説明

スリップ・レベリング剤

本発明は、不飽和ジカルボン酸及びシロキサン単位で官能化されたフッ素化オキセタン(FOX)ポリマー単位を含む新しい改質ポリアクリラート、ならびにスリップ・レベリング剤、またへこみ防止剤としてのその多様な用途への使用に関する。したがって、本発明は、A 不飽和ジカルボン酸で官能化されたフッ素化オキセタンポリマーの少なくとも1つの単位;B 少なくとも1つの末端反応性ポリシロキサン単位;C 少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリラート単位もしくはシクロアルキル(メタ)アクリラート単位及び/又は(メタ)アクリル酸及び/又はラジカルを形成することができるビニル化合物に由来する他の単位を共重合することにより得られるコポリマーを含むことを特徴とする、スリップ・レベリング剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不飽和ジカルボン酸及びシロキサン単位で官能化されたフッ素化オキセタン(FOX)ポリマー単位を含む新しい改質ポリアクリラート、ならびにスリップ・レベリング剤、またへこみ防止剤としてのその多様な用途への使用に関する。
【0002】
数十年前から、有機改質ポリシロキサンは、コーティング及びグラフィックアート産業において、スリップ・レベリング向上剤として首尾よく使用されている。シロキサンベースのポリマーは、低表面エネルギー、高柔軟性、低毒性、及び生体適合性などの多くの望ましい特性を示している。後期には、ペルフルオロカーボン側鎖を有するポリアクリラートが導入された。フルオロコポリマーは、その熱安定性、耐化学性、低表面エネルギー、及び疎水特性のため、数多くの用途において有益である。これらの特質により、フルオロコポリマーはコーティングや塗料の用途に特に良く適合し、また液状媒質の表面張力を減少させて、基体のぬれ性及びへこみ防止特性を確保するのに効果的な界面活性添加剤として市場に良く受け入れられている。単一の分子中でフッ素化ポリマーとポリシロキサン両者の比類のない特性を合わせることにより、興味深い新しい物質が提供される可能性がある。
【0003】
ポリアクリル構造における両者(ポリシロキサン及びペルフルオロアルキル部分)の結合により、低摩擦係数、優れたスリップ性、へこみ防止性及び完全な基体のぬれ性に対するそれらの有益な効果が合わされる。同時に、これらの新規な添加剤は被覆間接着の問題を示すこともなく、また気泡の安定化をもたらすこともないだろう。
【0004】
US 6,710,127 (Byk)は、ポリジメチルシロキサン又はペルフルオロアルキルアクリラートなどのマクロモノマー単位が組み込まれているポリマー骨格分子を含む分岐ポリマーである平滑剤について記載している。
【0005】
US2004236007に対応するWO03/033603 (Ciba)は、平滑剤又はへこみ防止剤としてのポリマーの使用について記載している(前記ポリマーは、一定のフッ素化された単位を有する不飽和ジカルボン酸の一定のエステル部分の単位を含む)。好ましいコモノマーは、アルキル(メタ)アクリラート単位及び/又は(メタ)アクリル酸及び/又は他のビニル化合物を含む。WO03/033603は、末端反応性ポリシロキサンを含有するモノマー単位を含んでいない。
【0006】
国際公開公報WO2006125731 (Ciba)は、
A 不飽和ジカルボン酸のモノ−又はジペルフルオロエステルの少なくとも1つの単位;
B 少なくとも1つの末端反応性ポリシロキサン単位;
C 少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリラート単位もしくはシクロアルキル(メタ)アクリラート単位及び/又は(メタ)アクリル酸及び/又はラジカルを形成することができるビニル化合物に由来する他の単位を共重合することにより得られるコポリマーを含むことを特徴とする、スリップ・レベリング剤に関する。
【0007】
WO01/48051 (Omnova)は、官能基が(メタ)アクリラート、アリル、メラミン、アミン、アセチルアセタート、エポキシ、シリル又はイソシアナート基を含む、モノ官能化ポリフルオロオキセタンについて記載している。
【0008】
US5,650,483 (Aerojet-General Corp.)は、フッ素化アルコキシメチレン側鎖を有するモノ置換されたオキセタンモノマーから誘導した、新規なフッ素化ポリマー及びプレポリマー、ならびにこれらの組成物をつくる方法を対象としている。
【0009】
良好なへこみ防止性能、低摩擦係数、良好な被覆間接着などの向上した表面特性を有し、加えて良好な気泡制御を示す、改善したスリップ・レベリング剤に対する必要性が依然として存在している。
【0010】
不飽和ジカルボン酸を有する官能化されたフッ素化オキセタン(FOX)ポリマー単位を含み、更にモノエチレン性不飽和ポリジメチルシロキサン単位を含む改質ポリアクリラートは非常に好適なスリップ・レベリング剤であることが現在見出されている。WO03/033603に記載されるように、不飽和ジカルボン酸のペルフルオロエステル単位を含有する平滑剤と比較して、改善したスリップ特性が得られる。
【0011】
したがって、本発明は、
A 不飽和ジカルボン酸で官能化されたフッ素化オキセタンポリマーの少なくとも1つの単位;
B 少なくとも1つの末端反応性ポリシロキサン単位;
C 少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリラート単位もしくはシクロアルキル(メタ)アクリラート単位及び/又は(メタ)アクリル酸及び/又はラジカルを形成することができるビニル化合物に由来する他の単位を共重合することにより得られるコポリマーを含むことを特徴とする、スリップ・レベリング剤に関する。
【0012】
利点:
本発明のスリップ・レベリング剤の使用により、低摩擦性、優れたスリップ性、基体の完全なぬれ性などの長所がもたらされる。それにより、へこみ及びピンホールの形成が防がれ、オレンジピールのない滑らか及び/又は平らで平滑な塗膜が提供され、乾燥皮膜の美しさが改善される。また、乾燥段階の間の縁部のめくれ、エアードラフト感度、フィッシュアイ及び/又は他の液体樹脂溶液の乾き作用を避けることができるか、少なくとも著しく低減することが可能である。
【0013】
加えて、そのようなスリップ・レベリング剤は、低気泡特性を示すことが見出されている。これは全て、乾燥皮膜の過剤被覆性(over coatability)を失うことなく達成できる。
【0014】
定義
不飽和ジカルボン酸で官能化されたフッ素化オキセタンポリマーは、モノ−又はジエステルであり、式I:
【0015】
【化1】

【0016】
[式中、
は、構造II:
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、RはC−C−アルキルであり、Rは1〜20個のC−原子を有する直鎖又は分岐鎖状過フッ素化アルキルもしくはイソアルキル基であり、nは1〜3であり、xは2〜20であり;Zは水素又はCFCH−もしくはHO−CO−CR=CR−CO−、又はR−O−CO−CR=CR−CO−(ここで、Rは上記と同義である)である)を有するフッ素化オキセタンプレポリマーから誘導される単位であり;
は、水素又はRであり;
及びRは、独立して水素又はC−C−アルキル又はフェニルである]により表される。
【0019】
好ましくは、R及びRは水素であり、Rはメチル又はエチルである。
【0020】
フッ素化オキセタンプレポリマー及びそれらの調製は、US 5,650,483に記載されており、あるいはOmnova Solutions Inc.から、Polyfoxという商標名で市販されている。
【0021】
好ましくは、Rfは−CF、−CF−CF、−CF−CF−CFであり、より好ましくは−CF、−CF−CFである。
【0022】
好ましくは、nは1であり、xは6〜20である。
【0023】
コポリマーのフッ素化単位の少なくとも50%、好ましくは70〜100%が式Iにより表されるコポリマーを使用する場合、非常に良好な結果が得られている。
【0024】
本発明の好ましい実施態様においては、式Iの化合物の少なくとも50%、好ましくは90〜100%がモノエステルである(R=H)。高レベルのモノエステルを有するコポリマーを使用する利点は、そのようなエステルを製造する容易さと関連する。別の利点は、残存するCOH基の中和による効率的な方法でポリマーを水溶性にすることができるという事実である。
【0025】
好適な不飽和ジカルボン酸モノマーには、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、メチルマレイン酸無水物、フマル酸、メチルフマル酸及びアルカリとその金属塩が含まれる。マレイン酸が好ましい。
【0026】
末端反応性ポリシロキサン化合物は少なくとも1個の重合可能な不飽和基、例えばアクリルオキシ基、メタクリルオキシ基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニル基、マレイン酸塩基又はアクリルアミド基を有している。
【0027】
ポリジメチルシロキサン化合物は、利用の容易さの点で好ましい。
【0028】
末端反応性ポリシロキサンを既知の方法により調製してもよいし、市販により入手可能である。市販の製品の例として、 Silaplane FM-0711、FM-0721、FM-0725、FM-0511、FM-0521、FM-0525、TM-0701、TMO701T (Chisso Corp.製)、SLM 446008-15、SLM 446008-50、SLM 446008-65、SLM 446014-15、SLM 446014-65 (Wacker Chemie GmbH製)などが挙げられる。
【0029】
反応性ポリシロキサンを調製するために、モノ−OH官能性シリコン化合物、例えばSilaplane FM-0411、FM-0421、FM-0425、FM-D411、FM-D421、FM-D425、FM-DA11、FM-DA21、FM-DA25 (Chisso Corp.製)という商標名で市販されているものを、上記と同義の重合可能不飽和基を有する化合物、例えば(メタ)塩化アクリロイル、塩化アリルと反応させるか;又はそれらを(メタ)アクリル酸又はマレイン酸でエステル化することにより反応させることができる。
【0030】
モノ−OH官能性基の例は、3−(2'−ヒドロキシエトキシ)プロピル、3−(2'−エチル−2'−ヒドロキシメチル−3−ヒドロキシ)プロピル又は3−(2'−ヒドロキシ−3'−イソプロピルアミノ)プロピルである。
【0031】
アルキル(メタ)アクリラート又はシクロアルキル(メタ)アクリラート単位及び/又は(メタ)アクリル酸及び/又はラジカルを形成することができるビニル化合物に由来する他の単位は、例えば、スチレン、n−プロピルメタクリラート、2−メチルシクロヘキシルメタクリラート、エチレングリコールモノ−メタクリラート、tert−ブチルアクリラート、イソ−ブチルメタクリラート、イソブチルアクリラート、o−クレシルメタクリラート、t−ブチルメタクリラート、n−ブチルアクリラート、n−ブチルメタクリラート、メチルアクリラート、メチルメタクリラート、エチルアクリラート、プロピルアクリラート、イソ−プロピルメタクリラート、3−メチル−1−ペンチルアクリラート、オクチルアクリラート、テトラデシルアクリラート、s−ブチルアクリラート、s−ブチルメタクリラート、2−エチルヘキシルアクリラート、2−エチルヘキシルメタクリラート、2−メトキシアクリル酸エチル、フェニルアクリラート、シクロヘキシルアクリラート、シクロヘキシルメタクリラート、アクリル酸、メタクリル酸1,3−ブタジエン、イソプレン、ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルイミダゾール及びビニルピリジン、p−メチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、m−エチルスチレン、p−ブチルスチレン、o−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、2,6−ジメトキシスチレン、イソプロピルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ビニル2−メトキシエチルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、n−オクタデシルビニルエーテル、アルファ−メチルビニルエチルエーテル、シクロヘキサノールビニルエーテル、ベンジルアルコールビニルエーテル、ビニルフェニルエーテル、酢酸ビニル、ビニルメトキシアセタート、ビニルイソブチラート、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニル、フタル酸ビニルオクチルである。特に好ましいのは、アルキル(メタ)アクリラート又はシクロアルキル(メタ)アクリラート、例えばn−プロピル(メタ)アクリラート、イソ−プロピル(メタ)アクリラート、n−ブチル(メタ)アクリラート、sec−ブチル(メタ)アクリラート、tert−ブチル(メタ)アクリラート、イソ−ブチル(メタ)アクリラート、エチルヘキシル(メタ)アクリラート、シクロヘキシル(メタ)アクリラート)及び(メタ)アクリル酸である。
【0032】
本発明のスリップ・レベリング剤は、例えば、ランダムコポリマー、交互コポリマー又はブロックコポリマーであってもよい。好ましくは、該コ−ポリマーはランダムコポリマーである。
【0033】
好ましいスリップ・レベリング剤は、
A マレイン酸で官能化されたフッ素化オキセタンポリマーの少なくとも1つの単位;
B モノ−(メタ)アクリル酸官能性ポリジメチルシロキサン又はモノ−マレイン酸官能性ポリジメチルシロキサン;及び;
C アルキル(メタ)アクリラート単位、シクロアルキル(メタ)アクリラート単位又はスチレン単位、特にアルキル(メタ)アクリラート単位又はシクロアルキル(メタ)アクリラート単位を共重合することにより得られるコポリマーを含むことを特徴とする。
【0034】
本発明のスリップ・レベリング剤は、例えば、コーティング、インク、及びプラスチックなどの多様な用途に使用することが可能である。例として挙げられるものは、水溶液系(例えば、エマルションラッカー(ポリウレタンベースのラッカーなど)、アルキド、アクリル、ポリエステル−メラミン)、水希釈系(2K−ポリウレタン、アルキド、アクリル、エポキシ、ビニルコポリマー)、(有機)溶媒ベース系(例えば、ポリウレタンベース、焼付アルキド/メラミンもしくはポリエステル/メラミンベース、エポキシベース、自然乾燥アルキド、ニトロセルロース、CAB、不飽和ポリエステル、アクリル、シリコン樹脂、UV/EB硬化性樹脂、ビニルコポリマー、塩化ゴム)及びプラスチック化合物(熱及び周囲硬化性不飽和ポリエステル、エポキシ、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル)である。
【0035】
本発明のスリップ・レベリング剤は、広範な濃度範囲内の製品(例えば、上記のような)中に存在することが可能で、その範囲について、当業者は特定の用途に対して好適な濃度を決定することができるだろう。
【0036】
スリップ・レベリング剤を、水性又は有機溶媒ベース系において使用する場合、
A 不飽和ジカルボン酸で官能化された、0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜2.5重量%、より好ましくは0.4〜1.5重量%のフッ素化オキセタンポリマー;
B 1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%の末端反応性ポリシロキサン化合物;
C 50〜99重量%のアルキル(メタ)アクリラート単位及び/又は(メタ)アクリル酸及び/又はラジカルを形成することができるビニル化合物に由来する他の単位を含む製品を用いて、非常に良好な結果を達成した。
【0037】
本発明のコポリマー又は本発明に従って使用されるコポリマーは、好ましくは、1,000〜50,000g/molの範囲、より好ましくは2,000〜20,000g/molの範囲、例えば2,500〜4,000g/molの範囲の数平均分子量を有する。
【0038】
1〜4、例えば、1.1〜2の範囲の多分散性(M/M)を有するコポリマーを用いて、非常に良好な結果を達成した。
【0039】
スリップ・レベリング剤は、例えばアニオン重合、原子移動機構、ニトロキシド媒介技術又は他の制御重合技術により得られたリビングコポリマーであってもよい。リビングコポリマーの長所は、より狭い分子量分布と相まった、個々に適合させたその分子構造であり、それがより小さい溶融範囲とより低い粘度をもたらす。
【0040】
有機溶媒又は水中において溶解するか、又は酸性部分の中和の後で水溶性になる、液体又は固体形態(例えば、パウダー)のコポリマーを用いて、非常に良好な結果を達成した。そのような系は、水ベース系に特に適している。酸性部分を中和するための好適な中和剤は、例えば、ジメチルエタノールアミン、アンモニア、他の第一級、第二級又は第三級アミン又は水酸化アルカリである。揮発性アミン中和剤を使用することの利点は、塗膜の乾燥段階の間、アミン中和剤が蒸発して、より多くの耐水性コポリマーを後に残すことである。
【0041】
原理上、本発明のコポリマーは、熱ラジカル、制御ラジカル、アニオン、カチオン重合技術などのあらゆる方法で調製可能であり、それについて当業者はそれらをどのように使用するかが分かるだろう。
【0042】
使用されるモノマーは通常市販しており、及び/又は当業者になじみ深い方法に従って容易に調製することも可能である。
【0043】
本発明の平滑剤を調製するために、モノマーCを、例えば熱ランダム溶液重合を使用して、又は制御重合を使用して、モノマーA及びBで共重合する。
【0044】
本発明は更に、本発明のスリップ・レベリング剤を含む組成物に関する。
【0045】
そのような組成物は、例えば、1種以上の顔料を更に含み、例えばフタロシアニン、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化第一鉄、アルミノケイ酸塩、キナクリドン、アントラキノン、ジケトピロロ−ピロール、ベンズイミダゾロン及びイソインドリノン、1種以上の増量剤、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化ケイ素、アルミニウムトリヒドロキシド、有機繊維、ガラス及び場合により1種以上の分散剤、例えば、ポリウレタン分散剤、ポリエステル分散剤、ポリアクリラート分散剤、ポリエーテル誘導体、脂肪酸誘導体、硫酸アルキルからなる群より選択される。
【0046】
本発明のスリップ・レベリング剤は、0〜85重量%、好ましくは3〜70重量%の顔料及び/又は増量剤、0.1〜5重量%、好ましくは0.2〜2重量%の本発明のコポリマー、10〜95重量%、好ましくは25〜40重量%の樹脂、0〜90重量%、好ましくは20〜50重量%の水及び/又は非水液体ならびに0〜15重量%、好ましくは1〜5重量%の分散剤を含む分散体において、非常に好適に使用することが可能である。
【0047】
ここで、本発明を幾つかの実施例により説明する。
【0048】
実験:
1.末端反応性過フッ素化オキセタン単位(中間体)の調製
中間体A:
窒素雰囲気下で、無水マレイン酸(7g、2等量)、Polyfox 636(M〜1100g/mol、40g、1等量)、キシレン(5g)及びTinstab BL-277(触媒)を周囲温度で反応器内に置き、40℃に20分間加熱した。混合物を110℃に加熱した。3時間後、中間体Aを、無色の油状物として得た。
【0049】
同様にして、中間体Bを調製した:
【0050】
中間体B:
無水マレイン酸5.52g、Polyfox 656 40.0g(M〜1400g/mol)、無色の油状物。
【0051】
中間体C:
窒素雰囲気下で、無水マレイン酸(2.2g、1.1等量)、Polyfox AT 1090(M〜1950g/mol、42g、1等量)、メトキシプロピルアセタート(5g)及びTinstab BL-277(触媒)を周囲温度で反応器内に置き、100℃に加熱した。4時間後、混合物を冷却し、メトキシプロピルアセタート40gを加えた。中間体Cを、黄色を帯びた液体として得た。
【0052】
市販のPolyfox材料:
Polyfox 636:約1100g/molの平均Mを有する、Omnovaに由来するフッ素界面活性剤ジオール
【0053】
【化3】

【0054】
Polyfox 656:約1400g/molの平均Mを有する、Omnovaに由来するフッ素界面活性剤ジオール
【0055】
【化4】

【0056】
Polyfox AT 1090 約1950g/molの平均Mを有する、Omnovaに由来するフッ素界面活性剤モノアルコール
【0057】
【化5】

【0058】
2.スリップ・レベリング剤の調製
WO03/033603の比較例
キシレン(29,0g)を、窒素雰囲気下で反応器内に置き、加熱還流した(140℃)。n−ブチルアクリラート53,33g、i−ブチルメタクリラート14,79g、Zonyl Ba-L-マレイン酸塩0.54g、ジ−tert−ブチルペルオキシド1,37gからなるプレミックスを計量して、3時間かけて供給した。プレミックスの添加後、反応を140℃で3時間実施した。固形分を、キシレンを加えて70%に調整して、無色の清澄な液体を得た。
【0059】
Zonyl BA-Lは:Rf=C<4%、C1350+/−3%、C1729+/−2%、C102111+/−2%である直鎖状フルオロアルコールRCHCHOHとフッ素化化合物≧C12256%未満の混合物である。混合物の平均MWは443g/molであり;混合物はDuPontに由来する。
【0060】
本発明の実施例
キシレン(29,0g)を、窒素雰囲気下で反応器内に置き、加熱還流した(140℃)。n−ブチルアクリラート53,33g、i−ブチルメタクリラート14,79g、中間体A0.56g、Silaplane FM-0721 1.40g及びジ−tert−ブチルペルオキシド1,37gからなるプレミックスを計量して、3時間かけて供給した。プレミックスの添加後、反応を140℃で3時間実施した。固形分を、キシレンを加えて70%に調整して、無色の清澄な液体を得た。
【0061】
【表1】

【0062】
Silaplane FM-0721は:CHISSO CORPORATIONに由来する、約5.000g/molの平均Mを有するモノメタクリル酸官能性ポリシロキサンである。
【0063】
適用結果:
へこみ防止性能
2パックPUにおけるへこみ防止性能
1)2パックPUの剤形
【0064】
【表2】

【0065】
品目1〜3を合わせ、skandex振とう機中で5分間振とうする。振とう後、品目4を加え、均一な混合物が得られるまでスパチュラで攪拌して混合する。
【0066】
2)シリコン改質アクリル系スリップ・レベリング剤を試験するための剤形
【0067】
【表3】

【0068】
均一な混合物が得られるまで、品目1〜3をスパチュラで攪拌して混合する。
【0069】
3)適用、サンプル1〜5について、ドローダウン(75μm)を調製した。
【0070】
4)結果、表3;1=へこみ無し;8=多くのへこみ
【0071】
【表4】

【0072】
消泡安定性及び摩擦係数
焼付エナメルにおける性能
1)焼付エナメルの剤形
【0073】
【表5】

【0074】
2)シリコン改質アクリル系スリップ・レベリング剤を試験するための剤形
【0075】
【表6】

【0076】
品目1と2を混合し、skandex振とう機中で30分間振とうした。
【0077】
3)結果 気泡の形成
【0078】
【表7】

【0079】
4)ドローダウンの調製
全ての気泡が消失すると、75μmのドローダウンがプラスチックフィルム上につくられる。ドローダウンを10分間水で洗い流す。
ベークアウト時間 30分 135℃で。
【0080】
5)結果 摩擦係数(COF)
【0081】
【表8】

【0082】
動的摩擦を20個の異なる点で測定した。
【0083】
【表9】

【0084】
6)表面張力の測定
表面張力をペンダントドロップ法で測定する。
【0085】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
A 不飽和ジカルボン酸で官能化されたフッ素化オキセタンポリマーの少なくとも1つの単位;
B 少なくとも1つの末端反応性ポリシロキサン単位;
C 少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリラート単位もしくはシクロアルキル(メタ)アクリラート単位及び/又は(メタ)アクリル酸及び/又はラジカルを形成することができるビニル化合物に由来する他の単位
を共重合することにより得られるコポリマーを含むことを特徴とする、スリップ・レベリング剤。
【請求項2】
A 不飽和ジカルボン酸で官能化された、0.1〜10重量%のフッ素化オキセタンポリマー;
B 1〜20重量%の末端反応性ポリシロキサン化合物;
C 50〜99重量%のアルキル(メタ)アクリラート単位及び/又は(メタ)アクリル酸及び/又はラジカルを形成することができるビニル化合物に由来する他の単位
を共重合することにより得られるコポリマーを含むことを特徴とする、請求項1に記載のスリップ・レベリング剤。
【請求項3】
Aが、式I:
【化6】


[式中、
は、構造II:
【化7】


(式中、RはC−C−アルキルであり、Rは1〜20個のC−原子を有する直鎖又は分岐鎖状過フッ素化アルキルもしくはイソアルキル基であり、nは1〜3であり、xは2〜20であり;Zは水素又はCFCH−もしくはHO−CO−CR=CR−CO−、又はR−O−CO−CR=CR−CO−(ここで、Rは上記と同義である)である)を有するフッ素化オキセタンプレポリマーから誘導される単位であり;
は、水素又はRであり;
及びRは、独立して水素又はC−C−アルキル又はフェニルである]により表される、請求項1又は2に記載のスリップ・レベリング剤。
【請求項4】
Rfが−CF又は−CF−CFであり、nが1であり、xが6〜20であり、R及びRが水素であり、Rがメチル又はエチルである、請求項3に記載のスリップ・レベリング剤。
【請求項5】
フッ素化モノマー単位Aの少なくとも50%、好ましくは90〜100%がモノエステルである(R=H)、請求項1〜4のいずれか1項に記載のスリップ・レベリング剤。
【請求項6】
A マレイン酸で官能化されたフッ素化オキセタンポリマーの少なくとも1つの単位;
B モノ−(メタ)アクリル酸官能性ポリジメチルシロキサン又はモノ−マレイン酸官能性ポリジメチルシロキサン;及び
C アルキル(メタ)アクリラート単位、シクロアルキル(メタ)アクリラート単位又はスチレン単位、特にアルキル(メタ)アクリラート単位又はシクロアルキル(メタ)アクリラート単位
を重合することにより得られる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のスリップ・レベリング剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のスリップ・レベリング剤、顔料及び場合により分散剤を含む、コーティング、印刷用インク又はプラスチック化合物。
【請求項8】
0〜85重量%の顔料及び/又は増量剤、0.1〜5重量%の請求項1〜6のいずれかに記載のコポリマー、10〜95重量%の樹脂、0〜90重量%の水及び/又は非水液体ならびに0〜15重量%の分散剤を含む分散体。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の通りに得られるコポリマーのスリップ・レベリング剤としての使用。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の通りに得られるコポリマーの、コーティング、印刷用インク及びプラスチック用のスリップ・レベリング剤としての使用。

【公表番号】特表2009−537644(P2009−537644A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510408(P2009−510408)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【国際出願番号】PCT/EP2007/054417
【国際公開番号】WO2007/134959
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(508120547)チバ ホールディング インコーポレーテッド (81)
【氏名又は名称原語表記】CIBA HOLDING INC.
【Fターム(参考)】