スペーサ、コイル、コイル部品及びスイッチング電源装置
【課題】部品を増やすことなくコイル巻線の絶縁性を向上する。
【解決手段】スペーサ3は、2つの側壁部31,32と2つの連結部33,34とにより構成される矩形状の領域の内部にコイル巻線を挿入した場合に、2つの側壁部31,32の軸線側の面から内側に向かってそれぞれ突出する絶縁性の突起部37A,37B,37C及び38A,38B,38Cが、軸線A方向に沿って隣接する巻線部材の間に挟まれる構成となるため、振動等が発生した場合であってもコイル巻線(巻線部材)の絶縁性が保たれる。また、軸線Aを挟んで対向配置された2つの側壁部31,32のそれぞれに突起部37A,37B,37C及び38A,38B,38Cが設けられるため、突起部が1つのみである(1箇所のみに設けられている)場合と比較して安定してコイル巻線の絶縁を維持することができる。
【解決手段】スペーサ3は、2つの側壁部31,32と2つの連結部33,34とにより構成される矩形状の領域の内部にコイル巻線を挿入した場合に、2つの側壁部31,32の軸線側の面から内側に向かってそれぞれ突出する絶縁性の突起部37A,37B,37C及び38A,38B,38Cが、軸線A方向に沿って隣接する巻線部材の間に挟まれる構成となるため、振動等が発生した場合であってもコイル巻線(巻線部材)の絶縁性が保たれる。また、軸線Aを挟んで対向配置された2つの側壁部31,32のそれぞれに突起部37A,37B,37C及び38A,38B,38Cが設けられるため、突起部が1つのみである(1箇所のみに設けられている)場合と比較して安定してコイル巻線の絶縁を維持することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペーサ、コイル、コイル部品及びスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用バッテリの充電器等に組み込まれるスイッチング電源装置では、出力電流の向上等を目的として、巻数の多いコイルを用いることが増えている。これに対して、例えば、特許文献1では、第一の板状導電部材により構成される第一巻線部と第二巻線部との間に、第三の巻線部となる第二の板状導電部材を挿入することで、合計3ターン分の巻線が形成されたコイルが記載されている。
【0003】
また、上記のように2ターン以上のコイル巻線を形成するコイルを用いる場合には、複数の巻線のうち隣接する巻線同士が接触して短絡することがないように、隣接する巻線の間にコイル用ボビンが設けられることがある。このようなコイル用ボビンとして、例えば、特許文献2には、本体部がコイル巻線の内側に挿入されると共に本体部の外周面から外方に突出する突起部を有するコイル用ボビンが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−228813号公報
【特許文献2】特開2005−217311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1では隣接する巻線同士の接触を防止する部材が設けられていないため、振動や衝撃によってコイル巻線が変形した場合には、隣接する巻線同士が接触して短絡するおそれがある。
【0006】
一方、特許文献2記載のコイル用ボビンを特許文献1記載のコイルに適用した場合であっても、コイル巻線同士の接触を回避するための突起部が本体部の外周面に1ヶ所のみ設けられている。したがって、振動や衝撃の強度や方向によっては、コイル巻線同士の接触をコイル用ボビンの突起部によって回避することが困難な場合が考えられる。また、コイル巻線同士の接触を回避する目的から、隣接するコイル巻線の間に絶縁部材等を挟みこむことも可能であるが、その場合には部品点数が増大するため、組立時の工程数が増大してしまう。
【0007】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、部品を増やすことなくコイル巻線の絶縁性を向上することができるスペーサ、このスペーサに対してコイル巻線が取り付けられたコイル、このコイルに対してコア部材が取り付けられたコイル部品及びスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るスペーサは、軸線を挟んで対向配置され、軸線の周りに1ターン以上巻回されたコイル巻線の外周面に沿って軸線方向に延びる絶縁性の2つの側壁部と、2つの側壁部の端部のうち、軸線の延びる方向に沿ってコイル巻線に対して同一の方向にある端部同士をそれぞれ連結すると共に、コイル巻線の一部を軸線方向から挟む絶縁性の2つの連結部と、2つの側壁部の軸線側の面からそれぞれ互いに突出し、軸線方向に沿って隣接するコイル巻線の間を絶縁するための絶縁性の2つの突起部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記のスペーサによれば、2つの側壁部と2つの連結部とにより構成される領域の内部にコイル巻線を挿入した場合に、2つの側壁部の軸線側の面から内側に向かってそれぞれ突出する絶縁性の2つの突起部が、軸線方向に沿って隣接するコイル巻線の間に挟まれる構成となるため、振動等が発生した場合であってもコイル巻線の絶縁性が保たれる。また、軸線を挟んで対向配置された2つの側壁部のそれぞれに突起部が設けられるため、突起部が1つのみである場合と比較して安定してコイル巻線の絶縁を維持することができる。このように、上記のスペーサによれば、部品数を増やすことなく、スペーサの2つの突起部がコイル巻線の絶縁性を向上させることができる。
【0010】
ここで、上記作用を効果的に奏する構成として、具体的には、2つの突起部は、軸線方向の位置が互いに等しい態様が挙げられる。
【0011】
また、2つの側壁部、2つの連結部、及び2つの突起部は、その形状及び配置が軸線に対し2回対称であり、軸線に垂直に交わる線に対して2回対称である態様とすることができる。
【0012】
上記のように、スペーサを構成する各部の形状及び配置が軸線に対して2回対称であると共に軸線に垂直に交わる線に対して2回対称であることにより、スペーサの上下方向及び左右方向が入れ替わった場合であってもコイル巻線を適切に取り付けることができるため、コイル巻線に対してスペーサを取り付ける際の作業性が向上される。
【0013】
また、2つの側壁部又は2つの連結部の少なくとも1つから外方へ突出し、コイル巻線を軸線方向から挟み込む一対の磁性体コア部材に対する位置決め用のガイド部をさらに備えることを特徴とする態様としてもよい。
【0014】
このように、一対の磁性体コア部材に対する位置決め用のガイド部を有することにより、磁性体コア部材の位置決めが容易になると共に、振動等によって磁性体コア部材が移動することを防止することができる。
【0015】
また、本発明に係るコイルは、軸線の周りに1ターン以上巻回されたコイル巻線と、上記のスペーサとを備えることを特徴とする。この場合部品を増やすことなくコイル巻線の絶縁性が向上されたスペーサを含んで構成されるコイルを得ることができる。
【0016】
ここで、上記のコイルにおいて、コイル巻線は、板状の巻線が軸線方向に沿って複数連結されたものであって、軸線方向から見たときに、略円環状をなすと共に、外周の一部を直線状に切り欠いた切り欠き部が、軸線を挟んで2箇所設けられ、2つの側壁部の軸線側の面の距離は、2箇所の切り欠き部間の距離よりも大きく、対向する2箇所の切り欠き部の端部同士を結ぶ直線のうち最も長い直線の長さよりも小さい態様とすることができる。
【0017】
このように、コイル巻線が2箇所の切り欠き部を備えると共に、スペーサの2つの側壁部の軸線側の面の距離が、2箇所の切り欠き部間の距離よりも大きく、対向する2箇所の切り欠き部の端部同士を結ぶ直線のうち最も長い直線の長さよりも小さいことで、コイル巻線をスペーサに取り付ける際には、コイル巻線を2箇所の切り欠き部がそれぞれ側壁部と対向する方向にして取り付けることができ、コイル巻線の取り付け時の作業性が向上する。また、2つの側壁部間の距離は、対向する2箇所の切り欠き部の端部同士を結ぶ直線のうち最も長い直線の長さよりも小さいため、いったんコイル巻線をスペーサに取り付けた後は、振動等によってコイル巻線が軸線に沿って回転したりすることを防止することができる。
【0018】
また、スペーサにおいて、側壁部の軸線側の面の突起部とは異なる位置であって、軸線に垂直な方向からコイル巻線を挿入したときにコイル巻線に当接する位置に、ストッパー部が形成されている態様とすることができる。
【0019】
そして、上記のスペーサと軸線の周りに1ターン以上巻回されたコイル巻線からなるコイルに関して、コイル巻線は、軸線が一致するように軸線に垂直な方向からスペーサに対してコイル巻線を挿入した際に、ストッパー部に当接する当接部を備える態様とすることができる。
【0020】
このように、スペーサの側壁部の軸線側の面においてストッパー部が設けられ、コイル巻線においてこのストッパー部と当接する当接部が設けられることで、コイル巻線を軸線方向に垂直な方向からスペーサに対して挿入した際に、ストッパー部と当接部とが当接することで、振動等によってコイル巻線が軸線に沿って回転することやストッパー部とコイル巻線との軸ずれをより効果的に防止することができる。また、コイルを製造する過程において、コイル巻線をスペーサに対して挿入した際に、ストッパー部と当接部とが当接することにより位置決めが容易になり、製造上の作業性が向上する。
【0021】
また、本発明に係るコイル部品は、上記の記載のコイルと、コイル巻線を軸線方向から挟み込む一対の磁性体コア部材と、を備えることを特徴とする。この場合部品を増やすことなくコイル巻線の絶縁性が向上されたスペーサを含んで構成されるコイル部品を得ることができる。
【0022】
また、本発明に係るスイッチング電源装置は、上記のコイル部品を備えることを特徴とする。この場合、部品を増やすことなくコイル巻線の絶縁性が向上されたスペーサを含んで構成されるコイル部品を用いたスイッチング電源装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、部品を増やすことなくコイル巻線の絶縁性を向上することができるスペーサ、このスペーサに対してコイル巻線が取り付けられたコイル、このコイルに対してコア部材が取り付けられたコイル部品、トランス及びスイッチング電源装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態に係るコイル部品を示す分解斜視図である。
【図2】図1のコイル部品を構成するスペーサ及び第1コイル巻線の構成と、第1コイル巻線の取り付け方法と、を説明する斜視図である。
【図3】図2のスペーサの構成を説明する図であり、図3(a)は、スペーサの平面図であり、図3(b)は、図2のIIIB−IIIB矢視図である。
【図4】第1コイル巻線の構成を説明する図であり、図4(a)は、第1コイル巻線の平面図であり、図4(b)は、第1コイル巻線の底面図である。
【図5】スペーサと第1コイル巻線とからなる部品の構成と、このスペーサに対する第2コイル巻線の取り付け方法と、を説明する斜視図である。
【図6】図5のVI−VI矢視図である。
【図7】第2コイル巻線の構成を説明する図であり、図7(a)は、第2コイル巻線の平面図であり、図7(b)は、第2コイル巻線の底面図である。
【図8】スペーサと第1コイル巻線とからなる部品に第2コイル巻線を取り付けたコイルの斜視図である。
【図9】図5のVI−VI矢視図である。
【図10】スイッチング電源装置の回路図である。
【図11】スイッチング電源装置の斜視図である。
【図12】スペーサの変形例を説明する斜視図である。
【図13】スペーサの他の変形例を説明する図であり、図2のIIIB−IIIB矢視図に対応する図である。
【図14】変形例に係るコイル部品を構成するスペーサ及び第1コイル巻線の構成と、第1コイル巻線の取り付け方法と、を説明する斜視図である。
【図15】図14のスペーサの構成を説明する図であり、図15(a)は、スペーサの平面図であり、図15(b)は、図14のXVB−XVB矢視図である。
【図16】変形例に係る第1コイル巻線の構成を説明する図であり、図16(a)は、第1コイル巻線の平面図であり、図16(b)は、第1コイル巻線の底面図である。
【図17】スペーサと第1コイル巻線とからなる部品の構成と、このスペーサに対する第2コイル巻線の取り付け方法と、を説明する斜視図である。
【図18】図17のXVIII−XVIII矢視図である。
【図19】第2コイル巻線の構成を説明する図であり、図19(a)は、第2コイル巻線の平面図であり、図19(b)は、第2コイル巻線の底面図である。
【図20】スペーサと第1コイル巻線とからなる部品に第2コイル巻線を取り付けたコイルの斜視図である。
【図21】図20のXXI−XXI矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0026】
(コイル部品の概要)
まず、図1〜3を参照して、本実施形態に係るコイル部品に含まれるスペーサの構成を説明する。図1は、本実施形態に係るコイル部品を示す分解斜視図である。また、図2は、図1のコイル部品を構成するスペーサ及び第1コイル巻線の構成と、第1コイル巻線の取り付け方法と、を説明する斜視図である。図3は、図2のスペーサの構成を説明する図であり、図3(a)は、スペーサの平面図であり、図3(b)は、図2のIIIB−IIIB矢視図である。なお、第1コイル巻線の詳細な構成については後述する。
【0027】
図1に示すコイル部品1は、インダクタンス素子、スイッチング電源装置、ノイズフィルタ、インバータ等に用いられるものである。このコイル部品1は、コイル2と、一対の磁性体コア部材6A,6Bと、を含んで構成される。また、コイル2は、スペーサ3と、第1コイル巻線4と、第2コイル巻線5と、を含んで構成される。第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5は、それぞれ有端リング状の板状の巻線部材が間隔を空けて並設され、これらが軸線Aに沿った所定の巻き方向となるように連結されたものであり、これらの端部同士がさらに連結されることで、1つのコイル巻線が形成されている。このような第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5は、スペーサ3の内側に挿入されている。なお本実施形態のコイル部品1では、第1コイル巻線4と第2コイル巻線5は同じ厚さの巻線部材からなる場合について説明する。
【0028】
以下、上記のコイル部品1を構成する各部品について説明すると共に、上記のコイル部品1の組立方法を説明する。
【0029】
(スペーサ)
まず、スペーサ3の構成について説明する。スペーサ3は、図2及び図3に示すように、第1コイル巻線4の軸線A方向(図2の上下方向)に沿って延びる2つの側壁部31,32と、側壁部31,32の図示上方側の端部同士をそれぞれ連結する連結部33と、側壁部31,32の図示下方側の端部同士を連結する連結部34と、を含んで構成される。側壁部31,32と連結部33,34とは絶縁性の材料により構成される。なお、図2では、スペーサ3と第1コイル巻線4の双方について軸線Aを記載しているが、これは、図2ではスペーサ3と第1コイル巻線4とを分割して記載しているためであり、一体化した際に同軸となるものである。
【0030】
スペーサ3の側壁部31,32は略平板状且つ同一形状の部材からなり、長手方向が第1コイル巻線4の軸線A方向となるように設けられる。より具体的には、側壁部31,32のうち、軸線A側の面は平らであるが、軸線A側の面とは逆側の面は、軸線A方向から見たときに円弧を形成するように緩やかに曲がっている。また、連結部33,34は、平板状且つ同一形状の部材からなり中心に開口35,36をそれぞれ有するリング状の形状をなしている。この開口35,36は、図1及び図2に示すように、第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5をスペーサ3に対して取り付けたときに、第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5の開口と連通し、さらに磁性体コア部材6Aの脚部をこの開口に挿入可能とするために設けられている。なお、スペーサ3の開口35,36の内径は、後述の第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5に設けられる開口の内径よりも小さくされている。
【0031】
また、スペーサ3の連結部33,34には、軸線Aに対して外方へ突出するガイド部33A,34Aが一体的に設けられる。このガイド部33A,34Aは、磁性体コア部材6Aをコイル2に対して取り付ける際に、磁性体コア6Aが振動等により動くことを防止する。その詳細は後述する。
【0032】
また、図3(b)に示すように、側壁部31,32及び連結部33,34により囲まれた領域は、略矩形状の開口39を形成する。このとき、側壁部31と側壁部32との距離は、後述の第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5の最小径と略同一であることが好ましい。
【0033】
また、スペーサ3の側壁部31のうち軸線A側(すなわち開口39側)の面31Aには、軸線Aの延びる方向へ突出する突起部37A,37B,37Cが設けられる。また、側壁部32のうち軸線A側の面32Aには、軸線Aの延びる方向へ突出する突起部38A,38B,38Cが設けられる。突起部37A,37B,37Cと突起部38A,38B,38Cとは、それぞれ互いに突出している。また、突起部37Aと突起部38Aとは、軸線A方向における位置が同じであり、図3(b)に示すように、突起部37Aと突起部38Aとがそれぞれ対向して配置されている。同様に、突起部37Bと突起部38Bとは、軸線A方向における位置が同じであり、突起部37Bと突起部38Bとがそれぞれ対向して配置されている。また、突起部37Cと突起部38Cとは、軸線A方向における位置が同じであり、突起部37Cと突起部38Cとがそれぞれ対向して配置されている。突起部37Aの先端と突起部38Aの先端とを結ぶ距離、突起部37Bの先端と突起部38Bの先端とを結ぶ距離、及び、突起部37Cの先端と突起部38Cの先端とを結ぶ距離は、それぞれ第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5の外径よりも小さくされている。これにより、突起部37A,37B,37C,38A,38B,38Cは、スペーサ3の内側に第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5を取り付ける際に、コイル巻線をスペーサ3の内側の所定の位置に適切に載置するための巻線ガイドとして機能すると共に、載置後のコイル巻線同士の接触及び短絡を防止する機能を有する。なお、本実施形態のスペーサ3では、上記のように6つの突起部37A,37B,37C,38A,38B,38Cが設けられている。これは、より具体的には、2つの突起部の組(37Aと38A、37Bと38B、及び、37Cと38C)が3セット設けられている構成である。
【0034】
突起部が設けられる位置は、コイル巻線の形状等に基づいて適宜変更することができるが、本実施形態のスペーサ3では、連結部33と突起部37A,38Aとの間の距離が第2コイル巻線5の厚さとなるような位置に、軸線A方向の位置が等しくなるように突起部37A,38Aが設けられている。また、連結部34と突起部37C,38Cとの間の距離が第1コイル巻線4の厚さとなるような位置に、軸線A方向の位置が等しくなるように突起部37C,38Cが設けられている。そして、突起部37A,38Aと突起部37B,38Bとの間の距離が第1コイル巻線4を構成する板状の巻線部材の厚さとなり、且つ、突起部37C,38Cと突起部37B,38Bとの間の距離が第2コイル巻線5を構成する板状の巻線部材の厚さとなるような位置に、軸線A方向の位置が等しくなるように突起部37B,38Bが設けられている。ここで、第1コイル巻線4と第2コイル巻線5は同じ厚さの巻線部材が用いられていることから、連結部33と突起部37A,38Aとの間の距離、突起部37A,38Aと突起部37B,38Bとの間の距離、突起部37B,38Bと突起部37C,3CCとの間の距離、及び、突起部37C,38Cと連結部34との間の距離が等しくされている。
【0035】
このように、スペーサ3は、その形状が軸線Aに対し2回対称であり、軸線Aに垂直に交わる線(図3(B)の直線L1)に対して2回対称となっている。したがって、このスペーサ3を上下左右方向の向きを逆にして用いた場合でも、逆にせずに用いた場合と同様の機能を有する。
【0036】
なお、突起部37A,37B,37C,38A,38B,38Cについても絶縁性の材料から構成される。この突起部37A,37B,37C,38A,38B,38Cを含むスペーサ3を構成する絶縁性の材料としては、例えばPBT(Poly Butylene Terephthalate)樹脂やPPS(Poly Phenylene Sulfide)樹脂等が、耐熱性、耐薬品性、難燃性、寸法安定性等の特性に優れていることから好適に用いられる。
【0037】
(第1コイル巻線)
次に、第1コイル巻線4について図2,4を参照しながら説明する。図4は、第1コイル巻線の構成を説明する図であり、図4(a)は、第1コイル巻線の平面図であり、図4(b)は、第1コイル巻線の底面図である。
【0038】
図2,4に示すように、第1コイル巻線4は、略円環状であって、間を隔てて並設された有端リング状の2つの巻線部材41,42を、所定の巻き方向に連なるように連結させたものである。「略円環状」とは、コイル巻線のうち巻線を形成する領域(すなわち端子部や接続部等を除いた領域)の外周が、軸線Aの方向から見たときに概ね円形状となっているか、又は概ね楕円形状となっていることをいう。この有端リング状の巻線部材41,42はいわゆるC字状を呈していて、中央に円形状の開口401,402を有している。巻線部材41と巻線部材42とは、この開口401,402が連通するように重なっている。また、巻線部材41は8分の5ターンの巻線であり、一端と他端との間は、内周から外周まで延びる空隙403となっている。また、巻線部材42は、8分の7ターンの巻線であり、一端と他端との間は、内周から外周まで延びるスリット404となっている。
【0039】
さらに、巻線部材41の一端部には、開口401の軸線Aから外方へ突出する第1の端子部43が一体的に設けられている。そして、巻線部材41の他端部はU字状の接続部44を介して巻線部材42の一端部に連結されている。巻線部材42の他端部には、開口402の軸線Aから外方へ突出する第2の端子部45が一体的に設けられている。上記の構成を有する第1コイル巻線4では、第1の端子部43が第1コイル巻線4の始端、第2の端子部45が第1コイル巻線4の終端になっている。そして、第1の端子部43に電力を入力した場合、電力は、巻線部材41、接続部44、巻線部材42の順で流れ、第2の端子部45から出力される。
【0040】
なお、第1の端子部43及び第2の端子部45は、巻線部材41,43とは軸線A方向の位置が異なるように段差状に折り曲げられている。
【0041】
ここで、第1コイル巻線4の巻線部材41の外周には、外周の一部を直線状に切り欠いた切り欠き部46Bが設けられる。同様に、巻線部材42の外周にも外周の一部を直線状に切り欠いた切り欠き部47A,47Bが設けられる。図4に示すように、巻線部材41に設けられる切り欠き部46Bと、巻線部材42に設けられる切り欠き部47Bとは、平面視に重なる位置とされている。なお、巻線部材41において切り欠き部47Aに対応する位置には、巻線部材41がないため、切り欠き部47Aに対応する切り欠き部は巻線部材41には設けられていない。また、切り欠き部47Aと47B(46B)とは、軸線Aを挟んで対向する位置に、端面が平行となるように設けられている。そして、この第1コイル巻線4では、この切り欠き部46B,47A,47Bが設けられていることにより、切り欠き部47Aと47B(46B)との間の距離が巻線部材42の最小径となっている。すなわち、この切り欠き部47Aと47B(46B)との間の距離が第1コイル巻線4の最小径となる。
【0042】
以上の構成を有する第1コイル巻線4は、電気伝導性が高い一枚の基板を打ち抜き加工することで形成可能である。より具体的には、銅板、アルミニウム板等の基板から、第1の端子部43と、第1の端子部43に連続する巻線部材41,42と、巻線部材42に連続する第2の端子部45と、巻線部材41,42を連結するI字状の接続部44と、を打ち抜き加工により得る。そして、接続部44をU字状に屈曲させることによって巻線部材41と42とを所定の間隙をもって重ね合わせる。これにより、導体板からなる第1コイル巻線4が完成する。なお、第1のコイル巻線4はこのような折り曲げコイルに限られず、例えば、コイル部材と連結部とをねじ留めしたものであってもよいし、溶接したものであってもよい。また、リベットで固定してもよい。
【0043】
(スペーサへの第1コイル巻線の取り付け)
次に、スペーサ3への第1コイル巻線4の取り付けについて、図2,5,6を参照しながら説明する。図5は、スペーサと第1コイル巻線とからなる部品の構成と、このスペーサに対する第2コイル巻線の取り付け方法と、を説明する斜視図である。図6は、図5のVI−VI矢視図である。
【0044】
スペーサ3へ第1コイル巻線4を取り付ける際には、図2に示すように、スペーサ3において、側壁部31,32及び連結部33,34により囲まれた開口(図3(b)における開口39)に対して、図示手前側から第1コイル巻線4を挿入する。このとき、第1コイル巻線4を、スペーサ3の開口35,36が連通する方向と第1コイル巻線4の軸線とが一致し、且つ、側壁部31,32の内面が延在する方向に沿って第1コイル巻線4の切り欠き部46B,47A,47Bが配置されるような向きとする。そして、側壁部31,32の内面(図3(b)の面31A,32A)と切り欠き部46B,47A,47Bとが対向する位置まで第1コイル巻線4を開口39から挿入する。ここで、第1コイル巻線4を挿入する際の向きを変更し、例えば、側壁部31,32の内面(図3(b)の面31A,32A)と切り欠き部46B,47A,47Bとが交わるような向きにして第1コイル巻線4を挿入しようとしても、第1コイル巻線4の径と比較して側壁部31,32間の距離が小さいため、第1コイル巻線4の挿入ができない。
【0045】
このとき、第1コイル巻線4の第1の端子部43及び第2の端子部45が折り曲げられていて、軸線A方向の位置が巻線部材41,42とは異なる位置にあるため、この第1の端子部43及び第2の端子部45が軸線Aに対して垂直な面方向の移動を抑制する。
【0046】
また、スペーサ3へ第1コイル巻線4を取り付ける際には、第1コイル巻線4の巻線部材41がスペーサ3の突起部37A,38Aと突起部37B,38Bとの間に嵌まると共に、第1コイル巻線4の巻線部材42がスペーサ3の突起部37C,38Cと連結部34との間に嵌まるように、第1コイル巻線4を挿入する。これにより、第1コイル巻線4は、スペーサ3内で上下方向への移動が抑制される。
【0047】
以上により、スペーサと第1コイル巻線とからなる部品7が形成される。
【0048】
(第2コイル巻線)
次に、第2コイル巻線5について図5,7を参照しながら説明する。図7は、第2コイル巻線の構成を説明する図であり、図7(a)は、第2コイル巻線の平面図であり、図7(b)は、第2コイル巻線の底面図である。
【0049】
図5,7に示すように、第2コイル巻線5は、略円環状であって、間を隔てて並設された有端リング状の2つの巻線部材51,52を、所定の巻き方向に連なるように連結させたものである。この有端リング状の巻線部材51,52はいわゆるC字状を呈していて、中央に円形状の開口501,502を有している。巻線部材51と巻線部材52とは、この開口501,502が連通するように重なっている。また、巻線部材及び巻線部材52は、それぞれ1ターンの巻線であり、一端と他端との間は、それぞれ内周から外周まで延びるスリット503,504となっている。
【0050】
さらに、巻線部材51の一端部には、開口501の軸線Aから外方へ突出する第1の端子部53が一体的に設けられている。そして、巻線部材51の他端部はU字状の接続部54を介して巻線部材52の一端部に連結されている。巻線部材52の他端部には、開口502の軸線Aから外方へ突出する第2の端子部55が一体的に設けられている。
【0051】
なお、第1の端子部53及び第2の端子部55は、巻線部材51,53とは同一の面に設けられる。すなわち、第1コイル巻線4のように端子部近傍が折り曲げられている構成ではない。
【0052】
上記の構成を有する第2コイル巻線5では、第1の端子部53が第2コイル巻線5の始端、第2の端子部55が第2コイル巻線5の終端になっている。そして、第1の端子部53に電力を入力した場合、電力は、巻線部材51、接続部54、巻線部材52の順で流れ、第2の端子部55から出力される。
【0053】
ここで、第2コイル巻線5の巻線部材51の外周には、外周の一部を直線状に切り欠いた切り欠き部56A,56Bが設けられる。同様に、巻線部材52の外周にも外周の一部を直線状に切り欠いた切り欠き部57A,57Bが設けられる。図7に示すように、巻線部材51に設けられる切り欠き部56Aと、巻線部材52に設けられる切り欠き部57Aとは、平面視に重なる位置とされている。同様に、巻線部材51に設けられる切り欠き部56Bと、巻線部材52に設けられる切り欠き部57Bとは、平面視に重なる位置とされている。また、切り欠き部56A及び56Bと、57A及び57Bとは、それぞれ軸線Aを挟んで対向する位置に、それぞれの端面が平行となるように設けられている。そして、この第2コイル巻線5では、この切り欠き部56A,56B,57A,57Bが設けられていることにより、切り欠き部56Aと56Bとの間の距離(57Aと57Bとの間の距離)が巻線部材51(52)の最小径となっている。すなわち、この切り欠き部56Aと56Bとの間の距離(57Aと57Bとの間の距離)が第2コイル巻線5の最小径となる。
【0054】
以上の構成を有する第2コイル巻線5は、電気伝導性が高い一枚の基板を打ち抜き加工することで形成可能である。より具体的には、銅板、アルミニウム板等の基板から、第1の端子部53と、第1の端子部53に連続する巻線部材51,52と、巻線部材52に連続する第2の端子部55と、巻線部材51,52を連結するI字状の接続部54と、を打ち抜き加工により得る。そして、接続部54をU字状に屈曲させることによって巻線部材51と52とを所定の間隙をもって重ね合わせる。これにより、導体板からなる第2コイル巻線5が完成する。なお、第2のコイル巻線5はこのような折り曲げコイルに限られず、例えば、コイル部材と連結部とをねじ留めしたものであってもよいし、溶接したものであってもよい。また、リベットで固定してもよい。
【0055】
(スペーサへの第2コイル巻線の取り付け)
次に、スペーサ3と第1コイル巻線4とからなる部品7への第2コイル巻線5の取り付けについて、図5,8,9を参照しながら説明する。図8は、スペーサと第1コイル巻線とからなる部品に第2コイル巻線を取り付けたコイルの斜視図である。図9は、図5のVI−VI矢視図である。
【0056】
部品7へ第2コイル巻線5を取り付ける際には、図5に示すように、スペーサ3において、側壁部31,32及び連結部33,34により囲まれた開口(図3(b)における開口39)の図示奥側から第2コイル巻線5を挿入する。すなわち、第2コイル巻線5は、第1コイル巻線4とは逆側から開口に対して挿入する。このとき、第2コイル巻線5を、スペーサ3の開口35,36が連通する方向と第2コイル巻線5の軸線とが一致し、且つ、側壁部31,32の内面が延在する方向に沿って第2コイル巻線5の切り欠き部56A,56B,57A,57Bが配置されるような向きとする。そして、側壁部31,32の内面(図3(b)の面31A,32A)と切り欠き部56A,56B,57A,57Bとが対向する位置まで第2コイル巻線5を開口39から挿入する。ここで、第2コイル巻線5を挿入する際の向きを変更し、例えば、側壁部31,32の内面(図3(b)の面31A,32A)と切り欠き部56A,56B,57A,57Bとが交わるような向きにして第2コイル巻線5を挿入しようとしても、第2コイル巻線5の径と比較して側壁部31,32間の距離が小さいため、第2コイル巻線5の挿入ができない。
【0057】
また、部品7へ第2コイル巻線5を取り付ける際には、図9に示すように、第2コイル巻線5の巻線部材51がスペーサ3の突起部37A,38Aと連結部33との間に嵌まると共に、第2コイル巻線5の巻線部材52がスペーサ3の突起部37B,38Bと突起部37C,38Cとの間に嵌まるように、第2コイル巻線5を挿入する。これにより、第2コイル巻線5は、スペーサ3内で上下方向への移動が抑制される。
【0058】
さらに、第1コイル巻線4の巻線部材41と第2コイル巻線5の巻線部材51との間には、スペーサ3の突起部37A,38Aが介在する。これにより、この突起部37A,38Aが、巻線部材41と巻線部材51とが接触することを防止する絶縁部材として機能する。同様に、第2コイル巻線5の巻線部材51と第1コイル巻線4の巻線部材42との間には、スペーサ3の突起部37B,38Bが介在する。これにより、この突起部37B,38Bが、巻線部材51と巻線部材42とが接触することを防止する絶縁部材として機能する。また、第1コイル巻線4の巻線部材42と第2コイル巻線5の巻線部材52との間には、スペーサ3の突起部37C,38Cが介在する。これにより、この突起部37C,38Cが、巻線部材42と巻線部材52とが接触することを防止する絶縁部材として機能する。
【0059】
そして、スペーサ3に第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5を挿入した後、図8に示すように、第1コイル巻線4の第1の端子部43と第2コイル巻線5の第2の端子部55とがネジ21により電気的に接続される。これにより、第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5は、合計3.5ターンのコイル巻線と機能する。具体的には、第1コイル巻線4の第2の端子部45から電力が入力された場合、電力は、巻線部材42、接続部44、巻線部材41を経て第1の端子部43に到達し、この第1の端子部43と電気的に接続する第2コイル巻線5の第2の端子部55から、巻線部材52、接続部54、巻線部材51を経て、第1の端子部53に到達し、この第1の端子部53から出力される。また、ネジ21によって第1コイル巻線4の第1の端子部43と第2コイル巻線5の第2の端子部55とが固定されることによって、開口(図3(b)の開口39)内での側壁部31,32の延在方向に沿った第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5の移動が抑制される。なお、第1コイル巻線4の第1の端子部43と第2コイル巻線5の第2の端子部55とは、ネジ留めではなく、溶接によって接続してもよい。また、リベットでこれらを固定してもよい。
【0060】
以上により、部品7、すなわちスペーサ3及び第1コイル巻線4と、第2コイル巻線5とからなるコイル2が形成される。
【0061】
(コイル部品)
次に、図1に戻って、コイル部品1について説明する。このコイル部品1は、上記のコイル2が更に一対の磁性体コア部材6A,6Bを備えるものである。コイル部品1は、例えば、後述するスイッチング電源装置のチョークコイルとして機能する。
【0062】
図1に示すように、磁性体コア部材6A,6Bは、コイル2を構成するスペーサ3、第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5の開口を貫く軸線Aに沿ってコイル2を挟むように配置される。
【0063】
磁性体コア部材6A,6Bは、フェライト粉末を圧粉成形して得られるいわゆるE型コアとI型コアである。より具体的には、磁性体コア部材6Aは、長手方向を有する平板状の基部60と、基部60の一方の主面の中心に突設された円柱状の主脚61と、主脚61を挟んで基部60の端部に設けられた2本の外脚62,63とからなっている。一方、磁性体コア部材6Bは、長手方向を有する平板状の基部65からなっている。
【0064】
磁性体コア部材6の主脚61はコイル2の開口、すなわち、図9に示すスペーサ3の連結部33の開口35、巻線部材51の開口501、巻線部材41の開口401、巻線部材52の開口502、巻線部材42の開口402、スペーサ3の連結部34の開口36を連通するように挿入される。このとき、図9に示すように、スペーサ3の連結部33の開口35及び連結部34の開口36の径は、巻線部材41,42,51,52の開口401,402,501,502の径よりも小さくされているため、連結部33の開口35及び連結部34の開口36が磁性体コア部材6Aの主脚61に当接する一方、巻線部材41,42,51,52の開口401,402,501,502は、磁性体コア部材6Aの主脚61と当接しない。このように、スペーサ3は、開口内において磁性体コア部材6Aと第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5とが接触することを防止するボビンとしての機能を有する。
【0065】
また、図1に戻り、磁性体コア部材6Aの外脚62,63は、第1コイル巻線4及びコイル巻線5の外周に沿って、磁性体コア部材6Aの外脚62,63と磁性体コア部材6Bの基部65とが当接するように配置される。このとき、スペーサ3の側壁部31,32が、第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5の外周面に沿って設けられているため、この側壁部31,32が磁性体コア部材6Aと第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5とが接触することを防止する絶縁部材としての機能を有する。
【0066】
また、スペーサ3の連結部33,34は、コイル2を一対の磁性体コア部材6A,6Bで挟み込んだときに、コイル巻線が磁性体コア部材6A,6Bと当接することを防止する絶縁部材としての機能を有する。
【0067】
さらに、スペーサ3の連結部33,34に、外方へ突出するガイド部33A,34Aがそれぞれ設けられ、このガイド部33A,34Aが外脚62,63を固定するため、磁性体コア部材6Aとコイル2との間の幅方向の位置ズレの発生が抑制される。なお、ガイド部33A,34Aの形状は、上記に限られず、磁性体コア部材の形状に応じて適宜変更することができる。また、スペーサ3の側壁部31,32にガイド部を設ける態様とすることもできる。
【0068】
(スイッチング電源装置)
次に、本実施形態に係るコイル部品1が好適に用いられるスイッチング電源装置について説明する。図10は、スイッチング電源装置100の回路図である。また、図11は、スイッチング電源装置100の斜視図である。本実施形態に係るスイッチング電源装置100は、DC−DCコンバータとして機能するものであり、例えば100Vから500V程度の電圧を蓄電する高圧バッテリ等から供給される高圧の直流入力電圧Vinを低圧の直流出力電圧Voutに変換し、12〜16V程度の電圧を蓄電する低圧バッテリ等へ供給する。
【0069】
このスイッチング電源装置100は、図11に示すように、ベースプレート101を有し、このベースプレート上に、入力平滑コンデンサ(入力フィルタ)130と、スイッチング回路120と、メイントランス140と、整流回路150と、チョークコイル(コイル部品)170と、出力平滑コンデンサ162と、からなる平滑回路160と、が固定されている。
【0070】
このスイッチング電源装置100は、より具体的には、1次側高圧ライン121と1次側低圧ライン122との間に設けられたスイッチング回路120及び入力平滑コンデンサ130と、1次側及び2次側トランスコイル部141,142を有するメイントランス140と、2次側トランスコイル部142に接続された整流回路150と、整流回路150に接続された平滑回路160と、を備えている。
【0071】
スイッチング回路120は、スイッチング素子S1〜S4で構成されたフルブリッジ型の回路構成とされている。スイッチング回路120は、例えば駆動回路(不図示)から供給される駆動信号に応じて、入力端子T1,T2間に印加される直流入力電圧Vinを入力交流電圧に変換する。
【0072】
入力平滑コンデンサ130は、入力端子T1、T2から入力された直流入力電圧Vinを平滑化する。メイントランス140は、スイッチング回路120で生成された入力交流電圧を変圧し、出力交流電圧を出力する。1次側及び2次側トランスコイル部141,142の巻数比は、変圧比によって適宜設定されている。ここでは、1次側トランスコイル部141の巻数を、2次側トランスコイル部142の巻数よりも多くしている。2次側トランスコイル部142は、センタータップ型のものであり、接続部C及び出力ラインLOを介して出力端子T3に導かれている。
【0073】
整流回路150は、整流ダイオード151A,151Bからなる単相全波整流型のものである。各整流ダイオード151A,151Bのカソードは、2次側トランスコイル部142に接続されている一方、アノードは、接地ラインLGに接続され、出力端子T4に導かれている。これにより、整流回路150は、メイントランス140からの出力交流電圧の各半単波期間を、個別に整流して直流電圧を生成する。
【0074】
平滑回路160は、チョークコイル170と出力平滑コンデンサ162とを含んで構成されている。チョークコイル170は、出力ラインLOに挿入配置されている。出力平滑コンデンサ162は、出力ラインLOにおいてチョークコイル170と接地ラインLGとの間に接続されている。これにより、平滑回路160は、整流回路150で整流された直流電圧を平滑化して直流出力電圧Voutを生成し、この直流出力電圧Voutを出力端子T3,T4から低圧バッテリ等へ供給する。
【0075】
以上のように構成されたスイッチング電源装置100において、入力端子T1,T2から供給される直流入力電圧Vinがスイッチングされて入力交流電圧が生成され、メイントランス140の1次側トランスコイル部141へと供給される。そして、生成された入力交流電圧が変圧され、2次側トランスコイル部142から出力交流電圧として出力される。そして、この出力交流電圧が整流回路150によって整流されると共に平滑回路160によって平滑化され、出力端子T3,T4から直流出力電圧Voutとして出力されることとなる。
【0076】
以上のように、本実施形態に係るスペーサ3によれば、2つの側壁部31,32と2つの連結部33,34とにより構成される矩形状の領域の内部に第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5を挿入した場合に、2つの側壁部31,32の軸線側の面31A,32Aから内側に向かってそれぞれ突出する絶縁性の突起部37A,37B,37C及び38A,38B,38Cが、軸線A方向に沿って隣接する巻線部材の間(巻線部材41と巻線部材51との間、巻線部材51と巻線部材42との間、及び、巻線部材42と巻線部材52との間)に挟まれる構成となるため、振動等が発生した場合であってもコイル巻線(巻線部材)の絶縁性が保たれる。また、軸線Aを挟んで対向配置された2つの側壁部31,32のそれぞれに突起部37A,37B,37C及び38A,38B,38Cが設けられるため、突起部が1つのみである(一方の側壁部のみに設けられている)場合と比較して安定してコイル巻線の絶縁を維持することができる。このように、本実施形態のスペーサ3によれば、部品数を増やすことなく、スペーサ3の3つの突起部の組(37Aと38A、37Bと38B、及び、37Cと38C)がコイル巻線の絶縁性を向上させることができる。
【0077】
また、上記実施形態に係るスペーサ3は、側壁部31,32、連結部33,34及び突起部37A,37B,37C,38A,38B,38Cの形状及び配置が軸線Aに対して2回対称であると共に軸線Aに垂直に交わる線L1に対して2回対称である。したがって、スペーサ3の上下方向及び左右方向が入れ替わった場合であってもコイル巻線を適切に取り付けることができるため、コイル巻線に対してスペーサを取り付ける際の作業性が向上される。
【0078】
また、上記実施形態に係るスペーサ3は、一対の磁性体コア部材6A,6Bに対する位置決め用のガイド部33A,34Aを有することにより、磁性体コア部材6A,6Bの位置決めが容易になると共に、振動等によって磁性体コア部材6A,6Bが移動することを防止することができる。
【0079】
また、上記実施形態に係るコイル2は、第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5が軸線Aを挟んで平行に設けられた切り欠き部(46B,47A,47B,56A,56B,57A,57B)を備えると共に、スペーサ3の2つの側壁部31,32の軸線A側の面31A,32Aの距離は、2箇所の切り欠き部間の距離よりも大きく切り欠き部とは異なる位置での第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5の径よりも小さくされている。したがって、第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5をスペーサ3に取り付ける際には、第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5の2箇所の切り欠き部がそれぞれ側壁部31,32と対向する方向にして取り付けられる。そして、2つの側壁部31,32間の距離は、切り欠き部とは異なる位置における第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5の径よりも小さいため、いったん第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5をスペーサ3に取り付けた後は、振動等によって第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5が軸線Aに沿って回転したりすることを防止することができる。
【0080】
また、上記実施形態に係るコイル部品1は、上記のコイル2と、第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5を軸線A方向から挟み込む一対の磁性体コア部材6A,6Bと、を備える。これにより、部品を増やすことなくコイル巻線の絶縁性が向上されたスペーサ3を含んで構成されるコイル部品1を得ることができる。
【0081】
また、本発明に係るスイッチング電源装置100は、上記のコイル部品1を備えることにより、部品を増やすことなくコイル巻線の絶縁性が向上されたスペーサ3を含んで構成されるコイル部品1を用いたスイッチング電源装置100を得ることができる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。
【0083】
例えば、スペーサ3に設けられた突起部37A,37B,37C,38A,38B,38Cの位置は適宜変更することができる。また、突起部37A,37B,37C,38A,38B,38Cの数についても変更することができる。突起部は側壁部31,32のそれぞれに少なくとも一つずつ設けられていればよく、例えば、一方の側壁部には突起部が一つのみ設けられ、他方の側壁部には突起部が複数設けられていてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、突起部37Aと38A、37Bと38Bはそれぞれ軸線A方向の位置が同じである構成について説明したが、側壁部31に設けられた突起部と、側壁部32に設けられた突起部とは、その軸線A方向の位置が互いに異なる構成であってもよい。このような構成の場合、例えば、一つのコイル巻線を、一方側の突起部は上方から支持し、他方側の突起部は下方から支持するというような構成にすることもできる。
【0085】
また、スペーサ3は、上記実施形態で示した側壁部31,32、連結部33,34、突起部37A,37B,37C,38A,38B,38C、ガイド部33A,34Aに加えて、他の機能を備えることとしてもよい。図12は、スペーサ3の変形例を説明する斜視図である。例えば、図12に示すスペーサ3のように、第2コイル巻線5の第1の端子部53に対して、第1の端子部71においてネジ75を介して接続する接続部材72がスペーサ3の連結部33の上面を通るように取り付けられる場合、この接続部材72を位置決めするための突起部39A,39Bを接続部材72の形状に応じて設けることもできる。この場合、連結部33の上面に取り付けられる接続部材72は、突起部39A,39Bにより振動等による移動が抑制される。なお、当然ながら突起部39A,39Bを設ける位置や形状等は適宜変更することができる。
【0086】
図13は、スペーサ3の他の変形例を説明する図であり、図2のIIIB−IIIB矢視図に対応する図である。図13に示すスペーサ3のように、側壁部31,32から上方に伸び、先端が鉤状に折れ曲がっている鉤部39C,39Dを連結部33の上方に設け、この鉤部39C,39Dと連結部33との間にもコイル巻線を載置する構成とすることもできる。
【0087】
また、上記実施形態では、スペーサ3の連結部33,34がリング状である場合について説明したが、連結部33,34は、側壁部31,32の端部同士を接続すればよく、その形状は上記に限定されない。ここでいう「端部」とは、側壁部31,32の端縁近傍を指す。すなわち、側壁部31,32の端縁よりも内側において、側壁部31,32が連結部33,34により連結されていてもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、すなわち第1コイル巻線4に設けられた対向する2箇所の切り欠き部と、第2コイル巻線5に設けられた対向する2箇所の切り欠き部とは、それぞれ互いに平行な直線状である構成について説明したが、対向する2箇所の切り欠き部は互いに平行である必要はなく、例えば、ハの字状に切り欠き部を設けることとしてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、側壁部31と側壁部32との間の距離が、第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5の最小径(すなわち第1コイル巻線4の切り欠き部間の距離であり、且つ、第2コイル巻線5の切り欠き部間の距離)と略同一である構成について説明したが、側壁部31と側壁部32との間の距離は、コイル巻線に設けられた2つの切り欠き部間の距離よりも大きく、これらの切り欠き部の端部同士を結ぶ直線のうち最も長い直線の長さよりも小さいことが好ましい。なお、「切り欠き部間の距離」とは、軸線Aの方向からコイル巻線を見たときに、スペーサ3へのコイル巻線の挿入方向に対して垂直な方向に沿った切り欠き部間の距離のうち最大値を指す。
【0090】
具体的には、例えば、上記実施形態では、図7(a)に示す第2コイル巻線5の切り欠き部56Aの端56A1,56A2、及び切り欠き部56Bの端56B1,56B2のうちの2点ずつを結ぶ直線のうち最も長い直線(この場合は、直線56A156B2及び直線56A256B1)よりも側壁部31,32との間の距離を小さくした場合には、第2コイル巻線5が軸線の周りを1周回転することが抑制される。また、側壁部31,32との間の距離を第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5の最小径に近づけることで、コイル巻線の回転を更に抑制することができる。
【0091】
また、上記実施形態では、スペーサ3が軸線Aに関して2回対称であると共に軸線A方向に垂直な直線L1に関して2回対称である(すなわち、上下左右が対称である)場合について説明したが、対称であることは必須ではない。ただし、軸線Aに関して2回対称であると共に軸線A方向に垂直な直線L1に関して2回対称である場合には、スペーサ3の上下左右方向を考慮する必要がなくなるため、組立時の作業性が向上する。
【0092】
また、上記実施形態において説明したコイル部品1では、スペーサ3に対して第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5という2つのコイル巻線が取り付けられる構成について説明したが、コイル巻線は1つでもよく、逆に3つ以上であってもよく、コイル巻線の巻回数が1ターン以上あればよい。またコイル巻線を構成する巻線部材の形状は有端リング状に限られず、例えばエッジワイズコイルのような形状であってもよい。また、上記実施形態では円環状をなすコイル巻線について説明したが、コイル巻線の形状は、例えば中央部に開口を有する矩形状であってもよい。すなわち、スペーサ3に対して挿入可能な形状であれば、コイル巻線の形状は特に限定されない。
【0093】
また、上記実施形態では、ネジ21による固定によって、開口(図3(b)の開口39)内での側壁部31,32の延在方向に沿った第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5の移動を規制した構成について説明したが、コイル巻線の形状を変更することで、スペーサ3に対してコイル巻線を取り付けた際の開口内におけるコイル巻線の移動を規制する構成とすることもできる。具体的には、スペーサ3の開口内にコイル巻線を挿入したときに、スペーサ3の側壁部31,32や連結部33,34の端縁と当接する突起部や切り欠き部を予め設けておくことにより、コイル巻線が開口内を通過してしまうことを防止することができる。
【0094】
また、上記実施形態のコイル部品1では、側壁部31,32が磁性体コア部材6Aの外脚に対応する位置に設けられているが、この配置とは異なる位置に側壁部31,32を設ける態様としてもよい。
【0095】
また、一対の磁性体コア部材6A,6Bの形状は、上記実施形態に示したいわゆるEI型の形状に限られない。例えば、磁性体コア部材6A,6Bの双方が1本の主脚と2本の外脚を備えるいわゆるEE型の形状や、磁性体コア部材6Aが1本の主脚と1本の外脚を備えるいわゆるUI型の形状等であってもよいし、主脚、外脚とも備えていない空芯コアとすることもできる。
【0096】
また、スイッチング電源装置の構成は図10,11に限られない。すなわち、本実施形態に係るコイル部品1は、例えばインバータ等にも好適に用いられる。また、スイッチング電源装置100においてコイル部品1が用いられるのはチョークコイル170に限られず、メイントランス140に対しても好適に用いられる。
【0097】
(変形例)
次に、コイル部品の他の形状として、スペーサにストッパー部が設けられると共に、コイル巻線に当接部が設けられた構成について、図14〜図21を用いて説明する。
【0098】
図14〜図21は、上記実施形態の図2〜図9に対応する図である。すなわち、図14は、変形例に係るスペーサ及び第1コイル巻線の構成と、第1コイル巻線の取り付け方法と、を説明する斜視図である。図15は、図14のスペーサの構成を説明する図であり、図15(a)は、スペーサの平面図であり、図15(b)は、図14のXVB−XVB矢視図である。図16は、第1コイル巻線の構成を説明する図であり、図16(a)は、第1コイル巻線の平面図であり、図16(b)は、第1コイル巻線の底面図である。図17は、スペーサと第1コイル巻線とからなる部品の構成と、このスペーサに対する第2コイル巻線の取り付け方法と、を説明する斜視図である。図18は、図17のXVIII−XVIII矢視図である。図19は、第2コイル巻線の構成を説明する図であり、図19(a)は、第2コイル巻線の平面図であり、図19(b)は、第2コイル巻線の底面図である。図20は、スペーサと第1コイル巻線とからなる部品に第2コイル巻線を取り付けたコイルの斜視図である。そして、図21は、図20のXXI−XXI矢視図である。
【0099】
まず図14及び図15に示すように、スペーサ3Aには、第1コイル巻線4Aの軸線A方向(図2の上下方向)に沿って延びる2つの側壁部31,32の軸線A側の面に、突起部37A,37B,38A,38Bの他に、ストッパー部37D,37E,38D,38Eが設けられている。ストッパー部37D及び38Dは、図14において突起部37C及び38Cより下方(連結部34側)であって、第1コイル巻線4Aが取り付けられる位置に設けられる。
【0100】
これに対して、第1コイル巻線4Aの巻線部材42には、図16に示すように、切り欠き部47A上に、ストッパー部37Dの形状に対応した形状に切り欠かれた当接部47Cが設けられると共に、切り欠き部47B上に、ストッパー部38Dに対応した形状に形成された当接部47Dが設けられている。このうち、切り欠き部47Aと当接部47Cとの段差となる領域は、ストッパー部37Dのうち、スペーサ3Aの中心側の面37Fと当接するように形成されている。したがって、切り欠き部47Aは、ストッパー部37Dではなく、側壁部31の面31Aと当接するように形成されている。一方、当接部47Dは、側壁部32に設けられたストッパー部38Dのうち、スペーサ3Aの外側の面(側壁部31側においてストッパー部37Dの面37Fと対向する面に対応する)と当接するように形成されていて、切り欠き部47Bは、ストッパー部38Dと当接するように形成されている。
【0101】
これにより、スペーサ3Aに対して第1コイル巻線4Aが挿入されて、軸線Aが一致するように取り付けられると、ストッパー部37Dに対して当接部47Cが噛み合うと共に、ストッパー部38Dに対して当接部47Dが当接した状態となると共に、図18に示すようにコイル巻線4Aがスペーサ3Aに保持された状態となる。これにより振動等によって第1コイル巻線Aが軸線に沿って回転したりすることをより効果的に防止することができると共に、コイルを製造する過程において、第1コイル巻線4Aとスペーサ3Aの位置決めが容易になり、製造上の作業性が向上する。また、軸線A方向から見たときに、第1コイル巻線4Aにおいて、ストッパー部37Dに対して当接部47Cが噛み合う方向と、ストッパー部38Dに対して当接部47Dが当接する方向と、が互いに異なるため、軸線A方向に沿った回転をより効果的に抑制することができると共に軸線Aからの軸ずれを効果的に抑制することができる。
【0102】
また、ストッパー部37E及び38Eは、図14において突起部37A及び突起部38Aより上方(連結部33側)であって、第2コイル巻線5Aが取り付けられる位置に設けられる。そして、図17及び図19に示すように、第2コイル巻線5Aには、切り欠き部56A上に、ストッパー部37Eの形状に対応した形状に切り欠かれた当接部56Cが設けられると共に、切り欠き部56B上に、ストッパー部38Eに対応した形状に形成された当接部56Dが設けられている。
【0103】
このうち、当接部56Cは、当接部47Cと同様に、ストッパー部37Eのうちスペーサ3Aの外側の面と当接するように形成されていて、切り欠き部56Aは、ストッパー部37Eと当接するように形成されている。一方、切り欠き部56と当接部56Dとの段差となる領域は、ストッパー部38Eのうち、スペーサ3Aの中心側の面と当接するように形成されている。したがって、切り欠き部56Bは、ストッパー部38Eではなく、側壁部32の面32Aと当接するように形成されている。
【0104】
これにより、スペーサ3A及び第1コイル巻線4Aからなる部品7Aに対して第2コイル巻線5Aが挿入されて、軸線Aが一致するように取り付けられると、ストッパー部37Eに対して当接部56Cが当接すると共に、ストッパー部38Eに対して当接部56Dが噛み合った状態となると共に、図20及び図21に示すように第2コイル巻線5Aがスペーサ3Aに保持された状態となる。これにより振動等によって第2コイル巻線5Aが軸線に沿って回転したりすることをより効果的に防止することができる。また、第2コイル巻線5Aにおいても、第1コイル巻線4Aと同様に、軸線A方向から見たときに、ストッパー部37Eに対して当接部56Cが当接する方向と、ストッパー部38Eに対して当接部56Dが当接する方向と、が互いに異なるため、軸線A方向に沿った回転や軸ずれをより効果的に抑制することができる。更に、コイルを製造する過程において、第1コイル巻線4Aとスペーサ3Aの位置決めが容易になり、また、第2コイル巻線5Aとスペーサ3Aの位置決めも容易になることから、製造上の作業性が向上する。
【0105】
なお、ストッパー部37D,37E,38D,38Eの形状及びこれらのストッパー部を設ける位置は上記の変形例の形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。またストッパー部の位置及び形状に対応させて第1コイル巻線4A及び第2コイル巻線5Aの当接部の位置及び形状を適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0106】
1…コイル部品、2,2A…コイル、3,3A…スペーサ、4,4A…第1コイル巻線、5,5A…第2コイル巻線、6A,6B…磁性体コア部材、31,32…側壁部、33,34…連結部、33A,4A…ガイド部、35,36…開口、37A,37B,38A,38B…突起部、37D,37E,38D,38E…ストッパー部、41,42,51,52…巻線部材、46B,47A,47B,56A,56B,57A,57B…切り欠き部、47C,47D,56C,56D…当接部、100…スイッチング電源装置、140…メイントランス、170…チョークコイル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペーサ、コイル、コイル部品及びスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用バッテリの充電器等に組み込まれるスイッチング電源装置では、出力電流の向上等を目的として、巻数の多いコイルを用いることが増えている。これに対して、例えば、特許文献1では、第一の板状導電部材により構成される第一巻線部と第二巻線部との間に、第三の巻線部となる第二の板状導電部材を挿入することで、合計3ターン分の巻線が形成されたコイルが記載されている。
【0003】
また、上記のように2ターン以上のコイル巻線を形成するコイルを用いる場合には、複数の巻線のうち隣接する巻線同士が接触して短絡することがないように、隣接する巻線の間にコイル用ボビンが設けられることがある。このようなコイル用ボビンとして、例えば、特許文献2には、本体部がコイル巻線の内側に挿入されると共に本体部の外周面から外方に突出する突起部を有するコイル用ボビンが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−228813号公報
【特許文献2】特開2005−217311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1では隣接する巻線同士の接触を防止する部材が設けられていないため、振動や衝撃によってコイル巻線が変形した場合には、隣接する巻線同士が接触して短絡するおそれがある。
【0006】
一方、特許文献2記載のコイル用ボビンを特許文献1記載のコイルに適用した場合であっても、コイル巻線同士の接触を回避するための突起部が本体部の外周面に1ヶ所のみ設けられている。したがって、振動や衝撃の強度や方向によっては、コイル巻線同士の接触をコイル用ボビンの突起部によって回避することが困難な場合が考えられる。また、コイル巻線同士の接触を回避する目的から、隣接するコイル巻線の間に絶縁部材等を挟みこむことも可能であるが、その場合には部品点数が増大するため、組立時の工程数が増大してしまう。
【0007】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、部品を増やすことなくコイル巻線の絶縁性を向上することができるスペーサ、このスペーサに対してコイル巻線が取り付けられたコイル、このコイルに対してコア部材が取り付けられたコイル部品及びスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るスペーサは、軸線を挟んで対向配置され、軸線の周りに1ターン以上巻回されたコイル巻線の外周面に沿って軸線方向に延びる絶縁性の2つの側壁部と、2つの側壁部の端部のうち、軸線の延びる方向に沿ってコイル巻線に対して同一の方向にある端部同士をそれぞれ連結すると共に、コイル巻線の一部を軸線方向から挟む絶縁性の2つの連結部と、2つの側壁部の軸線側の面からそれぞれ互いに突出し、軸線方向に沿って隣接するコイル巻線の間を絶縁するための絶縁性の2つの突起部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記のスペーサによれば、2つの側壁部と2つの連結部とにより構成される領域の内部にコイル巻線を挿入した場合に、2つの側壁部の軸線側の面から内側に向かってそれぞれ突出する絶縁性の2つの突起部が、軸線方向に沿って隣接するコイル巻線の間に挟まれる構成となるため、振動等が発生した場合であってもコイル巻線の絶縁性が保たれる。また、軸線を挟んで対向配置された2つの側壁部のそれぞれに突起部が設けられるため、突起部が1つのみである場合と比較して安定してコイル巻線の絶縁を維持することができる。このように、上記のスペーサによれば、部品数を増やすことなく、スペーサの2つの突起部がコイル巻線の絶縁性を向上させることができる。
【0010】
ここで、上記作用を効果的に奏する構成として、具体的には、2つの突起部は、軸線方向の位置が互いに等しい態様が挙げられる。
【0011】
また、2つの側壁部、2つの連結部、及び2つの突起部は、その形状及び配置が軸線に対し2回対称であり、軸線に垂直に交わる線に対して2回対称である態様とすることができる。
【0012】
上記のように、スペーサを構成する各部の形状及び配置が軸線に対して2回対称であると共に軸線に垂直に交わる線に対して2回対称であることにより、スペーサの上下方向及び左右方向が入れ替わった場合であってもコイル巻線を適切に取り付けることができるため、コイル巻線に対してスペーサを取り付ける際の作業性が向上される。
【0013】
また、2つの側壁部又は2つの連結部の少なくとも1つから外方へ突出し、コイル巻線を軸線方向から挟み込む一対の磁性体コア部材に対する位置決め用のガイド部をさらに備えることを特徴とする態様としてもよい。
【0014】
このように、一対の磁性体コア部材に対する位置決め用のガイド部を有することにより、磁性体コア部材の位置決めが容易になると共に、振動等によって磁性体コア部材が移動することを防止することができる。
【0015】
また、本発明に係るコイルは、軸線の周りに1ターン以上巻回されたコイル巻線と、上記のスペーサとを備えることを特徴とする。この場合部品を増やすことなくコイル巻線の絶縁性が向上されたスペーサを含んで構成されるコイルを得ることができる。
【0016】
ここで、上記のコイルにおいて、コイル巻線は、板状の巻線が軸線方向に沿って複数連結されたものであって、軸線方向から見たときに、略円環状をなすと共に、外周の一部を直線状に切り欠いた切り欠き部が、軸線を挟んで2箇所設けられ、2つの側壁部の軸線側の面の距離は、2箇所の切り欠き部間の距離よりも大きく、対向する2箇所の切り欠き部の端部同士を結ぶ直線のうち最も長い直線の長さよりも小さい態様とすることができる。
【0017】
このように、コイル巻線が2箇所の切り欠き部を備えると共に、スペーサの2つの側壁部の軸線側の面の距離が、2箇所の切り欠き部間の距離よりも大きく、対向する2箇所の切り欠き部の端部同士を結ぶ直線のうち最も長い直線の長さよりも小さいことで、コイル巻線をスペーサに取り付ける際には、コイル巻線を2箇所の切り欠き部がそれぞれ側壁部と対向する方向にして取り付けることができ、コイル巻線の取り付け時の作業性が向上する。また、2つの側壁部間の距離は、対向する2箇所の切り欠き部の端部同士を結ぶ直線のうち最も長い直線の長さよりも小さいため、いったんコイル巻線をスペーサに取り付けた後は、振動等によってコイル巻線が軸線に沿って回転したりすることを防止することができる。
【0018】
また、スペーサにおいて、側壁部の軸線側の面の突起部とは異なる位置であって、軸線に垂直な方向からコイル巻線を挿入したときにコイル巻線に当接する位置に、ストッパー部が形成されている態様とすることができる。
【0019】
そして、上記のスペーサと軸線の周りに1ターン以上巻回されたコイル巻線からなるコイルに関して、コイル巻線は、軸線が一致するように軸線に垂直な方向からスペーサに対してコイル巻線を挿入した際に、ストッパー部に当接する当接部を備える態様とすることができる。
【0020】
このように、スペーサの側壁部の軸線側の面においてストッパー部が設けられ、コイル巻線においてこのストッパー部と当接する当接部が設けられることで、コイル巻線を軸線方向に垂直な方向からスペーサに対して挿入した際に、ストッパー部と当接部とが当接することで、振動等によってコイル巻線が軸線に沿って回転することやストッパー部とコイル巻線との軸ずれをより効果的に防止することができる。また、コイルを製造する過程において、コイル巻線をスペーサに対して挿入した際に、ストッパー部と当接部とが当接することにより位置決めが容易になり、製造上の作業性が向上する。
【0021】
また、本発明に係るコイル部品は、上記の記載のコイルと、コイル巻線を軸線方向から挟み込む一対の磁性体コア部材と、を備えることを特徴とする。この場合部品を増やすことなくコイル巻線の絶縁性が向上されたスペーサを含んで構成されるコイル部品を得ることができる。
【0022】
また、本発明に係るスイッチング電源装置は、上記のコイル部品を備えることを特徴とする。この場合、部品を増やすことなくコイル巻線の絶縁性が向上されたスペーサを含んで構成されるコイル部品を用いたスイッチング電源装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、部品を増やすことなくコイル巻線の絶縁性を向上することができるスペーサ、このスペーサに対してコイル巻線が取り付けられたコイル、このコイルに対してコア部材が取り付けられたコイル部品、トランス及びスイッチング電源装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態に係るコイル部品を示す分解斜視図である。
【図2】図1のコイル部品を構成するスペーサ及び第1コイル巻線の構成と、第1コイル巻線の取り付け方法と、を説明する斜視図である。
【図3】図2のスペーサの構成を説明する図であり、図3(a)は、スペーサの平面図であり、図3(b)は、図2のIIIB−IIIB矢視図である。
【図4】第1コイル巻線の構成を説明する図であり、図4(a)は、第1コイル巻線の平面図であり、図4(b)は、第1コイル巻線の底面図である。
【図5】スペーサと第1コイル巻線とからなる部品の構成と、このスペーサに対する第2コイル巻線の取り付け方法と、を説明する斜視図である。
【図6】図5のVI−VI矢視図である。
【図7】第2コイル巻線の構成を説明する図であり、図7(a)は、第2コイル巻線の平面図であり、図7(b)は、第2コイル巻線の底面図である。
【図8】スペーサと第1コイル巻線とからなる部品に第2コイル巻線を取り付けたコイルの斜視図である。
【図9】図5のVI−VI矢視図である。
【図10】スイッチング電源装置の回路図である。
【図11】スイッチング電源装置の斜視図である。
【図12】スペーサの変形例を説明する斜視図である。
【図13】スペーサの他の変形例を説明する図であり、図2のIIIB−IIIB矢視図に対応する図である。
【図14】変形例に係るコイル部品を構成するスペーサ及び第1コイル巻線の構成と、第1コイル巻線の取り付け方法と、を説明する斜視図である。
【図15】図14のスペーサの構成を説明する図であり、図15(a)は、スペーサの平面図であり、図15(b)は、図14のXVB−XVB矢視図である。
【図16】変形例に係る第1コイル巻線の構成を説明する図であり、図16(a)は、第1コイル巻線の平面図であり、図16(b)は、第1コイル巻線の底面図である。
【図17】スペーサと第1コイル巻線とからなる部品の構成と、このスペーサに対する第2コイル巻線の取り付け方法と、を説明する斜視図である。
【図18】図17のXVIII−XVIII矢視図である。
【図19】第2コイル巻線の構成を説明する図であり、図19(a)は、第2コイル巻線の平面図であり、図19(b)は、第2コイル巻線の底面図である。
【図20】スペーサと第1コイル巻線とからなる部品に第2コイル巻線を取り付けたコイルの斜視図である。
【図21】図20のXXI−XXI矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0026】
(コイル部品の概要)
まず、図1〜3を参照して、本実施形態に係るコイル部品に含まれるスペーサの構成を説明する。図1は、本実施形態に係るコイル部品を示す分解斜視図である。また、図2は、図1のコイル部品を構成するスペーサ及び第1コイル巻線の構成と、第1コイル巻線の取り付け方法と、を説明する斜視図である。図3は、図2のスペーサの構成を説明する図であり、図3(a)は、スペーサの平面図であり、図3(b)は、図2のIIIB−IIIB矢視図である。なお、第1コイル巻線の詳細な構成については後述する。
【0027】
図1に示すコイル部品1は、インダクタンス素子、スイッチング電源装置、ノイズフィルタ、インバータ等に用いられるものである。このコイル部品1は、コイル2と、一対の磁性体コア部材6A,6Bと、を含んで構成される。また、コイル2は、スペーサ3と、第1コイル巻線4と、第2コイル巻線5と、を含んで構成される。第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5は、それぞれ有端リング状の板状の巻線部材が間隔を空けて並設され、これらが軸線Aに沿った所定の巻き方向となるように連結されたものであり、これらの端部同士がさらに連結されることで、1つのコイル巻線が形成されている。このような第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5は、スペーサ3の内側に挿入されている。なお本実施形態のコイル部品1では、第1コイル巻線4と第2コイル巻線5は同じ厚さの巻線部材からなる場合について説明する。
【0028】
以下、上記のコイル部品1を構成する各部品について説明すると共に、上記のコイル部品1の組立方法を説明する。
【0029】
(スペーサ)
まず、スペーサ3の構成について説明する。スペーサ3は、図2及び図3に示すように、第1コイル巻線4の軸線A方向(図2の上下方向)に沿って延びる2つの側壁部31,32と、側壁部31,32の図示上方側の端部同士をそれぞれ連結する連結部33と、側壁部31,32の図示下方側の端部同士を連結する連結部34と、を含んで構成される。側壁部31,32と連結部33,34とは絶縁性の材料により構成される。なお、図2では、スペーサ3と第1コイル巻線4の双方について軸線Aを記載しているが、これは、図2ではスペーサ3と第1コイル巻線4とを分割して記載しているためであり、一体化した際に同軸となるものである。
【0030】
スペーサ3の側壁部31,32は略平板状且つ同一形状の部材からなり、長手方向が第1コイル巻線4の軸線A方向となるように設けられる。より具体的には、側壁部31,32のうち、軸線A側の面は平らであるが、軸線A側の面とは逆側の面は、軸線A方向から見たときに円弧を形成するように緩やかに曲がっている。また、連結部33,34は、平板状且つ同一形状の部材からなり中心に開口35,36をそれぞれ有するリング状の形状をなしている。この開口35,36は、図1及び図2に示すように、第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5をスペーサ3に対して取り付けたときに、第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5の開口と連通し、さらに磁性体コア部材6Aの脚部をこの開口に挿入可能とするために設けられている。なお、スペーサ3の開口35,36の内径は、後述の第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5に設けられる開口の内径よりも小さくされている。
【0031】
また、スペーサ3の連結部33,34には、軸線Aに対して外方へ突出するガイド部33A,34Aが一体的に設けられる。このガイド部33A,34Aは、磁性体コア部材6Aをコイル2に対して取り付ける際に、磁性体コア6Aが振動等により動くことを防止する。その詳細は後述する。
【0032】
また、図3(b)に示すように、側壁部31,32及び連結部33,34により囲まれた領域は、略矩形状の開口39を形成する。このとき、側壁部31と側壁部32との距離は、後述の第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5の最小径と略同一であることが好ましい。
【0033】
また、スペーサ3の側壁部31のうち軸線A側(すなわち開口39側)の面31Aには、軸線Aの延びる方向へ突出する突起部37A,37B,37Cが設けられる。また、側壁部32のうち軸線A側の面32Aには、軸線Aの延びる方向へ突出する突起部38A,38B,38Cが設けられる。突起部37A,37B,37Cと突起部38A,38B,38Cとは、それぞれ互いに突出している。また、突起部37Aと突起部38Aとは、軸線A方向における位置が同じであり、図3(b)に示すように、突起部37Aと突起部38Aとがそれぞれ対向して配置されている。同様に、突起部37Bと突起部38Bとは、軸線A方向における位置が同じであり、突起部37Bと突起部38Bとがそれぞれ対向して配置されている。また、突起部37Cと突起部38Cとは、軸線A方向における位置が同じであり、突起部37Cと突起部38Cとがそれぞれ対向して配置されている。突起部37Aの先端と突起部38Aの先端とを結ぶ距離、突起部37Bの先端と突起部38Bの先端とを結ぶ距離、及び、突起部37Cの先端と突起部38Cの先端とを結ぶ距離は、それぞれ第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5の外径よりも小さくされている。これにより、突起部37A,37B,37C,38A,38B,38Cは、スペーサ3の内側に第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5を取り付ける際に、コイル巻線をスペーサ3の内側の所定の位置に適切に載置するための巻線ガイドとして機能すると共に、載置後のコイル巻線同士の接触及び短絡を防止する機能を有する。なお、本実施形態のスペーサ3では、上記のように6つの突起部37A,37B,37C,38A,38B,38Cが設けられている。これは、より具体的には、2つの突起部の組(37Aと38A、37Bと38B、及び、37Cと38C)が3セット設けられている構成である。
【0034】
突起部が設けられる位置は、コイル巻線の形状等に基づいて適宜変更することができるが、本実施形態のスペーサ3では、連結部33と突起部37A,38Aとの間の距離が第2コイル巻線5の厚さとなるような位置に、軸線A方向の位置が等しくなるように突起部37A,38Aが設けられている。また、連結部34と突起部37C,38Cとの間の距離が第1コイル巻線4の厚さとなるような位置に、軸線A方向の位置が等しくなるように突起部37C,38Cが設けられている。そして、突起部37A,38Aと突起部37B,38Bとの間の距離が第1コイル巻線4を構成する板状の巻線部材の厚さとなり、且つ、突起部37C,38Cと突起部37B,38Bとの間の距離が第2コイル巻線5を構成する板状の巻線部材の厚さとなるような位置に、軸線A方向の位置が等しくなるように突起部37B,38Bが設けられている。ここで、第1コイル巻線4と第2コイル巻線5は同じ厚さの巻線部材が用いられていることから、連結部33と突起部37A,38Aとの間の距離、突起部37A,38Aと突起部37B,38Bとの間の距離、突起部37B,38Bと突起部37C,3CCとの間の距離、及び、突起部37C,38Cと連結部34との間の距離が等しくされている。
【0035】
このように、スペーサ3は、その形状が軸線Aに対し2回対称であり、軸線Aに垂直に交わる線(図3(B)の直線L1)に対して2回対称となっている。したがって、このスペーサ3を上下左右方向の向きを逆にして用いた場合でも、逆にせずに用いた場合と同様の機能を有する。
【0036】
なお、突起部37A,37B,37C,38A,38B,38Cについても絶縁性の材料から構成される。この突起部37A,37B,37C,38A,38B,38Cを含むスペーサ3を構成する絶縁性の材料としては、例えばPBT(Poly Butylene Terephthalate)樹脂やPPS(Poly Phenylene Sulfide)樹脂等が、耐熱性、耐薬品性、難燃性、寸法安定性等の特性に優れていることから好適に用いられる。
【0037】
(第1コイル巻線)
次に、第1コイル巻線4について図2,4を参照しながら説明する。図4は、第1コイル巻線の構成を説明する図であり、図4(a)は、第1コイル巻線の平面図であり、図4(b)は、第1コイル巻線の底面図である。
【0038】
図2,4に示すように、第1コイル巻線4は、略円環状であって、間を隔てて並設された有端リング状の2つの巻線部材41,42を、所定の巻き方向に連なるように連結させたものである。「略円環状」とは、コイル巻線のうち巻線を形成する領域(すなわち端子部や接続部等を除いた領域)の外周が、軸線Aの方向から見たときに概ね円形状となっているか、又は概ね楕円形状となっていることをいう。この有端リング状の巻線部材41,42はいわゆるC字状を呈していて、中央に円形状の開口401,402を有している。巻線部材41と巻線部材42とは、この開口401,402が連通するように重なっている。また、巻線部材41は8分の5ターンの巻線であり、一端と他端との間は、内周から外周まで延びる空隙403となっている。また、巻線部材42は、8分の7ターンの巻線であり、一端と他端との間は、内周から外周まで延びるスリット404となっている。
【0039】
さらに、巻線部材41の一端部には、開口401の軸線Aから外方へ突出する第1の端子部43が一体的に設けられている。そして、巻線部材41の他端部はU字状の接続部44を介して巻線部材42の一端部に連結されている。巻線部材42の他端部には、開口402の軸線Aから外方へ突出する第2の端子部45が一体的に設けられている。上記の構成を有する第1コイル巻線4では、第1の端子部43が第1コイル巻線4の始端、第2の端子部45が第1コイル巻線4の終端になっている。そして、第1の端子部43に電力を入力した場合、電力は、巻線部材41、接続部44、巻線部材42の順で流れ、第2の端子部45から出力される。
【0040】
なお、第1の端子部43及び第2の端子部45は、巻線部材41,43とは軸線A方向の位置が異なるように段差状に折り曲げられている。
【0041】
ここで、第1コイル巻線4の巻線部材41の外周には、外周の一部を直線状に切り欠いた切り欠き部46Bが設けられる。同様に、巻線部材42の外周にも外周の一部を直線状に切り欠いた切り欠き部47A,47Bが設けられる。図4に示すように、巻線部材41に設けられる切り欠き部46Bと、巻線部材42に設けられる切り欠き部47Bとは、平面視に重なる位置とされている。なお、巻線部材41において切り欠き部47Aに対応する位置には、巻線部材41がないため、切り欠き部47Aに対応する切り欠き部は巻線部材41には設けられていない。また、切り欠き部47Aと47B(46B)とは、軸線Aを挟んで対向する位置に、端面が平行となるように設けられている。そして、この第1コイル巻線4では、この切り欠き部46B,47A,47Bが設けられていることにより、切り欠き部47Aと47B(46B)との間の距離が巻線部材42の最小径となっている。すなわち、この切り欠き部47Aと47B(46B)との間の距離が第1コイル巻線4の最小径となる。
【0042】
以上の構成を有する第1コイル巻線4は、電気伝導性が高い一枚の基板を打ち抜き加工することで形成可能である。より具体的には、銅板、アルミニウム板等の基板から、第1の端子部43と、第1の端子部43に連続する巻線部材41,42と、巻線部材42に連続する第2の端子部45と、巻線部材41,42を連結するI字状の接続部44と、を打ち抜き加工により得る。そして、接続部44をU字状に屈曲させることによって巻線部材41と42とを所定の間隙をもって重ね合わせる。これにより、導体板からなる第1コイル巻線4が完成する。なお、第1のコイル巻線4はこのような折り曲げコイルに限られず、例えば、コイル部材と連結部とをねじ留めしたものであってもよいし、溶接したものであってもよい。また、リベットで固定してもよい。
【0043】
(スペーサへの第1コイル巻線の取り付け)
次に、スペーサ3への第1コイル巻線4の取り付けについて、図2,5,6を参照しながら説明する。図5は、スペーサと第1コイル巻線とからなる部品の構成と、このスペーサに対する第2コイル巻線の取り付け方法と、を説明する斜視図である。図6は、図5のVI−VI矢視図である。
【0044】
スペーサ3へ第1コイル巻線4を取り付ける際には、図2に示すように、スペーサ3において、側壁部31,32及び連結部33,34により囲まれた開口(図3(b)における開口39)に対して、図示手前側から第1コイル巻線4を挿入する。このとき、第1コイル巻線4を、スペーサ3の開口35,36が連通する方向と第1コイル巻線4の軸線とが一致し、且つ、側壁部31,32の内面が延在する方向に沿って第1コイル巻線4の切り欠き部46B,47A,47Bが配置されるような向きとする。そして、側壁部31,32の内面(図3(b)の面31A,32A)と切り欠き部46B,47A,47Bとが対向する位置まで第1コイル巻線4を開口39から挿入する。ここで、第1コイル巻線4を挿入する際の向きを変更し、例えば、側壁部31,32の内面(図3(b)の面31A,32A)と切り欠き部46B,47A,47Bとが交わるような向きにして第1コイル巻線4を挿入しようとしても、第1コイル巻線4の径と比較して側壁部31,32間の距離が小さいため、第1コイル巻線4の挿入ができない。
【0045】
このとき、第1コイル巻線4の第1の端子部43及び第2の端子部45が折り曲げられていて、軸線A方向の位置が巻線部材41,42とは異なる位置にあるため、この第1の端子部43及び第2の端子部45が軸線Aに対して垂直な面方向の移動を抑制する。
【0046】
また、スペーサ3へ第1コイル巻線4を取り付ける際には、第1コイル巻線4の巻線部材41がスペーサ3の突起部37A,38Aと突起部37B,38Bとの間に嵌まると共に、第1コイル巻線4の巻線部材42がスペーサ3の突起部37C,38Cと連結部34との間に嵌まるように、第1コイル巻線4を挿入する。これにより、第1コイル巻線4は、スペーサ3内で上下方向への移動が抑制される。
【0047】
以上により、スペーサと第1コイル巻線とからなる部品7が形成される。
【0048】
(第2コイル巻線)
次に、第2コイル巻線5について図5,7を参照しながら説明する。図7は、第2コイル巻線の構成を説明する図であり、図7(a)は、第2コイル巻線の平面図であり、図7(b)は、第2コイル巻線の底面図である。
【0049】
図5,7に示すように、第2コイル巻線5は、略円環状であって、間を隔てて並設された有端リング状の2つの巻線部材51,52を、所定の巻き方向に連なるように連結させたものである。この有端リング状の巻線部材51,52はいわゆるC字状を呈していて、中央に円形状の開口501,502を有している。巻線部材51と巻線部材52とは、この開口501,502が連通するように重なっている。また、巻線部材及び巻線部材52は、それぞれ1ターンの巻線であり、一端と他端との間は、それぞれ内周から外周まで延びるスリット503,504となっている。
【0050】
さらに、巻線部材51の一端部には、開口501の軸線Aから外方へ突出する第1の端子部53が一体的に設けられている。そして、巻線部材51の他端部はU字状の接続部54を介して巻線部材52の一端部に連結されている。巻線部材52の他端部には、開口502の軸線Aから外方へ突出する第2の端子部55が一体的に設けられている。
【0051】
なお、第1の端子部53及び第2の端子部55は、巻線部材51,53とは同一の面に設けられる。すなわち、第1コイル巻線4のように端子部近傍が折り曲げられている構成ではない。
【0052】
上記の構成を有する第2コイル巻線5では、第1の端子部53が第2コイル巻線5の始端、第2の端子部55が第2コイル巻線5の終端になっている。そして、第1の端子部53に電力を入力した場合、電力は、巻線部材51、接続部54、巻線部材52の順で流れ、第2の端子部55から出力される。
【0053】
ここで、第2コイル巻線5の巻線部材51の外周には、外周の一部を直線状に切り欠いた切り欠き部56A,56Bが設けられる。同様に、巻線部材52の外周にも外周の一部を直線状に切り欠いた切り欠き部57A,57Bが設けられる。図7に示すように、巻線部材51に設けられる切り欠き部56Aと、巻線部材52に設けられる切り欠き部57Aとは、平面視に重なる位置とされている。同様に、巻線部材51に設けられる切り欠き部56Bと、巻線部材52に設けられる切り欠き部57Bとは、平面視に重なる位置とされている。また、切り欠き部56A及び56Bと、57A及び57Bとは、それぞれ軸線Aを挟んで対向する位置に、それぞれの端面が平行となるように設けられている。そして、この第2コイル巻線5では、この切り欠き部56A,56B,57A,57Bが設けられていることにより、切り欠き部56Aと56Bとの間の距離(57Aと57Bとの間の距離)が巻線部材51(52)の最小径となっている。すなわち、この切り欠き部56Aと56Bとの間の距離(57Aと57Bとの間の距離)が第2コイル巻線5の最小径となる。
【0054】
以上の構成を有する第2コイル巻線5は、電気伝導性が高い一枚の基板を打ち抜き加工することで形成可能である。より具体的には、銅板、アルミニウム板等の基板から、第1の端子部53と、第1の端子部53に連続する巻線部材51,52と、巻線部材52に連続する第2の端子部55と、巻線部材51,52を連結するI字状の接続部54と、を打ち抜き加工により得る。そして、接続部54をU字状に屈曲させることによって巻線部材51と52とを所定の間隙をもって重ね合わせる。これにより、導体板からなる第2コイル巻線5が完成する。なお、第2のコイル巻線5はこのような折り曲げコイルに限られず、例えば、コイル部材と連結部とをねじ留めしたものであってもよいし、溶接したものであってもよい。また、リベットで固定してもよい。
【0055】
(スペーサへの第2コイル巻線の取り付け)
次に、スペーサ3と第1コイル巻線4とからなる部品7への第2コイル巻線5の取り付けについて、図5,8,9を参照しながら説明する。図8は、スペーサと第1コイル巻線とからなる部品に第2コイル巻線を取り付けたコイルの斜視図である。図9は、図5のVI−VI矢視図である。
【0056】
部品7へ第2コイル巻線5を取り付ける際には、図5に示すように、スペーサ3において、側壁部31,32及び連結部33,34により囲まれた開口(図3(b)における開口39)の図示奥側から第2コイル巻線5を挿入する。すなわち、第2コイル巻線5は、第1コイル巻線4とは逆側から開口に対して挿入する。このとき、第2コイル巻線5を、スペーサ3の開口35,36が連通する方向と第2コイル巻線5の軸線とが一致し、且つ、側壁部31,32の内面が延在する方向に沿って第2コイル巻線5の切り欠き部56A,56B,57A,57Bが配置されるような向きとする。そして、側壁部31,32の内面(図3(b)の面31A,32A)と切り欠き部56A,56B,57A,57Bとが対向する位置まで第2コイル巻線5を開口39から挿入する。ここで、第2コイル巻線5を挿入する際の向きを変更し、例えば、側壁部31,32の内面(図3(b)の面31A,32A)と切り欠き部56A,56B,57A,57Bとが交わるような向きにして第2コイル巻線5を挿入しようとしても、第2コイル巻線5の径と比較して側壁部31,32間の距離が小さいため、第2コイル巻線5の挿入ができない。
【0057】
また、部品7へ第2コイル巻線5を取り付ける際には、図9に示すように、第2コイル巻線5の巻線部材51がスペーサ3の突起部37A,38Aと連結部33との間に嵌まると共に、第2コイル巻線5の巻線部材52がスペーサ3の突起部37B,38Bと突起部37C,38Cとの間に嵌まるように、第2コイル巻線5を挿入する。これにより、第2コイル巻線5は、スペーサ3内で上下方向への移動が抑制される。
【0058】
さらに、第1コイル巻線4の巻線部材41と第2コイル巻線5の巻線部材51との間には、スペーサ3の突起部37A,38Aが介在する。これにより、この突起部37A,38Aが、巻線部材41と巻線部材51とが接触することを防止する絶縁部材として機能する。同様に、第2コイル巻線5の巻線部材51と第1コイル巻線4の巻線部材42との間には、スペーサ3の突起部37B,38Bが介在する。これにより、この突起部37B,38Bが、巻線部材51と巻線部材42とが接触することを防止する絶縁部材として機能する。また、第1コイル巻線4の巻線部材42と第2コイル巻線5の巻線部材52との間には、スペーサ3の突起部37C,38Cが介在する。これにより、この突起部37C,38Cが、巻線部材42と巻線部材52とが接触することを防止する絶縁部材として機能する。
【0059】
そして、スペーサ3に第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5を挿入した後、図8に示すように、第1コイル巻線4の第1の端子部43と第2コイル巻線5の第2の端子部55とがネジ21により電気的に接続される。これにより、第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5は、合計3.5ターンのコイル巻線と機能する。具体的には、第1コイル巻線4の第2の端子部45から電力が入力された場合、電力は、巻線部材42、接続部44、巻線部材41を経て第1の端子部43に到達し、この第1の端子部43と電気的に接続する第2コイル巻線5の第2の端子部55から、巻線部材52、接続部54、巻線部材51を経て、第1の端子部53に到達し、この第1の端子部53から出力される。また、ネジ21によって第1コイル巻線4の第1の端子部43と第2コイル巻線5の第2の端子部55とが固定されることによって、開口(図3(b)の開口39)内での側壁部31,32の延在方向に沿った第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5の移動が抑制される。なお、第1コイル巻線4の第1の端子部43と第2コイル巻線5の第2の端子部55とは、ネジ留めではなく、溶接によって接続してもよい。また、リベットでこれらを固定してもよい。
【0060】
以上により、部品7、すなわちスペーサ3及び第1コイル巻線4と、第2コイル巻線5とからなるコイル2が形成される。
【0061】
(コイル部品)
次に、図1に戻って、コイル部品1について説明する。このコイル部品1は、上記のコイル2が更に一対の磁性体コア部材6A,6Bを備えるものである。コイル部品1は、例えば、後述するスイッチング電源装置のチョークコイルとして機能する。
【0062】
図1に示すように、磁性体コア部材6A,6Bは、コイル2を構成するスペーサ3、第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5の開口を貫く軸線Aに沿ってコイル2を挟むように配置される。
【0063】
磁性体コア部材6A,6Bは、フェライト粉末を圧粉成形して得られるいわゆるE型コアとI型コアである。より具体的には、磁性体コア部材6Aは、長手方向を有する平板状の基部60と、基部60の一方の主面の中心に突設された円柱状の主脚61と、主脚61を挟んで基部60の端部に設けられた2本の外脚62,63とからなっている。一方、磁性体コア部材6Bは、長手方向を有する平板状の基部65からなっている。
【0064】
磁性体コア部材6の主脚61はコイル2の開口、すなわち、図9に示すスペーサ3の連結部33の開口35、巻線部材51の開口501、巻線部材41の開口401、巻線部材52の開口502、巻線部材42の開口402、スペーサ3の連結部34の開口36を連通するように挿入される。このとき、図9に示すように、スペーサ3の連結部33の開口35及び連結部34の開口36の径は、巻線部材41,42,51,52の開口401,402,501,502の径よりも小さくされているため、連結部33の開口35及び連結部34の開口36が磁性体コア部材6Aの主脚61に当接する一方、巻線部材41,42,51,52の開口401,402,501,502は、磁性体コア部材6Aの主脚61と当接しない。このように、スペーサ3は、開口内において磁性体コア部材6Aと第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5とが接触することを防止するボビンとしての機能を有する。
【0065】
また、図1に戻り、磁性体コア部材6Aの外脚62,63は、第1コイル巻線4及びコイル巻線5の外周に沿って、磁性体コア部材6Aの外脚62,63と磁性体コア部材6Bの基部65とが当接するように配置される。このとき、スペーサ3の側壁部31,32が、第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5の外周面に沿って設けられているため、この側壁部31,32が磁性体コア部材6Aと第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5とが接触することを防止する絶縁部材としての機能を有する。
【0066】
また、スペーサ3の連結部33,34は、コイル2を一対の磁性体コア部材6A,6Bで挟み込んだときに、コイル巻線が磁性体コア部材6A,6Bと当接することを防止する絶縁部材としての機能を有する。
【0067】
さらに、スペーサ3の連結部33,34に、外方へ突出するガイド部33A,34Aがそれぞれ設けられ、このガイド部33A,34Aが外脚62,63を固定するため、磁性体コア部材6Aとコイル2との間の幅方向の位置ズレの発生が抑制される。なお、ガイド部33A,34Aの形状は、上記に限られず、磁性体コア部材の形状に応じて適宜変更することができる。また、スペーサ3の側壁部31,32にガイド部を設ける態様とすることもできる。
【0068】
(スイッチング電源装置)
次に、本実施形態に係るコイル部品1が好適に用いられるスイッチング電源装置について説明する。図10は、スイッチング電源装置100の回路図である。また、図11は、スイッチング電源装置100の斜視図である。本実施形態に係るスイッチング電源装置100は、DC−DCコンバータとして機能するものであり、例えば100Vから500V程度の電圧を蓄電する高圧バッテリ等から供給される高圧の直流入力電圧Vinを低圧の直流出力電圧Voutに変換し、12〜16V程度の電圧を蓄電する低圧バッテリ等へ供給する。
【0069】
このスイッチング電源装置100は、図11に示すように、ベースプレート101を有し、このベースプレート上に、入力平滑コンデンサ(入力フィルタ)130と、スイッチング回路120と、メイントランス140と、整流回路150と、チョークコイル(コイル部品)170と、出力平滑コンデンサ162と、からなる平滑回路160と、が固定されている。
【0070】
このスイッチング電源装置100は、より具体的には、1次側高圧ライン121と1次側低圧ライン122との間に設けられたスイッチング回路120及び入力平滑コンデンサ130と、1次側及び2次側トランスコイル部141,142を有するメイントランス140と、2次側トランスコイル部142に接続された整流回路150と、整流回路150に接続された平滑回路160と、を備えている。
【0071】
スイッチング回路120は、スイッチング素子S1〜S4で構成されたフルブリッジ型の回路構成とされている。スイッチング回路120は、例えば駆動回路(不図示)から供給される駆動信号に応じて、入力端子T1,T2間に印加される直流入力電圧Vinを入力交流電圧に変換する。
【0072】
入力平滑コンデンサ130は、入力端子T1、T2から入力された直流入力電圧Vinを平滑化する。メイントランス140は、スイッチング回路120で生成された入力交流電圧を変圧し、出力交流電圧を出力する。1次側及び2次側トランスコイル部141,142の巻数比は、変圧比によって適宜設定されている。ここでは、1次側トランスコイル部141の巻数を、2次側トランスコイル部142の巻数よりも多くしている。2次側トランスコイル部142は、センタータップ型のものであり、接続部C及び出力ラインLOを介して出力端子T3に導かれている。
【0073】
整流回路150は、整流ダイオード151A,151Bからなる単相全波整流型のものである。各整流ダイオード151A,151Bのカソードは、2次側トランスコイル部142に接続されている一方、アノードは、接地ラインLGに接続され、出力端子T4に導かれている。これにより、整流回路150は、メイントランス140からの出力交流電圧の各半単波期間を、個別に整流して直流電圧を生成する。
【0074】
平滑回路160は、チョークコイル170と出力平滑コンデンサ162とを含んで構成されている。チョークコイル170は、出力ラインLOに挿入配置されている。出力平滑コンデンサ162は、出力ラインLOにおいてチョークコイル170と接地ラインLGとの間に接続されている。これにより、平滑回路160は、整流回路150で整流された直流電圧を平滑化して直流出力電圧Voutを生成し、この直流出力電圧Voutを出力端子T3,T4から低圧バッテリ等へ供給する。
【0075】
以上のように構成されたスイッチング電源装置100において、入力端子T1,T2から供給される直流入力電圧Vinがスイッチングされて入力交流電圧が生成され、メイントランス140の1次側トランスコイル部141へと供給される。そして、生成された入力交流電圧が変圧され、2次側トランスコイル部142から出力交流電圧として出力される。そして、この出力交流電圧が整流回路150によって整流されると共に平滑回路160によって平滑化され、出力端子T3,T4から直流出力電圧Voutとして出力されることとなる。
【0076】
以上のように、本実施形態に係るスペーサ3によれば、2つの側壁部31,32と2つの連結部33,34とにより構成される矩形状の領域の内部に第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5を挿入した場合に、2つの側壁部31,32の軸線側の面31A,32Aから内側に向かってそれぞれ突出する絶縁性の突起部37A,37B,37C及び38A,38B,38Cが、軸線A方向に沿って隣接する巻線部材の間(巻線部材41と巻線部材51との間、巻線部材51と巻線部材42との間、及び、巻線部材42と巻線部材52との間)に挟まれる構成となるため、振動等が発生した場合であってもコイル巻線(巻線部材)の絶縁性が保たれる。また、軸線Aを挟んで対向配置された2つの側壁部31,32のそれぞれに突起部37A,37B,37C及び38A,38B,38Cが設けられるため、突起部が1つのみである(一方の側壁部のみに設けられている)場合と比較して安定してコイル巻線の絶縁を維持することができる。このように、本実施形態のスペーサ3によれば、部品数を増やすことなく、スペーサ3の3つの突起部の組(37Aと38A、37Bと38B、及び、37Cと38C)がコイル巻線の絶縁性を向上させることができる。
【0077】
また、上記実施形態に係るスペーサ3は、側壁部31,32、連結部33,34及び突起部37A,37B,37C,38A,38B,38Cの形状及び配置が軸線Aに対して2回対称であると共に軸線Aに垂直に交わる線L1に対して2回対称である。したがって、スペーサ3の上下方向及び左右方向が入れ替わった場合であってもコイル巻線を適切に取り付けることができるため、コイル巻線に対してスペーサを取り付ける際の作業性が向上される。
【0078】
また、上記実施形態に係るスペーサ3は、一対の磁性体コア部材6A,6Bに対する位置決め用のガイド部33A,34Aを有することにより、磁性体コア部材6A,6Bの位置決めが容易になると共に、振動等によって磁性体コア部材6A,6Bが移動することを防止することができる。
【0079】
また、上記実施形態に係るコイル2は、第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5が軸線Aを挟んで平行に設けられた切り欠き部(46B,47A,47B,56A,56B,57A,57B)を備えると共に、スペーサ3の2つの側壁部31,32の軸線A側の面31A,32Aの距離は、2箇所の切り欠き部間の距離よりも大きく切り欠き部とは異なる位置での第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5の径よりも小さくされている。したがって、第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5をスペーサ3に取り付ける際には、第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5の2箇所の切り欠き部がそれぞれ側壁部31,32と対向する方向にして取り付けられる。そして、2つの側壁部31,32間の距離は、切り欠き部とは異なる位置における第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5の径よりも小さいため、いったん第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5をスペーサ3に取り付けた後は、振動等によって第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5が軸線Aに沿って回転したりすることを防止することができる。
【0080】
また、上記実施形態に係るコイル部品1は、上記のコイル2と、第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5を軸線A方向から挟み込む一対の磁性体コア部材6A,6Bと、を備える。これにより、部品を増やすことなくコイル巻線の絶縁性が向上されたスペーサ3を含んで構成されるコイル部品1を得ることができる。
【0081】
また、本発明に係るスイッチング電源装置100は、上記のコイル部品1を備えることにより、部品を増やすことなくコイル巻線の絶縁性が向上されたスペーサ3を含んで構成されるコイル部品1を用いたスイッチング電源装置100を得ることができる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。
【0083】
例えば、スペーサ3に設けられた突起部37A,37B,37C,38A,38B,38Cの位置は適宜変更することができる。また、突起部37A,37B,37C,38A,38B,38Cの数についても変更することができる。突起部は側壁部31,32のそれぞれに少なくとも一つずつ設けられていればよく、例えば、一方の側壁部には突起部が一つのみ設けられ、他方の側壁部には突起部が複数設けられていてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、突起部37Aと38A、37Bと38Bはそれぞれ軸線A方向の位置が同じである構成について説明したが、側壁部31に設けられた突起部と、側壁部32に設けられた突起部とは、その軸線A方向の位置が互いに異なる構成であってもよい。このような構成の場合、例えば、一つのコイル巻線を、一方側の突起部は上方から支持し、他方側の突起部は下方から支持するというような構成にすることもできる。
【0085】
また、スペーサ3は、上記実施形態で示した側壁部31,32、連結部33,34、突起部37A,37B,37C,38A,38B,38C、ガイド部33A,34Aに加えて、他の機能を備えることとしてもよい。図12は、スペーサ3の変形例を説明する斜視図である。例えば、図12に示すスペーサ3のように、第2コイル巻線5の第1の端子部53に対して、第1の端子部71においてネジ75を介して接続する接続部材72がスペーサ3の連結部33の上面を通るように取り付けられる場合、この接続部材72を位置決めするための突起部39A,39Bを接続部材72の形状に応じて設けることもできる。この場合、連結部33の上面に取り付けられる接続部材72は、突起部39A,39Bにより振動等による移動が抑制される。なお、当然ながら突起部39A,39Bを設ける位置や形状等は適宜変更することができる。
【0086】
図13は、スペーサ3の他の変形例を説明する図であり、図2のIIIB−IIIB矢視図に対応する図である。図13に示すスペーサ3のように、側壁部31,32から上方に伸び、先端が鉤状に折れ曲がっている鉤部39C,39Dを連結部33の上方に設け、この鉤部39C,39Dと連結部33との間にもコイル巻線を載置する構成とすることもできる。
【0087】
また、上記実施形態では、スペーサ3の連結部33,34がリング状である場合について説明したが、連結部33,34は、側壁部31,32の端部同士を接続すればよく、その形状は上記に限定されない。ここでいう「端部」とは、側壁部31,32の端縁近傍を指す。すなわち、側壁部31,32の端縁よりも内側において、側壁部31,32が連結部33,34により連結されていてもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、すなわち第1コイル巻線4に設けられた対向する2箇所の切り欠き部と、第2コイル巻線5に設けられた対向する2箇所の切り欠き部とは、それぞれ互いに平行な直線状である構成について説明したが、対向する2箇所の切り欠き部は互いに平行である必要はなく、例えば、ハの字状に切り欠き部を設けることとしてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、側壁部31と側壁部32との間の距離が、第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5の最小径(すなわち第1コイル巻線4の切り欠き部間の距離であり、且つ、第2コイル巻線5の切り欠き部間の距離)と略同一である構成について説明したが、側壁部31と側壁部32との間の距離は、コイル巻線に設けられた2つの切り欠き部間の距離よりも大きく、これらの切り欠き部の端部同士を結ぶ直線のうち最も長い直線の長さよりも小さいことが好ましい。なお、「切り欠き部間の距離」とは、軸線Aの方向からコイル巻線を見たときに、スペーサ3へのコイル巻線の挿入方向に対して垂直な方向に沿った切り欠き部間の距離のうち最大値を指す。
【0090】
具体的には、例えば、上記実施形態では、図7(a)に示す第2コイル巻線5の切り欠き部56Aの端56A1,56A2、及び切り欠き部56Bの端56B1,56B2のうちの2点ずつを結ぶ直線のうち最も長い直線(この場合は、直線56A156B2及び直線56A256B1)よりも側壁部31,32との間の距離を小さくした場合には、第2コイル巻線5が軸線の周りを1周回転することが抑制される。また、側壁部31,32との間の距離を第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5の最小径に近づけることで、コイル巻線の回転を更に抑制することができる。
【0091】
また、上記実施形態では、スペーサ3が軸線Aに関して2回対称であると共に軸線A方向に垂直な直線L1に関して2回対称である(すなわち、上下左右が対称である)場合について説明したが、対称であることは必須ではない。ただし、軸線Aに関して2回対称であると共に軸線A方向に垂直な直線L1に関して2回対称である場合には、スペーサ3の上下左右方向を考慮する必要がなくなるため、組立時の作業性が向上する。
【0092】
また、上記実施形態において説明したコイル部品1では、スペーサ3に対して第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5という2つのコイル巻線が取り付けられる構成について説明したが、コイル巻線は1つでもよく、逆に3つ以上であってもよく、コイル巻線の巻回数が1ターン以上あればよい。またコイル巻線を構成する巻線部材の形状は有端リング状に限られず、例えばエッジワイズコイルのような形状であってもよい。また、上記実施形態では円環状をなすコイル巻線について説明したが、コイル巻線の形状は、例えば中央部に開口を有する矩形状であってもよい。すなわち、スペーサ3に対して挿入可能な形状であれば、コイル巻線の形状は特に限定されない。
【0093】
また、上記実施形態では、ネジ21による固定によって、開口(図3(b)の開口39)内での側壁部31,32の延在方向に沿った第1コイル巻線4及び第2コイル巻線5の移動を規制した構成について説明したが、コイル巻線の形状を変更することで、スペーサ3に対してコイル巻線を取り付けた際の開口内におけるコイル巻線の移動を規制する構成とすることもできる。具体的には、スペーサ3の開口内にコイル巻線を挿入したときに、スペーサ3の側壁部31,32や連結部33,34の端縁と当接する突起部や切り欠き部を予め設けておくことにより、コイル巻線が開口内を通過してしまうことを防止することができる。
【0094】
また、上記実施形態のコイル部品1では、側壁部31,32が磁性体コア部材6Aの外脚に対応する位置に設けられているが、この配置とは異なる位置に側壁部31,32を設ける態様としてもよい。
【0095】
また、一対の磁性体コア部材6A,6Bの形状は、上記実施形態に示したいわゆるEI型の形状に限られない。例えば、磁性体コア部材6A,6Bの双方が1本の主脚と2本の外脚を備えるいわゆるEE型の形状や、磁性体コア部材6Aが1本の主脚と1本の外脚を備えるいわゆるUI型の形状等であってもよいし、主脚、外脚とも備えていない空芯コアとすることもできる。
【0096】
また、スイッチング電源装置の構成は図10,11に限られない。すなわち、本実施形態に係るコイル部品1は、例えばインバータ等にも好適に用いられる。また、スイッチング電源装置100においてコイル部品1が用いられるのはチョークコイル170に限られず、メイントランス140に対しても好適に用いられる。
【0097】
(変形例)
次に、コイル部品の他の形状として、スペーサにストッパー部が設けられると共に、コイル巻線に当接部が設けられた構成について、図14〜図21を用いて説明する。
【0098】
図14〜図21は、上記実施形態の図2〜図9に対応する図である。すなわち、図14は、変形例に係るスペーサ及び第1コイル巻線の構成と、第1コイル巻線の取り付け方法と、を説明する斜視図である。図15は、図14のスペーサの構成を説明する図であり、図15(a)は、スペーサの平面図であり、図15(b)は、図14のXVB−XVB矢視図である。図16は、第1コイル巻線の構成を説明する図であり、図16(a)は、第1コイル巻線の平面図であり、図16(b)は、第1コイル巻線の底面図である。図17は、スペーサと第1コイル巻線とからなる部品の構成と、このスペーサに対する第2コイル巻線の取り付け方法と、を説明する斜視図である。図18は、図17のXVIII−XVIII矢視図である。図19は、第2コイル巻線の構成を説明する図であり、図19(a)は、第2コイル巻線の平面図であり、図19(b)は、第2コイル巻線の底面図である。図20は、スペーサと第1コイル巻線とからなる部品に第2コイル巻線を取り付けたコイルの斜視図である。そして、図21は、図20のXXI−XXI矢視図である。
【0099】
まず図14及び図15に示すように、スペーサ3Aには、第1コイル巻線4Aの軸線A方向(図2の上下方向)に沿って延びる2つの側壁部31,32の軸線A側の面に、突起部37A,37B,38A,38Bの他に、ストッパー部37D,37E,38D,38Eが設けられている。ストッパー部37D及び38Dは、図14において突起部37C及び38Cより下方(連結部34側)であって、第1コイル巻線4Aが取り付けられる位置に設けられる。
【0100】
これに対して、第1コイル巻線4Aの巻線部材42には、図16に示すように、切り欠き部47A上に、ストッパー部37Dの形状に対応した形状に切り欠かれた当接部47Cが設けられると共に、切り欠き部47B上に、ストッパー部38Dに対応した形状に形成された当接部47Dが設けられている。このうち、切り欠き部47Aと当接部47Cとの段差となる領域は、ストッパー部37Dのうち、スペーサ3Aの中心側の面37Fと当接するように形成されている。したがって、切り欠き部47Aは、ストッパー部37Dではなく、側壁部31の面31Aと当接するように形成されている。一方、当接部47Dは、側壁部32に設けられたストッパー部38Dのうち、スペーサ3Aの外側の面(側壁部31側においてストッパー部37Dの面37Fと対向する面に対応する)と当接するように形成されていて、切り欠き部47Bは、ストッパー部38Dと当接するように形成されている。
【0101】
これにより、スペーサ3Aに対して第1コイル巻線4Aが挿入されて、軸線Aが一致するように取り付けられると、ストッパー部37Dに対して当接部47Cが噛み合うと共に、ストッパー部38Dに対して当接部47Dが当接した状態となると共に、図18に示すようにコイル巻線4Aがスペーサ3Aに保持された状態となる。これにより振動等によって第1コイル巻線Aが軸線に沿って回転したりすることをより効果的に防止することができると共に、コイルを製造する過程において、第1コイル巻線4Aとスペーサ3Aの位置決めが容易になり、製造上の作業性が向上する。また、軸線A方向から見たときに、第1コイル巻線4Aにおいて、ストッパー部37Dに対して当接部47Cが噛み合う方向と、ストッパー部38Dに対して当接部47Dが当接する方向と、が互いに異なるため、軸線A方向に沿った回転をより効果的に抑制することができると共に軸線Aからの軸ずれを効果的に抑制することができる。
【0102】
また、ストッパー部37E及び38Eは、図14において突起部37A及び突起部38Aより上方(連結部33側)であって、第2コイル巻線5Aが取り付けられる位置に設けられる。そして、図17及び図19に示すように、第2コイル巻線5Aには、切り欠き部56A上に、ストッパー部37Eの形状に対応した形状に切り欠かれた当接部56Cが設けられると共に、切り欠き部56B上に、ストッパー部38Eに対応した形状に形成された当接部56Dが設けられている。
【0103】
このうち、当接部56Cは、当接部47Cと同様に、ストッパー部37Eのうちスペーサ3Aの外側の面と当接するように形成されていて、切り欠き部56Aは、ストッパー部37Eと当接するように形成されている。一方、切り欠き部56と当接部56Dとの段差となる領域は、ストッパー部38Eのうち、スペーサ3Aの中心側の面と当接するように形成されている。したがって、切り欠き部56Bは、ストッパー部38Eではなく、側壁部32の面32Aと当接するように形成されている。
【0104】
これにより、スペーサ3A及び第1コイル巻線4Aからなる部品7Aに対して第2コイル巻線5Aが挿入されて、軸線Aが一致するように取り付けられると、ストッパー部37Eに対して当接部56Cが当接すると共に、ストッパー部38Eに対して当接部56Dが噛み合った状態となると共に、図20及び図21に示すように第2コイル巻線5Aがスペーサ3Aに保持された状態となる。これにより振動等によって第2コイル巻線5Aが軸線に沿って回転したりすることをより効果的に防止することができる。また、第2コイル巻線5Aにおいても、第1コイル巻線4Aと同様に、軸線A方向から見たときに、ストッパー部37Eに対して当接部56Cが当接する方向と、ストッパー部38Eに対して当接部56Dが当接する方向と、が互いに異なるため、軸線A方向に沿った回転や軸ずれをより効果的に抑制することができる。更に、コイルを製造する過程において、第1コイル巻線4Aとスペーサ3Aの位置決めが容易になり、また、第2コイル巻線5Aとスペーサ3Aの位置決めも容易になることから、製造上の作業性が向上する。
【0105】
なお、ストッパー部37D,37E,38D,38Eの形状及びこれらのストッパー部を設ける位置は上記の変形例の形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。またストッパー部の位置及び形状に対応させて第1コイル巻線4A及び第2コイル巻線5Aの当接部の位置及び形状を適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0106】
1…コイル部品、2,2A…コイル、3,3A…スペーサ、4,4A…第1コイル巻線、5,5A…第2コイル巻線、6A,6B…磁性体コア部材、31,32…側壁部、33,34…連結部、33A,4A…ガイド部、35,36…開口、37A,37B,38A,38B…突起部、37D,37E,38D,38E…ストッパー部、41,42,51,52…巻線部材、46B,47A,47B,56A,56B,57A,57B…切り欠き部、47C,47D,56C,56D…当接部、100…スイッチング電源装置、140…メイントランス、170…チョークコイル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を挟んで対向配置され、前記軸線の周りに1ターン以上巻回されたコイル巻線の外周面に沿って前記軸線方向に延びる絶縁性の2つの側壁部と、
前記2つの側壁部の端部のうち、前記軸線の延びる方向に沿って前記コイル巻線に対して同一の方向にある端部同士をそれぞれ連結すると共に、前記コイル巻線の一部を前記軸線方向から挟む絶縁性の2つの連結部と、
前記2つの側壁部の前記軸線側の面からそれぞれ互いに突出し、前記軸線方向に沿って隣接する前記コイル巻線の間を絶縁するための絶縁性の2つの突起部と、
を備えることを特徴とするスペーサ。
【請求項2】
前記2つの突起部は、前記軸線方向の位置が互いに等しいことを特徴とする請求項1記載のスペーサ。
【請求項3】
前記2つの側壁部、前記2つの連結部、及び前記2つの突起部は、その形状及び配置が前記軸線に対して2回対称であると共に、前記軸線に垂直に交わる線に対して2回対称であることを特徴とする請求項1又は2記載のスペーサ。
【請求項4】
前記2つの側壁部及び前記2つの連結部の少なくとも1つから外方へ突出し、前記コイル巻線を前記軸線方向から挟み込む一対の磁性体コア部材に対する位置決め用のガイド部をさらに備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のスペーサ。
【請求項5】
前記側壁部の前記軸線側の面の前記突起部とは異なる位置であって、前記軸線に垂直な方向から前記コイル巻線を挿入したときに前記コイル巻線に当接する位置に、ストッパー部が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のスペーサ。
【請求項6】
前記軸線の周りに1ターン以上巻回されたコイル巻線と、
請求項1〜5のいずれか一項に記載のスペーサと、を備えることを特徴とするコイル。
【請求項7】
前記コイル巻線は、板状の巻線が前記軸線方向に沿って複数連結されたものであって、前記軸線方向から見たときに、略円環状をなすと共に、外周の一部を直線状に切り欠いた切り欠き部が、前記軸線を挟んで2箇所設けられ、
前記2つの側壁部の前記軸線側の面の距離は、前記2箇所の切り欠き部間の距離よりも大きく、前記対向する2箇所の切り欠き部の端部同士を結ぶ直線のうち最も長い直線の長さよりも小さいことを特徴とする請求項6記載のコイル。
【請求項8】
前記軸線の周りに1ターン以上巻回されたコイル巻線と、
請求項5に記載のスペーサと、を備えるコイルであって、
前記コイル巻線は、
前記軸線が一致するように前記軸線に垂直な方向から前記スペーサに対して前記コイル巻線を挿入した際に、前記ストッパー部に当接する当接部を備える
ことを特徴とするコイル。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項に記載のコイルと、前記コイル巻線を前記軸線方向から挟み込む一対の磁性体コア部材と、を備えることを特徴とするコイル部品。
【請求項10】
請求項9記載のコイル部品を備えることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項1】
軸線を挟んで対向配置され、前記軸線の周りに1ターン以上巻回されたコイル巻線の外周面に沿って前記軸線方向に延びる絶縁性の2つの側壁部と、
前記2つの側壁部の端部のうち、前記軸線の延びる方向に沿って前記コイル巻線に対して同一の方向にある端部同士をそれぞれ連結すると共に、前記コイル巻線の一部を前記軸線方向から挟む絶縁性の2つの連結部と、
前記2つの側壁部の前記軸線側の面からそれぞれ互いに突出し、前記軸線方向に沿って隣接する前記コイル巻線の間を絶縁するための絶縁性の2つの突起部と、
を備えることを特徴とするスペーサ。
【請求項2】
前記2つの突起部は、前記軸線方向の位置が互いに等しいことを特徴とする請求項1記載のスペーサ。
【請求項3】
前記2つの側壁部、前記2つの連結部、及び前記2つの突起部は、その形状及び配置が前記軸線に対して2回対称であると共に、前記軸線に垂直に交わる線に対して2回対称であることを特徴とする請求項1又は2記載のスペーサ。
【請求項4】
前記2つの側壁部及び前記2つの連結部の少なくとも1つから外方へ突出し、前記コイル巻線を前記軸線方向から挟み込む一対の磁性体コア部材に対する位置決め用のガイド部をさらに備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のスペーサ。
【請求項5】
前記側壁部の前記軸線側の面の前記突起部とは異なる位置であって、前記軸線に垂直な方向から前記コイル巻線を挿入したときに前記コイル巻線に当接する位置に、ストッパー部が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のスペーサ。
【請求項6】
前記軸線の周りに1ターン以上巻回されたコイル巻線と、
請求項1〜5のいずれか一項に記載のスペーサと、を備えることを特徴とするコイル。
【請求項7】
前記コイル巻線は、板状の巻線が前記軸線方向に沿って複数連結されたものであって、前記軸線方向から見たときに、略円環状をなすと共に、外周の一部を直線状に切り欠いた切り欠き部が、前記軸線を挟んで2箇所設けられ、
前記2つの側壁部の前記軸線側の面の距離は、前記2箇所の切り欠き部間の距離よりも大きく、前記対向する2箇所の切り欠き部の端部同士を結ぶ直線のうち最も長い直線の長さよりも小さいことを特徴とする請求項6記載のコイル。
【請求項8】
前記軸線の周りに1ターン以上巻回されたコイル巻線と、
請求項5に記載のスペーサと、を備えるコイルであって、
前記コイル巻線は、
前記軸線が一致するように前記軸線に垂直な方向から前記スペーサに対して前記コイル巻線を挿入した際に、前記ストッパー部に当接する当接部を備える
ことを特徴とするコイル。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項に記載のコイルと、前記コイル巻線を前記軸線方向から挟み込む一対の磁性体コア部材と、を備えることを特徴とするコイル部品。
【請求項10】
請求項9記載のコイル部品を備えることを特徴とするスイッチング電源装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2011−228675(P2011−228675A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72820(P2011−72820)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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