説明

スプリント材およびこれを用いたサポータセット

【課題】製品形態を画一的且つコンパクトにでき、しかも消費者側で任意の長さや形状にカットすることができるスプリント材およびこれを用いたサポータセットを提供する。
【解決手段】患部を固定するスプリント材であって、帯板状の芯体と、この芯体を長手方向に挿入可能な扁平な管状テープ体とからなり、この管状テープ体の片面に身体に貼着される他の貼付体の表面または直接身体に貼着可能な粘着層を設けてなる。芯体は弾性を有する。また、管状テープ体は、長尺に成形したうえ、これを芯体が未挿入の状態でロール状に巻回してなり、一定長さ毎に内部を分割する底を複数形成してなる。この底は、テープ内部を幅方向に沿って点線状に接合した構成とすることが好ましい。さらに、スプリント材と、テーピング用テープまたは湿布とを別体に備えたサポータセットである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、テーピング用テープや湿布にコルセット効果を付与することができるスプリント材およびこれを用いたサポータセットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、骨折や重度の捻挫などの重傷を負った場合、患部の絶対安静が必要なため、ギプスやコルセットで患部を完全に固定する療法が採用されている。
【0003】
一方、負傷の程度が比較的軽症であれば、サポータリングを装着することもあるが、蒸れが起きやすいため、近年では、症状の悪化防止を目的として、患部を粘着テープで固定するテーピングが広まりつつあり、特にスポーツ医学の分野で発達している。用いるテーピング用の粘着テープやその貼り方は、患部(負傷部位)や症状に応じて選択されるものの、基本的には患部を完全に固定するのではなく、関節や筋肉の過度な動きだけを規制するように処置される。この他、テーピングは、怪我の予防や重傷時の救急措置としても採用され、また、姿勢の矯正にも採用されることがある。ただし、闇雲に粘着テープを貼り付けたのでは効果が得られないばかりか、うっ血などの危険もあるため、テーピングには一定の専門知識が必要とされ、通常は、専門トレーナーの指導の下、処置が施される。
【0004】
この他、湿布によって患部の炎症や痛みを緩和することもあり、患者が個人で最も手軽にできる応急処置の一つであるが、これは専ら薬効によって消炎・鎮痛作用が得られるに過ぎず、患部を固定するものではない点で上記2つの処置法とは性質を異にする。
【0005】
そして、患部を固定する別の手段として、スプリント(副木あるいは添え木)を用いる方法があるが、これを簡便に行うために、柔軟性を有するシート状の貼付体に、棒状あるいは板状の支持体をほぼ平行に配置し、一体化してなる簡易コルセットが提案されている(特許文献1)。この簡易コルセットによれば、貼付体を患部に貼るだけで支持体がスプリントとして機能し、一定のコルセット効果が得られる。その上、患部を完全に巻き締めるコルセットのように装着不便さやごわつき感がなく、蒸れも軽減され、さらに安価であるという利点がある。しかも、テーピングの専門知識がなくとも、湿布のように患者個人で手軽に処置できるという利点がある。
【0006】
このように、絶対安静が必要な重傷の場合は別として、症状がこれに至らない比較的軽症の場合は、従来のテーピングに代えて特許文献1記載の簡易コルセットを使用することが簡便である。
【0007】
【特許文献1】特開平6−105857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の簡易コルセットは、支持体を熱融着や接着により予めシート状貼付体に直接貼り合わせた構成であるため、メーカは患部や症例を想定して、これに応じた長さや形状にカットした製品を数種類用意しなければならず、患者もまた、数ある製品の中から自身の症例に適応するものを選択する手間が生ずる。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するためになされもので、その目的とするところは、製品形態を画一的且つコンパクトにでき、しかも消費者側で任意の長さや形状にカットすることができるスプリント材およびこれを用いたサポータセットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するために本発明では、患部を固定するスプリント材であって、帯板状の芯体と、この芯体を長手方向に挿入可能な扁平な管状テープ体とからなり、この管状テープ体の片面に身体に貼着される他の貼付体の表面または直接身体に貼着可能な粘着層を設けるという手段を用いた。芯体は患部の関節や筋肉の動きを規制するスプリント本体として機能する。管状テープ体は芯体の鞘材として機能し、粘着層によって患部に直接または他の貼付体に貼着することができる。この他の貼付体は、テーピング用テープまたは湿布であることが好ましい。
【0011】
本発明のスプリント材を重傷に至らない比較的軽症の患部に適用する場合は、関節や筋肉の動きをある程度許容するために、芯体はプラスチック板やゴム板などの弾性を有する素材で構成することが好ましい。当該手段によれば、弾性変形によって患部の動きをある程度許容しつつ、その弾性力に応じた負荷が発生して患部の過度の動きが規制されると共に、弾性復元力によって患部の筋肉が補助される。
【0012】
本発明のスプリント材は、メーカ側が芯体と管状テープ体とを別体の状態で提供できるため、消費者側で任意の長さにカットすることができる。このとき管状テープ体は、長尺に成形したうえ、ロール状に巻回しておくことが好ましい。管状テープ体をコンパクトな製品形態にでき、また、簡単に必要な長さだけカットすることができるからである。
【0013】
管状テープ体は、単なる筒状であってもよいが、そうすると芯体が抜け落ちる恐れがあるため、一定長さ毎に内部を分割する底を複数形成してなることが好ましい。この手段によれば、底を境に管状テープ体をカットすることで、有底状の筒体が得られ、芯体が抜け落ちることを防止できる。
【0014】
このとき管状テープ体の底の間隔は、想定される芯体の最大長に合わせて設定することもできるが、テープ内部を幅方向に沿って点線状に接合すれば、ミシン目のような破封可能な底が形成されるから、芯体の長さに関係なく底の間隔を設定することができる。
【0015】
なお、管状テープ体は、不織布などの通気性を有する素材から成形することが好ましい。蒸れを防止するためである。同時に、テープ内に水が溜まらないように、メッシュ地を構成することが好ましい。ただし、その他の素材から管状テープ体を成形してもよく、例えばプラスチックフィルムから成形する場合は、ホットシールによって、より簡単に上述した態様の底を形成することができる。
【0016】
さらに、芯体に磁石を固着しておくことで、患部の磁気治療効果も得られる。また、磁石を芯体に固着する場合、先ず芯体に凹部または透孔を設けておき、そこに磁石を固着することで、磁石が強固に固着できると共に、平滑面に磁石を固着した場合に比べて磁石と身体の距離が狭まるから、より効果的な磁気治療が期待できる。
【0017】
また、本発明では、上述したスプリント材と、テーピング用テープまたは湿布を別体に備えてサポータセットを構成するという手段を用いた。この場合、テーピング用テープや湿布がスプリント材のベースとして機能する。そして、これらについても長さや形状を任意にカットでき、その上にスプリント材を貼着することで、簡易コルセットを構成することができる。なお、テーピング用テープや湿布は、身体に直接貼るもので、その剥がれにくさを考慮すれば、ある程度伸縮性を有する素材からなることが好ましいが、非伸縮性のものであってもよく、スプリント材の機能が失われないのであれば、特に素材を限定するものではない。
【発明の効果】
【0018】
このように、本発明によれば、芯体を管状テープ体に挿入して貼着するだけで使用できるから、テーピングの専門知識を必要とせず、簡易に患部を固定できる。また、コルセットのような圧迫感もなく、蒸れることもないため、装着感に優れる。さらに、メーカ側は商品形態を芯体と管状テープ体のセット販売に画一化でき、消費者側も自身の症状に応じて任意の長さや形状にカットすることができる。さらに、テーピング用テープや湿布をもセットにすれば、より確実にスプリント材を身体に装着できる上、簡易コルセットを簡単に構成することができる。
【0019】
一方、芯体が弾性を有するものにあっては、一定の固定効果を発揮しつつ、患部の必要最低限の動きが許容されると同時に、弾性復元によって筋肉を補助する効果も得られる。また、芯体に磁石を固着したものにあっては患部に磁気治療効果が得られ、磁石を凹部や透孔に固着することで、より高い磁気治療効果が得られると共に、磁石の脱落防止効果も高い。
【0020】
さらに、ロール状に巻回した管状テープ体にあっては、必要な分だけをカットしやすく、そのうえ、一定間隔に底を設けたものにあっては、芯体の抜け落ちが防止され、テープ内部を点線状に接合して底としたものにあっては、芯体の長さに応じて適宜途中の底を破封して長手方向に連通させることができるから、様々な長さの芯体に対応する使い勝手のよい管状テープ体とすることができる。また、管状テープ体がメッシュ地からなる場合は、通気性がよく、テープ内部に水や汗が溜まることもないため、着衣を濡らすといった不快感もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るスプリント材1を示したものであって、芯体2と管状テープ体3とからなる。芯体2は、プラスチック板や硬質のゴム板を予め所要長さにカットして帯板状としたもので、弾性を有する。なお、具体的な寸法や弾性力は、患部や症状に応じて決定されるが、一例としてジュラコン(登録商標)に代表されるアセタール樹脂を素材とすることが好ましい。成型や量産が容易である上、機械的特性のバランスがよく、耐疲労性および耐候性に優れるからである。一方、管状テープ体3は、不織布やプラスチックフィルを素材として、内部に芯体2が挿入可能な扁平の筒状に成形し、片面(裏側表面)に粘着層3aを設けたものである。この実施形態では、管状テープ体3を数メールの長尺に成形し、粘着層3aを剥離紙3bで被覆した上、巻き芯3cを用いてロール状に巻き付けている。
【0022】
そして、メーカ側は、長さが異なる複数本の芯体2…2と、1本の管状テープ体3を同梱した状態で本スプリント材1を流通に供することができる。また、これにテーピング用テープ4または湿布5をさらにセットにすれば、サポータセットとして販売することができる。
【0023】
これに対して消費者は、図2に示すように、管状テープ体3を任意の長さにカットしてから、これに芯体2を挿入した上で、本スプリント材1を患部に貼着して使用することができる。このとき、本スプリント材1を予めテーピング用テープ4や湿布5の表面(粘着層とは反対面)に貼着しておき、一体化した状態で患部に装着することが好ましい。なお、図示では、管状テープ体3をテーピング用テープ4の長手方向に沿って貼着したが、幅方向、斜め方向に貼着するようにしてもよい。また、本スプリント材1を患部に直接貼着することも排除するものではない。
【0024】
図3は、本スプリント材1(サポータセット)の使用例を示したものであり、腰部を患部として、脊椎の左右に本スプリント材1を貼着したテーピング用テープ4を上下方向に貼付した上、尾骨近辺で両テーピング用テープ4の下部を拘束するように、さらにテーピング用テープ4を水平に貼付している。当該使用例によれば、腰の曲げが本スプリント材1の芯体2によって拘束された簡易コルセットが構成される。ただし、芯体2は弾性を有するため、過度な動きのみを防止するもので、腰の曲げを完全に阻害するものではない。また、芯体2の弾性復元によって腰の筋肉が補助され、曲がった腰を正常な位置に戻す矯正力が作用するため、楽に背筋を伸ばすことができる。
【0025】
ところで、本スプリント材1の管状テープ体3は単なる筒状であるため、芯体2が抜け落ちることが予想される。この点、図3に示した使用例であれば、水平方向のテーピング用テープ4によって本スプリント材1の下部が閉塞されるため、芯体2が抜け落ちることがない。また、芯体2を挿入した後、管状テープ体3の上下端を粘着層3a側に折り畳めば、管状テープ体3を封緘することができるため、やはり芯体2の抜け落ちを防止することができる。
【0026】
さらに、図4に示したように、一定長さ毎に管状テープ体3の内部を分割する底3dを形成しておけば、この底3dを境に管状テープ体3をカットすることで有底筒状となり、芯体2の抜け落ちを防止することができる。
【0027】
しかしながら、管状テープ体3の内部を底3dで完全に封止すると、入浴時に管状テープ体3内に水が溜まり、不快である。そこで、芯体2の抜け落ちを防止しつつ、排水可能な底3dとして、管状テープ体3の内部を幅方向に沿って点線状に接合した構成を採用することが好ましい。当該点線状の底3dによれば、接合部分で芯体2が支持される一方、未接合部分から水を排出することができる。また、接合部分の接合強度を調整することで、底3dを破封することが可能となるから、仮に、カットした管状テープ体3に複数の底3dが存在する場合でも、中途の底3dを破封することで芯体2を挿入することが可能となる。なお、点線(接合部分)の長さやその間隔(未接合部分)は同一であっても、ランダムであってもよい。
【0028】
この他、管状テープ体3をメッシュ地とすることで、通気性はもちろん、上述した排水機能も得られるため、装着感に優れる。さらに、管状テープ体3が疎水性を有する場合、管状テープ体3に水や汗が染みこむことがないため、着衣を濡らすという不快感をより確実に防止することができる。
【0029】
図5は、芯体10の別実施形態を示したもので、磁石11を固着して磁石付き芯体としたものである。磁石11は貼付式の磁気治療器に用いられる円盤形など公知の粒状強力磁石であり、この磁力により患部の血行促進やほぐし等の効果を得るものである。より具体的には、磁石11を芯体10の長手方向に沿って等間隔に複数粒を固着しており、図示では1列に磁石11を配しているが、2列以上であってもよい。また、この実施形態では、磁石11を芯体10の表面に設けた凹部10aに埋め込むようにして固着している。従って、粒状の磁石11をより強固に定着できると共に、磁力は距離の2乗に反比例するが、本実施形態の場合、凹部10aによって芯体10が肉薄となるため、有効な強さの磁力を身体に作用させることができる。また、この実施形態によれば、磁石11の一部は芯体10から突出するため、この突出側を身体側(テーピング用テープ側)として上述の管状テープ体に挿入すれば、芯体10が障害とならず、また磁石11と身体の距離が一層狭まるため、より確実に磁気治療効果が得られると共に、磁石11の突出部による指圧効果も期待することができる。
【0030】
ここで磁石11の固着方法は、接着によるのが最も簡便であるが、芯体10が合成樹脂である場合は、その成形時に磁石11を一体成形することも可能であるし、また、加熱や超音波等によって磁石11を樹脂製芯体10に溶着することも可能である。さらに、磁石11をプラスチックフィルムでラミネートしてもよく、この場合は、より確実に磁石11の脱落を防止できる。ただし、本発明においては、特に固着方法を限定するものではない。
【0031】
また、凹部10aに代えて芯体に表裏貫通する透孔を設けておき、この透孔に磁石11を固着するようにすれば、芯体の表裏で磁力に差がなくなるから、このような磁着付き芯体にあっては表裏を気にすることなく管状テープ体に挿入することができる。ただし、凹部10aや透孔など、何ら表面加工をしていない芯体の平滑面上に磁石を固着することであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係るスプリント材およびサポータセットを示した説明図
【図2】同、使用方法を示した説明図
【図3】同、使用例を示した説明図
【図4】管状テープ体の好ましい構成を示した説明図
【図5】芯体の別実施形態を示した説明図
【符号の説明】
【0033】
1 スプリント材
2 芯体
3 管状テープ体
4 テーピング用テープ
5 湿布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患部を固定するスプリント材であって、帯板状の芯体と、この芯体を長手方向に挿入可能な扁平な管状テープ体とからなり、この管状テープ体の片面に身体表面に貼着される他の貼付体の表面または直接身体に貼着可能な粘着層を設けてなることを特徴としたスプリント材。
【請求項2】
他の貼付体は、テーピング用テープまたは湿布である請求項1記載のスプリント材。
【請求項3】
芯体は、弾性を有する請求項1記載のスプリント材。
【請求項4】
管状テープ体は、長尺に成形したうえ、これを芯体が未挿入の状態でロール状に巻回してなる請求項1、2または3記載のスプリント材。
【請求項5】
管状テープ体は、一定長さ毎に内部を分割する底を複数形成してなる請求項4記載のスプリント材。
【請求項6】
底は、テープ内部を幅方向に沿って点線状に接合してなる請求項5記載のスプリント材。
【請求項7】
管状テープ体は、メッシュ地からなる請求項1から6のうち何れか一項記載のスプリント材。
【請求項8】
芯体に磁石を固着してなる請求項1から7のうち何れか一項記載のスプリント材。
【請求項9】
芯体に凹部または透孔を設け、この凹部または透孔に磁石を固着した請求項8記載のスプリント材。
【請求項10】
請求項1から9のうち何れか一項記載のスプリント材と、テーピング用テープまたは湿布とを別体に備えたことを特徴とするサポータセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−291311(P2009−291311A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145967(P2008−145967)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000111133)ニッポー株式会社 (24)
【Fターム(参考)】