説明

スラグ貯蔵タンク及びスラグ排出システム

【課題】液体を安定して排出することができるスラグ貯蔵タンク、及び、より簡単かつ好適にスラグを排出することができるスラグ排出システムを提供することを目的とする。
【解決手段】スラグを貯蔵する本体と、本体の壁面に配置され、液体を選択的に通過させる複数のフィルタと、を有し、本体は、スラグを貯蔵する領域における鉛直方向に垂直ないずれの断面にも少なくとも一部にフィルタが配置されていることで上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給されたスラグを貯蔵し、排出するスラグ貯蔵タンク及びそれを備えるスラグ排出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
石炭をガス化して得られた石炭ガスによりガスタービンを駆動して発電する技術がある。石炭をガス化するためには、石炭ガス化炉が使用される。石炭をガス化すると、石炭ガス化炉には燃え滓としてスラグが残る。このようなスラグは、石炭ガス化炉から排出される必要がある。スラグは充分に高温であれば流動性を有するため、一般に、石炭ガス化炉の下部に設けられたスラグホールから連続的に排出される。スラグホールの下方には、冷却水を満たしたスラグ排出筒が設けられ、スラグは、冷却水によって冷却されて固化された後、スラグ排出筒から排出される。
【0003】
スラグを排出するシステムとしては、特許文献1、特許文献2、特許文献3に記載されているような装置がある。特許文献1または特許文献2に記載されている装置は、いずれも、固化したスラグをベルトコンベアにより、貯蔵タンク等に搬送している。また、特許文献3に記載の装置は、ハウジング内に配置され、複数のフライトが装着された軸を回転させることで、スラグをコンテナに搬送する機構が記載されている。また、排出システムには、冷却されたスラグを一時的に貯蔵するスラグ貯蔵タンクを備える構成がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−122319号公報
【特許文献2】特表2003−518157号公報
【特許文献3】特開2003−88832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1から特許文献3に記載されている排出システムは、ベルトコンベアや、スクリューでスラグを搬送する構成である。そのため、コンベアの傾斜角度に限界があったり、コンベア、スクリューを直線上に配置する必要があったりして、装置構成の自由度が低いという問題がある。また、スクレイパや、掻き爪によりスラグを搬送することで、確実に搬送することができるが、1つのスクレイパや、掻き爪による搬送は、搬送量に限界があり、また、搬送が間欠搬送となる。
【0006】
これに対して、スラグ排出システムには、スラグと液体とを混合してスラリー状にして、スラグ貯蔵タンクに搬送(供給)するシステムがある。このようなシステムのスラグ貯蔵タンクは、スラリーに含まれる液体を選択的に排出するためのフィルタを設け、フィルタから液体を排出し、スラグのみを貯蔵する。このようにフィルタを備えるスラグ貯蔵タンクでは、液体の排出が不安定になる場合がある。また、スラグ貯蔵タンクからの液体の排出が不安定になると、スラグの排出にも影響が生じる。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、液体を安定して排出することができるスラグ貯蔵タンク、及び、より簡単かつ好適にスラグを排出することができるスラグ排出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、スラグを貯蔵するスラグ貯蔵タンクであって、スラグを貯蔵する本体と、前記本体の壁面に配置され、液体を選択的に通過させる複数のフィルタと、を有し、前記本体は、前記スラグを貯蔵する領域における鉛直方向に垂直ないずれの断面にも少なくとも一部に前記フィルタが配置されていることを特徴とする。これにより、液体の液面の位置に寄らず、安定して液体を排出することができる。
【0009】
また、前記本体の外周を一周囲って配置された補強部をさらに有することが好ましい。これにより、装置の強度を向上させることができ、耐久性を高くすることができる。
【0010】
また、前記本体は、複数の面で構成され、前記フィルタは、前記本体の同一の面に配置されていることが好ましい。これにより、液体を排出させる面を1つにすることができる。
【0011】
また、前記本体は、複数の面で構成され、前記フィルタは、前記本体の複数の面に配置されていることが好ましい。これにより、設計自由度を高くすることができる。
【0012】
また、前記本体は、前記スラグを貯蔵する領域における鉛直方向に垂直な断面におけるフィルタの配置割合が、一定の範囲内であることが好ましい。これにより、液体をより安定して排出することができる。
【0013】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、スラグ排出システムであって、上記のいずれかに記載のスラグ貯蔵タンクと、排出されたスラグを冷却するスラグ冷却部と、前記スラグ冷却部から排出されたスラグと液体とを貯留するスラリータンクと、前記スラリータンクに貯留されたスラグを液体によりスラリー化し、前記スラグ貯蔵タンクに搬送するスラグスラリー搬送部と、前記スラグ貯蔵タンクの前記フィルタから排出された液体を回収し、スラリータンクに供給する回収部と、を有することを特徴とする。これにより、液体の液面の位置に寄らず、安定して液体を排出することができる。液体を適切に循環させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかるスラグ貯蔵タンクは、液体を安定して排出することができるという効果を奏する。また、本発明にかかるスラグ排出システムは、スラグを簡単かつ好適に排出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、スラグ排出システムの一実施形態の概略構成を示す模式図である。
【図2】図2は、図1に示すスラグ貯蔵タンクの概略構成を示す側面図である。
【図3】図3は、図2に示すスラグ貯蔵タンクの側面に隣接する側面を示す側面図である。
【図4】図4は、図2のA−A線断面図である。
【図5】図5は、スラグ貯蔵タンクの他の例の概略構成を示す斜視図である。
【図6】図6は、スラグ貯蔵タンクの他の例の概略構成を示す側面図である。
【図7】図7は、図6に示すスラグ貯蔵タンクの側面に隣接する側面を示す側面図である。
【図8】図8は、図6のB−B線断面図である。
【図9】図9は、図6に示すスラグ貯蔵タンクの概略構成を示す斜視図である。
【図10】図10は、スラグ貯蔵タンクの他の例の概略構成を示す側面図である。
【図11】図11は、スラグ貯蔵タンクの他の例の概略構成を示す側面図である。
【図12】図12は、スラグ貯蔵タンクの他の例の概略構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0017】
以下に、本発明にかかるスラグ排出システムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0018】
図1は、スラグ排出システムの一実施形態の概略構成を示す模式図である。まず、図1に示すスラグ排出システム20の周囲に配置されている、ガス化炉12、スラグホッパ14、開閉弁16、搬送車両18について説明する。ガス化炉12は、石炭等の燃焼物質をガス化し、生成したガスを燃焼炉等に供給する。また、ガス化炉12は、燃焼物質をガス化した際に生成されるスラグを下部に配置されたスラグホッパ14に貯留する。スラグホッパ14は、ガス化炉12の下部に配置され、ガス化炉12で生成されたスラグを収集し、スラグを貯留する貯留機構である。なお、スラグホッパ14は、鉛直方向下側に向かうに従って径が小さくなる漏斗形状であり、ガス化炉12で生成されたスラグを鉛直方向下側に移動させることで、生成されたスラグを1箇所に収集する。開閉弁16は、スラグホッパ14のスラグの通過経路の鉛直方向下側の端部に配置されている。開閉弁16は、開閉を切り換えることで、スラグホッパ14に貯留されているスラグのスラグ排出システム20への排出の開始、停止を切り換える。なお、開閉弁16から排出されるスラグは、固体であっても、流体であってもよい。また、開閉弁16から排出されるスラグは、基本的に、高温のスラグであり、冷却する必要がある。
【0019】
搬送車両18は、スラグ排出システム20から排出されたスラグを所定の位置まで運ぶ車両である。搬送車両18としては、トラックを用いることができる。なお、本実施形態では、搬送車両18に排出する構成としたが、本発明はこれに限定されず、種々の対象に排出することができる。
【0020】
次に、スラグ排出システム20について説明する。スラグ排出システム20は、ガス化炉12で生成され、スラグホッパ14の開閉弁16から排出されたスラグを搬送車両18に排出するシステムである。スラグ排出システム20は、スラグロックホッパ22と、スラグ冷却部26と、スラグ搬送部28と、スラグ貯蔵タンク30と、排出口32とを有する。
【0021】
スラグロックホッパ22は、スラグを一時的に貯留する貯留部であり、開閉弁16の直下に配置されている。スラグロックホッパ22は、開閉弁16から排出されたスラグを一時的に貯留し、その後、スラグ冷却部26に供給する。
【0022】
スラグ冷却部26は、冷却タンク26aと、搬送コンベア26bとを有し、スラグロックホッパ22から排出されたスラグを冷却した後、スラグ搬送部28に供給する。冷却タンク26aは、水等のスラグを冷却する液体が貯留されたタンクであり、スラグロックホッパ22の直下に配置されている。スラグロックホッパ22から排出されたスラグは、冷却タンク26aに貯留された液体中に落下し、液体により冷却される。搬送コンベア26bは、冷却タンク26a中に落下され、冷却されたスラグを搬送する搬送機構である。搬送コンベア26bは、一部が冷却タンク26a内に配置されており、冷却タンク26a内のスラグを保持し、移動させて、スラグ搬送部28に排出する。
【0023】
スラグ搬送部28は、スラグ冷却部26から排出されたスラグをスラグ貯蔵タンク30に搬送する搬送機構であり、スラリータンク40と、輸送管42と、スラリーポンプ43と、回収管62と、水受け部63a、63bとを有する。スラリータンク40は、スラグ冷却部26から供給されたスラグと、水とを貯留するタンクである。スラリータンク40は、水にスラグを分散させた状態で貯留している。輸送管42は、スラリータンク40と、スラグ貯蔵タンク30とを接続する配管である。また、スラリーポンプ43は、輸送管42に配置され、輸送管42に、スラリータンク40内のスラグが分散された水がスラグ貯蔵タンク30に流れる流れを形成する。このように、スラグ搬送部28は、スラリータンク40内の水に分散されたスラグを、スラリー状にして輸送管42とスラリーポンプ43によりスラグ貯蔵タンク30まで搬送する。
【0024】
回収管62は、スラグ貯蔵タンク30から排出される水を回収する管路であり、水受け部63aとスラリータンク40とを接続させ、水受け部63bとスラリータンク40とを接続させる。水受け部63a、63bは、スラグ貯蔵タンク30の水の排出部分の下方に配置されており、スラグ貯蔵タンク30から排出された水を回収する。水受け部63a、63bは、回収した水を回収管62に流す。なお、水受け部63aは、スラグ貯蔵タンク30の傾斜部分の下方に配置されており、水受け部63bは、スラグ貯蔵タンク30の垂直部分の下方に配置されている。
【0025】
スラグ貯蔵タンク30は、スラグ搬送部28により搬送されたスラグを貯蔵するタンクである。ここで、図2は、図1に示すスラグ貯蔵タンクの概略構成を示す側面図であり、図3は、図2に示すスラグ貯蔵タンクの側面に隣接する側面を示す側面図であり、図4は、図2のA−A線断面図であり、図5は、スラグ貯蔵タンクの他の例の概略構成を示す斜視図である。スラグ貯蔵タンク30は、図1から図5に示すように、本体101と、フィルタ106、108と、樋109、110と、横補強部112と、縦補強部114とを有する。本体101は、中空の塔、本実施形態では、断面(水平方向の面)が四角形となる筒形状であり、鉛直方向下側に、径が徐々に小さくなる端部が設けられている。
【0026】
フィルタ106は、スラグは通過させず、水は通過させる部材であり、本体101の側面(壁面)に複数、配置されている。複数のフィルタ106は、本体101の1つの面の鉛直方向の各位置に配置されている。また、フィルタ108も、スラグは通過させず、水は通過させる部材であり、本体101の側面(壁面)に複数、配置されている。複数のフィルタ108は、本体101のフィルタ106が配置されている面に隣接する1つの面の鉛直方向の各位置に配置されている。なお、フィルタ106、108としては、スラグは通過できず、水は通過できる径の穴が複数形成された部材を用いることができる。また、フィルタ108は、鉛直方向における位置がフィルタ106とは、異なる位置に配置されている。具体的には、フィルタ108は、鉛直方向において、フィルタ106とそのフィルタ106に鉛直方向に隣接するフィルタ106との間を含む領域に配置されている。なお、フィルタ106とフィルタ108とは、配置される面が異なるのみで、各フィルタには、同一の部材を用いることができる。
【0027】
樋109は、フィルタ106に対応して複数位置されている。それぞれの樋109は、本体101のフィルタ106の直下に配置されている。樋109は、直上に配置されたフィルタ106から排出される水を回収し、水受け部63a、63bに搬送(排出)する。なお、樋109と水受け部63a、63bとの接続方法は特に限定されず、両者を接続し、水を流す配管を設けてもよいし、樋109の水の排出部を水受け部63a、63bの直上に配置し、自由落下で水を水受け部63a、63bに流すようにしてもよい。
【0028】
樋110は、フィルタ108に対応して複数位置されている。それぞれの樋110は、本体101のフィルタ108の直下に配置されている。樋110は、直上に配置されたフィルタ108から排出される水を回収し、水受け部63a、63bに搬送(排出)する。なお、樋110と水受け部63a、63bとの接続方法は特に限定されず、両者を接続し、水を流す配管を設けてもよいし、樋110の水の排出部を水受け部63a、63bの直上に配置し、自由落下で水を水受け部63a、63bに流すようにしてもよい。
【0029】
横補強部112は、本体101の周方向に配置された棒状の部材であり、本体101の外周面に複数配置されている。また、縦補強部114は、本体101の4辺に沿って配置されている。なお、横補強部112は、両端がそれぞれ別の縦補強部114に接続されている。また、横補強部112は、フィルタ106とフィルタ106との間、フィルタ108とフィルタ108との間に配置されている。ここで、横補強部112は、縦補強部114を介して、他の面に設けられた横補強部112と接続されており、本体101の周方向に一周連結している。なお、横補強部112は、本体101の周方向に一周連結していればよく、その配置位置は、限定されない。なお、横補強部112は、フィルタ106、108が設けられていない領域に配置されている。
【0030】
スラグ貯蔵タンク30は、以上のような構成であり、スラグ搬送部28からスラグ及び水が供給されたら、フィルタ106、108から水のみを排出し、内部にスラグを貯蔵する。また、スラグ貯蔵タンク30は、図2及び図3に示すように、本体101の別々の面にそれぞれフィルタ106と、フィルタ108とが配置されている。また、図4に示すように本体101の鉛直方向に垂直な断面の一部は、フィルタ106とフィルタ108の両方が配置されている。これにより、図5に示すように、本体101には、フィルタ106と、フィルタ108とが、鉛直方向に一定距離ずれて配置されている。また、本体101の各面に設けられている横補強部112も、フィルタ106と、フィルタ108の配置位置のずれに応じて、鉛直方向にずれて配置されている。つまり、横補強部112が、フィルタ106、108を塞がないように配置されている。
【0031】
これにより、本体101のスラグを貯蔵する領域の鉛直方向において、フィルタ106が配置されていない領域には、フィルタ108が配置され、フィルタ108が配置されていない領域には、フィルタ106が配置される構成となる。また、フィルタ106、108が補強部により塞がれない構成となる。なお、本体101のスラグを貯蔵する領域とは、スラグが実質的に貯留される領域であり、本体101の上端の一部や下端の一部は、含まない。
【0032】
排出口32は、スラグ貯蔵タンク30の下方の端部に配置されており、スラグ貯蔵タンク30に貯蔵されているスラグの排出の実行、停止を制御する。排出口32から排出されたスラグは、直下に待機している搬送車両18に排出される。
【0033】
スラグ排出システム20は、以上のような構成であり、ガス化炉12で生成され、スラグホッパ14で回収され、開閉弁16から排出されたスラグをスラグロックホッパ22に一時的に貯留する。スラグ排出システム20は、スラグロックホッパ22に貯留したスラグをスラグ冷却部26の冷却タンク26aに搬送し、冷却タンク26aで冷却した後、搬送コンベア26bでスラリータンク40に搬送する。
【0034】
スラグ排出システム20は、輸送管42とスラリーポンプ43により、スラリータンク40に貯留されたスラグを水と共にスラグ貯蔵タンク30に搬送する。また、スラグ貯蔵タンク30にスラグとともに搬送された水は、フィルタ106、108から排出され、樋109、110に落下する。樋109、110に落下した水は、水受け部63a、63bに搬送され、回収管62を介してスラリータンク40に搬送される。
【0035】
スラグ排出システム20は、上述したスラグの搬送を継続し、スラグ貯蔵タンク30に所定のスラグを搬送したら、スラグの搬送を停止する。その後、スラグ排出システム20は、スラグ貯蔵タンク30内の水が、フィルタ106、108から樋109、110に排出され、スラグ貯蔵タンク30内のスラグが乾燥したら、排出口32から搬送車両18にスラグを排出する。搬送車両18は、スラグを積載し、所定の地点までスラグを搬送する。なお、搬送車両18は、順次、排出口32の直下に移動し、スラグを積載したら、所定の地点まで移動する。このように、搬送車両18は、スラグの搬送を繰り返す。
【0036】
スラグ排出システム20は、以上のような構成であり、スラグを水に混入し、スラリー状にしてスラグ貯蔵タンク30に供給することで、スラグをスラグ貯蔵タンク30に搬送することができる。スラグ排出システム20は、スラリー状にしてスラグを搬送するため、配管の経路の自由度を高くすることができる。つまり、搬送経路が直線状でなくても、また、搬送経路の傾斜角が任意の角度であっても、スラグを搬送することができる。これにより、装置をコンパクトに配置することができる。
【0037】
また、スラグ貯蔵タンク30の側面にフィルタ106、108を設け、水(液体)を排出する構成とすることで、スラグ貯蔵タンク30から、スラグの搬送に利用した水を効率よく、かつ、簡単に排出することができる。また、スラグ貯蔵タンク30のフィルタ106、108から排出した水を回収し、スラリータンク40に戻すことで、搬送に使用する水を効率よく利用することができる。また、フィルタ106、108から一部のスラグが排出されてしまった場合も、再びスラグ貯蔵タンク30にスラリーとして供給することができ、スラグをより無駄なく、搬送することができる。
【0038】
さらに、スラグ排出システム20のスラグ貯蔵タンク30は、本体101の鉛直方向に垂直な断面には、少なくとも一部に、フィルタ106及び/またはフィルタ108が配置されている。従って、本体101のいずれの位置に液面(水面)が到達しても、水面とフィルタ106及び/またはフィルタ108とを接触させることができる。これにより、スラグ貯蔵タンク30から排出する水の量を安定させることができる。つまり、スラグ貯蔵タンク30からスラリータンク40に供給される(戻される)水の量を安定させることができる。このように、スラグ貯蔵タンク30からの水の回収量を安定させることで、スラリータンク40で保持する水を一定範囲にすることができ、スラリータンク40からスラグ貯蔵タンク30に送るスラリーのスラグの濃度を一定濃度範囲内とすることができる。
【0039】
このように、スラグ排出システム20は、スラリー内のスラグの濃度を一定濃度範囲内にできることで、スラグの濃度が高くなり、スラリーを搬送できなくなることを抑制することができる。例えば、スラリー内のスラグの濃度を40%以下に維持することができ、スラリータンク40からスラグ貯蔵タンク30に適切にスラグを搬送することができる。また、スラグ排出システム20は、スラリー内のスラグの濃度を一定濃度範囲内にできることで、スラグを効率よく搬送することができる。つまり、スラリーに含まれるスラグの量が少なくなり、搬送効率が低下することを抑制することができる。なお、スラリー内のスラグの濃度の範囲は、装置の構成や、ポンプの性能等によって種々の値となるため、特に限定されないが、例えば、5%から40%にすることが好ましい。
【0040】
また、スラグ貯蔵タンク30は、補強部(横補強部112、縦補強部114)を設け、本体101の壁面を補強することで、スラグ貯蔵タンク30の強度を高くすることができ、耐久性を高くすることができる。また、本体101自体の強度を低くすることができ、装置コストを低減することができる。
【0041】
スラグ排出システム20は、スラグ冷却部26の搬送コンベア26bの駆動を制御することで、スラリータンク40へのスラグの供給を制御してもよい。また、スラリータンク40へのスラグの供給は一定として制御を行ってもよい。また、スラグ排出システム20は、さらに、スラリータンク40に水を供給する機構を設け、水の供給を制御する機構を設けてもよい。これにより、スラリータンク40に保持されるスラリーをより適切に制御することができる。
【0042】
なお、本実施形態では、スラグをスラリー状にするための液体として、水を用いたが、液体であればよく、水以外の液体も用いることができる。
【0043】
ここで、スラグ貯蔵タンクは、上記実施形態に限定されない。以下、図6から図9を用いてスラグ貯蔵タンクの他の例について説明する。図6は、スラグ貯蔵タンクの他の例の概略構成を示す側面図である。また、図7は、図6に示すスラグ貯蔵タンクの側面に隣接する側面を示す側面図であり、図8は、図6のB−B線断面図であり、図9は、図6に示すスラグ貯蔵タンクの概略構成を示す斜視図である。スラグ貯蔵タンク202は、図6から図9に示すように、本体203と、フィルタ206、208と、補強部212とを有する。なお、スラグ貯蔵タンク202は、さらに樋を備えていてもよい。本体203は、中空の塔、本実施形態では、断面(水平方向の面)が四角形となる筒形状であり、鉛直方向下側に、径が徐々に小さくなる端部が設けられている。
【0044】
フィルタ206は、本体203の側面(壁面)に複数、配置されている。複数のフィルタ206は、本体203の1つの面の鉛直方向の各位置に配置されている。また、フィルタ208は、本体203の側面(壁面)に複数、配置されている。複数のフィルタ208は、本体203のフィルタ206が配置されている面に隣接する1つの面の鉛直方向の各位置に配置されている。なお、1枚のフィルタ206、208は、上述したフィルタ106、108と同様の構成である。
【0045】
また、フィルタ208も、フィルタ108と同様に、鉛直方向における位置がフィルタ206とは、異なる位置に配置されている。具体的には、フィルタ208も、鉛直方向において、フィルタ206とそのフィルタ206に鉛直方向に隣接するフィルタ206との間を含む領域に配置されている。
【0046】
補強部212は、本体203の周方向に配置された棒状の部材であり、本体203の外周面に複数配置されている。1つの補強部212は、本体203の周方向に一周連結している。また、補強部212は、本体203のフィルタ206が配置されている面では、フィルタ206とフィルタ206との間に直線状に配置されている。補強部212は、本体203のフィルタ208が配置されている面では、フィルタ208の周りに沿って、折れ曲がったU字部214として配置されている。つまり、補強部212は、基本的に、本体203の周方向に直線上に配置されており、フィルタ208と重なる部分は、フィルタ208の周囲に沿って折れ曲がった形状(U字部214)で配置されている。
【0047】
スラグ貯蔵タンク202は、以上のような構成であり、スラグ搬送部28からスラグ及び水が供給されたら、フィルタ206、208から水のみを排出し、内部にスラグを貯蔵する。また、スラグ貯蔵タンク202も、図6及び図7に示すように、本体203の別々の面にそれぞれフィルタ206と、フィルタ208とが配置されている。また、図8に示すように本体203の鉛直方向に垂直な断面の一部は、フィルタ206とフィルタ208の両方が配置されている。これにより、図9に示すように、本体203には、フィルタ206と、フィルタ208とが、鉛直方向に一定距離ずれて配置されている。また、本体203の各面に設けられている補強部212は、フィルタ206、208と重ならない位置に配置されている。
【0048】
スラグ貯蔵タンク202のように、補強部212を、フィルタを避ける形状で周上に設けることでも、スラグ貯蔵タンク202の強度を高くすることができる。また、フィルタをずらして設けた場合でも、補強部212のように、屈曲した形状とすることで、縦補強部を設けることなく、本体203を補強することができる。
【0049】
次に、図10から図12を用いて、スラグ貯蔵タンクのさらに他の例を説明する。ここで、図10、図11、図12は、それぞれ、スラグ貯蔵タンクの他の例の概略構成を示す側面図である。なお、図10、図11、図12は、本体の1つの面にフィルタを配置した例である。以下、フィルタと補強部との関係について説明する。
【0050】
図10に示すスラグ貯蔵タンク302は、本体303の1つの面に、複数のフィルタ306と、複数のフィルタ308とが配置されている。なお、フィルタ306は、鉛直方向に列状に配置され、フィルタ308も、鉛直方向に列状に配置されている。また、フィルタ306とフィルタ308とは、水平方向に隣接している。
【0051】
また、補強部312は、フィルタ306と隣接するフィルタ306との間を通り、かつ、フィルタ308と隣接するフィルタ308との間を通る位置に配置されている。また、補強部312は、フィルタ306と隣接するフィルタ306との間を通る部分と、フィルタ308と隣接するフィルタ308との間を通る部分とが、フィルタ306とフィルタ308との間に鉛直方向に延びる棒状部で接続されている。これにより、補強部312は、本体303の周方向に一周している。
【0052】
スラグ貯蔵タンク302に示すように、1つの面に水平方向に隣接したフィルタを複数設け、つまり、2つの列状のフィルタを設け、水平方向に隣接するフィルタの一方のフィルタを、他方のフィルタが配置されていない領域に設けることでも、鉛直方向のどの位置にもフィルタが配置された構成とすることができる。
【0053】
図11に示すスラグ貯蔵タンク402は、本体403の1つの面に、複数のフィルタ406と、複数のフィルタ408とが配置されている。なお、フィルタ406は、鉛直方向に列状に配置され、フィルタ408も、鉛直方向に列状に配置されている。また、フィルタ406とフィルタ408とは、水平方向に隣接している。ここで、フィルタ406とフィルタ408は、共に、平行四辺形であり、鉛直方向の位置、特に、上下方向の端部が端部に向かうに従って面積が小さくなる形状となっている。また、フィルタ406とフィルタ408は、鉛直方向において、フィルタ406とフィルタ408とが重なる領域が、自身の面積が変化している領域となる。
【0054】
また、補強部412は、フィルタ406と隣接するフィルタ406との間を通り、かつ、フィルタ408と隣接するフィルタ408との間を通る位置に配置されている。また、補強部412は、フィルタ406、408の鉛直方向の端の辺に沿って傾斜している。また、補強部412は、フィルタ406と隣接するフィルタ406との間を通る部分と、フィルタ408と隣接するフィルタ408との間を通る部分とが、フィルタ406とフィルタ408との間に鉛直方向に延びる棒状部で接続されている。これにより、補強部412は、本体403の周方向に一周している。
【0055】
スラグ貯蔵タンク402も、1つの面に水平方向に隣接したフィルタを複数設け、つまり、2つの列状のフィルタを設け、水平方向に隣接するフィルタの一方のフィルタを、他方のフィルタが配置されていない領域に設けることで、鉛直方向のどの位置にもフィルタが配置された構成とすることができる。
【0056】
さらに、スラグ貯蔵タンク402は、フィルタの形状を鉛直方向の位置に応じて面積が変わる形状とすることで、フィルタと他のフィルタとが重なる領域と、フィルタと他のフィルタとが重ならない領域との、断面におけるフィルタの面積の差を小さくすることができる。これにより、鉛直方向におけるフィルタの面積(断面での面積)の変化をより少なくすることができ、スラグ貯蔵タンク402から排出される水の量の変化を小さくすることができる。
【0057】
図12に示すスラグ貯蔵タンク502は、本体503の1つの面に、複数のフィルタ506が配置されている。フィルタ506は、鉛直方向に列状に配置されている。フィルタ506は、平行四辺形であり、鉛直方向の位置、特に、上下方向の端部が端部に向かうに従って面積が小さくなる形状となっている。また、フィルタ506は、一部が、鉛直方向に隣接する他のフィルタ506と同一水平面上に配置されている。つまり、フィルタ506は、鉛直方向下側の端部が、鉛直方向下側に隣接するフィルタ506の鉛直方向上側の端部よりも、鉛直方向下側にある。フィルタ506は、鉛直方向上側の端部が、鉛直方向上側に隣接するフィルタ506の鉛直方向下側の端部よりも、鉛直方向上側にある。
【0058】
また、補強部512は、フィルタ506と隣接するフィルタ506との間を通る位置に配置されている。また、補強部512は、本体503の周方向に一周している。
【0059】
スラグ貯蔵タンク502は、フィルタ506は、鉛直方向の位置、特に、上下方向の位置に応じて面積が変化する形状とすることで、1つの面に一列でフィルタ506を配置した場合も、フィルタ506の水平方向における形状を調整することで、フィルタ506の一部と隣接するフィルタ506の一部とが水平方向において重なる形状とすることができる。
【0060】
このように、フィルタの配置位置、形状は、種々の構成とすることができる。なお、フィルタは、本体の3つ以上の面に設けてもよいし、列状に配置せずに、ランダムに配置してもよい。
【0061】
なお、スラグ貯蔵タンクは、本体の鉛直方向に直交する断面において、いずれの断面においても、フィルタの面積が、つまり、断面においてフィルタが占める割合が一定範囲であることが好ましく、一定値であることがより好ましい。すなわち、スラグ貯蔵タンクは、鉛直方向の位置によって変化する、フィルタの面積の変化量をより小さくすることが好ましい。スラグ貯蔵タンクは、鉛直方向におけるフィルタの面積の変化を少なくすることで、スラリーとして搬送された液体をより安定して外部に排出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように、本発明にかかるスラグ貯蔵タンク及びスラグ排出システムは、スラグを貯蔵、排出するのに有用であり、特に、燃焼炉で生成されたスラグを冷却し、所定の位置に排出するのに適している。
【符号の説明】
【0063】
12 ガス化炉
14 スラグホッパ
16 開閉弁
18 搬送車両
20 スラグ排出システム
22 スラグロックホッパ
26 スラグ冷却部
26a 冷却タンク
26b 搬送コンベア
28 スラグ搬送部
30 スラグ貯蔵タンク
32 排出口
40 スラリータンク
42 輸送管
43 スラリーポンプ
62 回収管
63a、63b 水受け部
101 本体
106、108 フィルタ
109、110 樋
112 横補強部
114 縦補強部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラグを貯蔵するスラグ貯蔵タンクであって、
スラグを貯蔵する本体と、
前記本体の壁面に配置され、液体を選択的に通過させる複数のフィルタと、を有し、
前記本体は、前記スラグを貯蔵する領域における鉛直方向に垂直ないずれの断面にも少なくとも一部に前記フィルタが配置されていることを特徴とするスラグ貯蔵タンク。
【請求項2】
前記本体の外周を一周囲って配置された補強部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のスラグ貯蔵タンク。
【請求項3】
前記本体は、複数の面で構成され、
前記フィルタは、前記本体の同一の面に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスラグ貯蔵タンク。
【請求項4】
前記本体は、複数の面で構成され、
前記フィルタは、前記本体の複数の面に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスラグ貯蔵タンク。
【請求項5】
前記本体は、前記スラグを貯蔵する領域における鉛直方向に垂直な断面におけるフィルタの配置割合が、一定の範囲内であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のスラグ貯蔵タンク。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のスラグ貯蔵タンクと、
排出されたスラグを冷却するスラグ冷却部と、
前記スラグ冷却部から排出されたスラグと液体とを貯留するスラリータンクと、
前記スラリータンクに貯留されたスラグを液体によりスラリー化し、前記スラグ貯蔵タンクに搬送するスラグスラリー搬送部と、
前記スラグ貯蔵タンクの前記フィルタから排出された液体を回収し、スラリータンクに供給する回収部と、を有することを特徴とするスラグ排出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−35995(P2012−35995A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179875(P2010−179875)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】