説明

スライド式鋼管配管

【課題】 伸縮部分を越えて流体を送るためのスライド式鋼管配管を提供すること。
【解決手段】 シリンダ10によって構成された伸縮部を越えて伸縮方向の一方から他方へ流体を送るためのものであって、径の異なる複数の鋼管35,36がシール部材によって管内が気密な状態になるように重ねられ、最大径の鋼管35の一端と最小径の鋼管36の一端とが、シリンダ10のシリンダチューブ10bのヘッド側とピストンロッド10aとのいずれか一方ずつに連結され、シリンダ10の伸縮作動に連動して軸方向にスライドして伸縮するスライド式鋼管配管35,36。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、油圧シリンダなどの伸縮機構に油圧モータが一体に構成されているような装置であって、その伸縮機構を越えて反対側から油圧モータに作動油などの流体を供給するためのスライド式鋼管配管に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に縦坑を掘削する場合には、チュービング装置などによって地中に回転圧入したケーシング内の土をスクリュウで掘削する一方で、掘り進んだ土を保持したままケーシングの外へ排土する縦坑掘削装置が使用される。下記特許文献1には、そうした縦坑掘削装置が開示されている。図8は、同文献に記載されたものと同様の縦坑掘削装置を示した図である。
【0003】
縦坑掘削装置100は、下から先端部に掘削ビット101を有するスクリュウ102、そのスクリュウ102を回転させる駆動モータ103が連結されている。スクリュウ102は、先端の掘削ビット101が外に出るだけの長さで形成された排土パイプ104の中にあって、その掘削した土をその排土パイプ104内に保持できるようになっている。一方、駆動モータ103は、中心軸の延長上に対称的に2台設けられ、その2台の駆動モータ103からの回転出力がギヤ105を介してスクリュウ102に伝達されるようになっている。
【0004】
そうした駆動モータ103には、スクリュウ102とともにケーシング200内を上下させるための油圧シリンダ(昇降シリンダ)110が連結されている。
昇降シリンダ110は、中筒111と外筒112とからなる二重管に内包され、中筒111には下向きのピストンロッドが軸着され、外筒112にはシリンダチューブが軸着されている。そして、中筒111は下方の駆動モータ103に連結され、外筒112にはケーシング200に対して位置決めするための位置決機構が設けられている。
【0005】
位置決機構は、外筒112にクランプ用の油圧シリンダ(位置決シリンダ)115が外筒112側に軸支され、上方を向いたそのピストンロッドには楔形をした押圧ブロック116が軸着されている。そして、その押圧ブロック116の外側には、ケーシング200の内壁に押し当てられる位置決ブロック117が設けられている。図8には、中心線左側に位置決め解除状態を示し、中心線右側の位置決め状態を示している。
押圧ブロック116と位置決ブロック117とは、重なり合ったテーパ面同士が摺接するように連結されている。位置決シリンダ115、押圧ブロック116、そして位置決ブロック117などからなる位置決機構は、周上に等間隔で複数配置されている。
【0006】
こうした縦坑掘削装置100は、外筒112のブラケット120にクレーンからのワイヤを連結して吊り下げられ、埋設したケーシング200内に挿入される。その際、収縮状態の位置決シリンダ115が伸張作動することによって押圧ブロック116が上昇し、それに伴って位置決ブロック117が外側に押される。複数の位置決ブロック117がケーシング200内壁に押し当てられ、その摩擦力によって縦坑掘削装置100が位置決めされる。
【0007】
そこで次に、収縮状態の昇降シリンダ110が伸張作動する一方で、駆動モータ103によって回転が出力される。回転するスクリュウ102が下降して下端の掘削ビット101によって掘削が行われる。掘削ビット101によって掘削されたケーシング200内の地盤は、下降するスクリュウ102を相対的に上昇し、その掘削土はスクリュウ102を覆う排土パイプ104内に閉じこめられる。排土パイプ104内に掘削土が溜まったところで縦坑掘削装置100をケーシング200の外へ引き上げる。そして、駆動モータ103を逆回転させることにより、排土パイプ104内に溜まった掘削土を排出する。
【特許文献1】特開2003−172087号公報(第5−6頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に記載された縦坑掘削装置100では、駆動モータ103へ作動油を供給するため、図8には示されていないが、この装置を吊り下げるワイヤと一緒に油圧ホースがケーシング200の中に送られ、更にその油圧ホースは、昇降シリンダ110を覆う中筒111及び外筒112に囲まれた空間を通って駆動モータ103へと連結されている。こうした油圧ホースは、駆動モータ103に接続する間に伸縮する昇降シリンダ110が存在するため、中筒111及び外筒112内では昇降シリンダ110のストローク分の長さを有し、昇降シリンダ110が収縮状態のときは中筒111及び外筒112内で撓むようにしなっている。
【0009】
しかし、例えば縦坑掘削装置100の場合には昇降シリンダ110が1.5m程伸びるため、その長さの油圧ホースを撓ませておくと、昇降シリンダ110の伸縮を繰り返すうちに油圧ホースが引っかかってしまうおそれもある。そこで、その他の方法として例えばホースリールを用いて、昇降シリンダ110の伸縮に応じて油圧ホースを送り、また引き戻すようにすることも考えられるが、狭いケーシング200内に複数のホースに対応したホースリールを配置するのは困難である。
こうした問題は、例示した縦坑掘削装置100に限らず、伸縮部分を越えて流体を送るようにした構造のものについて共通の問題であるため、伸縮に対応した配管構造がのぞまれている。
【0010】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、伸縮部分を越えて流体を送るためのスライド式鋼管配管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るスライド式鋼管配管は、シリンダによって構成された伸縮部を越えて伸縮方向の一方から他方へ流体を送るためのものであって、径の異なる複数の鋼管がシール部材によって管内が気密な状態になるように重ねられ、最大径の鋼管の一端と最小径の鋼管の一端とが、前記シリンダのシリンダチューブのヘッド側とピストンロッドとのいずれか一方ずつに連結され、前記シリンダの伸縮作動に連動して軸方向にスライドして伸縮するものであるこを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るスライド式鋼管配管は、前記鋼管が、径の大きい外側鋼管内に径の小さい内側鋼管が挿入され、外側鋼管側の端部に設けられたシール部材を摺動して内側鋼管が軸方向に摺動するものであって、その外側鋼管はシリンダチューブのヘッド側に固定され、内側鋼管はピストンロッドに同芯に配置した軸受けを介して連結されたものであることが好ましい。
また、本発明に係るスライド式鋼管配管は、前記外側鋼管が、シリンダチューブのヘッド側に固定された複数のポートを備える固定プレートに連結され、前記内側鋼管が、ピストンロッドに同芯に配置した軸受けを介して設けられた複数のポートを備える可動プレートに連結されたものであり、その固定プレートと可動プレートには複数の外側鋼管と内側鋼管とが連結されたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
よって、本発明のスライド式鋼管配管によれば、シリンダの伸縮作動に連動してスライドして伸縮する複数の鋼管内に流体を流すことにより、伸縮部分を越えて例えば油圧シリンダへ作動油を供給することができる。そして、このスライド式鋼管配管は、例えば外側鋼管と内側鋼管とで構成されるような簡単な構造であって、縦坑掘削装置などの限られたスペースにもコンパクトに納めることができる。しかも、油圧シリンダの周りに複数設けることができ、異なる流体を伸縮部分を越えて送ることができる。
また、油圧シリンダは伸張するときに外力によってピストンロッドが回転させられることがあるが、そうした場合にも軸受けを介して連結することによって、ピストンロッドの回転をスライド式鋼管配管部に伝達させないようにしてシール部分の気密性を保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明に係るスライド式鋼管配管を備えた縦坑掘削装置について一実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。本実施形態のスライド式鋼管配管は、前記従来例で挙げたものと同様の縦坑掘削装置に組み込まれたものである。図1及び図2は、ケーシング内に挿入された本実施形態の縦坑掘削装置について、スクリュウ部分を省略して示した図である。特に、図1は外観を示した図であり、図2は内部を示した断面図である。
【0015】
図に示した縦坑掘削装置1は、上方に伸縮部を有し、下方には不図示のスクリュウを回転させる回転駆動部を有している。伸縮部は、中心線上に油圧シリンダ(昇降シリンダ)10が配置され、その昇降シリンダ10が中筒11と外筒12とに覆われている。
ピストンロッド10aを下向きに配置された昇降シリンダ10は、そのピストンロッド10aが中筒11側に軸着され、シリンダチューブ10bが外筒12側に軸着されている。外筒12に対して下側から挿入された中筒11は、この昇降シリンダ10の伸縮によって下方に伸縮する伸縮部材となっている。
【0016】
縦坑掘削装置1は、クレーンから送られるワイヤによって吊下げフレーム13が吊り下げられるが、外筒12は、その吊下げフレーム13に固定されている。そして、吊下げフレーム13には外筒12の周りに4つの油圧シリンダ(位置決シリンダ)14が設けられている。位置決シリンダ14は、90度の等間隔で配置され、ピストンロッド10aを下方にして吊設されている。そして、下方に突き出したそのピストンロッドには、位置決シリンダ14の伸縮によって上下する昇降フレーム15が固定されている。昇降フレーム15は外筒12が貫く環状のフレームであって、その下には位置決シリンダ14に対応する位置に楔形の押圧ブロック16が吊り下げられている。
【0017】
押圧ブロック16の外側には、径方向にスライド可能であって、ケーシング200の内壁に押し付けられ、この縦坑掘削装置1全体をケーシング200に対してずれないように位置決めする位置決ブロック17が設けられている。位置決ブロック17は、下方の回転駆動部側に固定された支持台18に設けられ、ケーシング200に縦坑掘削装置1を挿通している時には、図示するようにケーシング200内壁とは離れた位置にある。そして、押圧ブロック16と位置決ブロック17とは重なり合ったテーパ面によって摺接している。
【0018】
こうした伸縮部の下に設けられた回転駆動部は、2台の駆動モータ20がケース21内に設けられ、中心軸に対して対称的な位置に配置されている。そして、詳しく図示していないが、各駆動モータ20の回転軸にはギヤを介して回転がスクリュウに伝えられるように回転伝達機構が構成されている。
【0019】
縦坑掘削装置1の吊下げフレーム13には、クレーンからのワイヤを連結する吊下げブラケット25や、流体を流すホースを接続するポートが形成された接続台26が設けられている。そして、その接続台26は、吊下げフレーム13の上面を構成する固定プレート31に取り付けられている。吊下げフレーム13は、図2から分かるように環形状をしており、その上面は昇降シリンダ10が固定された固定プレート31によって塞がれている。そして、その昇降シリンダ10は、吊下げフレーム13から下方に突き出すようにして設けられている。
【0020】
ここで図3は、縦坑掘削装置1に設けられた、本発明に係るスライド式鋼管配管の構造を示した図である。このスライド式鋼管配管は、接続台26のポート26aに接続された不図示のホースから送られた作動油を昇降シリンダ10を越えて、下の駆動モータ20へと供給するようにしたものである。
ただし、接続台26には作動油以外の流体も送れるように複数のポート26aが構成されている。そして、作動油以外の流体も昇降シリンダ10を越えて下方に送ることができるように、複数のスライド式鋼管配管が昇降シリンダの周りに構成されている。作動油以外の流体としては、例えば、スクリュウ先端から噴出させる地盤改良のためのセメントミルクや、掘削ビットへの土の付着を防止するためのエアなどがある。
【0021】
図3に示すように、昇降シリンダ10のシリンダチューブ10bのヘッド側には固定プレート31がネジ止めされ、反対のピストンロッド10a側には、先端のブラケット19に可動プレート32が取り付けられている。ピストンロッド10aが先端のブラケット19によって中筒11に対してピンを通して軸着され、その中筒11は駆動モータ20を囲むケース21に固定されている。従って、そのブラケット19に設けられた可動プレート32は、ケース21内の駆動モータ20と一緒に上下動するようになっている。
【0022】
スライド式鋼管配管は、こうした固定プレート31と可動プレート32、更にシリンダチューブ10bのヘッド側に固定された補助プレート33に支持されるようにして設けられている。すなわち、スライド式鋼管配管は、図3に示すように、固定プレート31と補助プレート33に接続して外側鋼管35が設けられ、その中に挿入された内側鋼管36が可動プレート32に連結されている。
【0023】
図3に示した外側鋼管35と内側鋼管36からなるスライド式鋼管配管は、駆動モータ20に作動油を供給するための油圧配管であり、一方が供給側で、他方が排出側をなしている。その油圧配管を構成する外側鋼管35は、一端が固定プレート31のポート部分に差し込まれるようにして連結され、補助プレート33側には、その補助プレート33に固定された摺接管37に接続されている。摺接管37の内部には、外側鋼管35内に挿入された内側鋼管36が摺接するシール部材としてOリングが複数はめ込まれている。そして、可動プレート32にはポートブロック38が固定され、そのポートブロック38に内側鋼管36が接続されて一体となっている。
【0024】
次に、図4は、固定プレート31を示した図であり、図5は、補助プレート33を示した図である。特に図4は、図3の上方から見た図であり、手前に油圧配管の油圧ポート41が2つ形成され、更にエアを供給するためのエア配管に連通するエアポート42やその他のポート43,44も形成されている。一方、図3の下方から見た図5の補助プレート33には、固定プレート31に対応した位置に油圧配管の油圧用貫通孔51が2つ形成され、更にエア配管のためのエア用貫通孔52やその他の貫通孔53,54も形成されている。なお、図示しないが、内側鋼管36が接続される可動プレート32にも、補助プレート33と一致するようにポートブロック38が図3に示すように取り付けられている。
【0025】
また、固定プレート31には、昇降シリンダ10に作動油を供給するヘッド側ポート45とロッド側ポート46が形成されている。そして更に、図4に示した固定プレート31には、同一円周上に昇降シリンダ10をネジ止めするボルト47が配列し、更にその外側には4方にこの固定プレート31を吊下げフレーム13に固定するためのボルト穴48が2個ずつ形成されている。
【0026】
次に、図6は、図4及び図5に示したエアポート42,52に接続して構成されたエア配管の構造を示した図である。エア配管は、固定プレート31と補助プレート33に接続して外側鋼管61が設けられ、その中に挿入された内側鋼管62が可動プレート32に連結されている。外側鋼管61は、その一端が固定プレート31のポート部分に差し込まれるようにして連結され、補助プレート33側には、その補助プレート33に固定された摺接管63に接続されている。摺接管63の内部には、外側鋼管61内に挿入された内側鋼管62が摺接するシール部材としてOリングが複数はめ込まれている。そして、可動プレート32にはポートブロック38が固定され、そのポートブロック64に内側鋼管62が接続されて一体になっている。
【0027】
図7は、昇降シリンダ10へ作動油を供給する油圧配管構造を示した図である。前述したように、固定プレート31には昇降シリンダ10に作動油を供給するヘッド側ポート45とロッド側ポート46が形成されている。内側に形成されたヘッド側ポート45は、ピストン上方のシリンダチューブ10b内に直接連通し、外側に形成されたロッド側ポート46は、パイプが接続されてピストン10c下方に連通している。
【0028】
スライド式鋼管配管は、図4及び図5から分かるように、中心に配置された昇降シリンダ10の周りに設けられ、図3や図6に示すように外側鋼管35,61が昇降シリンダ10のシリンダチューブ10bに一体的に取り付けられ、内側鋼管36,62がピストンロッド10aに追随するように可動プレート32を介して取り付けられている。
ところで、こうした構成では、昇降シリンダ10が伸張するときピストンロッド10aにねじりが多少でも生じると、内側鋼管36に傾きが生じ、外側鋼管35とのシール部分に隙間ができてしまう。そこで、本実施形態では、内側鋼管36にピストンロッド10aの回転が伝わらないように、可動プレート32がピストンロッド10aと同芯に設置したベアリング39を介してピストンロッド10aに取り付けられている。そして、可動プレート32のポートブロック38には図2に示すように駆動モータ20に接続されたホース40が接続されている。
【0029】
続いて、こうしたスライド式鋼管配管を備える本実施形態の縦坑掘削装置1では、次のようにしてケーシング200内の掘削及び排土が行われる。
縦坑掘削装置1は、吊下げフレーム13側にクレーンからのワイヤを連結して垂直に吊り下げられ、チュービング装置によって回転圧入され地中に埋設されたケーシング200内に挿入される。図1及び図2には示していないが、従来例で示したものと同様にスクリュウが接続されている。スクリュウは、駆動モータ20の回転駆動によって回転し、昇降シリンダ10の伸長作動によって下降する。そして、先端の掘削ビットがケーシング200内の土を掘削していく。このとき、掘削による反力によって装置が浮き上がらないようにケーシング200内での位置決めが行われる。そして、位置決めとその解除とを繰り返して掘り進んでいく。
【0030】
ケーシング200内での位置決めは、位置決シリンダ14を伸張させると昇降フレーム15を介して押圧ブロック16が下降する。それによって下降方向の位置決シリンダ14による出力が摺接したテーパ面を介して位置決ブロック17を外側に押し出す。そのため、位置決ブロック17がケーシング200内面に強く押しつけられ、その押しつけ面の摩擦力によって吊下げフレーム13及び外筒12がケーシング200に対して位置決めされる。そして、この状態で昇降シリンダ10を伸長作動させれば、ピストンロッド10aが伸びて駆動モータ20および、その下のギヤなど動力伝達部やスクリュウを下降させることになる。
【0031】
昇降シリンダ10は、図7に示すヘッド側ポート45から作動油が供給されピストン10cが上方から加圧されて下降し、ピストンロッド10aが下方に伸びる。一方、ロッド側ポート46から作動油が供給されればピストン10cが下方から加圧されて押し上げられ、ピストンロッド10aが上昇してシリンダチューブ10b内に収縮する。ただし、このときケーシング200に対する位置決めを解除すると、スクリュウが地中に噛み込んでいるためシリンダチューブ10bが下降し、外筒12及び吊下げフレーム13や位置決シリンダ14などからなる位置決機構が下降する。従って、こうした昇降シリンダ10の伸縮とケーシング200の位置決を繰り返すことよって、尺取り虫のようにして下降し、掘削を行う。2回分の伸縮による掘削によって排土パイプ内に掘削土が溜まるので、その度にケーシング200から縦坑掘削装置1を引き上げて、外に掘削した土を排出する排土も行われる。
【0032】
こうして昇降シリンダ10が伸縮して行われる掘削では、その伸縮部分を越えて駆動モータ20へ作動油が供給される。昇降シリンダ10が伸長作動によってピストンロッド10aが伸びると、可動プレート32を介して連結された内側鋼管36,62が外側鋼管35,61から引き出され、逆に取縮作動によって内側鋼管36,62が外側鋼管35,61内に押し入れられる。外側鋼管35,61と内側鋼管36,62とは、こうして昇降シリンダ10に連動して伸縮する。そして、この伸縮する内側鋼管36,62及び外側鋼管35,61からなるスライド式鋼管配管を通して駆動モータ20に作動油の供給と排出が行われ、その他にもエアの吹き出しやセメントミルクの注入が行われたりする。
【0033】
よって、本実施形態の縦坑掘削装置1は、スライド式鋼管配管35,36/61,62によって、昇降シリンダ10の設けられた伸縮部分を越えて作動油やエアなどの流体を送ることができるようになった。そして、主に外側鋼管35,61と内側鋼管36,62とからなる簡単な構成であり、昇降シリンダ10の周りにあって中筒11及び外筒12の中にコンパクトに設けることができた。しかも、複数のスライド式鋼管配管を設けることができるため、前述したようにエアやセメントミルクなど様々な流体を送ることが可能になり、縦坑掘削装置1やその他の装置において様々な用途での対応が利くようになった。
【0034】
更に、昇降シリンダ10が伸張するときピストンロッド10aにねじりが生じても、可動プレート32がベアリング39を介してピストンロッド10aに取り付けられているので、内側鋼管36にピストンロッド10aの回転が伝わらない。そのため、内側鋼管36に傾きが生じことがなく、外側鋼管35とのシール部分には隙間を生じさせることなく気密な状態を保つことができる。日本の土壌は水分を多く含んでいるため、中筒11及び外筒12の中にも泥水の浸入が生じる。その場合、作動油の流路内に泥水などが入ってしまうと油圧ユニットに入ってバルブやポンプなどを壊してしまうおそれがある。しかし、本実施形態ではシール部分が気密なため、そうした問題も生じない。
【0035】
以上、一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、縦坑掘削装置1を例に挙げて説明したが、伸縮部分を越えて流体を送る必要のあるその他の装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】ケーシング内に挿入された一実施形態の縦坑掘削装置について、スクリュウ部分を省略して示した外観図である。
【図2】ケーシング内に挿入された一実施形態の縦坑掘削装置について、スクリュウ部分を省略して示した断面図である。
【図3】縦坑掘削装置に設けられたスライド式鋼管配管を示した断面図である。
【図4】油圧シリンダのヘッド側に設けられた固定プレートを示した図である。
【図5】油圧シリンダのロッド側に設けられた補助プレートを示した図である。
【図6】縦坑掘削装置に設けられたスライド式鋼管配管を示した断面図である。
【図7】昇降シリンダへ作動油を供給する油圧配管構造を示した図である。
【図8】従来の縦坑掘削装置を示した図である。
【符号の説明】
【0037】
1 縦坑掘削装置
10 油圧シリンダ
10a ピストンロッド
10b シリンダチューブ
11 中筒
12 外筒
14 チャックシリンダ
20 油圧モータ
31 固定プレート
32 可動プレート
33 補助プレート
35 外側鋼管
36 内側鋼管
200 ケーシング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダによって構成された伸縮部を越えて伸縮方向の一方から他方へ流体を送るためのものであって、
径の異なる複数の鋼管がシール部材によって管内が気密な状態になるように重ねられ、最大径の鋼管の一端と最小径の鋼管の一端とが、前記シリンダのシリンダチューブのヘッド側とピストンロッドとのいずれか一方ずつに連結され、前記シリンダの伸縮作動に連動して軸方向にスライドして伸縮するものであるこを特徴とするスライド式鋼管配管。
【請求項2】
請求項1に記載するスライド式鋼管配管において、
前記鋼管は、径の大きい外側鋼管内に径の小さい内側鋼管が挿入され、外側鋼管側の端部に設けられたシール部材を摺動して内側鋼管が軸方向に摺動するものであって、
その外側鋼管はシリンダチューブのヘッド側に固定され、内側鋼管はピストンロッドに同芯に配置した軸受けを介して連結されたものであることを特徴とするスライド式鋼管配管。
【請求項3】
請求項2に記載するスライド式鋼管配管において、
前記外側鋼管は、シリンダチューブのヘッド側に固定された複数のポートを備える固定プレートに連結され、前記内側鋼管は、ピストンロッドに同芯に配置した軸受けを介して設けられた複数のポートを備える可動プレートに連結されたものであり、その固定プレートと可動プレートには複数の外側鋼管と内側鋼管とが連結されたものであることを特徴とするスライド式鋼管配管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−144916(P2006−144916A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−335912(P2004−335912)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】