説明

スラッシュ成形、回転成形またはディップ成形用のプラスチゾル組成物

【課題】 金型を用いるスラッシュ成形、回転成形、ディップ成形において、成形品の特性を損なう事なく、比較的低温で成形が可能であり、成形品からのブリードの発生が少なく、粘度安定性が優れたプラスチゾル組成物を提供する。
【解決手段】 本組成物は、ペースト用アクリル樹脂、好ましくはコアシェル構造のアクリル樹脂、ペースト用ポリ塩化ビニル樹脂、ヘキサヒドロフタル酸ジエステル系の可塑剤、および安定剤その他の添加剤を含むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形用金型の加熱冷却を繰り返し行うことを含む成形方法である、スラッシュ成形、回転成形またはディップ成形用のプラスチゾル組成物と、同組成物を用いてスラッシュ成形、回転成形またはディップ成形を行って得られる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工業的に広く用いられているポリ塩化ビニル系プラスチゾルはペースト用ポリ塩化ビニル樹脂、可塑剤、安定剤、充填剤、その他を配合して製造されている。このようなポリ塩化ビニル系プラスチゾルはスラッシュ成形、回転成形、ディップ成形、コーティング成形、注型などの成形法に適しており、玩具、手袋、壁紙や床材などの住宅内装材、アンダーコーティングやシーラントなどの自動車関係部材などとして広範囲の用途に使用されている。
【0003】
特に玩具などの製造に多く採用されている成形法には、スラッシュ成形法、回転成形法およびディップ成形法がある。スラッシュ成形法では、スラッシュ成形用ポリ塩化ビニル系プラスチゾルを金型に注入し、金型を180〜220℃にて1〜60秒程度加熱し、金型壁面に沿ってゲル化したポリ塩化ビニル層を形成させ、余剰のゲル化していないポリ塩化ビニルゾルは金型から排出させ、このようにゲル化していないポリ塩化ビニルゾルが排出された金型は、その後180〜220℃にて1〜5分程度加熱してポリ塩化ビニル系プラスチゾルのゲル化を完成させ、水で冷却して、ポリ塩化ビニルの成形品が脱型されるのである。この際、金型から排出されたプラスチゾルは再びスラッシュ成形のためのポリ塩化ビニル系プラスチゾルとして使用されるが、金型から排出されるポリ塩化ビニルゾルの温度は通常40〜60℃に上昇しているため、金型から排出することができ、そして再使用に耐えるだけの粘度安定性が要求される。
【0004】
回転成形法は、回転成形用ポリ塩化ビニル系プラスチゾルを金型に定量注入し、フタを閉じ、180〜350℃にて3〜20分程度加熱し、水で冷却後に脱型される。
【0005】
ディップ成形法は、金型を150〜200℃程度まで余熱し、ディップ成形用のポリ塩化ビニル系プラスチゾル槽に金型を3〜60秒浸漬する。その後金型は250〜400℃の炉で10〜120秒程度加熱し、水で冷却後、成形品は金型から脱型される。この際、金型の浸漬により槽内のポリ塩化ビニル系プラスチゾルの温度は通常30〜50℃に上昇することになる。しかしながら、このディッピング操作を継続して行うためには、槽内のポリ塩化ビニル系プラスチゾルの過度の温度上昇を防止することと、槽内のプラスチゾルの粘度が安定したものであることが求められるのである。
【0006】
近年、ポリ塩化ビニル系プラスチゾルから作られる玩具の生産性を上げるために、成形温度を上げて成形時間を短縮しようとする顕著な傾向がある。しかしながらこの場合に、生産現場の雰囲気温度が高くなり、作業環境が悪化し、また頻繁な加熱冷却のサイクルによる金型の変形負担による金型の損耗や、エネルギー消費量が大きくなるということなどの欠点を伴う。さらにゲル化していないポリ塩化ビニルゾルを金型から排出させて再使用するスラッシュ成形法の場合や、加熱金型をポリ塩化ビニル系プラスチゾルの槽に浸漬するディップ成形法の場合には、再使用プラスチゾルやディップ槽内のプラスチゾルの温度が、通常の条件での使用の場合に比較して高くなり、そのためにプラスチゾルの粘度の増加が起こりやすくなって成形品の品質にばらつきができる。さらに、成形温度を上げて成形時間を短縮する場合に、金型に接する表面はキュアされているが、表面から遠い内部までは熱が伝わらず未キュアの状態であるので、成形品からブリード現象が発生したり、オーバーキュアによる焦げが発生したりして、安定した成形品を製造することが難しくなるという問題があった。
【0007】
逆に、比較的低温度で時間を長くしてプラスチゾルを成形した場合、生産現場の雰囲気温度はより低くなり、作業環境も向上し、金型の変形負担やエネルギー消費は少なくなるが、生産性は低下し、また成形品からのブリード現象が発生しやすくなる。
【0008】
かかる状況から、生産性を上げながら、作業環境の悪化を回避し、金型の負担を軽減し、エネルギー消費量を少なくする目的で、重合度が低いペースト用ポリ塩化ビニル樹脂、詳しくは平均重合度1000以下のペースト用樹脂とか、塩化ビニルと酢酸ビニルとを共重合させて製造したペースト用樹脂(コポリマー)を使用する方法が提案されている。この方法によれば比較的低温度での成形において成形品からのブリードの発生は抑制されるが、ペースト用樹脂の粘度安定性が著しく悪くなるという問題があった。
【0009】
近年、ペースト用ポリ塩化ビニル樹脂を代替するものとしてペースト用アクリル樹脂が入手可能となった。このペースト用アクリル樹脂を使用したアクリル系プラスチゾルは、主にコーティングや接着剤といった分野に使用されている。この樹脂の特徴は比較的低温での強度が優れていることの他に、塩素を含まないため、廃棄して焼却する際に塩化水素ガスの発生がなく、環境に優しい点にある。
【0010】
しかしながらこのペースト用アクリル樹脂を使用したアクリル系プラスチゾルは、40℃以上の温度での粘度安定性が著しく悪いという問題があり、またその成形品はペースト用ポリ塩化ビニル樹脂を使用した成形品と比較して強度が低く、こし(弾性)が無いといった問題がある。このペースト用アクリル樹脂を使用したアクリル系プラスチゾルは強度が低く弾性が無いため、スラッシュ成形、回転成形、ディップ成形などの金型による複雑な形状の成形品を成形する際に脱型することが難しく、玩具等の形状が複雑な成形品の成形には不向きである。
【0011】
そして、このペースト用アクリル樹脂を使用したアクリル系プラスチゾルの粘度安定性を改良する目的で、可塑剤に相溶性のあるコア部分と可塑剤に非相溶性のシェル部分とからなるコアシェル構造を有するアクリル樹脂が開発され(WO00/01748)、この樹脂からなるアクリル系プラスチゾルは粘度安定性において優れたものであり、また塩素を含まないペーストレジンとして注目されるものであるが、なおこのものから複雑な成形品を製造することは従来のアクリル系プラスチゾルと同様に困難で、このことから高弾性、高強度のアクリル系プラスチゾルの開発が望まれているところである。
【0012】
このように本発明の技術分野において、成形用の樹脂ペーストとして、塩化ビニル系プラスチゾルとアクリル系プラスチゾルの二つの系列のプラスチゾルが入手可能であるが、これらはいずれも単に「プラスチゾル」と呼ばれているので、本明細書においても両者を区別することなく「プラスチゾル」呼称することがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、スラッシュ成形、回転成形、ディップ成形のような金型の加熱冷却を循環して繰り返し行う成形方法において、成形品の特性を損なう事なく、比較的低温度での成形が可能であり、この比較的低温度での成形による成形品からのブリードが少なく、また粘度安定性に優れ、反復する加熱冷却による金型の変形負担が軽減され、かつエネルギー消費の少ないスラッシュ成形、回転成形またはディップ成形用のプラスチゾル組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記した目的を達成するために鋭意研究の結果、ペースト用アクリル樹脂とペースト用ポリ塩化ビニル樹脂とを組み合わせて用い、ヘキサヒドロフタル酸ジエステル系の可塑剤を用い、これに安定剤その他に添加剤を配合してなるプラスチゾル組成物は、金型を使用するスラッシュ成形、回転成形、ディップ成形において、比較的低温度において成形品の成形が可能で、低温度での成形でありながら成形品からのブリードが少なく、プラスチゾル組成物の温度に対する粘度が安定化されていて、スラッシュ成形において金型から排出される未ゲル化プラスチゾルの再使用を容易とし、あるいはディップ成形におけるプラスチゾル槽でのディッピンッグ操作の反復をプラスチゾルの粘度増加なしに行うことができるものであることを見いだして、本発明を完成したのである。
【0015】
上記した目的は、さらに好ましくはペースト用アクリル樹脂として、コアシェル構造のアクリル樹脂を用いることによって達成されること、すなわち、ペースト用アクリル樹脂としてのコアシェル構造のアクリル樹脂とペースト用ポリ塩化ビニル樹脂とを組み合わせて用い、ヘキサヒドロフタル酸ジエステル系の可塑剤を用い、これに安定剤その他に添加剤を含んでなるプラスチゾル組成物は、金型を使用するスラッシュ成形、回転成形、ディップ成形用のプラスチゾル組成物として極めて好ましいものであることを見いだしたのである。
【0016】
すなわち本発明は、ペースト用アクリル樹脂、ペースト用ポリ塩化ビニル樹脂、ヘキサヒドロフタル酸ジエステル系の可塑剤、および安定剤その他の添加剤を含むプラスチゾル組成物に関する。
【0017】
本発明はまた、ペースト用アクリル樹脂、ペースト用ポリ塩化ビニル樹脂、ヘキサヒドロフタル酸ジエステル系の可塑剤、および安定剤その他の添加剤を含むスラッシュ成形、回転成形、ディップ成形用のプラスチゾル組成物に関する。
【0018】
本発明はまた、ペースト用のコアシェル構造のアクリル樹脂、ペースト用ポリ塩化ビニル樹脂、ヘキサヒドロフタル酸ジエステル系の可塑剤、および安定剤その他の添加剤を含むプラスチゾル組成物に関する。
【0019】
本発明はまた、ペースト用のコアシェル構造のアクリル樹脂、ペースト用ポリ塩化ビニル樹脂、ヘキサヒドロフタル酸ジエステル系の可塑剤、および安定剤その他の添加剤を含む、スラッシュ成形、回転成形、ディップ成形用のプラスチゾル組成物に関する。
【0020】
本発明は更にまた、上記したプラスチゾル組成物から、スラッシュ成形、回転成形またはディップ成形のいずれかによって成形された成形品に関する。
【0021】
本発明のプラスチゾル組成物は、ペースト用アクリル樹脂30〜70phr(parts per hundred resin)とペースト用ポリ塩化ビニル樹脂70〜30phrとからなる樹脂混合物100に、ヘキサヒドロフタル酸ジエステル系の可塑剤25〜120phr、および安定剤その他の添加剤を含んでなるもの、殊に好ましくはペースト用アクリル樹脂40〜60phrとペースト用ポリ塩化ビニル樹脂60〜40phrとからなる樹脂混合物100に、ヘキサヒドロフタル酸ジエステル系の可塑剤25〜120phr、および安定剤その他の添加剤を含んでなるもので、比較的低温度において金型を使用するスラッシュ成形、回転成形、ディップ成形が可能になり、この比較的低温度での成形に拘わらず成形品からのブリードの発生が少なく、粘度安定性に優れ、反復する加熱冷却による金型の変形負担が軽減され、そして例えば玩具のような複雑で微細な形状の成形品の成形に極めて好適したものとなるのである。
【0022】
本発明では、ペースト用アクリル樹脂として、殊にコア部及びシェル部から構成されているコアシェル構造を有するアクリル樹脂を用いることが好ましい。
【0023】
コアシェル構造を有するアクリル樹脂を用いることが好ましい理由は、均一構造のアクリル樹脂では粘度安定性と可塑剤保持特性が両立しないためである。すなわちプラスチゾル中の均一構造のアクリル樹脂は可塑剤に対しての相溶性が高く可塑剤は容易に樹脂分子間に侵入して可塑化すなわちゲル化を引き起こし、粘度安定性が不良となる。粘度安定性を高めるためには可塑剤との相溶性を低くする必要があるが、均一構造のアクリル樹脂で可塑剤との相溶性を低くすると経時的に成形品からの可塑剤のブリードが起きてしまう。つまりペースト用アクリル樹脂の場合、粘度安定性と可塑剤保持性の関係は相反するものであって、均一構造のアクリル樹脂の場合、両者を同時に満足することは難しい。ところが、コアシェル構造を有するアクリル樹脂では両者を同時に満足させることができるのである。もっとも、上記した理由の当否によって本発明の特許性が左右されるものではない。
【0024】
本発明によれば、コアシェル構造を有するペースト用アクリル樹脂をペースト用ポリ塩化ビニル樹脂と一緒にして用いてプラスチゾルを製造した場合には、ペースト用ポリ塩化ビニル樹脂を単独で用いてプラスチゾルを製造した場合に比べて比較的低温度で成形が可能となり、またプラスチゾル組成物の温度に対する粘度が安定化され、スラッシュ成形において金型から排出される未ゲル化プラスチゾルの再使用を容易とし、あるいはディップ成形におけるプラスチゾル槽におけるはディッピンッグ操作の反復をプラスチゾルの粘度の増加なしで容易とし、しかも成形品からの可塑剤のブリードの発生を抑制することができたのである。このコアシェル構造を有するペースト用アクリル樹脂としては、市場で入手しうる製品を使用することができ、例えばダイヤナールLP−3106(三菱レイヨン(株)製)、 ダイヤナールRB−2374(三菱レイヨン(株)製)、DEGALAN(DEGUSSA社製)が挙げられる。
【0025】
コアシェル構造を有するペースト用アクリル樹脂は本発明のプラスチゾル組成物中において、上記したとおり30〜70phr、殊に好ましくは40〜60phrの割合で用いられる。このペースト用アクリル樹脂の割合が30phr未満の場合には、比較的低温度において金型を使用するスラッシュ成形、回転成形、ディップ成形において成形品からのブリードが発生するといった不都合があり、またこのペースト用アクリル樹脂の割合が70phrを越える場合には、成形品の強度および弾性が不足するため形状の複雑な、例えば玩具を作る際に脱型できず成形品が破断するなどの不具合が伴う。
【0026】
本発明のプラスチゾルに用いられるペースト用アクリル樹脂は、アクリル酸アルキルエステルおよびメタアクリル酸アルキルエステルから選ばれるモノマー(以下この技術分野の慣例によって両者を(メタ)アクリル酸アルキルエステルまたはアルキル(メタ)アクリレートと一括表示する)の単一重合体または共重合体でありうる。これらのモノマーとしては具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
上記したアルキル(メタ)アクリレートの単一重合体または共重合体の外に、アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能なモノマーとの共重合体もペースト用アクリル樹脂として使用可能であって、これらの共重合可能なモノマーとしては、カルボニル基含有(メタ)アクリレート類、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート類、エポキシ基含有(メタ)アクリレート類、アミノ基含有(メタ)アクリレート類、ウレタン変性(メタ)アクリレート類、エポキシ変性(メタ)アクリレート類、シリコーン変性(メタ)アクリレート類等を挙げることができ、これら共重合体は用途に応じて随時使用される。
【0028】
本発明のプラスチゾルに用いられるペースト用ポリ塩化ビニル樹脂は、塩化ビニルモノ
マーを単独重合させて得られる重合体であって、一般に市場でペースト用ポリ塩化ビニル樹脂として入手可能なもののいずれもが使用できる。そして粘度安定性を考慮すると重合度1000〜2000の範囲のものが好ましい。場合によっては2種類以上の重合度または製法を異にする樹脂をブレンドして使用することも可能である。重合度が1000以下の樹脂を使用する場合には重合度が平均して1000以上になるように高重合度の樹脂を配合することが好ましい。
【0029】
ペースト用ポリ塩化ビニル樹脂としては、市場で入手しうる製品を使用することができ、例えばZEST P21、ZEST P29E、ZEST PBZXA(いずれも新第一塩ビ(株)社製)、PSH−31、PSM−31、PBM−4(いずれも鐘淵化学(株)社製)が挙げられる。
【0030】
本発明のプラスチゾル組成物のもう一つの要件は、ヘキサヒドロフタル酸ジエステル系の可塑剤を用いるところにある。このヘキサヒドロフタル酸ジエステル系の可塑剤には、ヘキサヒドロフタル酸のジエステルおよびエポキシヘキサヒドロフタル酸のジエステルがある。殊にシクロヘキサン環にエポキシ基を有する化合物であるエポキシヘキサヒドロフタル酸のジエステルが好ましい。このヘキサヒドロフタル酸ジエステル系の可塑剤におけるエステル部分は炭素数6〜11の範囲のアルキル基を有する1価アルコールから誘導されるものとし、このヘキサヒドロフタル酸ジエステルはペースト用ポリ塩化ビニル樹脂との相溶性に優れるものである。この優れた相溶性からプラスチゾルのゲル化が容易になされ、したがって成形物からのブリーディングが抑えられることになる。
【0031】
このヘキサヒドロフタル酸ジエステルのエステル部分を誘導する1価アルコールとしては、炭素数6〜11のアルコール、例えばヘキサノール、イソヘキサノール、ヘプタノール、イソヘプタノール、オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、ノナノール、イソノナノール、2−メチルオクタノール、デカノール、イソデカノール、ウンデカノールなどが挙げられる。
【0032】
すなわち、本発明で用いられるヘキサヒドロフタル酸ジエステル系の可塑剤としては、ヘキサヒドロフタル酸ジヘキシル、ヘキサヒドロフタル酸ジイソヘキシル、ヘキサヒドロフタル酸ジヘプチル、ヘキサヒドロフタル酸ジイソヘプチル、ヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、ヘキサヒドロフタル酸ジイソオクチル、ヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、ヘキサヒドロフタル酸ジノニル、ヘキサヒドロフタル酸ジイソノニル、ヘキサヒドロフタル酸ジ−2−メチルオクチル、ヘキサヒドロフタル酸ジデシル、ヘキサヒドロフタル酸ジイソデシル、ヘキサヒドロフタル酸ジウンデシル、ヘキサヒドロフタル酸ジイソウンデシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジヘキシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソヘキシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジヘプチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソヘプチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジノニル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソノニル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−メチルオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジデシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソデシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジウンデシルまたはエポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソウンデシルが挙げられる。これらのヘキサヒドロフタル酸ジエステルは単独で、または2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
これらのヘキサヒドロフタル酸ジエステル系の可塑剤の中で、殊に好ましいものとして
1)エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル
2)エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−n−オクチル、および
3)ヘキサヒドロフタル酸ジイソノニル
が挙げられる。
【0034】
このヘキサヒドロフタル酸ジエステルは本発明のプラスチゾル組成物中に可塑剤としてこのもののみで、すなわち可塑剤としてヘキサヒドロフタル酸ジエステルを単独で用いて有効であるが、このヘキサヒドロフタル酸ジエステル以外の公知の可塑剤を併用することも可能である。この場合、全可塑剤中のヘキサヒドロフタル酸ジエステルの含有量は50〜100重量%の範囲であることが好ましく、70〜100重量%の範囲であることが特に好ましく、100重量%が最も好ましい。
【0035】
この併用されるヘキサヒドロフタル酸ジエステル以外の公知の可塑剤としては、例えばフタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシルなどのフタル酸誘導体、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリーn−オクチルなどのトリメリット酸誘導体、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソノニルなどのアジピン酸誘導体、リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリキシレニルなどのリン酸誘導体、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエートなどの安息香酸誘導体、その他アセチルクエン酸トリブチルやポリエステル系可塑剤、アクリル酸エステル系モノマーなどが挙げられる。これらは単独でまたは2種類以上で組み合わせて使用することができる。このヘキサヒドロフタル酸ジエステル以外の可塑剤を使用する場合には、特にペースト用アクリル樹脂との相溶性を考慮して可塑剤の種類を選択しなければならない。
【0036】
可塑剤は25〜120phrの範囲で使用することが好ましく、35〜80phrの範囲で使用することが特に好ましい。25phr未満では成形可能なプラスチゾルを得ることができず、また120phrを越えるとブリードが発生しやすくなるため、25〜120phrの範囲での使用が好まれるのである。
【0037】
本発明のプラスチゾル組成物中には、変色や劣化防止のために安定剤が使用されるが、このような安定剤には、有機酸金属化合物(ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウムなど)、有機酸金属複合系(カルシウム−亜鉛、マグネシウム−亜鉛、バリウム−亜鉛、カルシウム−マグネシウムー亜鉛など)、有機ホスファイト(アリールホスファイト、トリアルキルホスファイト、アルキルアリールホスファイトなど)が挙げられる。これらは2種類以上の組み合わせによって使用することもでき、溶媒、光安定剤、粘度調整剤、滑剤などの混合により複合安定剤として使用することもできる。
【0038】
本発明のプラスチゾル組成物中に、従来公知の他の添加剤、充填剤、着色剤、酸化防止剤、希釈剤、紫外線吸収剤などの添加剤を必要によって任意に添加することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明のプラスチゾル組成物は金型の加熱冷却を繰り返し行うスラッシュ成形、回転成形、ディップ成形において成形品の特性を損なう事なく、比較的低温で成形が可能であり、成形品からのブリードの発生を少なくすることが出来る。またスラッシュ成形、ディップ成形において、金型から排出して再使用されるプラスチゾル組成物、または繰り返し金型が浸漬されるプラスチゾル組成物槽におけるプラスチゾル組成物の粘度安定性が優れているため粘度上昇が少なく、比較的低温での成形が可能であるため金型の変形負担が少なく、エネルギー消費も少ない有利なプラスチゾルが提供される。
【0040】
つぎに本発明を実施例および比較例によってより具体的に説明するが、これらの実施例によって本発明が限定されるものと解してはならない。
【実施例】
【0041】
実施例1
ペースト用のコアシェル構造のアクリル樹脂A(ダイヤナールLP−3106)25phr、ペースト用のコアシェル構造のアクリル樹脂B(ダイヤナールRB−2374)45phr、ペースト用ポリ塩化ビニル樹脂A(ZEST P29E)30phr、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル(W−150)40phrをライカイ機に投入し、常温常圧で混練を開始し、約5分で均一に分散された分散体が得られた。混練を継続しながらエポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル10phrを少量ずつ投入し、続いて安定剤2.0phr、希釈剤2phrを投入し、約5分間混練して、液状の均一分散体を得た。ライカイ機での混練を終了させ、分散体を容器に移し換え、真空脱泡装置で20分間減圧撹拌脱泡を行い、混練時の混入気泡および水分を除去した。
【0042】
a)得られた分散体をスラッシュ成形金型に注入し、金型を170℃のオイルバスにて5秒間加熱し、金型壁面に沿ってゲル化した樹脂層を形成させ、余剰のゲル化していない分散体は金型から排出させ、金型はその後170℃にて3分程度加熱して分散体のゲル化を完成させ、水で冷却して成形品を脱型したが、脱型は容易に行うことが出来、所望の形状の成形品が得られた。金型から排出させた余剰の分散体は再びスラッシュ成形用に用いられた。
【0043】
b)得られた分散体を回転成形用金型に注入し、金型を閉じ、回転させながら金型を170℃で7分間加熱した。金型を水で冷却し、金型を開いて成形品を取り出した。
【0044】
c)ディップ成形金型を140℃に余熱し、得られた分散体を満たした分散体槽に金型を10秒浸漬した。その後金型は170℃の炉で40秒間加熱し、水で冷却後成形品は金型から脱型した。
【0045】
上記のようにして得られた分散体の初期粘度、粘度安定性、およびこの分散体から試験シートを作成し、その物性およびブリードの有無を試験した。またa)スラッシュ成形、b)回転成形、c)ディップ成形で得られた成形品のブリードの有無、脱型性のそれぞれについて試験した。
【0046】
実施例2
ペースト用のコアシェル構造のアクリル樹脂A(ダイヤナールLP−3106)10phr、ペースト用のコアシェル構造のアクリル樹脂B(ダイヤナールRB−2374)45phr、ペースト用ポリ塩化ビニル樹脂A(ZEST P29E)45phr、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル(W−150)40phrをライカイ機に投入し、常温常圧で混練を開始し、約5分で均一に分散された分散体が得られた。混練を継続しながらエポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル10phrを少量ずつ投入し、続いて安定剤2.0phrを投入し、約5分間混練して、液状の均一分散体を得た。ライカイ機での混練を終了させ、分散体を容器に移し換え、真空脱泡装置で20分間減圧撹拌脱泡を行い、混練時の混入気泡および水分を除去した。
【0047】
得られた分散体を用いて実施例1と同様にa)スラッシュ成形、b)回転成形、c)ディップ成形を行った。
【0048】
上記のようにして得られた分散体の初期粘度、粘度安定性、およびこの分散体から試験シートを作成し、その物性およびブリードの有無を試験した。またa)スラッシュ成形、b)回転成形、c)ディップ成形で得られた成形品のブリードの有無、脱型性のそれぞれについて試験した。
【0049】
実施例3
ペースト用のコアシェル構造のアクリル樹脂B(ダイヤナールRB−2374)30phr、ペースト用ポリ塩化ビニル樹脂A(ZEST P29E)70phr、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル(W−150)40phrをライカイ機に投入し、常温常圧で混練を開始し、約5分で均一に分散された分散体が得られた。混練を継続しながらエポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル10phrを少量ずつ投入し、続いて安定剤2.0phrを投入し、約5分間混練して、液状の均一分散体を得た。ライカイ機での混練を終了させ、分散体を容器に移し換え、真空脱泡装置で20分間減圧撹拌脱泡を行い、混練時の混入気泡および水分を除去した。
【0050】
得られた分散体を用いて実施例1と同様にa)スラッシュ成形、b)回転成形、c)ディップ成形を行った。
【0051】
上記のようにして得られた分散体の初期粘度、粘度安定性、およびこの分散体から試験シートを作成し、その物性およびブリードの有無を試験した。またa)スラッシュ成形、b)回転成形、c)ディップ成形で得られた成形品のブリードの有無、脱型性のそれぞれについて試験した。
【0052】
比較例1
ペースト用のコアシェル構造のアクリル樹脂A(ダイヤナールLP−3106)40phr、ペースト用のコアシェル構造のアクリル樹脂B(ダイヤナールRB−2374)40phr、ペースト用ポリ塩化ビニル樹脂A(ZEST P29E)20phr、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル(W−150)40phrをライカイ機に投入し、常温常圧で混練を開始し、約5分で均一に分散された分散体が得られた。混練を継続しながらエポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル10phrを少量ずつ投入し、続いて安定剤2.0phr、希釈剤2phrを投入し、約5分間混練して、液状の均一分散体を得た。ライカイ機での混練を終了させ、分散体を容器に移し換え、真空脱泡装置で20分間減圧撹拌脱泡を行い、混練時の混入気泡および水分を除去した。
【0053】
得られた分散体を用いて実施例1と同様にa)スラッシュ成形、b)回転成形、c)ディップ成形を行った。
【0054】
上記のようにして得られた分散体の初期粘度、粘度安定性、およびこの分散体から試験シートを作成し、その物性およびブリードの有無を試験した。またa)スラッシュ成形、b)回転成形、c)ディップ成形で得られた成形品のブリードの有無、脱型性のそれぞれについて試験した。
【0055】
比較例2
ペースト用のコアシェル構造のアクリル樹脂B(ダイヤナールRB−2374)20phr、ペースト用ポリ塩化ビニル樹脂A(ZEST P29E)60phr、ペースト用ポリ塩化ビニル樹脂B(ZEST PBZXA)20phr、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル(W−150)40phrをライカイ機に投入し、常温常圧で混練を開始し、約5分で均一に分散された分散体が得られた。混練を継続しながらエポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル10phrを少量ずつ投入し、続いて安定剤2.0phrを投入し、約5分間混練して、液状の均一分散体を得た。ライカイ機での混練を終了させ、分散体を容器に移し換え、真空脱泡装置で20分間減圧撹拌脱泡を行い、混練時の混入気泡および水分を除去した。得られた分散体を用いて実施例1と同様にa)スラッシュ成形、b)回転成形、c)ディップ成形を行った。
【0056】
上記のようにして得られた分散体の初期粘度、粘度安定性、およびこの分散体から試験シートを作成し、その物性およびブリードの有無を試験した。またa)スラッシュ成形、b)回転成形、c)ディップ成形で得られた成形品のブリードの有無、脱型性のそれぞれについて試験した。
【0057】
比較例3
ペースト用のコアシェル構造のアクリル樹脂A(ダイヤナールLP−3106)55phr、ペースト用ポリ塩化ビニル樹脂A(ZEST P29E)45phr、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル(W−150)50phrをライカイ機に投入し、常温常圧で混練を開始し、約5分で均一に分散された分散体が得られた。混練を継続しながらエポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル80phrを少量ずつ投入し、続いて安定剤2.0phrを投入し、約5分間混練して、液状の均一分散体を得た。ライカイ機での混練を終了させ、分散体を容器に移し換え、真空脱泡装置で20分間減圧撹拌脱泡を行い、混練時の混入気泡および水分を除去した。得られた分散体を用いて実施例1と同様にa)スラッシュ成形、b)回転成形、c)ディップ成形を行った。
【0058】
上記のようにして得られた分散体の初期粘度、粘度安定性、およびこの分散体から試験シートを作成し、その物性およびブリードの有無を試験した。またa)スラッシュ成形、b)回転成形、c)ディップ成形で得られた成形品のブリードの有無、脱型性のそれぞれについて試験した。
【0059】
比較例4
ペースト用のコアシェル構造のアクリル樹脂A(ダイヤナールLP−3106)10phr、ペースト用のコアシェル構造のアクリル樹脂B(ダイヤナールRB−2374)45phr、ペースト用ポリ塩化ビニル樹脂A(ZEST P29E)45phr、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル(W−150)20phrをライカイ機に投入し、常温常圧で混練を開始し、約5分で均一に分散された分散体が得られた。混練を継続しながら安定剤2.0phr、希釈剤3phrを投入し、約5分間混練して分散体を得たが、プラスチゾルとはならなかった。分散体を容器に移し換え、真空脱泡装置で20分間減圧撹拌脱泡を行い、混練時の混入気泡および水分を除去した。
【0060】
得られた分散体を用いて実施例1と同様にa)スラッシュ成形、b)回転成形、c)ディップ成形を行った。
【0061】
上記のようにして得られた分散体の初期粘度、粘度安定性、およびこの分散体から試験シートを作成し、その物性およびブリードの有無を試験した。またa)スラッシュ成形、b)回転成形、c)ディップ成形で得られた成形品のブリードの有無、脱型性のそれぞれについて試験した。
【0062】
比較例5
ペースト用塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂C(P35J)100phr、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル(W−150)40phrをライカイ機に投入し、常温常圧で混練を開始し、約5分で均一に分散された分散体が得られた。混練を継続しながらエポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル10phrを少量ずつ投入し、続いて安定剤2.0phr、希釈剤3phrを投入し、約5分間混練して、液状の均一分散体を得た。ライカイ機での混練を終了させ、分散体を容器に移し換え、真空脱泡装置で20分間減圧撹拌脱泡を行い、混練時の混入気泡および水分を除去した。
【0063】
得られた分散体を用いて実施例1と同様にa)スラッシュ成形、b)回転成形、c)ディップ成形を行った。
【0064】
上記のようにして得られた分散体の初期粘度、粘度安定性、およびこの分散体から試験
シートを作成し、その物性およびブリードの有無を試験した。またa)スラッシュ成形、b)回転成形、c)ディップ成形で得られた成形品のブリードの有無、脱型性のそれぞれについて試験した。
【0065】
上記した実施例1〜3、比較例1〜5で用いた組成物の配合例を表1に、また実施例1〜3、比較例1〜5で得られた分散体の初期粘度、粘度安定性、およびこの分散体から作成した試験シートの物性およびブリードの有無の試験結果、およびこの組成物からa)スラッシュ成形、b)回転成形、c)ディップ成形で得られた成形品のブリードの有無、脱型性のそれぞれの試験結果、ならびに総合評価について表2にまとめた。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
表2中の物性測定は以下の方法による。
1)粘度測定法
トキメック製、BM型粘度計(3号ロータ)を使用し、温度23℃における粘度を測定した。
2)粘度安定性
プラスチゾルを密閉容器に入れ、温度40℃の下で7日間保持した後、温度23℃に冷却し、上記粘度計を用いて粘度を測定し、初期粘度からの粘度変化率で評価した。
○:変化率 2.0未満
×:変化率 2.0以上
3)物性試験
JIS K6251引裂強さ・伸び率、JIS K6252引裂強さに準拠し測定した。記載温度は、試験シート作成時の加熱温度を示す。
4)ブリード試験
温度60℃の雰囲気に60時間保持した後、表面のブリード状態を確認する。
○:ブリードなし
×:ブリードあり
5)スラッシュ成形試験
スラッシュ成形において、比較的低温の条件にて複雑な形状の型からの脱型、及びブリードについて確認する。ブリードについては、温度60℃の雰囲気に60時間保持した後に確認する。
成形温度:170℃(比較的低温)
○:脱型可能、ブリードなし
×:脱型不可、ブリードあり
6)回転成形試験
回転成形において、比較的低温の条件にて複雑な形状の型からの脱型、及びブリードについて確認する。ブリードについては、温度60℃の雰囲気に60時間保持した後に確認する。
成形温度:170℃(比較的低温)
○:脱型可能、ブリードなし
×:脱型不可、ブリードあり
7)ディップ成形試験
ディップ成形において、比較的低温の条件にて成形し、ブリードについて確認する。ブリードについては、温度60℃の雰囲気に60時間保持した後に確認する。
成形温度:170℃(比較的低温)
○:ブリードなし
×:ブリードあり
【0069】
これらの表にまとめられた試験の結果から、本発明のプラスチゾル組成物は、比較的低温度において成形可能であり、良好であり、温度の変化に対する粘度安定性が良好で、スラッシュ成形のように金型から排出されたプラスチゾル組成物を再使用する場合や、ディップ成形のように繰り返し金型が浸漬されるプラスチゾル組成物槽におけるプラスチゾル組成物の場合にプラスチゾル組成物に粘度上昇が少なく、また低温度で成形し成形品からのブリードがなく、成形品の引張強さ、伸び率、引裂強さも良好であり、かつ脱型性も良好であるという、極めてスラッシュ成形、回転成形、ディップ成形に好適した性質を有することが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペースト用アクリル樹脂、ペースト用ポリ塩化ビニル樹脂、ヘキサヒドロフタル酸ジエステル系の可塑剤、および安定剤その他の添加剤を含むプラスチゾル組成物。
【請求項2】
ペースト用アクリル樹脂、ペースト用ポリ塩化ビニル樹脂、ヘキサヒドロフタル酸ジエステル系の可塑剤、および安定剤その他の添加剤を含むスラッシュ成形、回転成形、ディップ成形用のプラスチゾル組成物。
【請求項3】
ペースト用コアシェル構造のアクリル樹脂、ペースト用ポリ塩化ビニル樹脂、ヘキサヒドロフタル酸ジエステル系の可塑剤、および安定剤その他の添加剤を含むプラスチゾル組成物。
【請求項4】
ペースト用コアシェル構造のアクリル樹脂、ペースト用ポリ塩化ビニル樹脂、ヘキサヒドロフタル酸ジエステル系の可塑剤、および安定剤その他の添加剤を含む、スラッシュ成形、回転成形、ディップ成形用のプラスチゾル組成物。
【請求項5】
ペースト用アクリル樹脂とペースト用ポリ塩化ビニル樹脂の比率が30〜70phrから70〜30phrの範囲にある、請求項1または請求項2に記載のプラスチゾル組成物。
【請求項6】
ペースト用コアシェル構造のアクリル樹脂とペースト用ポリ塩化ビニル樹脂の比率が30〜70phrから70〜30phrの範囲にある、請求項3または請求項4に記載のプラスチゾル組成物。
【請求項7】
ヘキサヒドロフタル酸ジエステル系の可塑剤が、ヘキサヒドロフタル酸またはエポキシヘキサヒドロフタル酸と炭素数6〜11のアルコールとのエステルである請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のプラスチゾル組成物。
【請求項8】
ヘキサヒドロフタル酸ジエステル系の可塑剤が25〜120phrの量で配合されている請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のプラスチゾル組成物。
【請求項9】
ヘキサヒドロフタル酸ジエステル系の可塑剤がヘキサヒドロフタル酸ジヘキシル、ヘキサヒドロフタル酸ジイソヘキシル、ヘキサヒドロフタル酸ジヘプチル、ヘキサヒドロフタル酸ジイソヘプチル、ヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、ヘキサヒドロフタル酸ジイソオクチル、ヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、ヘキサヒドロフタル酸ジノニル、ヘキサヒドロフタル酸ジイソノニル、ヘキサヒドロフタル酸ジ−2−メチルオクチル、ヘキサヒドロフタル酸ジデシル、ヘキサヒドロフタル酸ジイソデシル、ヘキサヒドロフタル酸ジウンデシル、ヘキサヒドロフタル酸ジイソウンデシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジヘキシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソヘキシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジヘプチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソヘプチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジノニル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソノニル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−メチルオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジデシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソデシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジウンデシルまたはエポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソウンデシルである、請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載のプラスチゾル組成物。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9に記載のプラスチゾル組成物から、スラッシュ成形、回転成形
またはディップ成形のいずれかによって成形された成形品。




【公開番号】特開2006−63102(P2006−63102A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−243894(P2004−243894)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(591161623)株式会社コバヤシ (30)
【Fターム(参考)】