説明

スプレー用組成物

【課題】 銀イオン、銀コロイド粒子などの銀成分を含む、持続性のある消臭、抗菌および防黴効果を有するスプレー用組成物を提供する。
【解決手段】 銀イオンおよび銀コロイド粒子からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む銀成分と、添着剤とを含むスプレー用組成物。ここで、銀成分の銀換算濃度を0.05ppm以上100ppm以下、添着剤の濃度を5g/l以上300g/l以下とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀イオン、銀コロイド粒子などの銀成分を含む、消臭、抗菌または防黴用スプレーなどに用いられるスプレー用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の衛生環境意識の高まりとともに、消臭、抗菌および防黴用スプレーの需要が高まっている。その中で、消臭用スプレーは、その手軽さから多用されている。かかる消臭用スプレーは、安全性と自然志向性から、天然物質系の消臭成分が主として用いられている。これらの天然物質系の消臭成分は、悪臭成分を中和、酸化または還元により消臭する化学的消臭作用を有するものが大部分であり、悪臭成分の種類に応じた消臭成分を選択する必要があり、消臭の即効性は期待できても持続性は期待できない。
【0003】
また、抗菌スプレーとして、天然物質系および化学物質系の抗菌スプレーが市販されているが、抗菌性とその持続性を両立させるものがない。
【0004】
さらに、防黴スプレーとしては、酸、塩素などを含む化学物質系の防黴スプレーが市販されているが、これらの化学物質系の防黴スプレーは、人体への安全性の観点から用途が限定されていた。
【0005】
かかる状況の下、人体への安全性が高く、消臭、抗菌および防黴の持続性が高いものとして銀が注目されている。特に、銀イオンは極めて低濃度で、持続性のある消臭、抗菌および防黴効果があると言われている。
【0006】
近年、銀イオンを含む銀イオン水を、消臭、洗浄および殺菌用スプレーとして使用することが提案されている(たとえば、特許文献1)。しかし、特許文献1で開示されている銀イオン水は、銀電極を用いて水を電気分解して得られたものをそのまま用いていることから、自然環境中において、銀イオンがきわめて簡単に酸化または塩化されて、その消臭および殺菌の持続性が期待できない。
【特許文献1】特開2003−24942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、銀イオン、銀コロイド粒子などの銀成分を含む、持続性のある消臭、抗菌および防黴効果を有するスプレー用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、銀イオンおよび銀コロイド粒子からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む銀成分と、添着剤とを含むスプレー用組成物である。
【0009】
本発明にかかるスプレー用組成物において、銀成分の銀換算濃度を0.05ppm以上100ppm以下とすること、銀コロイド粒子の平均直径を0.5nm以上100nm以下とすること、添着剤の濃度を5g/l以上300g/l以下とすることができる。また、添着剤を前記銀成分中の銀原子に配位する官能基を有する化合物とすること、また、尿素、グリセリンおよびポリエチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1つを含むものとすることができる。また、銀成分および添着剤を分散させる溶媒を有機溶媒および水の少なくともいずれかとすることができる。さらに、スプレー方式がエアゾール方法またはディスペンサー方式であるスプレー用組成物とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、銀イオン、銀コロイドなどの銀成分を含む、持続性のある消臭、抗菌および防黴効果を有するスプレー用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明にかかるスプレー用組成物は、銀イオンおよび銀コロイド粒子からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む銀成分と、添着剤とを含む。添着剤を含むことにより、銀成分中の銀イオンおよび/または銀コロイド粒子の酸化または塩化が防止されて、銀イオンおよび/または銀コロイド粒子による消臭、抗菌および防黴効果が持続する。
【0012】
本発明における銀成分としては、銀イオンおよび銀コロイド粒子からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。銀イオンの生成方法には、特に制限はなく、たとえば、以下の方法により銀イオンが得られる。すなわち、水を、陽極に銀電極、陰極にチタン電極を用いて、陽極と陰極との間に隔膜を設けることなく電気分解(無隔膜電解という、以下同じ)することによって、陽極中の銀が陽極酸化されて水中に溶出して、銀イオンを含む水溶液が得られる。
【0013】
また、銀コロイド粒子の生成方法には、特に制限は制限はなく、たとえば銀の微粒子を分散剤とともに水中に分散させることにより行なう。銀濃度の高い銀コロイド水溶液を水で希釈することにより、所望の銀濃度を有する銀コロイド水溶液が得られる。この銀コロイド溶液において、銀の微粒子が銀コロイド粒子として安定化されている。
【0014】
スプレー組成物中の銀成分の銀換算濃度は、特に制限はないが、0.05ppm以上100ppm以下であることが好ましい。銀換算濃度が0.05ppm未満であると十分な消臭、抗菌および防黴効果が得られず、銀換算濃度が100ppmを超えると時間の経過とともに銀による着色が大きくなる。かかる観点から、スプレー組成物中の銀成分の銀換算濃度は0.1ppm以上70ppm以下であることがより好ましい。ここで、銀成分の銀換算濃度は、ICP−AES(誘導結合プラズマ原子分光分析)により、銀イオンに換算された濃度として得られる。
【0015】
本発明において用いられる銀コロイド粒子の平均直径は、特に制限はないが、0.5nm以上100nm以下であることが好ましい。銀コロイド粒子の平均直径が小さくなるほど銀コロイドによる消臭、抗菌および防黴効果は大きくなるが、平均直径が0.5nm未満の銀コロイド粒子を形成することは困難であり、平均直径が100nmを超えると銀コロイド粒子による消臭、抗菌および防黴効果が低減する。
【0016】
本発明に用いられる添着剤は、銀成分中の銀イオンおよび銀コロイド粒子を安定に保持し、たとえば、皮膚、衣類、寝具などの対象物に添着させるものであれば特に制限はないが、銀成分中の銀原子に配位する官能基を有する化合物であることが好ましい。銀成分中の銀原子に配位する官能基を有する化合物は、銀原子に配位して安定化させることにより、銀の消臭、抗菌および防黴効果の持続性を高めることができる。ここで、銀原子に配位する官能基としては、孤立電子対を有する官能基、たとえば、水酸基(−OH)、カルボニル基(−C=O)、カルボキシル基(−COOH)、アミノ基(−NH2)などが挙げられる。すなわち、銀成分中の銀原子に配位する官能基を有する化合物としては、ポリエチレングリコール、グリセリン、フタル酸などの有機酸、ヘキサメチレンジアミンなどのアミン化合物、尿素などが好ましく挙げられる。これらの中でも、グリセリン、尿素、ポリエチレングリコールは、銀イオンおよび銀コロイド粒子を対象物に添着させる効果が高く、また、人体に対する安全性も高い観点から、スプレー用組成物の添着剤として特に好ましい。ここで、ポリエチレングリコールの分子量は、スプレーの容易さの観点から、低分子量のものが好ましく、たとえば平均分子量が100〜400程度のものが好ましい。
【0017】
また、スプレー用組成物における添着剤の濃度は、5g/l以上300g/l以下であることが好ましい。添着剤の濃度が5g/l未満であると対象物への銀イオンおよび銀コロイド粒子の添着性が低下し、300g/lを超えるとべとつき感が大きくなる。かかる観点から、スプレー用組成物における添着剤の濃度は、10g/l以上200g/l以下であることが好ましい。
【0018】
本発明において用いられる銀成分および添着剤を分散させる溶媒は、有機溶媒および水の少なくともいずれかであることが好ましい。これらの溶媒を用いることにより、銀成分および添着材の分散を容易に行なうことができる。ここで、有機溶媒としては、皮膚、衣類または寝具などに用いる観点から、エタノール、プロパノールなどの低級アルコール類が好ましい。ここで、銀コロイド粒子をエタノールなどの有機溶媒中に分散させる場合には、添着剤であるグリセリン、ポリエチレングリコールなどの添加により、銀コロイド粒子の分散性が高められる。また、銀イオンおよび/または銀コロイド粒子を水中に分散させる場合には、添着剤である尿素などの添加により、銀イオンおよび/または銀コロイド粒子の分散性が高められる。
【0019】
本発明にかかるスプレー組成物のスプレー方式は、エアゾール方法またはディスペンサー方式であることが好ましい。ここで、エアゾール方式とは、耐圧容器内にスプレー組成物をガスとともに高圧にして封入し、開封することによる圧力の開放によりスプレー組成物を対象物にスプレーする方式をいう。また、ディスペンサー方式とは、ディスペンサー(霧吹き)を用いてスプレー組成物を加圧して対象物にスプレーする方式をいう。いずれの方式も、皮膚、衣類または寝具などの対象物にスプレーする方式として好ましい。したがって、本発明にかかるスプレー組成物は、エアゾール方式またはディスペンサー方式に適合するような低粘度であることが好ましい。
【実施例】
【0020】
(実施例1)
尿素1gを200mlのビーカに採取し、このビーカに銀濃度が0.1ppmの銀コロイド水溶液を加えて100mlとし、マグネチックスターラで水溶液を10分間攪拌することにより尿素を水溶液に溶解させてスプレー用組成物とした。すなわち、銀成分の銀換算濃度が0.1ppm、添着剤である尿素の濃度が10g/lであるスプレー用組成物を作製した。ここで、銀濃度が0.1ppmの銀コロイド水溶液は、銀濃度が1900ppmで平均直径が10nmの銀コロイド粒子を含有する銀コロイド液(溶媒は水)(田中貴金属社製AgPVPコロイド)を水で希釈することにより作製した。
【0021】
このスプレー組成物10mlに大腸菌の菌液1mlを添加混合して、20℃に保持して混合液中の菌数の経時変化を測定することによりスプレー組成物の抗菌性を評価した。菌数が短い経過時間で低減するものほど抗菌性が高く、低い菌数で長時間保持できるものほど抗菌性の持続性が高い。結果を表1にまとめた。
【0022】
(実施例2)
尿素5gを採取したこと、銀濃度が1.0ppmの銀コロイド水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、銀成分の銀換算濃度が1.0ppm、添着剤である尿素の濃度が50g/lのスプレー用組成物を作製した。このスプレー用組成物の抗菌性を実施例1と同様にして評価した。結果を表1にまとめた。
【0023】
(実施例3)
尿素8gを採取したこと、銀濃度が5.0ppmの銀コロイド水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、銀成分の銀換算濃度が5.0ppm、添着剤である尿素の濃度が80g/lのスプレー用組成物を作製した。このスプレー用組成物の抗菌性を実施例1と同様にして評価した。結果を表1にまとめた。
【0024】
(実施例4)
銀濃度が5.2ppmの銀イオン水溶液を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、銀成分の銀換算濃度が5.2ppm、添着剤である尿素の濃度が80g/lのスプレー用組成物を作製した。ここで、銀濃度が5.2ppmの銀イオン水溶液は、陽極に銀電極を用いた水道水の無隔膜電解法により作製した。このスプレー用組成物の抗菌性を実施例3と同様にして評価した。結果を表1にまとめた。
【0025】
(実施例5)
尿素10gを採取したこと、銀濃度が10.3ppmの銀コロイド水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、銀成分の銀換算濃度が10.3ppm、添着剤である尿素の濃度が100g/lのスプレー用組成物を作製した。このスプレー用組成物の抗菌性を、菌として黄色ブドウ球菌を用いた以外は、実施例1と同様にして評価した。結果を表1にまとめた。
【0026】
(実施例6)
銀濃度が10.2ppmの銀イオン水溶液を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、銀成分の銀換算濃度が10.2ppm、添着剤である尿素の濃度が100g/lのスプレー用組成物を作製した。ここで、銀濃度が10.2ppmの銀イオン水溶液は、陽極に銀電極を用いた水道水の無隔膜電解法により作製した。このスプレー用組成物の抗菌性を実施例5と同様にして評価した。結果を表1にまとめた。
【0027】
(実施例7)
銀濃度が20ppmの銀コロイド水溶液を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、銀成分の銀換算濃度が20ppm、添着剤である尿素の濃度が100g/lのスプレー用組成物を作製した。このスプレー用組成物の抗菌性を実施例5と同様にして評価した。結果を表1にまとめた。
【0028】
(実施例8)
銀濃度が20ppmの銀イオン水溶液を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、銀成分の銀換算濃度が20ppm、添着剤である尿素の濃度が100g/lのスプレー用組成物を作製した。ここで、銀濃度が20ppmの銀イオン水溶液は、陽極に銀電極を用いた水道水の無隔膜電解法により作製した。このスプレー用組成物の抗菌性を実施例5と同様にして評価した。結果を表1にまとめた。
【0029】
【表1】

【0030】
(実施例9)
実施例7と同様にして、銀成分の銀換算濃度が20ppm、添着剤である尿素の濃度が100g/lのスプレー用組成物を作製した。このスプレー用組成物の抗菌性を実施例1と同様にして評価した。結果を表2にまとめた。
【0031】
(実施例10)
実施例8と同様にして、銀成分の銀換算濃度が20ppm、添着剤である尿素の濃度が100g/lのスプレー用組成物を作製した。このスプレー用組成物の抗菌性を実施例1と同様にして評価した。結果を表2にまとめた。
【0032】
(実施例11)
銀濃度が50ppmの銀コロイド水溶液を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、銀成分の銀換算濃度が50ppm、添着剤である尿素の濃度が100g/lのスプレー用組成物を作製した。このスプレー用組成物の抗菌性を実施例5と同様にして評価した。結果を表2にまとめた。
【0033】
また、ディスペンサーを用いて、本実施例のスプレー組成物を10cm×10cmの白地の晒し布に塗布して、晒し布の着色状態を観察したところ、20℃で48時間(2日間)経過後および7日間経過後いずれの場合も着色は認められなかった。したがって、たとえば、ふとんの打ち直しの際に本実施例のスプレー組成物を吹きかけておくことにより、長期間にわたって抗菌性が保持される。
【0034】
(実施例12)
銀濃度が50.0ppmの銀イオン水溶液を用いたこと以外は、実施例11と同様にして、銀成分の銀換算濃度が20.0ppm、添着剤である尿素の濃度が100g/lのスプレー用組成物を作製した。ここで、銀濃度が50.0ppmの銀イオン水溶液は、陽極に銀電極を用いた水道水の無隔膜電解法により作製した。このスプレー用組成物の抗菌性を実施例11と同様にして評価した。結果を表2にまとめた。
【0035】
また、本実施例のスプレー組成物について実施例11と同様に着色状態を観察したところ、20℃で48時間(2日間)経過後および7日間経過後いずれの場合も着色は認められなかった。したがって、たとえば、ふとんの打ち直しの際に本実施例のスプレー組成物を吹きかけておくことにより、長期間にわたって抗菌性が保持される。
【0036】
(実施例13)
銀濃度が70ppmの銀コロイド水溶液を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、銀成分の銀換算濃度が70.0ppm、添着剤である尿素の濃度が100g/lのスプレー用組成物を作製した。このスプレー用組成物の抗菌性を実施例11と同様にして評価した。結果を表2にまとめた。
【0037】
また、本実施例のスプレー組成物について実施例11と同様に着色状態を観察したところ、20℃で48時間(2日間)経過後に、淡灰色の着色が認められた。このことから、添着剤の濃度が100g/lの条件においては、銀濃度が70ppmを超えると銀によるスプレー対象物の着色に留意する必要がある。
【0038】
(実施例14)
銀濃度が71ppmの銀イオン水溶液を用いたこと以外は、実施例13と同様にして、銀成分の銀換算濃度が20.0ppm、添着剤である尿素の濃度が100g/lのスプレー用組成物を作製した。ここで、銀濃度が71ppmの銀イオン水溶液は、陽極に銀電極を用いた水道水の無隔膜電解法により作製した。このスプレー用組成物の抗菌性を実施例13と同様にして評価した。結果を表2にまとめた。
【0039】
また、本実施例のスプレー組成物について実施例11と同様に着色状態を観察したところ、20℃で48時間(2日間)経過後に、淡灰色の着色が認められた。このことから、添着剤の濃度が100g/lの条件においては、銀濃度が70ppmを超えると銀によるスプレー対象物の着色に留意する必要がある。
【0040】
【表2】

【0041】
表1および表2から明らかなように、銀成分の銀換算濃度が0.1ppm、添着剤である尿素の濃度が10g/lにおいて24時間経過後に、銀成分の銀換算濃度が1.0ppm、添着剤である尿素の濃度が50g/lにおいて1.5時間経過後に、銀成分の銀換算濃度が5.0ppm〜70.0ppm、添着剤である尿素の濃度が50g/l〜100g/lにおいて1.0時間経過後に大きな抗菌効果が現れ、いずれの場合にも24時間経過後もその大きな抗菌効果が持続していることが認められた。なお、表1および表2において、「黄ブ球菌」とは黄色ブドウ球菌を示す。
【0042】
(実施例15)
上記実施例13および実施例14のスプレー用組成物の配合において添着剤である尿素の濃度を200g/lとしたスプレー用組成物を作製して、ディスペンサーを用いて上記晒し布に塗布したところ、布へ含浸添着が起こり銀の添着性が向上した。また、このスプレー用組成物は、皮膚に塗布したところ、べとつかず湿潤性も良好であった。さらに、添着剤である尿素の濃度を300g/lとしたスプレー用組成物を作製して、皮膚に塗布したところ、べとつき感があった。
【0043】
(実施例16)
添着剤であるグリセリンを5g採取したこと以外は、実施例3と同様にして、銀成分の銀換算濃度が5.0ppm、添着剤であるグリセリンの濃度が50g/lのスプレー用組成物を作製した。このスプレー用組成物の抗菌性を実施例3と同様にして評価した。結果を表3にまとめた。
【0044】
(実施例17)
銀濃度が5.2ppmの銀イオン水溶液を用いたこと以外は、実施例16と同様にして、銀成分の銀換算濃度が5.2ppm、添着剤であるグリセリンの濃度が50g/lのスプレー用組成物を作製した。このスプレー用組成物の抗菌性を実施例16と同様にして評価した。結果を表3にまとめた。
【0045】
(実施例18)
添着剤であるグリセリンを8g採取したこと、銀濃度が10.3ppmの銀コロイド水溶液を用いたこと以外は、実施例16と同様にして、銀成分の銀換算濃度が10.3ppm、添着剤であるグリセリンの濃度が80g/lのスプレー用組成物を作製した。このスプレー用組成物の抗菌性を実施例16と同様にして評価した。結果を表3にまとめた。
【0046】
(実施例19)
銀濃度が10.2ppmの銀イオン水溶液を用いたこと以外は、実施例18と同様にして、銀成分の銀換算濃度が10.2ppm、添着剤であるグリセリンの濃度が80g/lのスプレー用組成物を作製した。このスプレー用組成物の抗菌性を実施例16と同様にして評価した。結果を表3にまとめた。
【0047】
(実施例20)
添着剤であるグリセリンを10g採取したこと、銀濃度が20ppmの銀コロイド水溶液を用いたこと以外は、実施例16と同様にして、銀成分の銀換算濃度が20ppm、添着剤であるグリセリンの濃度が100g/lのスプレー用組成物を作製した。このスプレー用組成物の抗菌性を、菌として黄色ブドウ球菌を用いた以外は、実施例16と同様にして評価した。結果を表3にまとめた。
【0048】
(実施例21)
銀濃度が20ppmの銀イオン水溶液を用いたこと以外は、実施例20と同様にして、銀成分の銀換算濃度が20ppm、添着剤であるグリセリンの濃度が100g/lのスプレー用組成物を作製した。このスプレー用組成物の抗菌性を実施例20と同様にして評価した。結果を表3にまとめた。
【0049】
【表3】

【0050】
表3から明らかなように、銀成分の銀換算濃度が5.0ppm〜20ppm、添着剤であるグリセリンの濃度が50g/l〜100g/lにおいて1.0時間経過後に大きな抗菌効果が現れ、いずれの場合にも24時間経過後もその大きな抗菌効果が持続していることが認められた。なお、表3において、「黄ブ球菌」とは黄色ブドウ球菌を示す。
【0051】
(実施例22)
上記実施例21および実施例22のスプレー用組成物の配合において添着剤であるグリセリンの濃度を200g/lとしたスプレー用組成物を作製して上記晒し布にスプレーしたところ、布へ含浸添着が起こり銀の添着性が向上した。また、このスプレー用組成物は、皮膚に塗布したところ、べとつかず湿潤性も良好であった。さらに、添着剤であるグリセリンの濃度を300g/lとしたスプレー用組成物を作製して、皮膚に塗布したところ、べとつき感があった。
【0052】
(実施例23)
添着剤である平均分子量が100のポリエチレングリコール(以下、PEG100という)を5g採取したこと以外は、実施例3と同様にして、銀成分の銀換算濃度が5.0ppm、添着剤であるPEG100の濃度が50g/lのスプレー用組成物を作製した。このスプレー用組成物の抗菌性を実施例3と同様にして評価した。結果を表4にまとめた。
【0053】
(実施例24)
銀濃度が5.2ppmの銀イオン水溶液を用いたこと以外は、実施例23と同様にして、銀成分の銀換算濃度が5.2ppm、添着剤であるPEG100の濃度が50g/lのスプレー用組成物を作製した。このスプレー用組成物の抗菌性を実施例23と同様にして評価した。結果を表4にまとめた。
【0054】
(実施例25)
添着剤であるPEG100を10g採取したこと、銀濃度が10.3ppmの銀コロイド水溶液を用いたこと以外は、実施例23と同様にして、銀成分の銀換算濃度が10.3ppm、添着剤であるPEG100の濃度が100g/lのスプレー用組成物を作製した。このスプレー用組成物の抗菌性を実施例23と同様にして評価した。結果を表4にまとめた。
【0055】
(実施例26)
銀濃度が10.2ppmの銀イオン水溶液を用いたこと以外は、実施例25と同様にして、銀成分の銀換算濃度が10.2ppm、添着剤であるPEG100の濃度が100g/lのスプレー用組成物を作製した。このスプレー用組成物の抗菌性を実施例23と同様にして評価した。結果を表4にまとめた。
【0056】
【表4】

【0057】
表4から明らかなように、銀成分の銀換算濃度が5.0ppm〜10.3ppm、添着剤であるPEG100の濃度が50g/l〜100g/lにおいて1.0時間経過後に大きな抗菌効果が現れ、いずれの場合にも24時間経過後もその大きな抗菌効果が持続していることが認められた。
【0058】
(実施例27)
上記実施例25および実施例26のスプレー用組成物の配合において添着剤であるPEG100の濃度を200g/lとしたスプレー用組成物を作製して上記晒し布にスプレーしたところ、布へ含浸添着が起こり銀の添着性が向上した。また、このスプレー用組成物は、皮膚に塗布したところ、べとつかず湿潤性も良好であった。さらに、添着剤である尿素の濃度を300g/lとしたスプレー用組成物を作製して、皮膚に塗布したところ、べとつき感があった。
【0059】
(実施例28)
実施例7、8において作製したスプレー用組成物を各1ml採取し、1リットルテトラバッグ2個にそれぞれ充填した。次に、トリメチルアミン(窒素換算濃度5.3ppm)ガスを1リットル充填し、20℃で1時間後および2時間後のトリメチルアミンの濃度低下を測定したところ、いずれのサンプルについても1時間後のトリメチルアミン濃度は窒素換算濃度で0.5ppm(窒素換算濃度)、2時間後のトリメチルアミン濃度は窒素換算濃度で0ppmとなった。なお、トリメチルアミン濃度の測定には、北川式検知管を用いた。
【0060】
(実施例29)
実施例3、4、16、17、23、24において作製したスプレー用組成物をそれぞれ80ml計量してエアゾールアルミ缶(内部コート缶)に充填した。ガスは窒素ガスを使用した。得られた6個のエアゾールスプレーを10cm×10cmの白地の晒し布にスプレー塗布した。また、ブランクとして同様の晒し布に水のみをディスペンサーを用いて塗布した。30分後、各々の布をシャーレに取り入れて、風呂場のタイル地に発生した黒黴を綿棒で採取し、先のブランク1個とサンプル6個の布の表面に黒黴を付着させた。風呂場の室内(20℃、相対湿度95%)で24時間放置した後、各布の表面をルーペで観察すると、ブランクには変化が見られなかったが、他の6個のサンプルにおいては黒色から淡黄色に変色していた。1週間放置した後の各布の表面を同様に観察すると、ブランクでは黒黴の広がり(繁殖)が見られたのに対し、他の6個のサンプルでは黴としての存在が確認できなかった。1ヶ月放置後、2ヶ月放置後および3ヶ月放置後の各布の表面を同様に観察すると、ブランクではさらに黒黴の広がりが見られたのに対し、他の6個のサンプルでは黴としての存在が確認できなかったままであった。
【0061】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀イオンおよび銀コロイド粒子からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む銀成分と、添着剤とを含むスプレー用組成物。
【請求項2】
前記銀成分の銀換算濃度が、0.05ppm以上100ppm以下である請求項1に記載のスプレー用組成物。
【請求項3】
前記銀コロイド粒子の平均直径が、0.5nm以上100nm以下である請求項1または請求項2に記載のスプレー用組成物。
【請求項4】
前記添着剤の濃度が、5g/l以上300g/l以下である請求項1から請求項3までのいずれかに記載のスプレー用組成物。
【請求項5】
前記添着剤が、前記銀成分の銀原子に配位する官能基を有する化合物である請求項1から請求項4までのいずれかに記載のスプレー用組成物。
【請求項6】
前記添着剤が、尿素、グリセリンおよびポリエチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む請求項1から請求項5までのいずれかに記載のスプレー用組成物。
【請求項7】
前記銀成分および前記添着剤を分散させる溶媒が、有機溶媒および水の少なくともいずれかである請求項1から請求項6までのいずれかに記載のスプレー用組成物。
【請求項8】
スプレー方式が、エアゾール方法またはディスペンサー方式である請求項1から請求項7のいずれかに記載のスプレー用組成物。

【公開番号】特開2006−282629(P2006−282629A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−107551(P2005−107551)
【出願日】平成17年4月4日(2005.4.4)
【出願人】(505124122)株式会社太康 (8)
【Fターム(参考)】