説明

スマートキーレスエントリシステム

【課題】所謂リレーアタックを防止して、防盗性を向上させたスマートキーレスエントリシステムを提供する。
【解決手段】車両14の近傍に存在する人物が、正規ユーザーUであるか、第一盗難者であるかを判定するなりすまし判定手段50及び60が、車両14と携帯機15との両方に設けられている。
なりすまし判定手段50,60は、車両14の近傍に居る者が持つ中継機が、携帯機15でないか、或いは、携帯機15を保有する正規ユーザーUが、車両14の近傍に存在しないと判定した場合に、車両14のドア3,3のドアロックアクチュエータ7,7に、ドアロック駆動ドライバ回路51から、解錠信号を送信させずに、解錠が行われないように阻止するドア解錠阻止部52を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、車両とユーザーが携帯可能な携帯機との間で双方向に交信して、識別コードを照合確認した後に車両のドアの施錠・解錠を行うスマートキーレスエントリシステムに関し、特に、防盗機能を向上させたスマートキーレスエントリシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図11又は図12に示すようなスマートキーレスエントリシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
まず、構成から説明すると、このスマートキーレスエントリシステムでは、車両1と正規ユーザーUの携帯する携帯機2との間で、双方向通信が行われることにより、車両1のドア3,3の施錠・解錠を行う車両用施錠装置4に用いられる。
【0004】
すなわち、この従来のスマートキーレスエントリシステムでは、車両1に搭載された制御部6に、正規ユーザーUによって外部から送信される信号に応じて、ドアロックアクチュエータ7,7の施錠・解錠を行う車両用施錠装置4と、エンジンスタート信号に基づいてエンジンを始動させるエンジンスタータ装置5と、ドア3の外側面に設けられたドアノブ部10等に設定されるドアリクエストスイッチ(リクエスト信号送信操作手段)8とが、主に接続されている。
【0005】
この車両用施錠装置4の制御部6には、車両1の固有の識別コードが記憶されることで、前記施錠・解錠の許可が行われる他、エンジン始動の判断を行う機能が設けられている。
【0006】
この車両1側に搭載された制御部6には、車両アンテナ部(携帯機リクエスト信号送信手段)9が接続されている。
【0007】
そして、この制御部6では、受信された信号に載せられた識別コードに基づいて、前記ドア3,3の鍵の施錠及び解錠が、前記ドアロックアクチュエータ7,7で行われる際に、前記車両1に固有の識別コードと同一の識別コードであるか否かが照合されて、照合が一致した場合に、解錠の許可が行われるように構成されている。
【0008】
また、乗員乗車時には、前記識別コードの一致により、前記エンジンスタータ装置5にエンジンスタートの許可が行われるように構成されている。
【0009】
更に、正規ユーザーUの携帯する携帯機2側には、キーアンテナ部(識別コード信号送信手段)11と、前記車両1の固有の識別コードと同一の識別コードを記憶収容するキーID記憶部12と、携帯機2側から、正規ユーザーUの操作により、ドア3の施錠及び解錠を行うキー側リクエストスイッチ13と、が設けられている。
【0010】
そして、車両アンテナ部9から送信されるリクエスト信号(LF信号:Low Frequency;車両アンテナ部9からの到達距離は、約1m)に応じて、携帯機2側のキーアンテナ部11が介在されて、正規ユーザーU側で受信された後、前記キーID記憶部12に記憶された識別コード信号を、前記長距離信号(RF信号:Radio Frequency;高周波で、長い到達距離を有する)に載せて、車両1側に返信することにより、車両1と携帯機2との間で双方向に交信が行われ、前記照合が行えるように構成されている。
【0011】
次に、この従来のスマートキーレスエントリシステムの作用効果について説明する。
【0012】
すなわち、この従来のスマートキーレスエントリシステムでは、まず、リモコンエントリ機能の一方向通信によるリモコン動作として、前記キー側リクエストスイッチ13が、正規ユーザーUによって押圧されると、前記キーID記憶部12に記憶された識別コード信号が、前記RF信号に載せられて、前記携帯機2側のキーアンテナ部11から、前記車両1側に送信される。
【0013】
前記車両1側では、前記車両アンテナ部9で、このRF信号を受信すると、前記制御部6にこのRF信号が送られて、前記制御部6に記憶された車両1の固有の識別コードと、この受信した識別コード信号とが照合される。
【0014】
そして、照合が一致した場合に、車両1のドア3,3が前記ドアロックアクチュエータ7,7によって解錠される。
【0015】
次に、この従来のスマートキーレスエントリシステムで、前記ドア3の施錠及び解錠を双方方向通信によって行う場合について説明する。
【0016】
このスマートキーレスエントリシステムでは、例えば、車両1のドアノブ部10に設置されたドアリクエストスイッチ8を正規ユーザーUが操作すると、車両1側の車両アンテナ部9から、リクエスト信号としてのLF信号が送信される。
【0017】
携帯機2側では、前記キーアンテナ部11でこのリクエスト信号を受信すると、レスポンス信号(RF信号)と共に、識別コード信号を車両1側に返信する。
【0018】
そして、この識別コード信号の識別コードと、車両1側の制御部6で記憶されている固有の識別コードとが照合されて、照合が一致した場合に、車両1のドアの施錠・解錠が行われる。
【0019】
前記車両1と携帯機2との間で双方向に交信可能となる距離は、前記LF信号の到達距離が制限されているため、前記ドア3の車両アンテナ部9から約1mの範囲内である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2006−144259号公報(第0011段落乃至第0029段落、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、このように構成された従来のスマートキーレスエントリシステムでは、正規ユーザーUが、携帯機2側のキー側リクエストスイッチ13を操作しなくても、所謂「リレーアタック」という方法で識別コードの照合が行われて、ドア解錠及びエンジン始動まで行われてしまう可能性があった。
【0022】
すなわち、図12に示すように、携帯機2を持った正規ユーザーUが、車両1から離れている際に、第一盗難者K1が、車両1に近づき、ドアノブ部10へ内蔵されたドアリクエストスイッチ8を操作すると、車両アンテナ部9からリクエスト信号(LF信号)が送信される。
【0023】
前記第一盗難者K1が保有している第一中継機J1は、このLF信号を受信して、それを復調してからRF信号へ変調して、このRF信号を発信する。
【0024】
第二盗難者K2が保有する第二中継機J2は、このRF信号を受信して復調し、リクエスト信号(LF信号)へ再度変調する。
【0025】
この第二中継機J2を保有する第二盗難者K2が、正規ユーザーUへ近寄ることで、この正規ユーザーUが前記車両1から離れていても、保有する携帯機2は、このLF信号を近距離で受信してRF信号をレスポンスする。
【0026】
従って、正規ユーザーUが、前記キー側リクエストスイッチ13を用いて解錠操作及びエンジン始動操作すること無く、気づかれないうちに、車両1の車両アンテナ部9が、前記正規の識別コードが載った前記RF信号を受信して、前記ドア3,3の解錠及びエンジン始動が可能となるおそれがあった。
【0027】
そこで、この本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、所謂リレーアタックを防止して、防盗性を向上させたスマートキーレスエントリシステムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0028】
このような課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両とユーザーの携帯する携帯機との間で、双方向通信が行われて、車両のドアの施錠・解錠が行われるスマートキーレスエントリシステムのうち、第一盗難者と第二盗難者からなるリレー中継盗難手口に対応したスマートキーレスエントリシステムに用いられて、
前記リレー中継盗難手口は、前記第一盗難者が第一中継機を用いて、正規ユーザーになりすまし、第二盗難者の保有する第二中継機に対して、車両から送られてくるLF信号を変換して得られるRF信号を送出すると共に、該第二中継機が、再度第一盗難者に送られたLF信号に変換して、該第二中継機を保有する第二盗難者が、接近した正規ユーザーの保有する携帯機に、車両からのLF信号に模して送出し、該携帯機に記憶された固有の識別コードを、該携帯機から発信されるRF信号に載せて、前記車両に返信することで、あたかも車両の近傍に存在する人物が携帯機から正規の識別コードを返信しているかのように、なりすます盗難手口に対応したスマートキーレスエントリシステムであって、
前記車両の近傍に存在する人物が、正規ユーザーであるか、第一盗難者であるかを判定するなりすまし判定手段を、前記車両と前記携帯機との両方に設けると共に、該なりすまし判定手段で、車両の近傍に居る者が持つ中継機が、前記携帯機でないか、或いは、前記携帯機を保有する該正規ユーザーが、車両の近傍に存在しないと判定した場合に、車両のドアの解錠を行わないドア解錠阻止部とを有するスマートキーレスエントリシステムを特徴としている。
また、請求項2に記載されたものは、前記なりすまし判定手段では、前記携帯機に、車両から送られてくるLF信号によって、返信する場合に、送信されるRF信号の出力値を、前記車両から出力されるLF信号の到達距離程度の到達距離となるように低下させるRF信号強度設定部が設けられている請求項1記載のスマートキーレスエントリシステムを特徴としている。
更に、請求項3に記載されたものは、前記なりすまし判定手段では、前記携帯機に、返信するデータに付加するLF信号を受信してから、RF信号を出力するまでの応答時間を応答時間データとして計測する応答時間計測部と、該応答時間計測部で、計測された該応答時間データを前記RF信号に付加して、返信する携帯機応答時間付加部とを有すると共に、前記車両には、前記LF信号を発信してから、前記RF信号を受信するまでに要した返信時間の計測を行う返信時間計測部と、前記応答時間データと、該返信時間計測部によって計測された返信時間と、を比較して、正規ユーザーであるか否かを、判定する反応時間比較判定部を設けた請求項1記載のスマートキーレスエントリシステムを特徴としている。
【発明の効果】
【0029】
このように構成された請求項1記載の発明では、前記接近した正規ユーザーの保有する携帯機に、車両からのLF信号が送出されると、該携帯機に記憶された固有の識別コードが、該携帯機から発信されるRF信号に載せられて、前記車両に返信される。
このため、前記車両に固有の識別コードと、携帯機に記憶された固有の識別コードとが一致して、前記ドアの鍵の施錠及び解錠や、或いは、エンジン始動が行えるようになる。
そして、前記なりすまし判定手段で、車両の近傍に居る者が持つ中継機が、前記携帯機でないか、或いは、前記携帯機を保有する該正規ユーザーが、車両の近傍には、存在しないと判定した場合には、車両のドアの解錠が行われないように、前記ドア解錠阻止部が、前記ドアの鍵の施錠及び解錠や、或いは、エンジン始動を阻止する。
このため、所謂リレーアタックという方法では、識別コードの照合が行われる際に、前記なりすまし判定手段で、なりすましが行われていると判定されて、前記ドア解錠阻止部によるドアの解錠が行われない。
従って、前記車両のドアは、開放不能であり、エンジンの始動も出来ないので、防盗機能を向上させることができる。
また、請求項2に記載されたものは、前記なりすまし判定手段のRF信号強度設定部が、前記携帯機に、車両から送られてくるLF信号によって返信する場合に、送信されるRF信号の出力値が、前記車両から出力されるLF信号の到達距離程度の到達距離となるように、低く設定される。
このため、車両の近傍に存在する者が正規ユーザーになりすましても、車両までの到達距離を有していないRF信号が、遠距離に存在する正規ユーザーの携帯機から出力されて、車両側では受信できない。
従って、なりすまし盗難手口では、解錠してドアを開放することが出来ず、所謂リレーアタックが防止されて、防盗性が向上される。
更に、請求項3に記載されたものは、前記携帯機に設けられた前記なりすまし判定手段の応答時間計測部によって、返信するデータに付加するLF信号が受信されてから、RF信号が出力されるまでの応答時間が応答時間データとして計測される。
前記携帯機の携帯機応答時間付加部では、該応答時間計測部で、計測された応答時間データが、前記RF信号に付加されて、前記車両に返信される。
前記車両では、前記返信時間計測部によって、前記LF信号が発信されてから、前記RF信号が受信されるまでに要した時間の計測が行われる。
そして、前記反応時間比較判定部によって、前記応答時間データと、該返信時間計測部で計測された時間とが比較されて、前記応答時間データと、該返信時間計測部で計測された時間とが、一致する場合は、盗難者の中継機が介在していないことから、正規ユーザーであると判定されると共に、前記応答時間データよりも、前記返信時間計測部で計測された時間が長い等、著しく相違する場合には、盗難者の中継機が介在していて、正規ユーザーでないと判定される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の最良の実施の形態のスマートキーレスエントリシステムを示す模式な車両の側面図である。
【図2】この発明の最良の実施の形態の実施例1のスマートキーレスエントリシステムのリレーアタック盗難手口を説明する模式的な斜視図である。
【図3】この発明の最良の実施の形態の実施例1のスマートキーレスエントリシステムの構成を示すブロック図である。
【図4】この発明の最良の実施の形態の実施例1のスマートキーレスエントリシステムの動作を説明するフローチャート図である。
【図5】この発明の最良の実施の形態の実施例2のスマートキーレスエントリシステムのリレーアタック盗難手口を説明する模式的な斜視図である。
【図6】この発明の最良の実施の形態の実施例2のスマートキーレスエントリシステムの構成を示すブロック図である。
【図7】この発明の最良の実施の形態の実施例2のスマートキーレスエントリシステムの動作を説明するフローチャート図である。
【図8】この発明の最良の実施の形態の実施例3のスマートキーレスエントリシステムのリレーアタック盗難手口を説明する模式的な斜視図である。
【図9】この発明の最良の実施の形態の実施例3のスマートキーレスエントリシステムの構成を示すブロック図である。
【図10】この発明の最良の実施の形態の実施例3のスマートキーレスエントリシステムの動作を説明するフローチャート図である。
【図11】従来例のスマートキーレスエントリシステムを示す模式な車両の側面図である。
【図12】従来例のスマートキーレスエントリシステムで、全体の構成を説明する模式的な斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
次に、図面に基づいて、この発明を実施するための最良の実施の形態のスマートキーレスエントリシステムについて、説明する。
【0032】
なお、前記従来例と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0033】
図1乃至図10は、この発明の最良の実施の形態のスマートキーレスエントリシステムを示すものである。
【0034】
まず、全体の構成について説明すると、この実施の形態のスマートキーレスエントリシステムでは、車両14と正規ユーザーUの携帯する携帯機15との間で、双方向通信が行われて、車両14のドア3,3内部に設けられたドアロックアクチュエータ7,7によって、ドア3,3の施錠及び解錠が行われるように構成されている。
【0035】
すなわち、この実施の形態のスマートキーレスエントリシステムでは、車両14に搭載された制御部としてのスマートキーレスECU16に、正規ユーザーUによって外部から送信される信号に応じて、施錠・解錠の許可判断を行い、施錠・解錠信号を送出することにより、前記ドアロックアクチュエータ7,7の施錠・解錠動作を行わせるドアロック駆動機能と共に、エンジン始動の許可判断を行うエンジン始動許可機能とを有するCPU17が、設けられている。
【0036】
また、この実施の形態のスマートキーレスECU16には、エンジンスタート信号に基づいてエンジンを始動させるエンジンスタータ装置5と、ドア3の外側面に設けられたドアノブ部10等に設定されるドアリクエストスイッチ(リクエスト信号送信手段)8とが、接続されている。
【0037】
このスマートキーレスECU16のCPU17には、記憶部としてのEEPROM18が接続されている。このEEPROM18には、車両14の固有の識別コードが、記憶されていて、このCPU17により、読み出し可能となるように構成されている。
【0038】
この車両14側に搭載されたスマートキーレスECU16には、インターフェース部19を介して、車両アンテナ部としてのRFチューナー装置20が接続されている。
【0039】
このRFチューナー装置20は、前記インターフェース部19と、データ線20a及びRSSI線20bを介して接続されるチューナー側インターフェース部20cと、このチューナー側インターフェース部20cに対して、データ線20d及びRSSI線20eを介して接続されて、RFアンテナ部23で受信されたRF信号を復調するRF復調IC20fと、を有している。
【0040】
また、この車両14側に搭載されたスマートキーレスECU16には、LFアンテナ部22に送信信号を出力するLFアンテナドライバ21が、前記CPU17に接続されて設けられていて、携帯機としての携帯機15側に、リクエスト信号を送信するLFアンテナ部26が接続されている。
【0041】
そして、このスマートキーレスECU16では、前記ドア3,3の鍵の施錠及び解錠が、前記ドアロックアクチュエータ7,7で行われる際に、受信されたRF信号に載せられた識別コードが、前記車両1の前記EEPROM18に記憶されている固有の識別コードと、同一の識別コードであるか否かが照合される。
【0042】
そして、照合が一致した場合に、正規ユーザーUであると判断されて、解錠の許可が行われるように構成されている。
【0043】
更に、乗員乗車時には、車室内のアンテナにより、前記RF信号が受信されて、前記識別コードの一致が判断されることにより、前記エンジンスタータ装置5に対して、エンジンスタートの許可が行われるように構成されている。
【0044】
また、正規ユーザーUの携帯する前記携帯機15側には、前記リクエスト信号を受信するLFアンテナ部26に接続されて、復調を行うLF復調回路25が設けられている。
【0045】
このLF復調回路25は、データ線25a及びRSSI線25bを介して、携帯機側制御部としてのCPU27に接続されている。
【0046】
この実施の形態のCPU27は、RFアンテナ部(識別コード信号送信手段)28から、RF信号を送信させるRF送信回路29に接続されている。
【0047】
また、このCPU27には、前記車両14の固有の識別コードと同一の識別コードを記憶収容するメモリ等からなるキーID記憶部12が設けられていると共に、この携帯機15側から、正規ユーザーUの操作により、ドア3のドアロックアクチュエータ7,7の施錠及び解錠動作を行わせるキー側リクエストスイッチ13とが接続されて設けられている。
【0048】
次に、この実施の形態のスマートキーレスエントリシステムの一般的な動作に伴う作用効果について説明する。
【0049】
この実施の形態では、前記車両14側に設けられた前記ドアリクエストスイッチ8がON状態となると、前記LFアンテナドライバ21を介して、LFアンテナ部22からLF信号が送信される。
【0050】
前記携帯機15側では、このLF信号がLFアンテナ部26で受信されると、前記LF復調回路25で復調されて、前記CPU27に送られる。
【0051】
このCPU27では、正規ユーザーU側で受信されたLF信号に、前記キーID記憶部12に記憶された識別コード信号を載せて、前記RF送信回路29に送る。
【0052】
前記RF送信回路29では、前記RFアンテナ部28から車両14側に、RF信号を返信することにより、車両14と、この携帯機15との間で双方向に交信が行われ、前記照合が行われるように構成されている。
【0053】
このため、このようなスマートキーレスエントリシステムでは、図3に示すように、第一中継機J1を持つ第一盗難者K1と、第二中継機J2を持つ第二盗難者K2とからなるリレー中継盗難手口が考えられる。
【0054】
このリレー中継盗難手口に用いられる第一中継機J1には、CPU32に接続されて、前記リクエスト信号を受信するLF受信アンテナ部31が設けられることにより、リクエスト信号の復調を行うLF復調回路30が設けられている。
【0055】
このLF復調回路30は、RF送信回路33によって到達距離が比較的長いRF信号が生成されて、復調されたリクエスト信号をRF信号として、RF送信アンテナ部34から送信するように構成されている。
【0056】
また、このリレー中継盗難手口に用いられる第二中継機J2には、第一中継機J1から送信された前記RF信号を受信するRF受信アンテナ部44が設けられている。
【0057】
このRF受信アンテナ部44は、RF受信回路43を介して、CPU42に接続されている。
【0058】
このCPU42では、前記RF受信アンテナ部44で、前記第一中継機から送信されたRF信号が受信されると、LF信号が生成される。
【0059】
そして、このCPU42が接続されるLFドライブ回路40のLFアンテナ部41から、このLF信号を送信するように構成されている。
【0060】
次に、この実施の形態の想定する所謂リレーアタック盗難手口について説明する。
【0061】
この実施の形態では、図2に示すように、前記第一盗難者K1が、第一中継機J1を用いて、正規ユーザーUになりすまして、盗難しようとする車両14に近づく。
【0062】
そして、車両14から離れた場所に居る前記正規ユーザーUに近づいた第二盗難者K2の保有する第二中継機J2に対して、車両から送られてくるLF信号を変換して得られるRF信号を送出する。
【0063】
このRF信号を前記RF受信アンテナ部44で受信した前記第二中継機J2では、再度第一盗難者K1に車両14から送られたLF信号と同じ信号となるように、このRF信号が変換される。
【0064】
そして、この第二中継機J2を保有する第二盗難者K2が、接近した正規ユーザーUの保有する携帯機15に、車両14からのLF信号に模して、このLF信号を前記LFアンテナ部41から送出する。
【0065】
このLF信号を前記LFアンテナ部26で受信した前記携帯機15は、キーID記憶部12に記憶された固有の識別コードを、この携帯機15のRFアンテナ部28から発信されるRF信号に載せて、前記車両14に返信する。
【0066】
このため、あたかも車両14の近傍に存在する人物(第一盗難者K1)が、携帯機15から正規の識別コードを返信しているかのようになりすまして、車両14のドアロックを解錠したり、エンジンを始動したりすることが出来る。
【0067】
このような所謂リレーアタック盗難手口に対して、この実施の形態のスマートキーレスエントリシステムでは、前記スマートキーレスECU16のCPU17内、又は、携帯機15のCPU27内のうち、少なくとも何れか一方または両方に、前記車両14の近傍に存在する人物が、正規ユーザーUであるか、盗難者であるかを判定するなりすまし判定手段が設けられている。
【0068】
この実施の形態のなりすまし判定手段は、ドア解錠阻止部52を有している。
【0069】
このドア解錠阻止部52は、車両14の近傍に居る者が持つ中継機が、前記携帯機15でないか、或いは、前記携帯機15を保有する正規ユーザーUが、車両14の近傍に存在しないと判定した場合に、車両14のドア3,3のドアロックアクチュエータ7,7に、ドアロック駆動ドライバ回路51から、解錠信号を送信させずに、解錠が行われないように阻止するものである。
【0070】
また、この実施の形態では、前記車両14のCPU17に、エンジンスタータ装置5によるエンジンスタートを阻止するエンジンスタート阻止部56が設けられている。
【0071】
このエンジンスタート阻止部56は、前記なりすまし判定手段による判定が、正規ユーザーUである場合には、前記エンジンスタータ装置5によるエンジンスタートを許可すると共に、正規ユーザーUでない場合には、前記エンジンスタータ装置5によるエンジンスタートを阻止するように構成されている。
【実施例1】
【0072】
この実施の形態の実施例1のスマートキーレスエントリシステムでは、前記車両14側のCPU17には、なりすまし判定手段50が、又、前記携帯機15側のCPU27には、このなりすまし判定手段50と対となるなりすまし判定手段60が各々設けられている。
【0073】
このうち、前記なりすまし判定手段50として、前記車両14のCPU17には、前記携帯機15から送られてくるRF信号の受信強度を測定するRF信号受信強度測定回路53が設けられている。
【0074】
また、前記車両14のRFアンテナ部23で受信したRF信号に含まれるLF信号強度データを取り出すデータ取出部54が設けられている。
【0075】
そして、前記携帯機15で測定されたLF信号のLF信号強度データと、前記RF信号受信強度測定回路53で測定されたRF信号の受信強度とを比較する信号強度比較判定部55が設けられている。
【0076】
この信号強度比較判定部55は、送受信の信号強度が、送受信距離に反比例することに着目して、送受信の信号強度を比較することにより、前記車両の近傍に存在して、前記LF信号を受けた者が、RF信号を車両14に向けて送出した正規ユーザーUであるか否かが判定されるように構成されている。
【0077】
そして、正規ユーザーUである場合には、前記ドア解錠阻止部52に対して、前記ドアロック駆動ドライバ回路51が、前記ドアロックアクチュエータ7,7によるロック解除を許可すると共に、正規ユーザーUでない場合には、前記ドア解錠阻止部52に対して、前記ドアロック駆動ドライバ回路51が、前記ドアロックアクチュエータ7,7によるロック解除を阻止するように構成されている。
【0078】
また、前記携帯機15側のなりすまし判定手段60では、前記CPU27内に、前記LFアンテナ部26によって受信されたLF信号の信号強度を測定するLF信号受信強度測定回路61と、該測定されたLF信号強度を、LF信号強度データとして前記RF信号に載せて、前記車両に返信する合成返信回路62とが設けられている。
【0079】
次に、この実施例1のスマートキーレスエントリシステムの作用効果について、図4に示すフローチャートに沿って説明する。
【0080】
Step1で、車両側の車載機制御が開始されると、Step2では、リクエスト信号待ち状態となる。
【0081】
このリクエスト信号待ち状態で、前記ドアノブ部10に設けられたドアリクエストスイッチ8が押されたか否かが判断される。
【0082】
すなわち、Step3では、前記ドアリクエストスイッチ8が、ONとなると、次のStep4へ進み、前記ドアリクエストスイッチ8が、ONにならずに、OFFのままであると、Step2へ戻り、待機状態であるリクエスト信号待ち状態が維持される。
【0083】
Step4では、前記LFアンテナドライバ21が、前記LFアンテナ部22から、チャレンジ信号としてのLF信号を送信する。
【0084】
そして、Step5でRF信号の受信待ち状態となる。
【0085】
一方、前記携帯機15側では、Step6で、携帯機制御が開始されると、Step7で、前記LF信号を前記携帯機15側のLFアンテナ部26で受信するか、或いは、前記キー側リクエストスイッチ13がON入力されるかを待機する状態となる。
【0086】
Step8では、LF信号が受信されたか否かが判断される。
【0087】
前記LF信号を前記携帯機15側のLFアンテナ部26で受信した場合は、次のStep9へ進み、受信しない場合は、Step7に戻って、待機状態を維持する。
【0088】
Step9では、前記LFアンテナ部26で受信したLF信号を、前記LF復調回路25で復調して、LF復調信号に載せられた車両14の固有の識別コードが、前記携帯機15側に記憶された識別コードと一致するか否かが照合される。
【0089】
Step10では、LF復調信号に載せられた車両14の固有の識別コードが、前記携帯機15側に記憶された識別コードと一致する場合は、次のStep11に進み、一致しない場合は、Step7に戻る。
【0090】
Step11では、前記CPU27内に設けられて、前記LFアンテナ部26によって受信されたLF信号の信号強度を測定するLF信号受信強度測定回路61によって、受信したLF信号の電界強度が、RSSI(受信電力をDC電圧に変換した信号)レベルから計算される。
【0091】
Step12では、前記合成返信回路62によって、前記測定されたLF信号強度が、LF受信RSSIレベルを含むLF信号強度データと、携帯機15側の識別コードIDを含むレスポンスデータとして、合成されて、前記RF送信回路29のRFアンテナ部28から、RF信号に載せられて、前記車両14に返信される。
【0092】
Step13では、車両14側のRFアンテナ部23でRF信号が受信されると、Step14では、前記RF復調IC20fによって、RF信号からRSSIレベルとして、前記LF信号のRSSIレベルが復調される。
【0093】
このRSSIレベルは、前記データ線20d及びRSSI線20eを介して接続されるチューナー側インターフェース部20cから、前記データ線20a及びRSSI線20bによって、スマートキーレスECU16側のインターフェース部19へ伝えられる。
【0094】
Step15では、前記スマートキーレスECU16のなりすまし判定手段50に設けられたRF信号受信強度測定回路53によって、前記LF信号のRSSIレベルから携帯機15側のLFアンテナ部26が受信したLF信号の電界強度が計算される。
【0095】
Step16では、前記データ取出部54で、携帯機15が受信したLF信号の電界強度が取り出されて、この電界強度から車両14側のLFアンテナ部22と携帯機15との距離が計算される。
【0096】
Step17では、前記車両14側のRFアンテナ部23で受信されたRF信号のRSSIレベルから、RF電界強度が計算される。
【0097】
Step18では、このRF電界強度から、携帯機15と、車両14のRFアンテナ部との間の距離が計算される。
【0098】
そして、Step19では、前記なりすまし判定手段50の信号強度比較判定部55によって、LF信号から計算した距離と、RF信号から計算した前記各距離に、著しい差があるか否かが判定される。
【0099】
差がある場合には、Step2に戻り、リクエスト信号待機状態を維持すると共に、差がない場合には、次のStep20へ進む。
【0100】
Step20では、車両14のスマートキーレスECU16に設けられたEEPROM18に記憶された固有の識別コードが、前記携帯機15側に記憶された識別コードと一致するか否かが照合される。
【0101】
照合の結果、一致する場合は、Step21に進み、前記ドア解錠阻止部52に、ドアロック解除を許諾すると共に、前記エンジンスタート阻止部56に、前記エンジンスタータ装置5が用いられたエンジン始動制御が行えるように許諾する。
【0102】
このように、前記携帯機15に設けられた前記なりすまし判定手段60のLF信号受信強度測定回路61によって、前記LF信号の信号強度が測定されると、この測定されたLF信号強度が、前記合成返信回路62によって、LF信号強度データとして前記RF信号に載せられて、前記RFアンテナ部28から車両14に返信される。
【0103】
そして、前記車両14に設けられたRF信号受信強度測定回路53によって、携帯機15から送られてくるRF信号から受信強度が測定されると、前記携帯機15で測定されたLF信号のLF信号強度データと、このRF信号の受信強度とが、信号強度比較判定部55によって比較される。
【0104】
この比較により、前記LF信号強度データと、前記RF信号の受信強度とが、一致すれば、送受信距離が同じである。
【0105】
正規ユーザーUが携帯機15を保有して、車両14に近接して、ドアリクエストスイッチ8を押したり、或いはキー側リクエストスイッチを押したりする場合は、RF信号の道程距離とLF信号の道程距離とが一致する。
【0106】
このため、前記車両14の近傍に存在して前記LF信号を受けた者が、RF信号を車両14に向けて送出した正規ユーザーUであることが判定される。
【0107】
また、第一盗難者K1が車両14の近傍に存在して、正規ユーザーUが車両14から離れた場所に居る場合には、RF信号の道程距離とLF信号の道程距離とが一致せず、信号強度が異なる。
【0108】
このように、図1に示すように、第一盗難者K1,第二盗難者K2が居ない場合で、前記車両14に接近した正規ユーザーUの保有する携帯機15に、車両14からのLF信号が送出されると、この携帯機15側に記憶された固有の識別コードが、この携帯機15側から発信されるRF信号に載せられて、前記車両14に返信される。
【0109】
前記車両14では、前記EEPROM18に記憶された固有の識別コードと、携帯機15に記憶された固有の識別コードとが一致するので、前記ドア3,3のドアロック駆動ドライバ回路51を介して、ドアロックアクチュエータ7,7の施錠及び解錠が行われると共に、前記エンジンスタータ装置5を用いたエンジン始動制御を行うことが出来る。
【0110】
また、この比較により、前記LF信号強度データと、このRF信号の受信強度とが、一致せずに、前記LF信号強度データが、このRF信号の受信強度よりも強い場合には、LF信号を受信した第一中継機J1が、前記車両14の近傍に存在して、強い信号強度を有する前記LF信号を受けた者が、遠方でRF信号を車両14に向けて送出した正規ユーザーUになりすましている第一盗難者K1であり、遠方で、第二中継機J2を保有する第二盗難者K2に近づかれた正規ユーザーUではないことが判定される。
【0111】
このように、前記車両14側のなりすまし判定手段50で、車両14の近傍に居る者が持つ第一中継機J1が前記携帯機15でないか、或いは、前記携帯機15を保有する正規ユーザーUが車両14の近傍には存在しないことが、信号強度の相違で判定された場合には、車両14のドア3,3の解錠が行われないように、前記ドア解錠阻止部52が、前記ドアロック駆動ドライバ回路51によるドアロックアクチュエータ7,7を用いた鍵の施錠及び解錠を阻止すると共に、前記エンジンスタート阻止部56で、エンジンスタータ装置5を用いたエンジン始動を阻止する。
【0112】
このため、所謂リレーアタックという方法では、識別コードの照合が行われる際に、前記なりすまし判定手段50,60で、なりすましが行われていると判定されて、前記ドア解錠阻止部52によるドア3,3の解錠が行われない。
【0113】
従って、前記車両14のドア3,3は、開放不能であり、エンジンの始動も出来ないので、防盗機能を向上させることができる。
【0114】
他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【実施例2】
【0115】
図5乃至図7は、この発明の実施の形態の実施例2のスマートキーレスエントリシステムを示すものである。
【0116】
なお、前記実施の形態及び実施例1と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0117】
まず、構成について、前記実施例1との相違点を中心に説明すると、この実施例2の車両114のスマートキーレスエントリシステムでは、携帯機としての携帯機115側のCPU127に、なりすまし判定手段160としての応答時間計測部161が設けられている。
【0118】
この応答時間計測部161では、前記携帯機115に、返信するデータに付加するLF信号を受信してから、RF信号を出力するまでの応答時間を応答時間データとして計測するように構成されている。
【0119】
また、この携帯機115側のCPU127には、なりすまし判定手段160としての携帯機応答時間付加部162が設けられている。
【0120】
この携帯機応答時間付加部162では、前記応答時間計測部161で、計測された応答時間データを前記RF信号に付加して、返信するように構成されている。
【0121】
また、この実施例2の車両114側のなりすまし判定手段150には、返信時間計測部としてのタイマー部153が設けられると共に、返信時間計測部151が設けられている。
【0122】
この返信時間計測部151では、前記LF信号を発信してから、前記RF信号を受信するまでに要した返信時間の計測が行われるように構成されている。
【0123】
更に、この実施例2の車両114側のなりすまし判定手段150には、反応時間比較判定部152が設けられている。
【0124】
この反応時間比較判定部152では、前記応答時間データと、この返信時間計測部151によって計測された返信時間とを比較して、正規ユーザーUであるか否かが判定される様に構成されている。
【0125】
次に、この実施例2のスマートキーレスエントリシステムの作用効果について説明する。
【0126】
この実施例2では、図7中、Step101に示すように、車両114側の車載機の制御が開始されると、Step102では、リクエスト信号待ちの状態となる。
【0127】
リクエスト信号待ちの状態では、Step103で、前記ドアノブ部10に設けられたドアリクエストスイッチ8が押されたか否かが判断される。
【0128】
すなわち、このStep103では、前記ドアリクエストスイッチ8が、ONとなると、次のStep104へ進み、前記ドアリクエストスイッチ8が、ONにならずに、OFFのままであると、Step102へ戻り、待機状態であるリクエスト信号待ち状態が維持される。
【0129】
Step104では、前記LFアンテナドライバ21が、前記LFアンテナ部22から、チャレンジ信号としてのLF信号を送信する。
【0130】
この時点から、Step105では、前記タイマー部153が時間計測を開始する。
【0131】
そして、Step106で、RF信号の受信待ち状態となる。
【0132】
一方、前記携帯機115側では、Step104で携帯機制御が開始されると、Step108で、前記LF信号が前記携帯機115側のLFアンテナ部26で受信されるか、或いは、前記キー側リクエストスイッチ13がON入力されるかが待機される状態となる。
【0133】
Step109では、LF信号が受信されたか否かが判断される。
【0134】
前記LF信号を前記携帯機115側のLFアンテナ部26で受信した場合は、次のStep110へ進み、受信しない場合は、Step108に戻って待機状態を維持する。
【0135】
Step110では、前記LFアンテナ部26で受信したLF信号を、前記LF復調回路25で復調して、LF復調信号に載せられた車両114の固有の識別コードが、前記携帯機115側に記憶された識別コードと一致するか否かが照合される。
【0136】
Step111では、LF復調信号に載せられた車両114の固有の識別コードが、前記携帯機115側に記憶された識別コードと一致する場合は、次のStep112へ進み、一致しない場合は、Step108に戻る。
【0137】
Step112では、前記CPU127内に設けられたなりすまし判定手段160の応答時間計測部161で計測された応答時間が、前記携帯機応答時間付加部162で付加されて、識別コードIDを含むレスポンスデータとして合成されて、前記RF送信回路29のRFアンテナ部28から、RF信号に載せられて、前記車両114に返信される。
【0138】
Step113では、車両114側のRFアンテナ部23で、RF信号が受信されると、前記RF復調IC20fでは、RF信号から識別コードが復調されると共に、合成された応答時間データが復調される。
【0139】
そして、Step114では、前記タイマー部153の時間計測値が読み込まれる。
【0140】
Step115では、この復調されたタイマー値と、計測されたタイマー値とが比較されて、前記タイマー部153で計測された時間が妥当であるか否かかが判定される。
【0141】
すなわち、前記携帯機115側のRLアンテナ部28からRF信号が送信されるまでの時間が、前記車両114側のタイマー部153で計測された時間と一致する場合は、次のStep115へ進み、異なる場合は、Step102へ戻る。
【0142】
Step116では、車両114のスマートキーレスECU116に設けられたEEPROM18に記憶された固有の識別コードが、前記携帯機115側に記憶された識別コードと一致するか否かが照合される。
【0143】
照合の結果、一致する場合は、Step117に進み、前記ドア解錠阻止部52に、ドアロック解除を許諾すると共に、前記エンジンスタート阻止部56に、前記エンジンスタータ装置5が用いられたエンジン始動制御が行えるように許諾する。
【0144】
一致しない場合には、Step102へ戻り、リクエスト信号待ちの状態が維持される。
【0145】
このように、この実施例2では、前記携帯機115側のなりすまし判定手段160の応答時間計測部161によって返信するデータに付加するLF信号が受信されてから、RF信号が出力されるまでの応答時間が応答時間データとして計測される。
【0146】
前記携帯機115の携帯機応答時間付加部162では、応答時間計測部161で、計測された応答時間データが、前記RF信号に付加されて、前記車両114側に返信される。
【0147】
前記車両114では、前記タイマー部153によって、前記LF信号が発信されてから、前記RF信号が受信されるまでに要した時間の計測が行われる。
【0148】
そして、図6に示すように、前記反応時間比較判定部152によって、前記応答時間データと、このタイマー部153で計測された時間とが比較されて、前記応答時間データと、このタイマー部153で計測された時間とが一致する場合は、盗難者の中継機が介在していないことから、正規ユーザーUであると判定されると共に、前記応答時間データよりも前記タイマー部153で計測された時間が長い等、著しく相違する場合には、第一盗難者K1,第二盗難者K2の第一中継機J1,第二中継機J2が介在していて、正規ユーザーUが車両114から離れた状態で前記携帯機115からレスポンス信号を送信していると判定されて、車両114の近傍に前記正規ユーザーUがいないと判定される。
【0149】
他の構成及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【実施例3】
【0150】
図8乃至図10は、この発明の実施の形態の実施例3のスマートキーレスエントリシステムを示すものである。
【0151】
なお、前記実施の形態及び実施例1及び2と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0152】
まず、構成について、前記実施例1及び2との相違点を中心に説明する。
【0153】
この実施例3の車両214のスマートキーレスエントリシステムでは、車両214側のスマートキーレスECU216に、なりすまし判定手段250としてのLF信号強度設定部251が設けられている。
【0154】
このLF信号強度設定部251は、前記LFアンテナ部22から送信されるLF信号の強度を一定に保持すると共に、このLFアンテナ部22からの離間距離の増大に応じて減衰するように、LFアンテナドライバ21に信号を送出するように構成されている。
【0155】
また、この実施例3の車両214のスマートキーレスエントリシステムでは、携帯機としての携帯機215側のCPU227に、なりすまし判定手段260としてのRF信号強度設定部261が設けられている。
【0156】
このRF信号強度設定部261は、車両から送られてくるLF信号によって、返信する場合に、送信されるRF信号の出力値を、前記車両214から出力されるLF信号の到達距離程度の到達距離となるように低下させるように構成されている。
【0157】
更に、この実施例3のなりすまし判定手段260には、距離計算部262が設けられている。
【0158】
この距離計算部262によって、前記測定されたLF信号強度から、車両214側のLFアンテナ部22と、携帯機215との間の距離が計算されると共に、距離データを生成するように構成されている。
【0159】
また、この実施例3では、前記キー側リクエストスイッチ13がON状態となって、前記RF信号を出力する場合は、送信されるRF信号の出力値を低下させることなく、そのまま出力するように構成されている。
【0160】
この実施例3では、前記LF信号の到達距離が、約0.5mである場合は、RF信号の到達距離も約0.5mとなるように設定されている。
【0161】
次に、この実施例3のスマートキーレスエントリシステムの作用効果について、図10に示すフローチャートに沿って説明する。
【0162】
Step201で、車両側の車載機制御が開始されると、Step202では、リクエスト信号待ち状態となる。
【0163】
このリクエスト信号待ち状態で、前記ドアノブ部10に設けられたドアリクエストスイッチ8が、押されたか否かが判断される。
【0164】
すなわち、Step203では、前記ドアリクエストスイッチ8が、ONとなると、次のStep204へ進み、前記ドアリクエストスイッチ8が、ONにならずに、OFFのままであると、Step202へ戻り、待機状態であるリクエスト信号待ち状態が維持される。
【0165】
Step204では、前記LFアンテナドライバ21が、前記LFアンテナ部22からチャレンジ信号としてのLF信号を送信する。
【0166】
そして、Step205でRF信号の受信待ち状態となる。
【0167】
一方、前記携帯機215側では、Step206で携帯機制御が開始されると、Step207で、前記LF信号を前記携帯機215側のLFアンテナ部26で受信するか、或いは、前記キー側リクエストスイッチ13がON入力されるかが、待機される状態となる。
【0168】
Step208では、LF信号が受信されたか否かが判断される。
【0169】
前記LF信号を前記携帯機215側のLFアンテナ部26で受信した場合は、次のStep209へ進み、受信しない場合は、Step207に戻って待機状態を維持する。
【0170】
Step209では、前記LFアンテナ部26で受信したLF信号を、前記LF復調回路25で復調して、LF復調信号に載せられた車両214の固有の識別コードが、前記携帯機215側に記憶された識別コードと一致するか否かが照合される。
【0171】
Step210では、LF復調信号に載せられた車両214の固有の識別コードが、前記携帯機215側に記憶された識別コードと一致する場合は、次のStep211に進み、一致しない場合は、Step207に戻る。
【0172】
Step211では、前記CPU227内に設けられて、前記LFアンテナ部26によって受信されたLF信号の信号強度を測定するRF信号強度設定部261によって、受信したLF信号の電界強度が、RSSI(受信電力をDC電圧に変換した信号)レベルから計算される。
【0173】
Step212では、前記距離計算部262によって、前記測定されたLF信号強度から、車両214側のLFアンテナ部22と、携帯機215との間の距離が計算される。
【0174】
この距離計算部262によって計算された距離は、距離データとして用いられて、前記RF送信回路29のRFアンテナ部28から返信されるRF信号の信号強度の設定に用いられる。
【0175】
すなわち、Step213では、この距離計算部262によって計算されて、生成された距離データが、前記RF信号強度設定部261で、設定されるRF信号の出力の設定に用いられて、所定の距離に応じたRF信号出力値がセットされる。
【0176】
Step214では、このRF信号をレスポンスデータとして、前記RF送信回路29のRFアンテナ部28から送信する。
【0177】
Step215では、このRF信号を受信出来れば、Step216に進み、車両14のスマートキーレスECU16に設けられたEEPROM18に記憶された固有の識別コードが、前記携帯機215側に記憶された識別コードと一致するか否かが照合される。
【0178】
照合の結果、一致する場合は、Step214に進み、前記ドア解錠阻止部52に、ドアロック解除を許諾すると共に、前記エンジンスタート阻止部56に、前記エンジンスタータ装置5が用いられたエンジン始動制御が行えるように許諾する。
【0179】
Step216で、照合の結果が一致しない場合には、Step202に戻り、リクエスト信号待ち状態を維持する。
【0180】
また、前記Step215で、RF信号が受信出来ない場合は、車両214のドア3近傍に居る第一盗難者K1が近い距離でLF信号を受信した為、返信されるRF信号の出力も弱く設定されて、ドア3から離れた正規ユーザーUが所持する携帯機からの出力では、車両214のRFアンテナ部23まで到達しなかったと考えられる。
【0181】
このため、前記ドア解錠阻止部52に、ドアロック解除を許諾しないと共に、前記エンジンスタート阻止部56に、前記エンジンスタータ装置5が用いられたエンジン始動制御が行われないようにする。
【0182】
このように、この実施例3では、前記なりすまし判定手段260のRF信号強度設定部261が、前記携帯機215に、車両214から送られてくるLF信号によって返信する場合に、前記車両214から出力されて来たLF信号の到達距離程度の到達距離となるように、送信されるRF信号の出力値が低く設定される。
【0183】
このため、車両214の近傍に存在する者が、正規ユーザーUになりすましても、車両214まで到達距離を有していないRF信号が、遠距離に存在する正規ユーザーUの携帯機215側から出力されて、到達せず、車両214側では受信できない。
【0184】
従って、なりすまし盗難手口では、解錠してドアを開放することが出来ず、所謂リレーアタックが防止されて防盗性が向上される。
【0185】
以上、この実施の形態及び実施例1乃至3を、図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例1乃至3に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0186】
即ち、前記実施の形態及び実施例1乃至3では、リクエスト信号送信手段として、ドアリクエストスイッチ8が設けられているが、特にこれに限らず、例えば、近接センサを、前記スマートキーレスECU16に接続して、正規ユーザーUが近接した場合、前記リクエスト信号を送信するようにしてもよい。
【0187】
更に、前記実施例2では、前記携帯機115側のなりすまし判定手段160の応答時間計測部161によって、返信するデータに付加するLF信号が受信されてから、RF信号が出力されるまでの応答時間が応答時間データとして計測されるように構成されているが、特にこれに限らず、例えば、携帯機115の携帯機応答時間付加部162では、応答時間計測部161で計測された応答時間データが、前記RF信号に付加されて、前記車両114側に返信されるものでなくても良く、前記車両114側の前記タイマー部153によって、前記LF信号が発信されてから、前記RF信号が受信されるまでに要した時間の計測が行われて、予め正規ユーザーUが、ドア3近傍の正規のドアロック解除位置に居て、携帯機115を用いた場合の時間と比較することにより、判定を行うように構成してもよい。
【0188】
この場合、前記携帯機115側のなりすまし判定手段160を簡略化若しくは省略出来るので、更に製造コストの上昇を抑制出来る。
【符号の説明】
【0189】
14,114,214 車両
15,115,215 携帯機
16,116,216 スマートキーレスECU(キー側の制御部)
17,117,217 CPU(車両側の制御部)
50,60,150,160,250,260
なりすまし判定手段
52 ドア解錠阻止部
53 RF信号受信強度測定回路
54 データ取出部
55 信号強度比較判定部
56 エンジンスタート阻止部
61 LF信号受信強度測定回路
62 合成返信回路
151 返信時間計測部
152 反応時間比較判定部
153 タイマー部
161 応答時間計測部
162 携帯機応答時間付加部
261 RF信号強度設定部
262 距離計算部
U 正規ユーザー
J1 第一中継機
J2 第二中継機
K1 第一盗難者
K2 第二盗難者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両とユーザーの携帯する携帯機との間で、双方向通信が行われて、車両のドアの施錠・解錠が行われるスマートキーレスエントリシステムのうち、第一盗難者と第二盗難者からなるリレー中継盗難手口に対応したスマートキーレスエントリシステムに用いられて、
前記リレー中継盗難手口は、前記第一盗難者が第一中継機を用いて、正規ユーザーになりすまし、第二盗難者の保有する第二中継機に対して、車両から送られてくるLF信号を変換して得られるRF信号を送出すると共に、該第二中継機が、再度第一盗難者に送られたLF信号に変換して、該第二中継機を保有する第二盗難者が、接近した正規ユーザーの保有する携帯機に、車両からのLF信号に模して送出し、該携帯機に記憶された固有の識別コードを、該携帯機から発信されるRF信号に載せて、前記車両に返信することで、あたかも車両の近傍に存在する人物が携帯機から正規の識別コードを返信しているかのように、なりすます盗難手口に対応したスマートキーレスエントリシステムであって、
前記車両の近傍に存在する人物が、正規ユーザーであるか、第一盗難者であるかを判定するなりすまし判定手段を、前記車両と前記携帯機との両方に設けると共に、該なりすまし判定手段で、車両の近傍に居る者が持つ中継機が、前記携帯機でないか、或いは、前記携帯機を保有する該正規ユーザーが、車両の近傍に存在しないと判定した場合に、車両のドアの解錠を行わないドア解錠阻止部とを有することを特徴とするスマートキーレスエントリシステム。
【請求項2】
前記なりすまし判定手段では、前記携帯機に、車両から送られてくるLF信号によって、返信する場合に、送信されるRF信号の出力値を、前記車両から出力されるLF信号の到達距離程度の到達距離となるように低下させるRF信号強度設定部を設けたことを特徴とする請求項1記載のスマートキーレスエントリシステム。
【請求項3】
前記なりすまし判定手段では、前記携帯機に、返信するデータに付加するLF信号を受信してから、RF信号を出力するまでの応答時間を応答時間データとして計測する応答時間計測部と、該応答時間計測部で、計測された該応答時間データを前記RF信号に付加して、返信する携帯機応答時間付加部とを有すると共に、前記車両には、前記LF信号を発信してから、前記RF信号を受信するまでに要した返信時間の計測を行う返信時間計測部と、前記応答時間データと、該返信時間計測部によって計測された返信時間とを比較して、正規ユーザーであるか否かを、判定する反応時間比較判定部を設けたことを特徴とする請求項1記載のスマートキーレスエントリシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−100717(P2013−100717A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−25871(P2013−25871)
【出願日】平成25年2月13日(2013.2.13)
【分割の表示】特願2008−293779(P2008−293779)の分割
【原出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】