説明

スライド式吊り荷台装置

【課題】荷受構台の類を各階に設ける必要をなくし、それらの設置、解体等の作業を不要にするとともに、荷物類を各階の内部にまで搬入し、またそこから搬出することが容易に行なえるようにする。
【解決手段】クレーン類によって移動され、建築物の各階にて停止した位置から建築物の搬入口へ荷物類を搬入するための荷台装置について、クレーン類に吊り下げられて移動可能であり、建築物の搬入口11に向けられる出し入れ部を有し、かつ上記建築物の搬入口部分との係合手段19を有する装置本体15と、装置本体に搭載されて出し入れ部から出し入れ可能に設けられ、かつ建築物の搬入口にて先端部分を支える脚部30を有するスライド荷台20と、装置本体に対してスライド荷台を出し入れするための駆動手段として装備されたスライド荷台駆動部26とを具備してスライド式吊り荷台装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン類によって移動され、建築物の各階にて停止した位置から建築物の搬入口へ荷物類を搬入するためのスライド式の吊り荷台装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば建築工事中における各階への荷物の揚重では、従来、建築物外部に設置したクレーンを用いて行なって来たが、その場合、各階毎に構台或いは荷台などと呼ばれるものを建築物から張り出して設置する必要があった。特開平7−229309号などの発明はこの種の装置を開示しているが、この場合荷受構台を多数設置しなければならず、多大な工数とコストが掛かり、また、作業も危険であるという問題があった。
【0003】
また、実開平7−34146号の考案は荷揚げ用構台として、建物の複数階のバルコニーにそれぞれ掛止可能な掛止部を有し、揚重器による資材の搬入・搬出のためのプラットフォームとして使用するものを開示している。同考案のものは確実に構台をバルコニーに掛け止めることができるが、その構台は依然としてバルコニーの外にあり、そこから建物の内部へ搬入する手段、構成については何も説明されていない。
【0004】
【特許文献1】特開平7−229309号
【特許文献2】実開平7−34146号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記の点に着目してなされたもので、その課題は、荷受構台の類を各階に設ける必要がなく、従ってそれらの設置、解体等の作業が不要になるとともに、荷物類を各階の内部にまで搬入し、またそこから搬出することが容易に行なえるスライド式吊り荷台装置を提供することである。また、本発明の他の課題は、建築中の建築物のみならず、倉庫の各階における荷物類の出し入れや、火災その他の災害における建築物からの人の救出にも適用可能なスライド式吊り荷台装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するため、本発明は、クレーン類によって移動され、建築物の各階にて停止した位置から建築物の搬入口へ荷物類を搬入するための荷台装置について、
クレーン類に吊り下げられて移動可能であり、建築物の搬入口に向けられる出し入れ部を有し、かつ上記建築物の搬入口部分との係合手段を有している装置本体と、
装置本体に搭載され、その出し入れ部から出し入れ可能に設けられ、かつ建築物の搬入口にて先端部分を支える脚部を有するスライド荷台と、
装置本体に対してスライド荷台を出し入れするための駆動手段として装備されたスライド荷台駆動部を具備して構成するという手段を講じたものである(請求項1記載の発明)。
【0007】
本発明においてクレーン類とは、各種クレーンや、巻き上げ機、揚げ降ろし装置など、広く物や人の上げ下ろしに使われる各種装置を含むものとする。本発明の装置は、これらのクレーン類を用いて、建築物に対して外部から開口部分に接近し、建築物の内部へ荷物を搬入する。ここで「荷」とは資材、製品、半製品、工具、その他のあらゆる物品を含むものとし、救助など、場合によっては人も含まれる広い概念とする。また、単に搬入と記載することもあるが、それは搬入ばかりではなく搬出や、各階間における荷の移動を示唆し、本発明の及ぶ範囲である。
【0008】
上記スライド荷台の先端部には、スライド荷台と建築物の搬入口を連絡する渡し板を備えることが望ましい(請求項2)。渡し板は搬入口に到る距離に応じて任意の大きさに設定して差支えなく、不使用時には跳ね上げてスライド荷台の周囲を囲む枠の一部とすることができる。上記装置本体の係合手段は先端部下面に装着されており、建築物の搬入口に存在する係合相手部と係合し、装置本体を先端部にて支える支持手段を兼ねるものとすることができる(請求項3)。
【0009】
スライド荷台駆動部はスライド荷台を出し入れするための駆動手段であり、種々の駆動方式を適用することができる。使用し得る具体的な駆動方式としては、例えば油圧シリンダー方式、スクリュージャッキ方式、ラックアンドピニオン方式などを挙げることができる。なお、スライド荷台を任意の出し入れ位置で固定できることも、安全上望まれる機能である。
【0010】
上記スライド荷台の先端部分を支える脚部は、建築物の搬入口床を走行可能な車輪を有しており、上記脚部はスライド荷台の先端部分に固定されているか或いは出没式に設けられている構成とすることができる(請求項4)。建築物の搬入口床部は何もないものもあれば搬入の障害となるものもあるなど、その形態は様々であるが、障害になる部分があっても脚部を出没式の構造とすることによりそれを乗り越えることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は以上のように構成されかつ作用するものであるから、荷受構台の類を各階に設ける必要がなく、従ってそれらの設置、解体等の作業が不要になるとともに、荷物類を各階の内部にまで搬入し、またそこから搬出することが容易に行なえるようになるという効果を奏する。また、本発明によれば、建築中の建築物のみならず、倉庫の各階における荷物類の出し入れや、火災その他の災害における建築物からの人の救出にも適用可能なスライド式吊り荷台装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図示の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。図1ないし図5は本発明の例1に係るスライド式吊り荷台装置に関するもので、本発明の装置10はクレーン類によって移動され、建築物の各階にて停止した位置から、建築物の搬入口11としてのベランダへ荷物類を搬入するために、荷台部分がスライド式に出没する構成を備えている。図1において、符号12はクレーン類によって吊り上げられまた吊り下げられるワイヤーロープであり、その下端部を接続した架材13に4本の吊りワイヤー14を介して本発明の装置を吊り上げる構成を取っている。
【0013】
本発明の装置10は、上記のように、クレーン類に吊り下げられて移動可能な装置本体15を具備している。例1の装置本体15は、左右平行な側フレーム16、16とそれらを結合して梯形構造体を形成する複数個の横フレーム17を基板18に設けた構成を有している。一対の側フレーム16、16はチャンネル材からなり、その溝部16aは内向きの配置として、後述するスライド荷台20の受けローラーが回転移動可能に配置される通路を形成している(図4)。
【0014】
また、装置本体15の前後左右の端部近くには、建築物の搬入口部分との係合手段19が設けられており、この係合手段19は、上記建築物の搬入口部分との係合手段としての機能と、装置本体15の先端部の側を支える支持手段を兼ねている。上記装置本体15の前後両端部は、建築物の搬入口11に向けて配置されるもので、スライド荷台20の出し入れのための出し入れ部として開口している。
【0015】
スライド荷台20は、上記装置本体15に搭載されて両端部の出し入れ部から出し入れ可能に設けられている。例1のスライド荷台20は、両端が装置本体15の両端から出るように装置本体15よりも長く形成されており、I型鋼を長方形の平面形状に組んで床フレーム21を形成し、かつその上面に床材を張った荷台構造を有するもので、その左右両側にはチャンネル材からなる側枠22を有しており、側枠22の溝部22aは外向きに配置されている。
【0016】
側フレーム16の一端部内側には部材16bを用いて取り付けた本体側ローラー24が内向きに配置され、溝部22aにて回転可能に設けられている。また、床フレーム21にはその他端部外側に取り付けた荷台側ローラー25が外向きに配置され、装置本体側フレーム16の溝部16aにて回転可能に設けられている。ローラー24、25はそれぞれ装置本体15、スライド荷台20の前後に配置されてスライド荷台20のスムーズな移動を実現する機能を果たす。また、23は振れ止めローラーであり、側フレーム16に接触可能に上記床フレーム21取り付けられている。
【0017】
上記スライド荷台20の出し入れのために、装置本体15とスライド荷台20との間にスライド荷台駆動部26を具備している。例1のスライド荷台駆動部26は、スライド荷台側に取り付けられたラック27と装置本体側に取り付けられたピニオン28からなり、ピニオン28は、装置本体15の側フレーム16に設置されたモーター式駆動機構29の出力軸に取り付けられている。
【0018】
さらにスライド荷台20には、装置本体15の出し入れ部から出ている先端部分を、建築物の搬入口11にて支えるために、固定式の脚部30が設けられている。固定式の脚部30は、左右側フレーム16の一端部下側にそれぞれ取り付けた台部31と車輪32からなり、搬入口11としてのベランダ床を走行可能に構成されている。図中33は上記駆動部等の操作部、34は電源用コンセントを示すが、電源として電池を本発明の装置に搭載することもある。
【0019】
上記スライド荷台20は、その先端部にスライド荷台20と建築物の搬入口11を連絡する渡し板35を備えている。渡し板35は、荷物を移動する上で急過ぎない傾斜面を搬入口11との間に設けるように、装置本体15の前後両端の出し入れ部に、それぞれ支軸36により跳ね上げ可能に取り付けられている。また前後の渡し板35、35は、その跳ね上げ時に、スライド荷台20の左右両側に設置されている立ち上がり枠37とともに、スライド荷台20を取り囲む囲み枠を構成する。なお38は幅木を示しており、例1において建築物の搬入口11に存在する係合相手部である。
【0020】
このように構成された本発明の例1の装置10により、建築物の各階への荷物の揚重を行なうには、図5Aに示すように、スライド荷台20に荷物を積載した本装置10をクレーン類により所望の階高に吊り上げ、その搬入口11の位置に移動させ、その装置本体15の係合手段19を、まず、建築物の搬入口11に存在する係合相手部38の幅木に係合させこれによって、装置本体15がずれない固定状態にする。
【0021】
その後、操作部33を操作して、図5Bに示すように、スライド荷台20に乗っている先端の脚部30を搬入口11の内方へ向けて移動させる。するとスライド荷台駆動部26のピニオン28が回転するのでラック27が次第に繰り出され、スライド荷台20が十分に乗り出したところで操作部33を操作して停止させ、渡し板35を開いて搬入口11に接地させる。このとき搬入口11には補助となる台39を使用することもでき、このようにしてクレーン類による吊り上げ位置に運び上げた荷物を所望の階に搬入し、或いはその階にある荷物、資材等を搬出することができる。
【0022】
次に図6、図7を参照して本発明の例2の装置40について説明する。例2の装置40も装置本体に対して前後に移動可能なスライド荷台を有しており、かつスライド荷台をモーター式駆動機構により繰り出させることができる基本的構成については例1のものと同様である。従って、例1と同じ符号を図6、図7に付して同様の構成を取っていることを示し、詳細な説明は省略する。
【0023】
従って、相違点についてのみ説明する。例2のものは、スライド荷台20の先端部分を支える脚部30として、建築物の搬入口床を走行可能な車輪41を有しているとともに、スライド荷台20の先端部分に出没式に設けられている。出没式の脚部30は、側面形状がほぼL字型の脚柱42をその基端部にてスライド荷台20の一端部上側に支軸43によって上げ下げ可能に取り付け、先端部に取り付けた車輪41を搬入口11に設置させて固定するための構成を有している。
【0024】
例2の装置は、建築物の搬入口11に、例えばパラペットのような障害物44が存在しており、スライド荷台20の面と、建築物の搬入口11の床面との間に、例1におけるよりも大きい段差が生じる場合を想定している。そのため、装置本体15の係合手段19と係合する相手として、建築物の搬入口部分の障害物44の上端に凸部45を利用するとともに、同凸部45と係合可能な凹部を係合手段側に設けている。かくして例2の装置40においても、無理なく荷物や資材などを搬入搬出することが可能である。
【0025】
本発明の装置10、40においては、スライドに第20をスライドさせる電源として商用電力を使用することもできるが、バッテリーを使用する場合には、商用電力を自由に確保しにくい条件においても問題なく作業を行なうことができる。本発明の装置10、40は、建築中の建築物に拘らずベランダなど、搬入口として利用することができるものがあればどのような対象についても適用することができる。なお、スライド荷台20は、装置本体15の前後どちらに繰り出しても良く、また前後両方へ繰り出す構成を取ることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
既に一部触れたところでもあるが、本発明に係るスライド式吊り荷台装置は、災害時における救助用としても利用可能である。その場合、安全性を確保するためスライド荷台をケージ式にしたり、建築物の搬入口部分との係合手段をより確実なものとしたりする等の措置を適宜講じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るスライド式吊り荷台装置の例1示す正面図である。
【図2】同上の側面図である。
【図3】同じく側面部分拡大図である。
【図4】同じく正面部分拡大図である。
【図5】同じく例1の使用状態を示す説明図で、Aは荷台スライド前の、Bは荷台スライド後の側面図である。
【図6】本発明に係るスライド式吊り荷台装置の例2示すもので、Aは側面図、Bは正面図である。
【図7】同じく例2の使用状態を示す説明図で、Aは荷台スライド前の、Bは荷台スライド後の側面図である。
【符号の説明】
【0028】
10、40 スライド式吊り荷台装置
11 搬入口
12 ワイヤーロープ
13 架材
14 吊りワイヤー
15 装置本体
16 側フレーム
17 横フレーム
18 基板
19 係合手段
20 スライド荷台
21 床フレーム
22 側枠
23 振れ止めローラー
24 本体側ローラー
25 荷台側ローラー
26 スライド荷台駆動部
27 ラック
28 ピニオン
29 モーター式駆動機構
30 脚部
31 台部
32、41 車輪
33 操作部
34 電源用コンセント
35 渡し板
36 立ち上がり枠
37、43 支軸
38 係合相手部
39 台
42 脚柱
44 障害物
45 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーン類によって移動され、建築物の各階にて停止した位置から建築物の搬入口へ荷物類を搬入するための荷台装置であって、
クレーン類に吊り下げられて移動可能であり、建築物の搬入口に向けられる出し入れ部を有し、かつ上記建築物の搬入口部分との係合手段を有している装置本体と、
装置本体に搭載され、その出し入れ部から出し入れ可能に設けられ、かつ建築物の搬入口にて先端部分を支える脚部を有するスライド荷台と、
装置本体に対してスライド荷台を出し入れするための駆動手段として装備されたスライド荷台駆動部を具備して構成された
スライド式吊り荷台装置。
【請求項2】
上記スライド荷台の先端部にスライド荷台と建築物の搬入口を連絡する渡し板を備えている請求項1記載のスライド式吊り荷台装置。
【請求項3】
装置本体の係合手段は先端部下面に装着されており、建築物の搬入口に存在する係合相手部と係合し、装置本体を先端部にて支える支持手段を兼ねている請求項1記載のスライド式吊り荷台装置。
【請求項4】
スライド荷台の先端部分を支える脚部は、建築物の搬入口床を走行可能な車輪を有しており、上記脚部はスライド荷台の先端部分に固定されているか或いは出没式に設けられている請求項1記載のスライド式吊り荷台装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−209535(P2009−209535A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51038(P2008−51038)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(391028889)三成研機株式会社 (17)
【Fターム(参考)】