説明

ズームレンズ鏡筒

【課題】手動操作と電動切換を簡単な機構で実現したレンズ鏡筒を提供する。
【解決手段】光軸方向に移動駆動される第1の移動枠33と、第1の移動枠を光軸方向に駆動するための第1のモータ41と、外部操作により光軸上の第1の位置と第2の位置とに移動可能な外部回転操作環24と、第1のモータと機械的に連結され第1のモータ若しくは外部回転操作環の回転により駆動され第1の移動枠を駆動するための第1の駆動手段と、第1の駆動手段と機械的連結若しくは非連結となることが可能で該連結のとき外部回転操作環の回動により第1の駆動手段を介して第1の移動枠を駆動するための第2の駆動手段と、外部回転操作環が第1の位置にあるとき外部回転操作環の光軸周りの回動を検出する検出手段26d,61yと、外部回転操作環が第1の位置にあるとき検出手段からの出力を受けて第1のモータを駆動する制御手段28xとを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ズームレンズ鏡筒、詳しくは手動操作駆動と電気駆動とを切り換え可能な駆動機構を備えたズームレンズ鏡筒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像を取得するカメラ等に適用されるレンズ鏡筒においては、手動操作によるマニュアルフォーカス動作と、電気駆動を利用して行なうオートフォーカス動作とを、切り換え可能に構成した焦点調節機構を備えたものが、例えば特開2005−208633号公報等によって、種々開示され、また実用化されている。
【0003】
一方、近年のカメラ等においては、撮影画像と同時に音声の記録を行ない得るように構成したものや、静止画像の撮影記録動作のほかに音声記録を伴う動画像を撮影記録し得るようにしたものが一般に普及している。
【0004】
このような形態の従来のカメラ等、具体的には例えば静止画像及び動画像を撮影可能なカメラを用いて、例えば動画像撮影を行なう場合、動画撮影を行なっている際には、常に撮影動作が継続している状態にあるが、そのような撮影動作の継続中においても、例えばズーミング,フォーカシング等の各種の操作を行ないたい場合がある。
【0005】
例えば、動画像撮影中のズーミングは、静音下で一定の速度で変位させたいという要望もあり、電動によるズーミングとするのが至便である。
【0006】
その一方で、静止画像撮影時には、ズーミング,フォーカシング等の各種の操作は、手動操作によって所望の設定を任意に迅速に行ないたいという要望がある。
【0007】
また、従来のレンズ鏡筒に採用されるレンズ駆動機構においては、複数のレンズを光軸方向へと格別に移動させるための駆動モータとして、例えばステッピングモータ等を利用し、静音化に有利であり、かつ機構を簡便に構成することのできる直動式(close coupled type)のレンズ移動機構が多く採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−208633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、上記特開2005−208633号公報によって開示されている手段は、焦点調節機構について詳述しているものであり、さらにマニュアルフォーカス動作とオートフォーカス動作とを切り換え操作を伴わずにシームレスに切り換えることができるような構成を実現しようというものである。したがって、機構自体が複雑なものになってしまうという問題点がある。
【0010】
一方、従来のレンズ交換式カメラであって、静止画像と動画像とを撮影可能としたものにおいては、電気駆動を利用してズーミング操作を行ない得ると共に、切り換え操作を行うことで手動操作によるズーミング操作をも行ない得るように構成したレンズ駆動機構を備えたものは実用化されていない。
【0011】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、直動式のレンズ移動機構を採用した交換式のズームレンズ鏡筒であって、例えばズーミング操作,フォーカシング操作等の際に、手動操作によるマニュアル動作を確実に実現し得ると共に、手動操作と電気駆動との切り換えを簡易な機構によって実現したズームレンズ鏡筒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の一態様のズームレンズ鏡筒は、ズームレンズ鏡筒において、光軸方向に移動駆動される第1の移動枠と、上記第1の移動枠を上記光軸方向に駆動するための第1のモータと、外部操作により光軸上の第1の位置と第2の位置とに移動可能な外部回転操作環と、上記第1のモータと機械的に連結され、上記第1のモータ若しくは上記外部回転操作環の回転により駆動され上記第1の移動枠を駆動するための第1の駆動手段と、上記第1の駆動手段と機械的連結若しくは非連結となることが可能で、該連結のとき上記外部回転操作環の回動により上記第1の駆動手段を介して上記第1の移動枠を駆動するための第2の駆動手段と、上記外部回転操作環が上記第1の位置にあるとき、上記外部回転操作環の光軸周りの回動を検出する検出手段と、上記外部回転操作環が上記第1の位置にあるとき、上記検出手段からの出力を受けて上記第1のモータを駆動する制御手段と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、直動式のレンズ移動機構を採用した交換式のズームレンズ鏡筒であって、例えばズーミング操作,フォーカシング操作等の際に、手動操作によるマニュアル動作を確実に実現し得ると共に、手動操作と電気駆動との切り換えを簡易な機構によって実現したズームレンズ鏡筒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態のズームレンズ鏡筒を示す外観斜視図、
【図2】図1のズームレンズ鏡筒の構成を示す分解斜視図、
【図3】図1のズームレンズ鏡筒の構成部のうち外装ユニットを取り出して示す分解斜視図、
【図4】図1のズームレンズ鏡筒の構成部のうち鏡筒ユニットを取り出して示す分解斜視図、
【図5】図1のズームレンズ鏡筒の内部構造のうち主に3群枠移動機構を示す断面図、
【図6】図1のズームレンズ鏡筒の内部構造のうち主に4群枠移動機構を示す断面図、
【図7】図1のズームレンズ鏡筒の内部構造のうち主にスライド部材及びギアーボックスの構成を示し、電動ズームモード時における各構成部材の配置を示す平面図、
【図8】図1のズームレンズ鏡筒の内部構造のうち主にスライド部材及びギアーボックスの構成を示し、手動ズームモード時における各構成部材の配置を示す平面図、
【図9】図1のズームレンズ鏡筒の内部構成部材のうちギアーボックスの構成の一部(フリクション構造部)のみを取り出して示す断面図、
【図10】図1のズームレンズ鏡筒の内部構成部材のうちギアーボックスの構成の一部(フリクション構造部)のみを取り出して示す要部分解斜視図、
【図11】図1のズームレンズ鏡筒の内部構造のうち主にズーム環とスライド部材の連繋部の構成を示し、電動ズームモード時における各構成部材の配置を示す断面図、
【図12】図11の[12]−[12]に沿う要部拡大断面図、
【図13】図1のズームレンズ鏡筒の内部構造のうち主にズーム環とスライド部材の連繋部の構成を示し、手動ズームモード時における各構成部材の配置を示す断面図、
【図14】図13の[14]−[14]線に沿う要部拡大断面図、
【図15】図1のズームレンズ鏡筒の内部構造のうち主にズームモード位置検出手段の配設部位を拡大して示す要部拡大断面図、
【図16】図1のズームレンズ鏡筒におけるズームモード位置検出手段及びズーム環位置検出手段の一部を構成するフレキシブルプリント基板の複数の電気接点パターンの一例を示す図、
【図17】図1のズームレンズ鏡筒の内部構造を示す断面図、
【図18】図17の[18]−[18]線に沿う断面図、
【図19】図17の[19]−[19]線に沿う断面図、
【図20】図1のズームレンズ鏡筒の内部構造のうち3群枠位置検出手段の構成を示し、図18の[20]−[20]線に沿う断面図、
【図21】図1のズームレンズ鏡筒の内部構造のうち4群枠位置検出手段の構成を示す断面図、
【図22】図1のズームレンズ鏡筒の内部構造のうち電動ズームモード時のズーム環と電動ズーム連動部材との位置関係を示す断面図、
【図23】図1のズームレンズ鏡筒の内部構造のうち手動ズームモード時のズーム環と電動ズーム連動部材との位置関係を示す断面図、
【図24】図1のズームレンズ鏡筒が電動ズームモード時にあるときの内部構造を示す断面図、
【図25】図24の[25]−[25]線に沿う断面図、
【図26】図24の[25]−[25]線に沿う断面図、
【図27】図24の[27]−[27]線に沿う断面図、
【図28】図1のズームレンズ鏡筒の内部構造のうちズーム環と電動ズーム連動部材との概略構成示す模式図、
【図29】図1のズームレンズ鏡筒におけるズーム環と操作部材との配設部位の概略構成を示す要部拡大断面図であって、通常使用形態において電動ズームモード設定状態を示す図、
【図30】図29の状態から手動ズームモードに設定を変位させた状態の概略構成を示す要部拡大断面図、
【図31】図1のズームレンズ鏡筒におけるズーム環と操作部材との配設部位の概略構成を示す要部拡大断面図であって、第2の使用形態において電動ズームモード設定状態を示す図、
【図32】図31の状態からマクロモードに設定を変位させた状態の概略構成を示す要部拡大断面図、
【図33】図32の状態から手動ズームモードに設定を変位させた状態の概略構成を示す要部拡大断面図、
【図34】図1のズームレンズ鏡筒における電気的な構成部材の概略を示すブロック構成図、
【図35】図1のズームレンズ鏡筒におけるズーム操作処理のサブルーチンの概略を示すフローチャート、
【図36】図35のズーム操作処理のうち電動ズーム処理のサブルーチンの概略を示すフローチャート、
【図37】図35のズーム操作処理のうち手動ズーム処理のサブルーチンの概略を示すフローチャート、
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図示の実施の形態によって本発明を説明する。
本発明の一実施形態は、例えば光学レンズにより形成される光学像を固体撮像素子を用いて光電変換し、これによって得られる画像信号を静止画像又は動画像を表わすデジタル画像データに変換し、こうして生成されたデジタルデータを記録媒体に記録し、また記録媒体に記録されたデジタル画像データに基いて静止画像又は動画像を表示装置に再生表示し得るように構成されるデジタルカメラ(以下、単にカメラという)において適用される交換用ズームレンズ鏡筒(以下、単にレンズ鏡筒という)を例に挙げて示すものである。
【0016】
なお、本実施形態においては、レンズ鏡筒における撮影光学系の光軸を符号Oで表す。また、この光軸Oに沿う方向において、該レンズ鏡筒の前面に対向する位置にある被写体の側を前方というものとし、該レンズ鏡筒のカメラとの取付面となるマウント側を後方というものとする。
【0017】
また、以下の説明に用いる各図面においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各構成要素毎に縮尺を異ならせて示している場合がある。したがって、本発明は、これらの図面に記載された構成要素の数量,構成要素の形状,構成要素の大きさの比率及び各構成要素の相対的な位置関係は、図示の形態のみに限定されるものではない。
【0018】
まず、本実施形態のレンズ鏡筒の概略構成について、図1〜図4を用いて以下に説明する。図1は、本発明の一実施形態のレンズ鏡筒の外観斜視図である。図2は、図1のレンズ鏡筒の分解斜視図である。図3は、図1のレンズ鏡筒のうち外装ユニットの分解斜視図を示す。図4は、図1のレンズ鏡筒のうち鏡筒ユニットの分解斜視図を示す。
【0019】
本実施形態のレンズ鏡筒1は、主に図2に示すように、外装ユニット2と、鏡筒ユニット3と、前部飾り枠4等の構成ユニットによって主に構成されている。図1は、これらの各構成ユニットを組み立てた状態を示している。
【0020】
外装ユニット2は、主に図3に示すように、フォーカス環21と、本枠22と、ギアーボックス23と、ズーム環24と、スライド部材25と、電動ズーム連動部材26と、外装環27と、レンズ鏡筒主基板28と、レンズマウント部組(sub-assembly)29等によって主に構成される。
【0021】
このうち、フォーカス環21,ズーム環24,外装環27は、レンズ鏡筒1を組み立てた状態(図1の状態)としたときに、主に最外部に配設され操作部を構成する外装構成部材である。
【0022】
フォーカス環21は、略円環形状に形成されており、使用者が手動操作にて光軸O周りに正逆方向に任意に回動させることで手動による焦点調節操作を行なう際の操作入力部材として機能する構成部材である。フォーカス環21は、本枠22の外周側先端寄りの部位において光軸Oを回動中心として正逆回動自在に配設されている。
【0023】
フォーカス環21の内周面上には、くし歯状部21aが光軸中心に一周に渡って形成されている。これに対応させて本枠22の側には、上記くし歯状部21aに対抗する部位にフォトインタラプタ(PI)等からなる位置検出センサ22aが配設されている。位置検出センサ22aは、例えば本枠22の内周上において二つ配設されている。上記くし歯状部21aと位置検出センサ22aとによって、フォーカス環21の回動方向や回動量を検出する検出手段を構成している。
【0024】
ズーム環24は、同様に略円環形状に形成されており、使用者が手動操作にて光軸O周りに回動させることで手動によるズーミング操作を行なう際(手動ズームモード時)の操作入力部材として機能すると共に、電動ズームモード時には所定範囲での回動操作によりズーミング指示を行なう操作入力部材として機能するように構成された外部回転操作環である。さらに、ズーム環24は、使用者が手動操作にて光軸Oに沿う方向にスライド移動させることで、電動ズームモード,手動ズームモード,マクロモードの各モード間の切り換え操作を行なう際のモード切換部材としても機能する。
【0025】
外装環27は、同様に略円環形状に形成されており、後述するレンズマウント部組29に対して固定配置されている。外装環27には、使用者が外部から手動にて押圧操作を行なうことで、例えばフォーカス関連の動作モード切り換えやズームモードとマクロモードの切り換え等を行う際に操作する操作部材27aが複数(本実施形態においては2つ)配設されている。
【0026】
また、本枠22は、基本的な形態が略円筒形状に形成されており、上記外装構成部材(21,24,27)や後述する各機構部材(23,25,26等)等の構成物を適宜固定若しくは所定の移動を許容しながら保持すると共に、その他の構成部材(22a等)等を固定保持するための当該外装ユニット2における基本構成部材である。
【0027】
本枠22の外周側には、前面側から順にフォーカス環21,ズーム環24,外装環27が配設される。さらに、図1,図2,図3等に示すように、本枠22の最前端部には、前部飾り枠4が配設されている。この前部飾り枠4は、本レンズ鏡筒1を組み立てた状態(図1の状態)としたときに、当該レンズ鏡筒1における撮影光学系(後述する)への光束の入射を許容しながら、本レンズ鏡筒1の内部構成部材が前面から露呈しないように覆い隠すために設けられる前面カバー部材である。そのために、前部飾り枠4は、略円環形状に形成されている。前部飾り枠4の略中央部には、本レンズ鏡筒1の撮影光学系の一部を構成する第1レンズ群31aが光束を透過し得るように配設されている。また、前部飾り枠4は、上記第1レンズ群31aの外周縁部前面を覆うように配設されている(図1,図2参照)。
【0028】
また、上記本枠22には、ギアーボックス23と、スライド部材25と、電動ズーム連動部材26等の構成部材が保持されている。
【0029】
このうち、ギアーボックス23及びスライド部材25は、ズーム環24と3群枠移動機構(詳細は後述する:図5の符号41,41a〜41d,45等参照)との間に介在して、ズーム環24の操作入力(光軸方向のスライド操作)に連動する構成部材である。ギアーボックス23及びスライド部材25は、ズーム環24の光軸O方向へのスライド移動操作に連動して同方向に移動する。また、ギアーボックス23及びスライド部材25は、手動ズームモード時には、ズーム環24の光軸O周りの回動操作入力による回動駆動力をギアーボックス23を介して上記3群枠移動機構へと伝達するための駆動力伝達切換機構部の一部となる。一方、ギアーボックス23及びスライド部材25は、電動ズームモード時には、ズーム環24と3群枠移動機構との間の駆動力伝達経路を遮断する機能を有する構成部である(詳細は後述する)。
【0030】
なお、ギアーボックス23及びスライド部材25はズーム環24と連動して移動し得るように構成されている。また、ギアーボックス23は、ズーム環24によって外部からの操作入力を受けて回転させられる複数のギアー(駆動ギアー,中間ギアー等)を有して構成されている。
【0031】
そして、上記ズーム環24は、ギアーボックス23を構成する複数の駆動ギアーのうちの一つが後述するモータギアー41d(スクリューギアー)と噛合して、後述するスクリュー41b(スクリュー部材)を回転させ、後述する移動枠である第3レンズ枠33を光軸O方向に駆動する第1の状態(手動ズームモード)と、上記複数の駆動ギアーのうちの一つがモータギアー41d(スクリューギアー)と噛合しない第2の状態(電動ズームモード)とに切り換える外部回転操作環としての機能を有している。
【0032】
また、電動ズーム連動部材26は、電動ズームモード時に、ズーム環24の光軸O周りの回動操作入力に連動して作用することによって、ズーム環24の回動方向及び回動量を検知する検知手段の一部を構成する構成部である。なお、電動ズーム連動部材26は、手動ズームモード時には、ズーム環24との連動が解除されて、作用しないように構成されている(詳細は後述する)。
【0033】
なお、本枠22に保持される上記各構成部材(23,25,26)のさらに詳細な構成については後述する。
【0034】
レンズ鏡筒主基板28は、本レンズ鏡筒1の電気的な制御等を行なうためのCPU等の複数の電気部品等からなる制御回路28x(後述の図34参照)やモータドライバ回路28y(後述の図34参照)等を実装したフレキシブルプリント基板等からなる構成部である。本レンズ鏡筒1が、対応するカメラ(不図示)に装着された状態となったとき、該レンズ鏡筒主基板28の制御回路28xは、カメラ側の制御回路(不図示)との間で通信を行なって各種の制御を行なう。
【0035】
レンズマウント部組(sub-assembly)29は、本レンズ鏡筒1を適用するカメラ(不図示)との間で機械的及び電気的な接続を確保するために構成されるレンズ鏡筒1側の連結部材である。レンズマウント部組29は、上記カメラ側の制御回路等との間で行なう通信のための通信用電気接点部(不図示)を有している。
【0036】
鏡筒ユニット3は、図4に示すように、第1レンズ群31aを固定保持する第1レンズ枠31と、第2レンズ群32aを固定保持する第2レンズ枠32と、第3レンズ群33aを固定保持する第3レンズ枠33と、第4レンズ群34aを固定保持する第4レンズ枠34と、第5レンズ群35aを固定保持する第5レンズ枠35と、前部カバー環36と、前側固定枠37と、固定枠38等によって主に構成されている。
【0037】
第1レンズ群31aは、本レンズ鏡筒1の最先端部位に固定される固定レンズ群である。第1レンズ群31aは、円環形状からなる第1レンズ枠31によって固定保持されている。そして、この第1レンズ枠31は、前部カバー環36を挟んで前側固定枠37の前端部に固定されている。
【0038】
第2レンズ群32aは、主に焦点調節動作(フォーカシング)に寄与するレンズ群である。第2レンズ群32aは、第2レンズ枠32に固定保持されている。そして、この第2レンズ枠32は、前側固定枠37の内部固定部に対して両端が支持され光軸と平行に配設された吊軸32bによって、光軸Oに沿う方向に移動自在となるように構成されている(図6参照)。
【0039】
第2レンズ枠32の外周側の所定部位には、複数のフォーカシングモータ43が配設されている。フォーカシングモータ43としては、例えばボイスコイルモータ等のリニアアクチュエーターが適用される。このフォーカシングモータ43が所定のタイミングで駆動制御されることにより、第2レンズ枠32が光軸Oに沿う方向に移動して、フォーカシングが行われる。
【0040】
第3レンズ群33a,第4レンズ群34aは、主にズーミング(変倍動作)に寄与するレンズ群である。第3レンズ群33aは第3レンズ枠33に固定保持されている(第1レンズ保持枠)。第4レンズ群34aは第4レンズ枠34に固定保持されている(第2レンズ保持枠)。そして、これら第3レンズ枠33及び第4レンズ枠34は、前側固定枠37及び固定枠38の内部において、それぞれが個別に独立して光軸Oに沿う方向に移動可能に配設される移動枠である。
【0041】
第3レンズ枠33は、3群主軸33bによって光軸Oに沿う方向に移動自在に配設される第1の移動枠である。また、第3レンズ枠33は、回転止め軸33cによって3群主軸33b周りの回転が規制されている。同様に、第4レンズ枠34は、4群主軸34bによって光軸Oに沿う方向に移動自在に配設される第2の移動枠である。また、第4レンズ枠33は、回転止め軸33cによって光軸O周りの回転が規制されている。
【0042】
なお、3群主軸33b,4群主軸34b,回転止め軸33cは、先端側が前側固定枠37の内部固定部に、後端側が固定枠38の内部固定部に、それぞれ光軸と平行に固定支持されている。また、第3レンズ枠33は、絞り機構を構成する絞り羽根44a,絞り駆動モータ44等を保持している。
【0043】
前側固定枠37と固定枠38とは、光軸Oに沿う方向で連結することにより基本的な形状が略円筒形状となるように形成されており、両固定枠37,38を連結した状態からなる構成物が当該鏡筒ユニット3の基本構成部材となっている。両固定枠37,38の連結構成物は、その内部に第2,第3,第4レンズ枠32,33,34を光軸Oに沿う方向に移動自在に支持し、第3レンズ枠33を光軸O方向に移動させる3群枠移動機構(詳細後述:3群モータ41及びその駆動機構:図5参照)や第4レンズ枠34を光軸O方向に移動させる4群枠移動機構(詳細後述:4群モータ42及びその駆動機構:図6参照)等を固定保持している。
なお、第3レンズ枠33,第4レンズ枠34のそれぞれを、光軸Oに沿う方向に移動させるための3群枠移動機構及び4群枠移動機構の詳細構成については後述する。
【0044】
第5レンズ群35aは、本レンズ鏡筒1の最後端部位に固定される固定レンズ群である。第5レンズ群35aは、円環形状からなる第5レンズ枠35によって固定保持されている。そして、この第5レンズ枠35は固定枠38の後端部に固定されている。
【0045】
なお、本レンズ鏡筒1を組み立てた状態としたとき、各レンズ群は前方から第1レンズ群31a,第2レンズ群32a,第3レンズ群33a,第4レンズ群34a,第5レンズ群35aの順で光軸が一致するように並べて配置される。そして、本実施形態のレンズ鏡筒1においては、上記第1レンズ群31a,第2レンズ群32a,第3レンズ群33a,第4レンズ群34a,第5レンズ群35aの5つのレンズ群によって撮影光学系が構成されている。
【0046】
次に、第3レンズ枠33,第4レンズ枠34のそれぞれを光軸Oに沿う方向に移動させるための3群枠移動機構及び4群枠移動機構について、主に図4,図5,図6を用いて以下に詳述する。
【0047】
まず、3群枠移動機構の構成を詳述する。3群枠移動機構は、図5に示すように、第3レンズ枠33(第1の移動枠)を光軸Oに沿う方向に駆動させるための駆動源でありステッピングモータからなる第1のモータである3群モータ41を含んで構成される機構ユニットである。
【0048】
3群モータ41は、前側固定枠37の内側先端寄りの部位に固設されている。3群モータ41の回動軸は、光軸Oに沿って後方に向けて延出している。3群モータ41には、上記回動軸の周囲にて固定されるブラケット41aが設けられている。このブラケット41aは、3群モータ41の一面であって、上記回動軸が延出している面(モータ端部)から光軸Oに沿って後方に向けて延出する腕部を有し、図5に示すように、その断面がチャンネル状に形成される板金加工部材である。
【0049】
上記3群モータ41の回動軸の先端寄りの所定部位は、上記ブラケット41aの腕部先端に設けられた支持部において回動自在に軸支されている。上記3群モータ41の回動軸には、モータ端部(基端部)から上記ブラケット41aによる支持部までの領域にスクリュー41bが光軸Oと平行に形成されている。このスクリュー41bは、3群モータ41(ステッピングモータ)の回転に伴って回転するスクリュー部材である。
【0050】
また、3群モータ41の回動軸の先端部には、上記スクリュー41bを延長させて形成される軸部41cを有している。この軸部41cは、上記ブラケット41aによる軸支部位から後方に向けて突出するように形成されている。そして、この軸部41cの先端寄りの部位には、ピニオンギアーであるモータギアー41dが固設されている。つまり、このモータギアー41dは、上記スクリュー41b(スクリュー部材)の端部に設けられ、上記スクリュー41b(スクリュー部材)の回転に伴って回転するギアー(スクリューギアー)である。
【0051】
一方、上記スクリュー41bには、雌ネジを有する3群ナット45(第1の螺合部材)が螺合している。この3群ナット45は、固定枠38の固定部(不図示)によって回動規制されつつ、光軸Oに沿う方向には、上記スクリュー41bが回動するのに従って移動自在となっている。そして、このスクリュー41bの回転は、3群ナット45が光軸Oに沿う方向に移動する時、3群ナット45が第3レンズ枠33の一部を押圧することにより、当該第3レンズ枠33を光軸方向に移動させる役目をしている。
【0052】
換言すると、上記3群ナット45は、非回転状態に維持されており、上記スクリュー41b(スクリュー部材)と螺合して、上記スクリュー41b(スクリュー部材)の回転に伴って光軸Oに沿う方向に移動し、上記第3レンズ枠33(第1の移動枠)を光軸Oに沿う方向に押圧移動させるナット部材である。
【0053】
なお、3群モータ41(第1のモータ)の出力軸に設けられたスクリュー41bと、スクリュー41bに螺合し回転が規制された3群ナット45と、スクリュー41bに設けられたモータギアー41d(ピニオンギア)とからなる構成部を第1の駆動手段という。
【0054】
この第1の駆動手段は、3群モータ41(第1のモータ)と機械的に連結されて、該3群モータ41(第1のモータ)若しくはズーム環24(外部回転操作環)の回転によって駆動されることによって、第3レンズ枠33(第1の移動枠)を駆動するものである。
【0055】
また、ズーム環24(外部回転操作環)が有するインナーギアー24a(内歯ギアー)と、モータギアー41d(ピニオンギアー)と、該モータギアー41dと噛合しモータギアー41dを回転駆動可能なギアー(平歯車部236)からなる構成部を第2の駆動手段という。
【0056】
この第2の駆動手段は、ズーム環24が手動ズームモードに対応する位置(第2の位置)にあるとき、手動駆動力により回転駆動されるズーム環24のインナーギアー24aが平歯車236と噛合していて、該平歯車236でモータギアー41dを駆動する。
【0057】
この第2の駆動手段は、上記第1の駆動手段と機械的連結若しくは非連結となることが可能に構成されていて、上記第1の駆動手段と機械的連結状態にあるとき(即ちギアーボックス23の平歯車部236とモータギアー41dとが噛合状態にあるとき)には、ズーム環24(外部回転操作環)の回動により第1の駆動手段を介して3群レンズ枠33(第1の移動枠)を駆動するものである。
【0058】
他方、第3レンズ枠33は、光軸Oに沿う方向に伸縮し当該第3レンズ枠33と後述する第4レンズ枠34との間に懸架されているコイルバネ33f(図4参照)によって、第4レンズ枠34に対してバネ付勢されている。
【0059】
この構成により、3群ナット45は、第3レンズ枠33のナット当て部33d(図4,図5参照)に対して常に当接した状態となっている。ナット当て部33dは、フック形状に形成されていて、該フック形状の略中央部をスクリュー41bが挿通している。
【0060】
以上のような構成によって、3群モータ41の回動軸が正逆方向に回動されると、上記スクリュー41bに螺合している3群ナット45は、該スクリュー41b上を光軸Oに沿う方向に前後動する。そして、3群ナット45が前後動することによって、第3レンズ枠33は、光軸Oに沿う方向において上記3群ナット45と同方向に向けて、他のレンズ枠とは独立して移動し得るように構成されている。このときの作用は、電動ズームモード時の作用である(詳細後述)。
【0061】
また、3群モータ41に通電されていない状態においては、モータギアー41dを3群モータ41のディテントトルク(detent torqu;モータコイルを励磁していないときの静止トルク)より大きな回転トルクで回動させると、上記スクリュー41bを同方向に回動させることができる。これにより、同スクリュー41bに螺合している3群ナット45は、該スクリュー41b上を光軸Oに沿う方向に前後動して、上記第3レンズ枠33を光軸Oに沿う方向において上記3群ナット45と同方向に向けて、他のレンズ枠とは独立して移動させることができるように構成されている。このときの作用は、手動ズームモード時の作用である(詳細後述)。
【0062】
次に、4群枠移動機構の構成を詳述する。4群枠移動機構は、図6に示すように、第4レンズ枠34(第2の移動枠)を光軸Oに沿う方向に(光軸Oと平行に)移動させるための駆動源でありステッピングモータからなる第2のモータである4群モータ42を含んで構成される機構ユニットである。
【0063】
4群モータ42は、固定枠38の内側前端寄りの部位に固設されている。4群モータ42の回動軸は、光軸Oに沿って後方に向けて(光軸Oと平行に)延出している。4群モータ42には、上述の3群モータ41周りの構造と同様に、上記回動軸の先端部近傍を回動自在に軸支するブラケット42aが連設されている。このブラケット42aは、4群モータ42の一面であって、上記回動軸が延出している面から後方に向けて延出する腕部を有し、図6に示すように、その断面がチャンネル状に形成される板金加工部材である。
【0064】
上記4群モータ42の回動軸の先端部位は、上記ブラケット42aの先端側支持部において回動自在に軸支されている。上記4群モータ42の回動軸には、基端部から上記ブラケット42aによる軸支部位までの領域(つまり回動軸の基端から先端までの略全領域)にスクリュー42bが形成されている。
【0065】
スクリュー42bには、雌ネジを有する4群ナット46が螺合している。この4群ナット46は、固定枠38の固定部(不図示)によって回動規制されつつ、光軸Oに沿う方向には上記スクリュー42bが回動するのに従って移動自在となっている。
【0066】
一方、第4レンズ枠34は、光軸Oに沿う方向に伸縮し当該第4レンズ枠34と上記第3レンズ枠33との間に懸架されている上記コイルバネ33fによって上記第3レンズ枠33に対してバネ付勢されている。
【0067】
この構成により、4群ナット46は、第4レンズ枠34のナット当て部34d(図6参照)に対して常に当接した状態になっている。ナット当て部34dは、上記ナット当て部33dと同様に、フック形状に形成されていて、該フック形状の略中央部をスクリュー42bが挿通している。
【0068】
以上のような構成によって、4群モータ42の回動軸が正逆方向に回動されると、上記スクリュー42bに螺合している4群ナット46は、該スクリュー42b上を光軸Oに沿う方向に前後動する。そして、4群ナット46の前後動によって、第4レンズ枠34は、光軸Oに沿う方向において上記4群ナット46と同方向に向けて、他のレンズ枠とは独立して移動し得るように構成されている。
【0069】
なお、第4レンズ枠34は、上記第3レンズ枠33の移動に連動して所定の移動方向へ所定の移動量で駆動されるように制御される。つまり、第4レンズ枠34の移動方向及び移動量は、第3レンズ枠33の移動方向及び移動量に応じて4群モータ42が駆動制御されることによって設定される。したがって、第4レンズ枠34は、電動ズームモード時と手動ズームモード時とのいずれの場合においても、常に4群モータ42の駆動力によって移動する。
【0070】
次に、上記本枠22に保持される上記各構成部材のうち特にギアーボックス23,スライド部材25,電動ズーム連動部材26の構成について、図7〜図14を用いて以下に詳述する。
【0071】
まず、スライド部材25は、上述したようにズーム環24の操作入力(光軸方向のスライド操作及び光軸周りの回動操作)に連動して作用する構成部材の一つである。スライド部材25がズーム環24に連動して作用する時、該スライド部材25は、次のように機能する。即ち、スライド部材25は、
(1)ズーム環24が光軸Oに沿う方向にスライド移動されたとき、ズーム環24の光軸O方向における位置決めを行なう位置決め手段として機能するクリック機構(詳細は後述する:図11〜図14等参照)の一部を構成している。
また、スライド部材25は、
(2)ズーム環24の光軸Oに沿う方向へのスライド移動を受けて同方向にスライド移動するとき、ギアーボックス23と連繋してズーム環24と3群枠移動機構との間の駆動力伝達経路の連繋若しくは遮断を行なって、電動ズームモードと手動ズームモードとの切り換えを行なうズームモード切り換え手段の一部として機能する(詳細は後述:図7,図8,図12,図14等参照)。
そして、スライド部材25は、
(3)ズーム環24の光軸Oに沿う方向における位置を検出するズームモード位置検出手段(詳細は後述:図3,図15等参照))の一部として機能する。
【0072】
スライド部材25は、ズーム環24の光軸O周りの回動を規制することなく、かつズーム環24の光軸O方向へのスライド移動に従動して、ズーム環24と同方向へ移動し得るように構成されている。スライド部材25は、全体が薄板状でかつ本枠22の外周面に沿うような曲面形状となるように形成され、例えばモールド部材等からなる。このスライド部材25は、本枠22の外周面上に対し、所定の間隔を置いて複数(本実施形態では光軸O周りに角度120度間隔を置いて三個)配設されている。
【0073】
スライド部材25の外周面上の先端寄りの部位には、図3,図11,図13等に示すように、円周方向に沿う凹状の周溝25aが形成されている。この周溝25aには、ズーム環24の後端寄りの内周面上に内側に向けて突設される内歯ギアーであるインナーギアー24aが嵌合している。したがって、ズーム環24が回動しても、インナーギアー24aが周溝25aに沿って回動するので、ズーム環24の光軸O周りの回動が規制されることがない。
【0074】
スライド部材25は、さらに本枠22側の面に光軸O方向に沿った矩形凸形状部25eを有し、該矩形凸形状部25eは、本枠22が有する光軸方向O方向に沿った溝部に摺動可能に嵌合している。これにより、ズーム環24が光軸方向Oに移動すると共にスライド部材25も光軸O方向に移動する。
【0075】
一方、ズーム環24が光軸Oに沿う方向にスライド移動すると、インナーギアー24aと周溝25aとが嵌合していることによって、スライド部材25も同方向にスライド移動することになる。換言すれば、スライド部材25は、ズーム環24の回動を規制することなく、ズーム環24のスライド移動に対しては従動するように構成されている。
【0076】
このように形成されるスライド部材25は、ズーム環24が光軸Oに沿う方向にスライド移動するのに際して、ズーム環24が常に所定の位置に配置されるようにするための位置決めを行なうクリック機構の一部を構成している。このクリック機構は、上述のスライド部材25の機能のうち(1)項の機能を実現するための構成である。
【0077】
スライド部材25には、図3,図12,図14等に示すように、光軸Oに沿う方向に延出し内周面側に向けて突出する上記矩形凸形状部25eが形成されている。この矩形凸形状部25eの側面には、本レンズ鏡筒1の円周方向に向けた凹凸を成し、光軸Oに沿う方向に並べて配置された複数(本実施形態においては、少なくとも3つ)のクリック溝25bが形成されている。
【0078】
一方、本枠22の外周面上には、上記クリック溝25bに対向配置された固定部位に、凹状穴部22b(図12,図14参照)が形成されている。この凹状穴部22b内には、伸長性のクリックバネ252が圧縮した状態で収納されていると共に、このクリックバネ252が自身の弾性力で外部に向けて飛び出さないようにクリックボール251が凹状穴部22bの開口部近傍に収納配置されている。クリックボール251は、一部が凹状穴部22bの開口部から外部に向けて突出する位置に配置されている。この場合において、クリックボール251が上記クリックバネ252の弾性力によって外部に飛び出さないように、凹状穴部22bの開口は、クリックボール251の直径よりも小径に形成されている。これにより、クリックボール251は、クリックバネ252の弾性力によって凹状穴部22bの開口に向けて常に押圧されている状態にあり、かつクリックボール251の頭頂部が上記複数のクリック溝25bのうちの一つに常に当接した状態となっている。
【0079】
この構成により、ズーム環24が光軸Oに沿う方向へとスライド移動されると、これに連動してスライド部材25が同方向に移動するので、クリックボール251は、クリック溝25bの溝内面に当接しながら、凹状穴部22b内を突没する。そして、クリックボール251がクリック溝25bに対して嵌入した状態となったとき、クリックボール251は、クリックバネ252の弾性力による所定力量でクリック溝25bに押圧された状態になる。これによって、スライド部材25及びズーム環24の光軸Oに沿う方向におけるスライド移動は、クリックバネ252による所定力量により規制されることになる。よって、スライド部材25及びズーム環24は、常に所定の任意の位置に位置決めされることになる。
【0080】
通常の場合、クリックボール251は、複数のクリック溝25bのうちのいずれかに嵌入している状態となっている。この状態で、使用者がズーム環24を光軸Oに沿う方向にスライド移動させたとすると、スライド部材25は、ズーム環24の光軸Oに沿う方向への移動に従動して同方向にスライド移動する。すると、スライド部材25における複数のクリック溝25bが形成された部位も同方向へ移動する。このとき、クリックボール251は、クリック溝25bの斜面部によって押されてクリックバネ252が圧縮する。これにより、クリックボール251は、凹状穴部22bの内部へと押し込まれる。クリックボール251がクリック溝25bの頂部を乗り越えて、隣接するクリック溝25bへの嵌入を始めると、クリックバネ252が自身の弾性力によって伸長してクリックボール251を隣接のクリック溝25b内へと押圧し嵌入させる作用をする。このように、クリックボール251は、クリックバネ252の弾性力によって複数のクリック溝25bのうちの一つに嵌入した状態が保持されるようになっている。これにより、当該クリック機構は、スライド部材25及びズーム環24の光軸Oに沿う方向における位置決めがなされる。
【0081】
本実施形態のレンズ鏡筒1においては、ズーム環24を最も前方にスライド移動させた時の位置がマクロモード時の所定位置とする(仮にMc位置という)。また、マクロモード時の所定位置(Mc位置)から、ズーム環24を後方に向けて1クリック分だけスライド移動させた時の位置が電動ズームモード時の所定位置とする(仮にEZ位置という。また、この位置をズーム中立位置若しくは第1の位置という。)。この電動ズームモード時の所定位置(EZ位置)から、ズーム環24をさらに後方に向けて1クリック分だけスライド移動させた時の位置が手動ズームモード時の所定位置とする(仮にMZ位置という。またこの位置を第2の位置という)。
【0082】
次に、スライド部材25の機能のうち上記(2)項の機能を実現するための構成を詳述する。
上述したように、ズーム環24を光軸Oに沿う方向へとスライド移動させると、上記スライド部材25が同方向に移動する。このスライド部材25は、さらにギアーボックス23が従動するように構成されている。
【0083】
つまり、ギアーボックス23は、ズーム環24とモータギアー41dとの間に介在し、ズーム環24からの回転操作入力による駆動力をモータギアー41dへと伝達するための複数の中間ギアーを有している。
【0084】
なお、ギアーボックス23は、手動ズームモード(第1の状態)にあるときには、ズーム環24の内歯部(後述するインナーギアー24a)と駆動ギアー(ギアーボックス23のうちの一つのギアーであり後述する平歯車部236)とに噛合し、電動ズームモード(第2の状態)にあるときには、上記両者(24a,236)間の噛合を解除するクラッチ手段を有している。
【0085】
即ち、スライド部材25とギアーボックス23との間には、図7,図8等に示すように、緊縮性のコイルバネ23bが懸架されている。即ち、コイルバネ23bの一端はスライド部材25のバネ掛け部25cに架けられており、他端はギアーボックス23のバネ掛け部234aに掛けられている。これにより、スライド部材25とギアーボックス23とは、コイルバネ23bの弾性力によって常に引き合って当接し、通常は一体となっている。
【0086】
一方、上述したように、スライド部材25は、上記クリック機構によってクリックバネ252の弾性力による所定力量によって、光軸方向における上記複数の所定の位置の一つに位置決めされている。クリック機構のクリックバネ252によるクリック力は、コイルバネ23bの弾性力よりも大となるように設定されている。したがって、スライド部材25は、コイルバネ23bの力量に抗して、クリック機構による位置決めが維持されると共に、スライド部材25とギアーボックス23との両者は、相対的配置間隔が常に一定となるように設定されている。
【0087】
このような構成により、スライド部材25がズーム環24の光軸Oに沿う方向へのスライド移動に伴って同方向に移動すると、ギアーボックス23もまたコイルバネ23bの弾性力を介して連動して同方向に移動するようになっている。そして、このときギアーボックス23が同方向へとスライド移動することによって、ギアーボックス23内の歯車機構の係脱が連動して行われるように構成されている。このように、ギアーボックス23は、ズーム環24とモータギアー41dとの間の駆動力伝達経路を係脱するクラッチ手段として機能する。
【0088】
つまり、ズーム環24を光軸Oに沿う方向へのスライド移動による進退動作を行なうことによって、ズーム環24と3群枠移動機構(後述する)との間の駆動力伝達経路の連繋若しくは遮断を行なって、ズームモードの切り換えを行い得るように構成されている。
【0089】
ここで、ギアーボックス23の内部構成の詳細を、図7〜図10,図12,図14等を用いて以下に説明する。
【0090】
ギアーボックス23は、軸状歯車部231,平歯車部232,第1ギアー軸233とからなる第1ギアー部組と、軸状歯車部235,平歯車部236,押圧ばね237,ばね受ワッシャ238,第2ギアー軸239,フリクション伝達部23aaを有する軸本体23aとからなる第2ギアー部組と、支持体234等によって構成されている。
【0091】
支持体234は、板金曲げ部材等によって所定の形態に形成されており、本ギアーボックス23の本体となる構成部である。支持体234は、上記第1ギアー部組と上記第2ギアー部組とを回動自在に軸支している。
【0092】
第1ギアー部組において、軸状歯車部231と平歯車部232とは、第1ギアー軸233によって同軸上に一体に固設されている。第1ギアー軸233は、支持体234の固定部位に対して回動自在に軸支されている。これと同時に、第1ギアー軸233の両端は、本枠22の固定部に対してそれぞれ回動自在に軸支されている。したがって、第1ギアー部組自体は、本枠22に対して固定位置にある。これと同時に、ギアーボックス23の支持体234は、第1ギアー部組の第1ギアー軸233を支軸としてズーム環24のスライド方向(光軸Oに沿う方向)に移動自在に配設される。
【0093】
軸本体23aは、第2ギアー部組の本体をなす構成部である。軸本体23aは、光軸方向に平行に比較的長い中空の円筒状部材からなる長軸部23abと、円板形状からなるフリクション伝達部23aaと、長軸部23abと相対的に短い中空の円筒状部材からなる短軸部23acとが一体に連接して形成されている。
【0094】
図9に示すように、長軸部23abの外周には軸状歯車部235が固設されている。短軸部23acには平歯車部236が長軸方向に移動回転自在に嵌合、配設される。フリクション伝達部23aaは、長軸部23abと短軸部23acとの間に介在している。短軸部23acの直径はフリクション伝達部23aaの直径よりも小となるように設定されている。
【0095】
そして、軸本体23aは、フリクション伝達部23aaの中心軸と、上記長軸部23ab及び短軸部23acの各中心軸とが略一致するように、各構成部が一体に連設した形態に形成されている。
【0096】
このように構成される軸本体23aには、長軸部23ab,フリクション伝達部23aa,短軸部23acを貫通する貫通孔23dが、図9に示すように形成されている。この貫通孔23dには、図12,図14等に示すように第2ギアー軸239が挿通配置されている。そして、該第2ギアー軸239の両端は、本枠22の固定部に対して回動自在に軸支されている。
【0097】
また、平歯車部236には、図9,図10に示すように一方の面の径方向中程の部位に周溝236aが穿設されている。この周溝236aには、コイル状の押圧ばね237の一端が挿入配置される。
【0098】
一方、短軸部23acの一方の端部寄りの外周面上には、周溝23cが形成されている。この周溝23cには、短軸部23acの軸方向における所定の範囲でばね受ワッシャ238が移動自在となるように嵌入される。そのために、周溝23cは、ばね受ワッシャ238を嵌入させた状態で、該ばね受ワッシャ238を短軸部23acの軸方向に所定の範囲内での移動を許容するだけの溝幅を有するように形成されている。ばね受ワッシャ238は、略円板状の薄板部材で形成され、その略中心部には短軸部23acを挿通させ得る孔238aが形成されている。
【0099】
なお、周溝23c及びばね受ワッシャ238の孔238aには、ばね受ワッシャ238の孔238aに短軸部23acを挿通させた後、ばね受ワッシャ238が周溝23cに嵌入させ得ると共に、この状態(ばね受ワッシャ238の周溝23cへの嵌入状態)を維持し、ばね受ワッシャ238が短軸部23acから抜け出てしまうことを防止するための抜け止め構造を有している。この抜け止め構造の具体的な構成については、本発明に要旨に直接関わる部分ではないので、その詳細説明は省略し、本実施形態においては、従来一般に主知の技術(軸部材に対する円板状部材の抜け止め構造の関する技術)が適用されているものとする。
【0100】
このような構成により、上記ばね受ワッシャ238と平歯車部236との間には、上記押圧ばね237が介在している。このとき、押圧ばね237の一端面は平歯車部236の周溝236aに挿入配置され、押圧ばね237の他端面は上記ばね受ワッシャ238によって抑え込まれた状態とされている。この状態において、押圧ばね237は若干の圧縮状態とされている。
【0101】
したがって、第2ギアー部組においては、平歯車部236は、短軸部23acの軸方向に移動可能な状態で挿通配置された状態にあって、かつ平歯車部236は、押圧ばね237を介してばね受ワッシャ238によりフリクション伝達部23aaに向けて押圧されている。このような構成によって、第2ギアー部組は、軸状歯車部235と平歯車部236とが、軸本体23aを介して一体化した形態となっており、これによって、両歯車部235,236は同軸上で同方向に回動し得るように構成されている。また、これと同時に、例えば軸状歯車部235に対して押圧ばね237の付勢力以上の過負荷等が加わった場合には、軸状歯車部235と平歯車部236との間でスリップが生じ、よって、軸状歯車部235及び軸本体23aの回動に対して、平歯車部236は滑りながら従動しつつ独立して回動されるように構成されている。このように、ギアーボックス23は、いわゆるスリップクラッチ機構として機能するように構成されている。
【0102】
このように構成されたギアーボックス23が本レンズ鏡筒1の本枠22に組み付けられた状態とされたとき、ギアーボックス23の第1ギアー部組の軸状歯車部231には、ズーム環24のインナーギアー24aが噛合している。
【0103】
これにより、ズーム環24が光軸O周りに回動操作されると、これに連動して第1ギアー部組の軸状歯車部231が回動すると共に、第1ギアー部組の平歯車部232も同方向に回動する。
【0104】
第1ギアー部組の平歯車部232は、第2ギアー部組の軸状歯車部235と噛合している。したがって、上述のように第1ギアー部組の平歯車部232が回動すると、該平歯車部232に噛合する第2ギアー部組の軸状歯車部235が回動し、これと同時に第2ギアー部組の平歯車部236も同方向に回動する。
【0105】
このとき、ズーム環24が手動ズームモードに対応する位置に配置されているとすると(図8に示す状態)、第2ギアー部組の平歯車部236は上記モータギアー41dに噛合している。したがって、この状態においては、ズーム環24の回動方向の操作入力は、ギアーボックス23の第1ギアー部組,第2ギアー部組を介してモータギアー41dを回動させるように構成されている。この構成により、ズーム環24の回動操作入力による駆動力は、ギアーボックス23を介して3群枠移動機構へと伝達されることによって、手動によるズーミングを行うことができるようになっている。
【0106】
このように、手動ズームモード時においては、ズーム環24を光軸O周りに正逆方向に回動させることで、第3レンズ枠33を光軸Oに沿う方向に移動させるように構成している。この構成においては、例えばズーム環24を一方向に回動させ続けると、やがて、3群ナット45はスクリュー41bの一端に到達して、それ以上の移動はできない。このような状況となった場合において、さらにズーム環24が同方向に回動させられると、ズーム環24からギアーボックス23を介してスクリュー41bまでの間の駆動力伝達経路上に過負荷が加わることになり、これに起因して破損の虞がある。
【0107】
しかしながら、本実施形態のレンズ鏡筒1においては、上述したようにギアーボックス23にスリップクラッチ機構を設けたので、ズーム環24の回動操作入力による過負荷がギアーボックス23に加わっても、上記スリップクラッチ機構の作用によって、軸状歯車部235と平歯車部236との間でスリップが生じる。これにより、上記過負荷が軽減されると共に、ギアーボックス23等の構成物の破損の虞を回避しつつ、ズーム環24の回動操作入力を継続させることができる。
【0108】
一方、ズーム環24が電動ズームモードに対応する位置に配置されているとすると(図7に示す状態)、第2ギアー部組の平歯車部236は、モータギアー41dとの噛合状態が解除されている状態にある。換言すると、ズーム環24と3群枠移動機構との間の駆動力伝達経路は遮断された状態にある。したがって、この状態においては、第2ギアー部組の平歯車部236は空転するのみである。つまり、ズーム環24の回動操作入力による駆動力は、3群枠移動機構へと伝達されないので、本レンズ鏡筒1が電動ズームモードに設定されている時には、ズーム環24の回動操作を行なっても、手動によるズーミングは行なわれない。
【0109】
ところで、本レンズ鏡筒1においては、上述したように、ズーム環24を光軸Oに沿う方向にスライド移動操作を行うことで、電動ズームモードと手動ズームモードとの間でズームモードの設定切り換えを行なうようにしている。
【0110】
ここで、本実施形態のレンズ鏡筒1におけるズーム環24とギアーボックス23と3群移動機構との間の駆動力伝達経路と、この駆動力伝達経路を連繋する際の作用及び遮断する際の作用を、図7,図8等によって以下に簡単に説明する。
【0111】
なお、図7,図8は、本レンズ鏡筒1の内部構造を示すために、本レンズ鏡筒1を組み立てた状態から上記外装環27を省略した状態を示している。また、図7は本レンズ鏡筒が電動ズームモードに設定されている状態を示している。図8は本レンズ鏡筒が手動ズームモードに設定されている状態を示している。
【0112】
例えば、ズーム環24が電動ズームモードに設定されている状態(図7の状態)にあるときに、使用者がズーム環24を光軸Oに沿う方向(図7,図8の矢印X方向)であって同図7の矢印X2方向にスライド移動操作を行なったとする。
【0113】
すると、当該ズーム環24のスライド移動操作によって、スライド部材25も同方向へと移動し、さらにギアーボックス23のうちの支持体234及び第2ギアー部組もまた同方向へと移動する。なお、このとき第1ギアー部組は本枠22に対して固定位置にあるので移動しない。
【0114】
そして、これら一連の作用によって、第2ギアー部組の平歯車部236がモータギアー41dに噛合する。これにより、本レンズ鏡筒1におけるズーム環24とギアーボックス23と3群移動機構との間の駆動力伝達経路が連繋されて、手動ズームモードが設定される(図8の状態に移行する)。
【0115】
このように、ズーム環24の矢印X2方向へのスライド移動に従って第2ギアー部組の平歯車部236が同方向に移動し、モータギアー41dに噛合するのに際しては、両歯車(236,41d)が常にスムースに噛合されるとは限らない。
【0116】
そこで、本実施形態のレンズ鏡筒1においては、ズーム環24及びスライド部材25が連設された状態で光軸Oに沿う方向にスライド移動するのに対して、ギアーボックス23は支持体234とスライド部材25との間に懸架されるコイルバネ23bを介して同方向に従動するようになっている。
【0117】
したがって、このような構成としたことで、ズーム環24の光軸方向(矢印X2方向)へのスライド移動に従動してスライド部材25が同方向に移動し、さらにギアーボックス23のうちの支持体234及び第2ギアー部組が同方向(矢印X2方向)へとスライド移動したとき、第2ギアー部組の平歯車部236がモータギアー41dへ当接して両歯車236,41dの噛合が歯同士の干渉によって円滑に噛合しなかったとすると、ズーム環24は同方向への移動が継続されるが、コイルバネ23bが伸長して支持体234及び第2ギアー部組のスライド移動が阻止される。このとき、一体的に当接状態で移動していたスライド部材25と支持体234(即ちギアボックス23)とが一時的に離間する。この離間により歯同士の干渉による損傷を防止している。そして、平歯車部236とモータギアー41dとの相対的な位置関係が変化して、両歯車236,41dが噛合し得る状態になると、コイルバネ23bの緊縮方向の付勢力によって、支持体234及び第2ギアー部組はスライド部材25の側に引っ張られる。これにより、両歯車236,41dは噛合状態になる。
【0118】
この状態、即ちズーム環24が手動ズームモードに設定されている状態(図8の状態)から電動ズームモードに切り換えるには、使用者は、ズーム環24を光軸Oに沿う方向(図7,図8の矢印X方向)であって同図8の矢印X1方向にスライド移動操作を行なう。
【0119】
このズーム環24のスライド移動操作によって、スライド部材25は同方向へと移動し、さらにギアーボックス23のうちの支持体234及び第2ギアー部組もまた同方向へと移動する。このときにも第1ギアー部組は、上述の場合と同様に、本枠22に対して固定位置にあるので移動しない。
【0120】
そして、これら一連の作用によって、第2ギアー部組の平歯車部236とモータギアー41dとの噛合状態は解除される。これにより、本レンズ鏡筒1におけるズーム環24とギアーボックス23と3群移動機構との間の駆動力伝達経路が遮断されて、電動ズームモードが設定される(図7の状態に戻る)。
以上のように、第2ギアー部組の平歯車部236とモータギアー41dにとは、本レンズ鏡筒1が手動ズームモードにある場合(図8に示す状態)にのみ噛合している。
【0121】
次に、スライド部材25の機能のうち上記(3)項の機能を実現するための構成(ズームモード位置検出手段)を詳述する。
スライド部材25には、図15に示すように、内側面、即ち本枠22の外周面側に向けて突設される複数の板ばね状金属部材(導電部材)等により形成され、ズーム環24の光軸方向におけるズームモード位置検出用の接点部材25dが固設されている。なお、本実施形態においては、例えば図3に示すように3本の接点部材25dを配設している例を示している。
【0122】
これら複数の接点部材25dに対向する部位であって、本枠22側の外周面(固定部)上の所定の部位には、ズームモード位置検出手段の一部を構成し、上記複数の接点部材25dに対応する複数の電気接点部を実装面上に備えたフレキシブルプリント基板61の一部が固設されている。なお、フレキシブルプリント基板61の電気接点部のうちズームモード位置検出手段に関わる電気接点部は、図16に示す領域61xに設けられ、符号61a,61b,61c,61dで示す各電気接点部である。
【0123】
この構成により、ズーム環24の光軸O方向への移動に連動してスライド部材25が同方向に移動して、上記クリック機構の作用により所定の位置で停止すると、該スライド部材25の上記複数の接点部材25dの先端接触部が、上記フレキシブルプリント基板61上の上記複数の電気接点部(61a,61b,61c,61d)のうちの所定の部位に接触する。これにより、ズーム環24の光軸O方向における位置を検出することができる。そして、その検出結果は、上記レンズ鏡筒主基板28の制御回路28x(図34)へと伝達され、これを受けた該制御回路28xは、本レンズ鏡筒1のズームモードの設定状態を、電動ズームモード,手動ズームモード,マクロモードのいずれかに切り換える制御を行なうことになる。
【0124】
このように、スライド部材25の複数の接点部材25dと、本枠22側に固設されるフレキシブルプリント基板61の領域61xの複数の電気接点部61a,61b,61c,61dとによって、ズーム環24の光軸Oに沿う方向における位置を検出する機能を実現するズームモード位置検出手段として機能するスライドエンコーダを構成している。
【0125】
換言すれば、上記複数の接点部材25dを有するスライド部材25は、本枠22側に固設されるフレキシブルプリント基板61の複数の電気接点部61a,61b,61c,61dのうちの所定の部位に接触してズーム環24の光軸Oに沿う方向における位置を検出するズームモード位置検出手段の一部として機能する。
【0126】
上記ズームモード位置検出手段の一部を構成するフレキシブルプリント基板61の上記複数の電気接点パターンの一例を、図16に示す。なお、図16においては、当該フレキシブルプリント基板61に対して設けられるスライド部材25及び複数の接点部材25dの配置を概念的に仮想線(二点鎖線)で示している。
【0127】
図16に示すフレキシブルプリント基板61においては、4つの電気接点部61a,61b,61c,61dを設けた例を示している。このフレキシブルプリント基板61が本枠22の外周面上に固設されているものとする。その場合において、当該フレキシブルプリント基板61に対して接点部材25dは、図16に示す矢印X方向(光軸Oに沿う方向)に移動するものとする。また、この矢印Xに沿う方向において、矢印X1方向を本レンズ鏡筒1の前方とし、矢印X2方向を本レンズ鏡筒1の後方とする。
【0128】
したがって、本枠22に固定される上記フレキシブルプリント基板61の実装面に対して、スライド部材25の上記複数の接点部材25dは、同図矢印X方向に摺動するように構成される。
【0129】
そして、例えば、複数の接点部材25dのいずれもが図16の符号Mcで示す線を含む所定範囲内に配置されたとき、マクロモードに対応する位置にあることが検出される。具体的には、図16に示すように、接点部材25dの一つが電気接点部61aに、他の一つが電気接点部61cに、別の一つが電気接点部61bに、それぞれ接触している状態にあるとき、マクロモードに対応する位置にあると検出される。
【0130】
また、複数の接点部材25dのいずれもが図16の符号EZで示す線を含む所定範囲内に配置されたとき、電動ズームモードに対応する位置あることが検出される。具体的には、図16に示すように、接点部材25dの一つが電気接点部61aに、他の一つが電気接点部61cに接触している状態で、かつ別の一つの接点部材25dがいずれの電気接点部とも接触していない状態にあるとき、電動ズームモードに対応する位置にあると検出される。
【0131】
さらに、複数の接点部材25dのいずれもが図16の符号MZで示す線を含む所定範囲内に配置されたとき、手動ズームモードに対応する位置にあることが検出される。具体的には、図16に示すように、接点部材25dの一つが電気接点部61aに、他の一つが電気接点部61cに、別の一つが電気接点部61dに、それぞれ接触している状態にあるとき、手動ズームモードに対応する位置にあると検出される。
【0132】
また、本レンズ鏡筒1においては、主にズーミング(変倍動作)に寄与するレンズ群(第3レンズ群33a,第4レンズ群34a)の光軸方向における位置検出を行なう時、ズームレンズ枠位置検出手段を有している。
【0133】
まず、本レンズ鏡筒1においては、第3レンズ枠33(第3レンズ群33a)の光軸方向における絶対位置を検出するために、3群枠位置検出手段であり抵抗式のリニアエンコーダであるポテンショメータ62が、図18〜図20に示すように、固定枠38の外面側の所定の部位に配設されている。このポテンショメータ62は、図20に示すように、第3レンズ枠33の一部に係合する固定枠38の外から内に向かって設けられ軸状ツマミ部62aを有している。この軸状ツマミ部62aは、第3レンズ枠33が光軸Oに沿って移動するのに従動して同方向に移動するように構成されている。この構成により、ポテンショメータ62は、第3レンズ枠33の光軸方向における絶対位置を検出する。
【0134】
一方、第4レンズ枠34は、第3レンズ枠33の移動に応じて移動制御されるようになっている。つまり、第4レンズ枠34の位置は、第3レンズ枠33の位置に対応する所定の位置へと移動させる移動制御が行われる。そのために、第4レンズ枠34(第4レンズ群34a)の位置を設定するために、図21に示すように、4群枠位置検出手段であるフォトインタラプタ63が固定枠38の内面側の所定の部位に配設されている。フォトインタラプタ63は、本レンズ鏡筒1が装着されるカメラ(不図示)が、例えば電源オン状態にされたとき初期化(リセット)されるようになっている。そして、上記レンズ鏡筒主基板28の制御回路28x(図34)が4群モータ42(ステッピングモータ)のパルス管理を行なうことによって、第4レンズ枠34を上記第3レンズ枠33の位置に対応する所定の位置に移動させる制御が行われる。
【0135】
次に、ズーム環24の回動操作を行なった時、即ちズーミング操作を行なった時にズーム環24に連動する構成部材の詳細構成について、図3,図22〜図27を参照しながら、主に図28の模式図を用いて以下に説明する。
【0136】
本レンズ鏡筒1においては、手動ズームモード時には、ズーム環24を回動させることにより手動によるズーミングを行なうことができる。その際には、上述したようにズーム環24の回動操作入力による駆動力は、ギアーボックス23を介して3群枠移動機構へと伝達される。この駆動力を受けて、第3レンズ枠33は光軸O方向へと進退移動する。そして、第4レンズ枠34は、第3レンズ枠33の移動した位置に応じてモータを介して移動制御される。
【0137】
このように、本レンズ鏡筒1において、手動ズームモード時には、ズーム環24の手動操作による機械的な変位(ズーム環24の回動操作による回動量及び回動方向)に基いて第3レンズ枠33の光軸方向における位置が設定され、その第3レンズ枠33の位置情報から第4レンズ枠34の位置が電気的制御を介して設定される。
【0138】
つまり、本レンズ鏡筒1において、手動ズームモード時には、ズーム環24を上記第2の位置において、使用者がズーム環24の操作量,操作方向(回動量及び回動方向)を任意に手動設定することで、第3レンズ枠33の位置を機械的に設定することで、ズーミングが行われる。
【0139】
一方、本レンズ鏡筒1において、電動ズームモード時には、使用者がズーム環24を上記第1の位置において所定の範囲内で回動操作することによって、3群モータ41の駆動制御が行われるように構成している。
【0140】
本レンズ鏡筒1においては、電動ズームモードに設定されたときに、即ちズーム環24が電動ズームモードに対応する位置(図7若しくは図22に示す状態)、第1の位置に配置されているときに、ズーム環24の回動操作入力が行なわれると、これを受けてズーム環24の回動方向及び回動量(ズーム環24の回動位置)を検出する電動ズーム連動部材26等を有する。この電動ズーム連動部材26は、本枠22の外周面に沿うように配置される構成部材である。
【0141】
図3,図22〜図27等に示すように、上記電動ズーム連動部材26は、被係合部材26a,回動規制部材(26ba,26bb),コイルバネ26c等によって主に構成される。
【0142】
被係合部材26aは、図25〜図27に示すように、該本枠22の一部外周曲面に略一致し、該外周曲面上を摺動可能な曲面若しくは稜線部(不図示)を有して構成され、ズーム環24が電動ズームモードに対応する位置に配置されたときに、該ズーム環24の内周櫛歯状部24bに噛合される櫛歯状部26aaを有して構成されている。
【0143】
これに対応させて、上記ズーム環24には、内周面上の中程の部位に略同一周上に渡って形成され、光軸Oに沿う方向であってかつ前方に向けて櫛歯状に形成された複数の櫛歯状部24bが形成されている。
【0144】
これに対し、図28の模式図では、説明のために、電動ズームモード時における電動ズーム連動部材26の構成を簡略化して示しており、各部材形状を直線形状として図示している。
【0145】
このような構成により、ズーム環24が電動ズームモードに設定されているときには、図22に示すように、ズーム環24の内周櫛歯状部24bと、電動ズーム連動部材26の被係合部材26aの櫛歯状部26aaとが噛合するようになっている。
【0146】
また、ズーム環24が電動ズームモードに設定されている状態(図22参照)から光軸Oに沿う方向であって図22に示す矢印X1方向に向けてスライド移動して、同ズーム環24が手動ズームモードに設定されると、図23に示すように、内周櫛歯状部24bと、櫛歯状部26aaとが互いに離間した位置に配置され、両者の噛合状態が解除されるように構成されている。
【0147】
さらに、ズーム環24が手動ズームモードに設定されている状態(図23参照)から光軸Oに沿う方向であって図23に示す矢印X2方向に向けてスライド移動して、同ズーム環24が電動ズームモードに設定されると、図22に示す状態、即ち内周櫛歯状部24bと櫛歯状部26aaとは、再度噛合状態となる。
【0148】
なお、図28に示す状態は、内周櫛歯状部24bと櫛歯状部26aaとが噛合した状態を示している。
また、図25において電動ズーム連動部材26が同図において矢印R2方向に回動した位置にある状態(ワイド方向側への指示終端位置)と、図26において電動ズーム連動部材26が同図において矢印R1方向に回動した位置にある状態(テレ方向側への指示終端位置)と、の二態様を同時に示している。
図27においては、電動ズーム連動部材26がそれぞれワイド端位置(符号26W),中立位置(符号26C),テレ端位置(符号26T)にある状態を図面上において重畳させて同時に示している。
【0149】
一方、電動ズーム連動部材26は、ズーム環24の回動量を所定範囲内に規制するための二つの回動規制部材(26ba,26bb)を相対的に変位可能で摺動可能に載置する。回動規制部材26baは、図28に示すように、ズーム環24の光軸O周りの一方向(例えば図28の矢印R1方向)の回動範囲を規制し、もう一つの回動鵜規制部材26bbは、他方向(例えば図28の矢印R2方向)の回動範囲を規制する。
【0150】
二つの回動規制部材26ba,26bbは、本枠22の外周面上において周方向に延びる二つの凹溝状部22da,22db内にそれぞれ収納されている。この二つの凹状部22da,22dbは、本枠22の一部を形成する固定部である係止壁部22ca,22cbを挟んで周方向に向けて隣接させて形成されている。そして、二つの凹状部22da,22db内にそれぞれに収納された二つの回動規制部材26ba,26bbは、例えば緊縮性の弾性部材等からなるコイルバネ26cによって互いが引き合うように連結されている。
【0151】
また、回動規制部材26ba,26bbそれぞれには光軸周りに径方向に凹んだ長方形の凹部26bah,26bbhが設けられている。この凹部26bah,26bbhそれぞれには、被係合部材26aの径方向に凸状の凸部26ay,26axが嵌入している。そして、凸部26ayが凹部26bahの中で光軸周りの方向に遊嵌可能となっていて、凸部26axが凹部26bbhの中で光軸周りの方向に遊嵌可能となっている。
【0152】
そして、二つの回動規制部材26ba,26bbは、上記被係合部材26aに対して下記に説明する部位で係合していることにより、上記被係合部材26aの回動(移動)に従動して同方向に回動(移動)し得るように構成される。
【0153】
具体的には、例えば図28に示すように、二つの回動規制部材26ba,26bbのうち一方の回動規制部材26baは、一端部26bxが被係合部材26aの一方の係合突部26axに当接している。また、他方の回動規制部材26bbは、一端部26byが被係合部材26aの他方の係合突部26ayに当接している。
【0154】
このような構成により、二つの回動規制部材26ba,26bbは、二つの凹状部22da,22db内のそれぞれに収納された状態で、コイルバネ26cの弾性力によって引き合い釣り合った状態となっている。この状態にあって、二つの回動規制部材26bの間には、本枠22の係止壁部22cが挟持された状態となっている。したがって、二つの回動規制部材26ba,26bbは、それぞれの一端が対応する係止壁部22cに当接した状態でとなっている(図28参照)。なお、二つの回動規制部材26ba,26bbは、上記二つの凹状部22da,22dbの各長辺方向に移動自在に係入された状態となっている。
【0155】
このように構成された上記電動ズーム連動部材26の作用を、図28によって簡単に説明すると、次のようになる。
【0156】
まず、図28に示す状態は、ズーム環24の内周櫛歯状部24bと電動ズーム連動部材26の櫛歯状部26aaとが噛合状態となっており、かつズーム環24に対しては回動方向への負荷が掛かっていない状態とする(ズーム環24が中立位置にある状態;図27の符号26Cも参照)。
【0157】
ズーム環24が、電動ズームモード状態でズームの中立位置(ズームのテレ端とワイド端の中間)にある状態において、使用者がズーム環24に対して、例えば図28の矢印R1方向への負荷をかける回動操作を行なったとする。これにより、ズーム環24は同図矢印R1方向へ向けて回動(移動)する。すると、これに伴って櫛歯状部24bと櫛歯状部26aaとの噛合により、上記被係合部材26aも同R1方向に回動(移動)する。さらに、被係合部材26aの一方の係合突部26axと、一方の回動規制部材26baの一端部26bxとが当接していることにより、被係合部材26aは、コイルバネ26cの弾性力に抗して一方の回動規制部材26baを同R1方向に移動させる。これにより、一方の回動規制部材26baは、同R1方向に従動する。このときの、該一方の回動規制部材26baの移動範囲は、凹状部22daによって規制される。つまり、一方の回動規制部材26baの移動範囲は、一端部26bxが本枠22の一方の固定壁22faに当接するまでの範囲となる。なお、一端部26bxが本枠22の一方の固定壁22faに当接した状態にある時のズーム環24の位置を、例えばテレ端位置とする。このテレ端位置とは、本レンズ鏡筒1において設定し得る焦点距離範囲(ズーミング範囲)のうち長焦点(テレ)側の最も長焦点寄りの位置をいうものとする(図27の符号26Tも参照)。
【0158】
また、一方の回動規制部材26baがコイルバネ26cの弾性力に抗して同R1方向に移動するとき、他方の回動規制部材26bbは、本枠22の係止壁部22cbに当接することで、その移動が規制された状態となる。したがって、このとき、他方の回動規制部材26bbは不動状態が維持されている。
【0159】
この状態において、使用者がズーム環24の矢印R1方向への負荷を解除すると、一方の回動規制部材26baは、コイルバネ26cの弾性復元力によって、図28の矢印R2方向へと回動(移動)する。これにより、一方の回動規制部材26baが被係合部材26aを同R2方向へと回動(移動)させる。すると、ズーム環24もまた同R2方向へと回動(移動)する。そして、二つの回動規制部材26ba,26bbは、最終的に、二つの凹状部22da,22db内でコイルバネ26cの弾性力により引き合い、二つの回動規制部材26ba,26bbそれぞれは係止壁部22Ca,22Cbに当接し、釣り合った状態となる。これにより、ズーム環24は、所定の中立位置に復帰し、その状態が維持される。
【0160】
他方、図28に示す状態(ズーム環24の中立位置)から、使用者がズーム環24に対して、例えば図28の矢印R2方向への負荷をかける回動操作を行なったとする。これにより、ズーム環24は同図矢印R2方向へ向けて回動(移動)する。すると、これに伴って、上記被係合部材26aも同R2方向に回動(移動)する。さらに、被係合部材26aの他方の係合突部26ayと、他方の回動規制部材26bbの一端部26byとが当接していることにより、被係合部材26aは、コイルバネ26cの弾性力に抗して他方の回動規制部材26bbを同R2方向に移動させる。これにより、他方の回動規制部材26bbは、同R2方向に従動する。このときの、該他方の回動規制部材26bbの移動範囲は、凹状部22dbによって規制される。つまり、他方の回動規制部材26bbの移動範囲は、一端部26byが本枠22の他方の固定壁22fbに当接するまでの範囲となる。なお、一端部26byが本枠22の他方の固定壁22fbに当接した状態にある時のズーム環24の位置を、例えばワイド端位置とする。このワイド端位置とは、本レンズ鏡筒1において設定し得る焦点距離範囲(ズーミング範囲)のうち短焦点(ワイド)側の最も短焦点寄りの位置をいうものとする(図27の符号26Wも参照)。
【0161】
また、他方の回動規制部材26bbがコイルバネ26cの弾性力に抗して同R2方向に移動するとき、一方の回動規制部材26baは、本枠22の係止壁部22caに当接することで、その移動が規制された状態となる。したがって、このとき、一方の回動規制部材26baは不動状態が維持されている。
【0162】
この状態において、使用者がズーム環24の矢印R2方向への負荷を解除すると、他方の回動規制部材26bbは、コイルバネ26cの弾性復元力によって、図28の矢印R1方向へと回動(移動)する。これにより、他方の回動規制部材26bbが被係合部材26aを同R1方向へと回動(移動)させる。すると、ズーム環24もまた同R1方向へと回動(移動)する。そして、二つの回動規制部材26ba,26bbは、最終的に、二つの凹状部22da,22db内でコイルバネ26cの弾性力により引き合い、二つの回動規制部材26ba,26bbそれぞれは係止壁部22Ca,22Cbに当接し、釣り合った状態となる。これにより、ズーム環24は、所定の中立位置に復帰し、その状態が維持される。
【0163】
また、本レンズ鏡筒1においては、ズーム環24の光軸O周りのズーム環24の回動位置(回動方向及び回動量)を検出するズーム環位置検出手段を有している。
即ち、電動ズーム連動部材26には、図27に示すように、本枠22の外周面側に向けて突設される複数の板ばね状金属部材(導電部材)等により形成され、ズーム環24の回動方向における位置を検出するためのズーム環位置検出手段の一部を構成する接点部材26dが固設されている。なお、本実施形態においては、例えば図16(の仮想線)に示すように、3本の接点部材26dを配設している。
【0164】
これら複数の接点部材26dに対向する部位であって、本枠22側の外周面(固定部)上の所定の部位には、上記複数の接点部材26dに対応する複数の電気接点部を実装面上に備えた上記フレキシブルプリント基板61の一部が固設されている。このフレキシブルプリント基板61は、上述したようにズームモード位置検出手段の一部を構成すると共に、当該ズーム環位置検出手段の一部を構成するものでもある。
【0165】
なお、フレキシブルプリント基板61の電気接点部のうちズーム環位置検出手段に関わる電気接点部は、図16に示す領域61yに設けられ、符号61e,61f,61g,61hで示す電気接点部である。
【0166】
この構成により、ズーム環24の光軸O周りの回動に連動して電動ズーム連動部材26が同方向に回動すると、電動ズーム連動部材26の上記複数の接点部材26dの先端接触部が、上記フレキシブルプリント基板61上の上記複数の電気接点部(61e,61f,61g,61h)のうちの所定の部位に接触する。この場合において、複数の接点部材26dと複数の電気接点部61e,61f,61g,61hとの接触の組み合わせは、ズーム環24の位置に応じて異なるので、ズーム環24の光軸O周りの回動方向における位置を検出することができるようになっている。
【0167】
上記の構成により、電動ズーム連動部材26の複数の接点部材26dと、本枠22側に固設されるフレキシブルプリント基板61の領域61yの複数の電気接点部61e,61f,61g,61hとによって、ズーム環24の光軸O周りの回動方向における位置を検出しズーム環24の回動位置を検出する機能を実現するズーム環位置検出手段として機能するスライドエンコーダを構成している。
【0168】
換言すれば、上記複数の接点部材26dを有する電動ズーム連動部材26は、本枠22側に固設されるフレキシブルプリント基板61の複数の電気接点部61e,61f,61g,61hのうちの所定の部位に接触してズーム環24の光軸O周りの回動方向における位置を検出するズーム環位置検出手段の一部として機能する。
【0169】
そして、上述のようにして検出されたズーム環24の位置情報は、上記レンズ鏡筒主基板28の制御回路28x(図34)へと伝達されて、これを受けた当該制御回路28xは、3群モータ41,4群モータ42のそれぞれを駆動制御して、電動によるズーミング動作時のズーミング方向及びズーミング速度等の駆動制御を実行する。
【0170】
例えば、上記ズーム環位置検出手段の一部を構成するフレキシブルプリント基板61の上記複数の電気接点パターンの一例を、図16に示す。なお、図16においては、当該フレキシブルプリント基板61に対して設けられる電動ズーム連動部材26及び複数の接点部材26dの配置を概念的に仮想線(二点鎖線)で示している。
【0171】
当該フレキシブルプリント基板61に対して接点部材26dは、図16に示す矢印R方向(光軸O周りの回動方向)に移動するものとする。また、この矢印Rに沿う方向において、ズーム環24が中立位置にある時、矢印R1方向へと回動する時には、中立位置から長焦点距離側へのズーミングがなされるものとし、反対に、矢印R2方向へと回動する時には、中立位置から短焦点距離側へのズーミングがなされるものとする。
【0172】
この構成により、ズーム環24が光軸O周りに回動する時、本枠22に固定される上記フレキシブルプリント基板61の実装面に対して、電動ズーム連動部材26の上記複数の接点部材26dは、同図矢印R方向に摺動するように構成されている。
【0173】
そして、例えば、複数の接点部材26dのいずれもが図16の符号Cで示す線を含む所定範囲内に位置されたとき、本レンズ鏡筒1における設定可能なズーミング範囲のうちの略中間の焦点距離に対応する位置であることが検出される。なお、図16の符号Cで示される位置をズーミング中立位置とする。このズーミング中立位置とは、製品としてのレンズ鏡筒毎に予め設定される中間焦点距離である。そして、この状態(接点部材26dがズーミング中立位置(図16の符号C)にある状態)は、上述したように、電動ズーム連動部材26のコイルバネ26cの弾性力の作用によって、ズーム環24が中立位置にある状態に対応している。
【0174】
具体的には、図16に示すように、接点部材26dの一つが電気接点部61eに、他の一つが電気接点部61hに接触している状態で、かつ別の一つの接点部材26dがいずれの電気接点部とも接触していない状態にあるとき、ズーム環24はズーミング中立位置に対応する位置であると検出される。
【0175】
また、ズーム環24がズーミング中立位置にある状態から、使用者の回動操作によって回動されて、複数の接点部材26dが、例えば図16の矢印R1方向に移動して、複数の接点部材26dのいずれもが図16の符号TL,TM,THで示す線のいずれかを含む所定範囲内に配置されたとき、本レンズ鏡筒1における設定可能なズーミング範囲のうち上記ズーミング中立位置よりも長焦点距離側へ向けて(矢印R1方向へ)ズーム環24を回動させたことが検出される(回動方向の検出)。なお、符号TL,TM,THの各位置を検出することにより、ズーム環24の回動角度の大小を検出することができるようにもなっている。ここで、ズーム環24の回動角度は、回動操作を大きくするにつれて、符号TL,TM,THの各位置の順に対応するように設定されている(相対的な回動量の検出)。なお、電動ズームモード時におけるズーム環24の回動角度としては、例えば角度±10度〜15度程度に設定される。
【0176】
例えば、複数の接点部材26dのいずれもが符号TLで示す線を含む所定範囲内に位置されたときには、ズーム環24が上記ズーミング中立位置(符号C)から長焦点距離側へ向けて(矢印R1方向へ)回動され、かつその回動角度が小であることが検出される。具体的には、図16に示すように、接点部材26dの一つが電気接点部61eに、他の一つが電気接点部61fに、別の一つが電気接点部61hに、それぞれ接触状態にあるとき、ズーム環24は、長焦点距離側へ向けて(矢印R1方向へ)回動角度が「小」角度で回動されたことが検出される。このとき、上記制御回路28x(図34)は、長焦点方向へのズーミングを低速駆動で駆動制御する制御を行なう。
【0177】
また、複数の接点部材26dのいずれもが符号TMで示す線を含む所定範囲内に位置されたときには、ズーム環24が上記ズーミング中立位置(符号C)から長焦点距離側へ向けて(矢印R1方向へ)回動され、かつその回動角度が中であることが検出される。具体的には、図16に示すように、接点部材26dの一つが電気接点部61eに、他の一つが電気接点部61fに、別の一つの接点部材26dがいずれの電気接点部とも接触していない状態にあるとき、ズーム環24は、長焦点距離側へ向けて(矢印R1方向へ)回動角度が「中」角度で回動されたことが検出される。このとき、上記制御回路28x(図34)は、長焦点方向へのズーミングを上記「低速駆動」と比較してより速い速度の中速駆動で駆動制御する制御を行なう。
【0178】
さらに、複数の接点部材26dのいずれもが符号THで示す線を含む所定範囲内に位置されたときには、ズーム環24が上記ズーミング中立位置(符号C)から長焦点距離側へ向けて(矢印R1方向へ)回動され、かつその回動角度が大であることが検出される。具体的には、図16に示すように、接点部材26dの一つが電気接点部61eに、他の一つが電気接点部61fに、別の一つが電気接点部61gに、それぞれ接触状態にあるとき、ズーム環24は、長焦点距離側へ向けて(矢印R1方向へ)回動角度が「大」角度で回動されたことが検出される。このとき、上記制御回路28x(図34)は、長焦点方向へのズーミングを上記「中速駆動」と比較してより速い速度の高速駆動で駆動制御する制御を行なう。
【0179】
一方、ズーム環24がズーミング中立位置にある状態から、使用者の回動操作によって回動されて、複数の接点部材26dが、例えば図16の矢印R2方向に摺動して、複数の接点部材26dのいずれもが図16の符号WL,WM,WHで示す線のいずれかを含む所定範囲内に配置されたとき、本レンズ鏡筒1における設定可能なズーミング範囲のうち上記ズーミング中立位置よりも短焦点距離側へ向けて(矢印R2方向へ)ズーム環24を回動させたことが検出される(回動方向の検出)。なお、符号WL,WM,WHの各位置を検出することにより、ズーム環24の回動角度の大小を検出することができるようにもなっている。ここで、ズーム環24の回動角度は、回動操作を大きくするにつれて、符号WL,WM,WHの各位置の順に対応するように設定されている(相対的な回動量の検出)。
【0180】
例えば、複数の接点部材26dのいずれもが符号WLで示す線を含む所定範囲内に位置されたときには、ズーム環24が上記ズーミング中立位置(符号C)から短焦点距離側へ向けて(矢印R2方向へ)回動され、かつその回動角度が「小」角度であることが検出される。具体的には、図16に示すように、接点部材26dの一つが電気接点部61eに、他の一つが電気接点部61gに、別の一つが電気接点部61hに、それぞれ接触状態にあるとき、ズーム環24は、短焦点距離側へ向けて(矢印R2方向へ)回動角度が「小」角度で回動されたことが検出される。このとき、上記制御回路28x(図34)は、短焦点方向へのズーミングを「低速駆動」で駆動制御する制御を行なう。
【0181】
また、複数の接点部材26dのいずれもが符号WMで示す線を含む所定範囲内に位置されたときには、ズーム環24が上記ズーミング中立位置(符号C)から短焦点距離側へ向けて(矢印R2方向へ)回動され、かつその回動角度が「中」角度であることが検出される。具体的には、図16に示すように、接点部材26dの一つが電気接点部61eに、他の一つが電気接点部61gに、別の一つの接点部材26dがいずれの電気接点部とも接触していない状態にあるとき、ズーム環24は、短焦点距離側へ向けて回動角度が「中」角度で回動されたことが検出される。このとき、上記制御回路28x(図34)は、短焦点方向へのズーミングを上記「低速駆動」と比較してより速い速度の「中速駆動」で駆動制御する制御を行なう。
【0182】
さらに、複数の接点部材26dのいずれもが符号WHで示す線を含む所定範囲内に位置されたときには、ズーム環24が上記ズーミング中立位置(符号C)から短焦点距離側へ向けて(矢印R2方向へ)回動され、かつその回動角度が「大」角度であることが検出される。具体的には、図16に示すように、接点部材26dの一つが電気接点部61eに接触状態にあり、かつ他の二つの接点部材26dがいずれの電気接点部とも接触していない状態にあるとき、ズーム環24は、短焦点距離側へ向けて回動角度が「大」角度で回動されたことが検出される。このとき、上記制御回路28x(図34)は、短焦点方向へのズーミングを上記「中速駆動」と比較してより速い速度の「高速駆動」で駆動制御する制御を行なう。
【0183】
上述したように、本レンズ鏡筒1においては、使用者がズーム環24を手動操作にて光軸Oに沿う方向にスライド移動させることによって、電動ズームモード,手動ズームモード,マクロモードの各モード間の切り換え操作を行なうことができるようになっている。したがって、例えば、本レンズ鏡筒1を装着したカメラ(不図示)の使用中に、ズーム環24が不用意にスライド移動してしまうと、使用者の使用意図に反して異なる設定に切り換わってしまうことになる。
【0184】
そこで、本レンズ鏡筒1においては、各ズームモードやマクロモードに設定した時に、それぞれの設定モードに応じて、ズーム環24の光軸方向への移動を規制若しくは許容して、各ズームモードとマクロモードとの間の切り換え操作を行なうズーム操作切換手段を有している。
【0185】
本レンズ鏡筒1において、ズーム操作切換手段は、外装ユニット2の外装環27に設けられる操作部材27aのうちの一つと、この操作部材27aの押圧操作に連動してズーム環24の光軸方向への移動を規制したり同移動を許容するズーム環係止部材64と、このズーム環係止部材64を保持する係止部材保持部22eとによって主に構成される。
【0186】
なお、本レンズ鏡筒1において、上記操作部材27aは、上述したように二つ配設されているものとしている。この二つの操作部材27aのうち、一方はフォーカス関連の動作モード切り換え操作を行なう操作部材であり、他方は、上記ズーム操作切換手段に含まれる操作部材である。本発明は、特にズーム操作に関連する構成についてのものであるので、以下の説明では、ズーム操作切換手段の一部としての操作部材27aのみを詳述し、その他の操作部材27aについての説明は省略する。
【0187】
図29〜図33は、本実施形態のレンズ鏡筒1におけるズーム環24と操作部材27aとが配設されている部位の断面を拡大して示す要部拡大断面図である。なお、これら各図面においては、当該部位の構成を簡略化して示すために、ズーム環24と操作部材27aとこれらに関連する部材のみを示し、他の部材の図示を省略している。
【0188】
このうち、図29,図30は、ズーム操作切換手段によって設定される通常使用形態(電動ズームモードと手動ズームモードとを相互に切り換えて使用する形態)の各部材の配置を示し、図29は電動ズームモードに設定されている状態を、図30は手動ズームモードに設定されている状態をそれぞれ示している。図29,図30の状態ではズーム操作切換手段の操作部材27aが押されていない状態である。
【0189】
また、図31,図32は、ズーム操作切換手段によって設定される第2の使用形態(電動ズームモードとマクロモードとを相互に切り換えて使用する形態)の各部材配置を示し、図31は電動ズームモードに設定されている状態を、図32はマクロモードに設定されている状態をそれぞれ示している。図30,図31の状態ではズーム操作切換手段の操作部材27aが押されている状態である。
【0190】
そして、図33は、ズーム操作切換手段によって設定される第3の使用形態(手動ズームモードとマクロモードとを相互に切り換えて使用する形態)の各部材配置を示し、図33は手動ズームモードに設定されている状態を示している。図33の状態ではズーム操作切換手段の操作部材27aが復帰した状態となっている。
【0191】
操作部材27aは、上述の如く外装ユニット2の外装環27及び本枠22に設けられる操作部材である。該操作部材27aは、使用者が外部から指等によって押圧操作を行なう押圧式の操作部材である。なお、本レンズ鏡筒1において、操作部材27aの押圧方向は、例えば図29等に示す矢印W方向、即ち光軸Oに直交する方向である。操作部材27aは、常に外装環27の外周表面から外方に向けて常に付勢された状態にある。
【0192】
ズーム環係止部材64は、操作部材27aの押圧操作に連動して該操作部材27aの押圧方向と同方向に移動し得るように構成されている。ズーム環係止部材64は、本枠22の後端寄りの外周面上の一部に形成される係止部材保持部22eによって保持されている。ズーム環係止部材64は、係止部材保持部22e内において操作部材27aの押圧方向と同方向に移動自在に収納保持されている。ズーム環係止部材64は、コイルバネ等の付勢部材64cによって、係止部材保持部22e内から外部に向けて常に付勢された状態にある。
【0193】
換言すると、ズーム環係止部材64は、ズーム環24と共に同方向にスライド移動するスライド部材25の移動経路に対して突没するように移動自在に配設されている。つまり、ズーム環係止部材64は、スライド部材25の移動経路に突出して該スライド部材25のスライド移動を係止する係止位置と、スライド部材25の移動経路から退避してスライド部材25のスライド移動を許容する退避位置との間で移動自在となっている。
【0194】
本レンズ鏡筒1において、ズーム環24が電動ズームモードに対応する上記ズーム中立位置に配置されている状態(この状態を通常状態というものとする)であって、操作部材27aが押圧操作されていない状態では、図29に示すように、ズーム環係止部材64は、スライド部材25のスライド移動経路上に突出した係止位置に配置されている。
【0195】
この状態では、図29の符号P2で示す係止ポイントにおいて、スライド部材25の後端寄りの第2被係止部25yとズーム環係止部材64の後端寄りの係止部64bとが互いに当接することによって、ズーム環24及びスライド部材25の図29の矢印X1方向へのスライド移動を係止している。これにより、電動ズームモードからマクロモードへの切り換えを係止している。
【0196】
一方、図29に示す状態(電動ズームモード状態)から、ズーム環24及びスライド部材25を同図矢印X2方向へとスライド移動させて、図30に示す状態(手動ズームモード状態)へと切り換えることは許容されている。また、この状態では、図30の符号P1で示す係止ポイントにおいて、スライド部材25の前端寄りの第1被係止部25xとズーム環係止部材64の前端寄りの係止部64aとが互いに当接することによって、ズーム環24及びスライド部材25の図30の矢印X2方向へのスライド移動を係止している。これにより、手動ズームモードからズーム環24及びスライド部材25をさらに後方へと移動するのを係止している。
【0197】
このように、図29,図30に示す状態では、ズーム環係止部材64がスライド部材25のスライド移動のうちマクロモードへ切り換える方向の移動を係止することによって、通常の使用、即ち電動ズームモードと手動ズームモードとを任意に切り換えて使用することができる。同時に、このような通常使用時とは異なる使用形態となるマクロモードへの切り換えは係止(ロック)された状態にあるので、使用者の意図に反して不用意に行われるようなことがない。
【0198】
次に、上述の図29に示す状態において、操作部材27aが矢印W方向に押圧操作され、その状態が維持されている間、ズーム環係止部材64は、図31に示すようにスライド部材25のスライド移動経路上から退避した退避位置に移動する。これにより、図31に示す係止ポイントP2においては、ズーム環係止部材64の係止部64bがスライド部材25のスライド移動経路から退避するので、スライド部材25の第2被係止部25yに対する係止状態が解除される状態になる。したがって、ズーム環24及びスライド部材25は、図31の矢印X1方向へのスライド移動が可能となり、図32に示すマクロモードに対応する位置に配置することができるようになる。
【0199】
そして、図32に示す状態(マクロモード状態)となったときには、スライド部材25の中程に形成された第3被係止部25wが、ズーム環係止部材64の係止部64aに当接することによって、上記矢印X1方向へのスライド部材25のスライド移動が係止される。これにより、ズーム環24及びスライド部材25は、マクロモードに対応する位置よりさらに矢印X1方向への移動が規制されている。
【0200】
なお、このようにしてマクロモード状態になった時には、ズーム環24の上記櫛歯状部24bは、本枠22の外周面上の先端寄りの部位に形成された櫛歯被係合部22g(図3参照)と噛合する。この噛合によって、ズーム環24は、光軸O周りの回動が規制される構成となっている。本レンズ鏡筒1においては、マクロモードに設定した時には、ズーミング操作を規制して、焦点距離を固定設定とする仕様構成を採用しているためである。
【0201】
そして、図32に示す状態(マクロモード状態)から、ズーム環24を同図矢印X2方向に向けてスライド移動させると、スライド部材25は、第1被係止部25xがズーム環係止部材64の係止部64aに当接するまで、即ち、ズーム中立位置である電動ズームモードに対応する位置を通り過ぎて、図33に示す手動ズームモードに対応する位置まで移動し得る。このスライド部材25のスライド移動によって、スライド部材25の第2被係止部25yが、ズーム環係止部材64の係止部64bから離れた位置に配置されるので、ズーム環係止部材64は、付勢部材64cの付勢力により突出位置に復帰する。こうしてマクロモードから手動ズームモードへと移行すると、ズーム環係止部材64は、スライド部材25の矢印X1方向へのスライド移動を規制する状態になる。
【0202】
以上のように構成された本実施形態のレンズ鏡筒1における電気的な構成部材の概略は、図34のブロック図に示すようなものとなる。なお、図34は、本レンズ鏡筒1における電気的構成部材のうちズーム動作に関連する構成部材のみを示すものであり、その他、本発明に関連しない構成部材については図示を省略している。
【0203】
図34に示すように、本レンズ鏡筒1における電気的な制御は、レンズ鏡筒主基板28に実装された制御回路28xによって統括的になされる。レンズ鏡筒主基板28内には、モータドライバ28yが設けられる。このモータドライバ28yは、制御回路28xの制御下にあり、ズーミングに寄与する駆動源である3群モータ41,4群モータ42等の駆動制御を行なう。
【0204】
また、制御回路28xは、ズーミングに寄与するレンズ群(第3レンズ群33a,第4レンズ群34a)をそれぞれ保持する第3レンズ枠33,第4レンズ枠34の位置検出を行なう3群枠位置検出手段(ポテンショメータ62),4群枠位置検出手段(フォトインタラプタ63)と電気的に接続されている。
【0205】
そして、制御回路28xは、ズーム環24の光軸方向及び回転方向の位置をそれぞれ検出するズームモード位置検出手段(25d,61x),ズーム環位置検出手段(26d,61y)とも電気的に接続されている。
【0206】
このような構成により、制御回路28xは、例えばズーム位置検出手段,ズーム環位置検出手段からの検出結果に基いて、ズーム環24によるズームモードの設定状態やズーム環24の回転方向,回転量等を検出する。その検出結果に基いて、各ズームモードに応じた動作制御を実行する。
【0207】
簡単に言うと、制御回路28xは、ズーム環24(外部回転操作環)が電動ズームモード(第2の状態;第1の位置)にあるとき、ズーム環24の回転に連動して3群モータ41(ステッピングモータ)及び4群モータ42を駆動制御する制御手段である。また、制御回路28xは、ズーム環24(外部回転操作環)が手動ズームモード(第1の状態;第2の位置)にあるとき、ズーム環24の回転に連動して光軸方向に移動する第3レンズ枠33の位置検出結果に応じて、4群モータ42を駆動制御する制御手段である。
【0208】
例えば、ズーム位置検出手段によって電動ズームモードに設定されていることが検出されている場合には、ズーム環位置検出手段からの検出結果に基いて、ズーム環24が回転されるとモータドライバ28yを介して3群モータ41を駆動制御し、3群枠位置検出手段(62)の検出結果に基いてモータドライバ28yを介して4群モータ42を駆動制御する。そして、4群枠位置検出手段(63)の検出結果に基いて4群モータ42の駆動停止制御を行なうといった電動によるズーミング制御を実行する。
【0209】
次に、本実施形態のレンズ鏡筒1において、ズーミングを行なう際の作用を、図35〜図37を用いて以下に簡単に説明する。
【0210】
図35は、本レンズ鏡筒1におけるズーム操作処理のサブルーチンの概略を示すフローチャートである。図36は、図35のズーム操作処理のうち電動ズーム処理のサブルーチンの概略を示すフローチャートである。図37は、図35のズーム操作処理のうち手動ズーム処理のサブルーチンの概略を示すフローチャートである。
【0211】
まず、本レンズ鏡筒1におけるズーム操作処理の概略を説明する。
本レンズ鏡筒1が、対応するカメラ(不図示)に装着された状態において、該カメラの動作状態が電源オン状態にあり、撮影待機状態となっているものとする。この状態にあるとき、使用者によってズーム環24の回動操作が行われると、本レンズ鏡筒1は、不図示の撮影メインルーチン(メインシーケンス)の中で、この回転操作を検出して、図35のズーム操作処理のサブルーチンの実行を開始する。
【0212】
図35のステップS11において、制御回路28xは、上記ズームモード位置検出手段(スライド部材25の接点部材25d,フレキシブルプリント基板61の領域61xの電気接点部)からの信号を受けてズーム環24の光軸Oに沿う方向における位置検出を行なう。
【0213】
続いて、ステップS12において、制御回路28xは、上述のステップS11における検出結果に基いてズーム環24が電動ズームモードに設定されているか否かの確認を行なう。ここで、ズーム環24が電動ズームモードに設定されていることが検出された場合には、次のステップS13の処理に進む。また、ズーム環24が電動ズームモード以外に設定されていると検出された場合には、ステップS14の処理に進む。
【0214】
ステップS13において、制御回路28xは、電動ズームモード時に対応する電動ズーム処理を実行する。その後、メインシーケンスの元の処理に戻る(リターン)。なお、この電動ズーム処理の詳細は、図36によって後述する。
【0215】
ステップS14において、制御回路28xは、上述のステップS11における検出結果を参照しズーム環24が手動ズームモードに設定されているか否かの確認を行なう。ここで、ズーム環24が手動ズームモードに設定されていることが検出された場合には、次のステップS15の処理に進む。また、ズーム環24が手動ズームモードに設定されていないと検出された場合には、ステップS16の処理に進む。
【0216】
ステップS15において、制御回路28xは、手動ズームモード時に対応する手動ズーム処理を実行する。その後、メインシーケンスの元の処理に戻る(リターン)。なお、この手動ズーム処理の詳細は、図37によって後述する。
【0217】
また、ステップS16において、制御回路28xは、マクロモード時に対応するマクロ処理を実行する。その後、メインシーケンスの元の処理に戻る(リターン)。なお、このマクロ処理は、本発明には直接関連しない部分であるので、その詳細説明は省略する。
【0218】
次に、上述の図35におけるステップS13の処理、即ち電動ズーム処理の詳細について、図36によって説明する。
まず、ステップS21において、制御回路28xは、ズーム環位置検出手段(電動ズーム連動部材26の接点部材26d,フレキシブルプリント基板61の領域61yの電気接点部)からの信号を受けてズーム環24の光軸O周りの回転方向における位置検出を行なう。
【0219】
続いて、ステップS22において、制御回路28xは、上述のステップS21における検出結果に基いてズーム環24が短焦点位置(ワイド位置;図16の符号WL,WM,WH参照)に設定されているか否かの確認を行なう。ここで、ズーム環24が短焦点位置(ワイド位置)に設定されていることが検出された場合には、次のステップS23の処理に進む。また、ズーム環24が短焦点位置以外(図16の符号TL,TM,TH参照)に配置されていると検出された場合には、次のステップS24の処理に進む。
【0220】
ステップS23において、制御回路28xは、モータドライバ28yを介して3群モータ41を駆動制御して、第3レンズ枠33を一方向(短焦点に設定する方向)へと駆動させる処理を実行する。このときの駆動量,駆動速度等は、上記のズーム環24の位置検出結果に応じて制御される。その後、ステップS25の処理に進む。
【0221】
また、ステップS24において、制御回路28xは、モータドライバ28yを介して3群モータ41を駆動制御して、第3レンズ枠33を他方向(長焦点に設定する方向)へと駆動させる処理を実行する。このときの駆動量,駆動速度等は、上記のズーム環24の位置検出結果に応じて制御される。その後、ステップS25の処理に進む。
【0222】
ステップS25において、制御回路28xは、ポテンショメータ62(3群枠位置検出手段)からの出力信号を受けて第3レンズ枠33の光軸方向における位置を検出する。その後、ステップS26の処理に進む。
【0223】
ステップS26において、制御回路28xは、モータドライバ28yを介して必要パルスを、接点部材26dと電気接点部61e,61f,61g,61hとの接触位置に応じた速度で4群モータ42に印加し、4群モータ42を駆動制御して、上述のステップS25の処理にて取得した第3レンズ枠33の位置情報に対応する位置へと第4レンズ枠34を駆動させる。その後、メインシーケンスの元の処理に戻る(リターン)。このとき、ズーム環24がまだ回転変位させられていれば、また、このサブルーチンに戻る。
【0224】
一方、上述の図35におけるステップS15の処理、即ち手動ズーム処理の詳細について、図37によって説明する。
【0225】
手動ズームの場合、手動によりズーム環24が任意の量を回転させられるので、ズーム環24のインナーギア24aによりギアボックス23を介してスクリュー41bが回転させられ、第3レンズ枠33が光軸方向に移動する。この状態で、まず、ステップS31において、制御回路28xは、ポテンショメータ62(3群枠位置検出手段)からの出力信号を受けて、手動操作によって移動された第3レンズ枠33の光軸方向における位置を検出する。その後、ステップS32の処理に進む。
【0226】
ステップS32において、制御回路28xは、モータドライバ28yを介して4群モータ42を駆動制御して、上述のステップS31の処理にて取得した第3レンズ枠33の位置情報に対応する位置へと第4レンズ枠34を駆動させる。その後、メインシーケンスの元の処理に戻る(リターン)。
【0227】
以上説明したように上記一実施形態によれば、ズーミング操作の際に手動操作によるマニュアル動作を確実に実現し得ると共に、手動操作と電気駆動との切り換えを簡単な機構によって実現したレンズ鏡筒を提供することができる。
【0228】
即ち、本実施形態のレンズ鏡筒1は、ズーム環24(外部回転操作環)を光軸方向に移動させることで、手動ズーム操作を行ない得るモード(第1の状態)と、電気駆動によるズーム操作を行ない得るモード(第2の状態)とを切り換えることができるように構成されている。
【0229】
この場合において、ズーム環24が手動ズームモードに対応する位置(第2の位置)にあるときには、ズーム環24の手動回動操作による外部からの駆動力がギアーボックス23を介して3群枠移動機構へと伝達される。このとき、ズーム環24の手動回動操作による駆動力は、モータギアー41dを3群モータ41のディテントトルク以上の回転トルクで回動させることにより、スクリュー41bを同方向に回動させることができる。すると、スクリュー41bの回動は、3群ナット45を光軸方向に移動させ、この3群ナット45は、第3レンズ枠33を光軸方向に移動させることができる。そして、制御回路28x(制御手段)は、第3レンズ枠33の移動量,移動方向に応じて4群モータ42を駆動制御することにより第4レンズ枠34を光軸方向に移動させる。これにより、手動操作によるズーミングを行なうことができる。
【0230】
一方、ズーム環24が電動ズームモードに対応する位置(第1の位置)にあるときには、ギアーボックス23とモータギアー41dとの噛合が解除されるので、ズーム環24と3群枠移動機構との間の駆動力伝達経路が遮断された状態になる。したがって、ズーム環24の手動回動操作による外部からの駆動力は3群枠移動機構へと伝達されない。この状態において、制御回路28x(制御手段)は、3群モータ41,4群モータ42を駆動制御することにより第3レンズ枠33,第4レンズ枠34を光軸方向に移動させる。これによって、電動によるズーミングを行なうことができる。これに加えて、電動ズームモード時には、ズーム環24を所定の回転角度の範囲内で回動操作することにより、ズーミング速度やズーミング方向の制御を行なうことができる。
【0231】
上述の一実施形態においては、外部回転操作環の構成例として、ズーミングを行なうための操作部材であるズーム環24を例に挙げて詳述しているが、本発明の構成は、この構成に限られることはない。
【0232】
例えば、外部回転操作環の他の構成例として、フォーカシングを行なうための操作部材であるフォーカス環に対して適用することも容易に可能である。その場合には、手動によるフォーカシングと、電動によるフォーカシングとの切り換えを容易に行なう機能を実現し得る。
【0233】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用を実施し得ることが可能であることは勿論である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせによって、種々の発明が抽出され得る。例えば、上記一実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題が解決でき、発明の効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【産業上の利用可能性】
【0234】
本発明は、静止画像及び動画像を撮影するカメラ等の撮影装置に適用することができるだけでなく、複数の操作手段を有する装置において、例えば手動操作と電気駆動との切り換えを行ない得る操作手段切り換え機構を備えた装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0235】
1…レンズ鏡筒,2…外装ユニット,3…鏡筒ユニット,4…前部飾り枠,21…フォーカス環,22…本枠,22a…位置検出センサ,23…ギアーボックス,24…ズーム環,24a…インナーギアー,25…スライド部材,25a…周溝,25b…クリック溝,25d…接点部材,26…電動ズーム連動部材,27…外装環,27a…操作部材,28…レンズ鏡筒主基板,28x…制御回路,28y…モータドライバ回路,29…レンズマウント部組,31…第1レンズ枠,31a…第1レンズ群,32…第2レンズ枠,32a…第2レンズ群,33…第3レンズ枠,33a…第3レンズ群,34…第4レンズ枠,34a…第4レンズ群,35…第5レンズ枠,35a…第5レンズ群,36…前部カバー環,37…前側固定枠,38…固定枠,41…3群モータ,41a…ブラケット,41b…スクリュー部材,41d…モータギアー,42…4群モータ,43…フォーカシングモータ,45…3群ナット,46…4群ナット,61…フレキシブルプリント基板,61a,61b,61c,61d,61e,61f,61g,61h…電気接点部,62…ポテンショメータ,63…フォトインタラプタ,236…平歯車部,251…クリックボール,252…クリックバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ズームレンズ鏡筒において、
光軸方向に移動駆動される第1の移動枠と、
上記第1の移動枠を上記光軸方向に駆動するための第1のモータと、
外部操作により光軸上の第1の位置と第2の位置とに移動可能な外部回転操作環と、
上記第1のモータと機械的に連結され、上記第1のモータ若しくは上記外部回転操作環の回転により駆動され上記第1の移動枠を駆動するための第1の駆動手段と、
上記第1の駆動手段と機械的連結若しくは非連結となることが可能で、該連結のとき上記外部回転操作環の回動により上記第1の駆動手段を介して上記第1の移動枠を駆動するための第2の駆動手段と、
上記外部回転操作環が上記第1の位置にあるとき、上記外部回転操作環の光軸周りの回動を検出する検出手段と、
上記外部回転操作環が上記第1の位置にあるとき、上記検出手段からの出力を受けて上記第1のモータを駆動する制御手段と、
を具備することを特徴とするズームレンズ鏡筒。
【請求項2】
第2のモータと、
上記第2のモータにより光軸方向に駆動される第2の移動枠と、
をさらに具備し、
上記制御手段は、上記外部回転操作環が上記第1の位置にあるとき、上記検出手段からの出力を受けて上記第1のモータと上記第2のモータとを駆動し、
上記外部回転操作環が上記第2の位置にあり上記外部回転操作環が回動しているとき、上記第2のモータのみを駆動することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ鏡筒。
【請求項3】
上記第1の駆動手段は、上記第1のモータの出力軸に設けられたスクリューと、上記スクリューに螺合し回転が規制されたナットと、上記スクリューに設けられたピニオンギアとからなり、
上記ナットは、上記第2の移動枠を押圧することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のズームレンズ鏡筒。
【請求項4】
上記第2の駆動手段は、上記外部回転操作環が有する内歯ギアーからの手動駆動力により回転駆動され、上記外部回転操作環が上記第2の位置にあるとき上記ピニオンギアと噛合し、上記ピニオンギアーを回転駆動可能なギアーからなることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一つに記載のズームレンズ鏡筒。
【請求項5】
上記第2の駆動手段の上記ギアーは、上記ピニオンギアーを増速駆動することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一つに記載のズームレンズ鏡筒。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate


【公開番号】特開2013−83775(P2013−83775A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223242(P2011−223242)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【Fターム(参考)】