説明

スペアタイヤキャリア装置

【課題】ガイドがディスクホイールを傷つけることなく、スペアタイヤを一定の位置に正確に保持して周りの部品との干渉を回避できるスペアタイヤキャリア装置を提供することを目的とする。
【解決手段】チェーンの先端側に設けられてスペアタイヤ1のディスクホイールを載置する吊り板10eと、前記チェーンを巻上げる巻上げ機10aとを備えた車両のスペアタイヤキャリアにおいて、チェーンが巻上げられることにより前記吊り板10eが上昇する際に吊り板10eと摺接し、チェーンの巻上げが完了した状態における前記スペアタイヤ1の位置を前記スペアタイヤ近傍の車両部品から遠ざける方向に吊り板10eを移動させるガイド部材20を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペアタイヤを車体に吊下するスペアタイヤキャリア装置に関し、特に、スペアタイヤの吊下位置を巻き上げ機の巻き上げ位置からずらした位置に移動させて保持できるようにしたガイド部材が設けられたスペアタイヤキャリア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トラックには、タイヤがパンクした場合の備えとして、車体後方側にスペアタイヤが装着され取外し可能に設けられている。
このスペアタイヤの、トラックの車体への取付けは、車体に固着されたチェーン駆動式のスペアタイヤキャリアにより行われる。
また、スペアタイヤキャリアは、ハンドルを回転することで巻き上げられるチェーンに接続された吊り板に、スペアタイヤが支持されている。そして、パンクしたタイヤをスペアタイヤに交換する場合、ハンドルを回転させてチェーンを巻戻して、吊り板に載置されたスペアタイヤを地面に下ろして、吊り板との係合を解除する。
その後、そのスペアタイヤを車体の下方から側方または後方に引きずり出し、パンクしたタイヤに換えて車軸に取付けられる。
【0003】
そして、車軸から取外されたパンクしたタイヤは、車体に取付けられたスペアタイヤキャリアの下方における地面に車体側方または後方から進入させて配置し、吊り板にそのタイヤを載置した後にハンドルを逆回転させてそのチェーンを巻上げる。
チェーンが巻上げられると、パンクしたタイヤは上昇して巻上げた位置に保持される。このようにしてパンクしたタイヤを保持し、トラックを再び走行させることができるようになっている。
【0004】
また、トラックの車体にスペアタイヤを設ける場合、レイアウト上車体下部の部品、例えば、足回り部品とスペアタイヤとの隙間を十分に取ることが難しく、この隙間を確保するため、車体のフレームに取付けたスペアタイヤハンガーにガイドを取付け、そのガイドをスペアタイヤのディスクホイールのセンター穴と係合させることで、スペアタイヤの取付け時にスペアタイヤを車体下部の部品から遠ざけるようにスライドさせるものが特許文献1に記載されている。
【0005】
さらに説明すると、この特許文献1のものは、車体後方側のスペアタイヤハンガーにガイドを一対設けており、そのガイドは、スペアタイヤのディスクホイールのセンター穴の径およびスペアタイヤが車体に取付けられる位置に合わせてスペアタイヤハンガーに取付けられている。
また、このガイドはスペアタイヤハンガーから車体下方側かつ前方側へ斜めに突き出ており、スペアタイヤがスペアタイヤキャリアにより上昇すると、ガイドとディスクホイールのセンター穴とが係合するようになっている。
スペアタイヤが上昇してセンター穴の車体後方側とガイドとが接触し、さらにスペアタイヤが上昇するとセンター穴の車体後方側はガイドの傾きに沿わされるため、スペアタイヤはガイドに沿って車体後方側へ移動される。その結果、スペアタイヤを車体の収納位置への取付け時にスペアタイヤを車体下部の部品から遠ざけることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−149622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、そのガイドは、前述したようにスペアタイヤキャリアによるスペアタイヤの上昇時にセンター穴と接触するのみならず、スペアタイヤキャリアによる巻上げが完了し、スペアタイヤを車体に装着している状態でもセンター穴に接触しているため、そのまま悪路を走行すると、センター穴のガイドと接触する部分が磨耗するという不具合を生じさせるおそれがあった。
また、一対のガイドはセンター穴の径およびスペアタイヤのセット位置にあわせてスペアタイヤハンガーに取付けられているので、センター穴の径が異なる場合に対応できない。また、スペアタイヤのセット位置の変更が困難である、といったことが問題があった。
さらに、ガイド形状が複雑、かつガイドの位置決めが難しいため高コストであることも問題であった。
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、ガイドがディスクホイールを傷つけることなく、スペアタイヤを一定の位置に正確に保持して周りの部品との干渉を回避できるスペアタイヤキャリア装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる目的を達成するため、チェーンの先端側に設けられてスペアタイヤのディスクホイールを載置する掛止め部材と、前記チェーンを巻上げる巻上げ機とを備えた車両のスペアタイヤキャリアにおいて、
前記チェーンが巻上げられることにより前記掛止め部材が上昇する際に前記掛止め部材と摺接し、前記チェーンの巻上げが完了した状態における前記スペアタイヤの位置を前記スペアタイヤ近傍の車両部品から遠ざける方向に前記掛止め部材を移動させるガイド部材を備えたことを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、掛止め部材がその上昇時にガイド部材と摺接し、車体の部品から遠ざかる方向に移動されるので、前記部品と前記スペアタイヤとの隙間を確保することができる。また、掛止め部材はガイド部材により所定位置にガイドされるので、掛止め部材に載設されたスペアタイヤのセット位置のばらつきを減少させることができる。さらに、ガイド部材はディスクホイールと接するのではなく、掛止め部材と接するため、ディスクホイールを傷つけないようにすることができる。また、ガイド部材はセンター穴に合わせて設ける必要がないので、センター穴の径が変更されても影響を受けにくくすることができる。
【0010】
また、本発明において好ましくは、前記ガイド部材は、前記ディスクホイールに接触することがなく、前記チェーンの巻上げ完了時に前記ディスクホイールのセンター穴内に配置されるとよい。
上記構成によれば、ガイド部材は、ディスクホイールと接触することがないので、ガイド部材によりディスクホイールを傷つけることがない。
【0011】
また、本発明において好ましくは、前記ガイド部材は、板状部材を折り曲げて形成された部材であるとよい。
上記構成によれば、板状部材を折り曲げて一体的に製作できるため、製作が容易で低コストとなる。また、ガイド部による掛止め部材のオフセット量の変更も、ガイド部の板状部材の折り曲げ角度の変更によって容易に対応できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、掛止め部材がその上昇時にガイド部材と摺接し、車体の部品から遠ざかる方向に移動されるので、前記部品と前記スペアタイヤとの隙間を確保することができる。また、掛止め部材はガイド部材により所定位置にガイドされるので、掛止め部材に載設されたスペアタイヤのセット位置のばらつきを減少させることができる。さらに、ガイド部材はディスクホイールと接するのではなく、掛止め部材と接するため、ディスクホイールを傷つけることがない。また、ガイド部材はセンター穴に合わせて設ける必要がないので、センター穴の径が変更されても影響を受けにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態におけるトラック後方側のスペアタイヤ周囲の構成を示す斜視図である。
【図2】本実施形態におけるトラック後方側のスペアタイヤ周囲の構成を示す上面図である。
【図3】本実施形態におけるトラック後方側のスペアタイヤ周囲の構成を示す側面図である。
【図4】スペアタイヤキャリアの説明図であり、(a)はスペアタイヤキャリアが取り付けられた状態で車両側面視方向からの側面図であり、(b)は、車両後方視方向からの後面視である。
【図5】ガイド部材が設けられたスペアタイヤキャリア装置の説明図である。
【図6】ガイド部材に接する前後の吊り板の位置を示す説明図である。
【図7】ガイド部材とスペアタイヤハンガーの構成を示す説明図であり、(a)は車両前方から見た正面視、(b)は底面視、(c)は側面視である。
【図8】ガイド部材の説明図であり、(a)は平面視、(b)は(a)のZ方向視である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1〜8を用いて、後述するガイド部材20およびスペアタイヤキャリア10を備えた本発明のスペアタイヤキャリア装置を詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対位置などは特に記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0015】
図1〜3は、トラック後方側のスペアタイヤ周囲の構成を示しており、車軸、タイヤおよびクロスメンバ等は省略している。車体前後方向に平行に設けられた断面略コ字状のサイドフレーム3a、3bは、凹部分を内側に向けて配されており、その凹部分間には図示しないクロスメンバが取り付けられている。
【0016】
また、サイドフレーム3a、3bに対して平行にリーフスプリング5a、5bが設けられており、車体前方側の一端はピンを介してそれぞれサイドフレーム3a、3bに取付けられ、後方側の他端はリーフスプリング5a、5bが変形したときのスパン(その一端から他端までの長さ)の変化を逃がすためシャックルリンク6a、6bを介してそれぞれサイドフレーム3a、3bに取付けられている。
リーフスプリング5a、5bには、その中央に設けられるUボルトにより車軸が取付けられ、車軸が路面から受ける振動あるいは衝撃をフレーム側に直接伝えないようになっている。
【0017】
また、リーフスプリング5a、5bの中央には、ショックアブソーバー7a、7bが設けられており、上方側の一端はそれぞれサイドフレーム3a、3bのウェブ部分に取付けられ、下方側の他端はそれぞれリーフスプリング5a、5bの略中央の内側に取付けられている。
【0018】
また、サイドフレーム3a、3bの間には、リーフスプリング5a、5b等よりもさらに車体後方側に、断面略L字状の一対のスペアタイヤハンガー4a、4bがサイドフレーム3a、3bに対して略直角に設けられている。
前側に設けられたスペアタイヤハンガー4aのL字状断面の底部は、後述するスペアタイヤキャリア10の吊り板10eの昇降時の障害とならないようにトラック前方側を向いており、後側に設けられたスペアタイヤハンガー4bのL字状断面の底部は後方側を向いている。
【0019】
また、スペアタイヤハンガー4a、4bの車幅方向両側部は、トラック前方側に折り曲げられてボルト25によりサイドフレーム3a、3bのウェブ部に締結されている。
スペアタイヤハンガー4aにおいては、車幅方向両側部にL字状に折り曲げられた補強部材4a1,4a2がスペアタイヤハンガー4aの側部および底部に溶接して設けられ、補強部材4a1、4a2の側部は前記ボルト25によりスペアタイヤハンガー4aの側部とともにそれぞれサイドフレーム3a、3bのウェブ部に締結されている。
【0020】
スペアタイヤハンガー4a、4bの間には巻上げ機10aがスペアタイヤハンガー4a、4bの略中央のそれぞれにボルト等により取付けられている。スペアタイヤ1が装着され、センター穴2aを有するディスクホイール2は、巻上げ機10aにより昇降される吊り板10eに載置されて支持されることで吊り下げられている。
なお、吊り板10eは、スペアタイヤハンガー4a、4bの間に吊り下げられている。吊り下げられた吊り板10eの昇降は、棒筒をクランク状に折り曲げて形成され、サイドフレーム3aの側面に形成された穴および巻上げ機10aに挿入されたハンドル8を回転させることにより行われる。
巻上げ機10aの巻き上げ完了時におけるディスクホイール2はスペアタイヤハンガー4a、4bに当接して保持される。なお、スペアタイヤ1の位置は、巻上げ機10aによって巻き上げられた状態では、シャックルリンク6a、6bの近傍となっている。
【0021】
次に、図4を用いてスペアタイヤキャリア10を説明する。図4(a)はスペアタイヤハンガー4a、4bに取付けた状態における側面図、図4(b)は後面図である。
スペアタイヤキャリア10は、図4に示すように、巻上げ機10aに巻掛けられたチェーン10dの先端に設けられる連結部10hと、連結部10hの下端に固着される下端係止部10iと、ディスクホイール2のセンター穴2aに着脱自在に係合し、連結部10hが挿通する挿通孔を備える吊り板10eと、吊り板10eおよび下端係止部10iの間の連結部10hに周設されるばね10gを有する。
【0022】
歯車機構によりチェーン10dを巻上げる巻上げ機10aには、ハンドル8の一端が内嵌される筒部10cおよびスペアタイヤハンガー4a、4bに連結させるための締結部10bが設けられている。
吊り板10eには、その長手方向において相対する両側寄りの上面に突起部10fが設けられている。突起部10fは、吊り板10eをディスクホイール2のセンター穴2aに係合させると、センター穴2aの概ね直径上の内径部に挿入されてセンター穴2aから上方に突き出ることになる。
【0023】
そして、吊り板10eの挿通孔に挿通された連結部10hがチェーン10dと連結されており、この連結部10hは、チェーン10dの先端に連結される単一の長尺楕円環状長リングの形状をしている。連結部10hは、チェーン10dの構成リングと同一の短リングの連結体からなるものでも良く、単一の長板状長リングからなるものでも良い。
連結部10hの下端には、下端係止部10iが固着されており、吊り板10eと下端係止部10iとの間には、ばね10gが連結部10hに対して周設されている。
スペアタイヤキャリア10は、このような構成により、吊り板10eをディスクホイール2のセンター穴2aに着脱自在に係合して用いられる。
【0024】
すなわち、車体の側方、または後方からスペアタイヤ1を、車両の下部に進入させてスペアタイヤキャリア10の下方における地面に配置し、吊り板10eをディスクホイール2のセンター穴2aの内部に入れた後に、ハンドル8を回転させてチェーン10dを巻上げる。そうして吊り板10eが引き上げられると、吊り板10eの両側端部がディスクホイール2のセンター穴2aの周縁部の下面に当接するとともに、ばね10gが圧縮される。
巻上げ機10aの巻上完了時には、ばね10gのばね力によりバックアップされている吊り板10eがディスクホイール2をスペアタイヤハンガー4a、4bに押し当てスペアタイヤ1が保持される。
【0025】
次に、本発明のスペアタイヤキャリア装置について説明する。
図5は、吊り板10eにスペアタイヤ1を載置しない場合の車体側方下側から見た斜視図である。図6は、図5の状態における車体側方から見たガイド部材20および吊り板10eの拡大図である。図7は、ガイド部材20がスペアタイヤハンガー4aに設けられた状態を示しており、(a)は車両前方から見た正面視、(b)は底面視、(c)は側面視である。また、図8は、ガイド部材20の詳細を示しており、(a)は平面視、(b)は(a)のZ方向の側面図である。
【0026】
図5、7に示すように、ガイド部材20は、車体前方側に配される前側のスペアタイヤハンガー4aの車幅方向の略中央部に、L字状断面の底部に取り付けられている。
ガイド部材20は、図8に示すように、展開形状が略矩形の板部材からなり、1辺の両角を切り落とし、車体後方側を折り曲げて断面略V字状に形成されている。
ガイド部材20において、取付け部20aのトラック前後方向の長さは、摺接部20bの傾斜方向の長さよりも短くなっているが、必ずしもこのようにする必要はない。このV字状のガイド部材20がなす角θは鋭角である。このなす角θを調整することによって、スペアタイヤ1を吊り上げた際の、スペアタイヤの車体後方側へのずらし量(オフセット量)を調整することができる。例えば、図6に示すように、オフセット量を約5mmとするように設定することができる。
【0027】
ガイド部材20は、溶接によりまたはボルト締結によってスペアタイヤハンガー4aに固定する。
また、図2に示すように、スペアタイヤ1の位置において、ガイド部材20はセンター穴2a内に収まり、チェーン10dの巻上げ時も含めてディスクホイール2と接触することがない。
【0028】
ここで、図6を用いて、ガイド部材20により吊り板10eがトラック後方側へ移動される動作について説明する。
吊り板10eがガイド部材20より下方にあるとし、その状態からハンドル8を回転させ巻上げ機10aによりチェーン10dを巻上げると吊り板10eは上方へ移動する。そして、上昇中に吊り板10eの車体前方側がガイド部材20の摺接部20bに当接する。さらに、吊り板10eが上昇すると、吊り板10eのトラック前方側は摺接部20bの傾斜に沿って摺接部20bに摺接し、その間トラック後方側へ移動されることになる。
このようにして、吊り板10eはトラック後方側へ移動されるので、吊り板10eに載設されたスペアタイヤ1もトラック後方側へ移動される。
【0029】
スペアタイヤ1のトラック後方側への移動の開始を早めたい場合、摺接部20bを長くし、なす角θを直角に近づけるとよい。これは、摺接部20bを長くするだけ、またはなす角θを直角に近づけるだけでもよい。ただし、摺接部20bを長くすると、巻上げの際にディスクホイール2のセンター穴2aに接触するおそれが高まる。
また、反対に、スペアタイヤ1のトラック後方側への移動の開始を遅らせたい場合、摺接部20bを短くし、なす角θの角度を小さくするとよい。もちろん、摺接部20bを短くするだけ、またはなす角θの角度を小さくするだけでもよい。
【0030】
さらに、スペアタイヤ1の取付けの一連の動作について述べる。
吊り板10eが図5に示す状態であるとする。スペアタイヤキャリア10の直下における地面に車体側方または後方からスペアタイヤ1を進入させて配置する。このとき、ディスクホイール2のセンター穴2aの中心と吊り板10eの中心とを概ね合致させる。
巻上げ機10aの筒部10cに挿入されたハンドル8を回転させて巻上げ機10aによりチェーン10dを巻き戻し、吊り板10eをスペアタイヤキャリア10の下方へ降ろす。さらにチェーン10dをたるませ、吊り板10eをセンター穴2aからディスクホイール2の下方に差入れる。
【0031】
そして、ハンドル8を逆回転させてチェーン10dを巻上げて、吊り板10eを上方に引き上げる。吊り板10eに設けられた一対の突起部10fがセンター穴2aに挿入され、その後、センター穴2aの周縁部の下面に吊り板10eの両側端部が当接し、チェーン10dに連結された連結部10hおよび連結部10hに固着された下端係止部10iがさらに上方に引き上げられるためばね10gが圧縮される。
【0032】
さらにチェーン10dを巻上げると吊り板10eは上方へ移動する。そして、前述したように、上昇中に吊り板10eの車体前方側がガイド部材20の摺接部20bに当接する。さらに、吊り板10eが上昇すると、吊り板10eの車体前方側は摺接部20bの傾斜に沿って摺接部20bに摺接し、その間、スペアタイヤ1は車体後方側へ移動されることになる。
【0033】
この移動の際に、ガイド部材20はディスクホイール2と接触することなく、センター穴2a内のトラック前方側を通り、ガイド部材20と接触するのは吊り板10eのみとなる。このようにして、スペアタイヤ1は、シャックルリンク6a、6bから遠ざかる方向に移動される。
その後、チェーン10dの巻上げが終了し、ばね10gのばね力によりバックアップされている吊り板10eがディスクホイール2をスペアタイヤハンガー4a,4bに押し当て保持し、スペアタイヤ1の吊り状態を形成する。このスペアタイヤ1の吊り状態を安定維持するため、チェーン10dを巻上げてばね10gをさらに圧縮し、完全に密着させる必要がある。
【0034】
なお、ガイド部材20の形状は、図8に示すような形状に限定されるものではなく、チェーン10dの巻上げ時にスペアタイヤ1が車体前方側から車体後方側へ向けて上昇移動するように、吊り板10eをガイドする形状であればよい。
このように、ガイド部材20は断面略V字状の形状をしており、スペアタイヤハンガー4aに取付けられていない摺接部20bは、上下方向に対して傾斜を有している。そのため、図6に示すように、チェーン10dの巻上げにより吊り板10eが上昇し、ガイド部材20に接触してさらに上昇すると、吊り板10eはガイド部材20に摺接するので、ガイド部材20を設けない場合に比べて、車体の後方側へ移動することになる。
【0035】
したがって、巻上げが完了したスペアタイヤ1とシャックルリンク6a、6bとの間に隙間が確保される。吊り板10eはガイド部材20により所定位置にガイドされるので、吊り板10eに載置されたスペアタイヤ1のセット位置のばらつきを減少させることができ、スペアタイヤ1のセット位置によってはシャックルリンク6a、6bに近接、接触するような問題を確実に防止できる。
【0036】
また、ガイド部材20は、チェーン10dの巻上げ時および巻上げ完了時のいずれもディスクホイール2と接触することがないので、ガイド部材20によりディスクホイール2を傷つけることがない。
そして、ガイド部材20は単一かつ平易な形状の板状部材であるため、センター穴の径に合わせて一対のガイド部材を設ける場合に比べて、ガイド部材20の位置決めが容易でかつ部品数が少なく、製作が容易で低コストとなり、さらにセンター穴2aの径の変更による影響を受けにくい。また、ガイド部材20は、単一の板状部材であるため、オフセット量の変更も、折り曲げ角度を変更するだけでよいため容易に対応できる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明では、ディスクホイールを傷つけることなくスペアタイヤとシャックルリンクとの間に隙間を設けることが可能であり、スペアタイヤを車体下部に搭載するトラックやバスに適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 スペアタイヤ
2 ディスクホイール
2a センター穴
3a,3b サイドフレーム
4a,4b スペアタイヤハンガー
4a1,4a2 補強部材
5a,5b リーフスプリング
6a,6b シャックルリンク
7a,7b ショックアブソーバー
8 ハンドル
10 スペアタイヤキャリア
10a 巻上げ機
10b 締結部
10c 筒部
10d チェーン
10e 吊り板(掛止め部材)
10f 突起部
10g バネ
10f 連結部
10i 下端係止部
20 ガイド部材
20a 取付け部
20b 摺接部
θ ガイド部材のなす角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チェーンの先端側に設けられてスペアタイヤのディスクホイールを載置する掛止め部材と、前記チェーンを巻上げる巻上げ機とを備えた車両のスペアタイヤキャリアにおいて、
前記チェーンが巻上げられることにより前記掛止め部材が上昇する際に前記掛止め部材と摺接し、前記チェーンの巻上げが完了した状態における前記スペアタイヤの位置を前記スペアタイヤ近傍の車両部品から遠ざける方向に前記掛止め部材を移動させるガイド部材を備えたことを特徴とするスペアタイヤキャリア装置。
【請求項2】
前記ガイド部材は、前記ディスクホイールに接触することなく、前記チェーンの巻上げ完了時に前記ディスクホイールのセンター穴内に配置されることを特徴とする請求項1に記載のスペアタイヤキャリア装置。
【請求項3】
前記ガイド部材は、板状部材を折り曲げて形成された部材であることを特徴とする請求項1または2に記載のスペアタイヤキャリア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−131407(P2012−131407A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286098(P2010−286098)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】