説明

スラスト軸受装置

【課題】高温となった潤滑油を効率的に外部に排出させることができるスラスト軸受装置を提供する。
【解決手段】本発明のスラスト軸受装置1は、スラストカラー107に対して対向するとともに、スラストカラー107の周方向に沿うように相互に間隔を設けて配置され、スラストカラー107を回転可能に支持する複数の軸受パッド10と、隣接する軸受パッド10の間に配置され、潤滑油を軸受パッド10とスラストカラー107の間に向けて供給する給油片30と、を備える。そして、軸受パッド10と、軸受パッド10を基準にして回転軸105の回転方向の前方側P1に配置される給油片30と、の間に潤滑油排出路18が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービン、ガスタービン、圧縮機、過給機などの回転機械に適用されるスラスト軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービン、ガスタービンなどの高速回転体であるロータ(回転軸)のスラスト荷重(軸方向推力)を支持するために、一般的に、ティルティングパッドスラスト軸受装置が使用されることは良く知られている。このスラスト軸受装置は、ピボットで支持された複数の軸受パッドを有しており、隣接する軸受パッド間には潤滑油を供給する給油片を有している。これらの軸受パッドに相対するスラストカラーがロータと一体回転するとスラストカラー(回転軸側)と軸受パッド(静止側)との隙間に楔形状の油膜が形成されて隙間内に圧力が発生し、この圧力によってスラスト荷重を支持する。
【0003】
軸受パッドとスラストカラーの間を通過する潤滑油は摩擦発熱するため温度が上昇するが、この高温の潤滑油が排出されることなく新たに供給される潤滑油(新油)と混合して後方の軸受けパッドに流入することがある。これをキャリーオーバーという。キャリーオーバーが連続的に生じると、スラストカラーと軸受パッドの間の潤滑油の温度がより高くなる。潤滑油の温度(油温)が高くなると、潤滑油の粘度が低下することで油膜厚さが薄くなり、軸受の負荷能力が低下する。また、油膜厚さが薄くなることによってさらに油温が上昇してしまい潤滑油や軸受摺動面材料の劣化や軸受パッドの焼付きを招く恐れもある。
【0004】
潤滑油のキャリーオーバーを防止しつつ、低温の新油を効果的に軸受パッドとスラストカラーの間に供給できる軸受装置が特許文献1に開示されている。この軸受装置は、給油片に、潤滑油を供給するための給油通路の他に、潤滑油を排出する排出通路を設ける。特許文献1は、軸受パッドとスラストカラーの間を通ってきた高温の潤滑油をこの排出通路から外部に排出することで、キャリーオーバーされる潤滑油が新油に混合されるのを抑える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−151283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の軸受装置によると、高温の潤滑油を排出通路から外部に排出することができるが、給油片に設けることのできる排出通路は、設置スペースが限られるので、十分な径を確保することができない。したがって、特許文献1の排出通路から排出できる潤滑油の量は限られている。
そこで本発明は、特許文献1よりもさらに効果的に高温となった潤滑油を外部に排出させることができるスラスト軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的のもとになされた、本発明のスラスト軸受装置は、軸受パッドと給油片の間に潤滑油排出路を設けることを特徴としている。
ここで、軸受パッドは、回転軸に設けられたスラストカラーに対向するとともに、スラストカラーの周方向に沿うように相互に間隔を設けて配置される。このように配置された複数の軸受パッドは、スラストカラーを回転可能に支持する。
また、給油片は、隣接する軸受パッドの間に配置され、潤滑油を軸受パッドとスラストカラーの間に向けて供給するものである。
潤滑油排出路は、軸受パッドを基準にしてスラストカラーの回転方向の前方側に配置される給油片との間に配置される。
【0008】
給油片は、軸受パッドとスラストカラーの間に潤滑油を吐出する複数の給油孔を軸受装置の内周側から外周側に沿って備えているが、本発明においては、吐出される潤滑油の量が、外周側よりも内周側の方が多く設定されていることが好ましい。それぞれの給油孔から供給された潤滑油は、スラストカラーが回転することによる遠心力で外周側に排出される。そうすると、内周側に実際に油膜として存在する潤滑油の量が不足する。そこで、吐出される潤滑油の量を、外周側よりも内周側の方を多く設定するのである。
【0009】
本発明の軸受装置は、より多くの新油を軸受パッドとスラストカラーの間に供給するために、第1の給油通路と第2の給油通路を設ける。第1の給油通路は、給油片を通過して、軸受パッドとスラストカラーの間に潤滑油を供給する。第2の給油通路、給油片及び軸受パッドを通過して、軸受パッドとスラストカラーの間に潤滑油を供給する。
【0010】
同様の目的により、本発明は、給油片が軸受パッドの方向に向けて傾斜する給油通路を備え、軸受パッドが潤滑油の流入する側に向けて下降するテーパを備える、という構成を採用することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、給油片と軸受パッドの間に潤滑油排出路を設ける。この潤滑油排出路はより多くの潤滑油を排出できるだけの通路面積を確保することができる。したがって、本発明によれば、より効果的に潤滑油のキャリーオーバーを防止しつつ、低温の新油を軸受パッドとスラストカラーの間に供給することができ、これにより潤滑油の潤滑性能を維持しつつ確実に回転軸を支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係わる軸受装置が搭載される回転機械の一例である蒸気タービンを示す。
【図2】第1実施形態に係わる軸受装置を示し、(a)は平面図、(b)は部分断面図である。
【図3】第1実施形態に係わる軸受装置の構成部分を示し、(a)、(b)は軸受けパッドの側面図、(c)は軸受けケースに設けられる油排出開口近傍を示す斜視図である。
【図4】第2実施形態に係わる軸受装置を示し、(a)は平面図、(b)は部分断面図である。
【図5】第3実施形態に係わる軸受装置を示し、(a)は平面図、(b)は部分断面図である。
【図6】第4実施形態に係わる軸受装置を示し、(a)は平面図、(b)は部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1には、本実施形態に係わる軸受装置が搭載される回転機械の一例として、蒸気タービン100が示されている。蒸気タービン100は、蒸気タービン100に流入する蒸気(作動流体)の量と圧力を調整する調整弁101と、圧力を保持するケーシング102と、動力を発生する動力発生部103と、動力をコンプレッサ等の機械に伝達する回転軸105と、回転軸105を軸回りに回転可能に支持するジャーナル軸受装置106と、スラスト軸受装置1(軸受装置)と、を主たる構成としている。回転軸105にはフランジ状のスラストカラー107が一体的に設けられている。そして、スラスト軸受装置1は、スラストカラー107と軸方向に対向配置され、これによりスラストカラー107を介して回転軸105を軸方向に支持している。
【0014】
<第1実施形態>
次に、図2をも参照して、回転軸105を軸方向Aに支持するスラスト軸受装置1について説明する。
このスラスト軸受装置1は、装置本体(図示略)に固定された軸受架台108に支持される軸受ケース2に保持され、スラストカラー107を回転可能に支持する複数の軸受パッド10と、隣接する軸受パッド10の間に配置され、軸受パッド10とスラストカラー107の間に潤滑油を供給する給油片30と、を備える。以下、各構成部材をより具体的に説明する。
【0015】
<軸受ケース2の構成>
軸受ケース2は、外輪3と、外輪3の内側であって外輪3と同軸上に配置される内輪4と、を備える。外輪3と内輪4はともに、高さは等しいが、径が異なるリング状の形態をなしている。なお、ここでいう高さとは、外輪3、内輪4の軸方向の寸法を言う。
軸受ケース2は、外輪3と内輪4を繋ぐ底板5を備えている。底板5は、外輪3、内輪4の高さ方向の一端側に設けられる。軸受ケース2は、外輪3、内輪4及び底板5により形成されるリング状の収容空間内に軸受パッド10及び給油片30を収容し、かつ保持している。底板5には、前記収容空間内に向けて突出するピボット6aが形成されている。
軸受ケース2は、外輪3の上端部に複数の油排出開口7(図3(c))を備えている。油排出開口7は、後述する軸受パッド10に形成される潤滑油排出路18に対応して設けられている。
【0016】
<軸受パッド10の構成>
軸受ケース2の収容空間内に平面形状が扇形をなしている複数の軸受パッド10が保持されている。軸受パッド10は第1レベラ16と第2レベラ17とで支持される。第2レベラ17はピボット6aによって支持され、位置を固定される。第1レベラ16は隣接する2つの第2レベラ17とピボット6bによって支持され、軸受パッド10はその第1レベラ16の上面に配置され、ピボット6cによって支持される。これにより、軸受パッド10、第1レベラ16および第2レベラ17はそれぞれ軸受ケース2の周方向B及び径方向Cにティルティングが可能である。なお、軸受パッド10をティルティングできるように支持する機構がいくつも存在することは当業者間で周知であり、ここで示した形態はあくまで一例に過ぎない。
【0017】
軸受パッド10は、スラストカラー107の回転方向Pの前方側P1を階段状に加工することで、潤滑油排出路18を形成している。潤滑油排出路18は、軸受パッド10の径方向Cの全域に亘って形成されている。ただし、軸受パッド10は第1レベラ16に載せられているだけであるため、潤滑油排出路18を軸方向Aの全域に設けてしまうと軸受パッド10を周方向Bに位置決めすることができなくなる。したがって、潤滑油排出路18は支持面11から所定の位置まで設けるが、それよりも下方には支持突起19を形成している。
なお、軸受パッド10の支持面11には、ホワイトメタル等、潤滑性の高い保護層が設けられる。
【0018】
<給油片30の構成>
また、給油片30は、隣接する軸受パッド10の間に配置される。この給油片30は、軸受パッド10、第1レベラ16および第2レベラ17とは独立して軸受ケース2に直接的に固定されておりティルティングはしない。
給油片30は、径方向Cには外輪3から内輪4にかけて延設される一方、周方向Bには隣接する軸受パッド10の間を埋めている。
給油片30は、図示しない外部に設けられる潤滑油供給源から供給される潤滑油を給油片30に導入する油導入孔31と、油導入孔31により導入された潤滑油を軸受パッド10(支持面11)とスラストカラー107の間に吐出する複数の給油孔32と、を備えている。油導入孔31は一端が給油片30の外周側に開口し、他端が所定の位置で封止されている。各給油孔32は下端部が油導入孔31に繋がり、上端が給油片30の先端面33に開口している。給油孔32が、径方向Cに沿って複数形成されているために、径方向Cの全体に亘って潤滑油を吐出させることができる。この例では、一つの給油片30に5つの給油孔32を設けているが、これに限定されなることはない。また、この例では、給油孔32は同じ径のものを均等間隔で設けているが、後述するように、これに限定されることはない。
【0019】
次に、この実施形態のスラスト軸受装置1の作用について説明する。
図1に示す蒸気タービン100を稼働させると、回転軸105は自身の軸回りに回転する。このとき、給油片30aを介して潤滑油を供給すると、回転軸105の回転に伴って、軸受パッド10の支持面11とスラストカラー107の被支持面107aとの間には、油膜が形成され、回転軸105に設けられたスラストカラー107は、この油膜による圧力により、軸受パッド10と隙間を有した状態で支持されて所定の回転方向Pへ回転する。
【0020】
ここで、軸受パッド10の支持面11とスラストカラー107の被支持面107aとの間の潤滑油は、スラストカラー107の回転に伴って、回転方向Pの前方側P1の給油片30bに向かって移動する。この移動の過程で潤滑油の温度が高くなる。しかし、この温度の高くなった潤滑油は、前方側P1の給油片30bに達する前に、潤滑油排出路18に導かれる。潤滑油排出路18に導かれた高温の潤滑油は、軸受ケース2の外輪3に設けられた油排出開口7を通って外部に排出される。このため、給油片30bよりも回転方向Pの前方側P1に位置する軸受パッド10(10b)とスラストカラー107の間には、後方側P2からキャリーオーバーされる潤滑油が混合されるのを防止しつつ、回転方向Pの前方側P1の軸受パッド10とスラストカラー107の間に給油片30bから新油を効果的に供給することができる。
【0021】
以上のように、本実施形態のスラスト軸受装置1では、軸受パッド10とスラストカラー107の間に潤滑油排出路18を設けることで、潤滑油のキャリーオーバーを防止しつつ、低温の新油を効果的に軸受パッド10とスラストカラー107の間に供給することができ、これにより潤滑油の潤滑性能を維持しつつ確実に回転軸105を支持することができる。
しかも、潤滑油排出路18は、軸受パッド10と給油片30の間に設けられるものであるから、給油片30に同様の排出路を設けるのに比べて寸法の制約が小さい。したがって、十分な量の高温の潤滑油を排出できる。
また、本実施形態のスラスト軸受装置1では、軸受パッド10に潤滑油排出路18を設けることにより、スラストカラー107が支持面11と摺動する距離が短くなり、支持面11の温度上昇が低減される。その結果として潤滑油の温度上昇が抑制されるので、本実施形態のスラスト軸受装置1は、潤滑油の潤滑性能を維持するのに有利である。
【0022】
なお、図2には軸受パッド10を階段状に加工して潤滑油排出路18を形成した例を示しているが、潤滑油の排出ができるのであれば階段状に限るものでない。例えば、図3(b)に示すように、軸受パッド10における回転方向Pの前方側P1をテーパ状に加工することでも、本発明の効果が得られる潤滑油排出路18を形成できることは言うまでもない。
このとき、図3(a)に示す段付き部分のL、図3(b)に示すテーパ部分のLは、軸受パッド10の支持面11の面積(受圧面積)を考慮してスラストカラー107から受ける面圧強度を満足する値とする。
また、ここでは軸受ケース2が一体化されたスラスト軸受装置1の例を示した。しかし、軸受ケース2に相当する部分が装置本体側に設けられているために、軸受装置としては軸受ケース2に相当する部分を有しない場合がある。本発明はそのような軸受装置に対しても適用できる。
【0023】
<第2実施形態>
スラストカラー107による遠心力を利用して、給油片30により前方側P1にある軸受パッド10とスラストカラー107の間に新油を流入しやすくする構造例を第2実施形態として説明する。
この構造は、給油片30の給油孔32の間隔及び径、さらに給油孔32の向きに特徴を有する。以下、図4を参照しながら説明する。
【0024】
第2実施形態に係る給油片130には給油孔32が径方向Cに複数配置されており、それぞれの給油孔32から潤滑油が吐出される。吐出された潤滑油は、スラストカラー107が回転することによる遠心力で外周側に向かう力を受ける。そうすると、内周側に実際に油膜として存在する潤滑油の量が不足するおそれがある。
そこで、給油孔32の間隔を、内周側から外周側に向けて広く設定する。内周側に向けて潤滑油を多く吐出することで、遠心力に対抗して、内周側に実際に油膜として存在する潤滑油の量を確保しやすくする。より具体的には、図4(a)に示すように、給油孔32を内周側ISから外周側OSに向けて順に給油孔32a、32b、32c、32d及び32eとし、給油孔32aと給油孔32bの間隔をLab、給油孔32bと給油孔32cの間隔をLbc、給油孔32cと給油孔32dの間隔をLcd、給油孔32dと給油孔32eの間隔をLdeとすると、以下の関係を満足するように、間隔Lab、間隔Lbc、間隔Lcd、間隔Ldeを設定する。
間隔Lab<間隔Lbc<間隔Lcd<間隔Lde
【0025】
また、第2実施形態において、給油孔32の径を、外周側から内周側に向けて大きく設定する。このようにすることよっても、内周側ISに実際に油膜として存在する潤滑油の量を確保しやすくする。より具体的には、図4(a)に示すように、給油孔32aの径をDa、給油孔32bの径をDb、給油孔32cの径をDc、給油孔32dの径をDd、給油孔32eの径をDeとすると、以下の関係を満足するように、径Da、径Db、径Dc、径Dd、径Deを設定する。
径Da>径Db>径Dc>径Dd>径De
【0026】
さらに、第2実施形態において、各給油孔32からの潤滑油が、内周側ISに向けて供給されるようにする。つまり、図4(b)に示すように、各給油孔32(給油孔32a、32b、32c、32d及び32e)を、流入端32iから流出端32Oに向けて回転軸105の向きに傾斜して形成する。
【0027】
以上のように構成された第2実施形態によると、外周側OSよりも内周側ISに新油をより多く吐出させることで遠心力によって軸受パッド10とスラストカラー107の間の全体に新油が行き渡るようになる。
給油孔32の間隔、径の具体的な値、傾斜の程度は、回転軸105の回転数やスラスト力などの設計条件によって必要に潤滑油の量を求め、遠心力との兼ね合いで決定すればよい。
【0028】
<第3実施形態>
第1実施形態に係る給油片30は、通常、先端面33に開口する給油孔32が設けられており、給油孔32から吐出された潤滑油は給油片30の先端面33を通って軸受パッド10の支持面11に吐出される。第3実施形態では、この給油片30を通過する潤滑油の通路(第1の給油通路)に加えて、給油片30及び軸受パッド10の内部を通過して支持面11に吐出される通路(第2の給油通路)を設けることで、軸受パッド10とスラストカラー107の間に新油が供給されるのを支援する。そのための給油片230、軸受パッド210の構成を図5に基づいて説明する。
【0029】
第3実施形態に係る給油片230は、給油孔32(第1の給油通路)に加えて、給油孔34(第2の給油通路)を設ける。給油孔34は、給油片30内において給油孔32から分岐する。つまり、給油孔34の一端は給油孔34に連なっているため、給油孔34は給油孔34を介して潤滑油の供給を受ける。給油孔34の他端は給油片230の側面35に開口している。給油孔34に供給された潤滑油は軸受パッド210の側面20に向けて吐出される。
【0030】
第3実施形態に係る軸受パッド210は、給油孔34から流入した潤滑油を支持面11とスラストカラー107の間に供給する給油孔21(第2の給油通路)を備える。給油孔21は、一端が給油片30の給油孔34の開口端に対向するように形成される。また、給油孔21は、他端が支持面11に形成されたポケット22に開口する。支持面11より後退したポケット22を設けることで、潤滑油に加わる圧力を低減し、給油孔21から潤滑油が吐出するのを容易にする。
【0031】
第3実施形態によると、給油孔32から吐出される潤滑油が給油片230の先端面33を通って軸受パッド210とスラストカラー107の間に供給されるのに加えて、給油片230の給油孔34及び軸受パッド210の給油孔21を通って軸受パッド210とスラストカラー107の間に供給される。したがって、より多くの新油を軸受パッド210とスラストカラー107の間に供給できるので、軸受パッド210の温度低減に寄与する。
【0032】
<第4実施形態>
第4実施形態も、軸受パッド310とスラストカラー107の間に潤滑油をより効果的に供給することを目的として、給油片330、軸受パッド310が構成されている。以下、図6を参照しながら説明する。
第4実施形態に係る給油片330は、給油孔332の向きが途中から軸受パッド310の方向に傾いて形成されている。また、給油片330の先端面33には、先端面33よりも後退するポケット36が形成されている。給油孔332の上端はポケット36に開口している。ポケット36は、第3実施形態におけるポケット22と同様の機能を果たす。
一方、軸受パッド310には、潤滑油が流入する側にテーパ23を設ける。このテーパ23は、軸受パッド310の支持面11を給油片330に向けて連続的に降下させることで形成される。テーパ23は、給油片330の側面20において降下量は10μm程度とすればよい。
【0033】
第4実施形態によると、給油孔332の向きが軸受パッド310の方向に傾いて形成され、かつ、軸受パッド310には潤滑油が流入する側に向けて下降するテーパ23を設けているので、より多くの新油を軸受パッド310とスラストカラー107の間に供給できる。したがって、軸受パッド210の温度低減に寄与することで、潤滑油の潤滑性能を維持しつつ確実に回転軸105を支持することができる。
【0034】
なお、以上説明した実施形態では、最も好ましい形態として、潤滑油排出路18が軸受パッド10の径方向Cの全域に連続して形成されている例を示した。しかし、本発明はこれに限定されず、例えば径方向Cに断続的に潤滑油排出路18を形成することもできるし、内周側ISを除いて潤滑油排出路18を設けることもできる。
また、潤滑油排出路18に回収した高温の潤滑油を潤滑油排出路18の外部に排出するのに、軸受ケース2に油排出開口7を設けた。しかし、本発明はこれに限定されず、軸受パッド10の支持突起19の肉厚方向に貫通する排出孔を設けることで、回収した高温の潤滑油を潤滑油排出路18の外部に排出することもでる。
さらに、以上説明した実施形態では、軸受パッド10に支持突起19を一体的に形成した。しかし、本発明は、支持突起19に相当する部材を軸受パッド10と別体として作製し、支持突起19と同様の位置にこれを配置することによっても、潤滑油排出路18を設けることができる。
これ以外にも、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0035】
1…スラスト軸受装置
2…軸受ケース、3…外輪、4…内輪、5…底板、6a,6b,6c…ピボット、7…油排出開口
10,210,310…軸受パッド
11…支持面、18…潤滑油排出路、21…給油孔(第2の給油通路)
22…ポケット、23…テーパ
30,30a,30b,130,230,330…給油片
31…油導入孔、32…給油孔(第1の給油通路)、34…給油孔(第2の給油通路)
332…給油孔
100…蒸気タービン、105…回転軸、107…スラストカラー、P…回転方向、P1…前方側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に設けられたスラストカラーに対向するとともに、前記スラストカラーの周方向に沿うように相互に間隔を設けて配置され、前記スラストカラーを回転可能に支持する複数の軸受パッドと、
隣接する前記軸受パッドの間に配置され、潤滑油を前記軸受パッドと前記スラストカラーの間に向けて供給する給油片と、
前記軸受パッドと、前記軸受パッドを基準にして前記スラストカラーの回転方向の前方側に配置される前記給油片と、の間に形成される潤滑油排出路と、
を備えることを特徴とするスラスト軸受装置。
【請求項2】
前記給油片は、
前記軸受パッドと前記スラストカラーの間に前記潤滑油を吐出する複数の給油孔を前記軸受装置の内周側から外周側に沿って備え、
吐出される前記潤滑油の量が、前記外周側よりも前記内周側の方が多く設定されている、
請求項1に記載のスラスト軸受装置。
【請求項3】
前記軸受装置は、
前記給油片を通過して、前記軸受パッドと前記スラストカラーの間に前記潤滑油を供給する第1の給油通路と、
前記給油片及び前記軸受パッドを通過して、前記軸受パッドと前記スラストカラーの間に前記潤滑油を供給する第2の給油通路と、
備える、
請求項1または2に記載のスラスト軸受装置。
【請求項4】
前記給油片は、前記軸受パッドの方向に向けて傾斜する給油通路を備え、
前記軸受パッドは、前記潤滑油が流入する側に向けて下降するテーパを設ける、
請求項1または2に記載のスラスト軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−117608(P2012−117608A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267860(P2010−267860)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(310010564)三菱重工コンプレッサ株式会社 (45)
【Fターム(参考)】