説明

スライドヒンジユニット及び携帯端末

【課題】スライド構造が単純で部品数が少なく、組立て性や信頼性に優れ、スライド性能も優れた上下筐体が平面状になるスライドタイプの端末を提供する。
【解決手段】固定スライダと、第1の可動スライダと、第2の可動スライダとを有し、固定スライダと第1の可動スライダとは、いずれか一方に設けられたガイドと、いずれか他方に設けられガイドに沿って移動可能な被ガイド部とにより接続され、第1の可動スライダは固定スライダの面と平行に移動可能であり、第1の可動スライダと第2の可動スライダとは、スリットと、ピンとにより接続され、固定スライダと第2の可動スライダとは、第2の可動スライダを、第2の可動スライダの全体が固定スライダの面の上に位置する第1の向きに付勢するか、第2の可動スライダが固定スライダの面から離れる第2の向きに付勢する付勢手段により接続されることを特徴とするスライドヒンジユニットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドヒンジユニット及び携帯端末に関する。特に、上筐体と下筐体とをスライド移動させ、両筐体の上面が平面を形成することが可能なスライドヒンジ及びスライドヒンジを用いた携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯端末用途の多様化に伴い、携帯端末の主用途が従来の通話や短文メールの送受信から、長文メールや情報の閲覧の送受信に移行しつつあり、表示部及び操作部の面積が拡大された携帯端末が製造販売される傾向にある。
【0003】
もっとも、単純に表示部及び操作部の面積を拡大しただけでは、端末の外形が大きくなり携帯性が悪化してしまう。
【0004】
そこで、携帯端末の形状を、クラムシェルタイプ(二つ折り)やスライドタイプにすることにより、携帯端末の面積を使用時には大きくし、携帯時には小さくすることによって、操作性、携帯性の両立を図っている。このうち、一般的なクラムシェルタイプは開いたとき軸ヒンジ部分が目立ち、また、上下筐体が一体に見えないためデザイン上好ましくないとして、最近はスライドタイプの携帯端末が好まれる傾向にある。
【0005】
もっとも、上筐体と下筐体とをスライド可能として開閉することができる一般的なスライドタイプにおいては、開いた状態では上筐体と下筐体とに段差が生じ、デザイン上好ましくないと共に、下筐体の段差付近に配置されている操作ボタンに対する操作性が悪くなる。
【0006】
そこで、筐体が開いた状態では、上下筐体が平面状になる構造が知られている(例えば、特許文献2参照。)。また、筐体内部にスライド動作のための構造が配設されている構造も知られている(例えば、特許文献3、特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−089377号公報
【特許文献2】特開2009−081704号公報
【特許文献3】特開2007−166621号公報
【特許文献4】特開2008−153599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2に開示されている構成では、筐体外部に筐体の開き動作のための構造が配設されていて外観上好ましくない。また、特許文献3や特許文献4に開示されている構成では、構造が複雑で部品数も多く組み立て性や信頼性に乏しかったり、動作に付勢が無く、スライドさせる場合には、全ての移動を手動で行う必要があり、操作性に問題があったりするなどといった問題がある。
【0009】
そこで、上下筐体が開いた状態で平面状になるスライドタイプの携帯端末であって、筐体内部にスライド動作のための構造が配設され、かつ構造が単純で部品数が少なく、組立て性や信頼性に優れるとともに、スライド性能も優れたスライドタイプの端末及び、そのための構造が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明の第1の側面として、固定スライダと、第1の可動スライダと、第2の可動スライダとを有するスライドヒンジユニットであって、固定スライダと第1の可動スライダとは、いずれか一方に設けられたガイドと、いずれか他方に設けられガイドに沿って移動可能な被ガイド部とにより接続され、第1の可動スライダは固定スライダの上面と平行に移動可能であり、第1の可動スライダと第2の可動スライダとは、いずれかの一方に設けられたスリットと、いずれかの他方に設けられ、被ガイド部がガイドに沿って移動し、第2の可動スライダが固定スライダの上面から離れるとスリットの一端から他端に向けて移動可能となるピンとにより接続され、固定スライダと第2の可動スライダとは、第2の可動スライダを、第2の可動スライダの全体が固定スライダの上面の上に位置する第1の向きに付勢するか、第2の可動スライダが固定スライダの上面から離れる第2の向きに付勢する付勢手段により接続されていることを特徴とするスライドヒンジユニットが提供される。
【0011】
このとき、前記付勢手段は、トーションスプリング、ジグザグ状のバネ又はコイルバネであってもよい。また、スリットやピンの断面の形状を様々に変化させることにより、スライド動作に変化をもたせたり、スライダ間のがたつきを防止したりすることができる。
【0012】
また、本発明の第2の側面として、上記のヒンジユニットを有し、前記固定スライダは、下筐体に固定され、前記第2の可動スライダは、上筐体に固定されることを特徴とする携帯端末が提供される。このとき、上筐体の下面は段差を形成する第1の面と第2の面とを有し、前記上筐体の上面と前記第1の面との成す厚みは前記上筐体の上面と前記第2の面との成す厚みより小さく、前記下筐体の前記上面は段差を有する第3の面と第4の面とを有し、第2の可動スライダの全体が固定スライダの上に位置する場合に、第1の面と前記第3の面とが接し、かつ、前記第2の面と前記第4の面とが接し、第2の可動スライダの全体が固定スライダから最も離れると、第1の面と第4の面とが接するようになっていてもよい。さらに、第1の面と第4の面とが接すると、第3の面と前記上筐体の上面とが平面を形成するようになっていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、固定スライダの上面と平行な方向とスリットの向いている方向への2方向に第2の可動スライダが移動することができ、上筐体と下筐体とが平面を形成する位置までスライド可能になる。また、上筐体と下筐体とが一定距離スライドすると、付勢手段により上筐体と下筐体との上面が平面を形成する位置まで自動的にさらにスライド可能となる。また、従来の技術と比べても、構造が単純で部品数が少なくすることができる。したがって、本発明によれば、組立て性や信頼性に優れるとともに、スライド時の操作性に優れたスライドヒンジユニットや携帯端末の提供が可能となる。
【0014】
また、本発明によれば、上筐体と下筐体とが開いた状態で一つの面を形成することが可能になり、操作ボタンに対する操作性に優れたスライドタイプの携帯端末や、上筐体と下筐体とにディスプレイを設けた場合に、上筐体と下筐体とのディスプレイ表示を一体化し、より大きなディスプレイとして表示を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るスライドヒンジユニットの分解図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るスライドヒンジユニットの概略図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るスライドヒンジユニットの開閉動作を示す概略図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る携帯端末の分解図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る携帯端末の開閉動作を示す概略図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るスライドヒンジユニットのスリット内のピンの移動を示す概略図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係るスライドヒンジユニットのピンの形状を示す概略図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係るスライドヒンジユニットのスリットの形状を示す概略図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係るスライドヒンジユニットのピンとスリットの形状を示す概略図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係るスライドヒンジユニットの第1の可動スライダ、第2の可動スライダの分解図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係るトーションスプリング及び軸が1つずつであり中央部において付勢されるスライドヒンジユニットの形状を示す分解図である。
【図12】本発明の他の実施形態に係るトーションスプリングの形状を示す概略図である。
【図13】本発明の他の実施形態に係るトーションスプリングの腕部の一端が軸の上部に固定されたスライドヒンジユニットにおける開閉動作を示す概略図である。
【図14】本発明の他の実施形態に係る付勢手段の形状を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、本発明は、以下の説明に限定されることなく、種々なる態様での実施が可能である。また、同一の部材、同一に定義される部材には同じ符号を用いる。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るスライドヒンジユニットの分解図であり、図2は、本発明の一実施形態に係るスライドヒンジユニットの概略図である。
【0018】
図1及び図2を参照すると、スライドヒンジユニット100は、固定スライダ130と、ガイド131と、被ガイド部としてのロッド132と、第1の可動スライダ160と、第2の可動スライダ170と、付勢手段としてのトーションスプリング140とを備えている。図1及び図2では、固定スライダ130にガイド131が備えられ、そのガイド131に沿って移動可能なロッド132が第1の可動スライダ160に備えられ、固定スライダと第1の可動スライダ160とが接続されている。また、第2の可動スライダ170は、スリット190を備え、ピン180がスリット190に挿入されスリット190の一端と他端との間を移動可能となるように、第1の可動スライダ160に備えられ、第1の可動スライダ160と第2の可動スライダとが接続される。ピン180は、ワッシャ181により第1の可動スライダ160との間の緩みを防止することができる。また、ワッシャ181によりピン180の摺動性を向上し、クリアランスを調整することができる。なお、第1の可動スライダと第2の可動スライダのいずれか一方にスリット190が設けられ、他方にピンが設けられていれば良い。したがって、図1及び図2と異なり、図10に示すように、第1の可動スライダ160にスリット190を形成し、ピン180により第2の可動スライダ170と接続してもよい。
【0019】
固定スライダ130と第2の可動スライダ170とは、トーションスプリング140により接続される。図1及び図2では、トーションスプリング140の一つの腕は、付勢手段固定軸150により、固定スライダ130に接続され、トーションスプリング140の他の腕は、軸171及び付勢手段ガイド172により、第2の可動スライダ170と接続される。トーションスプリング140のそれぞれの腕の先端は、付勢手段固定軸150及び軸171の周囲を回転可能になっており、固定スライダ130と第1の可動スライダ160及び第2の可動スライダ170とのスムーズなスライドを可能としている。
【0020】
図1及び図2では、第2の可動スライダ170が上下動する際に、トーションスプリング140の腕部の一端は、付勢手段ガイド172とともに、軸171上を滑り移動する。ただし、トーションスプリング140の腕部の一端が軸171上を滑り移動しない構成であってもよい。例えば、図13に示すように、トーションスプリング140の腕部の一端が、スライドヒンジユニットの開閉動作に関わらず、軸171の上部などの一定の位置に固定されるようになっていてもよい。これにより、第2の可動スライダ170の下方への付勢力を増すことができる。また、例えば、軸171側に接続される腕部を、図12に示すようにクランク状に下方へと曲げたり、当該腕部全体を下方へと傾斜させたりすることにより、第2の可動スライダ170を下方へ付勢する力を増すことができる。なお、軸171上を滑り移動させない構成の場合でも、トーションスプリング140の腕部の一端は軸171の周りを回転可能であってもよい。
【0021】
第1の可動スライダ160に設けられたロッド132は、固定スライダ130に設けられたガイド131と接続される。ロッド132がガイド131に沿って移動すれば良い。したがって、図1及び図2と異なり、第1の可動スライダ160にガイド131を設け、固定スライダ130にロッド132を設けて第1の可動スライダ160と固定スライダ130を接続してもよい。
【0022】
スリット190は、ロッド132がガイド131に沿って動く方向とは異なる方向、例えば図1のようにロッド132がガイド131に沿って動く方向から斜め方向を向いて設けることができる。これにより、第2の可動スライダ170が、固定スライダ130の上面と平行な方向の動きと、スリットの方向への動きをすることが可能となり、第2の可動スライダ170の2方向への動きが可能となる。なお、スリット190の方向が、固定スライダ130の上面と平行な方向と垂直に近くなると、スムーズな第2の可動スライダ170の動きができなくなることがあるので、好ましくは、スリット190の方向と固定スライダ130の上面と平行な方向とは、30°から60°の範囲、より好ましくは45°前後であるとよい。
【0023】
ピン180は、ロッド132がガイド131に沿って移動し、第2の可動スライダ170が固定スライダ130の上面から外れると、言い換えると第2の可動スライダ170の下面が固定スライダ130の上面の外に位置すると、スリット190の一端から他端に向けて移動可能となる。これにより、第2の可動スライダ170が、固定スライダ130の上面を含む平面を横切る動きをする。
【0024】
トーションスプリング140は、第2の可動スライダを、第2の可動スライダ170が固定スライダ130の上面に位置するように第1の向きに付勢するか、第2の可動スライダ170が固定スライダ130から離れる第2の向きに付勢する。第2の可動スライダ170が固定スライダ130から離れるとは、言い換えると第2の可動スライダ170の下面が固定スライダ130の上面の外に位置し、さらに、第2の可動スライダ170が、固定スライダ130の上面を含む平面を横切ることをいう。第2の可動スライダ170の下面が固定スライダ130の上面の外に位置し、さらに、第2の可動スライダ170が、固定スライダ130の上面を含む平面を横切ると、図1及び図2では、ピン180は、スリット190の下端から上端に向けて移動することになる。
【0025】
本実施形態における付勢手段には、図1及び図2に示すように、トーションスプリング140が用いられている。しかし、付勢手段は、トーションスプリング140に限定されることはなく、トーションスプリング以外の、例えば図14にあるようなジグザグ状や「への字」状のバネ、又はコイルバネ等で、状態により2方向への付勢力を生じさせるものであればよい。
【0026】
トーションスプリング140は、2本の腕とその腕を接続するスプリングとを有している。2本の腕の両端を結ぶ線分が前記第1の可動スライダの移動の方向と垂直になる前後で、トーションスプリング140の付勢の向きが異なる。このような構成により、1つのトーションスプリング140で2つの方向への付勢力を生じさせることができる。
【0027】
また、図1や図2と異なり、図11に示すように、軸171を第2の可動スライダ170の中央部に1つ設け、軸171と1つのトーションスプリング140とを接続することにより、1つの付勢手段により付勢を行い、部品数を減らしても良い。
【0028】
図3は、本発明の一実施形態に係るスライドヒンジユニットの開閉動作を示す概略図である。図3(a)から(d)として、本発明の一実施形態に係るスライドヒンジユニットの開動作の途中の状態を示す。
【0029】
まず、図3(a)においては、は第2の可動スライダ170の全体または一部が固定スライダ130の上面に位置した状態となっている。図3(a)おいては、トーションスプリング140により第2の可動スライダ170がA方向に付勢されている。また、第1の可動スライダも、スリット190とピン180とを介して、A方向に付勢されている。
【0030】
次に、図3(b)においては、第1の可動スライダ160が、固定スライダ130の上面と平行に移動させた状態にある。図3(b)の状態においては、トーションスプリング140の両腕の両端を結ぶ線分が、Y方向と平行になり、付勢力が発生しない中間位置となっている。この状態を通過し、第1の可動スライダ160がさらにB方向へ移動すると、トーションスプリング140によってB方向への付勢力が発生し始め、自動で第1の可動スライダ160及び第2の可動スライダ170が自動で移動を開始する状態となる。
【0031】
図3(c)は、トーションスプリング140によるB方向への付勢力により、自動に第1の可動スライダ160と第2の可動スライダ170とが移動した状態を示す。このとき、第2の可動スライダ170は、固定スライダ130の上面の範囲外に出る。トーションスプリング140による付勢力により、今度は、第2の可動スライダ170がスリット190のC方向に向けて付勢される。すなわち、この位置まで第2の可動スライダが移動すると、第2の可動スライダの全体が固定スライダの上面から外れた状態にあり、ピン180がスリット190に挿入されているので、C方向への付勢により、第2の可動スライダ170がD方向へも移動を開始する。また、図3(c)においては、トーションスプリング140の腕部の一端が、付勢手段ガイド172とともに、軸171上の滑り移動を開始する。
【0032】
図3(d)は、第2の可動スライダがD方向への移動を完了した状態である。この状態において、トーションスプリング140による第2の可動スライダ170のC方向に向けた付勢が維持される。すなわち付勢力により、第2の可動スライダ170のB方向及びD方向への付勢が維持される。これにより、スライドヒンジユニットの開動作が完了する。また、図3(d)においては、トーションスプリング140の腕部の一端は軸171上の滑り移動を完了する。
【0033】
図3(e)から(h)は、本発明の一実施形態に係るスライドヒンジユニットの閉動作を示す。
【0034】
図3(e)は、図3(d)と同じく、第2の可動スライダ170がD方向への移動を完了した状態である。この状態において、トーションスプリング140の付勢に逆らい、E方向への力を第2の可動スライダ170に加えると、第2の可動スライダ170がF方向へと移動を開始する。すなわち、第2の可動スライダ170がG方向への上昇を開始する。また、図3(e)においては、トーションスプリング140の腕部の一端が、付勢手段ガイド172とともに、軸171上の滑り移動を開始する。
【0035】
図3(f)は、図3(e)からE方向への力を加え続けた結果、第2の可動スライダ170がG方向への上昇を完了した状態である。この状態において、さらにE方向へと力を加え続けると、図3(g)の状態となる。また、図3(f)においては、トーションスプリング140の腕部の一端は軸171上の滑り移動を完了する。
【0036】
図3(g)の状態は、図3(f)の状態からE方向へと力を加え続け、第2の可動スライダ170の一部が、固定スライダ130の上面に位置した状態である。図3(g)の状態においては、トーションスプリング140の両腕の先端を結ぶ線分が、Y方向と平行になり、すなわち付勢力が発生しない中間位置にある。この位置より、さらにE方向へと力を加えと、トーションスプリング140の付勢力により、第1の可動スライダ160及び第2の可動スライダ170がA方向に付勢される。
【0037】
図3(h)は、図3(a)と同じく、トーションスプリング140の付勢力により、第2の可動スライダ170が固定スライダ130の上面に位置した状態である。これにより、スライドヒンジユニットの閉動作が完了する。この状態においても、トーションスプリング140により第1の可動スライダがA方向に付勢されている。
【0038】
以上のように、付勢手段の付勢力によって、第2の可動スライダ170の移動が付勢され、ピン180とスリット190とにより、第1の可動スライダ160の固定スライド130の上面に平行な向きの付勢が実現され、また、第2の可動スライダ170がスリット190に沿った方向へと付勢され、これらが連動して、異なる2つの方向への付勢を、実現でき、少ない構造と部品数で付勢を実現できる。
【0039】
また、これにより、第1の可動スライダ及び第2の可動スライダを、一端または他端へと移動する際の移動が一部自動化され、その際に力を外部から加える必要がない。例えば、図3(b)において、トーションスプリング140の両腕の両端を結ぶ線分が、Y方向と平行になり、付勢力が発生しない中間位置を通過すると、力を外部から加える必要がなくなる。
【0040】
図4は、図1のヒンジユニットを用いた携帯端末の一例を示す分解図である。
【0041】
携帯端末1000は、上筐体110と、上筐体取り付けネジ111と、下筐体120と、下筐体取り付けネジ121と、固定スライダ130と、ガイド131と、ロッド132と、トーションスプリング140と、付勢手段固定軸150と、第1の可動スライダ160と、第2の可動スライダ170と、軸171と、付勢手段ガイド172と、ピン180と、ワッシャ181とを有する。第2の可動スライダ170は、スリット190を有する。
【0042】
図1において既に説明した構成要素については、説明を省略する。
【0043】
上筐体110には、中央部に傾斜面が形成されており、下筐体120には、中央部に上筐体の傾斜面に対応する傾斜面が形成されている。これらの傾斜面の両側に、上筐体110には、図4の手前の側に第1の面、奥の側に第2の面が形成され、下筐体120には、図4の手前の側に第3の面、奥の側に第4の面が形成される。また、上筐体110の上面と第1の面との成す厚みは、上筐体110の上面と第2の面との成す厚みより小さく、下筐体120の下面と第3の面との成す厚みは、下筐体120の下面と第4の面との成す厚みより大きい。したがって、第1の面と第2の面とにより段差が形成され、第3の面と第4の面とにより別の段差が形成される。
【0044】
上筐体110は、上筐体取り付けネジ111により第2の可動スライダ170と接続される。
【0045】
下筐体120は、下筐体取り付けネジ121により固定スライダ130と接続される。
【0046】
上筐体110と下筐体120とは、第2の可動スライダ170が固定スライダ130の上面に位置した状態においては、上下に重なり合う。例えば、第1の面と第3の面とが接する。また、第2の面と第4の面とが接する。加えて、上筐体110の傾斜面と下筐体120の傾斜面とが当接する。また、第2の可動スライダ170の全体が固定スライダ130の上面から外れ、第2の可動スライダ170が下降方向への移動を完了した状態においては、第1の面と第4の面とが当接する。このとき、上筐体110と下筐体120とが一つの面を形成する。言い換えると、第3の面と上筐体110の上面とが一つの平面を形成する。また、第2の面と下筐体120の下面とが一つの平面を形成してもよい。
【0047】
図5は、本発明の一実施形態に係る携帯端末の上筐体の開閉動作を示す概略図である。
【0048】
図3を参照して既に説明した通り、付勢手段の付勢力により、ピンがスリット内を移動し、第1の可動スライダ及び第2の可動スライダが連動した動きをする。
【0049】
図5の(a)から(d)は、本発明の一実施形態に係る携帯端末の上筐体110の開動作を示す。
【0050】
図5(a)は、図3(a)と対応した状態であり、上筐体110と下筐体120とが重なり合った状態である。上筐体110にB方向への力を加えると、上筐体110がスライド動作を開始する。この状態において、上筐体110は付勢手段によりA方向へと付勢されている。
【0051】
図5(b)は、図3(b)と対応した状態であり、付勢手段の付勢力により、自動で上筐体110がB方向へと移動を開始した状態である。図5(b)の状態においては、トーションスプリング140の両腕の両端を結ぶ線分が、Y方向と平行になり、付勢力が発生しない中間位置となっている。この位置より、さらにB方向へ力を加えると、トーションスプリング140の付勢力により、上筐体110がB方向へと付勢される。
【0052】
図5(c)は、図3(c)と対応した状態であり、自動で上筐体110がB方向の終端まで移動を完了した状態である。上筐体110は、下降動作を開始する。なお、上筐体110を基準とすれば、下筐体120は、上昇動作を開始するとも言える。
【0053】
図5(d)は、図3(d)と対応した状態であり、上筐体110が下降動作を完了した状態である。これにより、上筐体110の開動作が完了する。この状態において、上筐体110の上面と下筐体120の第3の面とは、一つの面を形成することができる。
【0054】
以上のように、上筐体110の開動作完了時に、上筐体110と下筐体120とが一つの面を形成することにより、操作性に優れた携帯端末を提供することができる。また、上筐体110の上面と下筐体120の第3の面との両方にディスプレイを設けることにより、表示可能な面積を増加させることができる。さらに、下筐体120の下面と上筐体110の第2の面とが一つの面を形成すると、デザイン性が高まる。下筐体120の下面と上筐体110の第2の面との両方にディスプレイを設けてもよい。
【0055】
図5の(e)から(h)は、本発明の一実施形態に係る携帯端末の上筐体の閉動作を示す。
【0056】
図5(e)は、図3(e)と対応した状態であり、第5(d)と同じく、上筐体110が下降動作を完了した状態である。この状態において、C方向への力を上筐体110に加えると、上筐体110がD方向への上昇動作を開始する。
【0057】
図5(f)は、図3(f)と対応した状態であり、図5(e)からC方向への力を加え続けた結果、上筐体110がD方向への上昇動作を完了した状態である。この状態において、さらにC方向へと力を加え続けると、図5(g)の状態となる。
【0058】
図5(g)は、図3(g)と対応した状態であり、図5(f)の状態からC方向へと力を加え続け、上筐体110がE方向へと水平に移動した状態である。図5(g)の状態においては、トーションスプリング140の両腕の先端を結ぶ線分が、Y方向に平行となり、付勢力が発生しない中間位置となっている。この位置より、さらにC方向へと力を加えると、トーションスプリング140の付勢力により、上筐体110がC方向へと付勢される。
【0059】
図5(h)は、図3(h)と対応した状態であり、図5(a)と同じく、トーションスプリング140の付勢力により、上筐体110と下筐体120とが上下に重なり合った状態である。これにより、上筐体110の閉動作が完了する。
【0060】
以下において、第1の可動スライダ160及び第2の可動スライダ170の動作と、ピン180及びスリット190の動作との関係について説明する。
【0061】
図6は、第2の可動スライダ170の、第1の可動スライダ160を基準とした、上昇・下降動作におけるピン180及びスリット190の当接の様子を示した概略図である。
【0062】
図6(a)は、閉じ状態、すなわち第2の可動スライダ170が上昇している状態である。この状態においては、A方向への付勢力により、ピン180がスリット190の側面n下部に当接する。
【0063】
開動作を行うために、上筐体110にB方向へと力を加えると、図6(b)のように、ピン180がスリット190の側面m下部に当接する。このままB方向へと力を加え続け、上筐体110がB方向の終端まで移動を完了すると、第2の可動スライダ170が付勢手段の付勢力により下降動作を開始する。図6(c)には、第2の可動スライダ170が付勢手段の付勢力による下降動作中の状態が示されている。
【0064】
第2の可動スライダ170が下降を終了し、開動作が完了すると、図6(d)のように、B方向への付勢力によりスリット190の側面m上部にピン180が当接する。
【0065】
閉動作を行うために、上筐体110へC方向へと力を加えると、図6(e)のように、ピン180がスリット190の側面n上部に当接する。第2の可動スライダ170は、上昇動作を開始する。
【0066】
図6(f)には、第2の可動スライダ170が、加えた力により上昇動作中の状態が示されている。
【0067】
このままC方向へと力を加え続け、上筐体110の上昇動作が終了すると、図6(g)のように、A方向へのスライド動作に移行する。この際に、スリット190の側面n下部にピンが当接する。
【0068】
なお、図6においてはピン180の動きを模式的に示すため、ピン180とスリット190とのクリアランスを大きく描いているが、実際には、がたつきを減らすために極力クリアランスを小さくすることが望ましい。
【0069】
以下において、本発明の他の実施形態について説明する。
【0070】
図7は、本発明の他の実施形態に係るピン180の断面の種々の形状を例示し、説明する概略図である。
【0071】
図7(a)は、ピン180の断面の形状が円形である。図7(b)のように、ピン180の断面の形状が、長円形であり、長手方向がスリット190と当接する形状を有している場合には、図7(a)と比較すると、スリット190と当接する面を大きくすることにより第2の可動スライダ170の動作、上昇・下降動作の際の第1の可動スライダ160と第2の可動スライダ170との間のがたつき、筐体間のがたつきを防止することができる。
【0072】
図7(c)を参照すると、ピン180の断面は、ピン180がスリット190の側面mに当接しているときには、ピン180が直線状に移動する形状であり、ピン180がスリット190の側面nに当接しているときには、ピン180が円弧に沿って移動する形状である。これにより、側面mにピン180の直線形状の部分が当接し、当接する面が大きくなった状態で直線状に移動するから、開動作時や、開状態、すなわち第2の可動スライダ170が固定スライダ130の上面から外れた状態において、筐体間、スライダ間のがたつきを防止することができる一方、側面nにピン180の円弧形状の部分が当接し、点で接触した状態で円弧に沿って移動するから、上昇動作時の摩擦を減少させ、上昇動作時に加える力が小さくてよく、スムーズな上昇動作が可能である。
【0073】
また、図7(d)を参照すると、ピン180の断面は、ピン180がスリット190の側面nに当接しているときには、ピン180が直線状に移動する形状であり、ピン180がスリット190の側面mに当接しているときには、ピン180が円弧に沿って移動する形状である。これにより、側面mにピン180の円弧形状の部分が当接し、点で接触した状態で円弧に沿って移動するから、下降動作時の摩擦を減少させ付勢手段への荷重を減少することが可能である一方、側面nにピン180の直線形状の部分が当接し、当接する面が大きくなった状態で直線状に移動するから、閉動作時や、上筐体110と下筐体120が閉じた状態、すなわち第2の可動スライダ170の全体が固定スライダ130の上面に位置する状態において、筐体間、スライダ間のがたつきを防止することができる。
【0074】
図8は、本発明の他の実施形態に係るスリット190との形状を説明する概略図である。
【0075】
図8(a)は、スリット190が、直線の形状に形成されており、スリット190の形状からは、下降動作の開始時と終了時における動作速度に違いは生まれない。
【0076】
一方、図8(b)は、スリット190が曲線と直線とを組み合わせた形状に形成され折れ曲がった形状をしており、スリットの下部の傾斜が緩やかになっている。これにより、下降動作の開始時にはゆっくりとピン180が移動し、下降動作の終了地点に近づくと、素早くピン180が移動するといった、動作速度を変化させることが可能である。
【0077】
図8(c)は、スリット190も曲線と直線とを組み合わせた形状に形成され折れ曲がった形状をしている。ただし、図8(b)と異なり、スリットの上部の傾斜が緩やかになっている。これにより、下降動作の開始時には素早くピン180が移動し、下降動作の終了地点に近づくと、素早くピン180がゆっくりと移動するといった、動作速度を変化させることが可能である。これにより、上筐体の開動作終了時にゆっくりと上筐体が動作することによりスライド動作に高級感を持たせることができる。また、上筐体の閉動作開始時に必要な力を小さくすることができる。
【0078】
図9は、本発明の他の実施形態に係るピンとスリットとの形状を説明する概略図である。
【0079】
図9を参照すると、ピン180は、平行四辺形状であり、対向する2辺がスリット190に当接する形状を有している。ピン180をこのような形状にすることにより、スライド動作、上昇・下降動作の際の固定スライダと第1の可動スライダや第2の可動スライダとの間のがたつき、筐体間のがたつきを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上のように、本発明によれば、上筐体と下筐体とが平面状になる位置までスライド可能に接続しつつ、1つの付勢手段で2方向の動きを実現し、付勢により一定距離までスライド操作を手動で行うと、自動で平面状になる位置まで筐体がスライドする。これにより、本発明の一実施形態においては、構造が単純で部品数が少なく、組立て性や信頼性に優れるとともに、スライド性能も優れたスライドタイプの携帯端末の提供が可能となる。また、本発明によれば、上筐体と下筐体とが一つの面を形成することにより、操作性に優れたスライドタイプの携帯端末や、上筐体と下筐体とにディスプレイを設けた場合に、上筐体と下筐体とのディスプレイを一体として大きなディスプレイとして表示を行うことが可能である。したがって、本発明は、産業上有用である。
【符号の説明】
【0081】
110 上筐体
111 上筐体取り付けネジ
120 下筐体
121 下筐体取り付けネジ
130 固定スライダ
131 ガイド
132 ロッド
140 トーションスプリング
150 付勢手段固定軸
160 第1の可動スライダ
170 第2の可動スライダ
171 軸
172 付勢手段ガイド
180 ピン
181 ワッシャ
190 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定スライダと、第1の可動スライダと、第2の可動スライダとを有するスライドヒンジユニットであって、
前記固定スライダと前記第1の可動スライダとは、いずれか一方に設けられたガイドと、いずれか他方に設けられ前記ガイドに沿って移動可能な被ガイド部とにより接続され、前記第1の可動スライダは前記固定スライダの面と平行に移動可能であり、
前記第1の可動スライダと前記第2の可動スライダとは、いずれかの一方に設けられたスリットと、いずれかの他方に設けられ、前記被ガイド部が前記ガイドに沿って移動し、前記第2の可動スライダが前記固定スライダの前記面から離れると前記スリットの一端から他端に向けて移動可能となるピンとにより接続され、
前記固定スライダと前記第2の可動スライダとは、前記第2の可動スライダを、前記第2の可動スライダの全体が前記固定スライダの前記面の上に位置する第1の向きに付勢するか、前記第2の可動スライダが前記固定スライダの前記面から離れる第2の向きに付勢する付勢手段により接続されていることを特徴とするスライドヒンジユニット。
【請求項2】
前記付勢手段は、前記固定スライダに接続される第1の腕部と前記可動スライダに接続される第2の腕部とを有するトーションスプリング、ジグザグ状のバネ、への字状のバネ又はコイルバネであることを特徴とする請求項1に記載のスライドヒンジユニット。
【請求項3】
前記第1の腕部と前記第2の腕部とを結ぶ線分が前記第1の可動スライダの移動の方向と垂直になる前後で、前記付勢手段の付勢の向きが異なることを特徴とする請求項2に記載のスライドヒンジユニット。
【請求項4】
前記スリットは、前記被ガイド部が前記ガイドに沿って動く方向とは異なる方向を向いていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のスライドヒンジユニット。
【請求項5】
前記第2の腕部の端部は、前記第2の可動スライダに設けられた軸の上部に固定して接続されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のスライドヒンジユニット。
【請求項6】
前記ピンの断面は前記スリットと当接する部分を長手方向とした長円形状であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のスライドヒンジユニット。
【請求項7】
前記ピンの断面は、直線形状の部分と円弧形状の部分とを有し、前記第2の可動スライダの全体又は一部が前記固定スライダの上面に位置するときに前記直線形状の部分が前記スリットに当接し、前記第2の可動スライダの全体が前記固定スライダの上面から外れているときに前記円弧形状の部分が前記スリットに当接することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のスライドヒンジユニット。
【請求項8】
前記ピンの断面は、直線形状の部分と円弧形状の部分とを有し、前記第2の可動スライダの全体又は一部が前記固定スライダの上面に位置するときに前記円弧形状の部分が前記スリットに当接し、前記第2の可動スライダの全体が前記固定スライダの上面から外れているときに前記直線形状の部分が前記スリットに当接することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のスライドヒンジユニット。
【請求項9】
前記ピンの断面は平行四辺形状であり、対向する2辺が前記スリットに当接することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のスライドヒンジユニット。
【請求項10】
前記スリットは、直線の形状または曲線と直線とを組み合わせた形状であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載のスライドヒンジユニット。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載のヒンジユニットを有し、前記固定スライダは、下筐体の上面に固定され、前記第2の可動スライダは、上筐体の下面に固定されることを特徴とする携帯端末。
【請求項12】
前記上筐体の前記下面は段差を形成する第1の面と第2の面とを有し、前記上筐体の上面と前記第1の面との成す厚みは前記上筐体の上面と前記第2の面との成す厚みより小さく、前記下筐体の前記上面は段差を形成する第3の面と第4の面とを有し、前記下筐体の下面と前記第3の面との成す厚みは前記下筐体の下面と前記第4の面との成す厚みよりも大きく、
前記第2の可動スライダの全体が前記固定スライダの前記面の上に位置する場合に、前記第1の面と前記第3の面とが接し、かつ、前記第2の面と前記第4の面とが接し、
前記第2の可動スライダの全体が前記固定スライダの前記面から最も離れると、前記第1の面と前記第4の面とが接することを特徴とする請求項11に記載の携帯端末。
【請求項13】
前記第1の面と前記第4の面とが接すると、前記第3の面と前記上筐体の上面とが平面を形成することを特徴とする請求項12に記載の携帯端末。
【請求項14】
前記第1の面と前記第4の面とが接すると、前記第2の面と前記下筐体の下面とが平面を形成することを特徴とする請求項12または請求項13のいずれかに記載の携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−234111(P2011−234111A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102328(P2010−102328)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(592245432)スタッフ株式会社 (31)
【Fターム(参考)】