説明

スラッシュ成形用樹脂粉末組成物

【課題】本発明が解決しようとする課題は、太陽光による蓄熱性が少なく、さらに熱による色への影響が少ない表皮を提供する樹脂粉末組成物を得ることである。
【解決手段】熱可塑性樹脂粉末(A)、及び赤外線透過性着色剤(B)を含有することを特徴とするスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)。赤外線透過性着色剤(B)が、アゾメチン系着色剤を含有することが好ましく、スラッシュ成形用性樹脂粉末組成物(S)の重量に基づいて、赤外線透過性着色剤(B)の含有量が0.5〜5重量%であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の着色剤を使用する着色熱可塑性樹脂粉末組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インスツルメントパネル、ドアトリム等の自動車内装部品の成形用素材には従来から黒色顔料としてカーボンブラック等が使用されている。しかし、カーボンブラック等の顔料を使用した熱可塑性樹脂粉末組成物(A)の成形品は太陽光によって高温となってしまう。その対策として赤外線を反射又は透過する顔料が報告されている(特許文献2)。また、これらの顔料によって着色することで、太陽光による蓄熱を抑制することのできる熱可塑性樹脂製品も多数知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−330466
【特許文献2】特開2008−127573
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、樹脂粉末組成物をスラッシュ成形してなるインスツルメントパネル、ドアトリム等の自動車内装部品の表皮で、太陽光による高温対策を施した成形品は知られていない。本発明が解決しようとする課題は、太陽光による蓄熱性が少なく、さらに熱による色への影響が少ない表皮を提供する樹脂粉末組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち本発明は、熱可塑性樹脂粉末(A)及び赤外線透過性着色剤(B)を含有することを特徴とするスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S);該スラッシュ成形用樹脂粉末組成物を成形してなる成形品;該スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)を成形してなる成形品は、従来から使用されているカーボンブラック顔料等を使用した樹脂粉末成形品と比較して太陽光による蓄熱が少なく、かつ熱による色への影響が少ない。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明において、熱可塑性樹脂粉末(A)とは、スラッシュ成形用に使用可能な樹脂粉末であれば特に制限はない。好ましい例としては、(以下、熱可塑性を省略して記載する。)ポリウレタン樹脂粉末、塩化ビニル樹脂粉末、ポリオレフィン樹脂粉末、ビニル芳香族樹脂粉末、アクリレート樹脂粉末、共役ジエン樹脂粉末、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられ、特に好ましいものはポリウレタン樹脂粉末である。
【0008】
ポリウレタン樹脂粉末におけるポリウレタン樹脂は、高分子ポリオール、ポリイソシアネート、必要に応じて低分子ジオール、低分子ジアミン等からなる樹脂である。
【0009】
ポリウレタン樹脂粉末としては、例えば以下の製造方法で得られるものが挙げられる。
(1)ウレタン結合およびウレア結合を有し、水および分散安定剤存在下で、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーとブロックされた鎖伸長剤(例えばケチミン化合物)とを反応させる方法で製造されるもの。具体的には、例えば、特開平8−120041号公
報等に記載されたものを使用することができる。
(2)ウレタンプレポリマーを、該ウレタンプレポリマーが溶解しない有機溶剤および分散安定剤存在下で、鎖伸長剤(例えばジアミンおよび/またはジオール)と反応させる方法で製造されるもの。具体的には、例えば、特開平4−202331号公報等に記載されたものを使用することができる。
(3)ジイソシアネートと高分子ジオールと必要に応じて鎖伸長剤(低分子ジオール、低分子ジアミン)とを反応させることで熱可塑性ポリウレタン樹脂の塊状物を得る。ついで粉末化(例えば冷凍粉砕、溶融状態下に細孔を通し切断する方法)する方法で製造されるもの。
【0010】
塩化ビニル樹脂粉末は、例えば、懸濁重合法又は塊状重合法によって製造した塩化ビニル単独重合体、塩化ビニルモノマーとエチレン酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニルモノマーを主成分とする共重合体の樹脂粉末が挙げられる。
【0011】
ポリオレフィン樹脂粉末は、一般的にオレフィン系熱可塑性エラストマーに属する物であればいかなるものも使用でき、さらに、例えば、エチレン−プロピレン−ジエン−ゴム(EPM、EPDM)とプロピレン系重合体等のポリオレフィン等とを複合したオレフィン系熱可塑性エラストマーを挙げることができる。また、α−オレフィン共重合体よりなるオレフィン熱可塑性エラストマー、α−オレフィン共重合体とプロピレン系樹脂から成るオレフィン熱可塑性エラストマーの微粉末も使用することができる。
【0012】
ビニル芳香族樹脂粉末には、芳香族ビニル化合物単独重合体、芳香族ビニル化合物とビニル系モノマーの共重合体の樹脂粉末等が含まれる。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、ブロモスチレン、ビニルスチレン、ビニルキシレン、フルオロスチレン、エチルスチレンなどが挙げられ、特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0013】
アクリレート樹脂粉末は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル単独重合体、(メタ)アクリル酸エステルとビニル系モノマーの共重合体の樹脂粉末等が挙げられる。
【0014】
共役ジエン樹脂粉末は、共役ジエン系共重合体中の共役ジエン系部分を水素添加または一部水素添加して得られる共重合体であり、例えば、芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ランダム共重合体の水素添加物、芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物、共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物の樹脂粉末が含まれる。
【0015】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)を製造する工程において、赤外線透過性着色剤(B)で着色する工程以外は以下の通りである。
1.熱可塑性樹脂粉末(A)が、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(A1)である場合
(1)プレポリマーを製造するための反応工程(プレポリマー製造)
(2)分散剤を含有した溶媒中、重合反応を伴ったプレポリマーの分散工程(重合および分散)
(3)合成したポリマー粉体と可塑剤、離型剤、粉体流動性向上剤の含浸工程(含浸及び混合)
2.熱可塑性樹脂粉末(A)が、ポリウレタン樹脂粉末(A1)以外である場合
(1)プレポリマーを製造するための反応工程(プレポリマー製造)
(2)分散剤を含有した溶媒中、重合反応を伴ったプレポリマーの分散工程(重合および分散)
赤外線透過性着色剤(B)での着色は、上記1.2.いずれの場合でも上記工程(1)プレポリマーを製造する工程において着色する、又は製造されたプレポリマーに着色することが好ましく、製造されたプレポリマーに赤外線透過性着色剤(B)を添加し、混合することにより行うことが特に好ましい。
【0016】
赤外線透過性着色剤(B)により着色を受ける被着色物質は、固状でも液状でもよいが、液状のほうが好ましい。着色スラッシュ成形用材料の原料液又は重合物の液の25℃における粘度は、顔料成分の分散性、沈降性の観点から、好ましくは100〜60,000mPa・s、さらに好ましくは1,000〜40,000mPa・s、より好ましくは2,000〜5,000mPa・sである。粘度はB型粘度計で測定する。
【0017】
赤外線透過性着色剤(B)は、被着色物質にそのまま添加してもよいし、マスターカラーの形で添加してもよい。マスターカラーは赤外線透過性着色剤(B)と1種又は数種の着色剤で製造することが好ましい。
【0018】
本発明における赤外線透過性着色剤(B)とは、有機系では、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、アンスラキノン系、ペリノン・ペリレン系、イソインドリン系、ジケトピロロピロール系、キノフタロン系、アゾメチン系の着色剤が挙げられる。
無機系では、水酸化鉄系、酸化チタン系などの着色剤が挙げられる。
特に好ましい赤外線透過性着色剤(B)としてはアゾ系、アゾメチン系、ペリノン・ペリレン系、銅フタロシアニン系、アンスラキノン系着色剤が挙げられる。
【0019】
高い赤外線非吸収性能を示す黒色顔料として特に好ましい顔料は、特許第1726153号明細書、特開2002−179943公報、特開2002−256165公報、米国特許第6,623,556(B2)号明細書に記載されたアゾメチン系色顔料である。
具体例としては(3−(アミノ−アリールイミノ)−1−オキソ−4,5,6,7−テトラクロルイソインドリン)をジアゾ化し、(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボキシフェニルアミド)とのジアゾカップリングによって得られた(2−ヒドロキシ−N−(2‘−メチル−4’−メトキシフェニル)−1−{[4−[(4,5,6,7−テトラクロロ−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−3−イリデン)アミノ]フェニル]アゾ}−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボキシアミド)などが挙げられる。
赤外線透過性顔料(B)はスラッシュ成形用ポリウレタン樹脂粉末組成物(S)の重量に基づいて0.5〜5重量%、より好ましくは2〜3重量%含有する。
【0020】
スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)は、熱可塑性樹脂粉末(A)、及び赤外線透過性着色剤(B)以外に添加剤を含有していてもよい。添加剤としては可塑剤、離型剤、粉体流動性向上剤、酸化防止剤、光安定剤、赤外線透過性でない一般の着色剤等を挙げることができる。(A)及び(B)の合計重量に対して添加剤の含有量は、好ましくは0〜40重量%、さらに好ましくは20〜30%である。
【0021】
可塑剤としては、フタル酸エステル類[フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチルベンジル、フタル酸ジイソデシル等];脂肪族2塩基酸エステル類[アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸−2−エチルヘキシル等];トリメリット酸エステル類[トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリオクチル等];脂肪酸エステル[オレイン酸ブチル等];安息香酸エステル類[ジエチレングリコールジ安息香酸エステル、ポリエチレングリコールジ安息香酸エステル、ジプロピレングリコールジ安息香酸エステル等];脂肪族リン酸エステル類[トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルフォスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、トリブトキシホスフェート等];芳香族リン酸エステル類[トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、トリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート等];ハロゲン脂肪族リン酸エステル類[トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(βークロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等];およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0022】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)の体積平均粒径は70〜125μmであり、好ましくは75〜110μmである。
【0023】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)からなる樹脂成形品はスラッシュ成形法で成形することができる。例えば、本発明の粉末組成物が入ったボックスと加熱した金型を共に振動回転させ、パウダーを型内で溶融流動させた後、冷却後、固化させ、表皮を製造する方法で好適に実施することができる。
上記金型温度は好ましくは200〜300℃、さらに好ましくは210〜280℃である。
【0024】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)で成形された表皮厚さは、0.5〜1.5mmが好ましい。成形表皮は、表面を発泡型に接するようにセットし、ウレタンフォームを流し、裏面に5mm〜15mmの発泡層を形成させて、樹脂成形品とすることができる。
【0025】
本発明の樹脂成形品は、自動車内装材、例えばインストルメントパネル、ドアトリム等に好適に使用される。
【0026】
実施例
以下、製造例、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において、「部」は重量部、「%」は重量%を示す。
【0027】
製造例1
ウレタンプレポリマー(UP−1)の製造
内容積3Lのリボン型撹拌翼付き反応容器にブチレンアジペートジオール(重量平均分子量1000、水酸基価112)36部、ヘキシレンイソフタレートジオール(重量平均分子量900、水酸基価125)24部、ヘキサメチレンジイソシアネート15部、メチルエチルケトン16部、フィラー9部、酸化防止剤1部、光安定剤1部を仕込み、90℃で5時間反応させ、ウレタンプレポリマー(UP−1)100部を得た。
(UP−1)の粘度3500mPa・s 重量平均分子量9,000であった。
【0028】
製造例2
ブラック系マスターカラー(PP−1)(赤外線透過性でない着色剤)の製造
重量比99.8:0.2のブラック着色剤(P−1)、ブルー着色剤(P−2)をプロペラ式撹拌機で混合して、ブラック系マスターカラー(PP−1)を得た。
ブラック着色剤(P−1)はEB−300[三洋化成工業 (株) 製、ポリエチレングリコールジ安息香酸エステル]84.5部、カーボンブラック15.0部、キレート分散剤0.5部を混練したペーストカラーである。
ブルー着色剤(P−2)は、EB−300 74.5部、シアニンブルー25.0部、キレート分散剤0.5部を混練したペーストカラーである。
【0029】
製造例3
赤外線透過性着色剤(B−1)の製造
赤外線透過性着色剤(B−1)は、EB−300 60部、黒色を呈するアゾメチン系の着色剤 40部を混練したペーストカラーである[FTR SNY131 ブラック、大日精化工業(株)製]。
【0030】
製造例4
赤外線透過性着色剤(B−2)の製造
赤外線透過性着色剤(B−2)は、EB−300 60部、黒色を呈するペリレン系の着色剤[BASF社製、「PALIOGEN BLACK S 0084」]40部を混連したペーストカラーである。
【0031】
製造例5
赤外線透過性着色剤(B−3)の製造
赤外線透過性着色剤(B−3)は、EB−300 60部、黒色を呈する銅フタロシアニン系の着色剤40部を混練したペーストカラーである[FTR SNY132 ブラック、大日精化工業(株)製]。
【0032】
製造例6
赤外線透過性着色剤(B−4)の製造
赤外線透過性着色剤(B−4)は、EB−300 60部、黒色を呈するアンスラキノン系着色剤[日本化薬社製、[KAYASET BLACK A−N]]を混練したペーストカラーである。
【0033】
実施例1
内容積3Lのリボン型撹拌翼付き反応容器中でウレタンプレポリマー(UP−1)100部に、ブラック系マスターカラー(PP−1)1.5部と赤外透過性着色剤(B−1)1.5部を一定撹拌速度(30rpm)で撹拌しながら添加し混合した。(温度;60〜63℃、時間;3時間)。得られた着色したウレタンプレポリマー(UP−1’)100部とヘキサメチレンジアミンとメチルエチルケトンのジケチミン化物10部を撹拌棒で1分間混合し、そこに分散剤水溶液(DS−1)300部を加えて、ミキサー(型番;ULTRA−TURRAX T50、IKA−Labotechnik製)で混合撹拌し(回転数5,000rpm、30秒間)乳化分散した。(DS−1)はサンスパールPS−8[三洋化成工業 (株) 製(無水マレイン酸とジイソブチレンの共重合体のナトリウム塩)]の2%水溶液である。その後得られた分散スラリーを遠心脱水後、乾燥機で乾燥し、着色された樹脂粉末を得た。篩で分級後、得られた樹脂粉末103部に、リン酸エステル系可塑剤24部、離型剤0.2部、シリカ0.5部混合することでスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S−1)を得た。赤外線透過性着色剤(B−1)の含有量はスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S−1)の重量に基づいて1.2重量%であった。
【0034】
実施例2
ウレタンプレポリマー(UP−1)100部にブラック系マスターカラー(PP−1)0.5部と赤外線透過性着色剤(B−1)2.5部を加えて一定攪拌混合(30rpm)した。その後、実施例1と同様の工程を行うことでスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S−2)を得た。赤外線透過性着色剤(B−1)の含有量はスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S−2)の2.0重量%であった。
【0035】
実施例3
ウレタンプレポリマー(UP−1)100部にブラック系マスターカラー(PP−1)0.5部と赤外線透過性着色剤(B−2)2.5部を加えて一定攪拌混合(30rpm)した。その後、実施例1と同様の工程を行うことでスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S−3)を得た。赤外線透過性着色剤(B−2)の含有量はスラッシュ成形用(S−3)の重量に基づいて2.0重量%であった。
【0036】
実施例4
ウレタンプレポリマー(UP−1)100部にブラック系マスターカラー(PP−1)0.5部と赤外線透過性着色剤(B−3)2.5部を加えて一定攪拌混合(30rpm)した。その後、実施例1と同様の工程を行うことでスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S−4)を得た。赤外線透過性着色剤(B−3)の含有量はスラッシュ成形用(S−4)の重量に基づいて2.0重量%であった。
【0037】
実施例5
ウレタンプレポリマー(UP−1)100部にブラック系マスターカラー(PP−1)0.5部と赤外線透過性着色剤(B−4)2.5部を加えて一定攪拌混合(30rpm)した。その後、実施例1と同様の工程を行うことでスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S−5)を得た。赤外線透過性着色剤(B−4)の含有量はスラッシュ成形用(S−5)の重量に基づいて2.0重量%であった。
【0038】
比較例1
ウレタンプレポリマー(UP−1)100部にブラック系マスターカラー(PP−1)3部を加えて一定攪拌混合(30rpm)した。その後、実施例1と同様の工程を行うことでスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(比S−6)を得た。赤外線非透過性着色剤の含有量はスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(比S−6)に基づいて2.3重量%であった。
【0039】
評価方法
評価サンプルの作成方法
予め270℃に加熱したシボ付きNi電鋳型に、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S−1)〜(S−5)及び(比S−6)を流し込み、電鋳型のもつ熱によって材料を溶融させ、厚さ1mm程度の均一な薄膜表皮を作成した。
【0040】
上記で得られた薄膜表皮について、次に示す試験法により、測色値、均一着色性、摩耗色落ち(乾布摩擦堅牢度)試験、耐熱老化性試験(色の保持率)、表皮蓄熱性の評価を実施し、結果を表1に示した。
【0041】
(1)測色値
分光光度計(型番CM−3600d、コニカミノルタ社製)で表皮シボ面の測色(L*、a*、b*)を行った。まず、サンプルN数=10で測定を行い、各サンプルの測色値と標準板の測定値との差(ΔL*、Δa*、Δb*)を求めた。下記の式から各サンプルの10個のΔE*を計算し、その平均値を求めた。結果は表1に記した。
ΔE*=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)20.5
ΔE*は薄膜表皮の色ぶれを示す。
【0042】
(2)均一着色性
表皮シボ面を目視で観察し、下記4段階で評価した。
◎・・・極めて良好
○・・・良好
△・・・若干むらが認められる
×・・・むらが認められる
【0043】
(3)摩擦色落ち(乾布摩擦堅牢度)試験
幅約30mm、長さ約200mmの試験片を切り取り、染色物摩擦堅牢度試験機(大栄科学精器製作所製)に取り付け、白綿布を摩擦子にかぶせて固定し、摩擦試験を行った。白綿布の色落ち程度を目視で観察し、下記4段階で評価した。
◎・・・全く認められない
○・・・わずかに認められるが目立たない
△・・・明らかに認められる
×・・・著しく認められる
【0044】
(4)色の保持率(耐熱老化性試験)
薄膜表皮をモールド内にセットした状態でその上にウレタンフォーム形成成分[EOチップドポリプロピレントリオール(数平均分子量5,000)95部、トリエタノールアミン5部、水2.5部、トリエチルアミン1部およびポリメリックMDI61.5部からなる]を添加し発泡密着させ、ウレタンフォーム成形体を得た。この成形体をまず分光光度計(型番CM−3600d、コニカミノルタ社製)で表皮シボ面の測色(L*、a*、b*)を行い、その値を初期値とした。次にこの成形体を110℃の順風乾燥機内で2400時間熱処理した後、分光光度計(型番CM−3600d、コニカミノルタ社製)で表皮シボ面の測色(L*、a*、b*)を行い、実施例、比較例それぞれの色の保持率(%)を求めた。
色の保持率(%)の計算方法
色の保持率(%)=(熱処理後の測色値÷初期値)×100
【0045】
(5)表皮の蓄熱性
ポリウレタンフォーム上に赤外線透過性着色剤(B)を使用したスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S−1)〜(S−5)とブラック系マスターカラー(PP−1)を使用したスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(比S−6)の試験片(幅10×10cm)を設置し、その50cm上から赤外線ランプで20分間照射して時間による温度推移を非接触温度計によって測定した。
表皮の蓄熱性の計算法
表皮の蓄熱性 = (赤外線ランプ照射後の表皮温度−初期温度)
【0046】
【表1】

【0047】
実施例1〜5を比較例1と比較すると、測色値、均一着色性、摩擦色落ち試験においては同等の性能を有していることが分かる。また耐熱老化性試験における色の保持率を比較すると、赤外線透過性顔料(B)を使用したスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S−1)〜(S−5)は赤外線透過性顔料(B)未使用のスラッシュ成形用粉末組成物(比S−6)より高い値を示すことがわかった。このことから、本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)は、熱による成形品表面の色への影響が少ない。また、赤外透過性着色剤(B)を使用したスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S−1)〜(S−5)は未使用物(比S−6)よりも蓄熱性が約20℃低いことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)から成形される表皮は、太陽光による蓄熱性が少なく、さらに熱による色への影響が少ない。また色ぶれが少なく、均一着色性に優れているので、自動車内装材、例えばインスツルメントパネル、ドアトリム等の表皮として好適に使用される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂粉末(A)、及び赤外線透過性着色剤(B)を含有することを特徴とするスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)。
【請求項2】
熱可塑性樹脂粉末(A)が、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(A1)である請求項1に記載の樹脂粉末組成物(S)。
【請求項3】
赤外線透過性着色剤(B)が、アゾメチン系の着色剤を含有する請求項1又は2に記載の樹脂粉末組成物(S)。
【請求項4】
スラッシュ成形用性樹脂粉末組成物(S)の重量に基づいて、赤外線透過性着色剤(B)の含有量が0.5〜5重量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂粉末組成物(S)。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂粉末組成物(S)を成形してなる成形品。
【請求項6】
赤外線透過性着色剤(B)による着色を、ポリウレタン樹脂の重合反応中、及び/又は重合反応以前の工程において行うことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S)の製造方法。

【公開番号】特開2010−229396(P2010−229396A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36881(P2010−36881)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】