説明

スプレーノズル

【課題】スプレー剤を噴出するノズルに対して、チェック弁を介してスプレー剤が供給される構成において、チェック弁やノズルに詰まりや液だれが発生した場合、チェック弁やノズルの修理や交換を簡単に行うことができるスプレーノズルを提供すること。
【解決手段】チェック弁4と、ノズル孔3aを有するノズル3と、略筒状に構成され、その両端側に互いに連通する開口部2a・2bを有し、先端側開口部2aにノズル3を着脱可能に支持するとともに、後端側開口部2bに弁体5が後端側開口部2bの内側から接する弁座面2cを形成し、支持孔51に対して支持されるソケット2と、ソケット2に対して着脱可能、かつ弁体5に対して近接離間する方向に移動可能に、先端側開口部2aからソケット2に内装され、弁体5との間にスプリング6を介装した状態で、ソケット2に対して前記近接離間する方向について位置決めされる止め板20とを備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鋳造用金型の成形空間の表面への離型剤の塗布に好適に用いられるスプレーノズルの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えばアルミニウム合金等の軽合金鋳物の鋳造に際しては、鋳造製品(成形品)の金型に対する離型性を高めるため、金型における成形空間(キャビティ)の表面(キャビティ面)に、離型剤が塗布される。キャビティ面に対する離型剤の塗布に際しては、スプレーノズルを備える構成が用いられる場合がある。すなわち、金型の型開き状態において、成形品が取り出された後、スプレーノズルを備える構成が、ロボットアーム等の支持装置によって型間に挿入される。そして、離型剤が、スプレーノズルから噴出あるいは噴霧されることにより、キャビティ面に対して塗布される。
【0003】
キャビティ面に対する離型剤の塗布に際して用いられる、スプレーノズルを備える構成についての技術として、例えば、特許文献1に記載の技術がある。特許文献1には、離型剤を噴出するためのノズルと、このノズルに対する離型剤の供給経路に設けられるチェック弁とを備える離型剤塗布用のスプレーガンについての技術が開示されている。
【0004】
このように、ノズルに対する離型剤の供給経路にチェック弁が設けられる構成においては、チェック弁やノズルに、金型からの輻射熱の影響等により固化した離型剤や異物等の詰まりが発生したり、チェック弁にて前記のような詰まりが生じることでチェック弁の機能が損なわれること等によって、ノズルからの液だれが発生したりする場合がある。こうした場合、チェック弁やノズルについての修理(掃除)や交換の必要が生じる。
【0005】
しかし、特許文献1に開示されている構成においては、チェック弁やノズルの修理や交換に際して、次のような不具合がある。すなわち、特許文献1に開示されている構成においては、ノズルの支持等のための構造が比較的複雑であるため、チェック弁やノズルが、その修理や交換が可能となる状態となるまでの作業(分解する作業)が煩雑となる。また、特許文献1に開示されている構成においては、ノズルが、チェック弁を構成するスプリングに直接接していることから、修理や交換のためにノズルが取り外された際に、スプリングが飛び出す可能性がある。このように、ノズルが取り外されることでスプリングが飛び出すことは、作業性の面から好ましくない。
【0006】
一方、キャビティ面に対する離型剤の塗布に際して用いられる、スプレーノズルを備える構成の一例として、スプレーカセットがある。具体的には、スプレーカセットは、例えば板状の部材によって構成される箱状のカセット体を有し、そのカセット体における一または複数の面に、複数(多数)のスプレーノズルを備える。つまり、スプレーカセットにおいては、キャビティ面の大きさ等に応じた大きさのカセット体が構成され、そのカセット体における一または複数の面に、複数のスプレーノズルが例えば突出した状態で配設される。そして、その複数のスプレーノズルから、離型剤が噴出あるいは噴霧されることにより、キャビティ面の広範囲にわたって離型剤が一度に塗布される。
【0007】
しかし、従来のスプレーカセットにおいては、次のような不具合があった。すなわち、従来のスプレーカセットにおいては、ノズルに対する離型剤の供給経路に設けられるチェック弁が、前述のようなカセット体の内部に設けられていた。具体的には、カセット体の内部において、離型剤の供給経路を構成するチューブ等の配管が各スプレーノズルから延設され、その配管の途中にチェック弁が設けられること等により、前記のとおりカセット体を構成する板状の部材によって形成される空間の内部に、チェック弁が設けられていた。このため、チェック弁の修理や交換に際して、カセット体の外部(外側)からチェック弁を取り外すことができなかった。つまり、従来のスプレーカセットにおいては、チェック弁の修理や交換に際して、カセット体の分解が必要となり、作業が煩雑となっていた。また、前記のとおりカセット体の内部に設けられるチェック弁は、分解することが困難な一体構造のものである場合があった。この場合、チェック弁に離型剤等の詰まりが発生したとき、その詰まりを除去することができず、チェック弁自体の交換が必要となっていた。
【0008】
以上のように、従来のスプレーノズルは、その構造上、チェック弁やノズルの修理や交換に際して、作業が煩雑になる等の不具合がある。つまり、従来のスプレーノズルは、そのチェック弁やノズルの修理や交換を行いやすくするため、改善の余地がある。
【特許文献1】実開昭62−29855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、スプレー剤を噴出するノズルに対して、チェック弁を介してスプレー剤が供給される構成において、チェック弁やノズルに詰まりや液だれが発生した場合、チェック弁やノズルの修理や交換を簡単に行うことができるスプレーノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
すなわち、請求項1においては、支持部を有する支持体に対して所定の姿勢で支持固定され、スプレー剤を噴出させるためのスプレーノズルであって、弁体および該弁体を所定の閉方向に押圧付勢する弾性体を有するチェック弁と、前記チェック弁を通過したスプレー剤を噴出するノズル孔を有するノズル部材と、略筒状に構成され、その両端側に互いに連通する開口部を有し、一端側の開口部に前記ノズル部材を着脱可能に支持するとともに、他端側の開口部に前記弁体が該開口部の内側から接する弁座面を形成し、前記支持部に対して支持される本体部材と、前記本体部材に対して着脱可能、かつ前記弁体に対して近接離間する方向に移動可能に、前記一端側の開口部から前記本体部材に内装され、前記弁体との間に前記弾性体を介装した状態で、前記本体部材に対して前記近接離間する方向について位置決めされる係止部材と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
すなわち、本発明によれば、スプレー剤を噴出するノズルに対して、チェック弁を介してスプレー剤が供給される構成において、チェック弁やノズルに詰まりや液だれが発生した場合、チェック弁やノズルの修理や交換を簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、発明の実施の形態を説明する。
本発明に係るスプレーノズルは、例えば、鋳造用金型のキャビティ面への離型剤の塗布に際して、スプレーカセットに備えられるものとして好適に用いられるものである。以下に説明する本発明に係るスプレーノズルの実施の形態においては、スプレーノズルが噴出するスプレー剤を、前記のとおり金型のキャビティ面に塗布される離型剤とする。また、スプレーノズルを、金型のキャビティ面への離型剤の塗布に際して用いられるスプレーカセットに複数(多数)備えられるものとする。
【0014】
本実施形態に係るスプレーノズル1の構成について、図1および図2を用いて説明する。図1は本発明の一実施形態に係るスプレーノズル1の構成を示す断面図、図2は同じく分解図である。
【0015】
図1および図2に示すように、本実施形態のスプレーノズル1は、支持孔51を有するカセットはり板50に対して所定の姿勢で支持固定され、離型剤を噴出させるためのものである。
【0016】
スプレーノズル1が支持固定されるカセットはり板50は、スプレーカセットを構成する板状の部材である。すなわち、本実施形態に係るスプレーカセットは、カセットはり板50を含む複数の板状部材により構成される箱状のカセット体を有する。このカセット体における一または複数の面に、複数(多数)のスプレーノズル1が設けられる。そして、その複数のスプレーノズル1から離型剤が噴出あるいは噴霧されることにより、キャビティ面の広範囲にわたって離型剤が一度に塗布される。したがって、図示は省略するが、スプレーノズル1が支持されるカセットはり板50には、複数のスプレーノズル1が配設される。このように、本実施形態では、スプレーノズル1を所定の姿勢で支持固定する支持体が、支持部としての支持孔51を有しスプレーカセットのカセット体を構成するカセットはり板50となる。
【0017】
本実施形態のスプレーノズル1は、チェック弁4と、ノズル部材としてのノズル3と、本体部材としてのソケット2と、係止部材としての止め板20とを備える。
【0018】
チェック弁4は、弁体5およびこの弁体5を所定の閉方向に押圧付勢する弾性体であるスプリング6を有する。
【0019】
ノズル3は、チェック弁4を通過した離型剤を噴出するノズル孔3aを有する。ノズル3は、全体として略円柱状に構成される。ノズル孔3aは、前記のとおり略円柱状のノズル3において、その軸心部分を貫通するように設けられる。
【0020】
ソケット2は、略筒状に構成され、その両端側に互いに連通する開口部(2a・2b)を有する。ソケット2は、その一端側(図1および図2において右側)の開口部(以下「先端側開口部2a」とする。)にノズル3を着脱可能に支持するとともに、他端側(図1および図2において左側)の開口部(以下「後端側開口部2b」とする。)に弁体5が後端側開口部2bの内側から接する弁座面2cを形成する。ソケット2は、カセットはり板50の支持孔51に対して支持される。
【0021】
本実施形態のソケット2は、有底筒状の部材として構成される。したがって、ソケット2は、図1および図2に示すように、筒状の軸心部を通る断面視で略U字状となる。有底筒状のソケット2においては、その底側に、後端側開口部2bが設けられる。したがって、後端側開口部2bは、ソケット2の底部を形成する壁部2dを貫通するように設けられる。後端側開口部2bは、壁部2dの中央部に設けられる。ソケット2において後端側開口部2bの反対側に、先端側開口部2aが設けられる。先端側開口部2aの外縁には、鍔部2eが設けられる。これら先端側開口部2aと後端側開口部2bとは、筒状のソケット2における内部空間8を介して互いに連通する。
【0022】
ソケット2は、その先端側開口部2aに、ノズル3を着脱可能に支持する。ノズル3は、先端側開口部2aを介してソケット2に対してねじ係合することで、ソケット2に対して着脱可能に支持される。すなわち、ソケット2においては、その内周面に、先端側開口部2a側から内側(後端側開口部2b側)にかけて雌ねじ部2fが形成される。これに対し、ノズル3においては、その外周面におけるソケット2に支持される部分に、前記雌ねじ部2fにねじ係合可能な雄ねじ部3bが形成される。かかる構成により、ノズル3が、ソケット2に対して先端側開口部2aから螺挿される。このように、本実施形態では、ソケット2は、ねじ係合によって先端側開口部2aにノズル3を着脱可能に支持する。
【0023】
ソケット2と、このソケット2に対して先端側開口部2aから螺挿されるノズル3との間には、ワッシャ9が介装される。具体的には、ノズル3は、その筒状の軸心方向(図1および図2において左右方向)の中途部において、外周面から外側に向けて環状に突出する鍔部3cを有する。そして、ワッシャ9が、ソケット2の端面(先端側開口部2a側の端面)と、ソケット2に対して螺挿された状態のノズル3の鍔部3cとの間に挟まれた状態で介装される。つまり、ワッシャ9は、ノズル3がソケット2に対してねじ込まれることにより、ソケット2の端面とノズル3の鍔部3cとの間に挟まれて押圧された状態となる。
【0024】
ソケット2は、その後端側開口部2bに、弁体5が後端側開口部2bの内側から接する弁座面2cを形成する。ソケット2は、前記のとおり有底筒状に構成され、その底側に壁部2dを有する。この壁部2dの内側(内部空間8側)に、弁座面2cが形成される。つまり、壁部2dを貫通することで、ソケット2の内部と外部とを連通させる後端側開口部2bの内側面の一部が、弁座面2cとして形成される。弁座面2cには、チェック弁4の弁体5が着座する。
【0025】
チェック弁4は、ソケット2の内部に設けられる。チェック弁4は、前記のとおり弁座面2cに着座する弁体5と、この弁体5を押圧付勢するスプリング6とを有する。
【0026】
弁体5は、全体として略円盤状の部材として構成される。弁体5においては、その略円盤状における一側(図1および図2において左側)の面が、着座面5aとなる。すなわち、弁体5の着座面5aがソケット2の弁座面2cの接触(圧接)した状態が、弁体5が弁座面2cに着座した状態(着座状態)となる。弁体5が着座状態となることにより、後端側開口部2bが、内側から塞がれた状態となる。かかる状態が、チェック弁4の閉弁状態となる。
【0027】
また、弁体5においては、その着座面5aと反対側(図1および図2において右側)の面が、スプリング6からの押圧力を受ける受圧面5bとなる。すなわち、受圧面5bには、スプリング6の一端側(図1および図2において左側)が接触した状態(または接続された状態)となる。弁体5は、受圧面5bを介してスプリング6の弾性による押圧力を受けることで付勢される。ここで、弁体5においては、受圧面5b側に鍔状の拡径部5cが設けられることにより、スプリング6の一端側が接触する(または接続される)受圧面5bについて、スプリング6からの押圧力を受けるに十分な面積が確保される。
【0028】
スプリング6は、その一端側が、前記のとおり弁体5の受圧面5bに接触した状態(または接続された状態)となる。また、スプリング6の他端側(図1および図2において右側)は、止め板20に接触した状態となる。つまり、スプリング6は、弁体5と止め板20との間において縮んだ状態で介装される。これにより、スプリング6は、弁体5を、弁体5が着座状態となる方向(チェック弁4が閉弁状態となる方向)に押圧付勢する。言い換えると、弁体5は、受圧面5bを介してスプリング6の弾性力を受けることで、弁座面2cに着座する方向に押圧付勢される。したがって、本実施形態では、スプリング6が弁体を押圧付勢する方向となる前記所定の閉方向は、弁体5が着座状態となる方向、即ち着座面5aが弁座面2cに接触する方向となる。
【0029】
このように、スプレーノズル1は、離型剤を噴出するノズル3に対して、チェック弁4を介して離型剤が供給される構成となっている。つまり、スプレーノズル1に対しては、ソケット2の後端側開口部2bから、離型剤が供給される。このため、ソケット2の後端側開口部2bには、スプレーノズル1に対して離型剤を供給するための配管であるチューブ7が接続される。チューブ7は、その一端側が、ソケット2の後端側開口部2bに対して継手部材11を介して嵌め込み構造等により接続される。なお、チューブ7のソケット2に対する接続構成は、チューブ7が後端側開口部2bに対して連通する状態で接続される構成であれは、特に限定されるものではない。
【0030】
チューブ7の他端側(ソケット2に対して接続される側と反対側)は、スプレーカセットにおけるカセット体の内部を介して延設され、マニホールド(図示略)に接続される。このマニホールドには、前記のとおりスプレーカセットにおいて複数(多数)設けられる各スプレーノズル1から延設されるチューブ7が、それぞれ接続される。各スプレーノズル1からのチューブ7が接続されるマニホールドは、配管等を介して、離型剤が貯溜されるタンク等の離型剤の供給源に接続される。つまり、前記供給源からの離型剤は、メインの配管からマニホールドを介して各スプレーノズル1に接続されるチューブ7に分岐され、チューブ7を介してスプレーカセットが備える各スプレーノズル1へと供給される。そして、各スプレーノズル1において、チェック弁4を通過した離型剤が、ノズル3から噴出される。
【0031】
また、ソケット2は、カセットはり板50の支持孔51に対して支持される。ソケット2は、カセットはり板50に対してねじ係合することで、支持孔51に対して支持される。すなわち、ソケット2においては、その外周面に、雄ねじ部2gが形成される。これに対し、カセットはり板50においては、支持孔51を形成する面(内周面)にねじが切られることで、支持孔51は雌ねじ部51aとして形成される。かかる構成により、ソケット2が、支持孔51に対して後端側開口部2b側から螺挿される。支持孔51に螺挿されるソケット2は、その先端側開口部2aの外縁に形成される鍔部2eにより、カセットはり板50に対して位置決めされる。つまり、後端側開口部2b側から支持孔51に対して螺挿されるソケット2は、その鍔部2eがカセットはり板50の板面に接触するまでねじ込まれる。
【0032】
また、ソケット2のカセットはり板50に対する支持固定には、ナット10が用いられる。ナット10は、ソケット2の雄ねじ部2gに対して、後端側開口部2b側から螺嵌される。そして、ナット10は、ソケット2の鍔部2eとの間にカセットはり板50を挟んだ状態となる。つまり、ナット10は、支持孔51に螺挿された状態のソケット2に螺嵌された状態で、カセットはり板50に対して鍔部2eが接触する側と反対側の板面に接触した状態となる。なお、図示は省略するが、ソケット2のカセットはり板50に対する支持固定にナット10が用いられる際には、ナット10とカセットはり板50との間に、適宜ワッシャ等が介装される。
【0033】
このように、ソケット2は、カセットはり板50の支持孔51に対して支持される。これにより、スプレーノズル1が、カセットはり板50に対して所定の姿勢で支持固定される。つまり、スプレーノズル1は、支持孔51に対して支持されるソケット2を介することでカセットはり板50に対して所定の姿勢で支持固定される。本実施形態では、スプレーノズル1は、ノズル3からの離型剤の噴出方向(ノズル孔3aの穿設方向)が、カセットはり板50の板面に対して略垂直方向となる姿勢で、カセットはり板50に対して支持固定される。
【0034】
そして、図1に示すように、複数のスプレーノズル1が備えられるスプレーカセットにおけるカセット体の外側、つまりカセットはり板50を隔てたカセット外部には、ソケット2の鍔部2eおよびこの鍔部2e側からソケット2に螺挿されるノズル3の噴出先端側の部分が、カセットはり板50から突出した状態となる。また、カセット体の内側、つまりカセットはり板50を隔てたカセット内部には、ソケット2やこれに内装されるチェック弁4やソケット2に接続されるチューブ7等が内装された状態となる。
【0035】
また、スプレーノズル1は、前記のとおり係止部材としての止め板20を備える。止め板20について、図3〜図5を加えて説明する。図3は止め板20を示す正面図、図4は同じく側面図、図5は図3におけるA−A断面図である。
【0036】
止め板20は、ソケット2に対して着脱可能、かつ弁体5に対して近接離間する方向に移動可能に、先端側開口部2aからソケット2に内装される。そして、止め板20は、弁体5との間にスプリング6を介装した状態で、ソケット2に対して前記近接離間する方向について位置決めされる。
【0037】
図3〜図5に示すように、止め板20は、全体として略円板状に構成される。止め板20は、ソケット2に対してねじ係合することで、ソケット2に対して着脱可能に、先端側開口部2aからソケット2に内装される。すなわち、止め板20においては、その外周面に、ソケット2の雌ねじ部2fにねじ係合可能なねじ部21が形成される。かかる構成により、止め板20が、その板面に対して略垂直方向に、ソケット2に対して先端側開口部2aから螺挿される。つまり、止め板20は、ソケット2の内径に対応する外径を有するとともに、ソケット2の内周面に形成される雌ねじ部2fに対応するねじ部21を有し、ソケット2に対して螺合可能に構成されることで、ソケット2に対して着脱可能に、先端側開口部2aからソケット2に内装される。
【0038】
また、ソケット2に対して先端側開口部2aから螺挿される止め板20は、ソケット2の内部においてソケット2に対して相対的に移動可能となる。すなわち、前記のとおりソケット2の雌ねじ部2fに対して螺挿される止め板20は、回転させられることにより、螺挿方向およびその反対方向にソケット2に対して相対的に移動する。これにより、止め板20は、ソケット2内において、弁座面2cに対して接触した状態となる弁体5に対して近接離間する方向(図1および図2において左右方向)に移動可能となる。
【0039】
止め板20は、そのソケット2に螺挿された状態で回転操作されるための操作部となる溝部22を有する。溝部22は、止め板20のソケット2に対する螺挿方向で後側(図1および図2において右側)の面となる操作面23に設けられる。本実施形態では、溝部22は、止め板20の操作面23において、止め板20の径方向に沿う方向に直線状に設けられる。すなわち、溝部22に嵌合可能なドライバ等の工具が用いられることにより、ソケット2に螺挿された状態の止め板20が回転操作される。なお、止め板20についての回転操作部は、本実施形態の溝部22に限定されるものではない。つまり、止め板20についての回転操作部としては、ソケット2に螺挿された状態の止め板20が、操作面23側から回転させられることができるものであればよい。このように、止め板20は、弁体5に対して近接離間する方向に移動可能に、先端側開口部2aからソケット2に内装される。以下では、止め板20について、ソケット2内に螺挿された状態でソケット2に対して相対移動可能となる、弁体5に対して近接離間する方向を、「直線移動方向」という。
【0040】
そして、先端側開口部2aからソケット2に内装される止め板20は、弁体5との間にスプリング6を介装した状態で、ソケット2に対して直線移動方向について位置決めされる。止め板20に対しては、前述したように一端側が弁体5の受圧面5bに接触した状態(または接続された状態)となるスプリング6の他端側が、接触した状態となる。つまり、止め板20のソケット2に対する螺挿方向で前側(図1および図2において左側)の面が、スプリング6に対する押圧面24となり、この押圧面24に、スプリング6の他端側が接触した状態となる。これにより、止め板20は、弁体5との間にスプリング6を介装した状態となる。弁体5と止め板20との間に介装されるスプリング6は、前記のとおり縮んだ状態となる。
【0041】
また、止め板20は、そのねじ部21およびソケット2の雌ねじ部2fを介してソケット2に対してねじ係合する。このため、止め板20は、その直線移動方向ついては、ソケット2に対して位置決めされた状態となる。このように、止め板20が、ソケット2に対して直線移動方向について位置決めされることで、スプリング6の止め板20側への伸長が規制される。これにより、スプリング6における止め板20と反対側に設けられる弁体5が、スプリング6によって着座状態となる方向に押圧付勢される。
【0042】
このような構成において、押圧面24を介してスプリング6に接触する止め板20の、直線移動方向における位置の調整により、スプリング6による弁体5の押圧付勢力、つまりはチェック弁4における開閉力が調整される。止め板20のソケット2内での直線移動方向における位置の調整は、前述したように溝部22が用いられる操作面23側からの止め板20の回転操作により行われる。したがって、ソケット2の内周面に形成される雌ねじ部2fは、少なくとも、止め板20が、スプリング6から弁体5に対する押圧付勢力が所望の大きさとなる位置まで螺挿される範囲で、後端側開口部2b側にかけて設けられる。
【0043】
また、止め板20は、後端側開口部2bからチェック弁4を介してソケット2内に流入した離型剤を通過させるため、通過孔25を有する。通過孔25は、止め板20において略中央部を貫通する孔部として設けられる。通過孔25の大きさ(径)は、ソケット2内に流入した離型剤についてノズル3に対して十分な量を通過させることができるとともに、押圧面24についてスプリング6の止め板20側への伸長が規制できる面積(面部)が確保されるように設定される。
【0044】
なお、本実施形態では、離型剤を通過させるために止め板20が有する構成が、止め板20の中央部に設けられる一つの孔部である通過孔25であるが、これに限定されるものではない。つまり、離型剤を通過させるために止め板20が有する構成は、前記のとおりノズル3に対して十分な量の離型剤を通過させることができるとともに、押圧面24におけるスプリング6の接触面積(接触面部)が確保されるものであればよい。したがって、離型剤を通過させるために止め板20が有する構成としては、例えば、止め板20を貫通する複数の孔部等であってもよい。
【0045】
このような構成を備える止め板20について、そのソケット2に対する着脱構成、移動構成、および位置決め構成は、特に本実施形態に限定されるものではない。
【0046】
本実施形態のスプレーノズル1の作用について、図6および図7を加えて説明する。図6はチェック弁4の開弁状態を示す図、図7はノズル3が取り外された状態を示す図である。
【0047】
前述したようにスプレーカセットにおいて複数(多数)備えられる各スプレーノズル1に対しては、離型剤の供給源から、ポンプ等によってメイン配管からマニホールドを介して分岐されるチューブ7により、離型剤が供給される。チューブ7によってスプレーノズル1に供給された離型剤は、後端側開口部2bからソケット2内に流入する。ソケット2内に流入しようとする離型剤の圧力が所定の大きさ以上になると、チェック弁4が開弁状態となる(図6参照)。つまり、着座状態の弁体5が、スプリング6による押圧付勢力に抗して、弁座面2cから離間した状態となる。チェック弁4が開弁状態となることにより、離型剤は、弁座面2cと弁体5の着座面5aとの間の隙間を介してソケット2内に流入する。ソケット2内に流入した離型剤は、通過孔25によって止め板20を通過し、ソケット2の内部空間8を介してノズル3に供給される。ノズル3に供給される離型剤は、ノズル孔3aを通ってノズル3の先端から噴出される。ノズル3から噴出された離型剤は、金型のキャビティ面に塗布される。
【0048】
そして、スプレーノズル1において、ノズル3に離型剤等の詰まりが発生した場合等、ノズル3の修理や交換が行われる際には、ノズル3のソケット2に対するねじ係合が解除されることで、ノズル3がソケット2から取り外される(図7参照)。ここで、チェック弁4を構成するスプリング6は、止め板20によってソケット2内において保持されているため、ノズル3は、チェック弁4とは独立に(チェック弁4に影響を与えることなく)、ソケット2から取り外される。そして、修理後あるいは交換後のノズル3が、ソケット2に対して先端側開口部2aから螺挿される。
【0049】
また、スプレーノズル1において、チェック弁4に離型剤等の詰まりが発生した場合等、チェック弁4を構成する部品(弁体5およびスプリング6)の修理や交換が行われる際には、ソケット2からノズル3が取り外された状態(図7参照)で、まず、止め板20が、溝部22が用いられて回転操作されることによってねじ係合が解除されることで、ソケット2の先端側開口部2aから取り外される。その後、スプリング6および弁体5が、ソケット2内から取り出される。そして、修理後あるいは交換後の弁体5およびスプリング6が、ソケット2内にセットされた後、止め板20が、ソケット2に対して先端側開口部2aから螺挿される。
【0050】
以上の構成を備えるスプレーノズル1においては、離型剤を噴出するノズル3に対して、チェック弁4を介して離型剤が供給される構成において、チェック弁4やノズル3に詰まりや液だれが発生した場合、チェック弁4やノズル3の修理や交換を簡単に行うことができる。
【0051】
すなわち、スプレーノズル1においては、ノズル3は、ソケット2に対してねじ係合することで、ソケット2に対して着脱可能に支持固定される。このため、簡単な作業によってノズル3を着脱することができる。また、本実施形態のように、スプレーノズル1が、スプレーカセットに用いられる場合であっても、カセット外部から容易にノズル3を着脱することができる。
【0052】
また、従来のスプレーノズルのように、チェック弁を構成するスプリングが、ノズルによって直接保持される構成、つまりノズルの端面がスプリングに直接接する構成である場合、ノズルがその修理や交換のために取り外された際に、スプリングが飛び出すことがある。この点、スプレーノズル1においては、チェック弁4を構成するスプリング6が、ノズル3のソケット2に対する着脱とは無関係な、ノズル3とは別体の止め板20により保持される構成となっている。このため、ノズル3がソケット2から取り外されることによってスプリング6が飛び出すことが防止される。
【0053】
また、前記と同様、チェック弁を構成するスプリングが、ノズルによって直接保持される構成である場合、ノズルの取り付けられ方によって、チェック弁における開閉力(スプリングによる弁体に対する押圧付勢力)が不安定となる。具体的には、例えば、ノズルの取付けに際して用いられるワッシャ(スプレーノズル1におけるワッシャ9参照)の付け忘れ等により、チェック弁における開閉力が変わってくる。この点、スプレーノズル1においては、止め板20の直線移動方向における位置の調整によって、チェック弁4における開閉力が調整されるので、ノズル3のソケット2に対する取り付けられ方にかかわらず、チェック弁4における開閉力が安定する。
【0054】
また、スプレーカセットにおいて、ノズルに対する離型剤の供給経路に設けられるチェック弁が、前述のようなカセット体の内部に設けられる場合、チェック弁の修理や交換に際して、カセット体の外部(外側)からチェック弁を取り外すことができない。この点、スプレーノズル1は、チェック弁4を構成する弁体5およびスプリング6が、カセット外部から取り外すことができる構成となっている。このため、スプレーカセットに用いられるスプレーノズル1については、チェック弁4の修理や交換に際して、カセット体を分解する必要がなくなり、作業の簡略化を図ることができる。
【0055】
さらに、前記のとおりカセット体の内部に設けられるチェック弁が、分解することが困難な一体構造のものである場合、チェック弁に離型剤等の詰まりが発生したとき、その詰まりを除去することができず、チェック弁自体の交換が必要となる。この点、スプレーノズル1に備えられるチェック弁4は、容易に分解することができる構成となっている。このため、チェック弁4に離型剤等の詰まりが発生した場合であっても、チェック弁4自体を交換することなく、その詰まりを除去することができる。
【0056】
以上のように、スプレーノズル1においては、チェック弁4やノズル3の修理や交換を、簡単な作業によって行うことが可能となる。
【0057】
なお、本実施形態では、スプレーノズル1が噴出するスプレー剤は、金型のキャビティ面に塗布される離型剤であるが、これに限定されるものではない。すなわち、本発明に係るスプレーノズルが噴出するスプレー剤としては、離型剤に限定されるものではなく、例えば、キャビティ面に対する冷却水や、保湿剤等、種々のスプレー剤が適用可能である。
【0058】
また、本実施形態では、スプレーノズル1が、金型のキャビティ面への離型剤の塗布に際して用いられるスプレーカセットに複数(多数)備えられるものとなっている。つまり、スプレーノズル1が所定の姿勢で支持固定される支持体が、カセット体を構成するカセットはり板50となっている。しかし、本発明に係るスプレーノズルが所定の姿勢で支持固定される支持体は、特に限定されるものではない。すなわち、本発明に係るスプレーノズルは、例えば、ダイカスト等に用いられる金型内蔵式のスプレーノズルとしても適用可能である。この場合、スプレーノズルが所定の姿勢で支持固定される支持体が、金型となる。つまりこの場合、金型における所定の位置に設けられる支持部(例えば支持孔)に対して、スプレーノズルが、埋設された状態で支持固定されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態に係るスプレーノズルの構成を示す断面図。
【図2】同じく分解図。
【図3】止め板を示す正面図。
【図4】同じく側面図。
【図5】図3におけるA−A断面図。
【図6】チェック弁の開弁状態を示す図。
【図7】ノズルが取り外された状態を示す図。
【符号の説明】
【0060】
1 スプレーノズル
2 ソケット(本体部材)
2a 先端側開口部(開口部)
2b 後端側開口部(開口部)
2c 弁座面
3 ノズル(ノズル部材)
3a ノズル孔
4 チェック弁
5 弁体
6 スプリング(弾性体)
20 止め板(係止部材)
50 カセットはり板(支持体)
51 支持孔(支持部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部を有する支持体に対して所定の姿勢で支持固定され、スプレー剤を噴出させるためのスプレーノズルであって、
弁体および該弁体を所定の閉方向に押圧付勢する弾性体を有するチェック弁と、
前記チェック弁を通過したスプレー剤を噴出するノズル孔を有するノズル部材と、
略筒状に構成され、その両端側に互いに連通する開口部を有し、一端側の開口部に前記ノズル部材を着脱可能に支持するとともに、他端側の開口部に前記弁体が該開口部の内側から接する弁座面を形成し、前記支持部に対して支持される本体部材と、
前記本体部材に対して着脱可能、かつ前記弁体に対して近接離間する方向に移動可能に、前記一端側の開口部から前記本体部材に内装され、前記弁体との間に前記弾性体を介装した状態で、前記本体部材に対して前記近接離間する方向について位置決めされる係止部材と、
を備えることを特徴とするスプレーノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−39762(P2009−39762A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208557(P2007−208557)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(393011038)菱栄エンジニアリング株式会社 (59)
【Fターム(参考)】