説明

スプリング構成チューニング方法

【課題】 スプリング部材をチューニングする方法の提供。
【解決手段】 ワークピースを具備し且つ駆動周波数を有するような器具の共鳴駆動システムにおいて適用されるスプリング部材をチューニングする方法であって、前記スプリング部材の動作によって振動する前記ワークピースの周波数依存振幅を計測し、前記計測された前記器具の周波数が動作周波数を上回るか、あるいは下回る場合、前記スプリング部材のスプリングレートを変更することによって前記共鳴周波数を変更して、前記共鳴周波数が前記器具の動作周波数に近似するようにする工程を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に電動歯ブラシなどの小型器具装置に関し、特に左右往復駆動動作をワークピース回転動作に変換するためのスプリング構成に関する。また、本発明は製造過程においてこのスプリング構成を所定の固有共鳴周波数又は振幅にチューニングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小型器具装置のワークピース動作には様々なものがある。また駆動動作とワークピース動作は同一である場合もあれば、例えば左右往復駆動動作を回転動作に変換するなど、特定の駆動動作をこれとは異なるワークピース動作に変換することが好もしい場合もある。特許文献1において開示される磁気ドライバは細長いピボット・アームの端部のうち歯ブラシ部品が結合される端部を駆動しこれが若干アーチ形状がかった軌道上を左右(前後)に往復ようにする。このような動作に従ってこのワークピース(部品)は所望の軌道上を動く。このような構成によって好適なワークピース動作を実現することが可能であるものの、様々な事情から場合によってはこのような左右駆動動作を保持しながらワークピースを所定の円弧内を回転させることが望まれることもある。このような場合左右運動から回転運動への変換を実行するための動作変換アセンブリが必要となる。
【0003】
従来技術における左右駆動動作をワークピース回転動作に変換する装置としては、例えば上記特許文献1に記載される電磁石ドライバなどが知られている。このような装置によってはリンケージ構造を適用するものがある。しかしリンケージ構造においては望まれないバックラッシュ動作が頻繁に発生し、減衰、振動、ノイズの発生につながる可能性がある。また、スプリング素子と組み合わせられるピボット・アセンブリを適用する構成も知られている。ここではトーションバネを適用することが可能であるが、大概はコイルスプリングが適用され、このようなスプリングは典型的にはこの構成で要求される半径剛性と十分に低いトーションバネレートとの両方を備えていない。このような既存の装置のほとんどは各種軸受構造を要し、よってこれらの構成は複雑でノイズが多く信頼性が低いことが多い。また、軸受構造においてもバックラッシュの問題がある。
【0004】
また、スプリング素子は共鳴システムにおける駆動アセンブリの一部として適用されることも頻繁にある。本発明の一実施形態もこのような構成において適用されるものである。この場合共鳴システムの性能を維持するためにスプリング・アセンブリの共鳴周波数を装置の動作又は駆動周波数に近づける何らかのチューニング手段又は非常に厳密な製造公差を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,189,751号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって動作変換アセンブリに関しては、性能が良く、信頼性が高く、製造コストが低い変換アセンブリが求められる。さらにスプリング・アセンブリ・チューニング方法に関しては、アセンブリの製造過程において実行されうる単純なチューニング方法で、装置の製造公差を拡大し(許容範囲を広げ)、装置の製造コストを削減するとともに製造工程において製造される欠陥品の数を低減できるような方法が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一仕様は、左右駆動動作を器具のワークピース部分における回転動作に変更するための装置及びこれに対応する方法に関し、同装置は左右に往復するように駆動される可動ベースマウント素子と、このベース素子から離間して配置され、装置が動作する間に動くことがないように固定される固定マウント素子と、可動ベース素子に接続され、且つ固定マウント素子に固定接続されるスプリング部材と、ベース素子に接続され、前記固定マウント素子に対して回転可能であり、ワークピースが取り付けられるように構成される駆動シャフト部材とを有し、スプリング部材はねじれ動作に対する剛性が屈曲動作に対する剛性よりも実質的に弱いように構成され、このねじれ動作はワークピースにおける所定周波数での回転動作を促す。
【0008】
また本発明の更に別の仕様は、ワークピースを具備し且つ駆動周波数を有するような器具の共鳴駆動システムにおいて適用されるスプリング部材をチューニングする方法に関し、同方法はスプリング部材の動作によって振動するワークピースの周波数依存振幅を計測し、計測された周波数が器具の動作周波数を上回るか、あるいは下回る場合、スプリング部材のスプリングレートを変更することによってこのスプリング部材の共鳴周波数を変更して、この共鳴周波数が器具の動作周波数に近似するようにする工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態による動作変換アセンブリが電動歯ブラシに適用される実施例の構成を示す分解図である。
【図1A】本発明の一実施形態による動作変換アセンブリが電動歯ブラシに適用される実施例の構成を示す分解図である。
【図2】図1の動作変換アセンブリの一部分の構成をより詳細に示す斜視図である。
【図3】歯ブラシのシャフト及びブラシアームの縦軸に対する角度を示す正面図である。
【図4】本発明の実施形態の変形例によるシェーバー装置において適用される動作変換システムの構成を示す図である。
【図5】図2の動作変換アセンブリに対して本発明の一実施形態による周波数チューニング方法を適用した結果を示す図である。
【図6】図2の実施形態の一変形例を示す図である。
【図7】図2の実施形態の一変形例を示す図である。
【図8】図2の実施形態の一変形例を示す図である。
【図9】図2の実施形態のまた別の変形例を示す図である。
【図10】図2の実施形態のまた別の変形例を示す図である。
【図11】図2の実施形態の更に別の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1及び図1Aはハンドル部12及びヘッド部14を有する電動歯ブラシ10を示す。このハンドル部12は充電電池16などの電源及び駆動アセンブリ18を有する。ヘッド部14は所定のパターンに配置された複数の剛毛からなるブラシヘッド20などのワークピース素子、このブラシヘッド20が取り付けられるブラシヘッド・アーム22、動作変換アセンブリ26、及びこの動作変換アセンブリのためのマウント・アセンブリ27を有する。
【0011】
ここで示される実施例による動作変換アセンブリ26は、ブラシヘッド・アーム22の方へ延びてこれと結合する駆動シャフト28の線形動作を回転動作に変換する。こうしてこのブラシヘッド・アーム22及びブラシヘッド20は回転駆動される。またヘッド部14はナット部30を有し、このナット部30によりヘッド部14はハンドル部12に接続され、マウント・アセンブリ27はこのナット30に固定される。
【0012】
ここで示される装置では、駆動アセンブリ18が電磁石に相当し、この電磁石は左右動作力を生成し、動作変換アセンブリ26の後端にある可動端部40に取り付けられる2つの永久磁石32と連動してこの可動端部40を若干アーチがかった軌道において左右に平行移動させる。なお、ここで「左右」動作とは直線的な左右動作及び若干アーチがかった軌道をたどる左右動作の両方を含む。
【0013】
動作変換アセンブリ26はリーフスプリング構成を介して駆動アセンブリの駆動動作を駆動シャフト28のツイスト又は回転動作に変換する。これに応じてブラシヘッド・アーム22及びブラシヘッド20が駆動シャフト28の縦軸A−A(図2参照)の周りを回転するように駆動される。図示される実施例においては、ブラシヘッドの回転角度(アーク角度)は約11°であるが、この角度は可変であり、本発明の実施形態を特徴付ける要素とはならない。
【0014】
図2はこの動作変換アセンブリ26の構成をより詳細に示す。このアセンブリ26は可動端部40を有し、本実施例ではこれはプラスチック材料から形成され長さが約0.6インチ、最大幅が約0.6インチ、厚さが約0.1インチに設計されている。またこの端部40の裏面44にはこの中央から延びるマウント・スタブ46が設置される。このマウント・スタブ46には更に永久磁石アセンブリが設置される。これは本実施例によると金属マウント板50(図1参照)及び離間する2つの矩形永久磁石32−32から構成される。これらの永久磁石32−32はハンドル部12の電磁石18と連係して可動端部40が若干アーチ状の軌道を左右に動くようにこの可動端部40を駆動する。この動作の詳細については、ここで参照により本願に挿入される特許文献1に記載される。なお、上述のような駆動アセンブリ18による左右駆動動作への動作変換は本発明の実施の単なる一例に過ぎず、本発明による動作変換アセンブリはこれ以外にも様々な左右動作ドライバに適用されることが可能である。
【0015】
可動端部40の対向面56にはマウント部58が設けられ、このマウント部58は端部40と一体構造をなすか、あるいはこの端部40にしっかりと固定接合される。このマウント部58からは2つの細長いリーフスプリング60及び62が前方向に延びる。図示される実施例においては、各リーフスプリング60,62はそれぞれ長さ約1インチ、幅0.2インチ、厚さ0.02インチに設計されている。また本実施例においてこれらリーフスプリング60,62は金属から形成される。しかしこの構成要素はプラスチックなど他の材料から形成されることも可能である。
【0016】
図示される実施例における2つのリーフスプリング60,62は相互間で角度70°を形成するように配置される。これら2つのリーフスプリング60,62は可動端部40及び固定端部64との間を延在し、これら両方の端部に固定接合される。固定端部64は全体的には円形の形状を有し、厚さは約0.1インチであり、ここではプラスチックから形成される。またこの固定端部64はその上部と底部のそれぞれにおいて2つの対向するノッチ開口部67,69を有する。
【0017】
2つのリーフスプリング60と62とがマウント部58からそのまま延びていくと互いに交差する点となる位置において駆動シャフト28が配置される。2つのリーフスプリング60と62の平面はこの駆動シャフト28が配置される動作アセンブリの回旋点で交差する。図示される実施例では、この駆動シャフト28は金属からなり、その断面形状は矩形であるが、これ以外の構成をとることも可能である。動作中においてリーフスプリングはねじれ、またある程度曲がることも可能であり、このようにして駆動シャフトの回転動作を生成する。なお、各スプリングにかかる応力を低減するためにスプリングの相対位置及び寸法は最適化されうる。
【0018】
図示される実施例における駆動シャフト28は固定端部64におけるノッチ開口部69を通過してここから延長し、よって固定端部64に対して自由に回転することができる。駆動シャフト28はブラシヘッド・アーム22のほうへ延びて、これに結合される。これにより動作変換アセンブリの動作によって生成される駆動シャフト28の回転運動がブラシヘッド・アーム22及びこの先端部に取り付けられるブラシヘッド20の回転運動を生成する。
【0019】
固定端部64はマウント・アセンブリ27によって固定され、ここで駆動シャフトと共に回転しないように構成される。このマウント・アセンブリ27はプラスチック製のリング部を有し、このリング72からは後方向に2つの対向フランジ74及び76が延在する。これら2つのフランジ74,76はそれぞれ固定端部64のノッチ開口部67,69を介して後方に延長する。またこれら2つのフランジ74,76は歯ブラシのハンドル部12に設けられる対応受け入れ部(非図示)に係合するように構成され、これによりマウント・アセンブリ27(ヘッド部14)とハンドル部12との確実な係合接続が実現されうる。マウント・アセンブリ27のフランジ74、76がハンドル部12における対応する受け入れ部に適正に配置されてナット30が配置されると、後述するように、マウント・アセンブリ27、そして固定端部64は回転しないようにしっかり固定される。また2つのリーフスプリング60、62それぞれの先端部は固定部64に固定接合されるためこれらの素子も動かないようにされる。
【0020】
マウント・アセンブリ27及び変換アセンブリ26の上にはナット素子(カバー素子)30がかぶせられる。この接続ナット素子30はその内側表面にネジ山77を具備し、これによってナット素子30はハンドル部12の外周ネジ山部分67にネジ接続される。ナット30はフランジ74及び76をハンドルにクランプし、これに応じて固定端部64はフランジ74及び76によって所定位置に保持される。なお、ナット30の上部エッジ79には可撓性接続部材78が設けられ、本実施例ではこれはエラストマー材料から形成される。この接続部材78の下部エッジはナット30の上部エッジにぴったりと重なり合う。この接続部材78は封止素子77へ延長する。この封止素子77はブラシヘッド・アーム22とこの接続部材78の上端部との間を液体によって封止する。
【0021】
動作中はハンドル部内の電磁石ドライバ18(又はその他各種左右駆動ドライバ)によって生成される左右駆動動作は可動端部40の若干アーチがかった軌道上をたどる左右動作を生成し、これによってブラシヘッド20が特定の角度内において回転する。
【0022】
図示される実施例では2つのリーフスプリング60、62、及び駆動シャフト28はそれぞれ歯ブラシの縦軸B−B(図3参照)から角度α逸れた方向に延びるように固定端部及び可動端部に取り付けられる。この角度αは5−15°の範囲内にあり、より好適には10°である。ブラシヘッド・アーム22にこのような角度を設けることにより、ユーザの口内のより奥まで達することが可能になる。この構成は様々な観点から好適な効果を発揮しうる。また、このような構成では回転動作の回旋点とハンドルの軸とが異なる。このように回旋点が装置の縦軸から逸れているため、駆動シャフトの回転軸に対する装置の他の部分の慣性モーメントが上昇し、これに応じてハンドルの振動が低減されうる。これは慣性モーメントが大きいほどハンドルを含む装置の振動が低減されうるからである。これはユーザにとって好都合である。
【0023】
なお、上述の実施例においては互いに特定の角度(70°)をなす2つの別々のリーフスプリングが適用されるが、必ずしも2つのリーフスプリングを適用する必要はない。またリーフスプリングの分離角度は90°±40%の範囲内において可変である。更に、2つ以上のリーフスプリングをラジアルパターンに配置することも可能であり、この場合リーフスプリングの平面は駆動シャフトの回旋点を交差する。また2つのリーフスプリングはV字型もしくはU字型、または片開きの正方形又は長方形の形状を有する単一リーフスプリングに結合されることも可能であり、またこれ以外の構成をとることも可能である。駆動シャフトはシステムの可動端部を介してスプリングに接続される必要がある。なお、この駆動シャフトはスプリングのこれ以外の箇所に接続されることはできない。この構造は単一体を構成されることが可能である。スプリング素子の主な構成要件としては、ねじれに対する剛性が屈曲に対する剛性よりも弱くなるように構成されることが要求される。すなわち可動端部の左右動作によってスプリングのねじれが生じ、これによって駆動シャフトが回転するように構成される必要がある。ここにおいて示される実施例はこのような動作を実現することが可能である。しかしこれ以外の構成によってこのような動作を実現することも可能である。また更なる重要なスプリングの構成要件として、このようなスプリングは単にブラシヘッドの回転動作を実現するだけではなく、選択された周波数でこのような回転動作を実現することができるように構成される必要がある。
【0024】
図6、図7及び図8は図1−3に示される動作変換アセンブリの実施形態の変形例を示す。この変形例ではワイヤ式のスプリング構造が適用される。この動作変換アセンブリはバックプレート120及び永久磁石122を有する。このバックプレート120にはスタブ126を介してアーマチュウア・シャフト124が取り付けられる。このアーマチュア・シャフト124は先端部127において相互直角(90°)に配置される2つのスロット123,125を有する。また、これらスロット123、125には相互直角に配置される2つのワイヤ式スプリング128及び130が挿入される。また、ブラシシャフト129はスロット123、125に係合する交差素子131,133を有し、この係合によりワイヤ式スプリングはアーマチュア・シャフト124及びブラシシャフト129のそれぞれの端の間に挟持されうる。
【0025】
ブラシシャフト129の先端部135にはブラシヘッドなどのワークピース(非図示)のためのベース素子137が設けられる。ブラシシャフト129とアーマチュア・シャフト124との係合部分にはブラシシャフト129の上から接管136が押し被され、これによってこの接管136はコレットのようにスプリング、ブラシシャフト、及びアーマチュア・シャフトを結合された状態で保持する。そして次にワイヤ式スプリング128及び130の後端部がスプリングマウント138に係止される。このスプリングマウント138はその後端部139においてスロット141を具備し、これによってワイヤ式スプリングの後端部を係止する。そしてこのスプリングマウント138は装置のハウジングに固定接続される。ここで駆動アセンブリにおいて生成される左右動作力によって促されるバックプレート120の動作の結果ブラシシャフト129が回転する。
【0026】
図9及び図10は更に別の実施例を示す。ここでの変換アセンブリは単一体のマルチ・リーフスプリング140を有する。このマルチ・リーフスプリング140は一端148で結合される3つの脚142−144を有する。このスプリング140は可動後部部材150に取り付けられ、ここにはチューニング体151が配置される。このチューニング体151から素材を除去することでスプリング・アセンブリの共鳴周波数をチューニングすることができる。可動後部部材150の裏面にはバックプレート素子152が配置され、このバックプレート152には永久磁石154が固定される。またこの可動後部部材150にはここから先方へ延びる駆動シャフト158が接合される。この駆動シャフト158の先端155にはブラシヘッドなどのワークピース(非図示)が固定される。スプリング・アセンブリ140の自由端は固定マウント素子160に接合され、駆動シャフトはここから先方へ延びる。この固定マウント素子160は歯ブラシ装置のハウジングに固定される。ここでは可動部材150の往復運動により駆動シャフト158及びワークピースが回転運動する。
【0027】
また、これ以外のスプリング構成を適用することも可能である。例えば複数のスプリング素子161−161を後部可動マウント部材163から固定マウント部材165へ延在させたバスケット形状の構成なども可能である。この複数のスプリング素子161−161は2つのマウント部材の間において外側に広がるような形をとる。図11はこのような構成において4つのスプリングを適用した例を示すが、スプリングを更に追加することも可能である。ここで各スプリングの平面はスプリング・アセンブリの回旋点を交差するように延びる。またスプリング・アセンブリの回旋点には可動部材163から延びて固定部材165の開口部167を通過する駆動シャフト(非図示)が設置される。
【0028】
上記の変形例でもスプリング部材は屈曲動作よりもねじり動作に対する剛性が弱いという特性を有し、これによって左右駆動力に応じて駆動シャフトの回転動作が実現されうる。
【0029】
図4は本発明の実施形態のまた別の適用例を示す。ここで本発明は電気カミソリ80に適用され、この装置は上記実施例と同様に永久磁石を含み磁気駆動機構82によって駆動される可動端部81を有する。この可動端部81からは所定角度をなす2つのリーフスプリング84及び86が延び、これらスプリングはその他方の端で固定端部88に固定接続される。駆動シャフト90はこの固定端部88から後方へリーフスプリング84及び86に対して平行に延びる。この駆動シャフト90は可動端部81から支持素子82よって支持された状態で吊るされ、駆動アセンブリ82の下側において延在する。
【0030】
この駆動シャフトにはここから外側半径方向に延びる複数の細長カッターブレード94が固定接合される。これらブレード94の外側エッジはカッター状に研がれている。これらの外側エッジはシェーバースクリーン素子96と接触する。動作中は端部81の左右動作によってシャフト90が回転運動し、これにより更にカッターブレード94が所定角度内において回転してカミソリ装置の切断動作を実現する。
【0031】
この実施例から理解されうるようにワークピースが取り付けられる駆動シャフトの位置及び構成は動作変換アセンブリによって様々な形を取ることが可能である。但しこれらの実施例において可動端部が左右に駆動され、駆動シャフトの回転運動を実現するスプリング・アセンブリがこの可動端部から固定端部へ延び、駆動シャフトがこの可動端部に取り付けられてこのシャフトに接合されるワークピースの回転運動を促す。
【0032】
本発明の実施形態によると、軸受素子や収縮素子を設ける必要性がなくなる。これは主にスプリング素子の屈曲が少ないからである。しかしこのような簡素化にもかかわらず本発明は頑丈で、信頼性及び性能の高い構成を実現しうる。更に本発明による構成は共鳴アセンブリであって、装置の動作(駆動)周波数に合わせられうる。例えば歯ブラシの実施例においては、所望の動作周波数は約261Hzである。したがってスプリング・アセンブリはこの周波数での回転運動を実現できるように設計・構成されうる。
【0033】
上述のように図1に示される変換アセンブリを含む歯ブラシ装置は「共鳴」システムに相当する。すなわちシステム内の機械的構成素子の固有共鳴周波数が歯ブラシ装置の動作又は駆動周波数と合致するように構成されていて、この歯ブラシ装置の例においてはこの周波数は約261Hzである。このような共鳴システムは非共鳴システムよりも高性能である。
【0034】
上述のようにスプリング・システムの共鳴周波数を装置の動作周波数に確実に合致させるためには様々な既存の方法が適用されうる。このような方法の1つとして、装置の製造工程において機械システムの構成及び設計を厳密に制御してチューニングなしで所望の周波数への合致を実現するという方法がある。しかしこの場合製造公差は相当厳密でなければならなく(より精度の高い部品を使用する必要性も発生し)、よって大概は相当多くの装置がこの厳密な製造交差の要件を満たさないために欠陥品として破棄されることになる。
【0035】
また別の方法として、スプリング構成の共鳴周波数を装置の動作周波数に合致させるためにスプリング構成を「チューニング」または調整する各種処理動作を実行する方法がある。このようなチューニング処理は典型的には相当な時間と技術を要し、よって典型的にはコスト面からあまり好適でない。このようなチューニング処理は製造過程又はその後例えば既にユーザの手に渡っている場合においても実行されうる。
【0036】
本発明はこのような仕様に関して、高音製品における共鳴スプリング・システムをチューニングするための方法を開示する。本発明による方法はスプリング・アセンブリの共鳴周波数を装置の動作周波数に合致させるためにこの共鳴周波数を上昇又は低下(チューンアップ又はチューンダウン)させるのに適用されうる。
【0037】
本発明の方法における第1ステップでは、ワークピースの振幅が試験周波数で計測されるかあるいはこの逆の処理が行われる。すなわち可変周波数に対して一定振幅が適用されるか、あるいは可変振幅に対して一定周波数が適用されることが可能である。これらの技法は共にチューニングに適用されうる。スプリング・アセンブリをチューニングするためにはこのスプリング・アセンブリの動作特性カーブにおける動作点をシフトして所望の動作周波数又は振幅と合致させる。
【0038】
この動作特性カーブにおける動作点を低下させる(周波数の低下)のにはスプリング・アセンブリのスプリングレートを低下させればよい。また、動作特性カーブにおける動作点を上昇させる(周波数の増加)のにはスプリング・アセンブリのスプリングレートを上昇させればよい。多くのチューニングシステムはスプリング・システムの重さを増減させることにより同システムの慣性を上昇あるいは低下させるが、この方法は典型的には精度がそれほど高くなく、所望の周波数への合致を実現するためには比較的高重量を増減しなければならない。しかし本発明の方法ではスプリング・アセンブリ(ここでの実施例ではリーフスプリングに相当する)の構成を変更することにより(慣性ではなく)スプリングレートを上昇あるいは低下させることに着目している。
【0039】
スプリングレートを低下させる処理においては、製造された各リーフスプリングをそれぞれ図5に示されるように一部切断することによってその構成を変更することができ、これによってリーフスプリングのスプリングレートが変更しうる。また、このスプリングに素材を加えることによりスプリングレートを上昇させることも可能である。図示される実施例では、100において示される切断部110によってスプリングの幅を縮めることが可能である。この切断部110は疲労を発生させる応力を低減するために大体スプリング素子106の両端102及び104から等距離である点を中心に形成される。この切断部110の深さは(スプリングの幅に沿った深さ)は要求されるチューニングの度合いに合わせて調整される。この切断部の可変値としては、切断部全体の長さ、形状(すなわち切断部の曲率)、及び切断部の幅を含む。ここで示される実施例においては、切断部110は湾曲した形状を有するが、これ以外の切断形状にすることも可能である。例えば1つ又は両スプリングの中心にフットボール形状のスロットを設けることも可能である。このような構成における可変値としてはスロットの位置、スロットの長さ及び/又は幅、スロットの曲率などがある。このような切断は、レーザー、グラインダー、又は一般の切断器具などを適用するなど様々な手法によって実現されうるが、素材を除去する方法は本発明に追いける重要要件とはならない。
【0040】
切断が実行された後はこの構造体の周波数が許容される公差の範囲内にあることを確認するために更なる試験が行われる。切断された構造体が許容公差に満たない場合は更なる切断を実行して所望の公差に調整することができる。このようなチューニング方法により、装置の製造公差の厳密さが以前よりも緩和される。これによって製造された装置にうち欠陥品として拒絶される装置の数が低減しうる。更にチューニングが製造過程において迅速且つ効率的に実行されることが可能であり、装置はその後更にチューニングされる必要がなくなる。
【0041】
本発明はまず第1に、歯ブラシなどの装置に適用される左右動作から回転動作への動作変更を実現するための新たな動作変換アセンブリを提案する。この好適な一実施形態ではねじれに対する剛性が屈曲に対する剛性よりも弱いように構成されるリーフスプリングが適用される。ここにおいてスプリング・アセンブリは多少の屈曲を伴いながらねじれて、ワークピースの取り付けられた駆動シャフトにおいて所望の回転運動を実現する。なお、ここでスプリングが屈曲に対する強い剛性を有することにより軸受けを設ける必要性がなくなる。また、変換対象となる動作は「左右」動作と称されるが、このような動作は直線的な動作に加え上記実施形態において記載されるような若干アーチがかった軌道を往復する動作をも含む。ワークピースの動作はこのワークピースが取り付けられる駆動シャフトの軸を中心とする回転動作に相当する。本発明はまた第2にスプリング・アセンブリ・システムをチューニングするための方法として製造過程においてこのシステムの共鳴周波数をこのシステムにおける所望の動作周波数(駆動周波数)に合わせるための方法を提案する。これにより製造公差に対する要件が緩和されうる。
【0042】
なお、上記においては本発明による動作変更システム及びチューニング方法の好適な実施形態が例として説明されているものの、本願の請求項によって規定される本発明の範囲を逸脱することなくこれらの実施例に対して様々な変形、変更、及び置換を加えることも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースを具備し且つ駆動周波数を有するような器具の共鳴駆動システムにおいて適用されるスプリング部材をチューニングする方法であって、
前記スプリング部材の動作によって振動する前記ワークピースの周波数依存振幅を計測し、前記計測された前記器具の周波数が動作周波数を上回るか、あるいは下回る場合、
前記スプリング部材のスプリングレートを変更することによって前記共鳴周波数を変更して、前記共鳴周波数が前記器具の動作周波数に近似するようにする工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記スプリング部材のスプリングレートを低下させるために前記スプリング部材の一部を除去する工程を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記スプリング部材のスプリングレートを上昇させるために前記スプリング部材に素材を追加する工程を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記スプリング部材はリーフスプリング・アセンブリに相当し、前記スプリング部材の一部の除去は前記リーフスプリングの一側辺から前記リーフスプリングの一部を切断することによって実現されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記除去された部分の形状は切断部分の長さ方向に沿って前記スプリングの幅が徐々に小さくするように構成され、前記切断部において最大深さを有する部分は前記切断部分の中心点付近にあるように構成され、前記切断部分は前記リーフスプリングの両端からの等距離点付近に位置づけられることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記除去された部分は切断部分に相当し、前記切断部分は前記切断部分の一端から他方端までの間において湾曲を形成するように構成されることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
スプリング部材は所定の角度を形成ように配置される2つのリーフスプリングからなる構成において、
各リーフスプリングの一部分を除去する工程を含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項8】
前記器具は回転可能なワークピースを有する歯ブラシに相当することを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項9】
前記切断工程は、所望のスプリングレートへの変更を実現するために前記切断の幅、前記切断の長さ、前記切断の曲率、及び前記リーフスプリングの長さ方向に対する前記切断の位置を制御する工程を含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項10】
前記部分は前記リーフスプリングのうちの少なくとも1つの内側部分から除去され、前記除去部分はフットボール形状を有することを特徴とする請求項2記載の方法。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−233347(P2009−233347A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160547(P2009−160547)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【分割の表示】特願2004−500723(P2004−500723)の分割
【原出願日】平成15年4月25日(2003.4.25)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】