説明

スラグ粒子群を人工砂とする改質方法ならびに人工砂

【課題】海域に投入放置しても粗大な団塊物に固結化しにくく、水溶出pHが9未満で、水系環境ならびに生態系環境に悪影響を及ぼさない廃棄物スラグ粒子群の提供。
【解決手段】スラグ粒子群100質量部に対して、アルミニウム成分を酸化アルミニウムで換算して0.2ないしは2質量部を含む粉粒体からなる改質材、ならびに少なくとも5質量部の水系溶媒を加え、三者をクラッシング混合する、このとき起こる複分解反応により、スラグ粒子群の粒子表面にアルミニウム含有化合物からなる改質層を形成せしめ、必要に応じて脱水処理する、砂状スラグ粒子群の表面が改質処理されて水溶出pH値が5.8ないしは8.6の中性域に確保されている人工砂のとする方法ならびに改質処理された人工砂の提供にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、鉄鋼業界、非鉄金属業界およびゴミや汚泥の焼却灰類の溶融処理業界等において排出され、処理・処分に窮しているカルシヤ成分ならびにシリカ成分を主成分とするスラグ粒子群を水溶出pH値が中性域に確保されている砂状スラグ粒子群からなる人工砂に改質処理する「改質方法」、また上記の改質方法を活用してスラグ粒子群の表面に改質層が形成されて水溶出pH値が中性域に確保されている砂状スラグ粒子群からなる「人工砂」に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に係わる背景技術は、本発明で処理対象とするスラグ粒子群が、鉄鋼業界、非鉄金属業界、ゴミや汚泥の焼却灰類の溶融処理業界等において、処理対象物を高温で溶融処理したときに溶融物として排出され、この排出溶融物を徐冷ないし急冷により水砕されて塊状物、針状物、繊維状物、粉粒状物等として年間約300百万トンの大量排出されており、環境問題とも対応して処理・処分に窮している現状を改善し、廃棄物類を積極的に再資源化資材として活用する技術にある。
【0003】
スラグ粒子群は、カルシヤやシリカを主成分とするガラス質状態にある処理・処分を必要とする廃棄物の一種である。しかも、これらスラグ粒子群の用途は、建設材料、道路充填材、コンクリート等骨材、地盤改良材、土工用材料、肥料、ガラス原料等に利用されていが、特にスラグ粒子群を加工スラグ粒子群に加工処理した人工砂として水系環境で使用するときは、国の定める水質の環境基準を超えてしまう傾向にあることから、社会問題や環境問題を起こしており、用途には自ずと制限が加わり、汎用性に欠けており、問題を解消する対策技術が未完成なところに背景技術がある。
【0004】
この廃棄物類であるスラグ粒子群を加工処理して加工スラグ粒子群からなる人工砂として利用しようとするとき、特に海域で利用しようとするときは、加工スラグ粒子群の水溶出pH値が9以上、条件によっては11以上と高いアルカリ性を呈する傾向にあること、また加工スラグ粒子群は、海水中に放置されると全体が固結化して大きな団塊となり、サラサラした砂状態を確保することが困難な傾向にある。
【0005】
このようにスラグ粒子群が加工処理されている加工スラグ粒子群からなる人工砂は、一般に酸化物基準で表して酸化カルシウムを22質量%以上、一般には37質量%以上含有するケイ酸塩からなるガラス状態にあるスラグ粒子群を物理的に加工処理して砂状態に調製されているのが一般的である。
【0006】
この物理的な粉砕・磨砕・分級等による加工処理を受けることにより、ガラス質のスラグ粒子群の表面は、メカノケミカル的に刺激されて活性化され、ガラス状であったカルシウム成分がイオン化して水溶出しやすい状態になり、水溶出pH値が9以上、条件によっては11以上と高いアルカリ性を呈する傾向にあることは避けられず、スラグ粒子群を加工処理した人工砂を天然砂の代替品として各種用途に提供しても、この人工砂の水溶出pH値が高いことから、使用環境での二次公害発生が避けられず、汎用用途での使用には自ずと制限されているのが現状である。
【0007】
また、加工スラグ粒子群は物理的な加工処理を受けていることから水溶出pH値が高く、海水中で団塊物に固結化してしまう傾向にある。この現象も、スラグ粒子群が含有するカルシウム成分がメカノケミカル的な刺激によりイオン化し、海水中に投入し静置された時にケイ酸カルシウム等の水和鉱物を形成して加工スラグ粒子群の粒子同士が固結化して団塊を形成する傾向にあり、天然砂における砂場や魚介類養殖場の代替場所としての利用を不能にしている。
【0008】
以上の問題点を解消するために、従来、高炉スラグ粒子群等の水砕品の砂粒品を海域で再利用しようとするときは、自然界にある砂類や底質等の浚渫土をスラグ砂粒品に混和せしめる方法、または高炉スラグ粒子群等の水砕品を特殊な物理的に加工処理する方法等が採択されてきた。しかるにこれらの方法ではpH値の上昇ならびに固結化を防ぎ、海域における生態系への安全な再生・修復方法としては充分に満足される技術でなく、加工スラグ粒子群を充分安全な土木資材として活用可能な技術開発は完成していない。
【0009】
また、pH値が高くイオン性カルシウムを放出する加工スラグを硫酸等の酸で中和せしめる考え方もあるが、硫酸等を用いた場合、砂状スラグ表面に一旦硫酸塩を沈着付着せしめることはできるが、これらの硫酸塩は砂状スラグ母体の表面にしっかりと結着・結合している状態にはなく、沈着付着している硫酸塩であることから、波動等の外力により容易に母体より剥離する傾向にあり、中和処理された砂状スラグでは沈着付着した硫酸塩を長期に亘り加工スラグ粒子群粒子表面に結着被膜せしめておくことはできない。
【0010】
また現在、天然砂を必要とする土木分野等では、天然砂としての資源の枯渇と共に天然砂採掘により生じる環境問題に直面しおり、天然砂の採掘ならびに確保が困難な状況にあり、天然砂の需要家への供給が窮屈な状態にあり、天然砂の代替品の供給、しかも大量の供給が求められている。
【0011】
また、スラグ粒子群の供給許である鉄鋼業界等では、副生されるスラッグ類の処理・処分先に窮しており、鉄鋼業界等における生産体制の正常な発展のためにも副生スラッグ類の積極的な用途開発、特に大型の用途市場の開拓が急がれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、カルシヤやシリカ成分を主成分とするスラグ粒子群を加工処理した加工スラグ粒子群からなる人工砂の水溶出pH値が9を超えて10以上と高いことから、その加工スラグ粒子群を利用しようとするとき、使用環境に二次公害からなる悪影響を及ぼすことから、加工スラグ粒子群を天然砂の代替品として使用するには自ずと制限があり、低コストの土木資材等として汎用提供できないところにある。
【0013】
また、スラグ粒子群を海域の干潟や浅場で利用しようとする時、高炉スラグ等の水砕品を砂粒状に加工して海域に投入すると、加工スラグ粒子群は砂粒状態を確保できず、粗大な団塊物に固結してしまい、生息する貝類や魚類の生態系に悪影響を及ぼす傾向にあり、生態系に安全な砂状スラグ粒子群への改質処理技術の開発が課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、スラグ粒子群を人工砂に加工改質処理するに際して、スラグ粒子群に水系溶媒を介して改質材を加え、必要に応じて粒度調整を伴って、スラグ粒子群表面と改質材との間で起こる複分解反応により、スラグ粒子群を砂状スラグ粒子群からなる人工砂に改質処理せしめる改質方法において;
【0015】
上記のスラグ粒子群が、酸化物基準で表してカルシヤを22ないしは48質量%、ならびにシリカを28ないしは42質量%を主成分とするケイ酸塩ガラスからなる針状部を有する水砕スラグ粒子群、もしくは予め水砕スラグ粒子群粒子群の針状部を物理的加工処理で除去したスラグ粒子群の粒子群の70質量%以上が、テーラー標準篩で35ないしは6メッシュの間にあり、水溶出pH値が9以上の加工スラグ粒子群であり;
【0016】
上記の水系溶媒が、自然水、人工水ないしは酸性溶液の群より選ばれる単独ないし2種以上の組み合わせの水系液体であり;
【0017】
上記の改質材が、アルミニウム塩化合物を基礎成分とする粉粒体、ないしは必要に応じて基礎成分100質量部に対して鉄含有化合物からなる補足成分を100質量部以下の量で加えた組み合わせの複合粉粒体で構成されており;
【0018】
上記改質材の基礎成分であるアルミニウム塩化合物が、下記組成式(1)
【化1】
aAl・bTO・cAlCl・wHO ……………… (1)
[式中;Tは窒素、硫黄、ホウ素、リン元素群の単独ないし2種以上の組み合わせ元素、a、bおよびcは零を含む10以下の数、mは1ないし3の数、wは零を含む12以下の数]で表されるアルミニウム塩化合物の群より選ばれる単独ないし2種以上の組み合わせの正塩、塩基性塩、酸性塩または酸化性塩の単独化合物ないしは複合化合物であり;
【0019】
上記改質材の補足成分である鉄含有化合物が、下記組成式(2)
【化2】
aFeOn/2・bTO・cFeXn/2・wHO ……… (2)
[式中;Tは窒素、硫黄、ホウ素、リン元素群の単独ないし2種以上の組み合わせ元素、Xはハロゲン元素もしくは硫黄元素、a、bおよびcは零を含む10以下の数、nは2ないし3の数、wは零を含む12以下の数]で表される鉄含有化合物の群より選ばれる単独ないし2種以上の組み合わせの正塩、塩基性塩、酸性塩または酸化性塩の単独化合物ないしは複合化合物であり;
【0020】
上記の改質方法が、スラグ粒子群である水砕スラグ粒子群もしくは加工スラグ粒子群の乾燥物基準換算で100質量部に対して、改質材に含有するアルミニウム成分を酸化物基準の酸化アルミニウムで換算して0.1ないしは2質量部に相当する量の粉粒体ないしは複合粉粒体からなる改質材、ならびに少なくとも5質量部の水系溶媒を加えた三者を撹拌混合方式により水系溶媒を介して改質材とスラグ粒子群を混和接触せしめて混和物とする混和工程、必要に応じて該混和物をクラッシング方式と分級により粒度調整されて濡れている加工スラグ粒子群とする整粒工程、次いで水系溶媒を介して改質材で濡れている加工スラグ粒子群を常温ないしは80℃に少なくとも60分間放置養生して粒子表面で起こる複分解反応によりアルミノケイ酸塩からなる結着物で構成される改質層を形成せしめる養生工程、さらに必要に応じて室温ないし190℃の雰囲気条件下に曝露して脱水処理する脱水工程で構成される改質方法であり;
【0021】
上記の人工砂が、上記の改質方法により、スラグ粒子群の粒子群の70質量%以上が、テーラー標準篩で35ないしは6メッシュの間にあり、スラグ粒子群の粒子表面に改質層が形成されており、水溶出pH値が5.8ないし8.6の中性域に確保されている砂状スラグ粒子群からなる人工砂に調製されている改質方法が提供される。
【0022】
本発明によれば、前記のスラグ粒子群が、製鉄業界から副生される高炉スラグである改質方法が提供される。
【0023】
本発明によれば、前記の基礎成分であるアルミニウム塩化合物が、下記組成式(3)
【化3】
Al・mSO・wHO ……………… (3)
[式中;mは2ないしは5の数、wは零を含む24以下の数]で表されるアルミニウムの硫酸塩化合物の群より選ばれる単独ないし2種以上の組み合わせの正塩、塩基性塩もしくは酸性塩化合物からなる硫酸アルミニウムである改質方法が提供される。
【0024】
本発明によれば、前記の水系溶媒が、海水である改質方法が提供される。
【0025】
本発明によれば、前記の水系溶媒における酸性溶液が、硫酸、塩酸、硝酸、有機酸ないしは廃酸類の群より選ばれる単独ないし2種以上の組み合わせの酸濃度が10質量%以下である酸性溶液である改質方法が提供される。
【0026】
本発明によれば、前記の改質方法により、スラグ粒子群が砂状粒子群に加工改質処理されて、粒子群の70質量%以上が、テーラー標準篩で35ないしは6メッシュの間にあり、粒子群の粒子表面にアルミニウム含有化合物からなる結着物で構成される改質層が形成されており、水溶出pH値が5.8ないしは8.6の中性域に確保されている砂状スラグ粒子群からなる人工砂が提供される。
【0027】
本発明によれば、前記の砂状スラグ粒子群に混在する80μ、好むらくは100μの微粒子成分が分級排除されている砂状スラグ粒子群からなる人工砂が提供される。
【発明の効果】
【0028】
本発明の効果は、産業廃棄物類であり水溶出pH値が9を超えて10以上と高いことから、その用途ならびに処理・処分に窮しているスラグ粒子群を処理対象物として、本発明技術により低コストで簡単な改質方法により水溶出pH値を中性域に確保できることから、水系環境、特に生態系環境に悪影響を与えることなく、しかも海域中での固結による団塊化を起こさない砂状スラグ粒子群からなる人工砂を提供し、枯渇状態にある天然砂に替わる土木資材等の用途に提供でき、また製鉄業界等の廃棄物類を有効利用して廃棄物類の処理・処分ならびに環境問題等の解消に貢献できるところにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明者等は、処理・処分に窮しているスラグ粒子群を物理的に加工処理して調製される加工スラグ粒子群が、水系環境に接すると高いアルカリ性を示し、水系環境における生態系環境に悪影響を及ぼしている原因が、スラグ粒子群を加工処理した際に加工スラグ粒子群の粒子表面がメカノケミカル的に活性化されて放出されるイオン性カルシウムにあると判断した。
【0030】
したがって本発明者等は、スラグ粒子群の粒子表面から水系環境に放出されるイオン性カルシウムを予め中和すると共に、活性化されている加工スラグ粒子群の粒子表面を不活性状態に改質処理することにより、砂状スラグ粒子群の水溶出pH値が5.8ないしは8.6の中性域の範囲に確保され、砂状スラグ粒子群を海水中に投入放置しても団塊物に固結することなくサラサラした砂状状態が確保され、水系環境を含めた広い用途に利用可能な砂状スラグ粒子群からなる人工砂を低価格で安定して提供することが可能であると判断して研究開発を重ねた。
【0031】
したがって本発明者等は、加工スラグ粒子群から水系環境に放出されるイオン性カルシウムを水不溶性化合物に改質すると共に、加工スラグ粒子群の粒子相互の結着による固結を阻止する改質層を粒子表面に形成せしめ、少々粒子相互が接触擦りあっても粒子表面に形成された改質層が壊されずに確保されて改質処理される改質方法を求めた。
【0032】
その結果本発明者等は、加工スラグ粒子群から溶出する反応性の高いイオン性カルシウムを水不溶性の化合物に改質処理する手段として、アルミニウム塩化合物を基礎成分とし、必要に応じて鉄含有化合物からなる補足成分の組み合わせで構成される改質材をスラグ粒子群に導入し、加工スラグ粒子群から溶出するカチイオンのカルシウムとアルミニウム塩化合物のアニイオン成分との中和反応に誘発されて発生する粒子表面の活性なケイ酸イオンと改質材のアルミニウムイオンとの複分解反応により、スラグ粒子の表面層に安定したアルミノケイ酸からなる改質層が形成される条件を見出した。
【0033】
具体的には、スラグ粒子群の乾燥物基準換算で100質量部に対して、改質材に含有するアルミニウム成分を酸化物基準の酸化アルミニウムで換算して0.1ないしは2質量部に相当する量の粉粒体ないしは複合粉粒体からなる改質材、ならびに少なくとも5質量部の水系溶媒を加え、三者をクラッシング混合方式ないしは混和方式により、必要に応じてスラグ粒子同士の磨砕を伴い混和接触せしめ、スラグ粒子群の粒子表面が水系溶媒を介した改質材により濡れている状態にする。
【0034】
次いで、スラグ粒子群の粒子表面が水系溶媒を介して改質材で濡れているスラグ粒子群を常温ないし80℃に少なくとも60分間放置養生して粒子表面で起こる複分解反応により、アルミニウム含有化合物からなる結着層を形成せしめ、必要に応じて室温ないし190℃の雰囲気条件下に曝露して脱水処理し、ここに回収される砂状スラグ粒子群の粒子表面が改質処理されて水溶出pH値が5.8ないし8.6の中性域に確保されている人工砂に調製されている改質方法を見出し本発明に至った。
【0035】
本発明で処理対象となるスラグ粒子群は、鉄鋼業界、非鉄金属業界、ゴミや汚泥の焼却灰類の溶融処理業界等において、処理物を高温で溶融処理したときに溶融物として排出され、この排出溶融物を徐冷もしくは水砕して塊状物、針状物、繊維状物、粉粒状物等として排出され、酸化物基準で表してカルシヤを22ないしは48質量%、ならびにシリカを28ないしは42質量%を主成分とするケイ酸塩ガラスからなるスラグ粒子群を一般的に挙げることができる。
【0036】
本発明に好適なスラグ粒子群は、大別して2種類を上げることができる。
その一つとしては、製鉄業界における高炉等より排出され、水砕により回収されて、再資源資材として有効利用されている針状部を有する水砕スラグ粒子群を挙げることができる。しかし、水砕スラグ粒子群は針状部を有することから、危険もあり、そのようとは自ずと制限されている。
【0037】
もう一つとしては、針状部を有する水砕スラグ粒子群の針状部が粉砕・磨砕・分級等の処理手段により除去されている砂状スラグ粒子群であって、テーラー標準篩で35ないしは6メッシュ(粒径が約0.5ないしは3.5mmφ)の間にある加工スラグ粒子群を挙げることができる。しかし、針状部を加工処理して除去されたままの加工スラグ粒子群は、一般に水溶出pH値が9以上と高い傾向にある。
【0038】
特に本発明において好適な処理対象物として採択されるスラグ粒子群は、製鉄業界から大量に副生されているカルシウム成分を酸化物基準のカルシヤで表して,40質量%以上含有する高炉スラグの水砕品を挙げることができる。
【0039】
本発明の改質処理における混和工程で採択される水系溶媒は、自然水、人工水、塩類溶液ないしは酸性溶液の群より選ばれる単独ないし2種以上の組み合わせの水系液体であることが好ましい。
【0040】
自然水としては、雨水、河川・湖沼水・たまり水、湧き水、井戸水、海水、人工池・ダム水等をいずれも好適に選びことができる。また人工水としては、飲料水、工場用水、農業用水、水道水、下水道処理水、産業界における副生水、産業界からの排水、生活排水、排水類の処理水等をいずれも好適に選びことができる。
【0041】
また、塩類溶液としては、改質材であるアルミニウム塩化合物もしくは鉄含有化合物をそれぞれの化合物の溶解度の範囲で溶解されている溶液、ないしは海水を好適に挙げることができる。特に海水が加工スラグ粒子群に作用して固結化して団塊を形成する機構を本発明の改質層の形成に利用できることから好ましく、海水と本発明で採択している改質材との相乗効果により、本発明の目的である人工砂のpH値を中性域に確保して、団塊状への固結化を防止する上でより好ましい。
【0042】
さらにまた酸性溶液としては、硫酸、塩酸、硝酸、有機酸ないしは廃酸類の群より選ばれる単独ないし2種以上の組み合わせの酸濃度が10質量%以下である酸性溶液から好適に選びことができる。特に、本発明における改質方法に必要な粉粒体からなる改質材を本発明の水系溶媒に溶解せしめて、本発明の改質方法による改質処理を採択することも可能であり、重要である。
【0043】
本発明において好適に採択される水系溶媒としては、入手が容易で一般的な水系溶媒としては、自然水の採択が好ましい。また、入手が容易な水としては、河川・湖沼等から採取される水系溶媒を好適に選ぶことができる。
【0044】
また、本発明においては水砕スラグ粒子群もしくは水を伴って加工処理されて加工スラグ粒子群を処理対象物として選ぶときは、これらのスラグ粒子群は水でぬれた状態で回収されることから、そのスラグ粒子群を濡らしている水を本発明の水系溶媒体として利用して処理作業工程に付することができる。
【0045】
本発明の改質方法における改質処理において、改質材の果たす役割は、高いアルカリ性を示し、ならびに海水中で団塊に固結化する原因となるスラグ粒子群から溶出しているイオン性カルシウムの溶出を長期にわたり安定して阻止できる改質処理技術であることが大変重要である。
【0046】
加工スラグ粒子群から溶出するカルシウムイオンを単に中和する技術、例えば、硫酸を加えて溶出しているカルシウムイオンを中和することは容易であるが、ここに生成する硫酸カルシウムは基材である加工スラグ粒子群の粒子表面への結着力はなく、したがって基材である加工スラグ粒子群からのカルシウムイオンの溶出を継続して阻止することはできず、むしろ加工スラグ粒子群の粒子表面に新たな活性面の発現を増長する傾向にもあり、好ましくない。
【0047】
本発明で採択する改質材としては、アルミニウム塩化合物を基礎成分とする粉粒体、さらに必要に応じて鉄含有化合物からなる補足成分を加えた組み合わせの複合粉粒体で構成されており、ワンパック化されている改質材を好適に挙げることができる。
【0048】
本発明における基礎成分であるアルミニウム塩化合物としては、下記組成式(1)
【化1】
aAl・bTO・cAlCl・wHO ……………… (1)
[式中;Tは窒素、硫黄、ホウ素、リン元素群の単独ないし2種以上の組み合わせ元素、Xはハロゲン元素もしくは硫黄元素、a、bおよびcは零を含む10以下の数、mは1ないし3の数、wは零を含む12以下の数]で表されるアルミニウム塩化合物の群より選ばれる単独ないし2種以上の組み合わせの正塩、塩基性塩、酸性塩もしくは酸化性塩の単独化合物ないしは複合化合物からなる粉粒体を好適に挙げることができる。
【0049】
基礎成分であるアルミニウム塩化合物の具体的な例は、試薬、工業薬品、試作品、廃棄物類等の中から適宜選ぶことのできる亜硝酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウ厶、ホウ酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、カリ明礬、塩化アルミニウム等の正塩、塩基性塩、酸性塩もしくは酸化性塩の単独化合物ないしは複合化合物である粉粒体を好適に挙げることができる。
【0050】
上記改質材の補足成分である鉄含有化合物が、下記組成式(2)
【化2】
aFeOn/2・bTO・cFeXn/2・wHO ……… (2)
[式中;Tは窒素、硫黄、ホウ素、リン元素群の単独ないし2種以上の組み合わせ元素、Xはハロゲン元素もしくは硫黄元素、a、bおよびcは零を含む10以下の数、nは2ないし3の数、wは零を含む12以下の数]で表される鉄含有化合物の群より選ばれる単独ないし2種以上の組み合わせの正塩、塩基性塩、酸性塩または酸化性塩の単独化合物ないしは複合化合物からなる粉粒体を好適に挙げることができる。
【0051】
必要に応じて選択される補足成分である鉄含有化合物の具体的な例は、試薬、工業薬品、試作品、廃棄物類等の中から適宜選ぶことのできる第一鉄塩もしくは第二鉄塩である亜硝酸鉄、硝酸鉄、亜硫酸鉄、硫酸鉄、ホウ酸鉄、リン酸鉄、塩化鉄、硫化鉄等の正塩、塩基性塩、酸性塩もしくは酸化性塩の単独化合物ないしは複合化合物である粉粒体を好適に挙げることができる。
【0052】
本発明における改質材は、基礎成分であるアルミニウム塩化合物単独での採択でも良いが、必要に応じて基礎成分であるアルミニウム塩化合物と補足成分である鉄含有化合物との配合割合は、アルミニウム塩化合物である基礎成分100質量部に対して、鉄含有化合物である補足成分が同量の100質量部以下の量割合による組み合わせの複合粉粒体で構成される改質材を好適に採択することができる。
【0053】
このとき、本発明においては、基礎成分であるアルミニウム塩化合物と補足成分である鉄含有化合物が混合ないしは複塩を形成しているアルミニウ厶と鉄の化合物を選ぶこともできる。また、以上の粉粒体で構成される改質材を前述した水系溶媒に予め溶解せしめた液状態もしくは分散状態にしてから本発明改質材として採択することもできる。
【0054】
本発明改質材のアルミニウム塩化合物に鉄含有化合物が補足されるときは、改質層として形成されるアルミノケイ酸塩に鉄成分が複合して、より安定したアルミノケイ酸塩からなる改質層が形成される傾向にあることから好ましい。
【0055】
本発明における人工砂の調製方法において、処理対象物のスラグ粒子群が水砕スラグ粒子群であるときは、水砕スラッグ粒子群を物理的磨耗・粉砕等により有している針状部を除去して砂状化せしめる加工処理と同時にイオン性カルシウムを不溶化せしめてスラグ粒子群の粒子表面にアルミノケイ酸塩を形成結着せしめて改質層を構成させる改質処理を同時に併用して処理方法を採択することが好ましい。
【0056】
その二は、水砕スラッグ類等を予め物理的に加工処理された加工スラグ粒子群の粒径径がテーラー標準篩で35ないしは6メッシュ(粒径が約0.5ないしは3.5mmφ)の間にあるスラグ粒子群が少なくとも70質量%含有する構成にある加工スラグ粒子群の粒子表面にアルミニウム塩化合物を形成結着せしめて改質層を構成させる改質処理である処理方法を採択することが好ましい。
【0057】
本発明の改質方法は、いずれの処理対象物を採択する場合でも、水砕スラグ粒子群ないしは加工スラグ粒子群と改質材と水系溶媒の三者を接触混和せしめる混和工程、必要に応じて該混和物をクラッシング方式と分級により粒度調整されて濡れている加工スラグ粒子群とする整粒工程、次いで水系溶媒を介して改質材で濡れている加工スラグ粒子群を常温ないしは80℃に少なくとも60分間放置養生して粒子表面で起こる複分解反応によりアルミノケイ酸塩からなる結着物で構成される改質層を形成せしめる養生工程、さらに必要に応じて室温ないし190℃の雰囲気条件下に曝露して脱水処理する脱水工程で構成される改質方法である。
【0058】
本発明改質方法における混和工程は、水砕スラグ粒子群ないしは加工スラグ粒子群の乾燥物基準換算で100質量部に対して、改質材に含有するアルミニウム成分を酸化物基準で表した酸化アルミニウムで換算して少なくとも0.2質量部に相当する量の粉粒体ないしは複合粉粒体からなる改質材、ならびに少なくとも5質量部の水系溶媒を加えた三者を均質に混和して混和物を調製する工程である。
【0059】
本発明改質方法における混和工程において、スラグ粒子群100質量部に対して、改質材の配合量が、改質材含有アルミニウム成分を酸化物基準で表した酸化アルミニウムで換算して0.2質量部に相当する量より少ないときは、スラグ粒子表面で形成されるアルミノケイ酸塩からなる改質層を充分な改質層として形成させることができない。
【0060】
また、スラグ粒子群100質量部に対して、改質材の配合量が、改質材含有アルミニウム成分を酸化物基準で表した酸化アルミニウムで換算して2質量部に相当する量より多くても特段に良好な改質層を形成する傾向はない。
【0061】
本発明改質方法における処理対象物を水砕スラグ粒子群としたときの整粒工程は、混和工程で水砕スラグ粒子群と改質材と水系溶媒の三者を接触混和せしめた混和物をクラッシング方式と分級により粒度調整されて濡れている加工スラグ粒子群とする工程である。ここに調整された加工スラグ粒子群の粒子径はテーラー標準篩で35ないしは6メッシュ(粒径が約0.5ないしは3.5mmφ)の間にある加工スラグ粒子群を少なくとも70質量%含有して構成されていることが好ましい。
【0062】
本発明における混和工程と整粒工程は、それぞれ別個の装置・設備で行うことも可能であるが、この混和工程と整粒工程の2工程を同一の装置・設備で行うこともできる。特に水砕スラグ群の針状部を除去しながら混和・整粒するときは、メカノケミカル的に形成された新鮮な活性面に改質材であるアルミニウムイオンが接触できることから、改質層の形成が容易に形成することから好ましい。
【0063】
本発明における混和工程と整粒工程において、採択可能な装置・設備は、公知・公用の撹拌、かき混ぜ、振動等を伴う混合・混和機類、また乾式ないしは湿式の破砕・磨耗機類等から適宜選ぶことができる。
【0064】
本発明改質方法における養生工程は、スラグ粒子群と改質材と水との三者からなる濡れた状態の混和物におけるスラグ粒子群の粒子表面より放出されているイオン性カルシウムと改質材であるアルミニウム塩化合物のアニイオン成分との中和反応に誘発されて発生するスラグ粒子表面の活性なケイ酸イオンと改質材のアルミニウムイオンとの複分解反応により、スラグ粒子群の粒子表面層にアルミノケイ酸塩からなる改質層を形成せしめる工程である。
【0065】
本発明改質方法における養生工程は、一般に、三者からなる濡れた状態の混和物を常温の大気中に少なくとも24時間放置することにより、粒子表面層にアルミノケイ酸塩からなる改質層を形成せしめることができる。勿論生産性から、80℃以下の温度範囲で熱を与えて、アルミノケイ酸塩の形成を促進させることも可能である。
【0066】
いずれの場合も、ここに調製されたアルミノケイ酸塩の結着物からなる改質層が粒子表面に形成されている処理物である砂状スラグ粒子群は、水系溶媒で濡れている状態で回収される。この濡れた状態の砂状スラグ粒子群からなる人工砂の用途場所が河川や海域等または濡れた状態での使用が好ましいときには、この濡れた状態で乾燥等を行うことなく、そのまま少なくとも24時間放置後に採択使用することができる。
【0067】
本発明の改質方法で調製された人工砂が乾燥された状態にあることが必要なときは、本発明の脱水工程により、濡れている人工砂を室温ないしは190℃の雰囲気条件下に曝露して脱水処理して砂状スラグ粒子群からなる乾燥された人工砂として提供することができる。
【0068】
本発明の改質方法で調製される人工砂にとって重要なことは、人工砂の水溶出pH値が5.8ないしは8.6の中性域に確保されていることにある。また、後述する海水中における団塊固結化試験において人工砂が固結化することのない人工砂に改質処理されていることが重要である。
【0069】
いずれの改質方法においても、原料基材の水砕スラッグ類ないしは加工スラグ粒子群と改質材と水との三者の配合割合において、水砕スラッグ類ないしは加工スラグ粒子群100質量部に対して、改質材に含有するアルミニウム成分を酸化物基準で表した酸化アルミニウムで換算して加える量割合が、0.2質量部より少ないとイオン性カルシウムの中和ならびに粒子表面へのアルミニウム塩化合物の結着が少なく、効果を期待することはできない。また、改質材を加える量割合が、一般に5質量部より多くなっても特段の効果を期待することはできず、むしろ改質材の消費量が増加し好ましくない。
【0070】
いずれの改質方法においても、原料基材の水砕スラッグ類ないしは加工スラグ粒子群と改質材と水との三者の配合割合において、水砕スラッグ類ないしは加工スラグ粒子群100質量部に対して、水系溶媒を加える量割合が、5質量部より少ないと基材となるスラッグ類の粒子表面を満遍なく覆って濡らすことはできず好ましくない。
【0071】
一方、水系溶媒を加える量割合が、一般に10質量部より多くなると水砕スラグ粒子群ないしは加工スラグ粒子群から分離して遊ぶ水分量が多くなり、スラグ粒子表面上での効果的な複分解反応を期待できず、スラグ粒子表面へのアルミニウム塩化合物の有効結着を期待することはできない。
【0072】
また、三者の混和物からなる加工スラグ粒子群の粒子表面に改質層を形成せしめる養生工程において、一般的には混和物を常温に24時間放置することにより加工スラグ粒子群の粒子表面に本発明に有効な改質層を形成せしめることは可能である。しかし、生産性ならびに処理スペース等の関係から短時間で粒子表面に改質層を形成せしめたい時には、80℃を超えない範囲で混和物に熱を加えて改質層の形成を促進せしめ、短時間で養生を完成させることができる。
【0073】
但し、このとき、混和物に改質層の形成せしめるために必要な水分を確保、例えば蒸気養生等の手段を講じて複分解反応を進行させる配慮は必要である。養生工程において、80℃を超えた温度範囲で養生することは、本発明における複分解反応に必要な水を排除する方向にあることから好ましくない。
【0074】
本発明においては、必要に応じて室温ないし190℃の雰囲気条件下に曝露して脱水乾燥処理を行うことができる。脱水乾燥処理は、基本的に室温で行うことで充分であり、室温で行うことが特別なエネルギー必要としないことから好ましいが、効率よく生産性を上げるためには加熱条件化で養生条件に付することが好ましい。このとき塗れている加工スラグ粒子群を190℃以上の高温に曝露することは、結着しているアルミニウム塩化合物の砂状スラグ粒子群の粒子表面からの脱着傾向があり好ましくなく、また無駄なエネルギーを消費することから好ましくない。
【0075】
したがって、本発明における改質処理技術によれば、改質処理効果を発揮するアルミニウム塩化合物が砂状スラグ粒子群の間に単に混在する状態で存在するのでなく、砂状スラグ粒子群の粒子表面に結着層を形成している状態で砂状スラグ粒子群の粒子表面を改質しているところに特長がある。その結果、改質処理された砂状スラグ粒子群の粒子表面におけるpH値を中性域に安定して確保でき、海水中での団塊状固結化の防止を安定して確保することができる。
【0076】
水砕スラグ粒子群ないしは加工スラグ粒子群と改質材と水系溶媒との均質接触手段は、公知・公用の混合装置や混和装置類による混合方式により容易に均質接触せしめて塗れた加工スラグ粒子群を調製することができる。また、加工スラグ粒子群の粒子群に対して、改質材の溶解溶液をシャワー状もしくはスプレー状で噴霧、もしくは加工スラグ粒子群の砂粉体を流動層状態にして加工スラグ粒子群と改質材とを均質接触せしめて塗れた砂状スラグ粒子群を調製することもできる。
【0077】
また、本発明においては、本発明砂状スラグ粒子群の用途・目的に応じて、本発明の改質方法により改質処理された砂状スラグ粒子群に混在する80μ、好むらくは100μの微粒子成分を予め公知・公用の除去方法、例えば洗浄、風飛、分級等により排除されから水溶出pH値が5.8ないし8.6の中性範囲で確保されている砂状スラグ粒子群として活用することもできる。
【0078】
本発明改質方法により調製された砂状スラグ粒子群からなる人工砂は、水溶出pH値を5.8ないしは8.6の範囲に確保することができ、この砂状スラグ粒子群を海水中に投入放置しても団塊物に固結化することなく、また水系環境に悪影響与えることなく、さらに生態系環境を壊すことなく天然砂に替わる土木資材類等として安全にして有効に活用することができる。
【0079】
勿論、ここに本発明改質方法により調製された人工砂は、海域や河川等の水系環境での干潟・浅場造成や貝類の養殖場用砂としての使用に止まらず、各種の土木工事や建設工事等で利用されている天然砂の代替としての使用が可能である。特に、昨今の天然砂の枯渇状態から、天然砂の代替砂としての利用も重要である。
【0080】
本発明におけるスラグ類ならびに人工砂の物性評価をするために、下記に示す特別な試験方法により、水溶出pH値の測定ならびに団塊固結化状態の観察を行った。その他の分析等は標準的方法に準拠して行った。
【0081】
本発明における水溶出pH値の測定は、それぞれの試験体ならびに処理原料や処理物等の供試料である試験体10gを20℃でpH7の純水を10gの入った容器に投入し、約20℃で24時間放置した後に分離回収した溶出検液をpHメーターによりpH測定し、試験体の当倍水に対するサスペンジョン溶出検液におけるpH値として測定した。
【0082】
本発明における人工砂の海水中における団塊に固結化する状況を評価する団塊固結化試験は、供試料となる砂状スラグ粒子群の1Kgを海水1Kgの入った容器に投入し、常温において10日間静置し、10日後に海水中に投入静置されていた砂状スラグ粒子群の入った容器を横倒しにしたときの砂状スラグ粒子群の状態を観察して行った。
【0083】
このときの観察評価で砂状スラグ粒子群が団塊物で砂粒状に流れないときを固結「あり」とし、投入されている砂状スラグ粒子群が容器の海水中でサラサラとした砂状に流れるときを固結「なし」として評価した。
【実施例】
【0084】
[実施例1]
本実施例において、水砕スラグ粒子群からなるスラグ粒子群を処理対象物として、砂状スラグ粒子群に加工処理しつつ、水溶出pH値が中性域に確保され、海水中で固結化することのない砂状スラグ粒子群に改質処理した人工砂について説明する。
【0085】
処理対象物のスラグ粒子群として鉄鋼業界から排出された高炉水砕スラグである水砕スラグ粒子群、およびごみ焼却灰を溶融処理した溶融物の水砕スラグである水砕スラグ粒子群の2種類を採択した。それぞれの組成内容を表1に示す。
改質材としては、市販工業薬品である粉末状の硫酸アルミニウムを選んだ。
【0086】
加工ならびに改質処理は、2種類の処理対象物に対して、卓上粗粉砕機(FDS型:中山技術研究所製)を用いて水砕スラグ粒子群10kgと硫酸アルミニウム0.5kgと水道水2kgの三者の混合物を卓上粗粉砕機二投入して、粗粉砕条件下で粗粉砕して、濡れた状態で粒径が0.5ないしは3.5mmの範囲に分級されている加工スラグ粒子群として回収した。
【0087】
次いで、改質材を含んで濡れた状態で回収した加工スラグ粒子群を常温の大気中に広げて水分を飛ばすと共に乾燥しながら48時間放置養生して、粒子表面にアルミノケイ酸塩を主成分とする結着物で構成される改質層を形成せしめた砂状スラグ粒子群からなる人工砂を回収した。
【0088】
【表1】

【0089】
ここに回収した人工砂をpH値試験ならびに団塊固結化試験に付し、その結果を表1に併せ表示する。
【0090】
以上の結果、無処理水砕スラグ粒子群のpH値が高く、海水中で固結化するのに対して、本発明の改質方法により、水砕スラグ粒子群を砂状状態に加工処理しつつ、スラグ粒子群の粒子表面を改質処理した人工砂は、海域で天然砂と同様に固結することなく砂状態で利用できる状態にあることがよく理解される。
[実施例2]
【0091】
本実施例において、高炉水砕スラグを予め加工処理した加工スラグ粒子群を処理対象物として、各種の改質材を採択して、水溶出pH値が中性域に確保され、海水中で固結化することのない砂状スラグ粒子群に改質処理した人工砂について説明する。
【0092】
加工スラグ粒子群の原料には、実施例1で採択した鉄鋼業界から排出された高炉水砕スラグを選び、卓上粗粉砕機(FDS型:中山技術研究所製)を用いて、乾式で粗粉砕して、粒径が0.5ないしは3.5mmの範囲に分級されている加工スラグ粒子群(試料番号:S−3)を処理対象物とした。
【0093】
改質材は、市販の試薬もしくは工業薬品から基礎成分であるアルミニウム塩化合物として、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、明礬を選び、また補足成分である鉄含有化合物として、硫酸第一鉄、硫酸第に鉄、塩化鉄、硫化鉄を選び、表2に示す8種類の配合内容でそれぞれの改質材を調製した。水系溶媒は、井戸水を選んだ。
【0094】
【表2】

【0095】
加工スラグ粒子群を改質処理する改質方法は、卓上回転式撹拌機を用いて表3に示す加工スラグ粒子群と改質材と水系溶媒の三者を均質に混和して混和物とし、次いで、該混和物を常温の大気中に広げて水分を飛ばすと共に乾燥しながら48時間放置ないしは80℃に3時間放置して、粒子表面にアルミノケイ酸塩を主成分とする結着物で構成される改質層を形成せしめた砂状スラグ粒子群からなる人工砂をそれぞれ回収した。
【0096】
ここに回収した各人工砂をpH値試験ならびに団塊固結化試験に付し、その結果を表3に併せ表示する。
【0097】
【表3】

【0098】
以上の結果、本発明改質方法により改質処理された砂状スラグ粒子群からなる人工砂は、水溶出pH値が中性範囲で確保されており、海水中に投入放置しても固結することなく砂粒状が確保されており、砂状スラグ粒子群が少なくとも海域で有効利用される状況がよく理解される。
【0099】
[実施例3]
本実施例において、高炉水砕スラグを予め加工処理した加工スラグ粒子群を処理対象物として、水系溶媒に海水を採択して、水溶出pH値が中性域に確保され、海水中で固結化することのない砂状スラグ粒子群に改質処理した人工砂について説明する。
【0100】
処理対象物としては、実施例2で採択した粒径が0.5ないしは3.5mmの範囲に分級されている加工スラグ粒子群(試料番号:S−3)を選んだ。
【0101】
改質材としては、実施例2で調製して採択した試料番号C2、C4,C5およびC9の4種類を選んだ。
水系溶媒としては、東京湾より採取した海水を選んだ。
【0102】
加工スラグ粒子群を改質処理する改質方法は、卓上回転式撹拌機を用いて表4に示す加工スラグ粒子群と改質材と水系溶媒である海水の三者を均質に混和して混和物とし、次いで、該混和物を常温の大気中に広げて水分を飛ばすと共に乾燥しながら48時間放置して、粒子表面にアルミノケイ酸塩を主成分とする結着物で構成される改質層を形成せしめた砂状スラグ粒子群からなる人工砂をそれぞれ回収した。
【0103】
ここに回収した各人工砂をpH値試験ならびに団塊固結化試験に付し、その結果を表4に併せ表示する。
【0104】
【表4】

【0105】
以上の結果、本発明改質方法により、海水を水系溶媒に選んで改質処理した砂状スラグ粒子群からなる人工砂は、水溶出pH値が中性範囲で確保されており、海水中に投入放置しても固結することなく砂粒状が確保されており、砂状スラグ粒子群が少なくとも海域で有効利用される状況がよく理解される。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明技術は、従来のスラグ粒子群の利用、特に海域での利用に支障をきたしていた諸課題(高い水溶出pH値による環境汚染ならびに生態系への悪影響現象ならびに海域に投入放置されたときに粗大な塊状物に固結化現象等)を解消していることから、処理・処分に窮してきたスラグ粒子群を環境に負荷を与えず有効利用できることから、また天然砂の枯渇状況にあることから、人工砂の産業界における有効利用の可能性は高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラグ粒子群を人工砂に加工改質処理するに際して、スラグ粒子群に水系溶媒を介して改質材を加え、必要に応じて粒度調整を伴って、スラグ粒子群の粒子表面と改質材との間で起こる複分解反応により、スラグ粒子群を砂状スラグ粒子群からなる人工砂に改質処理せしめる改質方法において;
上記のスラグ粒子群が、酸化物基準で表してカルシヤを22ないしは48質量%、ならびにシリカを28ないしは42質量%を主成分とするケイ酸塩ガラスからなる針状部を有する水砕スラグ粒子群、もしくは予め水砕スラグ粒子群粒子群の針状部を物理的加工処理で除去したスラグ粒子群の粒子群の70質量%以上が、テーラー標準篩で35ないしは6メッシュの間にあり、水溶出pH値が9以上の加工スラグ粒子群であり;
上記の水系溶媒が、自然水、人工水、塩類溶液ないしは酸性溶液の群より選ばれる単独ないし2種以上の組み合わせの水系液体であり;
上記の改質材が、アルミニウム塩化合物を基礎成分とする粉粒体、ないしは必要に応じて基礎成分100質量部に対して鉄含有化合物からなる補足成分を100質量部以下の量で加えた組み合わせの複合粉粒体で構成されており;
上記改質材の基礎成分であるアルミニウム塩化合物が、下記組成式(1)
〔化1〕
aAl・bTO・cAlCl・wHO ……………… (1)
[式中;Tは窒素、硫黄、ホウ素、リン元素群の単独ないし2種以上の組み合わせ元素、a、bおよびcは零を含む10以下の数、mは1ないし3の数、wは零を含む12以下の数]で表されるアルミニウム塩化合物の群より選ばれる単独ないし2種以上の組み合わせの正塩、塩基性塩、酸性塩または酸化性塩の単独化合物ないしは複合化合物であり;
上記改質材の補足成分である鉄含有化合物が、下記組成式(2)
〔化2〕
aFeOn/2・bTO・cFeXn/2・wHO ……… (2)
[式中;Tは窒素、硫黄、ホウ素、リン元素群の単独ないし2種以上の組み合わせ元素、Xはハロゲン元素もしくは硫黄元素、a、bおよびcは零を含む10以下の数、nは2ないし3の数、wは零を含む12以下の数]で表される鉄含有化合物の群より選ばれる単独ないし2種以上の組み合わせの正塩、塩基性塩、酸性塩または酸化性塩の単独化合物ないしは複合化合物であり;
上記の改質方法が、スラグ粒子群である水砕スラグ粒子群もしくは加工スラグ粒子群の乾燥物基準換算で100質量部に対して、改質材に含有するアルミニウム成分を酸化物基準の酸化アルミニウムで換算して0.1ないしは2質量部に相当する量の粉粒体ないしは複合粉粒体からなる改質材、ならびに少なくとも5質量部の水系溶媒を加えた三者を撹拌混合方式により水系溶媒を介して改質材とスラグ粒子群を混和接触せしめて混和物とする混和工程、必要に応じて該混和物をクラッシング方式と分級により粒度調整されて濡れている加工スラグ粒子群とする整粒工程、次いで水系溶媒を介して改質材で濡れている加工スラグ粒子群を常温ないしは80℃に少なくとも60分間放置養生して粒子表面で起こる複分解反応によりアルミノケイ酸塩からなる結着物で構成される改質層を形成せしめる養生工程、さらに必要に応じて室温ないし190℃の雰囲気条件下に曝露して脱水処理する脱水工程で構成される改質方法であり;
上記の人工砂が、上記の改質方法により、スラグ粒子群の粒子群の70質量%以上が、テーラー標準篩で35ないしは6メッシュの間にあり、スラグ粒子群の粒子表面に改質層が形成されており、水溶出pH値が5.8ないし8.6の中性域に確保されている砂状スラグ粒子群からなる人工砂に調製されていることを特徴とする改質方法。
【請求項2】
前記のスラグ粒子群が、製鉄業界から副生される高炉スラグである請求項1記載の改質方法。
【請求項3】
前記の基礎成分であるアルミニウム塩化合物が、下記組成式(3)
〔化3〕
Al・mSO・wHO ……………… (3)
[式中;mは2ないしは5の数、wは零を含む24以下の数]で表されるアルミニウムの硫酸塩化合物の群より選ばれる単独ないし2種以上の組み合わせの正塩、塩基性塩もしくは酸性塩化合物からなる硫酸アルミニウムである請求項1記載の改質方法。
【請求項4】
前記の水系溶媒が、海水である請求項1記載の改質方法。
【請求項5】
前記の水系溶媒における酸性溶液が、硫酸、塩酸、硝酸、有機酸ないしは廃酸類の群より選ばれる単独ないし2種以上の組み合わせの酸濃度が10質量%以下である酸性溶液である請求項1記載の改質方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項記載の改質方法により、スラグ粒子群が砂状粒子群に加工改質処理されて、粒子群の70質量%以上が、テーラー標準篩で35ないしは6メッシュの間にあり、粒子群の粒子表面にアルミニウム含有化合物からなる結着物で構成される改質層が形成されており、水溶出pH値が5.8ないしは8.6の中性域に確保されている砂状スラグ粒子群からなることを特徴とする人工砂。
【請求項7】
前記の砂状スラグ粒子群に混在する80μ、好むらくは100μの微粒子成分が分級排除されている砂状スラグ粒子群からなる請求項6記載の人工砂。

【公開番号】特開2006−290713(P2006−290713A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−134544(P2005−134544)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(501046947)株式会社ナトー研究所 (7)
【Fターム(参考)】