説明

スライド式気密扉装置

【課題】スライド式気密扉装置の構造を簡素化することができると共に、扉体を1方向にスライドさせるだけで開口部を気密に閉塞でき、スライド式気密扉装置の開閉時間を短縮することができるスライド式気密扉装置を提供する。
【解決手段】壁面11に対して扉体30が平行にスライド自在に組み付けられ、扉体30により壁面11に形成される開口部12を気密に閉塞するスライド式気密扉装置10であって、扉体30は、扉体30の閉方向に向かって徐々に壁面11との間隔が大きくなる扉側傾斜面33を有し、壁面11は、扉体30の閉方向に向かって徐々に扉体30との間隔が小さくなる壁側傾斜面23を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密室等の壁面に形成される開口部を気密に閉塞するスライド式気密扉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスライド式気密扉装置として、駆動装置により扉体をスライドさせ、押付装置により扉体を開口部側に移動させて、扉体を開口部に押圧させるように構成したスライド式気密扉装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−232172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のスライド式気密扉装置では、扉体をスライドさせるための駆動装置と、扉体を開口部側に移動させるための押付装置と、を備えているため、気密扉の構造が複雑になってしまうと共に、扉体を異なる2方向に移動させることになるので、開閉に多くの時間を要してしまうという課題があった。
【0005】
本発明は、このような不都合を解消するためになされたものであり、その目的は、スライド式気密扉装置の構造を簡素化することができると共に、扉体を1方向にスライドさせるだけで開口部を気密に閉塞でき、スライド式気密扉装置の開閉時間を短縮することができるスライド式気密扉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 壁面に対して扉体が平行にスライド自在に組み付けられ、扉体により壁面に形成される開口部を気密に閉塞するスライド式気密扉装置であって、扉体は、扉体の閉方向に向かって徐々に壁面との間隔が大きくなる扉側傾斜面を有し、壁面は、扉体の閉方向に向かって徐々に扉体との間隔が小さくなる壁側傾斜面を有することを特徴とするスライド式気密扉装置。
(2) 扉体の壁側外周縁部及び壁面の開口部の扉側外周縁部の少なくとも一方に弾性部材を設け、弾性部材自体の形状により、扉側傾斜面及び壁側傾斜面を形成することを特徴とする(1)に記載のスライド式気密扉装置。
(3) 扉体の壁側外周縁部及び壁面の開口部の扉側外周縁部の少なくとも一方に矩形状の枠体を設け、枠体自体の形状により、扉側傾斜面及び壁側傾斜面を形成することを特徴とする(1)に記載のスライド式気密扉装置。
(4) 扉体の壁側外周縁部に設けられる枠体及び壁面の開口部の扉側外周縁部に設けられる枠体の少なくとも一方に弾性部材を設けることを特徴とする(3)に記載のスライド式気密扉装置。
(5) 壁面に対して2枚の扉体が平行にスライド自在に組み付けられ、2枚の扉体が壁面に形成される開口部の両側から中央に向かってそれぞれスライドし、開口部の中央において2枚の扉体が召し合わされることにより、壁面の開口部を気密に閉塞するスライド式気密扉装置であって、扉体は、開口部の中央に向かって徐々に壁面との間隔が大きくなる扉側傾斜面を有し、壁面は、開口部の中央に向かって徐々に扉体との間隔が小さくなる壁側傾斜面を有することを特徴とするスライド式気密扉装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明のスライド式気密扉装置によれば、扉体は、扉体の閉方向に向かって徐々に壁面との間隔が大きくなる扉側傾斜面を有し、壁面は、扉体の閉方向に向かって徐々に扉体との間隔が小さくなる壁側傾斜面を有するため、扉体が開状態から閉状態に1方向にスライドされることにより、扉体の扉側傾斜面と壁面の壁側傾斜面とが気密に面接触するので、壁面の開口部を気密に閉塞することができる。これにより、従来のスライド式気密扉装置のように押付装置を設ける必要がないので、スライド式気密扉装置の構造を簡素化することができると共に、扉体を1方向にスライドさせるだけで開口部を気密に閉塞することができ、スライド式気密扉装置の開閉時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係るスライド式気密扉装置の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態では、電動式のスライド式気密扉装置を例に説明する。
図1は本発明に係るスライド式気密扉装置の一実施形態を説明するための正面図、図2は図1のA−A線矢視断面図、図3は図1のB−B線矢視断面図、図4は図2に示すスライド式気密扉装置の要部拡大断面図である。
【0009】
図1〜図3に示すように、本実施形態のスライド式気密扉装置10は、開口部12が形成される壁面11と、壁面11に形成される開口部12を気密に閉塞する扉体30と、壁面11の開口部12の上方に設けられ、壁面11に対して平行に扉体30をスライド自在に移動させる扉体駆動装置40と、を備える。
【0010】
壁面11の開口部12には、その外周縁部の全周に亘ってドア枠20が設けられる。このドア枠20は、図2及び図3に示すように、断面略コの字状の板状部材であって、ドア枠20の室外側端面は、開口部12の扉側外周縁部21を構成する。そして、扉側外周縁部21には、全周に亘って矩形状の壁側枠体(枠体)22が取り付けられる。
【0011】
壁側枠体22は、ステンレス鋼等の金属や合成樹脂からなる枠状部材であって、この壁側枠体22の室外側端面は、扉体30の閉方向(図2の右方向)に向かって徐々に扉体30との間隔が小さくなるように所定の傾斜角度で形成されて、壁側傾斜面23を構成する。
【0012】
また、壁側枠体22の壁側傾斜面23には、図4に示すように、凹溝形状の弾性部材収容部24が形成されており、この弾性部材収納部24に弾性部材であるパッキン25が取り付けられる。なお、弾性部材収納部24は、壁側傾斜面23と同一の傾斜角度で形成される。
【0013】
パッキン25は、図4に示すように、弾性を有するゴム素材からなる中空状部材であって、このパッキン25の圧接面26は、圧接面側を凸とする湾曲形状に形成される。また、パッキン25の圧接面26は、パッキン25が壁側枠体22の弾性部材収容部24に取り付けられた状態において、壁側傾斜面23よりも外方に突出して配置される。
【0014】
扉体30は、図2〜図4に示すように、フレーム及びパネルを組み立てたステンレス鋼製の平板状部材であって、この扉体30の室内側端面の周縁部は、開口部12の扉側外周縁部21に対向する壁側外周縁部31を構成する。そして、壁側外周縁部31には、全周に亘って矩形状の扉側枠体(枠体)32が取り付けられる。なお、図1中、符号38は埋込引手、符号39は窓部である。
【0015】
扉側枠体32は、ステンレス鋼等の金属や合成樹脂からなる枠状部材であって、この扉側枠体32の室内側端面は、扉体30の閉方向(図2の右方向)に向かって徐々に壁面11との間隔が大きくなるように所定の傾斜角度で形成されて、扉側傾斜面33を構成する。
【0016】
また、扉体30の上端部には、2個の扉付ガイドローラ34が回動自在に組み付けられており、この扉付ガイドローラ34は、後述するカバー47に取り付けられるガイドプレート35に当接している。さらに、扉体30の下端部には、扉付ガイドプレート36が取り付けられており、この扉付ガイドプレート36は、床面13上に回動自在に組み付けられる2個の床付ガイドローラ37と当接している。これにより、扉体30は、ガイドプレート35及び床付ガイドローラ37によりスライド移動が案内されると共に、室外側への移動が抑制されるので、開方向及び閉方向に壁面11と平行にスムースにスライドする。
【0017】
扉体駆動装置40は、図1及び図3に示すように、壁面11の開口部12の上方に床面13と平行に固定されるガイドレール41と、上端部がガイドレール41にスライド自在に組み込まれるローラ43に接続されると共に、下端部が扉体30の上端部に固定される2個の吊り金具42と、吊り金具42をスライドさせるドアエンジン44と、ドアエンジン44を駆動制御する不図示の制御部を有する室外側の制御盤45及び室内側の制御盤46と、を備える。そして、この扉体駆動装置40では、制御盤45,46とドアエンジン44とがそれぞれ電気的に接続されており、各制御盤45,46から入力される信号に応じてドアエンジン44が駆動制御されて、扉体11を開方向又は閉方向にスライドさせる。また、ガイドレール41、吊り金具42、ローラ43、及びドアエンジン44は、壁面11に着脱自在に固定されるカバー47により覆われている。
【0018】
そして、このように構成されたスライド式気密扉装置10では、使用者により制御盤45,46が操作されることによって、ドアエンジン44が駆動制御されて、扉体30をガイドレール41に沿って開方向(図1の左方向)にスライド移動させる。次いで、使用者が通過し一定時間経過すると、ドアエンジン44が駆動制御されて、扉体30をガイドレール41に沿って閉方向(図1の右方向)にスライド移動させる。そして、上記扉体30の閉方向へのスライド移動の際に、壁側枠体22の壁側傾斜面23と扉側枠体32の扉側傾斜面33とが面接触するように接近し、壁側枠体22に取り付けられたパッキン25の圧接面26が、扉側枠体32の扉側傾斜面33に全周に亘って面接触する。次いで、上記接触と同時に、パッキン25と扉側枠体32との競り合いによって、パッキン25の圧接面26と扉側枠体32の扉側傾斜面33との間にスライド方向と直交する圧接力が発生する。これにより、パッキン25の圧接面26が扉側枠体32の扉側傾斜面33に気密を保持して密着するので、壁面11の開口部12が気密に閉塞される。
【0019】
以上説明したように、本実施形態のスライド式気密扉装置10によれば、扉体30は、扉体30の閉方向に向かって徐々に壁面11との間隔が大きくなる扉側傾斜面33を有し、壁面11は、扉体30の閉方向に向かって徐々に扉体30との間隔が小さくなる壁側傾斜面23を有するため、扉体30が開状態から閉状態に1方向にスライドされることにより、扉体30の扉側傾斜面33と壁面11の壁側傾斜面23とが気密に面接触するので、壁面11の開口部12を気密に閉塞することができる。これにより、従来のスライド式気密扉装置のように押付装置を設ける必要がないので、スライド式気密扉装置10の構造を簡素化することができると共に、扉体30を1方向にスライドさせるだけで開口部12を気密に閉塞することができ、スライド式気密扉装置10の開閉時間を短縮することができる。
【0020】
また、本実施形態のスライド式気密扉装置10によれば、壁面11に設けられる壁側枠体22の壁側傾斜面23に弾性部材25を設けるため、扉体30の扉側傾斜面33と壁面11の壁側傾斜面23との間の気密性を向上することができる。これにより、壁面11の開口部12を確実に気密に閉塞することができる。
【0021】
また、本実施形態のスライド式気密扉装置10によれば、弾性部材25は、中空状部材であって、弾性部材25の圧接面26は、圧接面側を凸とする湾曲形状に形成されるため、弾性部材25が扉体30の扉側傾斜面33に接触する際に、圧接面26が弾性変形し易くなるので、扉体30の扉側傾斜面33と壁面11の壁側傾斜面23との間の気密性をさらに向上することができる。これにより、壁面11の開口部12を確実に気密に閉塞することができる。
【0022】
さらに、本実施形態のスライド式気密扉装置10によれば、弾性部材25は、扉体30に設けられる扉側枠体32及び壁面11に設けられる壁側枠体22の少なくとも一方に取り付けられるため、使用による摩耗や経年劣化により弾性部材25の特性が失われたとしても、扉側枠体32及び壁側枠体22を交換することなく、弾性部材25のみを簡単に交換することができるので、スライド式気密扉装置10のメンテナンス性を向上することができる。
【0023】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。
例えば、本実施形態では、弾性部材は、壁側枠体のみに取り付けられているが、これに限定されず、扉側枠体に取り付けても、壁側枠体及び扉側枠体の両方に取り付けてもよい。なお、壁側枠体及び扉側枠体の両方に弾性部材を取り付ける場合、弾性部材の密着性を向上するため、どちらか一方の弾性部材を無垢の板状部材にする方が好ましい。
また、本実施形態では、壁側枠体及び扉側枠体自体の形状により壁側傾斜面及び扉側傾斜面をそれぞれ形成しているが、これに限定されず、壁面の開口部の扉側外周縁部に弾性部材を設け、その弾性部材自体の形状により壁側傾斜面を形成しても、扉体の壁側外周縁部に弾性部材を設け、その弾性部材自体の形状により扉側傾斜面を形成してもよい。この場合、壁側枠体及び扉側枠体は不要である。なお、壁面の扉側外周縁部及び扉体の壁側外周縁部のうちの一方に壁側枠体又は扉側枠体を設け、他方に弾性部材を設けるようにしてもよく、その組み合せは任意である。
また、本実施形態では、壁面に対して1枚の扉体が平行にスライド自在に組み付けられるスライド式気密扉装置に本発明を適用した場合を例示したが、これに代えて、壁面に対して2枚の扉体が平行にスライド自在に組み付けられ、2枚の扉体が壁面に形成される開口部の両側から中央に向かってそれぞれスライドし、開口部の中央において2枚の扉体が召し合わされることにより、壁面の開口部を気密に閉塞するスライド式気密扉装置に本発明を適用してもよい。この場合、扉体は、開口部の中央に向かって徐々に壁面との間隔が大きくなる扉側傾斜面を有し、壁面は、開口部の中央に向かって徐々に扉体との間隔が小さくなる壁側傾斜面を有する。
また、本実施形態では、ドアエンジンを用いて扉体をスライドさせているが、これに代えて、手動で扉体をスライドさせてもよい。
さらに、本実施形態では、使用者が制御盤を操作することにより気密扉を開閉しているが、各種センサーを用いて自動的に開閉するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るスライド式気密扉装置の一実施形態を説明するための正面図である。
【図2】図1のA−A線矢視断面図である。
【図3】図1のB−B線矢視断面図である。
【図4】図4は図2に示すスライド式気密扉装置の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0025】
10 スライド式気密扉装置
11 壁面
12 開口部
13 床面
20 ドア枠
21 扉側外周縁部
22 壁側枠体(枠体)
23 壁側傾斜面
24 弾性部材収容部
25 パッキン(弾性部材)
26 圧接面
30 扉体
31 壁側外周縁部
32 扉側枠体(枠体)
33 扉側傾斜面
34 扉付ガイドローラ
35 ガイドプレート
36 扉付ガイドプレート
37 床付ガイドローラ
38 埋込引手
39 窓部
40 扉体駆動装置
41 ガイドレール
42 吊り金具
43 ローラ
44 ドアエンジン
45,46 制御盤
47 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に対して扉体が平行にスライド自在に組み付けられ、前記扉体により前記壁面に形成される開口部を気密に閉塞するスライド式気密扉装置であって、
前記扉体は、前記扉体の閉方向に向かって徐々に前記壁面との間隔が大きくなる扉側傾斜面を有し、
前記壁面は、前記扉体の閉方向に向かって徐々に前記扉体との間隔が小さくなる壁側傾斜面を有することを特徴とするスライド式気密扉装置。
【請求項2】
前記扉体の壁側外周縁部及び前記壁面の前記開口部の扉側外周縁部の少なくとも一方に弾性部材を設け、
前記弾性部材自体の形状により、前記扉側傾斜面及び前記壁側傾斜面を形成することを特徴とする請求項1記載のスライド式気密扉装置。
【請求項3】
前記扉体の壁側外周縁部及び前記壁面の前記開口部の扉側外周縁部の少なくとも一方に矩形状の枠体を設け、
前記枠体自体の形状により、前記扉側傾斜面及び前記壁側傾斜面を形成することを特徴とする請求項1記載のスライド式気密扉装置。
【請求項4】
前記扉体の前記壁側外周縁部に設けられる前記枠体及び前記壁面の前記開口部の前記扉側外周縁部に設けられる前記枠体の少なくとも一方に弾性部材を設けることを特徴とする請求項3記載のスライド式気密扉装置。
【請求項5】
壁面に対して2枚の扉体が平行にスライド自在に組み付けられ、前記2枚の扉体が前記壁面に形成される開口部の両側から中央に向かってそれぞれスライドし、前記開口部の中央において前記2枚の扉体が召し合わされることにより、前記壁面の前記開口部を気密に閉塞するスライド式気密扉装置であって、
前記扉体は、前記開口部の中央に向かって徐々に前記壁面との間隔が大きくなる扉側傾斜面を有し、
前記壁面は、前記開口部の中央に向かって徐々に前記扉体との間隔が小さくなる壁側傾斜面を有することを特徴とするスライド式気密扉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−277917(P2007−277917A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105484(P2006−105484)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【Fターム(参考)】