dは主に、射出成形時における補強プレート66の位置決めのために用いられる。
【0072】
第2部分66bは、第1部分66aから半径方向外側へ突出するとともに回転方向へ折り曲げられた部分である。図7に示すように、第2部分66bは第2コイルスプリング61aの外周に沿うように円弧状である。第2部分66bの軸方向の幅は、第1部分66aの軸方向の幅よりも小さい。第2部分66bは、一部が露出するように第2支持部64に埋め込まれており、半径方向内側を向く摺動面66fを有している。第2支持部64の内周面64dと摺動面66fとにより、第2コイルスプリング61aの外周に沿った曲面が形成されている。摺動面66fは第2コイルスプリング61aの端部と半径方向に当接している。第2部分66bにより第2コイルスプリング61aの半径方向外側への移動が規制されている。
【0073】
このように、樹脂製の第1支持部63および第2支持部64に金属製の補強プレート66が埋め込まれているため、第2スプリングシート62の剛性をさらに高めることができる。
【0074】
<動作>
ダンパーディスク組立体1の動作について説明する。
【0075】
クランクシャフトから入力プレート2にトルクが入力されると、入力プレート2はハブ3に対して回転する。この結果、入力プレート2およびハブ3の間で、第1スプリング組立体5、第2スプリング組立体6および第3コイルスプリング7が順番に圧縮を開始する。具体的には、所定の捩り角度までは第1コイルスプリング51のみが回転方向に圧縮される。所定の捩り角度からさらに入力プレート2がハブ3に対して回転すると、第1コイルスプリング51に加えて、第2コイルスプリング61aおよび第4コイルスプリング61bが圧縮される。さらに入力プレート2がハブ3に対して回転すると、第1コイルスプリング51、第2コイルスプリング61aおよび第4コイルスプリング61bに加えて、第3コイルスプリング7が回転方向に圧縮される。このように、このダンパーディスク組立体1では、3段階の捩り剛性を有する捩り特性が実現される。
【0076】
また、ストッパ部83bおよび孔37の回転方向間に隙間が確保されている。このため、例えば、ダンパーディスク組立体1に微小捩り振動が入力された場合、大摩擦発生機構8aが作動せず、小摩擦発生機構8bのみが作動する。これにより、エンジンの燃焼変動に伴う微小捩り振動が効果的に吸収および減衰される。
【0077】
ここで、第2スプリング組立体6の動作について説明する。ダンパーディスク組立体1が回転すると、第2スプリング組立体6に遠心力が作用する。第2コイルスプリング61aおよび第4コイルスプリング61bは、第2スプリングシート62により半径方向に支持されている。このため、第2コイルスプリング61aおよび第4コイルスプリング61bの重量と回転速度とに応じた半径方向外側への荷重が、第2スプリングシート62に作用する。より詳細には、図6に示すように、第2コイルスプリング61aの端部から第2支持部64(第2支持部64の第1支持部63側の根元部分)に荷重Fが作用する。
【0078】
このとき、補強部65および補強プレート66により第2スプリングシート62全体の剛性が高くなっているため、第2支持部64の半径方向外側への弾性変形が抑制される。これにより、第2支持部64と第2保持部24aおよび24bとの間、あるいは第2支持部64と第2窓部34の端面34aとの間で、大きな摩擦抵抗が発生するのを抑制することができ、第2スプリングシート62の摩耗を抑制することができる。
【0079】
<効果>
第1スプリングシート52、第2スプリングシート62およびダンパーディスク組立体1により得られる効果は以下の通りである。
【0080】
(1)
この第2スプリングシート62では、半径方向に延びる補強部65が第1支持部63および第2支持部64を連結している。このため、従来品に比べて第2スプリングシート62全体の剛性を高めることができる。これにより、第2支持部64および入力プレート2、あるいは第2支持部64およびハブ3が摺動するのを抑制することができ、ダンパーディスク組立体1の捩り振動減衰性能を向上させることができる。
【0081】
この第2スプリングシート62では、他の部材との摺動を抑制できるため、摩耗を抑制することができる。さらに、第2スプリングシート62が摩耗しても、第2スプリングシート62全体の剛性の低下が抑制される。すなわち、この第2スプリングシート62では、耐久性の向上を図ることができる。
【0082】
なお、第1スプリングシート52においても同様の効果が得られる。
【0083】
(2)
例えば、ダンパーディスク組立体1の作動中において、第1スプリングシート52の第1支持部53が入力回転体2およびハブ3と回転方向に衝突したり、あるいは、第1支持部53が第1コイルスプリング51と回転方向に衝突したりする場合がある。
【0084】
しかし、第1スプリングシート52が樹脂製であるため、第1スプリングシート52が周辺部材と衝突することにより異音が発生するのを防止できる。
【0085】
また、例えば、ダンパーディスク組立体1の作動中において、第2スプリングシート62の第1支持部63が入力回転体2およびハブ3と回転方向に衝突したり、あるいは、第1支持部63が第2コイルスプリング61aと回転方向に衝突したりする場合がある。
【0086】
しかし、第1支持部63が樹脂製の部分で覆われているため、第2スプリングシート62が周辺部材と衝突することにより異音が発生するのを防止できる。
(3)
従来のスプリングシートでは、スプリングの半径方向外側に配置された摺動部の剛性を高めるために摺動部の厚みを大きくすると、周辺部材の寸法を変更する必要がある。
【0087】
しかし、この第2スプリングシート62では、補強部65が第2開口24cおよび24d内に配置されている。このため、第1プレート21および第2プレート22の各部の寸法を変更することなく、補強部65の厚みを大きくすることができる。これにより、従来品よりも容易に第2スプリングシート62の剛性を高めることができる。
【0088】
なお、第1スプリングシート52においても同様の効果が得られる。
【0089】
(4)
この第2スプリングシート62では、1対の補強部65が第2コイルスプリング61aの端部を軸方向に支持している。このため、第2スプリングシート62全体の剛性を高めつつ、第2スプリングシート62の動作の安定化を図ることができる。
【0090】
なお、第1スプリングシート52においても同様の効果が得られる。
【0091】
(5)
この第2スプリングシート62では、第2支持部64に突出部64bが形成されている。このため、第2支持部64の半径方向の剛性がさらに高くなる。すなわち、第2スプリングシート62の剛性をさらに高めることができる。
【0092】
また、第2スプリングシート61の第1支持部63に突出部63dが形成されている。このため、第1支持部63および第2支持部64の結合部分の剛性がさらに高くなる。
【0093】
以上のように、突出部64bおよび63dにより、第2スプリングシート62の剛性がさらに向上する。
【0094】
なお、第1スプリングシート52においても同様の効果が得られる。
【0095】
(6)
この第2スプリングシート62では、第2支持突起63c、突出部64bおよび63dが第2保持部24aおよび24bの根元部分の軸方向間に配置されている。このため、第2支持突起63c、突出部64bおよび63dにより、入力プレート2に対して第2スプリングシート62が第2コイルスプリング61aの軸線L2回りに回転するのを防止できる。これにより、第2スプリングシート62の動作の安定化を図ることができる。
【0096】
なお、第1スプリングシート52においても同様の効果が得られる。
【0097】
(7)
この第2スプリングシート62では、第1支持部63および第2支持部64に補強プレート66が埋め込まれている。このため、例えば、第1スプリングシート52全体の剛性に比べて、第2スプリングシート62全体の剛性がさらに高くなる。
【0098】
(8)
第1スプリングシート52では、樹脂製の第2支持部54に対して、金属製の第1コイルスプリング51の端部が遠心力により押し付けられる。このため、例えば、第2支持部54の内周面が変形したり、あるいは摩耗したりするおそれがある。
【0099】
しかし、第2スプリングシート62では、金属製の補強プレート66の摺動面66fが金属製の第2コイルスプリング61aと半径方向に当接している。このため、第2コイルスプリング61aの端部が第2支持部64の内周面64dに押し付けられるのを抑制することができ、第2支持部64の変形および摩耗を防止できる。
【0100】
また、補強プレート66および第2コイルスプリング61aがともに金属製であるため、補強プレート66および第2コイルスプリング61aのうち一方が極端に摩耗しない。それに加えて、第2スプリングシート62が第2コイルスプリング61aの端部とともに回転方向に移動するため、第2コイルスプリング61aの端部が補強プレート66と摺動するのが抑制される。すなわち、補強プレート66が摩耗するのを抑制できる。
【0101】
以上のように、補強プレート66の摺動面66fが第2コイルスプリング61aの端部と半径方向に当接しているため、第2支持部64の樹脂製の部分を保護することができ、第2スプリングシート62の摩耗を抑制できる。
【0102】
(9)
この第2スプリングシート62では、第4コイルスプリング61bの端部が第1支持突起63bに支持されているため、第4コイルスプリング61bが遠心力により半径方向外側へ移動するのを防止できる。これにより、第4コイルスプリング61bが第2コイルスプリング61aと干渉するのを防止でき、ダンパーディスク組立体1の捩り振動減衰性能を向上させることができる。
【0103】
(10)
以上に述べたように、このダンパーディスク組立体1では、第1スプリングシート52および第2スプリングシート62が入力プレート2およびハブ3と摺動するのを抑制できる。これにより、ダンパーディスク組立体1の捩り振動減衰性能の向上を図ることができる。また、このダンパーディスク組立体1では、第1スプリングシート52および第2スプリングシート62が用いられているため、耐久性が向上する。
【0104】
<他の実施形態>
本発明の具体的な構成は、前述の実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更および修正が可能である。
【0105】
(1)
第2スプリングシート62の構成は前述の実施形態に限定されない。ここで、第2スプリングシート62の変形例について説明する。図8は第2スプリングシート162の変形例の平面図(右側)および断面図(左側)である。図8の断面図は図8の平面図におけるC−C断面図である。なお、前述の実施形態と同じ構成は、同じ符号を使用するとともに説明は省略する。
【0106】
図8に示すように、第2スプリングシート162では、第1支持部63、第2支持部64および補強部65に補強プレート166が埋め込まれている。補強プレート166は、第1支持部63内に設けられた第1部分166aと、第2支持部64内に設けられた第2部分166bと、主に補強部65内に設けられた1対の第3部分166fと、を有している。
【0107】
第1部分166aおよび第2部分166bは、前述の第1部分66aおよび第2部分66bとほぼ同じ形状を有している。第1部分166aおよび第2部分166bについての詳細な説明は省略する。
【0108】
第3部分166fは、第1部分166aから軸方向に延びる支持部166gと、支持部166gの端部から回転方向に延びる先端部166hと、を有している。支持部166gは第1支持部63内に設けられている。先端部166hは、補強部65内に設けられており、補強部65と同様に回転方向に円弧状に延びている。先端部166hは補強部65の回転方向の中央付近まで延びている。
【0109】
このように、補強プレート166の先端部166hにより補強部65の剛性が高くなっているため、第2スプリングシート162全体の剛性がさらに向上する。これにより、第2スプリングシート162の耐久性をさらに向上させることができる。
【0110】
(2)
前述の実施形態では、補強プレート66の第2部分66bが露出している。しかし、第2部分66bが第2支持部64に完全に埋め込まれている場合であっても、第2スプリングシート62全体の剛性を向上させるという効果は得られる。
【0111】
また、第2スプリングシート62全体の剛性が高まるのであれば、補強プレート66の第2部分66aの一部が露出していてもよい。
【0112】
(3)
補強プレート66の形状は、前述の実施形態に限定されない。例えば、前述の実施形態では、補強プレート66の第2部分66bの幅が第1部分66aの幅よりも小さいが、第2部分66bの幅が、第1部分66aの幅と同じであってもよいし、第1部分66aの幅より大きくてもよい。
【0113】
(4)
補強部55および65の構成は、前述の実施形態に限定されない。例えば、補強部55が軸方向の片側にのみ設けられていても、第1スプリングシート52全体の剛性を高めることができる。補強部65が軸方向の片側にのみ設けられていても、第2スプリングシート62全体の剛性を高めることができる。
【0114】
(5)
ダンパーディスク組立体1の構成は前述の実施形態に限定されない。
【0115】
(6)
前述の実施形態では、ダンパーディスク組立体1がフライホイール10に固定されている。しかし、捩り振動を吸収および減衰するための装置であれば、ダンパーディスク組立体1は適用可能である。例えば、ダンパーディスク組立体1は、クラッチディスク組立体や2マスフライホイールなどに用いられてもよい。
【0116】
(7)
前述の実施形態では、第1スプリングシート52は樹脂製である。しかし、第1スプリングシート52の材質はこれに限定されない。例えば、第1スプリングシート52が金属製などであってもよい。
【0117】
(8)
前述の実施形態では、第2スプリングシート62の補強部65が第2保持部24aおよび24bと半径方向に接触していない。しかし、補強部65を利用して第2スプリングシート62の回転を防止することが考えられる。例えば図9に示すように、第2スプリングシート262は補強部265を有している。補強部265の半径方向の寸法は、前述の補強部65の半径方向の寸法よりも長い。このため、前述の実施形態に比べて、補強部265が第2保持部24aおよび24bに接近している。
【0118】
この場合、補強部65に比べて、補強部265の半径方向の寸法が長いため、第2スプリングシート262全体の剛性がさらに高くなる。それに加えて、第2スプリングシート262が回転すると、補強部265が第2保持部24aおよび24bと接触する。このため、第2スプリングシート262全体の剛性をさらに高めつつ、第2スプリングシート262の動作の安定化を図ることができる。
【0119】
なお、第1スプリングシート52においても同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】ダンパーディスク組立体の平面概略図
【図2】ダンパーディスク組立体の縦断面概略図(図1のA−A断面図)
【図3】ダンパーディスク組立体の部分断面図
【図4】ダンパーディスク組立体の部分断面図
【図5】第1スプリング組立体の断面図
【図6】第2スプリング組立体の断面図
【図7】第2スプリングシートの平面図(右側)および断面図(左側)
【図8】第2スプリングシートの平面図(右側)および断面図(左側)(他の実施形態)
【図9】第2スプリングシート周辺の縦断面概略図(他の実施形態)
【符号の説明】
【0121】
1 ダンパーディスク組立体
2 入力プレート
3 ハブ
21 第1プレート
22 第2プレート
5 第1スプリング組立体
6 第2スプリング組立体
7 第3コイルスプリング
51 第1コイルスプリング
52 第1スプリングシート
53 第1支持部
53a 第1支持部本体
53b 第1支持突起
53c 第2支持突起
53d 突出部(第2突出部)
54 第2支持部
54a 第2支持部本体
54b 突出部(第1突出部)
54c 摺動面
55 補強部
61a 第2コイルスプリング
61b 第4コイルスプリング
62 第2スプリングシート
63 第1支持部
63a 第1支持部本体
63b 第1支持突起
63c 第2支持突起
63d 突出部(第2突出部)
64 第2支持部
64a 第2支持部本体
64b 突出部(第1突出部)
64c 摺動面
64d 内周面
65 補強部
66 補強プレート
66a 第1部分
66b 第2部分
66c 第1孔
66d 第2孔
66e 摺動面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
捩り振動を吸収および減衰するスプリングを支持するためのスプリングシートであって、
前記スプリングの端部を前記スプリングの軸線方向に支持する樹脂製の第1支持部と、
前記第1支持部から前記軸線方向に延び、前記軸線方向に垂直な第1方向に前記スプリングの端部を支持する樹脂製の第2支持部と、
前記第1および第2支持部のうち少なくとも一方に少なくとも一部が埋め込まれ、前記第1および第2支持部とともに前記スプリングの端部を直接的あるいは間接的に支持する金属製の補強プレートと、
を備えたスプリングシート。
【請求項2】
前記補強プレートは、前記スプリングの端部を前記軸線方向に支持する第1部分と、前記第1部分から前記軸線方向に延び前記スプリングの端部を前記第1方向に支持する第2部分と、を有している、
請求項1に記載のスプリングシート。
【請求項3】
前記第1部分は、前記第1支持部に埋め込まれており、
前記第2部分の少なくとも一部は、前記スプリングの端部と当接可能なように前記第2支持部から露出している、
請求項2に記載のスプリングシート。
【請求項4】
前記第1および第2支持部を連結するように前記第1および第2支持部と一体成形され、前記第2支持部から前記第1方向に延びる少なくとも1つの補強部をさらに備えた、
請求項1から3のいずれかに記載のスプリングシート。
【請求項5】
前記補強プレートは、前記第1部分から前記軸線方向に延び前記補強部に埋め込まれた少なくとも1つの第3部分をさらに有している、
請求項4に記載のスプリングシート。
【請求項6】
前記第1支持部は、前記スプリングの端部と前記軸線方向に当接する第1支持部本体と、前記第1支持部本体から前記スプリング側に突出する第1支持突起と、を有しており、
前記第1支持突起は、前記スプリングの端部、または、前記スプリングの内周側に配置され前記スプリングの内径よりも外径が小さい小スプリングの端部、に嵌め込まれる、
請求項1から5のいずれかに記載のスプリングシート。
【請求項7】
入力回転体と、
前記入力回転体に対して回転可能に配置された出力回転体と、
前記入力および出力回転体の間で回転方向に圧縮可能なように配置された少なくとも1つのスプリングと、
請求項1から6のいずれかに記載され、前記スプリングの端部に装着された1対の前記スプリングシートと、
を備えたダンパーディスク組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−249008(P2008−249008A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90389(P2007−90389)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(000149033)株式会社エクセディ (270)
【Fターム(参考)】