説明

スプレー用液体洗浄剤組成物およびそれを用いたスプレー容器入り洗浄剤

【課題】スプレーによる噴霧が可能で、スプレー後は液ダレの発生がない、スプレー用液体洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】下記の(A)成分と、(B)成分と、(C)成分とを含有するスプレー用液体洗浄剤組成物により、上記課題を解決する。
(A)最大繊維径が1000nm以下で、数平均繊維径が2〜100nmのセルロース繊維であって、そのセルロースが、I型結晶構造を有するとともに、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化されてアルデヒド基およびカルボキシル基に変性されており、上記カルボキシル基量が0.6〜2.0mmol/gの範囲である、セルロース繊維。
(B)界面活性剤。
(C)水。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース繊維を含有するスプレー用液体洗浄剤組成物およびそれを用いたスプレー容器入り洗浄剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体洗浄剤組成物は、産業用途、家庭用途等で広く使用されている。特に家庭において、台所シンク、バスタブ、浴室、網戸等の洗浄剤として使用する場合には、使用者の利便性の観点から、液体洗浄剤に手をふれることなく洗浄剤を洗浄対象物に付着させ、付着後は、こすり洗い等を行うことなく、洗浄剤に手を触れずに、洗浄作業が実施できることが求められる。洗浄剤組成物を洗浄対象物に均一に付着滞留させることで、洗浄の作業性と洗浄効率が上るため、台所シンク、ガラス戸、網戸、住宅内、バスタブや浴室の壁等の洗浄には、洗浄剤をスプレーして付着させることが行われる。
【0003】
そして、均一に付着させたあとは、液ダレすることなく、洗浄対象物に一定時間以上付着して滞留すれば、こすり洗い等を行うことなく、すなわち、直接洗浄剤に手を触れることなく洗浄作業が行えるため作業者の利便性が良い。液ダレを防止するには、洗浄剤組成物の粘度は高いことが好ましいため、増粘剤が配合される。また、液体洗浄剤組成物には、上記の使用上の利便性を改善する目的以外にも、液体洗浄剤組成物の安定性を改善する目的でさまざまな増粘剤が配合される。
【0004】
従来、液体洗浄剤組成物の増粘剤としては、脂肪酸アルカノールアミド類が、最もよく使用されている。しかしながら、脂肪酸アルカノールアミドは分子構造に窒素原子を含有するため、配合条件によっては経時的な着色が生じる問題があった。また、上記脂肪酸アルカノールアミド類には、不純物として含まれるN−ニトロソジエタノールアミンが含まれ、これが米国食品医薬局から発がん性であることが指摘されており、安全性について問題がある。
【0005】
このような背景のもと、従来の液体洗浄剤組成物としては、例えば、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステルを増粘剤として配合した液体洗浄剤組成物(特許文献1)や、特定の構造を有するアルキルポリグリセリルエーテル類を増粘剤として配合した液体洗浄剤組成物(特許文献2)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−84196号公報
【特許文献2】特開2006−348073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1,2に記載の液体洗浄剤組成物に用いられる増粘剤は、増粘効果と、スプレー特性の両方を満足することができない。すなわち、増粘剤の配合量を増やすと、洗浄剤組成物の粘度が上るため、液ダレを防止することができるが、粘度が高くなるため、スプレーによる噴霧が不可能となり、洗浄対象物に洗浄剤を均一に付着させることができなくなるという問題が発生する。逆に、増粘剤の配合量を減らすと、洗浄剤組成物の粘度が下がるため、スプレーによる噴霧は可能となるが、洗浄対象物に洗浄剤を噴霧した後に液ダレが発生し、洗浄対象物に洗浄剤を滞留させることができなくなるという問題があった。このように、従来の増粘剤を用いた液体洗浄剤組成物は、増粘効果と、スプレー特性を両立を図ることができなかった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、スプレーによる噴霧が可能で、スプレー後は液ダレの発生がない、スプレー用液体洗浄剤組成物およびそれを用いたスプレー容器入り洗浄剤の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、下記の(A)成分と、(B)成分と、(C)成分とを含有するスプレー用液体洗浄剤組成物を第1の要旨とする。
(A)最大繊維径が1000nm以下で、数平均繊維径が2〜100nmのセルロース繊維であって、そのセルロースが、I型結晶構造を有するとともに、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化されてアルデヒド基およびカルボキシル基に変性されており、上記カルボキシル基量が0.6〜2.0mmol/gの範囲である、セルロース繊維。
(B)界面活性剤。
(C)水。
【0010】
また、本発明は、上記スプレー用液体洗浄剤組成物を充填してなるスプレー容器入り洗浄剤を第2の要旨とする。
【0011】
すなわち、本発明者らは、スプレーによる噴霧が可能で、スプレー後は液ダレの発生がない、スプレー用液体洗浄剤組成物を得るため、鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、最大繊維径が1000nm以下で、数平均繊維径が2〜100nmのセルロース繊維であって、そのセルロースが、I型結晶構造を有するとともに、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化されてアルデヒド基およびカルボキシル基に変性されており、上記カルボキシル基量が0.6〜2.0mmol/gの範囲である、セルロース繊維を用いると、高粘度であるにもかかわらず、スプレー噴霧できることを突き止めた。上記セルロース繊維のレオロジー特性を調べたところ、チキソトロピーインデックスの値が非常に大きいため、増粘効果と、スプレー特性の両方を満足することができ、これは上記セルロース繊維に固有の特性であることを突き止めた。そして、さらに研究を続けた結果、上記特定のセルロース繊維と、界面活性剤とを組み合わせることにより、スプレー後は液ダレの発生がなく、安定性に優れ、使用時のハンドリング性と作業性に優れ、洗浄性にも優れたスプレー用液体洗浄剤組成物が得られることを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0012】
本発明のスプレー用液体洗浄剤組成物(以下、単に「液体洗浄剤組成物」と略す場合もある。)およびそれを用いたスプレー容器入り洗浄剤は、増粘剤として上記特定のセルロース繊維を用いているため、高粘度であるにもかかわらず、スプレー噴霧することができる。そのため、洗浄剤組成物に直接手を触れることなく、洗浄対象物に洗浄剤を均一に付着させることができ、スプレー特性に優れている。また、本発明の液体洗浄剤組成物は粘度が高いため、スプレー後の液ダレがなく、洗浄対象物に洗浄剤を滞留させることができ、一定時間放置後に洗い流すことで、直接洗浄剤に手を触れることなく洗浄作業が実施できる。そのため、本発明の液体洗浄剤組成物は安定性に優れ、使用時のハンドリング性と作業性に優れ、洗浄性にも優れるという効果が得られる。
【0013】
そして、上記特定のセルロース繊維(A成分)が、N−オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いて酸化されたものであると、共酸化剤の使用量および酸化時間を調整することにより、分散安定性がより良好となる。
【0014】
また、本発明の液体洗浄剤組成物の粘度が2000mPa・s以上であると、スプレー後の液ダレ防止効果および洗浄性がさらに向上する。
【0015】
さらに、上記特定のセルロース繊維(A成分)の含有量(固形分重量)が、スプレー用液体洗浄剤組成物全体の0.2〜5.0重量%の範囲であると、スプレー後の液ダレ防止効果や洗浄性がより一層向上するとともに、経済的で、製造効率も向上するようになる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、本発明を実施するための形態について説明する。
【0017】
本発明のスプレー用液体洗浄剤組成物は、特定のセルロース繊維(A成分)と、界面活性剤(B成分)と、水(C成分)とを用いて得ることができる。
【0018】
本発明においては、上記特定のセルロース繊維(A成分)として、最大繊維径が1000nm以下で、数平均繊維径が2〜100nmのセルロース繊維であって、そのセルロースが、I型結晶構造を有するとともに、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化されてアルデヒド基およびカルボキシル基に変性されており、上記カルボキシル基量が0.6〜2.0mmol/gの範囲である、微細なセルロース繊維(A成分)を用いるものであり、これが最大の特徴である。この微細なセルロース繊維(A成分)は、I型結晶構造を有する天然物由来のセルロース固体原料を表面酸化し、ナノサイズにまで微細化した繊維である。原料となる、天然物由来のセルロースは、ほぼ例外なくミクロフィブリルと呼ばれるナノファイバーが多束化して高次構造を取っているため、そのままでは容易にはナノサイズにまで微細化して分散させることができない。本発明に用いる上記特定のセルロース繊維(A成分)は、その水酸基の一部を酸化してアルデヒド基およびカルボキシル基を導入し、ミクロフィブリル間の強い凝集力の原動となっている表面間の水素結合を弱めて、分散処理し、従来微細化することができなかったセルロース繊維をナノサイズにまで微細化したものである。
【0019】
上記特定のセルロース繊維(A成分)は、最大繊維径が1000nm以下で、かつ、数平均繊維径が2〜100nmであり、分散安定性の点から、好ましくは最大繊維径が500nm以下、かつ数平均繊維径が3〜80nmである。すなわち、上記A成分の数平均繊維径が2nm未満であると、本質的に分散媒体に溶解してしまい、逆に数平均繊維径が100nmを超えると、セルロース繊維が沈降してしまい、セルロース繊維を配合することによる機能性を発現することができないからである。
【0020】
上記特定のセルロース繊維(A成分)の最大繊維径および数平均繊維径は、例えば、つぎのようにして測定することができる。すなわち、セルロース繊維に水を加え希釈・分散した試料を親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストして、これを透過型電子顕微鏡(TEM)により観察し、得られた画像から、セルロース繊維の最大繊維径および数平均繊維径を測定し、算出することができる。
【0021】
上記特定のセルロース繊維(A成分)を構成するセルロースが、I型結晶構造を有することは、例えば、広角X線回折像測定により得られる回折プロファイルにおいて、2シータ=14〜17°付近と、2シータ=22〜23°付近の2つの位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
【0022】
また、上記特定のセルロース繊維(A成分)のカルボキシル基量は0.6〜2.0mmol/gであり、分散安定性の点から、0.75〜2.0mmol/gの範囲が好ましい。すなわち、上記セルロース繊維(A成分)のカルボキシル基量が0.6mmol/g未満であると、セルロース繊維(A成分)の分散安定性に乏しく、セルロース繊維(A成分)の沈澱を生じる場合があり、また疎水性固体(B成分)の分散安定性が低下する。逆に、上記セルロース繊維(A成分)のカルボキシル基量が2.0mmol/gを超えると、セルロース繊維(A成分)の水溶性が強くなり、セルロース繊維(A成分)特有の効果の発現が減少するからである。
【0023】
上記特定のセルロース繊維(A成分)のカルボキシル基量の測定は、例えば電位差滴定により行うことができる。すなわち、乾燥させたセルロース繊維を水に分散させ、0.01規定の塩化ナトリウム水溶液を加えて、充分に撹拌してセルロース繊維を分散させる。つぎに、0.1規定の塩酸溶液をpH2.5〜3.0になるまで加え、0.04規定の水酸化ナトリウム水溶液を毎分0.1mlの速度で滴下し、得られたpH曲線から過剰の塩酸の中和点と、セルロース繊維由来のカルボキシル基の中和点との差から、カルボキシル基量を算出することができる。
【0024】
なお、カルボキシル基量の調整は、後述するように、セルロース繊維の酸化工程で用いる共酸化剤の添加量や反応時間を制御することにより、行うことができる。
【0025】
上記特定のセルロース繊維(A成分)を構成するグルコースユニットのC6位の水酸基のみが選択的にアルデヒド基およびカルボキシル基に酸化されているかどうかは、例えば、13C−NMR分析により確認することができる。すなわち、酸化前のセルロースの13C−NMRチャートで確認できるグルコース単位の1級水酸基のC6位に相当する62ppmのピークが、酸化反応後は消失し、代わりに178ppmにカルボキシル基に由来するピークが現れることから確認することができる。
【0026】
つぎに、上記特定のセルロース繊維(A成分)とともに用いられる界面活性剤(B成分)としては、例えば、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これら界面活性剤(B成分)は、液体洗浄剤組成物の使用目的や用途に応じて、洗浄性、乳化性、浸透力、酸安定性、アルカリ安定性、耐熱性、起泡性、生分解性等を考慮して選択することができる。
【0027】
<アニオン界面活性剤>
上記アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキル(炭素数10〜15)ベンゼンスルホン酸塩、アルキル(炭素数6〜18)硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(付加モル数1モル〜30モル)アルキル(炭素数6〜18)エーテル硫酸エステル塩、脂肪酸(炭素数6〜18)塩、アルカン(炭素数6〜18)スルホン酸塩、オレフィン(炭素数8〜18)スルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩縮合物、アルキル(炭素数6〜18)スルホコハク酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(付加モル数1モル〜30モル)アルキル(炭素数6〜18)エーテルスルホコハク酸塩 、アルキル(炭素数6〜18)リン酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(付加モル数1モル〜30モル)アルキル(炭素数6〜18)エーテルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(付加モル数1モル〜30モル)アルキル(炭素数6〜18)エーテル酢酸塩等があげられる。上記の塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、アンモニア、アルカノールアミン等のアミン等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0028】
<非イオン界面活性剤>
上記非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン(付加モル数1モル〜50モル)アルキル(炭素数6〜18)エーテル、 ポリオキシアルキレン(付加モル数1モル〜50モル)アシル(炭素数6〜18)エステル、アルキル(炭素数6〜18)ジエタノールアミド、ポリオキシアルキレン(付加モル数1モル〜100モル)トリグリセリド(脂肪酸炭素数6〜18)エーテル、ソルビタン脂肪酸(炭素数6〜18)エステル、ショ糖脂肪酸(炭素数6〜18)エステル、ポリオキシアルキレン(付加モル数1モル〜50モル)ソルビタン脂肪酸(炭素数6〜18)エステル、アルキル(炭素数6〜18)ポリグリコシド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0029】
<カチオン界面活性剤>
上記カチオン界面活性剤としては、例えば、モノアルキル(炭素数6〜18)アミン塩、ジアルキル(炭素数6〜18)アミン塩、トリアルキル(炭素数6〜18)アミン塩、アルキル(炭素数6〜18)トリメチルアンモニウム塩、ジアルキル(炭素数6〜18)ジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキル(炭素数6〜18)ジメチルアミノプロピルアミド等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。上記の塩としては、塩素、臭素等のハロゲンがあげられる。
【0030】
<両性界面活性剤>
上記両性界面活性剤としては、例えば、アルキル(炭素数6〜18)ベタイン、脂肪酸(炭素数6〜18)アミドプロピルベタイン、2−アルキル(炭素数6〜18)−N−カルボキシルメチル−N−ヒドロキシエチル−イミダゾリニウムベタイン、アルキル(炭素数6〜18)ジエチレントリアミノ酢酸、ジアルキル(炭素数6〜18)ジエチレントリアミノ酢酸、アルキル(炭素数6〜18)アミンオキシド等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0031】
上記界面活性剤(B成分)の含有量は、液体洗浄剤組成物全体の0.1〜80.0重量%の範囲が好ましく、特に好ましくは0.2〜50.0重量%の範囲である。すなわち、上記界面活性剤(B成分)の含有量が少なすぎると、洗浄効果に乏しく、逆に多すぎると、ハンドリング性が低下する傾向がみられるからである。
【0032】
なお、本発明の液体洗浄剤組成物には、上記A成分およびB成分に加えて、水(C成分)が用いられる。本発明の液体洗浄剤組成物においては、上記A成分およびB成分と、下記の任意成分の含有量を除いた残量が、水(C成分)の含有量となる。
【0033】
上記任意成分としては、例えば、天然抽出物、ビルダー成分、粉末成分、油脂類、溶剤類、消泡剤、水溶性高分子、防腐剤・殺菌剤、酸化防止剤、ビタミン類、糖類・グリコール類、香料、漂白剤、酸、アルカリ、酵素、着色剤等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0034】
<天然抽出物>
上記天然抽出物としては、例えば、茶エキス、アロエエキス、イチョウエキス、センブリエキス、ヨモギエキス、ニンニクエキス、オウゴンエキス、ローズマリーエキス、ヘチマエキス、乳酸菌エキス、酵母エキス、海草エキス等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0035】
<ビルダー成分>
上記ビルダー成分としては、例えば、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、珪酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩、硫酸塩、ゼオライト、NTA(Nitrilotriacetic acid)、エチレンジアミン4酢酸、DTPA(Diethylen triamin pentaacetic acid)、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、ポリアクリル酸、無水マレイン酸重合物、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0036】
<粉末成分>
上記粉末成分としては、例えば、タルク、カオリン、雲母、セリサイト、炭酸マグネシウム、珪酸ジルコニウム、珪酸アルミニウム、珪酸バリウム、珪酸カルシウム、珪酸亜鉛、珪酸マグネシウム、珪酸ストロンチウム、タングステン酸塩、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼石膏、リン酸カルシウム、フッ素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、活性炭、金属石鹸類、窒化ホウ素、ポリアミド粉末、ポリエチレン粉末、アクリル樹脂粉末、ポリスチレン粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、ポリ4フッ化エチレン粉末、セルロース粉末等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0037】
<油脂類>
上記油脂類としては、例えば、サラダ油、菜種油、綿実油、アボカド油、ツバキ油、グレープシード油、タートル油、マカダミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ヒマワリ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリオクタン酸グリセリド、トリイソパルミチン酸グリセリド、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、モクロウ、ミツロウ、カルナバロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ホホバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、流動パラフィン、オゾケライト、スクワレン、プリスタン、パラフィン、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、パーム脂肪酸、パーム核脂肪酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、炭素数6〜20の飽和および不飽和アルコール類、炭素数2〜20の飽和および不飽和エステル類等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0038】
<溶剤類>
上記溶剤類としては、例えば、メタノール、エタノール等の炭素数1〜8のアルコール類、エステル類、ケトン類、炭化水素類、エーテル類、グリコール類等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0039】
<消泡剤>
上記消泡剤としては、例えば、シリコーン系化合物、ポリオキシアルキレンエーテル類等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0040】
<水溶性高分子>
上記水溶性高分子としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、グアーガム、キサンタンガム、アルギン酸、ペクチン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、アラビアガム、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これら水溶性高分子は、液体洗浄剤組成物のスプレー性を損なわない範囲内で、低濃度で配合することが好ましい。
【0041】
<防腐剤・殺菌剤>
上記防腐剤・殺菌剤としては、例えば、安息香酸、デヒドロ酢酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸エステル類、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、エタノール等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0042】
<酸化防止剤>
上記酸化防止剤としては、例えば、ビタミンE、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸エステル、アスコルビン酸、フィチン酸等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0043】
<ビタミン類>
上記ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、パントテン酸、ビオチン、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、およびその誘導体類があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0044】
<糖類・グリコール類>
上記糖類・グリコール類としては、例えば、ブドウ糖、果糖、乳糖、ショ糖、麦芽糖、水溶性デキストリン、シクロデキストリン、デンプン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、キシリトール等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0045】
<香料>
上記香料としては、例えば、合成香料化合物および天然精油およびそれらを調合して成る調合香料等で、ジャスミン調、フローラル、ブーケ、ローズ調、ミューゲ調、アルデハイディック、グリーン、シトラス、ウッディー、アニマル、フルーティ、スパイス等の香料があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0046】
<漂白剤>
上記漂白剤としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、さらし粉、ジクロルイソシアヌル酸等の塩素系漂白剤、過ホウ酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム等の酸素系漂白剤や、ハイドロサルファイト、二酸化チオ尿素等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0047】
<酸>
上記酸としては、例えば、硫酸、塩酸、リン酸等の無機酸類、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等の有機酸類があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0048】
<アルカリ>
上記アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等の無機アルカリ類や、アンモニア、アルカノールアミン等の有機アルカリ類等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0049】
<酵素>
上記酵素としては、例えば、動植物由来または微生物由来の、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)、脂質分解酵素(リパーゼ)、デンプン分解酵素(アミラーゼ)、繊維素分解酵素(セルラーゼ)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0050】
<着色剤>
上記着色剤としては、例えば、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号、青色2号、インダストレンブルーRS、ウールグリーンBS、キノリンイエロー、パテントブルーV等の色素類、塩素法酸化チタン顔料、オイルファーネスブラック、黄鉛、黄色酸化鉄、カオリンクレー、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、蛍光顔料、黒色酸化鉄、極微細炭酸カルシウム、コバルト青、コバルト緑、コバルト紫、胡粉、紺青、サーマルブラック、酸化クロム、酸化チタン(アタナース)、酸化チタン(ルチル)、ジスアゾイエロー、赤色酸化鉄、茶色酸化鉄、チャンネルブラック、鉄黒、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、ドロマイト粉末、パーマネントレッド、微粒子酸化チタン、微粒子硫酸バリウム、ファストイエロー10G、ベンガラ、モリブデンレッド等の顔料類があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0051】
なお、上記任意成分は、本発明の液体洗浄剤組成物の効果を損なわない範囲内で、使用することができる。
【0052】
本発明の液体洗浄剤組成物に使用されるセルロース繊維(A成分)は、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、まず、木材パルプ等の天然セルロースを、水に分散させてスラリー状としたものに、臭化ナトリウム、N−オキシル化合物(例えば、N−オキシラジカル触媒)を加え、充分撹拌して分散・溶解させる。つぎに、次亜塩素酸水溶液等の共酸化剤を加え、pH10〜11を保持するように、0.5規定水酸化ナトリウム水溶液を滴下しながらpH変化が見られなくなるまで反応を行う。上記反応により得られたスラリーは、未反応原料、触媒等を除去するために、水洗、濾過を行い精製することにより、繊維表面が酸化された特定のセルロース繊維(A成分)の水分散体を得ることができる。なお、化粧品組成物として高い透明性が求められる場合は、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の強力な分散力を有する分散装置を用いて分散処理することで、高い透明性をもつセルロース繊維(A成分)を得ることができる。
【0053】
上記N−オキシル化合物としては、例えば2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカル(TEMPO)、4−アセトアミド−TEMPOのようなN−オキシラジカル触媒等があげられ、好ましくは2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカル(TEMPO)である。上記N−オキシル化合物の添加量は、通常、0.1〜4mmol/l、好ましくは0.2〜2mmol/lの範囲である。
【0054】
また、上記共酸化剤としては、例えば、次亜ハロゲン酸またはその塩、亜ハロゲン酸またはその塩、過ハロゲン酸またはその塩、過酸化水素、過有機酸等があげられる。これらは単独でもしくは二種類以上併せて用いられる。なかでも、次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウム等のアルカリ金属次亜ハロゲン酸塩が好ましい。そして、上記次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合は、臭化ナトリウム等の臭化アルカリ金属の存在下で反応を進めることが、反応速度の点において好ましい。上記臭化アルカリ金属の添加量は、上記N−オキシル化合物に対して約1〜40倍モル量、好ましくは約10〜20倍モル量である。
【0055】
本発明の液体洗浄剤組成物は、上記のようにして得られたセルロース繊維(A成分)の水分散体に、界面活性剤(B成分)と、水(C成分)と、その他の任意成分を適宜に混合し、分散することにより調製することができる。
【0056】
上記混合・分散処理には、例えば、真空乳化装置、ディスパー、プロペラミキサー、ニーダー、湿式粉砕機、ブレンダー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル、ビーズミル、サンドミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等を用いることができる。なお、上記混合・分散装置の種類や操作条件を選択することにより、任意の添加剤の物理化学的性質に応じた、所望の性状の液体洗浄剤組成物を調製することができる。
【0057】
本発明の液体洗浄剤組成物における上記特定のセルロース繊維(A成分)の含有量(固形分重量)は、セルロース繊維固形分として、液体洗浄剤組成物全体の0.2〜5.0重量%の範囲が好ましく、特に好ましくは0.3〜3.0重量%の範囲である。すなわち、上記セルロース繊維(A成分)の含有量が少なすぎると、液体洗浄剤組成物の粘度が2000mPa・s以下となり、粘度が低過ぎるため、被洗浄物に液体洗浄剤をスプレーした後に液ダレが起こる傾向がみられ、逆にセルロース繊維(A成分)の含有量が多すぎると、配合量が多いため経済的でなく、また、液体洗浄剤組成物の製造性が悪化する傾向がみられるからである。
【0058】
本発明の液体洗浄剤組成物は、粘度が2000mPa・s以上が好ましく、特に好ましくは5000mPa・s以上である。上記粘度は、BH型粘度計を用い、25℃にて、ローター番号5番、2.5rpmで180秒後に測定される粘度のことをいう。
【0059】
本発明の液体洗浄剤組成物は、被洗浄体にスプレー噴霧して使用することができるため、利便性および洗浄効果に優れている。
【0060】
スプレー方法としては、例えば、噴霧可能なポンプ式ノズルを装着したディスペンサー式スプレー、トリガー式スプレー、エアゾール式スプレー、人力噴霧器、動力噴霧器、ブームスプレーヤー、パンクルスプレーヤー、スプリンクラー、ミスト機、スピードスプレーヤー、常温煙霧機、スパースパウタ・スプレーヤー等があげられる。
【0061】
特に、本発明の液体洗浄剤組成物を家庭用洗浄剤等に使用する場合には、予めスプレー容器に充填したスプレー容器入り洗浄剤とすることで、使用者の利便性をさらに高めることができる。
【0062】
本発明のスプレー容器入り洗浄剤に使用されるスプレー容器は、本発明の液体洗浄剤組成物を容易に充填でき、スプレーとして機能するものが好ましく、汎用性やスプレー精度の高さを考慮すると、噴霧可能なポンプ式ノズルを装着したディスペンサー式スプレー容器、トリガー式スプレー容器、エアゾール式スプレー容器が特に好ましい。
【0063】
<噴霧可能なポンプ式ノズルを装着したディスペンサー式スプレー容器>
上記スプレー容器は、大気圧でスプレーでき、加圧ガス等を必要とせず、かつ容器構造も比較的単純であるので安全性が高く、携帯用に向くスプレー容器である。構造は吸い上げ式のチューブを装着した押し出しポンプ式のノズルと、これを固定し、内容物を充填するねじ式容器からなる。なお、スプレー機能を高めるためにポンプ式ノズルの孔径や、ポンプの1回あたりの押し出し体積等の条件は、洗浄対象や洗浄目的に応じて、選定、調整することができる。
【0064】
<トリガー式スプレー容器>
上記トリガー式スプレー容器は、内容物を充填する容器本体の口部にピストル状のトリガー式スプレー装置が装着されたものであり、大気圧でスプレーを操作でき、スプレー容器として汎用性の高いものである。なお、上記トリガー式スプレー容器には、スプレー機能を高めるために、トリガー式スプレー容器の一部を改良したものも全て含まれる。
【0065】
<エアゾール式スプレー容器>
上記エアゾール式スプレー容器は、容器内へ噴射剤を充填することによって、上記2つのスプレー装置では実現できない連続スプレーを可能とするものである。なお、上記エアゾール式スプレー容器には、エアゾール式容器の噴射装置部分に改良を施したもの等も全て含まれる。一般的に本スプレー容器を用いたスプレーでは、大気圧下で実施する上記2つのスプレーに比べ、より細かな霧が可能となる。エアゾール式スプレー容器で使用する噴射剤としては、例えば、ジメチルエーテル、液化石油ガス、炭酸ガス、窒素ガス、アルゴンガス、空気、酸素ガス、フロンガス等があげられ、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0066】
本発明の液体洗浄剤組成物およびスプレー容器入り洗浄剤は、例えば、産業用途、家庭用途等の洗浄剤に用いられ、具体的には、マット洗浄剤、カーペットシャンプー、台所洗剤、オーブンクリーナー、グリルクリーナー、換気扇クリーナー、レンジクリーナー、シンククリーナー、パイプクリーナー、床洗浄剤、フロアクリーナー、ガラスクリーナー、窓ガラスクリーナー、網戸洗浄剤、コンクリートクリーナー、便器洗浄剤、磁気・タイル洗浄剤、落書き落とし剤、ペイントリムーバー、インクリムーバー、配水管クリーナー、カークリーナー、カーシャンプー、タイヤクリーナー、ラジエタークリーナー、エンジンクリーナー、金属クリーナー、皮革クリーナー、プラスチッククリーナー、メガネクリーナー、浴室クリーナー、壁クリーナー、バスタブクリーナー、台所シンククリーナー、家具クリーナー、家電クリーナー、ビルの外装洗浄剤、コンクリート洗浄剤、ガイシ洗浄剤、医療器具洗浄剤、半導体洗浄剤、電子部品洗浄剤、船舶洗浄剤、航空機洗浄剤、ボイラー洗浄剤、精密機器洗浄剤、レンズ洗浄剤、ビン容器洗浄剤、空気清浄機洗浄剤、樹木洗浄剤、洗顔剤、ボディーシャンプー、シェービング剤、シャンプー、ハンドソープ、ペットシャンプー、液体歯磨、洗濯用洗剤等に用いることができる。
【実施例】
【0067】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0068】
まず、実施例および比較例に先立ち、つぎのようにしてセルロース繊維を作製した。
【0069】
〔セルロース繊維T1(実施例用)の作製〕
針葉樹パルプ2g(乾燥重量)に水150g、臭化ナトリウム 0.025g、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカル(TEMPO)0.025gを加え、充分撹拌して分散させた後、13重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(共酸化剤)を、1gのパルプに対して次亜塩素酸ナトリウム量が5.4mmol/g−セルロースとなるように加え、pHを10〜11に保持するように0.5規定水酸化ナトリウム水溶液を滴下しながら、pH変化が見られなくなるまで反応させた(反応時間:120分)。反応終了後、0.1規定塩酸を添加して中和した後、ろ過と水洗を繰り返して精製し、繊維表面が酸化されたセルロース繊維T1を得た。
【0070】
〔セルロース繊維T2,T3(実施例用)、セルロース繊維H1,H2(比較例用)の作製〕
添加する次亜塩素酸ナトリウム水溶液の量および反応時間を、下記の表1に示すように変更する以外は、セルロース繊維T1の作製に準じて、各セルロース繊維を作製した。
【0071】
【表1】

【0072】
このようにして得られたセルロース繊維T1〜T3(実施例用)、セルロース繊維H1,H2(比較例用)を用い、下記の基準に従って各項目の測定を行った。これらの結果を、上記の表1に併せて示した。
【0073】
<最大繊維径、数平均繊維径>
各セルロース繊維に水を加え希釈した試料を、ホモミキサーを用いて12000rpmで15分間処理し、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストして、これを透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子社製、JEM−1400)により得られた画像(倍率:10000倍または50000倍)から、数平均繊維径および最大繊維径を測定し、算出した。なお、本方法で測定される最大繊維径、数平均繊維径は、後述の実施例で得られる、本発明の液体洗浄剤組成物中のセルロース繊維の最大繊維径、数平均繊維径と一致することを確認している。
【0074】
<カルボキシル基量の測定>
セルロース繊維表面のカルボキシル基の定量は、電位差滴定により行った。すなわち、乾燥させた各セルロース繊維0.3gを水55mlに分散させ、0.01規定の塩化ナトリウム水溶液5mlを加えて、充分に撹拌してセルロース繊維を分散させた。つぎに、0.1規定の塩酸溶液をpH2.5〜3.0になるまで加え、0.04規定の水酸化ナトリウム水溶液を毎分0.1mlの速度で滴下し、得られたpH曲線から過剰の塩酸の中和点と、セルロース繊維由来のカルボキシル基の中和点との差から、カルボキシル基量を算出した。
【0075】
<アルデヒド基量の測定>
セルロース繊維(試料)表面のアルデヒド基量は、以下のようにして測定した。すなわち、試料を水に分散させ、酢酸酸性下で亜塩素酸ナトリウムを用いてアルデヒド基を全てカルボキシル基まで酸化させた試料のカルボキシル基量を測定し、酸化前のカルボキシル基量の差から、アルデヒド基量を算出した。
【0076】
<セルロースI型結晶構造の確認>
上記各セルロース繊維がI型結晶構造を有することを、つぎのようにして確認した。すなわち、広角X線回折像測定により得られた回折プロファイルにおいて、2シータ=14〜17°付近と、2シータ=22〜23°付近の2つの位置に典型的なピークをもつことから、I型結晶構造を有することを確認した。その結果、上記セルロース繊維T1〜T3(実施例用)およびセルロース繊維H1,H2(比較例用)は、I型結晶構造を有することが確認された。
【0077】
<アルデヒド基およびカルボキシル基の確認>
各セルロース繊維を構成するグルコースユニットのC6位の水酸基のみが選択的にアルデヒド基およびカルボキシル基に酸化されているかどうか、つぎのようにして確認した。すなわち、酸化前のセルロースの13C−NMRチャートで確認されたグルコース単位の1級水酸基のC6位に相当する62ppmのピークが、酸化反応後は消失し、代わりに178ppmにカルボキシル基に由来するピークが現れたことにより確認した。その結果、上記セルロース繊維T1〜T3(実施例用)およびセルロース繊維H1,H2(比較例用)は、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位の水酸基が酸化されてなるカルボキシル基およびアルデヒド基も有することが確認された。
【0078】
つぎに、上記で得たセルロース繊維(T1〜T3、H1,H2)を用いて、以下のようにして、液体洗浄剤組成物およびそれを用いたスプレー容器入り洗浄剤を調製した。
【0079】
<浴室洗浄剤組成物およびスプレー容器入り浴室洗浄剤>
〔実施例1〕
上記特定のセルロース繊維(A成分)であるセルロース繊維T1を固形分換算重量で0.70重量部(以下「部」と略す)、および界面活性剤(B成分)としてポリオキシエチレン(付加モル数12モル)ラウリルエーテル8.00部を用い、下記の表2に示す各成分を同表に示す割合で配合し、水を所定量加えて100部とした。つぎに、この配合物を真空乳化装置を用いて12000rpmで15分間処理して、浴室洗浄剤組成物を得た。得られた浴室洗浄剤組成物を、500ml容量のトリガー式スプレー容器に充填して、スプレー容器入り浴室洗浄剤を得た。
【0080】
〔実施例2,3、比較例1〜4〕
下記の表2に示すように、各成分の種類および配合量を変更する以外は、実施例1に準じて、浴室洗浄剤組成物を得た。得られた浴室洗浄剤組成物を、500ml容量のトリガー式スプレー容器に充填して、スプレー容器入り浴室洗浄剤を得た。
【0081】
【表2】

【0082】
なお、表中のセルロース繊維の含有量は、固形分換算量を示す(以下、同様)。
【0083】
このようにして得られた各組成物を用い、下記の基準に従って、各特性の評価を行った。これらの結果を、上記の表2に併せて示した。
【0084】
<粘度>
得られた組成物の粘度を、BH型粘度計を用い、25℃にて、ローター番号5番、2.5rpmで180秒後に粘度を読み取った。
【0085】
<スプレー性>
得られたスプレー容器入り洗浄剤をスプレーし、霧の分散状態を、下記の判定基準に従い、目視で判定した。
◎:細かい霧状となってスプレーされる。
○:液滴となってスプレーされる。
△:棒状に噴出する。
×:ノズルからタレ落ちる、または、ノズルから出ない。
【0086】
<液ダレ性>
得られたスプレー容器入り洗浄剤を垂直面にスプレーし、垂直面に付着した洗浄剤の液ダレの程度を、下記の判定基準に従い、目視判定した。
◎:全く液ダレがない。
○:ほとんど液ダレがない。
△:僅かに液ダレがある。
×:明らかに液ダレがある。
【0087】
<洗浄性>
得られたスプレー容器入り洗浄剤を、汚れの付着したバスタブにスプレーし、こすり洗い等を行わず、そのまま2分間放置後に、水ですすぎ洗いし、バスタブの洗浄の程度を、下記の判定基準に従い、目視判定した。
◎:非常に良好に洗浄されている。
○:良好に洗浄されている。
△:僅かに洗浄されない部分がある。
×:かなり洗浄されない部分がある。
【0088】
上記表2の結果から明らかなように、特定のセルロース繊維を増粘剤として用いた実施例1〜3品は、いずれも粘度が高く、良好なスプレーが可能であり、スプレー後の洗浄剤の液ダレがなく、洗浄作業性に優れ、洗浄効果も高かった。なお、本発明者らは、上記セルロース繊維T1〜T3に代えて、カルボキシル基量が0.6mmol/g(下限)のセルロース繊維を用いた場合にも、セルロース繊維T1〜T3を用いた場合と同様の優れた効果が得られることを実験により確認した。また、特定のセルロース繊維の含有量(固形分重量)を、組成物全体の0.2重量%および5.0重量%に変更した場合でも、実施例と同様の優れた効果が得られることを実験により確認した。
【0089】
これに対して、実施例品のセルロース繊維T1〜T3に代えて、特許文献2に記載の増粘剤としてジグリセリンモノドデシルエーテルを用いた比較例1品は、粘度は良好であるが、スプレー性が劣り、大部分の洗浄剤がスプレーノズルからタレ落ちたことから、液ダレ性が劣るとともに、洗浄性も劣っていた。
【0090】
上記ジグリセリンモノドデシルエーテルの量を、比較例1品よりも減量した比較例2品は、スプレー性は良好であるが、粘度が200mPa・sと低く、液ダレ性がさらに悪化し、洗浄性も劣っていた。
【0091】
上記比較例1品の結果から、増粘剤として特定のセルロース繊維を使用しなかった場合、洗浄剤組成物の粘度を高くすると、スプレー性が劣り、比較例2品の結果から、洗浄剤組成物の粘度を低くすると、液ダレ性が劣ることから、特定のセルロース繊維を使用しなかった場合には、スプレー性と、液ダレ性を両立することができず、比較例1品、比較例2品では、洗浄作業性と洗浄効果に優れた洗浄剤組成物が得られないことが明らかである。
【0092】
実施例品のセルロース繊維T1〜T3に代えて、カルボキシル基量が下限未満のセルロース繊維H1を用いた比較例3品は、洗浄剤の粘度が500mPa・sと低く、液ダレが発生して、洗浄性が低下した。一方、実施例品のセルロース繊維T1〜T3に代えて、カルボキシル基量が上限を超えるセルロース繊維H2を用いた比較例4品は、洗浄剤のスプレー性が低下し、若干の液ダレがあり、洗浄性が低下した。
【0093】
<窓ガラスクリーナー組成物およびスプレー容器入り窓ガラスクリーナー>
〔実施例4,5、比較例5〕
下記の表3に示す各成分を同表に示す割合で配合し、水を所定量加えて100部とした。つぎに、この配合物を真空乳化装置を用いて12000rpmで15分間処理して、窓ガラスクリーナー組成物を得た。得られた窓ガラスクリーナー組成物を、500ml容量のトリガー式スプレー容器に充填して、スプレー容器入り窓ガラスクリーナーを得た。
【0094】
【表3】

【0095】
このようにして得られた各組成物を用い、前記の基準に従って、粘度、スプレー性および液ダレ性を評価するともに、下記の基準に従って、洗浄性の評価を行った。これらの結果を、上記の表3に併せて示した。
【0096】
<洗浄性>
得られたスプレー容器入り窓ガラスクリーナーを、汚れの付着したガラスにスプレーし、こすり洗い等を行わず、そのまま2分間放置後に、水ですすぎ洗いし、ガラスの洗浄の程度を、下記の判定基準に従い、目視判定した。
◎:非常に良好に洗浄されている。
○:良好に洗浄されている。
△:僅かに洗浄されない部分がある。
×:かなり洗浄されない部分がある。
【0097】
上記表3の結果から明らかなように、特定のセルロース繊維を増粘剤として用いた実施例4,5品は、粘度が高いにも関わらず良好なスプレーが可能であり、スプレー後の洗浄剤の液ダレがないため、洗浄作業性に優れ、洗浄効果も高かった。
【0098】
これに対して、実施例品のセルロース繊維T1〜T3に代えて、特許文献1に記載の増粘剤としてプロピレングリコールラウリン酸エステルを用いた比較例5品は、スプレー性は良好であるが、粘度が低く、液ダレ性および洗浄性が劣っていた。
【0099】
上記比較例5の結果から、増粘剤として特定のセルロース繊維を使用しなかった場合、スプレー性と、液ダレ性を両立することができず、洗浄作業性と洗浄効果に優れた洗浄剤組成物が得られないことが明らかである。
【0100】
<自動車用クリーナー組成物およびスプレー容器入り自動車用クリーナー>
〔実施例6〜8〕
下記の表4に示す各成分を同表に示す割合で配合し、水を所定量加えて100部とした。つぎに、つぎに、この配合物を真空乳化装置を用いて12000rpmで15分間処理して、自動車用クリーナー組成物を得た。得られた自動車用クリーナー組成物を、1000ml容量のトリガー式スプレー容器に充填して、スプレー容器入り自動車用クリーナーを得た。
【0101】
【表4】

【0102】
このようにして得られた各組成物を用い、前記の基準に従って、粘度、スプレー性および液ダレ性を評価するともに、下記の基準に従って、洗浄性の評価を行った。これらの結果を、上記の表4に併せて示した。
【0103】
<洗浄性>
得られたスプレー容器入り自動車用クリーナーを、自動車のエンジンルームにスプレーし、こすり洗い等を行わず、そのまま30分間放置後に、水ですすぎ洗いし、洗浄の程度を、下記の判定基準に従い、目視判定した。
◎:非常に良好に洗浄されている。
○:良好に洗浄されている。
△:僅かに洗浄されない部分がある。
×:かなり洗浄されない部分がある。
【0104】
上記表4の結果から明らかなように、特定のセルロース繊維を増粘剤として用いた実施例6〜8品は、粘度が高いにも関わらず良好なスプレーが可能であり、スプレー後の洗浄剤の液ダレがないため、洗浄作業性に優れ、洗浄効果も高かった。
【0105】
<換気扇クリーナー組成物およびスプレー容器入り換気扇クリーナー>
〔実施例9〜11〕
下記の表5に示す各成分を同表に示す割合で配合し、水を所定量加えて100部とした。つぎに、つぎに、この配合物を真空乳化装置を用いて12000rpmで15分間処理して、換気扇クリーナー組成物を得た。得られた換気扇クリーナー組成物を、500ml容量のトリガー式スプレー容器に充填して、スプレー容器入り換気扇クリーナーを得た。
【0106】
【表5】

【0107】
このようにして得られた各組成物を用い、前記の基準に従って、粘度、スプレー性および液ダレ性を評価するともに、下記の基準に従って、洗浄性の評価を行った。これらの結果を、上記の表5に併せて示した。
【0108】
<洗浄性>
得られたスプレー容器入り換気扇クリーナーを、換気扇にスプレーし、こすり洗い等を行わず、そのまま30分間放置後に、水ですすぎ洗いし、洗浄の程度を、下記の判定基準に従い、目視判定した。
◎:非常に良好に洗浄されている。
○:良好に洗浄されている。
△:僅かに洗浄されない部分がある。
×:かなり洗浄されない部分がある。
【0109】
上記表5の結果から明らかなように、特定のセルロース繊維を増粘剤として用いた実施例9〜11品は、粘度が高いにも関わらず良好なスプレーが可能であり、スプレー後の洗浄剤の液ダレがないため、洗浄作業性に優れ、洗浄効果も高かった。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の液体洗浄剤組成物およびスプレー容器入り洗浄剤は、例えば、産業用途、家庭用途等の洗浄剤に用いられ、具体的には、マット洗浄剤、カーペットシャンプー、台所洗剤、オーブンクリーナー、グリルクリーナー、換気扇クリーナー、レンジクリーナー、シンククリーナー、パイプクリーナー、床洗浄剤、フロアクリーナー、ガラスクリーナー、窓ガラスクリーナー、網戸洗浄剤、コンクリートクリーナー、便器洗浄剤、磁気・タイル洗浄剤、落書き落とし剤、ペイントリムーバー、インクリムーバー、配水管クリーナー、カークリーナー、カーシャンプー、タイヤクリーナー、ラジエタークリーナー、エンジンクリーナー、金属クリーナー、皮革クリーナー、プラスチッククリーナー、メガネクリーナー、浴室クリーナー、壁クリーナー、バスタブクリーナー、台所シンククリーナー、家具クリーナー、家電クリーナー、ビルの外装洗浄剤、コンクリート洗浄剤、ガイシ洗浄剤、医療器具洗浄剤、半導体洗浄剤、電子部品洗浄剤、船舶洗浄剤、航空機洗浄剤、ボイラー洗浄剤、精密機器洗浄剤、レンズ洗浄剤、ビン容器洗浄剤、空気清浄機洗浄剤、樹木洗浄剤、洗顔剤、ボディーシャンプー、シェービング剤、シャンプー、ハンドソープ、ペットシャンプー、液体歯磨、洗濯用洗剤等に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分と、(B)成分と、(C)成分とを含有することを特徴とするスプレー用液体洗浄剤組成物。
(A)最大繊維径が1000nm以下で、数平均繊維径が2〜100nmのセルロース繊維であって、そのセルロースが、I型結晶構造を有するとともに、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化されてアルデヒド基およびカルボキシル基に変性されており、上記カルボキシル基量が0.6〜2.0mmol/gの範囲である、セルロース繊維。
(B)界面活性剤。
(C)水。
【請求項2】
上記(A)成分のセルロース繊維が、N−オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いて酸化されたものである請求項1記載のスプレー用液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
粘度が2000mPa・s以上である請求項1または2記載のスプレー用液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
上記(A)成分の含有量(固形分重量)が、スプレー用液体洗浄剤組成物全体の0.2〜5.0重量%の範囲である請求項1〜3のいずれか一項に記載のスプレー用液体洗浄剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のスプレー用液体洗浄剤組成物を充填してなることを特徴とするスプレー容器入り洗浄剤。

【公開番号】特開2011−57747(P2011−57747A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205809(P2009−205809)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】