説明

スペックル除去光源および照明装置

【課題】波長を時間的に変化させたレーザ光を用い、スペックルを除去できるスペックル除去光源を得る。
【解決手段】縦モードがシングルモードであるレーザ光を出力する光源と、レーザ光の波長を変化させる光周波数変調手段と、長手方向に長尺で屈曲されている多モード光ファイバと、レーザ光を光ファイバへ導く少なくとも1つ以上の集光レンズとを備え、集光レンズは、レーザ光の集光サイズを光ファイバのコア径とほぼ同等に変換し、かつレーザ光の開口数を光ファイバを伝送可能な開口数とほぼ同等に変換し、光ファイバは、光のモードが少なくとも2つ以上であり、光ファイバ内での反射回数で増幅された伝搬時間の異なる基本モードの光から最高次モードまでの光が、出射端面において空間分布で重ね合わせられ、かつ光ファイバの少なくとも光を出力する端面を含む一部、横断面のコア外径形状が略多角形である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スペックルを除去する光源、およびその光源を用いた照明装置に関するものであり、特に、光源としてレーザを使用し、空間光変調手段として液晶あるいはDMD(Digital Micromirror Device)を使用した投写型ディスプレイにおいて、レーザの光束内に現れるスペックルを除去する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
投写型ディスプレイは、画像表示装置として民生TV用、プレゼンテーション用、産業用、大劇場用など、様々な形態で現在利用されている。一般に、ライトバルブ(光弁)と呼ばれる空間光変調手段に光を照射して画像を形成し、その透過光あるいは反射光をスクリーンなどの補助面に投影して画像を表示する。
【0003】
従来、この種の投写型ディスプレイの一般的構成として、投写型ディスプレイにおけるランプの光源をレーザの光源に置き換えることにより、単色スペクトルによる色再現領域拡大、光源強度変調による高コントラスト化、半導体レーザなどによる長寿命化、光指向性による光学系小型化が可能となり、従来のランプの光源に対し圧倒的な高性能化が図れるものがある(例えば、特許文献1参照)。なお、光源から出射する光でライトバルブを照明する光学系を照明光学系と呼び、ライトバルブから出射する光束を拡大投写する光学系を投写光学系と呼ぶ。
【0004】
ところが、レーザをライトバルブに照明してスクリーンに投影すると、スペックルと呼ばれる明暗の斑点状の模様が画像上に現れる。これは、空間的および時間的にコヒーレントな光であるレーザが、光学的に粗い面を反射あるいは透過して位相の異なる光となり、人間の眼で異なる位相を干渉として観察するためである。スペックルは、画像のノイズ成分となり観察者にとって好ましくない。
【0005】
スペックルを除去する方法として、レーザの光源からの光を多モード光ファイバに結合し、その光ファイバを振動させてモードスクランブルを引き起こすものがある(例えば、特許文献2参照)。これにより、スペックルパターンが変化し、スペックルパターンが重ね合わされれば、スペックルは平均化されて低減する。しかし、光ファイバを振動させる機械的な装置が必要であり、その機械的な装置、および振動する光ファイバの耐久性が問題となる。また、断面形状が円形の光ファイバでは円周方向を周回するスキュー成分が発生し、スペックルパターンは空間的に偏りが大きく、スペックルを十分に除去できない。
【0006】
これに対し、スペックルを除去する別の方法として、半導体レーザの注入電流を変調することにより半導体レーザを多波長の発振モードとし、回折格子を用いた光学系により空間的に分光するものがある(例えば、非特許文献1参照)。これにより、多波長によるスペックルパターンが生じ、スペックルパターンが重ね合わされれば、スペックルは平均化されて低減する。しかし、回折格子を用いた光学系はアライメント調整が複雑であり、また、装置が大型で高価になってしまう。
【0007】
スペックルを除去する別の方法として、無線周波数を注入することにより半導体レーザを多波長の発振モードとするものがある(例えば、特許文献3参照)。また、光ファイバピグテールを用いた光フィードバックにより半導体レーザを多波長の発振モードとしている。
【0008】
さらに、音響光学変調器を用いたドップラーシフトにより、レーザ波長がシフトしている。これにより、多数の異なるスペックルパターンが生じ、スペックルパターンが重ね合わされれば、スペックルは平均化されて低減する。
【0009】
しかし、空間的に分光しておらず、波長の変化だけでは光路長差の非常に小さなレーザ光間において位相の変化は小さく、スペックルを十分に除去できない。また、多波長の発振モードによる半導体レーザのスペクトル拡がりは不均一な強度分布を有するため、強度の大きいスペクトルパターンが存在し、スペックルを十分に除去できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,634,704号明細書
【特許文献2】米国特許第3,588,217号明細書
【特許文献3】特開2002−323675号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Caesar Saloma et. al., Appl. Opt. Vol. 29, No. 6, p. 741-742
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この発明は、上述した点に鑑みてなされたもので、波長を時間的に変化させたレーザ光を用いることにより、スペックルを除去することができるスペックル除去光源を提供するものである。
【0013】
さらに、それらのレーザ光を空間光変調手段に照明することにより、スペックルを除去した画像を生成する照明装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明に係るスペックル除去光源は、縦モードがシングルモードであるレーザ光を出力する光源と、レーザ光の波長を変化させる光周波数変調手段と、長手方向に長尺で屈曲されている多モード光ファイバと、光源から出力されるレーザ光を多モード光ファイバへ導く少なくとも1つ以上の集光レンズとを備え、集光レンズは、レーザ光の集光サイズを多モード光ファイバのコア径とほぼ同等に変換し、かつレーザ光の開口数を多モード光ファイバを伝送可能な開口数とほぼ同等に変換し、多モード光ファイバは、光のモードが少なくとも2つ以上であり、多モード光ファイバ内での反射回数で増幅された伝搬時間の異なる基本モードの光から最高次モードまでの光が、出射端面において空間分布で重ね合わせられ、かつ多モード光ファイバの少なくとも光を出力する端面を含む一部、横断面のコア外径形状が略多角形である。
【0015】
また、この発明に係る照明装置は、前記記載のスペックル除去光源から出力されたレーザ光が照明されて画像を生成する空間光変調手段を備え、前記空間光変調手段は、画像を生成する周期が前記光周波数変調手段によりレーザ光の波長を変化する周期に比べて長く設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、波長を時間的に変化させたレーザ光を用いることにより、スペックルを除去することができる。
【0017】
また、スペックル除去光源から出力されたレーザ光を空間光変調手段に照明することにより、スペックルを除去した画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施の形態1によるスペックル除去光源および照明装置を示す構成図である。
【図2】内部変調方式の光周波数変調手段の構成図である。
【図3】外部変調方式の光周波数変調手段の構成図である。
【図4】スペックルを除去する方法を説明するもので、干渉する二つのレーザ光の電界E1、E2を表す説明図である。
【図5A】二つのレーザ光を重ね合わせた強度Iを説明するもので、レーザ光の波長(光周波数)が等しい(ω1=ω2)場合の説明図である。
【図5B】初期位相差(φ1-φ2)で与えられる静的なスペックル成分のみが存在する場合の説明図である。
【図5C】干渉の強度Iが時間的に変化せず静的となる場合の説明図である。
【図6A】レーザ光の波長(光の周波数)を時間的に変化させる場合を説明するもので、時間に応じてω0±Δωの範囲で周波数を変える例を示す説明図である。
【図6B】像面全体のスペックルパターンが時間変化する周期が光源の光周波数の変化する周期(2Δt2)となっている例を示す説明図である。
【図6C】干渉の強度Iが時間的に変化する場合の説明図である。
【図7】異なる場所で強度ムラとして観測されるスペックル成分の説明図である。
【図8】この発明の実施の形態2に係るスペックル除去光源および照明装置を示す構成図である。
【図9】多モード光ファイバ4のコア及びクラッドの説明図である。
【図10】多モード光ファイバ4の横断面構造を説明図である。
【図11】多モード光ファイバ4の製造方法について説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明をより詳細に説明するために、この発明の好ましい実施の形態について、図面を用いてこれを説明する。
【0020】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるスペックル除去光源および照明装置を示す構成図である。
この発明の実施の形態1に係るスペックル除去光源および照明装置は、光源、光周波数変調手段、および空間光変調手段を備えるものである。
【0021】
スペックル除去光源は、レーザ光を出力する光源1と、光源1から出力されるレーザ光の波長を変化させる光周波数変調手段2とで構成する。また、照明装置は、スペックル除去光源と、照明された光で画像を生成する空間光変調手段3とで構成する。
【0022】
図1において、光源1としては、半導体レーザや固体レーザを非線形光学材料により波長変換したレーザ、あるいは半導体レーザそれ自体などを用いることができる。出力されるレーザ光は、可視である400〜700nm程度の範囲の波長を有する。例えば、InGaAs系化合物の半導体混晶による波長630nmの半導体レーザ、あるいはNd:YAGのレーザ媒質による固体レーザをMgO:LiNbOの非線形光学材料により波長変換した波長532nmの波長変換レーザ、あるいはInGaAs系化合物の半導体混晶による半導体レーザをMgO:LiNbOの非線形光学材料により波長変換した波長473nmの波長変換レーザの光源である。ここで、光源から出力するレーザ光は、縦モードがシングルモードで単一波長である。
【0023】
光周波数変調手段2としては、内部変調方式と外部変調方式がある。内部変調方式は、光源の構成要素、すなわちレーザ共振器内に挿入した媒体、レーザ媒質、励起電源などに外力を加えて変調する方式である。一方、外部変調方式は、光源自体は一定に動作させ、光源から出力するレーザ光に対して変調を与える方式である。
【0024】
例えば、内部変調方式では、図2に示すように、電気光学効果を有する変調媒体2aを光源のレーザ媒質1aとともに2つの反射鏡1b、1cからなるレーザ共振器内に設置する。変調媒体に電圧源2bから電界を印加することにより、媒体の屈折率が変化する。
【0025】
これにより、レーザの共振器長が変化するため、発振する光周波数を変化させることができる。ここで、電界の強度を変調することにより光周波数を時間的に変化させる。電気光学効果を有する変調媒体としては、LiNbOやLiTaOなどを用いる。光源が半導体レーザ自体の場合、注入電流を変調することにより、半導体レーザの発振する光周波数を時間的に変化させることができる。
【0026】
また、外部変調方式では、図3に示すように、音響光学効果を有する変調媒体2cにレーザ光を伝搬する。変調媒体を圧電素子2dで発生した超音波が伝搬することにより、変調媒体内に圧縮伸張を引き起こし、屈折率の周期的な層による回折格子が生じる。
【0027】
これにより、ブラッグ条件を満たす方向に強い1次回折光が生じるとともに、ドップラーシフトでレーザ光の光周波数を変化させることができる。ここで、超音波の音響周波数を変調することにより光周波数を時間的に変化させる。
【0028】
音響光学効果を有する変調媒体としては、テルライトガラスやPbMoOなどを用いる。ここで、光周波数変調手段によりレーザ光の波長を変化させる周期は20msec以下に設定している。
【0029】
空間光変調手段3は、液晶あるいはDMD(Digital Micromirror Device)などを変調媒体として用いることができる。液晶を用いた方式は、液晶材料をガラス基板などで挟んで素子とし、外部から電界を加えて液晶の分子配列の変化とともに引き起こされる素子の光学的性質の変化を利用して画像を生成する。
【0030】
また、DMDを用いた方式は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術により製造したマイクロミラーを2次元に並べ、各ミラーを傾けることによりON/OFF駆動して画像を生成する。ここで、空間光変調手段により画像を生成させる周期は光周波数変調手段によりレーザ光の波長を変化させる周期に比べて長く設定している。
【0031】
次に、動作について説明する。
光源1から出力されたレーザ光は、光周波数変調手段2により光周波数が時間的に連続して変化している。そのレーザ光は、空間光変調手段3を照明する。空間光変調手段3は、入力信号でデバイスの光学特性を変化させ、照明されたレーザ光の光束を局所的に変調し、画像を形成する。空間光変調手段3からの透過光あるいは反射光(図1では透過光)は、スクリーンなどの補助面に投影され、画像を表示することになる。このとき、スペックルは除去されている。
【0032】
次に、スペックルを除去する方法について説明する。
任意の一点から出た光が異なる二つの経路を通り、ある一点で干渉することを考える。
【0033】
スペックルは、空間的および時間的にコヒーレントなレーザ光が、物体面(例えばスクリーン)などの光学的に粗い面を反射あるいは透過して位相の異なる光となり、像面(例えば人間の眼)で異なる位相の干渉として観察される。
【0034】
図4に示すように、干渉する二つのレーザ光の電界E1、E2は、それぞれ式(1)、(2)のように表される。
【0035】
【数1】

【数2】

【0036】
ここで、rは人間の眼(像面)における位置、tは観察した時間、ω1、ω2は時間tにおける各レーザ光の周波数、φ1、φ2は位置rにおける各レーザ光の初期位相である。
【0037】
二つのレーザ光を重ね合わせた強度Iは、式(3)のように与えられる。
【0038】
【数3】

【0039】
仮に、図5A〜図5Cに示すように、レーザ光の波長(光周波数)が等しい(ω1=ω2)場合(図5A参照)、式(4)の位相Δψは初期位相差(φ1-φ2)で与えられる静的(static)なスペックル成分のみが存在するため(図5B参照)、式(5)の干渉の強度Iは時間的に変化せず、静的となる(図5C参照)。
【0040】
一方、図6A〜図6Cに示すように、レーザ光の波長(光の周波数)を時間的に変化させる場合を考える。図6Aは時間に応じてω0±Δωの範囲で周波数を変える例を示している。図6Aの例では、単純に三角波で周期を変えているため、ある時刻の周波数をω1、それからΔt1後の周波数をω2とすると、ω2(t)=ω1(t−Δt1)が成り立つ。
【0041】
図4のように、任意の一点から出た光が異なる二つの経路を通り、ある一点で干渉することを考える。この場合、二つのレーザ光の経路が異なることから、伝搬時間(または光路長)が異なる。ある任意の時間の周波数ω1の光と、伝搬時間差Δt1後の周波数ω2の光は、任意の一点から異なる時刻に出発するが、異なる経路を通ることから伝搬時間差Δt1(または光路長差cΔt1)が発生し、当時にある一点に到達し干渉する。
【0042】
式(4)の位相Δψは、初期位相差(φ1-φ2)で与えられる静的なスペックル成分の他に、光周波数差(ω1-ω2)と時間tとの積で変化するビート周波数成分が生じる。この新たな後者の成分により、式(5)の干渉の強度Iは時間的に変化することになる。
【0043】
人間が安定な画像として認識することができるのは、視覚の光刺激に対する感覚が一定期間残っていて、その期間内に別の刺激が視野内の別の場所に到来すると同時に光っているような感覚を生じる。もし、ここで、後続の光刺激が同じ場所に到来するならば、感覚の強度が足し合わされる(積分される)ことになる。
【0044】
時間的に短い間隔をおいて2つの光刺激を提示し、光刺激の強度を調節し光刺激が知覚される閾値を調べる方法により、時間間隔20ms程度までは2つの刺激が完全に足し合わされて1つの光刺激と同等になることが分かっている。したがって、この時間的足し合わせ効果(時間積分効果)により時間的にスペックルパターンが平均化され、スペックルを除去することができる。
【0045】
像面全体のスペックルパターンが時間変化する周期は、図6Bの例では光源の光周波数の変化する周期(2Δt2)となっている。空間光変調手段3により生成される一枚の画像において、スペックルパターンが十分に平均化されていれば、スペックルを認識することなく良好な画像を観測することができる。ゆえに、一つの画像を表示する時間内において位相Δψを2π以上変化させればよい。これらにより、光周波数変調手段2がレーザ光の波長を変化させる周期は、空間光変調手段の画像を生成する周期以下であるとともに、20ms以下と設定する。
【0046】
像面全体のスペックルパターンにおいて、時間間隔20ms以下で干渉の強度が大きく変化することが望ましい。干渉強度の時間変化は、位相Δψの時間変化、つまりビート周波数(ω1-ω2)が大きいほど変化が大きい。ビート周波数(ω1-ω2)を大きくするには、ω2(t)=ω1(t−Δt1)と時間Δt1の原点シフトと考えると、
ω1(t)−ω2(t)=ω1(t−Δt1)−ω1(t)
=ω1(t)-∂ω/∂t Δt1−ω1(t)
=-∂ω/∂t Δt1
と展開できることから、周波数の時間変化率(一階微分、傾き)を大きくするか、時間Δt1を大きくすればよい。
【0047】
以上より、光周波数変調手段2の波長の時間変化の変化率が大きいほど、また伝搬時間差Δt1(光路長差cΔt1)が大きいほど、効率良くスペックルを除去することができる。
【0048】
光源1を出力するレーザ光は、縦モードがマルチモードの場合、光周波数変調手段2によるレーザ光の波長の変化により、例えば、あるモードω1(t)と別のモードω2(t)がω1(t)=ω2(t)と一致することがある。この場合、同一波長となるため時間で変化するビート周波数成分が無くなり、静的なスペックル成分のみの干渉強度となる不具合が発生する。
【0049】
以上の理由のため、スペックルを時間的に変化させ、時間で平均化することで除去するためには、縦モードがシングルモードである、もしくはマルチモードの周波数変化が別のモードと重ならないことが望ましい。
【0050】
また、一般にスペックルというと、図7に示すような異なる場所の強度ムラを連想する。これは、初期位相差(φ1(r)-φ2(r))で与えられる静的なスペックル成分で、像面上の点r毎に異なる値をもつため、静的な強度ムラとして観測される。ここで、すでに上記で示したようにビート周波数成分を発生させることでスペックルパターンを時間変化させ、ある任意の一点rで時間的に平均化することができれば、別の位置r’でも同様にスペックルが時間的に平均化される。
【0051】
以上より、像面上の任意の位置でスペックルが平均化されるので、像面上で均一な像を得ることができる。
【0052】
光周波数変調手段2は、レーザ光の強度をほぼ一定に保ったまま波長を変化させる。これにより、レーザ光の波長に対する強度が均一のため、任意のレーザ光の波長による干渉で大きな強度ムラを生じることなく、スペックルを除去することができる。
【0053】
光周波数変調手段2は、レーザ光の波長を三角波で変化させているが、正弦波で変化させても良く、同様に干渉の強度は時間的に連続して変化することになり、スペックルを除去することができる。
【0054】
スペックル除去光源は、光源1、および光周波数変調手段2の構成により、装置のサイズを小さく、装置のコストを安くすることができる。
【0055】
このように構成すれば、レーザ光をスクリーンなどの補助面に投影しても、スペックルパターンが時間的に変化するため、効率良くスペックルを除去することができるスペックル除去光源および照明装置が得られる。
【0056】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係るスペックル除去光源および照明装置は、光源、光周波数変調手段、多モード光ファイバおよび空間光変調手段を備えるものである。
【0057】
図8は、この発明の実施の形態2に係るスペックル除去光源および照明装置を示す構成図である。スペックル除去光源は、レーザ光を出力する光源1と、レーザ光の波長を変化させる光周波数変調手段2と、内部のコアで光を伝搬し、光のモードが二つ以上となる多モード光ファイバ4で構成する。また、照明装置は、スペックル除去光源と、照明された光で画像を生成する空間光変調手段3とで構成する。
【0058】
図1のスペックル除去光源および照明装置と同様の構成を示しており、特に明記しない限り、図1のスペックル除去光源および照明装置と同様の機能を有する。
【0059】
多モード光ファイバ4は、図9に示すように、横断面の中心に光を伝搬させるコア4aがあり、コア直径は、数十〜数百μm程度を有する。コアの外周には、光を全反射させるためのクラッド4bがあり、コアよりも屈折率が低くなっている。
【0060】
次に、動作について説明する。
光源1から出力されたレーザ光は、光周波数変調手段2により周波数が時間的に連続して変化している。そのレーザ光は、レンズ5により集光し、多モード光ファイバ4に入射される。多モード光ファイバ4に入射するレーザ光のNAは光ファイバを伝搬可能なNAと同等かもしくはそれ以下、ビームサイズは光ファイバのコアサイズと同等かもしくはそれ以下となっている。この条件となれば、光源1から出力されたレーザ光が直接多モード光ファイバ4に入射し、レンズ5を用いなくても良い。
【0061】
多モード光ファイバ4に入射したレーザ光は、多モード光ファイバ4のコア4a内を伝搬して出射される。ここで、光を全反射しているため、高い輸送効率でレーザ光を伝搬させることができる。
【0062】
多モード光ファイバ4には、光を伝搬可能なモードが多数存在する。最高次モードの伝搬角は全反射角にほぼ等しく、モードの伝搬角が0から全反射角の間の範囲にほぼ連続的に分布すると見なしてよい程度で、モード数は数百〜数千以上である。
【0063】
ここで、多モード光ファイバ4は長手方向に長尺で屈曲されているため、反射回数は十分で入射したレーザ光が複数のモードに展開されて多モード光ファイバ4を伝搬する。多モード光ファイバ4に存在する最低次モード(基本モード)は伝搬角が非常に小さく、光ファイバの光軸にほぼ平行に伝搬するので最も早く出射端に到達する。
【0064】
一方、高次モードの伝搬角はほぼ全反射角θcに等しく、図9に示すように等価的に基本モードよりも1/cosθc倍だけ長い距離を伝搬することになる。そのため、距離Lを伝搬したときの基本モードと最高次モードの伝搬時間差Δtは、式(6)となる。ここで、n1はコアの屈折率、cは光速である。
【0065】
【数4】

【0066】
したがって、レーザ光は多モード光ファイバ4を伝搬させると、異なるモードにより伝搬時間差Δtが生じ、これはファイバ長Lで比例して拡大される。
【0067】
物体面で近接した二点からのレーザ光では、像面までの光路長差は小さいため、伝搬時間差Δt1が小さく、レーザ光の波長(光周波数)が時間的に変化した場合でも、レーザ光の光周波数差(ω1-ω2)が小さくなる。そのため、ビート周波数成分による位相Δψの時間変化は小さく、像面における干渉の強度の変化は小さくなる。他方、多モード光ファイバ4を出力したレーザ光は、異なるモードの伝搬時間差Δtが長さLのファイバにより拡大して生成される。
【0068】
これにより、物体面で近接した二点からのレーザ光は、ファイバの長さLに比例して伝搬時間差Δtが大きく拡大されるため、像面における干渉の強度の変化は大きくなる。そのため、干渉の強度は時間的に大きく変化することになり、効率良くスペックルを除去することができる。
【0069】
多モード光ファイバ4は、長手方向に長尺で屈曲されているため、反射回数は十分で入射したレーザ光が複数のモードに展開されて多モード光ファイバ4を伝搬する。そのため、多モード光ファイバ4に入射する端面において、レーザ光の強度の空間分布はガウス分布であるのに対し、多モード光ファイバを出射する端面において、各モードの強度の空間分布が重ね合わされ、出射したレーザ光は空間的に平均化される。
【0070】
多モード光ファイバ4を出射したレーザ光は、空間光変調手段3を照明する。ここで、出射したレーザ光の均一な強度の空間分布により、空間光変調手段3の被照面にムラなくレーザ光を照射することができる。
【0071】
空間光変調手段3は、入力信号でデバイスの光学特性を変化させ、照明されたレーザ光の光束を局所的に変調し、画像を形成する。空間光変調手段3からの透過光あるいは反射光(図8では透過光)をスクリーンなどの補助面に投影すると、スペックルパターンは時間的に変化するため、スペックルの除去された画像を表示することができる。また、空間光変調手段3の被照面にムラなく照射しているため、均一な画像を表示することができる。
【0072】
このように構成すれば、レーザ光をスクリーンなどの補助面に投影しても、スペックルパターンが時間的に変化するため、効率良くスペックルを除去することができる光源が得られる。
【0073】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係るスペックル除去光源および照明装置は、光源、光周波数変調手段、コア横断面の外径形状が方形の多モード光ファイバ、および空間光変調手段を備えるものである。
【0074】
図8のスペックル除去光源および照明装置と同様の構成を示しており、特に明記しない限り、図8のスペックル除去光源および照明装置と同様の機能を有する。
【0075】
図10は、多モード光ファイバ4の横断面構造を図示している。多モード光ファイバ4の横断面の中心には、光を伝搬させるコア4aがあり、外径形状は方形である。コア方形の一辺長は、数十〜数百μm程度を有する。コア4aの外周には、光を全反射させるためのクラッド4bがあり、コア4aよりも屈折率が低くなっている。
【0076】
この多モード光ファイバ4の製造方法について説明する。まず、MCVD法、OVD法、VAD法等の公知の光ファイバ用プリフォームの製造方法と同様にして、石英製の円柱ロッド材を形成する。
【0077】
次いで、図11に示すように、円柱ロッド材4cの側面を研磨することにより、その横断面を円形からその円周に沿って弓形を除去した略方形に形成し、コア形成部のプリフォーム4dを作製する。
【0078】
作製したプリフォーム4dを線引き機にセットし、そのプリフォーム4dを加熱延伸して細径化する線引き加工を施す。ここで、線引き加工の加熱温度を、横断面における外径形状が実質的に維持されたままコア形成部が線引き加工で光ファイバのコアになるように設定する。
【0079】
次いで、線引きされたものの表面にラジカル発生剤を添加したアクリル樹脂液を付着させ、それに紫外線を照射することにより硬化させ、コア表面を被覆保護するクラッドを形成する。
【0080】
以上のように、光ファイバの中心にあるコア4aと、コア4aを被覆するように設けられたクラッド4bとからなる多モード光ファイバ4が製造される。
【0081】
次に、動作について説明する。
実施の形態2と同様に、光源1から出力されたレーザ光は、光周波数変調手段2により周波数が時間的に連続して変化している。そのレーザ光は、レンズ5により集光し、多モード光ファイバ4に入射される。多モード光ファイバ4に入射したレーザ光は、多モード光ファイバ4のコア4a内を伝搬して出射される。
【0082】
多モード光ファイバ4の横断面のコア外径形状は方形である。そのため、光ファイバの円周方向を周回するスキュー成分が低減し、スペックルパターンは空間的に均一化することにより、より効果的にスペックルを除去することができる。また、多モード光ファイバ4に入射する端面において、レーザ光のビーム形状は略円形であるのに対し、多モード光ファイバ4を出射する端面において、レーザ光のビーム形状は略方形が得られる。
【0083】
多モード光ファイバ4を出射したレーザ光は、空間光変調手段3を照明する。ここで、出射したレーザ光の均一な強度の空間分布により、空間光変調手段3の被照面にムラなくレーザ光を照射することができる。また、空間光変調手段3の被照面は方形である。出射したレーザ光の略方形のビーム形状により、高い光利用効率でレーザ光を空間光変調手段3に照射することができる。
【0084】
空間光変調手段3は、入力信号でデバイスの光学特性を変化させ、照明されたレーザ光の光束を局所的に変調し、画像を形成する。空間光変調手段3からの透過光あるいは反射光(図8では透過光)をスクリーンなどの補助面に投影すると、スペックルパターンは時間的に変化するため、スペックルの除去された画像を表示することができる。空間光変調手段3の被照面にムラなく照射している、および高い光利用効率でレーザ光を空間光変調手段3に照射しているため、明るく均一な画像を表示することができる。
【0085】
このように構成すれば、レーザ光をスクリーンなどの補助面に投影しても、スペックルパターンが時間的に変化するため、効率良くスペックルを除去することができる光源が得られる。
【符号の説明】
【0086】
1 光源、1a レーザ媒質、1b 反射鏡、2 光周波数変調手段、2a 変調媒体、2b 電圧源、2c 変調媒体、2d 圧電素子、3 空間光変調手段、4 多モード光ファイバ、4a コア、4b クラッド、4c 円柱ロッド材、4d プリフォーム、5 レンズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦モードがシングルモードであるレーザ光を出力する光源と、
前記レーザ光の波長を変化させる光周波数変調手段と、
長手方向に長尺で屈曲されている多モード光ファイバと、
前記光源から出力される前記レーザ光を前記多モード光ファイバへ導く少なくとも1つ以上の集光レンズと
を備え、
前記集光レンズは、前記レーザ光の集光サイズを前記多モード光ファイバのコア径とほぼ同等に変換し、かつ前記レーザ光の開口数を前記多モード光ファイバを伝送可能な開口数とほぼ同等に変換し、
前記多モード光ファイバは、光のモードが少なくとも2つ以上であり、前記多モード光ファイバ内での反射回数で増幅された伝搬時間の異なる基本モードの光から最高次モードまでの光が、出射端面において空間分布で重ね合わせられ、かつ前記多モード光ファイバの少なくとも光を出力する端面を含む一部、横断面のコア外径形状が略多角形である
ことを特徴とするスペックル除去光源。
【請求項2】
請求項1に記載のスペックル除去光源において、
前記光源から出力されたレーザ光は、前記光周波数変調手段により波長が所定の周期にて時間的に変化し、
前記所定の周期は、前記光源から出力された前記レーザ光に空間光変調を施すことで得られる画像を作る周期に比べて短く、かつ20msecより短く設定する
ことを特徴とするスペックル除去光源。
【請求項3】
請求項2に記載のスペックル除去光源から出力されたレーザ光の光束を局所的に変調して画像を生成する空間光変調手段を備え、
前記空間光変調手段は、画像を生成する周期が前記光周波数変調手段によりレーザ光の波長を変化する周期に比べて長く設定されている
ことを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−128639(P2011−128639A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13645(P2011−13645)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【分割の表示】特願2007−524484(P2007−524484)の分割
【原出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】