説明

スルファジアジン銀およびキトサンを使用して製造された薬用クリーム剤ならびにそれを製造する方法

本発明は、皮膚再生と共に細菌性皮膚感染を治療するための組成物を対象とする。より詳細には、本発明は、バイオポリマーおよび抗菌性有効成分を含む医薬クリーム剤に関する。本発明は、a)キトサンの形態のバイオポリマー、b)細菌性皮膚感染を治療する際に使用されるスルファジアジン銀の形態の医薬品有効成分(API)組成物、c)一次および二次乳化剤、ワックス様物質、補助溶剤、酸、防腐剤、緩衝剤、抗酸化剤、キレート剤ならびに保湿剤を含有するクリーム基剤、ならびにd)水を含有する、皮膚再生と共に真菌皮膚感染を治療するための組成物を開示している。ヒトの皮膚を上記で特定された組成物と接触させることを含む、ヒトの皮膚上でアレルギーおよび掻痒および創傷を伴う細菌性皮膚感染を治療する際に使用するためのクリーム基剤に有効成分、即ちキトサンおよびスルファジアジン銀の形態の抗菌薬が組み込まれている。

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【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚を回復させる共に細菌性皮膚感染を治療するための組成物に関する。より詳細には、本発明は、バイオポリマーおよびスルファジアジン銀の形態の抗菌性有効成分を含む医薬クリーム剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚障害は、細菌形態から生じるものまたは真菌から生じるものとに大まかに分類することができる。抗真菌性または抗菌性の組成物は従来、ローション剤、クリーム剤または軟膏剤として適用されている。さらに多くの場合に、その皮膚状態が細菌性病原体によるものか、または真菌によるものかを確認することは困難である。
【0003】
皮膚障害を治療する手法の1つは、試行錯誤によって排除することによる。抗菌性または抗真菌性の組成物を順番に適用し、応答を監視し、治療を変更する。この手法の大きな欠点は、治療期間の間、1日何回も治療を適用する必要があることである。このことは大いに不便であり、また、特に発展途上国の人口の大部分について費用対効果がない。
【0004】
細菌または真菌が原因である皮膚障害を治療するために利用可能な治療は複数存在する。典型的に、そのような組成物は、ステロイド、抗菌薬または抗真菌薬(またはこれらの固定用量の組合せ)を使用し、これらの薬学的有効成分に焦点を合わせている。そのような製剤の組成はその物理的/化学的/生体放出プロファイルを増強するようなものである。
【0005】
炎症および細菌による攻撃が原因である多くの皮膚障害は、痒みおよびそれに続く引っ掻き行動をもたらし、次いで、他の原因の中でも、その引っ掻き行動は、重症の併発二次感染をもたらし得る。従来利用可能な治療は、皮膚の治癒または回復には焦点を合わせておらず、通常は、これら2つの側面は、自然治癒に任されている。
【0006】
傷ついた皮膚状態(切断、創傷、感染、炎症、擦傷など)に関して言及される治癒という用語は、細菌または真菌などの元々の原因の予防、制御、除去に関するだけでなく、感染前の状態への皮膚の回復にも関する。
【0007】
皮膚治療の現行の手法は、a.治癒およびb.罹患前の状態への皮膚の回復の2つの段階に大まかに分けることができる。治癒の部分は、障害の根本的な原因を可能な限り除去することを含む。これは、抗菌薬もしくは抗真菌薬の適切な治療を介して感染の原因である細菌もしくは真菌を除去すること、またはステロイド治療を介して炎症を軽減することであってよい。この治療を進めている間、進行中の傷ついた皮膚状態は、かなり深刻な性質を持ち得る二次感染に感染しやすいままである。引っ掻かれたか、または負傷した皮膚の場合には、迅速に血液凝固が生じることが重要である。それは、血液凝固は二次感染の機会を減らすからである。クリーム剤、ローション剤、軟膏剤を介して投与されるそのような治療の中心は、医薬品有効成分の作用にある。クリーム基剤または軟膏基剤は単に、APIを障害の部位に運ぶ担体とみなされている。
【0008】
しかし、皮膚をその障害前の状態にまで回復させるという側面は、ほぼ完全に自然に任されている。したがって、既存の皮膚治療手法の重大な欠点の1つは、遅い血液凝固および創傷治癒プロセスによって、二次感染の危険を冒していることである。
【0009】
さらに、先行技術の研究から、皮膚障害を局所治療するために使用される既存の処方箋皮膚用製品に欠けているいくつかの側面。これは、クリーム基剤マトリックスまたは軟膏基剤がいずれの有望な治療的利点に関しても見過ごされてきたという事実から明らかである。詳細には、利用可能な先行技術のいずれも、
局所皮膚製剤は、主なAPIの治療結果が増強されるような、主なAPIの活性を超える皮膚治癒または再生をもたらし得ること、
生物学的に活性なポリマー(いわゆるバイオポリマー)の添加は、複雑なプロセスであり、その際、ドラッグデザイン段階で既に、治療結果を増強および補完するように適正なバイオポリマーまたは自然に相互作用する製剤添加剤またはプロセスパラメーターが十分に考え抜かれ、最適化されていない場合には、製剤の安定性が損なわれ得るであろうこと、
皮膚用医薬(dermaceutical)クリーム剤の単回投与形式でAPIの機能性安定性を維持しつつ、機能性の生体活性な添加剤ポリマーをクリームマトリックスに組み込むためには、クリームマトリックスの物理的安定性に特異的な問題を解決することが必要であること
を示唆していない。
【0010】
一部の既存の特許を一見することによって、上記の点が説明される。
【0011】
米国特許第4803066号は、細菌および/または真菌感染を治療する際に局所塗布するのに適した医薬組成物を開示している。組成物は、銀化合物およびアゾール誘導体の相乗的であると思われる混合物を、それらについて薬学的に許容できる担体と共に含む。その組成物は、火傷、潰瘍および他の皮膚病変、全身皮膚感染を治療する際に、また、粘膜の感染を治療する際に局所的に塗布することができると主張されている。その出願による好ましい組成物は、スルファジアジン銀およびクロトリマゾールまたはメトロニダゾールを含有した。その特許文書はまた、その組成物を軟膏剤、ゲル剤、膣坐剤、錠剤などとして適用できることを示唆している。米国特許第4803066号の出願時点で、銀イオンの抗微生物作用は周知であった。しかし、一部の専門家は、耐性生物が生じ得るであろうと、かつ銀塩と共に第2の抗微生物薬を包含するのが有利であろうと考えていた。米国特許第4803066号に開示されている製品の発明者らは、医薬組成物中に銀塩と共にアゾール誘導体を包含させることによって、いくつかの重要な病原性生物に対して相乗的な抗菌性および抗真菌性作用が達成されることを発見した。アゾール誘導体を使用すると、組成物を局所真菌感染に対して、さらに局所細菌感染に対して使用することができるという追加の利点が得られる。
【0012】
米国特許第4460369号は、創傷被覆材として適した、接着剤コーティングされた液体不浸透性透湿性薄層ポリマーシートを開示しており、これは、接着層全体に散在している抗菌薬、好ましくはスルファジアジン銀などの固体を、創傷および周囲皮膚面全体に均一な抗菌特性をもたらすように通常は15重量%までの量で有する。これらは、創傷または手術部位を空気伝染細菌から遠ざけるのには有効であるが、その部位に、またはより一般的には周囲の皮膚上に存在するかもしれない何らかの細菌については問題が残っていると、包帯に伴う問題が記載されている。包帯によってもたらされる密閉条件において、そのような細菌は著しく増殖して、感染の問題をもたらし得る。このことを、創傷または手術部位上およびその周囲に殺菌または静菌性クリーム剤または同様の製剤を豊富に塗布することによって克服することが提案されている。しかし、その後、フィルムをこの湿潤なクリームベース層の上に適用した場合、フィルムは、体の動きに伴って波打ち、一般的には接着しないので、この手順には欠点がある。
【0013】
米国特許第4460369号は、静菌または殺菌物質をシートの接着層に組み入れることができるという認識をベースとしている。
【0014】
したがって、米国特許第4460360号は、液体不浸透性であるが、高い透湿性を有する接着剤コーティングされたシート材料を開示しており、これは、創傷もしくは火傷包帯剤または手術用ドレープまたは類似の創傷被覆材として適しているようであり、接着剤コーティングには、その全体に、創傷および周囲被覆皮膚面の細菌を死滅させるのに十分な量の抗菌物質が散在している。
【0015】
接着性を保ち、波打ちを回避する他にも、この発明は2つの利点を有するようである。第一には、接着剤全体に散在している抗菌物質は、創傷上およびその周囲上の両方に単位面積当たり均一な既知の量で存在する。第二には、追加の物質が必要ないので、シートを正確に皮膚上に設置することができる。既に述べた通り、これは、皮膚上に平らに乗っていて、結果として、均一な透湿性および細菌バリア特性を伴う。また、波打ちが回避されることによって、保護性および治癒性の創傷浸出液を火傷上に保持することが可能となる。
【0016】
スルファジアジン銀が当産業で使用されている方法の合理的な状況を示すには、これらのサンプルケースで十分である。
【0017】
上記に挙げた特許出願のいずれも、
主なAPIのための単なる担体としてではなく、クリーム剤の機能性要素としてクリーム基剤マトリックスを使用すること、
スルファジアジン銀と共に、機能性添加剤として既知のバイオポリマーを使用すること、
従来の単一薬物治療においてそうであるように、順次ではなく、同時にマイクロフィルムの形成、血液凝固、表皮成長の支持、微生物静電固定化が行われるので、非常に優れた治癒作用が得られること
クリームマトリックス中で使用されるAPIを補完するので、クリーム剤の医薬的特性全体が改善されること
を一緒に教示または示唆してはいない。
【0018】
したがって、クリーム基剤中で提供され、そのクリーム基剤が、主なAPIによってもたらされる治療的価値を補完する治療的価値をもたらし、かつ単なる担体または送達機構としての目的以上の目的に役立つ単回投与用のAPI局所治療が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第4803066号
【特許文献2】米国特許第4460369号
【特許文献3】米国特許第4460360号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、細菌感染に対する有効な治療を提供し、また、皮膚の治癒および回復の積極的な助けとなるであろう単回投与用のスルファジアジン銀局所治療製剤を提供することが必要とされている。
【0021】
本発明のさらなる対象は、
主なAPIの治療結果が増強されるような、スルファジアジン銀の活性を超える皮膚治癒または回復をもたらすことができ、
適正なバイオポリマーが選択されないと損なわれ得るであろう製剤の安定性を損なうことなく、生物学的に活性なポリマー(いわゆるバイオポリマー)を含有し、
単回投与の形式でAPIの機能的安定性を維持しつつ、機能的に生体活性な添加剤ポリマーをクリームマトリックスに組み込んでいる
局所皮膚治療製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、
a)キトサンの形態のバイオポリマー、
b)細菌性皮膚感染を治療する際に使用される医薬品有効成分(API)スルファジアジン銀、
c)一次および二次乳化剤、ワックス様物質、補助溶剤、酸、防腐剤、緩衝剤、抗酸化剤、キレート剤ならびに保湿剤を含有するクリーム基剤、
d)水
を含有する皮膚を回復すると共に細菌性皮膚感染を治療するための組成物を対象としている。
【0023】
ヒトの皮膚を上記で特定した組成物と接触させることを含む、ヒトの皮膚のアレルギーおよび掻痒および創傷を伴う細菌性皮膚感染を治療する際に使用するために、クリーム基剤に有効成分、即ちキトサンおよびスルファジアジン銀を組み込む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】キトサンをカルボマーなどの不適合性の添加剤と共に含有するクリーム剤の不均一な性質を示す写真である。
【図2】キトサンを使用してのフィルム形成を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
作業例の場合または別段に示されている場合を除いて、成分の量を表す数は全て、いずれの場合にも、「約」という用語によって修飾されていると理解される。
【0026】
本発明は、処方箋医薬品の分野における局所皮膚治療のための単回投与用スルファジアジン銀製剤を提供する。処方箋医薬はその使用において、いわゆる美容医薬品(cosmeceuticals)と比較して全く別のものである。美容医薬品は、多かれ少なかれ無傷の皮膚または重症の障害に罹患していない皮膚の美化または改善を目的としている。他方で、処方箋皮膚製剤は、感染および創傷から生じた重症の皮膚障害を治療することを目的としている。
【0027】
先行技術の調査から、処方箋医薬の分野における既存の局所治療製剤に欠けているいくつかの側面が明らかである。先行技術は、
局所皮膚製剤は、主なAPIの治療結果が増強されるような、主なAPIの活性を超える皮膚治癒または再生をもたらし得ること、
生物学的に活性なポリマー(いわゆるバイオポリマー)の添加は、複雑なプロセスであり、その際、適正なバイオポリマーが選択されていない場合には、製剤の安定性が損なわれ得るであろうこと、
皮膚用医薬クリーム剤の単回投与形式でAPIの機能的安定性を維持しつつ、機能的に生体活性な添加剤ポリマーをクリームマトリックスに組み込むことは、クリームマトリックスの物理的安定性に特異的な問題を解決することを必要とすること
を教示または示唆していない。
【0028】
本発明で使用され得る有効化合物スルファジアジン銀は、細菌感染の治療分野において周知であり、ヒト皮膚を上で特定した組成物と接触させること含む、創傷を治療し、ヒト皮膚を回復させるためのバイオポリマーは周知である。
【0029】
使用することができる適切なバイオポリマーの例には、これらに限られないが、キトサンなどが包含される。
【0030】
使用することができる適切な局所抗菌薬の例には、これらに限られないが、フシジン酸ナトリウム、ムピロシンカルシウム、ゲンタマイシン、ネオマイシン、スルファジアジン銀、シプロフロキサシン、硫酸フラミセチン、キニドクロル(Quinidochlor)、ポビドンヨード、シソマイシン、ニトロフラルなどが包含される。
【0031】
この有効化合物スルファジアジン銀は、この化合物を使用する医薬組成物において使用するためには基剤成分を必要とする。それというのも、この化合物は、それ自体では、その刺激の強さのために、ヒトの皮膚に直接には置くことができないためである。
【0032】
基剤成分は通常、一次および二次乳化剤、ワックス様物質、補助溶剤、酸、防腐剤、緩衝剤、抗酸化剤、キレート剤、保湿剤などを含有する。
【0033】
キトサン
キトサンは、無作為に分布しているβ−(1−4)−結合型D−グルコサミン(脱アセチル化単位)およびN−アセチル−D−グルコサミン(アセチル化単位)から構成される直鎖多糖である。これは、農業および園芸、水処理、化学工業、医薬ならびに生物医学においていくつかの商業用途を有することが公知である。
【0034】
その公知の特性には、血液凝固の促進が包含される。しかし、抗菌薬または抗真菌薬などの医薬品有効成分と一緒の場合のキトサンの挙動は、注意して扱う必要があることは、当業者に知られていない。
【0035】
キトサンは、フィルム形成、粘膜接着および粘度上昇特性を有することが公知であり、錠剤製剤に結合剤および崩壊剤として使用されている。
【0036】
キトサンは一般に、大気/環境から水分を吸収し、吸収される量は、当初の含水率、環境の温度および相対湿度に左右される。
【0037】
キトサンは、非毒性および非刺激性物質とみなされている。キトサンは、健康な皮膚および感染した皮膚の両方と生体適合性であり、エビ、イカおよびカニに由来するために、生分解性であることが判明している。
【0038】
その独特な物理的特性によって、キトサンは、創傷治癒および創傷回復を促進する。これは、正に荷電していて、酸性から中性の溶液に可溶である。キトサンは、生体付着性で、粘膜などの負に荷電している表面に容易に結合する。キトサンは、上皮表面を通過しての極性薬物の輸送を増大させる。キトサンの特性によって、血液は迅速に凝固することができ、最近では、包帯および他の止血薬における使用に関して米国において承認を受けている。
【0039】
キトサンは、非アレルギー性であり、天然の抗菌特性を有し、このことがその使用をさらに支持している。マイクロフィルム形成性生体材料として、キトサンは、創傷の広さを縮小するのに役立ち、その部位での酸素透過性を制御し、創傷分泌物を吸収し、組織酵素によって分解されるが、これらのことは、より早い速度での治癒に非常に必要とされている。これはまた、鎮静作用を与えることによって、痒みを軽減する。これはまた、保湿剤のように作用する。これはまた、日常的な小さな切傷および創傷、火傷、ケロイド、糖尿病性潰瘍および静脈性潰瘍の治療において有用である。本発明で使用されるキトサンは、1kdalから5000kdalの範囲の様々な分子量に該当する。
【0040】
キトサンは、USPフォーラムにおいて、その機能性添加剤区分に関して検討されている。キトサンは本質的にはポリマーであるので、これは、分子量に応じて様々なグレードで利用することができる。キトサンの様々なグレードには、長鎖キトサン、中鎖キトサンおよび短鎖キトサンが包含される。長鎖、中鎖および短鎖のグレードはそのまま、キトサンの分子量に対応している。
【0041】
一般に、長鎖グレードは500,000〜5,000,000Daの範囲の分子量を有し、中鎖グレードは1,00,000〜2,000,000Daの範囲の分子量を有し、短鎖グレードは50,000〜1,000,000Daの範囲の分子量を有する。
【0042】
キトサンの分子量は、製剤において重要な役割を果たす。より高い分子量のキトサンは、系により高い粘度を付与し、より低い分子量のキトサンは、系により低い粘度を付与する。
【0043】
しかし、中鎖グレードのキトサンが、製剤に最適なレベルの粘度をもたらした。剤形がクリーム剤なので、皮膚上で良好な塗布性を得るためには、適切なレベルの粘度が必要である。
【0044】
本発明者らは、本発明のために中鎖グレードのキトサンを最終的に決定した。それというのも、これは、有効成分およびキトサンの両方の治療活性を損なうことなく、必要なレオロジー特性をクリーム剤に付与したためである。効力に関するいくつかの社内試験および前臨床動物研究に基づき、慎重に中鎖グレードのキトサンの濃度に至った。
【0045】
局所抗菌薬:
局所抗菌薬は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin − resistance Staphylococcus aureus)(MRSA)などが原因である細菌感染について皮膚をターゲットとすることが意図されている。
【0046】
抗菌薬は、細菌のリボソームと結合して、mRNAリボソーム結合を妨害することにより、細胞壁合成を阻害することによって作用する。
【0047】
他の仮説では、抗菌薬は、リボソームに間違ったアミノ酸を有するペプチド鎖を製造させ、それらが最終的に細菌細胞を破壊すると考えられている。
局所抗菌薬には、これらに限られないが、フシジン酸ナトリウム、ムピロシンカルシウム、ゲンタマイシン、ネオマイシン、スルファジアジン銀、シプロフロキサシン、硫酸フラミセチン、キニドクロル、ポビドンヨード、シソマイシン、ニトロフラルなどが包含される。
【0048】
スルファジアジン銀
スルファジアジン銀は、銀とスルホンアミド、スルファジアジンの錯体である。これは、原因細菌を死滅させるか、またはその成長を止めることによって、細菌感染を治療するために使用される。
スルファジアジン銀の分子式は、C10AgNSであり、分子量は357.14である。化学名は、スルファジアジン銀(I)、4−アミノ−N−(2−ピリミジニル)ベンゼンスルホンアミド銀塩である。これは、冷水に不溶性の白色粉末である。
【0049】
薬理学および作用機序
スルファジアジン銀は、第2度および第3度火傷で局所火傷用クリーム剤として主に使用されるサルファ誘導体局所抗菌薬である。治癒期間の間、または移植片が施与されるまで常時、クリーム剤を熱傷皮膚に塗布したままにする。これは、損傷した皮膚の上で幅広い範囲の細菌、さらには酵母の成長を妨げる。スルファジアジン銀を典型的には、水溶性基剤に懸濁させた1%溶液で送達する。この化学物質自体は、溶解性に低く、非常に限られた皮膚透過性しか有さない。
【0050】
スルファジアジン銀はまた、擦過傷などの他の浅く、広い面積の創傷に対しても役立つ。
【0051】
スルファジアジン銀は、幅広い活性スペクトルを有し、したがって、グラム陽性生物およびグラム陰性生物(緑膿菌(pseudomonas)を包含する)の両方に対して作用する。
【0052】
スルファジアジン銀は、局所塗布されると銀イオンを徐々に放出して、スルファジアジンと共に、殺菌作用を発揮する。
【0053】
薬物動態
局所塗布されると、これは銀イオンおよび遊離スルファジアジンを放出する。一部のスルファジアジンは、全身に吸収され得る。
【0054】
適応症
スルファジアジン銀は、火傷において感染を予防および治療するための局所抗微生物薬として使用されている。これは、慢性下腿潰瘍および褥瘡において感染を予防および治療する際に使用されている。スルファジアジン銀はまた、皮膚移植ドナー部位において感染を予防する際に使用されている。これはまた、擦過傷、裂傷および小さな創傷において感染を予防する際にも使用されている。
【0055】
大部分の局所製品は、クリーム剤または軟膏剤として製剤化されている。クリーム剤は、皮膚上に塗布するために使用される局所製剤である。クリーム剤は、API(医薬品有効成分)がその中に組み込まれているオイルおよび水の混合物である半固体乳剤である。これらは、連続水相に分散しているオイルの小滴から構成されている水中油型(O/W)クリーム剤と連続油相に分散している水の小滴から構成されている油中水型(W/O)クリーム剤との2種類に分類される。水中油型クリーム剤は使いやすく、ベタつきは僅かで、水でより容易に洗い流せるので、美容上許容できる。軟膏は、様々な体表面上で局所的に使用されるAPI含有の粘性で半固体の製剤である。軟膏剤のビヒクルは、軟膏基剤として公知である。基剤の選択は、軟膏の臨床適応症に応じ、通常使用される種々のタイプの軟膏剤基剤は:
炭化水素基剤、例えば硬質パラフィン、軟質パラフィン
吸収基剤、例えば、羊毛脂、蜜蝋
である。
【0056】
上記の基剤は両方とも、油性であり、そのままではベタベタしており、このことは、皮膚に塗布しにくく、かつ皮膚から除去しにくいなどの望ましくない作用をもたらす。加えて、これはまた、衣服の汚れをもたらす。多くの局所製品は、その美容上の魅力のために、クリーム製剤として利用することができる。
【0057】
pHの酸性範囲は1から7であり、pHの塩基性範囲は7から14である。ヒトの皮膚のpH値は、およそ4.5から6の間である。新生児の皮膚のpHは、中性(pH7)に近いが、すぐに酸性になる。これはおそらく、幼児の皮膚を保護するために、自然に決められている。それというのも、酸性は細菌を死滅させるためである。ヒトが老いてくると、皮膚は徐々に中性になり、以前のようには多くの細菌を死滅させなくなるであろう。これが、皮膚が弱くなり、問題を持ち始める理由である。ヒトが実際に皮膚の問題または皮膚疾患を有している場合、pH値は6を超えている。このことは、若い成人の皮膚のpH値に近いpH値を有する局所剤を選択することが必要であることを示している。
【0058】
アルカリ性pHへの僅かな移動も、微生物が繁殖するのにより良好な環境をもたらすであろう。大部分の局所製品は、クリーム剤として利用可能である。クリーム製剤中の有効化合物は、イオン化状態で利用可能であるのに対して、軟膏の場合には、これらは、非イオン化状態で存在する。クリーム製剤は美容的に優れていて、また有効化合物がイオン化状態で利用可能であり、薬物が皮膚層に早く浸透し、このことが製剤を全体として使いやすくするので、一般に、クリーム製剤は、局所剤形の設計および開発において製剤の第1の選択肢である。
【0059】
キトサンなどの機能性バイオポリマー、硫酸フラミセチンを有する本発明のクリーム剤のpHは、約3から6である。他方で、市販の軟膏剤は、ベタついていて、美容的には優れていない。さらに、軟膏剤中の有効化合物が非イオン化形態であるので、皮膚浸透は遅い。
【0060】
最適な生体皮膚(bio−dermal)効力のためには、有効薬物が皮膚に浸透することが重要である。有効薬物の粒径が、この場合に重要な役割を果たす。製品が高度に有効な形態であるためには、有効薬物がコロイド状または分子分散状態で利用可能であることが必要である。これはまた、皮膚の安全なpH適合性環境(4.0から6.0)で達成されるべきである。これら全てを達成するためには、薬物を溶解または分散させるために適正なビヒクルまたは補助溶剤を選択することが重要である。本発明の製品は、皮膚透過を増大させる極微小サイズのコロイド形態で利用可能な硫酸フラミセチンの顕著な抗菌活性および創傷治癒活性によって、高度に有効である。
【0061】
硫酸フラミセチンとキトサンとの組合せを使用する理論的根拠:
多数の局所治療薬が現在では、細菌感染を治療するために使用されている。しかし、皮膚を保護し、表皮出血、創傷および火傷を制御するための有効な単回投与治療は存在しない。この必要性を満たし、全ての国/共同体中に分散している人口区分に手頃で安全な治療を提供するために、皮膚回復特性を有するバイオポリマーであるキトサンと硫酸フラミセチンとの独特な組合せを用いる治療を新規なクリーム剤として提案する。
【0062】
局所硫酸フラミセチンは、その抗菌特性によって、様々な病因の原発性および続発性細菌性皮膚感染において大きな効果を有する。いずれかの局所抗菌薬での単剤治療の欠点は、相対的に遅い作用開始である。
【0063】
1種の製剤中で硫酸フラミセチンおよびキトサンを使用することによって、抗菌薬およびキトサンの両方の特性が最適化される。キトサンは、フィルム形成性で生体適合性の非アレルギー物質であるので、バリアとして作用することによって、皮膚の保護に役立つ。キトサンはさらに、引っ掻くことにより生じる表皮出血を制御し、またその陽イオン電荷によって、病原体の移動性を停止する。
【0064】
硫酸フラミセチンおよびキトサンの皮膚回復の側面の特性が、本発明では十分に活用され、最大の治療効果が患者にもたらされ、それによって、より早い治癒が促進される。このことは、患者が、細菌感染を伴う皮膚創傷、火傷の治療に関して利益を受けるであろうことを保証する。
【0065】
製剤中にキトサンを包含させることで、皮膚病を治療する際に非常に重要と考えられている多くの特質に対処している。キトサンと硫酸フラミセチンとの組合せは独特であり、新規である。それというのも、これは、世界中のどこにも市販されていないためである。
【0066】
この組合せの概念は、硫酸フラミセチンと組み合わせて使用されるキトサンの物理的、化学的および治療特性を考えることによって妥当なものとなっている。
【0067】
本発明の発明的側面:
本発明の他の発明的側面は、クリーム基剤に機能性添加剤を加えることが、単に添加する簡単明瞭なプロセスではないことである。本発明者は、キトサンなどの機能性添加剤とクリーム剤中の他の薬剤との適合性が非常に重要であることを発見した。これは、不適合性が最終製品の安定性を損なうであろうためである。例として、本発明者らは、安定剤として多様に使用されているキサンタンガムおよびカルボポールなどの周知の添加剤は、キトサンなどの機能性バイオポリマーと組み合わせて使用することができないことを発見した。
【0068】
局所剤形のための添加剤には、ポリマー、界面活性剤、ワックス様物質、乳化剤などが包含される。ポリマーは、ゲル化剤、懸濁化剤、粘度上昇剤、放出調節剤、希釈剤などとして使用されている。界面活性剤は、湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、放出促進剤などとして使用されている。
【0069】
一般に、ポリマーおよび界面活性剤は、イオン電荷を有していても有していなくてもよい。これらは、もともと陰イオン性または陽イオン性または非イオン性であり得る。陰イオン性添加剤が製剤に包含されている場合、それらは、陽イオン性の製剤添加剤と相互作用して、均一でなく、審美的に魅力がなく、不適合性によって望ましくない副生成物、あり得るアレルゲン、不純物、毒性物質などをもたらす製品を生じる。
【0070】
投薬は、病的な状態にある患者を治療するためであるので、製品におけるこれらの不適合性を許容することはできず、これらは、さらなる合併症を患者に加える。
【0071】
発明者らは、製剤を開発するために、ポリマーおよび界面活性剤を包含する添加剤を慎重にスクリーニングした。選抜候補の添加剤をスクリーニングした後に、徹底的な研究を行った。添加剤同士の間で起こり得る相互作用に特に焦点を合わせ、詳細な実験を行った。
【0072】
クリーム剤形における陰イオン性−陽イオン性相互作用についていくつかの例を引用するために、発明者らは、キサンタンガムおよびキトサン、アクリル酸ポリマーおよびキトサン、ラウリル硫酸ナトリウムおよびキトサン、ドクセートナトリウムおよびキトサンならびにアラビアゴムおよびキトサンを含有するいくつかの硫酸フラミセチンの製剤を製造した(表1〜5を参照されたい)。結果は、非常に明らかで、系全体に塊りとして見られる相互作用の発生を明瞭に示していた。最終製品もまた、均一性を欠いていて審美的に魅力的ではなかった。添付の図面1が、キトサンと不適切な陰イオン性添加剤との間の相互作用を明瞭に説明している。観察および添加剤についての十分な知識を元に、本発明者らは、起こり得る相互作用を何ら伴わない確固とした処方に達した。
【0073】
表1: キトサンおよびキサンタンガムを有するスルファジアジン銀クリーム剤の処方
【表1】

【0074】
表2: キトサンおよびアクリル酸ポリマーを有するスルファジアジン銀クリーム剤の処方
【表2】

【0075】
表3: キトサンおよびラウリル硫酸ナトリウムを有するスルファジアジン銀クリーム剤の処方
【表3】

【0076】
表4: キトサンおよびドクセートナトリウムを有するスルファジアジン銀クリーム剤の処方
【表4】

【0077】
表5: キトサンおよびアラビアゴムを有するスルファジアジン銀クリーム剤の処方
【表5】

【0078】
上記の製品(表1から5)は、均一なクリーム剤を形成せず、図1に示されているタイプの不均一なクリーム剤をもたらす製品の例である。これらの例に示されている割合でさえ、当業者が現在利用可能な知識に基づき利用することができるものの一部である。徹底的で広範な試行錯誤の後にのみ、添加剤の適正な種類および割合に達することができるであろう。
【0079】
初めに検討した通り、治療においてスルファジアジン銀は、細菌感染の軽減をもたらす。しかし、皮膚の保護、その部位での出血、ある部位から他の部位への病原体の移動性などの側面は、今までの単回投与治療では対処されていない。
【0080】
キトサンを組み込み、必要な皮膚保護の利益を求め(フィルム形成特性によって)、出血を止め(血液凝固特性によって)、かつ病原性微生物を固定化する(その陽イオン性静電特性によって)ことによって、その単回用量塗布を伴う本発明は、このギャップを埋めている。
【0081】
機能性添加剤を、バイオポリマーであるキトサンの形態でクリームマトリックスに組み込むことによる治療的価値の加算。この治療的価値の加算は、バイオポリマーの下記の機能性特質が統合されたサブセットである:
皮膚表面でのマイクロフィルムの形成、
フィルム形成性バイオポリマーを含有しないクリーム剤と比較して促進された血液凝固、
バイオポリマーの陽イオン電荷による表面微生物の静電固定化、
皮膚上皮化または回復の著しい増強。
【0082】
機能性バイオポリマーを処方箋皮膚用医薬品に組み込むことによりカバーされたプラットフォーム技術の開発に関連した発明的な成果は、
そのような組込みがもたらす補完的な治療的価値の確認、
バイオポリマーの組込みから生じる製品の物理化学的安定性に関する問題点の確認、
細菌感染が認められている場合の単回投与形式の提供にある。
【0083】
特に発展途上国における単回投与治療の重要性はどれほど強調しても強調しすぎることはない。南アジアまたはアフリカの大部分においては一般医、ましてや皮膚専門医の診察を受けることが不可能であり、単回投与製剤は、皮膚の回復も可能にしつつ皮膚障害の根本的な原因を除去する機会を劇的に増加させる。
【0084】
皮膚科学的状態の間に、現在利用可能な治療は、皮膚を保護し、出血を止めるなどの問題に対処していない。本発明の独特で革新的な製剤は、その部位における表皮出血を制御しながら皮膚状態を治療することによって、皮膚状態に対処している。表皮出血が治療されずに放置されると、二次的微生物感染をもたらすであろうことはよく理解される。本発明は有利には、この満たされていない必要性に対する解決を提供する。
【0085】
さらに、医療支援システムに対して増大し続けている圧力およびそれに付随する医療支援システムの不足/高いコストに伴って、世界中で、そのような場合における下記の問題:
治療のために患者が長く待たされすぎること、
病院に到着した場合の不必要に長い滞在、
必要以上に再来院すること
に対処することが緊急に必要とされている。
【0086】
滞在時間を短縮することは、多くの場合に取り組むべき重要な基礎的問題である。単回投与治療を伴う本発明は、深刻な皮膚障害の治療時間全体を著しく短縮する。
【0087】
好ましい実施形態1:
クリーム基剤に加えられているスルファジアジン銀およびバイオポリマーを含み、前記クリーム基剤が、防腐剤、一次および二次乳化剤、ワックス様物質、補助溶剤、酸ならびに水、好ましくは精製水をそれぞれ少なくとも1種含む、細菌性皮膚感染を局所治療するための、かつ関連創傷治癒のための新規な皮膚用医薬クリーム剤。
【0088】
実施形態1
緩衝剤、抗酸化剤、キレート剤、保湿剤またはそれらの任意の組合せを含む群からのいずれかをさらに含む、好ましい実施形態1に開示されている通りの新規な皮膚用医薬クリーム剤。
【0089】
実施形態2
好ましい実施形態1に開示されている通りの新規な皮膚用医薬クリーム剤であって、
前記スルファジアジン銀が、約0.5%w/wから約15%w/w、好ましくは0.5から5.0%w/w;より好ましくは約1.0%w/wの量で加えられており;
前記バイオポリマーが、キトサンの形態で、約0.01%から約1重量%、好ましくは約0.01%w/wから約0.5%w/w、最も好ましくは約0.25%w/wの量で加えられており、前記キトサンが、その機能性添加剤分類に関してUS薬局方に準拠しており、長鎖、中鎖および短鎖などの任意のグレードから選択され、かつ50kDaから5000kDaの範囲の分子量を有し、
前記一次および二次乳化剤が、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール−1000、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ポリソルベート−80、スパン−80などを含む群から選択され、約1%(w/w)から20%(w/w)の量で加えられており;前記ワックス様物質が、約5%(w/w)から50%(w/w)で白色軟質パラフィン、流動パラフィン、硬質パラフィンなど、またはそれらの任意の組合せを含む群から選択され;前記補助溶剤が、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール−400など、またはそれらの任意の組合せを含む群から選択され、約5%(w/w)から50%(w/w)の量で加えられており;前記酸が、HCl、HSO、HNO、乳酸など、またはそれらの任意の組合せを含む群から選択され、約0.005%(w/w)から0.5%(w/w)の量で加えられており;前記防腐剤が、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロロクレゾール、ソルビン酸カリウム、安息香酸、2 フェノキシエタノール、ベンジルアルコールなど、またはそれらの任意の組合せを含む群から選択され、約0.05%(w/w)から2.5%(w/w)の量で加えられており;前記水が、20%(w/w)から85%(w/w)、好ましくは40%(w/w)から80%(w/w)、より好ましくは60%(w/w)から70%(w/w)の範囲の量で加えられており、好ましくは精製水である、皮膚用医薬クリーム剤。
【0090】
実施形態3:
オルトリン酸水素二ナトリウム、オルトリン酸水素ナトリウム、乳酸カルシウムなど、またはそれらの任意の組合せを含む群から選択され、約0.05%(w/w)から1.00%(w/w)の量で加えられている緩衝剤をさらに含む、好ましい実施形態1および実施形態2に開示されている通りの新規なクリーム剤。
【0091】
実施形態4:
ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエンなど、またはその任意の組合せを含む群から選択され、約0.05%(w/w)から5%(w/w)の量で加えられている抗酸化剤をさらに含む、好ましい実施形態1ならびに実施形態2および3に開示されている通りの新規なクリーム剤。
【0092】
実施形態5:
EDTA二ナトリウムなど、またはその任意の組合せを含む群から選択され、約0.05%(w/w)から1%(w/w)の量で加えられているキレート剤をさらに含む、好ましい実施形態1および実施形態2から4に開示されている通りの新規なクリーム剤。
【0093】
実施形態6:
グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコールなど、またはその任意の組合せを含む群から選択され、約5%(w/w)から50%(w/w)の量で加えられている保湿剤をさらに含む、好ましい実施形態1および実施形態2から4に開示されている通りの新規なクリーム剤。
【0094】
実施形態7:
クリーム剤を製造する方法を開示するが、前記プロセスは、スルファジアジン銀およびバイオポリマーを、防腐剤、一次および二次乳化剤、ワックス様物質、補助溶剤、酸ならびに水、好ましくは精製水をそれぞれ少なくとも1種含むクリーム基剤に加えるステップと、成分を全て一緒に混合して、均一なクリーム剤を形成するステップとを含む。
【0095】
実施形態8
成分が、緩衝剤、抗酸化剤、キレート剤、保湿剤、安定剤またはそれらの任意の組合せを含む群からのいずれかをさらに含む、実施形態7に開示されている通りのクリーム剤を製造する方法。
【0096】
実施形態9:
キトサンが1kdalから5000kdalの分子量範囲を有する、前記実施形態のいずれかに開示されている通りの新規なクリーム剤。
【0097】
本発明を、組成および安定性研究データを含む添付の実施例を参照しつつさらに説明するが、これらは、本発明を制限することは何ら意図されていない。
【実施例】
【0098】
実施例I: 表6: スルファジアジン銀1%+キトサンクリーム剤
【表6】

【0099】
表6と表1から5とを比較することにより、従来のドラッグデザインをベースとしているであろう製品との差違および本発明において採用されている革新的な手法が明らかになるはずである。
【0100】
本発明の製品を使用して、API安定性実験を実施した(表7〜9参照)。一定期間にわたって製品の物理的外観、pH値およびAPIのアッセイを観察(または適切な場合には測定)するために、試験を実施した。試験に使用される本発明の製品は1グラム当たり、適切な量の抗菌薬を含有した。安定性研究試験のために使用される製品は、約10%の余分なAPI(余剰量)を含有した。これを、アルミニウム押出しチューブに包装した。
【0101】
本発明での詳細な試験結果を示す。実施例全てで使用されたスルファジアジン銀の%は、最終製品に関してw/wで測定した。
【0102】
製品:スルファジアジン銀クリーム剤
包装:アルミニウム押出しチューブ
組成:1gm当たり:i)スルファジアジン銀USP 1.0%w/w含有
【0103】
表7: 試験明細、バッチ番号SSC-10
測定パラメーター: 物理的外観
測定パラメーターの最良値: 均一で白色からオフホワイト色の粘稠性クリーム;
測定方法: 肉眼による観察
【表7】

【0104】
表8: pH試験、バッチ番号SSC-10
測定パラメーター: pH; 測定パラメーター範囲: 3〜6
測定方法: デジタルpH計器
【表8】

【0105】
表9: アッセイ(%)試験、バッチ番号SSC-10
測定パラメーター: アッセイ(%); 測定パラメーター範囲: 90〜110
測定方法: HPLC法
【表9】

【0106】
クリーム剤の塗布方法:
クリーム剤を、罹患した部分を徹底的に洗浄および乾燥させた後に塗布する。罹患した皮膚およびその周囲部分を覆うのに十分なクリーム剤を塗布すべきである。症状が改善し得ても、全治療期間にわたって、皮膚の状態に応じて、クリーム剤を1日2から4回塗布すべきである。
【0107】
実験
実験室において、さらに、切除創傷を加えられた適切な動物モデルを使用して、クリーム剤で実験を実施した。創傷縮小、上皮化、血液凝固時間およびフィルム形成の4つの側面を試験した。これらの側面は共に、微生物が固定化され、それによって、有効な創傷治癒がもたらされることを示唆しているであろう。
【0108】
A.創傷縮小:
本発明のクリーム剤の切除創傷治癒活性を、動物実験を介して決定した。皮膚全厚から切除することによって、直径2.5cmの切除創傷を負わせた。期間にわたって観察された創傷の縮小量は、本発明のクリーム剤が、従来のクリーム剤の塗布を介して達成されるよりもかなり改善された創傷縮小をもたらすことを示した。
【0109】
B.上皮化期間:
従来のクリーム剤を使用した場合に上皮化にかかる日数と比較して、本発明のクリーム剤を使用すると、創傷の上皮化がより短い日数で生じた。したがって、本発明のクリーム剤の利点の1つは、従来のクリーム剤の使用を介してよりも皮膚のより早い上皮化を促進することである。
【0110】
C.血液凝固:
未処置対照群および本発明の製品で処置された試験動物群の両方の動物群で、血液凝固時間を観察した。対照動物群の血液凝固時間と比較すると、処置群動物において統計的に有意な血液凝固時間の短縮が観察された。本発明の製品を使用した場合の血液凝固では、10〜40%の平均短縮パーセントが観察された。
【0111】
フィルム形成特性:
本発明のクリーム製剤のために使用される添加剤の存在下でも、キトサンはそのフィルム形成特性を失わないことが、図1から明らかである。
【0112】
結果および検討
本発明で使用される添加剤を含有する製剤中で使用された場合に、キトサンの特性は何ら損なわれないことが明らかである。これは、添加剤の慎重な選択を介して達成されている。例えば、我々の実験によって、キサンタンガムまたはカルボポールなどの広く使用されている添加剤は、キトサンと組み合わせると、陽イオンと陰イオンとの相互作用によって沈殿することが示されている。
【0113】
動物実験から観察された通りの、スルファジアジン銀にキトサンを付加することの治療的インパクトを、損傷を受けた皮膚状態の治療による治癒の様々な側面を考慮することによって、下記の表に示す:
【0114】
表10
【表10】

【0115】
クリーム剤に組み込まれたキトサンのフィルム形成性が、感染部分へのスルファジアジン銀のより良好なアクセスを可能にし、このAPIのより良好な機能化をもたらすことは明らかである。
【0116】
本発明の局所塗布クリーム剤の治療効力は、皮膚感染の原因である生物に対するスルファジアジン銀の顕著な抗菌活性、キトサンの無傷の皮膚を透過する独特な活動性ならびに創傷治癒および鎮静特性による。
【0117】
前記の検討から、本発明が、現在利用可能な細菌感染用の皮膚用医薬組成物を超える次の利点および独特な側面を提示していることは明らかである:
1.本発明のクリーム剤は、皮膚に穏やかなバイオポリマーを、治療結果を増大させるキトサンの形態で組み込んでいる。このことは、血液凝固時間の短縮、上皮作用の上昇および感染のより迅速な軽減から明らかである。
2.本発明のクリーム剤は、クリームマトリックスの安定性を損なうことなく、かつ既知の医薬品有効成分の機能に不利な影響を及ぼすことなく、バイオポリマーを組み込んでいる。物理化学的適合性/安定性および生体放出の望ましくない側面を回避する機能性添加剤を慎重に選択することを介して、これは達成されている。
3.本発明のクリーム剤は、これまでは処方箋皮膚用医薬製剤では利用することができなかった統合された1回投与または単回投与治療を提供する。
4.本発明の新規なクリーム剤は、周囲条件で適切に安定で/効力があり、輸送/貯蔵の間に特別な温度条件を必要とせず、したがって、これらの社会的目標の達成において成功するはずである。
【0118】
本発明の他の実施形態では、ヒトの皮膚を上記で開示した組成物と接触させることを伴う、細菌性皮膚感染の治療および創傷治癒のための方法も提供する。
【0119】
上記の記載はかなりの具体性を含むが、これらは発明の範囲の制限と解釈されるべきではなく、むしろ、本発明の好ましい実施形態の例示と解釈されるべきである。本発明の意図および範囲から逸脱することなく、上記で示された開示に基づき、変更および変化が可能であることは理解されるはずである。したがって、本発明の範囲は、説明された実施形態によってではなく、添付の請求項およびその正当な同等物によって決定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌性皮膚感染を局所治療し、関連創傷を治癒させるための新規な皮膚用医薬クリーム剤であって、クリーム基剤に加えられているスルファジアジン銀およびバイオポリマーを含み、前記クリーム基剤が、防腐剤、一次および二次乳化剤、ワックス様物質、補助溶剤、酸ならびに水、好ましくは精製水をそれぞれ少なくとも1種含み、前記バイオポリマーが、好ましくはキトサンである皮膚用医薬クリーム剤。
【請求項2】
緩衝剤、抗酸化剤、キレート剤、保湿剤、安定剤またはそれらの任意の組合せを含む群からのいずれかをさらに含む、請求項1に記載の新規な皮膚用医薬クリーム剤。
【請求項3】
前記スルファジアジン銀が、約0.5%w/wから約15%w/w、好ましくは0.5から5.0%w/w;より好ましくは約1.0%w/wの量で加えられており;
前記バイオポリマーが、キトサンの形態であり、約0.01%から約1重量%、好ましくは約0.01%w/wから約0.5%w/w、最も好ましくは約0.25%w/wの量で加えられており、
前記一次および二次乳化剤が、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール−1000、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ポリソルベート−80、スパン−80などを含む群から選択され、約1%(w/w)から20%(w/w)の量で加えられており;前記ワックス様物質が、白色軟質パラフィン、流動パラフィン、硬質パラフィンなど、またはそれらの任意の組合せを含む群から選択され、約5%(w/w)から50%(w/w)の量で加えられており;前記補助溶剤が、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール−400など、またはそれらの任意の組合せを含む群から選択され、約5%(w/w)から50%(w/w)の量で加えられており;前記酸が、HCl、HSO、HNO、乳酸など、またはそれらの任意の組合せを含む群から選択され、約0.005%(w/w)から0.5%(w/w)の量で加えられており;前記防腐剤が、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロロクレゾール、ソルビン酸カリウム、安息香酸、2 フェノキシエタノール、ベンジルアルコールなど、またはそれらの任意の組合せを含む群から選択され、約0.05%(w/w)から2.5%(w/w)の量で加えられており;前記水が、20%(w/w)から85%(w/w)、好ましくは40%(w/w)から80%(w/w)、より好ましくは60%(w/w)から70%(w/w)の範囲の量で加えられており、好ましくは精製水である、請求項1に記載の新規な皮膚用医薬クリーム剤。
【請求項4】
オルトリン酸水素二ナトリウム、オルトリン酸水素ナトリウム、乳酸カルシウムなど、またはそれらの任意の組合せを含む群から選択され、約0.05%(w/w)から1.00%(w/w)の量で加えられている緩衝剤をさらに含む、請求項1および3に記載の新規なクリーム剤。
【請求項5】
ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエンなど、またはその任意の組合せを含む群から選択され、約0.05%(w/w)から5%(w/w)の量で加えられている抗酸化剤をさらに含む、請求項1、3および4に記載の新規なクリーム剤。
【請求項6】
EDTA二ナトリウムなど、またはその任意の組合せを含む群から選択され、約0.05%(w/w)から1%(w/w)の量で加えられているキレート剤をさらに含む、請求項1および3から5に記載の新規なクリーム剤。
【請求項7】
グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコールなど、またはその任意の組合せを含む群から選択され、約5%(w/w)から50%(w/w)の量で加えられている保湿剤をさらに含む、請求項1および3から6に記載の新規なクリーム剤。
【請求項8】
クリーム剤を製造する方法であって、スルファジアジン銀およびバイオポリマーを、防腐剤、一次および二次乳化剤、ワックス様物質、補助溶剤、酸ならびに水、好ましくは精製水をそれぞれ少なくとも1種含むクリーム基剤に加えるステップと、成分を全て一緒に混合して、均一なクリーム剤を形成するステップとを含む方法。
【請求項9】
前記成分が、緩衝剤、抗酸化剤、キレート剤、保湿剤、安定剤またはそれらの任意の組合せを含む群からのいずれかをさらに含む、請求項8に記載のクリーム剤を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−523449(P2012−523449A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505260(P2012−505260)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【国際出願番号】PCT/IB2010/051465
【国際公開番号】WO2010/119369
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(511228001)
【氏名又は名称原語表記】VANANGAMUDI,Sulur, Subramaniam
【住所又は居所原語表記】No 29, VGP Layout, 4th Road,Injambakkam, Chennai, Tamil Nadu, Chennai 600 041 INDIA
【Fターム(参考)】