説明

スラリー処理装置

【課題】スラリーを高濃度に均一に濃縮することができるスラリー処理装置を提供すること。
【解決手段】スラリー処理装置1は、スラリーA中の固体粒子を沈降させて、スラリーAを濃縮された濃縮スラリーBと、上澄み液Cとに分離するスラリー濃縮槽2と、内底部23に濃縮スラリーBを排出するための排出口24を有し、上部に上澄み液Cが貯留される円筒状の胴部22、及び、上澄み液Cを排出するオーバーフロー部25を有する略漏斗状の濃縮槽本体21と、濃縮槽本体21内にスラリーAを供給するスラリー供給路4と、濃縮槽本体21の内側に回転自在に配置された攪拌装置6と、を備えている。攪拌装置6は、濃縮槽本体21内の上方から沈降して来る濃縮スラリーBを上方へ流動させる攪拌翼61と、攪拌翼61が設けられた回転軸63と、回転軸63を回転させる攪拌駆動モータ62と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、都市ゴミ等の焼却時に採取された焼却飛灰、金属、土石類等の種々の細かい固体粒子が水中に懸濁しているスラリーを高濃度に濃縮することができるスラリー濃縮槽を備えたスラリー処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スラリーは、工業上の使用目的や対象物等によって種々なものがある。そのスラリーの濃縮目的、処理方法及びその処理装置も千差万別である。例えば、金属等の固体分を含有するスラリーを濃縮する方法としては、特許文献1に記載されたスラリー濃縮方法が知られている。
【0003】
図6は、従来のスラリー処理装置に使用されているスラリー濃縮槽の一例を示す概略図である。
図6に示すように、特許文献1のスラリー濃縮方法では、凝集反応槽でスラリー中に凝集剤を添加して攪拌させたスラリーA100をスラリー濃縮槽100(沈降槽)で、スラリーA100中の固体粒子(スラッジ等の粉体)を沈降させて濃縮させた濃縮スラリーB100を得ている。
【0004】
このように、固体粒子と水が混じったスラリーA100から固体粒子を分離させる場合や、そのスラリーA100を濃縮させた濃縮スラリーB100を得る場合には、スラリー濃縮槽100が使用されている。スラリー濃縮槽100は、内底部210に排出口220を有すると共に、その排出口220の周囲から排出口220に向かって緩く傾斜するテーパ面230を有する濃縮槽本体200と、この濃縮槽本体200内の内底部210に所定間隔を介して配置されて、駆動モータ310によって回転して濃縮スラリーB100を集泥させるための集泥レーキ300と、濃縮槽本体200内の上方中央部に設置されたセンターウェル600と、センターウェル600内の上部にスラリーA100を供給する供給管400と、濃縮槽本体200内の上端近傍に設置されて上澄み液C100を濃縮槽本体200外に排水するためのオーバーフロー部500と、から構成されている。
【0005】
このようなスラリー濃縮槽100では、スラリーA100中の固体粒子が、濃縮槽本体200のテーパ面230上に沈下して、固体粒子と液体とに固液分離させることによって、濃縮スラリーB100を得ている。そのテーパ面230の角度θ100は、スラリーA100を濃縮させる都合上、一般に、160〜130度程度の緩い角度の傾斜に形成されている。このようにテーパ面230を緩い傾斜面にすることによって、固体粒子がテーパ面230上を下側へ向かって流動し難く、排出口220に流れ込み難くすることで、濃縮されたスラリーA100を得ると共に、スラリー濃縮槽100の高さが高くなるのを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−212569号公報(段落0051〜0055)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1や図6に示すようなスラリー濃縮槽100では、濃縮槽本体200のテーパ面230の角度θ100が、160〜130度程度の緩やかな斜面に形成されていることによって、集泥レーキ300が内底部210に沿って回転したとしても、内底部210上に沈下した固体粒子B200が、テーパ面230を中央の最下部側に向かってスムースに流動せず、不均一な状態に集泥される。このため、スラリー濃縮槽100から得られる濃縮スラリーB100が、不均一な濃度に濃縮されるという問題点があった。
【0008】
前記問題点を解消する手段としては、前記内底部210上に沈下した固体粒子B200が、テーパ面230上に堆積することなく、そのテーパ面230を下側に向かって滑り落ちて、排出口220内に落下するように、テーパ面230の角度を急斜面に形成することが考えられる。この場合は、テーパ面230の角度を急斜面に形成したことによって、固体粒子B200が排出口220に流れ込んで溜まり、排出口220が詰まると共に、スラリー濃縮槽100全体の高さが高くなるという問題点があった。
【0009】
このため、従来では、前記したように、テーパ面230の角度θ100を緩やかな斜面に形成して、固体粒子が流動し難くなるようにしていた。また、従来でも、脱水機の脱水能力を向上させるために、このスラリー濃縮槽100でスラリーA100を高濃度に濃縮することが望まれていたが、前記段落0008の説明の通りの問題が発生し、高濃度スラリーを得る事が出来ないでいた。
【0010】
そこで、本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、スラリーを高濃度に均一に濃縮することができるスラリー処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、請求項1に記載のスラリー処理装置は、スラリー中の固体粒子を沈降させて、前記スラリーを濃縮させた濃縮スラリーと、上澄み液とに分離するスラリー濃縮槽を備えたスラリー処理装置において、内底部に前記濃縮スラリーを排出するための排出口を有し、上部に前記上澄み液が貯留される円筒状の胴部、及び、前記上澄み液を排出するオーバーフロー部を有する略漏斗状の濃縮槽本体と、前記濃縮槽本体内に前記スラリーを供給するスラリー供給路と、前記濃縮槽本体の内側に回転自在に配置された攪拌装置と、を備え、前記攪拌装置は、前記濃縮槽本体内の上方から沈降して来る前記濃縮スラリーを上方へ流動させる複数の攪拌翼と、前記複数の攪拌翼が設けられた回転軸と、前記回転軸を回転させる攪拌駆動モータと、を有していることを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、スラリー処理装置は、濃縮槽本体内の攪拌翼が回転して、沈降した濃縮スラリーを上方へ流動させることによって、濃縮スラリーが攪拌されて内底部上を循環して流動しているため、内底部上に堆積し難く、その結果内底部上に沈降した固体粒子は、内底部上を循環している濃縮スラリーの流れと、固体粒子の自重とによって内底部の急斜面を下側に向かって流動し易くなり、内底部内で比較的均一で圧密な泥の状態に収集されて、内底部内を循環し続ける。
そして、スラリー中の水分は、固体粒子の上側に分離されて上澄み液となって、オーバーフロー部から外部に排出される。このため、スラリー濃縮槽に供給されたスラリーは、上澄み液が除去された分だけ、固体粒子が緻密な泥状の状態に集め寄せられて高濃度に均一に濃縮された濃縮スラリーとなって、排出口から濃縮槽本体に排出される。
【0013】
請求項2に記載のスラリー処理装置は、請求項1に記載のスラリー処理装置であって、前記内底部は、当該内底部上に沈下した前記固体粒子が、当該内底部上を下側に向かって流動する傾斜角度を有した逆円錐形状に形成されていることを特徴とする。
【0014】
かかる構成によれば、スラリー処理装置は、濃縮槽本体の内底部の傾斜角度が内底部上を下側に向かって流動する角度に形成されていることによって、逆円錐形状の内底部上に沈降した固体粒子を、傾斜した内底部の上面上を下側に向かって自重で滑らすことができる。
【0015】
請求項3に記載のスラリー処理装置は、請求項1または請求項2に記載のスラリー処理装置であって、前記攪拌装置は、前記濃縮槽本体の前記内底部の上方に所定間隔をあけて配置されると共に、前記回転軸に固定されて、前記攪拌駆動モータが回転することにより、前記内底部上に沈降した濃縮スラリーを掻き落とすスクレーパを有することを特徴とする。
【0016】
かかる構成によれば、濃縮槽本体の内底部上に沈降した濃縮スラリー中の固体粒子は、スクレーパによって掻き落とされるので、内底部上に堆積したとしても、均一な層状に薄く堆積するだけで、山状に不均一な状態に堆積することがない。
【0017】
請求項4に記載のスラリー処理装置は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のスラリー処理装置であって、前記内底部には、中央部の最下端部に、前記排出口が設けられた貯溜部を有し、前記貯溜部には、前記回転軸の下端部に固定されて、前記スクレーパと同回転し、当該貯溜部内の前記濃縮スラリーを前記排出口に送り出す搬送用翼が配置されていることを特徴とする。
【0018】
かかる構成によれば、攪拌駆動モータによって回転される攪拌装置の回転軸は、濃縮槽本体の最下端部に、排出口がある貯溜部が設けられて、その貯溜部内に搬送用翼が設けられている。このため、スラリー濃縮槽内に供給されたスラリーに含有される固体粒子は、内底部から貯溜部、排出口へとスムースに流動して排出口から濃縮槽本体の外部に送り出される。
【0019】
請求項5に記載のスラリー処理装置は、請求項4に記載のスラリー処理装置であって、前記濃縮槽本体には、前記内底部上に沈降した前記濃縮スラリーのスラリーレベルを検出するレベルセンサと、前記貯溜部内の前記濃縮スラリーを吸引して下流側へ送るための排出ポンプが設置されて、前記排出口に連通したスラリー搬送管と、が備えられ、前記排出ポンプは、前記レベルセンサで検出した前記濃縮スラリーのスラリーレベルに基づいた駆動信号によって回転されることを特徴とする。
【0020】
かかる構成によれば、排出ポンプは、レベルセンサで検出した濃縮スラリーのスラリーレベルに基づいて、濃縮スラリーのスラリーレベルが所定レベルになるように制御するレベル制御装置からの駆動信号によって駆動される。このため、濃縮槽本体内の内底部の濃縮スラリーを適宜に排出口から排出することによって、濃縮スラリーの高濃度を調整して、所望の濃度の濃縮スラリーを得ることができる。
【0021】
請求項6に記載のスラリー処理装置は、請求項5に記載のスラリー処理装置であって、前記排出ポンプによって前記スラリー搬送管の下流側に送られた前記濃縮スラリーは、この濃縮スラリー中の水分を脱水する脱水機によって脱水処理されることを特徴とする。
【0022】
かかる構成によれば、スラリー濃縮槽で濃縮された濃縮スラリーは、排出ポンプによってスラリー搬送管から下流側の脱水機に送られて、さらに、この濃縮スラリー中の水分を脱水されて濃縮され、低水分のフレーク状の脱水ケーキとなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の請求項1に係るスラリー処理装置によれば、スラリーを高濃度に均一に濃縮した濃縮スラリーを得ることができる。
【0024】
本発明の請求項2に係るスラリー処理装置によれば、逆円錐形状の内底部上に沈降した固体粒子を傾斜した内底部の上面上を下側に向かって自重で滑らして、固体粒子が内底部上に堆積するのを解消することができる。
【0025】
本発明の請求項3に係るスラリー処理装置によれば、濃縮槽本体の内底部上に沈降した濃縮スラリー中の固体粒子をスクレーパで掻き落とし、内底部上に山状に不均一な状態に堆積するのを抑制して、濃縮スラリーの濃度が不均一になるのを解消することができる。
【0026】
本発明の請求項4に係るスラリー処理装置によれば、スラリー濃縮槽内に供給されたスラリー中の固体粒子を、濃縮槽本体の内底部から貯溜部、排出口へとスムースに流動させて、排出口から詰まることなく、濃縮された濃縮スラリーを容易に濃縮槽本体の外部へ送り出すことができる。
【0027】
本発明の請求項5に係るスラリー処理装置によれば、スラリー濃縮槽内のスラリーに含有されていた固体粒子の量を一定にして、常に、均一の濃度の濃縮スラリーを得ることができる。
【0028】
本発明の請求項6に係るスラリー処理装置によれば、スラリー濃縮槽で濃縮された濃縮スラリーを、排出ポンプによって脱水機に送って、さらに、低水分のフレーク状の脱水ケーキを得ることができると共に、脱水機の脱水能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係るスラリー処理装置を示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係るスラリー処理装置のスラリー濃縮槽を示す概略拡大断面図である。
【図3】図2に示すスラリー濃縮槽の下部の拡大図である。
【図4】本発明の実施形態に係るスラリー処理装置のスラリー濃縮槽を示す概略拡大平面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るスラリー処理装置のレベル制御装置の作動を示すフローチャートである。
【図6】従来のスラリー処理装置に使用されているスラリー濃縮槽の一例を示すが概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図1〜図5を参照して発明を実施するための形態を説明する。
なお、スラリー処理装置1で濃縮するスラリーAは、都市ゴミ等の焼却時に採取された焼却飛灰、金属、セラミック、汚泥、土石等の鉱物等の種々の細かい固体粒子が水中に懸濁しているスラリーAを濃縮するものであって、固体粒子を含有するものであれば特にその種類等は限定されない。以下、焼却飛灰を固体粒子として含有するスラリーAを濃縮する場合を例に挙げて、本発明の一例を説明する。
まず、スラリー処理装置1を説明する前に、焼却飛灰及びスラリーAを説明する。
【0031】
≪焼却飛灰及びスラリーの説明≫
焼却飛灰は、水素イオン濃度がpH11〜pH13の高アルカリ性の高温焼却飛灰からなる粉状の固体粒子であり、塩素化合物及び重金属類(例えば、亜鉛Zn、鉛Pb、カドニウムCd等)が含有されている。
スラリーAは、その焼却飛灰を再資源化するために、約5〜10倍の水で洗浄して、含有する阻害物質を溶出させる目的で強酸液により、水素イオン濃度がpH9〜10に調整された混濁液からなる。スラリーAは、まず、図1に示す凝集反応槽3に移送される。
【0032】
≪スラリー処理装置の構成≫
スラリー処理装置1は、スラリーAを凝集反応させる凝集反応槽3と、この凝集反応槽3内のスラリーAを供給するスラリー供給路4と、このスラリー供給路4によって供給されたスラリーAを固液分離して濃縮された濃縮スラリーBを得るためのスラリー濃縮槽2と、このスラリー濃縮槽2に設けられた攪拌装置6と、スラリー濃縮槽2内の濃縮スラリーBを吸引するスラリー排出装置7と、スラリー濃縮槽2内の濃縮スラリーB(固体粒子)のスラリーレベルを調整するレベル制御装置8と、スラリー排出装置7によって吸引された濃縮スラリーBが供給される脱水機9と、電源10と、を備えている。
【0033】
≪凝集反応槽の構成≫
図1に示すように、凝集反応槽3は、スラリーAに高分子凝集剤Fを添加して凝集反応される反応槽である。凝集反応槽3には、スラリーAを貯溜する凝集槽31と、スラリーAが供給ポンプ等(図示省略)により凝集槽31に供給されるスラリー入口32と、高分子凝集剤Fが供給ポンプ等(図示省略)により凝集槽31に供給される凝集剤受入口33と、スラリーA等を凝集槽31外に排出するためのドレン口34と、凝集槽31内のスラリーAを掻き混ぜるための凝集反応槽用スクレーパ35と、この凝集反応槽用スクレーパ35を回転させる凝集反応槽用攪拌モータ36と、凝集槽31内の上層部のスラリーAを凝集槽31外に排出するためのスラリー出口37と、を主に備えて構成されている。
【0034】
凝集槽31は、上側開口部が越液防止蓋38で閉塞された有底円筒状の槽である。凝集槽31は、下層部に、スラリー入口32と、凝集剤受入口33と、ドレン口34とが設置され、上層部に、スラリー出口37が設置され、中層部に、凝集反応槽用スクレーパ35が配置されている。
スラリー入口32、凝集剤受入口33及びドレン口34は、凝集槽31の下層の同じ高さの位置に、互いに向きを変えて配置されている。
【0035】
凝集反応槽用スクレーパ35は、凝集反応槽用攪拌モータ36によって回転される回転軸35aと、回転軸35aの下端に設けられた軸受部35bと、回転軸35aに設けられたスクレーパ支持部材35dと、このスクレーパ支持部材35dを介在して回転軸35aに固定されるスクレーパ本体35cと、を備えて構成されている。
回転軸35aは、凝集槽31の中心線に沿って上下に向けて延在され、下端が軸受部35bに軸支され、上端部が架台35eに支持されている。
軸受部35bは、凝集槽31の内底の中央部に設置されている。
スクレーパ本体35cは、回転軸35aに平行に上下に向け延設された二本の棒状部材からなり、凝集槽31の内壁に沿って回転するように配置されている。
スクレーパ支持部材35dは、互いに対称位置に配置された二本のスクレーパ本体35cをそれぞれ固定するための部材であり、回転軸35aの下方部位と、回転軸35aの中間層部位との二箇所に設置されている。
架台35eは、越液防止蓋38に載設されて、凝集反応槽用攪拌モータ36を保持する部材である。
【0036】
凝集反応槽用攪拌モータ36は、ロータの回転を減速して回転軸35aに伝達する減速機構を内蔵したモータ駆動装置であり、越液防止蓋38の上面中央部に配置されている。
スラリー出口37は、凝集槽31内のスラリーAを凝集槽31外に排出するために凝集槽31の上部に配置されている。このスラリー出口37から溢れたスラリーAは、スラリー供給路4に流れ込むように設けられている。
【0037】
≪スラリー供給路の構成≫
スラリー供給路4は、凝集反応槽3内のスラリーAを濃縮槽本体21内に供給するための供給路である。スラリー供給路4は、上流側が凝集反応槽3のスラリー出口37に接続され、下流側がスラリー濃縮槽2内に配置された内筒5の上部偏芯位置に接続されると共に、上流側から下流側に向かって下側に傾斜させて配置されている。スラリー供給路4の下流側の開口端部4a(図4参照)は、内筒5内の上部において、平面視して内筒5の中心からずれた位置に配置されている。このため、スラリー供給路4から放出されたスラリーAが内筒5内を下方向(矢印a方向)へ螺旋状に巻回しながら下降するようになっている。
【0038】
≪スラリー濃縮槽の構成≫
図2に示すように、スラリー濃縮槽2は、前記スラリー供給路4から供給されたスラリーA中の固体粒子を重力で沈降させて、スラリーAの濃度が濃い濃縮スラリーBと、固体粒子を沈降させて浄化された上澄み液Cと、スラリーAの濃度が濃縮スラリーBと上澄み液Cとの中間の濃度の希薄スラリーDと、に固液分離して、濃縮された高濃度の濃縮スラリーBを得るための槽である。スラリー濃縮槽2は、このスラリー濃縮槽2の本体を形成する濃縮槽本体21と、前記スラリー供給路4と、濃縮槽本体21の中央部に配置された内筒5と、スラリーA及び濃縮スラリーB(固体粒子)を攪拌する攪拌装置6と、濃縮槽本体21内の濃縮スラリーB(固体粒子)のスラリーレベルを所定の濃度に調整するためのレベル制御装置8(図1参照)と、を備えて構成されている。
なお、スラリー濃縮槽2は、沈下槽、沈降槽、分離槽ともいわれている。
【0039】
≪濃縮槽本体の構成≫
濃縮槽本体21は、上端部に開口部を有する略漏斗状に形成されて、スラリーAを一時的に貯溜させながら含有された固体粒子を沈降させて濃縮スラリーBを得るための槽本体である。濃縮槽本体21は、円筒状に形成された胴部22と、胴部22の下方に連続形成されたテーパ状の内底部23と、内底部23の下端部に形成された貯溜部26と、貯溜部26の内壁に形成された排出口24と、濃縮槽本体21の内側上縁に形成された堰27と、堰27から溢れた上澄み液Cの流路を形成する上澄み液回収路28と、この上澄み液回収路28から上澄み液Cが外部に流れ出るオーバーフロー部25と、濃縮槽本体21を支える支柱29と、を備えている。
濃縮槽本体21の内側には、内筒5と、回転軸63と、攪拌翼61と、スクレーパ64と、搬送用翼65と、レベルセンサ71と、が設けられている。濃縮槽本体21の外側には、前記スラリー供給路4と、排出口24に接続されたスラリー搬送管73と、オーバーフロー部25に接続された配管(図示省略)と、レベル制御装置8等が設置されている。なお、濃縮槽本体21は、上側の開口部を蓋体で閉塞したものであっても構わない。
【0040】
図2に示すように、胴部22は、上下方向に向けて形成された円筒状の部材からなる。この胴部22は、上端部に開口が形成され、下端部にコーン形状の内底部23が形成されている。胴部22内には、上部に上澄み液Cが貯留され、その下部に希薄スラリーD、最下端部に泥状の所定濃度の濃縮スラリーBが貯溜される。胴部22の下端部には、内筒5の下端部と、レベルセンサ71の下端部と、スクレーパ64の胴掻取部64bとが配置されている。
【0041】
図3に示すように、内底部23は、濃縮槽本体21の上方から沈下した固体粒子を一時的に滞留させて、この内底部23上に一定の圧密状態のスラリーゾーンを確保するための部位である。内底部23は、この内底部23上に沈下した固体粒子が、内底部23上を下側に向かって流動し易い傾斜角度θ1を有した逆円錐形状に形成されている。その内底部23の傾斜角度θ1は、120〜60度以内、好ましくは105〜75度、さらに好ましくは約90〜80度である。内底部23は、この内底部23上に沈下した固体粒子が中央部の貯溜部26に向かって下方向(矢印d方向)に滑落するように急斜面に擂鉢状に形成されている。
【0042】
貯溜部26は、内底部23の中央部下端に有底円筒状に形成されて、濃縮スラリーBが一時的に貯留される部位であり、略有底円筒状に形成されている。この貯溜部26内には、搬送用翼65が回転自在に配置されている。
排出口24は、貯溜部26の内壁部に形成され、濃縮された濃縮スラリーBを濃縮槽本体21外に排出するための吐出口である。
【0043】
図2に示す堰27は、濃縮槽本体21内がスラリーAで一杯になったときに、上澄み液C及びスカム等の固体粒子より質量の軽いものが濃縮槽本体21外に溢れる箇所であり、胴部22の上端周縁全体に亘って形成された複数の三角堰からなる。
上澄み液回収路28は、堰27の外周部に形成された断面凹状の流路であり、堰27から溢れた上澄み液C等がオーバーフロー部25に向かって流れるように形成されている。
オーバーフロー部25は、上澄み液回収路28内から溢れた上澄み液Cをスラリー濃縮槽2外に設置された処理槽等に送るための配管(図示省略)が接続されている。
【0044】
≪内筒の構成≫
内筒5は、スラリー供給路4から流れ来たスラリーAが放出されるセンターウェルであり、濃縮槽本体21内の中央部の上部から胴部22の下端中央部に亘って垂設された円筒管からなる。スラリー供給路4は、内筒5に対して、中心からずれて配置されているので、内筒5内に送られたスラリーAが、内筒5の内壁面にガイドされて螺旋状に渦を巻きながら下降するようになっている。
【0045】
≪攪拌装置の構成≫
攪拌装置6は、内底部23上に沈降した濃縮スラリーBを掻き落とすと共に、内底部23内の濃縮スラリーBを掻き回して攪拌し、固体粒子がスラリー濃縮槽2内で、堆積せずに、均一な濃度の状態で循環して流動するように底部から上方へ流動させるための装置である。攪拌装置6は、濃縮槽本体21内の中心線上の下端部から上端部に亘って配置され、濃縮槽本体21内の中央部に垂直に回転自在に配置されている。
攪拌装置6は、濃縮槽本体21の内側中央に上下方向に複数配置された攪拌翼61と、この攪拌翼61を回転させる攪拌駆動モータ62と、攪拌翼61を固定した回転軸63と、内底部23に沿ってその近傍を回転するスクレーパ64と、貯溜部26内に配置された搬送用翼65と、攪拌駆動モータ62を載設した架設部材66と、スクレーパ64を回転軸63に固定するスクレーパ支持部材67と、攪拌駆動モータ62の回転を制御するレベル制御装置8(図1参照)と、を備えて構成されている。なお、攪拌翼61とスクレーパ64と搬送用翼65と回転軸63とは、攪拌駆動モータ62によって一体に回転する。
【0046】
<攪拌翼の構成>
攪拌翼61は、内底部23内の濃縮スラリーBを攪拌する羽根部材であり、固体粒子が濃縮槽本体21内で不均一に沈降して堆積したり、濃縮スラリーBが高密度(高濃度)になり過ぎたりしないように、掻き回しながら上昇(矢印e,g方向)させて流動させる。攪拌翼61は、内底部23内の回転軸63に、上下方向及び水平方向に適宜な間隔を介して螺旋状な位置に、平面視して4枚あるいは3枚程度の数の翼を隙間を介して配置している。攪拌翼61は、スラリーAを上方向に流動させるために、例えば、軸方向に対して斜め45度傾けて回転軸63に設けられている。
【0047】
<攪拌駆動モータの構成>
図1に示すように、攪拌駆動モータ62は、回転軸63、攪拌翼61、スクレーパ64及び搬送用翼65を低速(例えば、1〜6rpm程度)で回転させるための駆動源である。攪拌駆動モータ62は、濃縮槽本体21の上部に設置された架設部材66の中央部に載設され、回転軸63の上端部が連結されている。攪拌駆動モータ62は、レベル制御装置8からの駆動信号によって歯車減速機構等の減速機構(図示省略)を介在して回転軸63等を、内筒5内を螺旋状に回転しながら下降するスラリーAの螺旋方向(矢印a方向)と同じ方向(矢印c方向)に回転させる。攪拌駆動モータ62は、レベル制御装置8を介して電源10に接続されている。
【0048】
<回転軸の構成>
図2に示すように、回転軸63は、濃縮槽本体21内の中央部の上端部から下端部に亘って垂直に配置されて、攪拌駆動モータ62によって回転する棒状部材である。回転軸63は、上端が、減速機構(図示省略)を介在して濃縮槽本体21の上部に配置された攪拌駆動モータ62に接続されて垂下した状態に配置され、中央部位が、内筒5内の中央部に挿通して配置され、下端部が、内底部23及び貯溜部26内に配置されている。
【0049】
<スクレーパの構成>
図3に示すように、スクレーパ64は、濃縮槽本体21の内底部23上に沈降して堆積した固体粒子を掻き取る部材であり、回転軸63にスクレーパ支持部材67を介在して固定されている。スクレーパ64は、例えば、内底部23に沿って、その上方に所定間隔(10〜50mm程度)を介して平行(斜めに)に設置された2本の部材からなる。スクレーパ64は、内底部23に沿って設けられた内底掻取部64aと、この内底掻取部64aの上側に垂直に連設された胴掻取部64bと、を側面視して略く字状に折曲形成してなる。
内底掻取部64aは、内底部23の傾斜角度θ1と同じ角度θ2に傾けて設置されている。胴掻取部64bは、濃縮槽本体21の胴部22内に沿って所定間隔を介して配置されている。
【0050】
<搬送用翼の構成>
搬送用翼65は、貯溜部26内の濃縮スラリーBを、貯溜部26の内壁に形成された排出口24に送り出すためのプロペラであり、貯溜部26内に延設された回転軸63に固定されている。搬送用翼65は、スラリー排出装置7の一構成部品としての役目も果たす。
【0051】
<スクレーパ支持部材の構成>
スクレーパ支持部材67は、スクレーパ64を回転軸63に固定するための部材であり、上部保持部67aと、中部保持部67bと、下部保持部67cとから構成されている。スクレーパ支持部材67は、例えば、金属製パイプまたは角材を溶接や締結部材等によって連結してなる。
上部保持部67aは、スクレーパ64の上部を回転軸63に固定するための部材であり、回転軸63から外周方向に水平に延設された棒状部材からなる。
中部保持部67bは、スクレーパ64に中央部分と回転軸63とを連結して保持する棒状部材であり、回転軸63と上部保持部67aとの連結部分から斜め下がるように配置されている。
下部保持部67cは、スクレーパ64の下端部を回転軸63に連結して保持する部位である。
【0052】
<架設部材の構成>
図2に示すように、架設部材66は、濃縮槽本体21の開口部の中央部上方に架設配置される略橋状の部材である。この架設部材66には、中央部に攪拌駆動モータ62が載設され、その外側にレベルセンサ71が設置されている。架設部材66には、作業員が登れるように形成され、この架設部材66の周囲に、安全手摺が設けられている。
【0053】
≪スラリー排出装置の構成≫
図1に示すように、スラリー排出装置7は、スラリー濃縮槽2内で濃縮された濃縮スラリーBをスラリー濃縮槽2内から吸引して抜き取る装置であり、スラリー濃縮槽2と脱水機9との間に介在されている。スラリー排出装置7は、濃縮槽本体21内の濃縮スラリーB(固体粒子)のスラリーレベルを計測するレベルセンサ71と、上流側が排出口24に接続され、下流側が脱水機9上に配置されたスラリー搬送管73と、濃縮槽本体21内の濃縮スラリーBをスラリー搬送管73を介して下流側にある脱水機9へ流すための排出ポンプ72と、レベルセンサ71で検出した濃縮スラリーB中の固体粒子の圧密度の検出データに基づいて排出ポンプ72を駆動制御するレベル制御装置8と、を備えて構成されている。
【0054】
<レベルセンサの構成>
レベルセンサ71は、濃縮槽本体21内に沈降した濃縮スラリーB(固体粒子)のスラリーレベルを検出するセンサである。そのレベルセンサ71は、例えば、濃縮槽本体21内の上方から胴部22内の下端部に亘って垂直に配置された筒体71aと、内筒5及び胴部22内を沈降して筒体71a内に浸入した濃縮スラリーBの固体粒子の上側にある上澄み液Cの液面を検出する電極式の液位検出部71bと、この液位検出部71bで検出した液面レベルから濃縮スラリーBの圧密度を算出するレベル制御装置8と、から構成されている。
つまり、図2に示すように、筒体71a内の液面の高さH2は、内底部23上に堆積するように収集された濃縮スラリーBの高さH1(図3参照)と希薄スラリーDの高さD2(図2参照)とによる圧力と、レベルセンサ71に外部より供給される工業用水等の清澄液(図示省略)による圧力の差により発生するので、濃縮槽本体21内の上澄み液Cの液面の高さより高くなる。
液位検出部71bは、筒体71a内の液面を検出する検出部であり、筒体71a内に上下方向に目盛状に所定間隔にずらして配置されてそれぞれの液位を検出する電極等からなる。なお、レベルセンサ71の各液位検出部71bは、レベル制御装置8に電気的に接続されて、レベル制御装置8がONしている場合に、連続的に検出データが送られている。
【0055】
<排出ポンプの構成>
図1に示すように、排出ポンプ72は、レベルセンサ71で検出した濃縮槽本体21内の濃縮スラリーBのスラリーレベルに基づくレベル制御装置8からの駆動信号によって駆動する電動ポンプである。この排出ポンプ72は、濃縮槽本体21内から内底部23に沈降した濃縮スラリーBを吸引して抜き取ることにより、濃縮スラリーBの濃度を調整できるようになっている。排出ポンプ72は、レベル制御装置8を介して電源10に電気的に接続されている。
スラリー搬送管73は、スラリー濃縮槽2で濃縮された濃縮スラリーBを脱水機9に送るための配管である。このスラリー搬送管73の下流側の下端部は、脱水機9の濾布91の上部に配置されて、濾布91の上に濃縮スラリーBを吐出する濃縮スラリー供給口73aを有している。
【0056】
≪レベル制御装置の構成≫
レベル制御装置8は、レベルセンサ71で計測した濃縮スラリーBのスラリーレベルに基づいて、排出口24から排出される濃縮スラリーBのスラリーレベルが、予め設定された所定レベルになるように凝集反応槽3の供給ポンプ(図示省略)、及び排出ポンプ72を駆動制御してスラリーAの流入量と濃縮スラリーBの抜取量を調整するレベルコントローラーである。レベル制御装置8は、筒体71a内の液面の部位に配置された液位検出部71bから発信された液位の検出信号によって、その液面の高さH2から希薄スラリーDの平均的なスラリーレベル(高さ)及び圧密度を算出し、予め実測したデータに基づいて排出口24から排出される濃縮スラリーBの濃度を統計的に割り出している。
【0057】
≪脱水機の構成≫
図1に示すように、脱水機9は、スラリー排出装置7によってスラリー濃縮槽2内から排出された濃縮スラリーB中の水分を脱水処理する装置である。脱水機9は、濃縮スラリーBをさらに脱水することができる装置であればよく、特に型式等は限定されない。以下、脱水機9の一例としては、濾布91上に濃縮スラリーBを注ぎ、この濃縮スラリーBと濾布91を上下一対の圧搾ロール93,94で搾って脱水する高圧搾型ロールプレス脱水機の場合を例に挙げて説明する。
【0058】
脱水機9は、前記濃縮スラリーBが注がれ搬送ベルト状に形成された濾布91と、この濾布91を移動させるための搬送ロール92と、濾布91によって搬送された濃縮スラリーBを圧搾して水分を除去するための圧搾ロール93,94と、圧搾ロール93によって脱水されて圧搾ロール93に転写して付着している脱水ケーキEを掻き落とす脱水機用スクレーパ95aと、脱水機用スクレーパ95aで掻き落した脱水ケーキEを所定位置に搬送するシュート95bと、濾布91に洗浄水を当てて洗浄する洗浄ノズル97と、濾布91から落下した洗浄水を受けるための水受けシュート96と、洗浄水を含んだ濾布91の水分を圧搾して取り除くための脱水ロール98,98と、を備えて構成されている。脱水機9は、レベル制御装置8に電気的に接続されて、レベルセンサ71の検出信号及び手動スイッチ(図示省略)等によって駆動・停止する。
【0059】
<濾布の構成>
濾布91は、繊維で編み込まれた布あるいは不撚布からなる水分の吸収のよいフェルトで構成された搬送ベルトである。濾布91は、搬送ロール92によって定常速度で移動し、濾布91に載置した濃縮スラリーBを圧搾ロール93,94、洗浄ノズル97に搬送して、元の濃縮スラリー供給口73aの下まで所定速度で一定に移動する。
【0060】
<搬送ロール及び圧搾ロールの構成>
搬送ロール92は、巻き掛けられた濾布91を所定位置に移動させるためのロールであり、適所に設置された複数のロールからなり、ベルト掛けされた濾布91の弛みや張り具合を調整できるようになっている。
圧搾ロール93,94は、濾布91の上下に配置されて所定の速度で回転する一対のロールからなり、一方の圧搾ロール94に濾布91が巻き掛けられている。一方の圧搾ロール94と他方の圧搾ロール93とは、濾布91及び濃縮スラリーBを圧搾して濃縮スラリーB中の水分を絞り落す。又圧搾ロール94はモーター(図示省略)により駆動されベルト掛けされた濾布91を走行させる。
【0061】
<脱水機用スクレーパ及び水受けシュートの構成>
脱水機用スクレーパ95aは、圧搾ロール93,94によりケーキ状態の脱水ケーキEを上側の圧搾ロール93に転写した脱水ケーキEを掻き落とす装置である。脱水機用スクレーパ95aによって掻き落された脱水ケーキEは、シュート95bにより所定位置に搬送されて回収される。
図1に示すように、水受けシュート96は、濾布91を洗浄するための洗浄液と脱水液と回収するためのものである。
【0062】
<洗浄ノズル及び脱水ロールの構成>
洗浄ノズル97は、濾布91を洗浄する洗浄装置であり、濾布91に洗浄水を噴射して吹き付ける一対のノズルからなる。洗浄ノズル97は、水受けシュート96から上方へ引き上げられて搬送される濾布91の表裏を洗浄する一対のノズルからなる。噴射されたノズルの洗浄水は、落下して前記水受けシュート96に収集される。
脱水ロール98,98は、濾布91中の洗浄水等の水分を除去するための一対のロールからなり、一方の脱水ロール98に濾布91が巻き掛けられ、他方の脱水ロール98によって濾布91及び一方のロールを圧搾して濾布91中の水分を絞り落す。脱水ロール98は、水分を除去した濾布91を元の濃縮スラリー供給口73aの下方に移動させる。
【0063】
≪スラリー処理装置の作用≫
次に、図1〜図5を参照しながらスラリー処理装置1の作用を説明する。
図5に示すように、まず、電源10及びレベル制御装置8がONされると(ステップS1)、スラリー濃縮槽2内のスラリーレベルがレベルセンサ71によって計測される(ステップS2)。
凝集反応槽3では、スラリー入口32から汚濁液状のスラリーAがスラリーA用の供給ポンプ(図示省略)によって凝集反応槽3内に供給され、凝集剤受入口33から高分子凝集剤Fが高分子凝集剤F用の供給ポンプ(図示省略)によって凝集反応槽3内に供給される(ステップS4)。凝集反応槽用攪拌モータ36が回転駆動することによって、凝集反応槽用スクレーパ35が回転して、凝集反応槽3内のスラリーAが攪拌される。この場合、凝集した凝集物には、高比重粉体と低比重粉体とが均一に混合されて、凝集物相互間の比重差が存在しないので、その後のスラリー濃縮槽2内で均一な状態で沈降する濃縮スラリーBを得ることが可能となる。
【0064】
凝集反応槽3内のスラリーAは、スラリー出口37の高さを超えると、凝集反応槽3内のスラリーAがそのスラリー出口37に流れ込み、スラリー供給路4から内筒5の上部に供給される。スラリー供給路4の開口端部41aが、内筒5の中心位置からずれて接続されている(図4参照)。このため、スラリーAは、図2に示すように、内筒5内を下側に向かって螺旋状の渦を巻きながら内筒5の内壁にガイドされて下降する。
【0065】
内筒5の下側開口端から出たスラリーAは、内筒5内の流れの勢いで下方向(矢印a方向)へ向かって流れ、内筒5の下方に配置された攪拌翼61の回転によって濃縮槽本体21内で攪拌されて、濃度が均一化される。そして、スラリーA中の固体粒子は、自重で下側に向かって沈降して均一に濃縮した濃縮スラリーBを生成する。
この場合、内底部23上に沈下した濃縮スラリーB中の固体粒子は、内底部23が急斜面に形成されていることにより、その斜面を下方向(矢印d方向)に滑り落ちる。固体粒子が内底部23に堆積したとしても、内底部23の近傍を内底部23に沿って回転するスクレーパ64によって掻き落されて、下方向(矢印d方向)に滑り落ちる。
内底部23を下降した濃縮スラリーB中の固体粒子は、一部が濃縮槽本体21の最下部の貯溜部26内に流れ込み、他の固体粒子が攪拌翼61の回転により内底部23内の下層から上昇(矢印e方向)し、内底部23上に殆ど堆積することなく循環(矢印e,f,d方向)して流動している。
【0066】
濃縮スラリーBより比重の軽い希薄スラリーD及び上澄み液Cは、濃縮スラリーBから分離されて、攪拌翼61による上方向(矢印g方向)の流れにより、渦を巻きながら上側(矢印b方向)に向かって上昇して、濃縮槽本体21の下層の濃縮層B1の上側に希薄スラリーDが集まった希薄層D1を形成する。
さらに、希薄層D1内のスラリーA(固体粒子)は、固液分離されて、渦を巻くように流動しながら上側(矢印b方向)に上昇して浄化された上澄み液Cを生成し、希薄層D1の上に上澄み層C1を形成する。
【0067】
前記上澄み液Cは、混濁液状のスラリーAから固体粒子が分離して、溶出した塩類を含んだ状態で、濃縮槽本体21内の上層側に流動し、水位の増加に伴って、浄化水となって堰27を越えて上澄み液回収路28に落ちる。上澄み液回収路28に流れ込んだ上澄み液Cは、オーバーフロー部25からスラリー濃縮槽2外に排水される。なお、オーバーフロー部25から排出された上澄み液Cは、重金属を取り除いた処理液として処理槽(図示省略)に送られて処理または貯溜される。
【0068】
前記貯溜部26の近傍に流れた濃縮スラリーBは、搬送用翼65に吸引されて貯溜部26及び排出口24を介して、濃縮槽本体21外のスラリー搬送管73に送られる。この場合、内底部23内は、攪拌翼61、スクレーパ64及び搬送用翼65が回転していることにより、常時、濃縮スラリーBが流動しているので、固体粒子のいわゆるラットホールが形成されることがない。このため、内底部23及び貯溜部26に固体粒子が堆積して固化し、希薄スラリーDが排出口24から流れ出る筋道が形成されることを解消することができる。
本発明は、内底部23の急斜面と攪拌装置6とによって固体粒子が堆積するのを防止して、常に、濃縮槽本体21内を循環するように流動させることができる。
【0069】
図1に示すように、濃縮槽本体21内に沈降した固体粒子のスラリーレベルは、レベルセンサ71によって計測され、その計測データがレベル制御装置8に継続的に送られる(ステップS3)。
レベルセンサ71で計測される濃縮スラリーBのスラリーレベルが、予めレベル制御装置8に設定した所定レベル未満の場合、レベル制御装置8は、スラリー搬送管73に設けられた排出ポンプ72のOFF状態を維持すると共に、凝集反応槽3のスラリーA用の供給ポンプ(図示省略)及び高分子凝集剤F用の供給ポンプ(図示省略)のON状態を維持して継続してスラリーAがスラリー濃縮槽2に供給される(ステップS4のYes)。
【0070】
レベルセンサ71で計測される濃縮スラリーBのスラリーレベルが、所定レベル以上になった場合(ステップS4のNo)、レベル制御装置8は、濃縮槽本体21内の濃縮スラリーBが所定レベルの濃度になったと判断して、排出ポンプ72及び脱水機9を駆動させる(ステップS5)。この排出ポンプ72の駆動によって貯溜部26内の濃縮スラリーBが濃縮スラリーB等の重さと排出ポンプ72の吸引力とにより排出されて、スラリー搬送管73を通って濃縮スラリー供給口73aから脱水機9の濾布91上に供給される。
【0071】
濾布91に落下した濃縮スラリーBは、搬送ロール92の回転駆動によって濾布91と共に、圧搾ロール93,94によって圧搾されて脱水される。脱水された濃縮スラリーBは、フレーク状の脱水ケーキEとなり、脱水機用スクレーパ95aにより掻き落とされる。このように、スラリー処理装置1は、スラリー濃縮槽2と、脱水機9を組み合わせたことにより、スラリーAを高濃度に濃縮することが可能なシステムを得ることができ、脱水機9の能力が向上される。脱水ケーキEは、フレーク状になり、再資源化に最適な水分、形状となって、シュート95bにより所定の保管場所に移される。
【0072】
脱水ケーキEが掻き落された濾布91は、搬送ロール92によって移動し、水受けシュート96で付着していた固体粒子が落される。さらに、濾布91は、洗浄水が洗浄ノズル97から噴射されて洗い流される。このため、水受けシュート96内の水は、固体粒子が混じった混濁液となる。この混濁液は、所定の場所に回収、処理される。
洗浄ノズル97からの洗浄水を含んだ濾布91は、脱水ロール98によって水分が搾り落されるので、濾布91の水分が濃縮スラリー供給口73aから濾布91上に供給された濃縮スラリーBに吸収されることがない。
【0073】
そして、スラリー排出装置7によってスラリー濃縮槽2内の濃縮スラリーBを抜き取ったことにより、濃縮スラリーBのスラリーレベルが所定レベルの濃度未満まで低下すると(ステップS6のYes)、レベルセンサ71がそれを検出して計測データをレベル制御装置8に送信する。レベル制御装置8は、濃縮スラリーBのスラリーレベルが所定レベル以下の濃度に低下したと判断して、直ちに、排出ポンプ72及び脱水機9を停止させる(ステップS7)。
なお、濃縮スラリーBのスラリーレベルが所定レベル未満まで低下しない場合には、前記スラリー排出装置7及び脱水機9の駆動状態が維持される(ステップS6のNo)。そして、電源10をOFFすれば、スラリー処理装置1が停止する(ステップS8)。
【0074】
以上のように、本発明は、スラリー濃縮槽2で高濃度に濃縮された濃縮スラリーBを、スラリー排出装置7により脱水機9に送って脱水することによって、脱水機9の脱水能力を向上させ、さらに、低水分のフレーク状の脱水ケーキEを得ることができる。
【0075】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。
【0076】
例えば、スラリーAとして焼却飛灰の固体粒子を含有したものを濃縮する場合を例に挙げて説明したが、セラミック、汚泥、土石等の鉱物等の固体粒子が液中に懸濁している混濁液を濃縮する場合にも適用可能である。
なお、脱水機9は、真空ドラム式脱水機や遠心分離式脱水機等のその他の型式のものでも構わない。また、プロペラ状の攪拌翼61は、濃縮スラリーBを上方向へ流動させるものであればよく、例えば、スクリュウでも構わない。
また、レベルセンサ71は、濃縮スラリーBの濃度を計測できるものであればよく、例えば、超音波レベルセンサ等のその他のセンサであっても構わない。
【0077】
濃縮槽本体21の内底部23の傾斜角度θ1は固体粒子が内底部23上を下側に向かって流動し易い状況を実現出来ればよく、内底部23の底面に、耐摩耗性及び潤滑性に優れている超高分子樹脂フィルムや低摩擦シートを設ける事により、ゆるい傾斜角度でも良いことになる。
【符号の説明】
【0078】
1 スラリー処理装置
2 スラリー濃縮槽
3 濃縮槽本体
4 スラリー供給路
5 内筒
6 攪拌装置
7 スラリー排出装置
8 レベル制御装置
9 脱水機
21 濃縮槽本体
22 胴部
23 内底部
24 排出口
25 オーバーフロー部
26 貯溜部
61 攪拌翼
62 攪拌駆動モータ
63 回転軸
64 スクレーパ
65 搬送用翼
71 レベルセンサ
72 排出ポンプ
73 スラリー搬送管
A スラリー
B 濃縮スラリー
C 上澄み液
D 希薄スラリー
E 脱水ケーキ
θ1 傾斜角度


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリー中の固体粒子を沈降させて、前記スラリーを濃縮させた濃縮スラリーと、上澄み液とに分離するスラリー濃縮槽を備えたスラリー処理装置において、
内底部に前記濃縮スラリーを排出するための排出口を有し、上部に前記上澄み液が貯留される円筒状の胴部、及び、前記上澄み液を排出するオーバーフロー部を有する略漏斗状の濃縮槽本体と、
前記濃縮槽本体内に前記スラリーを供給するスラリー供給路と、
前記濃縮槽本体の内側に回転自在に配置された攪拌装置と、を備え、
前記攪拌装置は、前記濃縮槽本体内の上方から沈降して来る前記濃縮スラリーを上方へ流動させる複数の攪拌翼と、
前記複数の攪拌翼が設けられた回転軸と、
前記回転軸を回転させる攪拌駆動モータと、を有していることを特徴とするスラリー処理装置。
【請求項2】
前記内底部は、当該内底部上に沈下した前記固体粒子が、当該内底部上を下側に向かって流動する傾斜角度を有した逆円錐形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスラリー処理装置。
【請求項3】
前記攪拌装置は、前記濃縮槽本体の前記内底部の上方に所定間隔をあけて配置されると共に、前記回転軸に固定されて、前記攪拌駆動モータが回転することにより、前記内底部上に沈降した濃縮スラリーを掻き落とすスクレーパを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスラリー処理装置。
【請求項4】
前記内底部には、中央部の最下端部に、前記排出口が設けられた貯溜部を有し、
前記貯溜部には、前記回転軸の下端部に固定されて、前記スクレーパと同回転し、当該貯溜部内の前記濃縮スラリーを前記排出口に送り出す搬送用翼が配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のスラリー処理装置。
【請求項5】
前記濃縮槽本体には、前記内底部上に沈降した前記濃縮スラリーのスラリーレベルを検出するレベルセンサと、
前記貯溜部内の前記濃縮スラリーを吸引して下流側へ送るための排出ポンプが設置されて、前記排出口に連通したスラリー搬送管と、が備えられ、
前記排出ポンプは、前記レベルセンサで検出した前記濃縮スラリーのスラリーレベルに基づいた駆動信号によって回転されることを特徴とする請求項4に記載のスラリー処理装置。
【請求項6】
前記排出ポンプによって前記スラリー搬送管の下流側に送られた前記濃縮スラリーは、この濃縮スラリー中の水分を脱水する脱水機によって脱水処理されることを特徴とする請求項5に記載のスラリー処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−5362(P2011−5362A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148634(P2009−148634)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000221823)株式会社ティーディーイー (7)
【Fターム(参考)】