説明

スーパーコンティニュームレーザパルスの様々なスペクトル色のパルス合成器

【課題】スーパーコンティニュームレーザパルスの様々なスペクトル色のパルス合成器を提供する。
【解決手段】顕微鏡(40)の照明装置(20)は、少なくとも1つの広帯域レーザ光パルス(30)を生成するレーザユニット(24)を有し、上記広帯域レーザ光パルス(30)の異なる波長の光成分(71、72、73、74、75、76)は、互いに時間的にずらされる。広帯域レーザ光パルス(30)の経路に配置された補正ユニット(36)が、光成分(71、72、73、74、75、76)が補正ユニット(36)を同時に、または略同時に出るように、広帯域レーザ光パルス(30)の光成分(71、72、73、74、75、76)を時間的にずらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡の照明装置及び顕微鏡に関する。さらに、本発明は、顕微鏡の照明光線を生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物体、特に試料または組織試料を検査する顕微鏡方法では、異なる波長のレーザ光を生成可能な照明装置、特にレーザ装置が必要なことが多い。顕微鏡方法によっては、照明装置が異なる波長のレーザ光を同時に提供することが必要なことがある。白色光レーザまたは広帯域レーザ光源とも呼ばれるスーパーコンティニュームレーザが、この目的に適する。これらのレーザは、広いスペクトルにわたり、特に、生成された広帯域レーザ光が白色光として目に見えるように、特に可視であり、目で区別可能な、複数の色にわたって連続したレーザ光を生成する。
【0003】
白色レーザ光は、様々な方法で生成することができる。例えば、非常に狭い波長範囲のレーザ光、特に、単一波長のレーザ光を生成する従来のレーザの光を、レーザビームのスペクトルを所望のように広域化する光学素子に結合し得る。この目的に適するのは、スペクトルの広域化を望ましくない副次的な悪影響とするレンズ等の従来の光学素子とは対照的に、レーザ光線のスペクトルを広域化するように特別に設計された光学素子である。特に、光が透過する際に、強い非線形光学効果が生まれ、この効果が単色レーザ光のスペクトルを広げ、白色レーザ光に変換する光伝導ファイバを設計することが既知である。スペクトル広域化中、分散効果が生じ、生成される白色レーザ光に影響を及ぼすことが普通である。
【0004】
特許文献1には、光源及び対物系を有するもつれ光子顕微鏡が記載されている。もつれ光子顕微鏡は、光源と対物系との間に配置され、内部でもつれ光子を生成可能な微小構造光学素子を有し、もつれ光子は、微小構造光学素子の内側および外側をビームで伝播する。微小構造光学素子は、少なくとも2つの異なる光学密度を有する複数の微小光学構造素子から構築される。微小光学構造素子は、例えば、カニューラ、ウェブ、ハニカム、管、又はキャビティである。代替または追加として、微小構造光学素子は、均質構造領域と非均質構造領域とが交互になったものを有し得る。代替または追加として、微小構造光学素子は、隣接するガラス材料またはプラスチック材料及びキャビティで形成され、光伝導ファイバとして構成される。ファイバは、パターンに配置されたガラス管又はガラスの塊を延伸させることにより生成することができる。
【0005】
特許文献2には、パルスレーザにより生成されたレーザパルスのスペクトルを広域化する光学デバイスを使用する共焦点顕微鏡が記載されている。パルスレーザはパルスレーザビームを生成し、パルスレーザビームは光学デバイスを透過する。光学デバイスは、狭帯域パルスレーザビームを広帯域幅スペクトルの照明光に変換する光子バンドギャップ材料を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】DE 101 15 486 A1
【特許文献2】DE 101 15 509 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、正確な顕微鏡方法のための試料照明に適した照明光線を提供する顕微鏡の照明装置、顕微鏡、及び顕微鏡の照明光線を生成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、独立請求項の特徴により達成される。有利な実施形態は、従属請求項に記載される。
【0009】
第1の態様では、本発明は、少なくとも1つの広帯域レーザ光パルスを生成するレーザユニットを特徴とし、上記広帯域レーザ光パルスの異なる波長の光成分は、互いに時間的にずらされる。補正ユニットが、広帯域レーザ光パルスの経路に配置されて、補正ユニットを同時に、又は略同時に出るように、光成分を時間的にずらす。
【0010】
補正ユニットにより実行される時間的なずれ(時間オフセット)補正の結果として、照明装置から出る白色光レーザパルスの時間的分散は、特に狭い。これは、広帯域レーザ光パルスが、照明装置を励起させた後、高度に時間分解された顕微鏡測定、例えば、蛍光寿命イメージング(FLIM)、特に複数の波長を使用するFLIMに使用できるようにする助けとなる。
【0011】
本明細書の文脈の中では、レーザ光パルスが広域化されるとの記述は、レーザ光パルスが、より広い波長間隔にわたり、例えば、可視であり、かつ/または裸眼で区別可能な複数の色間隔にわたり連続して分布する波長を有することを意味する。広帯域レーザ光パルスは、スーパーコンティニュームレーザ光パルスまたは白色光レーザパルスとも呼ばれる。本明細書の文脈の中では、広帯域レーザ光パルスの光成分が、補正ユニットを同時に、または略同時に出るとの記述は、光成分が補正ユニットを出る時間的なずれが、顕微鏡の検出器の時間分解下限未満であることを意味する。これは、補正ユニットを通った後、実際には時間的なずれが存在し得るが、検出器に達した光パルスが同時に達するものとして検出されるほど、その時間的なずれが小さいことを意味する。補正ユニット内で発生する時間的なずれは、補正ユニット内の分散効果を使用して達成される。補正ユニット内で発生する分散効果は、広帯域レーザ光パルスの生成中に生じるものとは正反対である。例えば、通常の分散は、広帯域レーザ光パルスの生成中に生じ得るが、異常分散は、補正中に生じ得る。
【0012】
レーザユニットは、このレーザユニットに加えてさらなるレーザユニットを含むレーザ装置の一部であり得る。同様に、補正ユニットも、複数の補正ユニットを含む補正装置の一部をなし得る。
【0013】
有利な実施形態では、レーザ光の狭いスペクトル波長帯を広帯域レーザ光パルスから分離する光学素子が提供され、それにより、光学素子を通った後、光成分は、互いに時間的にずらされ、スペクトル的に制限され、スペクトル的に互いから離間される。換言すれば、異なる波長の光成分は、光学素子により白色光レーザパルスから分離され、そのため、それぞれがスペクトル的に制限される。したがって、それまでは連続していた波長スペクトル内の個々のスペクトル的に制限された光成分間に、ギャップが形成され、それにより、これらの光成分は、スペクトル的に互いに離間される。白色光レーザパルスの異なる波長の光成分間の時間的なずれにより、スペクトル制限され離間された光成分も、互いに時間的にずらされる。
【0014】
別の有利な実施形態では、補正ユニットは、微小構造光誘導ファイバの形態の補正素子を含む。微小構造光伝導ファイバは、フォトニック結晶ファイバ又は非線形性の高い微小構造光ファイバと呼ばれることもある。微小構造光誘導ファイバは、カニューラ、ウェブ、ハニカム、管、または他のキャビティもしくは光誘導空間を有してもよい。特に、微小構造光誘導ファイバは、ガラス芯又は空気芯を有してもよい。
【0015】
別の有利な実施形態では、補正ユニットは、補正素子として、超薄ガラス繊維又はテーパ形繊維を含む。
【0016】
有利な一実施形態では、微小構造光誘導ファイバの分散は主に、ファイバの構造および/または長さによって決まる。例えば、微小構造光誘導ファイバの直径は、所定の長さにおいて所定の直径に先細りし得る。これに関連して、微小構造光誘導ファイバの構造が、断熱的に変わることが有利であり得る。そのような変更の断熱性により、損失のない波の伝播が可能である。さらに、微小構造光誘導ファイバが、レーザ光パルスの偏光を維持するように回転対称な設計ではないことが好都合であり得る。
【0017】
第2の一態様では、本発明は、物体を検査する顕微鏡を特徴とする。顕微鏡は照明装置に結合され、共焦点走査型顕微鏡として構成してもよい。
【0018】
第3の一態様では、本発明は、広帯域レーザ光パルスが生成される、顕微鏡のために照明光線を生成する方法を特徴とする。広帯域レーザ光パルスは、互いに時間的にずらされた異なる波長の光成分を有する。広帯域レーザ光パルス、特にその光成分は、補正ユニットに結合される。補正ユニットは、光成分が補正ユニットを同時に、または略同時に出るように、光成分を時間的にずらす。
【0019】
本発明の例示的な実施形態について、概略図を参照して以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】照明装置および顕微鏡を示す図である。
【図2】波長−時間図である。
【図3】補正素子を示す図である。
【図4】波長−分散図である。
【図5】顕微鏡のための照明光線を生成する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、照明装置20および顕微鏡40を示す。照明装置20は、レーザユニット24を含むレーザ装置22を有する。あるいは、レーザ装置22は複数のレーザユニット24を有してもよい。レーザユニット24は、単色レーザ光パルス26を生成する。単色レーザ光パルス26は、狭帯域レーザ光パルスまたは離散波長のレーザ光パルスと呼ばれることもある。単色レーザ光パルス26の波長は、不可変または可変であることができ、例えば、500nm〜1600nm、好ましくは700nm〜1000nmの波長に設定することができる。適したレーザユニットの例は、近赤外線領域のレーザ光パルスを生成する超短パルスレーザ、特に、チタン−サファイアレーザである。
【0022】
単色レーザ光パルス26は、スペクトル広域化素子28を通り、スペクトル広域化素子28は、例えば、微小構造光学素子、特に、最初に引用した従来技術から既知の微小構造光誘導ファイバであり得る。スペクトル広域化素子28は、白色光レーザパルス30がスペクトル広域化素子28を出るように、単色レーザ光パルス26のスペクトルを広域化させる。白色光レーザパルス30は、例えば、裸眼で区別可能な複数の色にわたって延在し得る、広帯域連続波長スペクトルを有する。白色光レーザパルス30は専ら、可視領域、可視および近赤外線領域、又は専ら近赤外線領域内にあり得る。例えば、スペクトル広域化素子28内の通常の分散により生じる分散効果により、白色光レーザパルス30の異なる波長の光成分は、互いに時間的にずらされ、それにより、白色光レーザパルス30は、時間的に滲み、すなわち、時間的に広域化されるか、または時間的に広い分布を有する。換言すれば、白色光レーザパルス30のうちの1つの異なるスペクトル色の光の粒子が、所与のポイントを異なる時間に通過する。
【0023】
白色光レーザパルス30は、例えば、音響光学調整可能フィルタ(AOTF)の形態をとり得るスペクトル分散素子32を透過する。スペクトル分散素子32は、光学素子32と呼ばれることもあり、スペクトル分散したレーザ光パルス34がスペクトル分散素子32を出るように、異なる波長間隔のレーザ光を白色光レーザパルス30の連続スペクトルから分離する。スペクトル分散レーザ光パルス34は、連続波長スペクトルを有し、異なる波長の光パルスが補正ユニット36に連続して入るように、スペクトル的に互いから離間される。スペクトル分散素子32は、どの時点においても所定の波長間隔の光のみを透過させるように、または複数の所定の波長間隔の光を同時に透過させるように、設計することができる。
【0024】
スペクトル広域化素子28において生成される分散効果とは逆の分散効果を使用して、例えば、異常分散等を使用して、補正ユニット36は、もう一度時間をずらし、狭い時間分散を有する時間分散白色光レーザパルス38が、補正ユニット36を出るように、レーザ光パルス34をスペクトル分散させ、時間をずらす。特に、離散白色光レーザパルス38は、互いに時間がずらされた成分を有さない。換言すれば、補正ユニット36は、白色光レーザパルス38のうちの1つのパルスの異なるスペクトル色の光子を所与のポイントで同時に通す。
【0025】
この文脈の中では、光成分が互いに時間的にずらされない、すなわち、光成分が同時であるとの文章は、光成分の互いのずれが少なくとも略ないことを意味する。本明細書の文脈の中では、これは、白色光レーザパルス38のうちの1つのパルスの第1の波長パケットと、各白色光レーザパルス38の別の波長パケットとの時間的なずれが、顕微鏡40の検出器の時間分解下限未満であることを意味する。波長パケットが残留ずれを示す場合、このずれは検出器により分解することができず、同時に到着したものと分類される。
【0026】
時間分散白色光レーザパルス38は、例えば、光誘導ファイバを介して顕微鏡40に結合される。白色光レーザパルス38は、第1のレンズ42により照明ピンホール44にイメージングされる。ビームスプリッタ46が、白色光レーザパルス38を第2のレンズ48に向け、第2のレンズ48は、ビーム軸49を有する平行光線を生成する。白色光レーザパルス38で構成された光線は、走査装置50に衝突し、走査装置50は、例えば、1つまたは複数のミラーを使用して第3のレンズ51に向かって白色光レーザパルス38を偏向させる。走査装置50は、試料62を白色光レーザパルス38で光学的に走査できるようにする。
【0027】
第3のレンズ52と試料62との間に配置されるのは、第4のレンズ54ならびに第5のレンズ58および第6のレンズ60を有する対物系56であり、それらを用いて、白色光レーザパルス38で構成される照明光線が、試料62を照明するために形成される。試料62から来る検出光は、反射照明光および/または蛍光を含み得、対物系56を通して走査装置50に返され、走査装置50により検出ピンホール64に向かって偏向され、検出光は、ビームスプリッタ46を透過してから、検出ピンホール64を透過し、検出ピンホール64後に検出装置66に衝突し、上記検出装置は少なくとも1つの検出器を含む。
【0028】
図2は、450nm〜700nmの波長がX軸上に与えられる波長−時間図を示す。Y軸にプロットされるのは、6.4ns〜7.8nsの時間値である。図中、第1の光成分71、第2の光成分72、第3の光成分73、第4の光成分75、第5の光成分75、および第6の光成分76が示される。光成分71、72、73、74、75、76は、異なる色、例えば、赤および青を有する。図中、光成分71、72、73、74、75、76のそれぞれは、垂直に重ねられて配置された菱形および正方形を含み、菱形は光パルスの開始を示し、正方形は光パルスの終了を示す。光成分71、72、73、74、75、76の時間分散の測定は、時間がずらされた光成分71、72、73、74、75、76を含む白色光レーザパルス30がスペクトル分散素子32を出た後に実行される。光成分71、72、73、74、75、76は、スペクトルが制限され、互いにスペクトル的に離間される。個々の光成分71、72、73、74、75、76間の時間的なずれは、50ps〜1000psである。したがって、波長−時間図は、白色光レーザパルス30の異なる波長の光成分71、72、73、74、75、76間の時間的なずれを示す。
【0029】
図3は、補正ユニット36内に配置された補正素子80の例示的な実施形態を示す。補正素子80に加えて、補正ユニット36は、互いに並列または直列に内部に配置されたさらなる補正素子80を有してもよい。さらに、補正ユニット36は、この補正ユニット36に加えて、さらなる補正ユニットを含む補正装置の一部をなし得る。
【0030】
補正素子80は、微小構造が管、カニューラ、またはチャネルで構成される微小構造光誘導ファイバで形成される。補正素子80は、時間がずらされた光成分を含む白色光レーザパルス30が結合される入力セクション82を有する。補正素子80の内部で、白色レーザパルス30は、テーパセクション84を透過し、出力セクション86において補正素子80から出る。補正素子80は、入力セクション82および/または出力セクション86において、1つまたは複数のさらなる光誘導ファイバに結合、特に接合してもよく、または部分的もしくは完全にさらなる光誘導ファイバに取って代わってもよい。
【0031】
本明細書の例示的な実施形態では、入力セクション82からテーパセクション84への遷移およびテーパセクション84から出力セクション86への遷移は、断熱的であるように設計される。特に、第1の断熱遷移88および第2の断熱遷移90が形成される。本明細書の文脈の中では、「断熱」は、遷移が連続し、段差がないことを意味する。補正素子80の断熱的な遷移88、90は、光が効率的かつ安全に結合されることを助ける。
【0032】
補正素子80は、例えば、回転対称性を崩すことにより、偏光を維持するように設計してもよい。補正素子80は、超薄ガラス繊維またはテーパ形繊維と呼んでもよい。補正素子80の材料は、例えば、各スペクトル領域にわたって平均化される500ps/nm/kmの異常分散を示し得る。例えば、45dB/kmの強度損失があり得、これは、10mの距離にわたり10%以上の損失を意味する。ゼロ分散は、青にシフトしてもよい。補正素子のテーパ形は、厚さ変調と呼ぶこともできる。そのような厚さ変調は、示される例示的な実施形態よりも複雑であってもよい。厚さ変調は、特に、注入効率を向上させるために使用し得る。補正素子80は、両端部を終端することができる。特に、従来のガラス繊維に結合、特に接合することができ、または従来のガラス繊維に完全に取って代わることができる。終端は、コネクタを取り付けることにより、または結合、特に接合により達成してもよい。
【0033】
光は、入力セクション82において補正素子80に入り、ファイバ芯92内の光誘導ファイバ内を伝播する。光パルス94として注入された光は、第1の断熱遷移88を透過し、それにより、光パルス94の形状は、光パルス96の形状になる。テーパセクション84において、分散補正光パルス98が、次に、ファイバの超薄セクション、特に、テーパセクション84内で形成される。光は、第2の断熱遷移90をさらに透過し、ファイバの厚いセクションに入り、そこで、光パルス100が形成され、光を出力セクション86から出る。
【0034】
図4は、厚さの値が記された複数の曲線を示す波長−分散図である。厚さの値は、異なる補正素子80のテーパセクション84の厚さを指す。したがって、波長−分散図は、異なる補正素子80の波長に依存する分散を示す。特に示されるのは、テーパセクション84の500nm、700nm、900nm、および1100nmの直径の波長依存分散である。水平線はゼロ分散を記し、垂直線は532nm波長を示す。
【0035】
図4は、分散を、テーパセクション84の直径の選択を通して調整できることを示す。特に、白色光レーザパルス30の光成分71、72、73、74、75、76間の時間的なずれを補正するために、補正素子80の広い分散範囲、特に、分散範囲全体を使用することが可能である。これにより、補正素子80を使用する際の設計および補正に大きな自由度が可能になる。
【0036】
図5は、顕微鏡40の照明光線を生成する方法のフローチャートを示す。
【0037】
ステップS2において、単色レーザ光パルス26が、狭帯域レーザ光としてスペクトル広帯域化素子28、例えば、微小構造ガラス繊維内に注入される。
【0038】
ステップS4において、微小構造ガラス繊維は、単色レーザ光パルス26を、互いに時間がずらされた光成分71、72、73、74、75、76を有する白色光レーザパルス30に変換する。時間的なずれは、例えば、通常の分散により生じる。
【0039】
ステップS6において、狭帯域波長の時間がずらされた光成分71、72、73、74、75、76は、白色光レーザパルス30から分離される。
【0040】
ステップS8において、光成分71、72、73、74、75、76は、光成分71、72、73、74、75、76が照明装置20を同時に出るように、時間がずらされ、例えば、遅延する。本明細書の文脈の中では、光成分71、72、73、74、75、76が照明装置20を同時に出るとの記述は、例えば、光成分71、72、73、74、75、76が、50ps〜200ps未満の間隔内で照明装置を出ることを意味し、それは、50ps〜200psが、検出装置66の検出器の時間分解限界に対応するためである。検出器の時間分解限界は、処理電子回路を含め、検出器の合計応答時間を考慮に入れる。したがって、白色光レーザパルス38のパルス幅は、電子回路および検出器の応答時間を含むシステム全体の応答の1/4〜1/10未満であるべきである。
【0041】
ステップS10において、分散のない白色光レーザパルス38、特に、異なる波長の光成分の互いに対する時間的なずれが全くないか、又は少なくとも略ない白色光レーザパルス38が、顕微鏡40に結合される。
【0042】
光成分71、72、73、74、75、76間に時間的なずれがない白色光レーザパルス38を提供することは、特にFLIMにおいて、2つの蛍光曲線の発生を促進する。さらに、試料を、簡易化された様式で複数の染料または蛍光曲線で解析することができる。時間の節減が、2つ以上の染料又は蛍光曲線を有する試料を同時に解析する能力により達成される。さらに、蛍光共振エネルギー移動(FRET)法等で、2つの染料が同時に動作する共振実験を実行することが可能である。
【0043】
さらに、顕微鏡40は、多光子励起が可能なように設計してもよい。あるいは、補正ユニット36を使用し、特に、時間分解測定が可能な広視野顕微鏡を提供してもよい。さらに、時間的なずれのない白色光レーザパルス38の照明光線は、他の顕微鏡またはFLIM等の他の顕微鏡法に使用してもよい。
【符号の説明】
【0044】
20 照明装置
22 レーザ装置
24 レーザユニット
26 単色レーザ光パルス
28 スペクトル分散素子
30 時間がずらされた光成分を有する白色光レーザパルス
32 光学素子
34 スペクトル分散レーザ光パルス
36 補正ユニット
38 白色光レーザパルス
40 顕微鏡
42 第1のレンズ
44 照明ピンホール
46 ビームスプリッタ
48 第2のレンズ
49 ビーム軸
50 走査装置
52 第3のレンズ
54 第4のレンズ
56 対物系
58 第5のレンズ
60 第6のレンズ
62 試料スライド
64 検出ピンホール
66 検出装置
70 波長−時間図
71 第1の光成分
72 第2の光成分
73 第3の光成分
74 第4の光成分
75 第5の光成分
76 第6の光成分
80 補正素子
82 入力セクション
84 テーパセクション
86 出力セクション
88 第1の断熱遷移
90 第2の断熱遷移
92 ファイバ芯
94 ファイバの厚いセクション内の光パルス
96 ファイバの超薄セクション内の光パルス
98 ファイバの超薄セクション内の分散補正光パルス
100 ファイバの厚いセクション内の分散補正光パルス
110 波長−分散図
S2〜S10 ステップ2〜ステップ10

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの広帯域レーザ光パルス(30)を生成するレーザユニット(24)と、前記広帯域レーザ光パルス(30)の経路に配置された補正ユニット(36)とを備えて構成される、顕微鏡(40)のための照明装置(20)であって、前記広帯域レーザ光パルス(30)の異なる波長の光成分(71、72、73、74、75、76)は、互いに時間的にずらされ、前記補正ユニット(36)は、前記広帯域レーザ光パルス(30)の前記光成分(71、72、73、74、75、76)を時間的にずらして、前記光成分(71、72、73、74、75、76)が前記補正ユニット(36)を同時に、または略同時に出る、照明装置(20)。
【請求項2】
光学素子(32)を備え、この光学素子(32)によって、前記広帯域レーザ光パルス(30)からレーザ光の狭いスペクトル波長帯が分離して、前記光成分(71、72、73、74、75、76)が前記光学素子(32)を透過した後、互いに時間的にずらされ、スペクトル的に制限され、スペクトル的に互いに離間される、請求項1に記載の照明装置(20)。
【請求項3】
前記補正ユニット(36)は、微小構造光誘導ファイバの形態をした補正素子(80)を含む、請求項1または2に記載の照明装置(20)。
【請求項4】
前記補正ユニット(36)は、超薄ガラス繊維又はテーパ形繊維の形態をした補正素子(80)を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の照明装置(20)。
【請求項5】
前記微小構造光誘導ファイバは、ガラス芯又は空気芯を有する、請求項3または4に記載の照明装置(20)。
【請求項6】
前記微小構造光誘導ファイバの分散は、前記ファイバの構造および/または長さによって決まる、請求項3、4または5に記載の照明装置(20)。
【請求項7】
前記微小構造光誘導ファイバの構造は、断熱的に変わる、請求項6に記載の照明装置(20)。
【請求項8】
前記微小構造光誘導ファイバは、回転対称な設計ではない、請求項4〜7のいずれか一項に記載の照明装置(20)。
【請求項9】
前記光学素子(32)は音響光学調整可能フィルタを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の照明装置(20)。
【請求項10】
前記広帯域レーザ光パルスは、前記照明装置を励起させた後、高度に時間分解された顕微鏡測定、例えば、蛍光寿命イメージング(FLIM)に使用される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の照明装置(20)。
【請求項11】
物体を検査する顕微鏡(40)であって、請求項1〜10のいずれか一項に記載の照明装置(20)に結合される、顕微鏡(40)。
【請求項12】
共焦点走査型顕微鏡である、請求項11に記載の顕微鏡(40)。
【請求項13】
顕微鏡(40)のための照明光線を生成する方法であって、互いに時間的にずらされた異なる波長の光成分(71、72、73、74、75、76)を有する広帯域レーザ光パルス(30)が生成され、時間的にずらされた光成分(71、72、73、74、75、76)は補正ユニット(36)に結合され、
前記光成分(71、72、73、74、75、76)が、前記補正ユニット(36)内で時間的にずらされて、前記光成分(71、72、73、74、75、76)が前記補正ユニット(36)を同時に、または略同時に出る、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−177919(P2012−177919A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−28232(P2012−28232)
【出願日】平成24年2月13日(2012.2.13)
【出願人】(500178876)ライカ マイクロシステムス ツェーエムエス ゲーエムベーハー (80)
【Fターム(参考)】