説明

セキュリティ文書のセキュリティ要素およびその製造方法

本発明は、構造層と第一および第二の回折レリーフ構造を有し、前記構造層が、構造層の平面に垂直に観察された場合、セキュリティ要素の異なる面に配置され、前記第一のレリーフ構造が第一の反射層に部分的に接するとともに前記第二のレリーフ構造が第二の反射層に部分的に接し、前記第一の反射層が観察者と対向する場合、前記第二のレリーフ構造により形成される第二の情報アイテムが少なくとも部分的に隠され、前記第二の反射層が観察者と対向する場合、前記第一のレリーフ構造により形成される第一の情報アイテムが少なくとも部分的に隠されるセキュリティ文書用のセキュリティ要素と、そのようなセキュリティ要素の製造方法と、それらで形成されるセキュリティ文書に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも部分的に透明な少なくとも一つの構造層と、少なくとも部分的に配置される第一のレリーフ層と、少なくとも部分的に配置される第二のレリーフ層とを備え、第一および第二のレリーフ層は少なくとも部分的に異なり、構造層の面に平行に見た場合セキュリティ要素の異なる面に配置され、第一のレリーフ構造は、第一の外形を備えた第一の反射層に接し、第二のレリーフ構造は、第二の外形を持つ第二の反射層に接する。さらに、本発明は、そのようなセキュリティ要素、およびそのようなセキュリティ要素を備えたセキュリティ文書の種々の製造プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
そのような構造を含むセキュリティ要素は、特許文献1で知られている。それらは、
転写フィルムにより、セキュリティ文書に適用されている。その配列は、自立せず、層厚<10μmの薄い構造層を含む、薄い構造層を含む。セキュリティ要素をセキュリティ文書に適用した後、第一レリーフ構造がセキュリティ文書の表面に配置され、光学的、および/または技術的機能を有し、または、触覚手段により検出可能である。セキュリティ文書上のセキュリティエレメントは、一方からのみ、または両側から交互に、視認可能である。
【0003】
特許文献2は、層厚>20μの自立する構造層を備えた情報キャリアの形態のセキュリティエレメントを開示しており、それはセキュリティ文書、例えば小切手に適用される。セキュリティ要素の視認は、セキュリティ文書から離れた面のみに提供される。
【0004】
公知のセキュリティ要素の場合、セキュリティ要素の少なくとも一面から見た場合、第一の反射層と、同時に第二の反射層の少なくとも一部が視認され、第一のレリーフ構造と第二のレリーフ構造の光学的効果が組み合わされて認識可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、セキュリティ要素およびそれが適用されるセキュリティ文書の偽造に対する予防をさらに強化し、そのようなセキュリティ要素の形成プロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
少なくとも部分的に透明な少なくとも一つの構造層、少なくとも部分的に配置される第一の回折レリーフ構造、および、少なくとも部分的に配置される第二の回折レリーフ構造を有し、前記第一および第二のレリーフ構造が少なくとも部分的に異なり、構造層の面に平行に観察された場合に、セキュリティ要素の異なる面に配置され、前記第一のレリーフ構造が第一の外形を備えた第一の反射層と接し、前記第二のレリーフ構造が第二の外形を備えた第二の反射層と接するセキュリティ要素に対し、目的は、前記第一の反射層および前記第二の反射層が、前記構造層の面に垂直に観察された場合に、部分的に配置され、少なくとも部分的に重複し、
前記第一および第二の外形の少なくともサブ領域が、前記構造層の面に垂直に観察された場合に、互いに合致して広がるとともに、前記構造層の少なくとも一つの透明領域と接し、
前記第一の反射層が観察者に対向した場合、前記重複領域において前記第二のレリーフ構造により形成される第二の情報アイテムが、少なくとも部分的に隠され、
前記第二の反射層が観察者に対向した場合、前記重複領域において前記第一のレリーフ構造により形成される第一の情報アイテムが、少なくとも部分的に隠されることにより達成される。
【0007】
形成されるセキュリティ要素は模倣が難しく、同時に光学的に特に魅力的であり、容易に記憶され、高い耐改ざん性を有する。このセキュリティ要素は、部分的に透明である。特に、透明な領域がセキュリティ要素の領域の50%を超える場合、観察者には大部分が透明に見える。従って、セキュリティ文書の開口要素またはセキュリティースレッドとして、特に適している。
【0008】
第一および第二の情報は、少なくとも部分的に互いに異なることが望ましいことが分かっている。これにより、セキュリティ要素に3D効果を得ることができる。
【0009】
第一および第二の反射層の平均間隔は、15μm未満であることが好ましい。
【0010】
第一の反射層が不透明であり、観察者に対向した場合、第二の情報および随意に第二のレリーフ構造により形成されるさらなる情報アイテムを少なくとも部分的に隠すことが好ましい。または、第一の反射層が透明であり、少なくとも一つの第一の不透明補助層が、第二の情報および随意に第二のレリーフ構造により形成されるさらなる情報アイテムを少なくとも部分的に隠す。
【0011】
第二の反射層も不透明であり、観察者に対向した場合、第一の情報および随意に第一のレリーフ構造により形成されるさらなる情報アイテムを少なくとも部分的に隠すことが好ましい。または、第二の反射層が透明であり、少なくとも一つの第二の不透明補助層が、第一の情報および随意に第一のレリーフ構造により形成されるさらなる情報アイテムを少なくとも部分的に隠す。
【0012】
第一および第二の補助層は、反射層双方に関連し得る単一の層により形成が可能である。例えば、構造層の不透明な領域は、部分的性質の第一の反射層と部分的性質の第二の反射層とに重ね合わされる単一の補助層を形成することができる。
【0013】
不透明な反射層は、入射光で、および透過光状態で観察される場合、不透明であることが好ましい。しかしながら、入射光または反射光で観察される場合、反射層が、人間の眼に対して、不透明に見えることも可能である。透過光状態で観察される場合、そのような反射層は、局所的に可視可能な異なる透過率を有し、従って、透過光を用いる場合、反射層の他の領域よりも、明らかに沢山の可視光が、反射層の領域を通過する。これは、異なる層厚範囲により、または反射層の非常に小さな開口により達成されることが好ましい。
【0014】
観察者は、透過光状態で観察する場合、可視光に対する透過率が5%未満で、特に1%未満の場合、反射層の領域を不透明と認識する。透過光が取り込まれた場合、観察者は、10%より大きく、特に20%より大きい透過光に対する透過率の領域を透明と認識する。入射光が取り込まれた場合、観察者は、透過光で透明と認識する領域において、不透明な層領域の印象を持ち得る。例えば、金属反射層が用いられた場合、透過光が取り込まれた場合に不透明および透明と認識される領域は、入射光で観察された場合、最大0.2倍異なって反射する。2倍異なる透過率は、人間の眼で明確に認識されるが、約20%までの反射の違いは、ほとんど認識され得ない。
【0015】
回折レリーフ構造により形成される情報アイテムは、特に、視認角度依存カラー変化、運動学的効果、ホログラム、輝き散乱効果等の、光学的可変効果を示す。
【0016】
第一および/または第二の回折レリーフ構造および/またはその部位の形成のために、対称または非対称レリーフ構造が用いられることが好ましい。レリーフ構造は、周期的または非周期的であっても良い。
【0017】
対称という表現は、ここでは厳格な数学的意味では用いられず、後述する非対称レリーフ構造と区別するために用いられる。対称線で折り曲げた場合に完全な相関関係とはなり得ないレリーフ構造も、対称と呼ばれるが、側面の傾斜の大きさが互いにわずかに異なるため、視認に依存する光学効果は生じない。
【0018】
非対称レリーフ構造という表現は、例えば、鋸波を示すために用いられる。この場合、鋸波の側面の傾斜は、大きく異なることが好ましい。特に、ある側面は、有限な傾斜を有する一方、他の側面は無限の傾斜を有する。非定数周期長/空間周波数の非対称レリーフ構造が用いられた場合、第一および/または第二の回折レリーフ構造は、基準点から出発し、少なくとも二つの方向において、空間周波数または深さが異なって形成されるレリーフ構造である。空間周波数の変化により、非対称レリーフ構造の側面傾斜も変化し、すなわち、側面とレリーフ構造の表面に平行な主平面との間に形成される側面角度が、増大する側面傾斜または側面勾配で増大する。空間周波数は、基準点から出発して増加し、好ましくは連続的に増加する。従って、側面の急峻さは、レリーフ構造のエッジに対して増加する。この場合、傾斜する側面は、規則的な曲線の一部となる。このように、これは、全表面領域にわたる空間周波数および随意にさらなる格子定数が好ましくは連続的に変化し、格子溝の個々の側面が互いに平行で、レリーフ構造の主平面の垂線にほぼ平行で伸びる一方、主平面に対する格子表面の個々の他の側面の角度が、格子深さが最大10μmで、表面領域にわたり実質的に連続的に変化するような構造であるレリーフ構造により、光学的回折効果を有する構造を含む。
【0019】
レリーフ構造は、ブレーズ格子により形成が可能である。ブレーズ格子は、回折格子である。格子定数d、波長λ、回折次数nに依存するブレーズ格子で、入射角Θinと出射角Θoutとの間に、下記関係が当てはまる。
sinΘout = sinΘin + n*λ/d
【0020】
すなわち、例えばデイライトなどの多色光は、ブレーズ格子における回折により、基本色に分解される。しかしながら、格子定数dの選択により、ブレーズ格子は、視野角範囲における少なくとも第一の回折次数のカラー光線が、再び一緒になり、従って再度多色光がブレーズ格子から生じる、アクロマートブレーズ格子の形態であり得る。このようにして、入射光の約90%が、集中ビームとして回折され、それにより画像効果は高いレベルのコントラストを有する。格子の名前の由来は、この特性からである。
【0021】
ブレーズ格子は、20μmから3μm、好ましくは10μmの格子定数で、0.3μmから5μm、好ましくは1.5μmの外形深さのアクロマートブレーズ格子であることが有利である。外形深さに依存して、第一回折次数よりも、より高い回折次数が、より高いレベルの強度を提供し得る。
【0022】
さらに、ブレーズ格子は、2μm未満、好ましくは1μmの格子定数のアクロマートブレーズ格子であっても良い。この場合、ブレーズ格子は、デイライト照明下で傾けられた場合、虹色に輝く。
【0023】
さらに、レリーフ構造は、マット構造の形態であっても良い。マット構造は、光を散乱し、つや消しに見えるレリーフ構造である。そのようなレリーフ構造は、一般に10μm以下の構造深さを有し得る。フーリエホログラムまたはキノフォルムと呼ばれる特性の伏せられたコンピュータ生成ホログラムが、マット構造として機能することができる。その役割は、反射または透過において、伏せられた特性を投影することである。
【0024】
反射または入射光で観察される場合、本発明によるセキュリティ要素は、回折レリーフ構造の一つのみによりそれぞれ形成される情報アイテムまたはサブ情報アイテムを、両面に有する。それは、光学的に互いに分離されるレリーフ構造の少なくとも一部により具現化され、特に洗練された、面白い光学的効果が、セキュリティ要素の両面に互いに独立して形成され得る。
【0025】
前述したように、第一および第二の情報は、少なくとも部分的に異なることが、特に好ましい。レリーフ構造の差異は、外形形状、空間周波数および/またはアジマス角により、またはマット構造のような確率的構造のパラメータ、例えば凹凸深さ、相関長等により、提供され得る。従って、第一のレリーフ構造により、例えば数値が第一の情報アイテムとして形成され、セキュリティ要素が反転すると、第二のレリーフ構造により第二の情報アイテムとして形成されたポートレイトが可視可能となる。
【0026】
しかしながら、第一のレリーフ構造により、数値が第一の情報アイテムとして形成され、セキュリティ要素が反転すると、第二のレリーフ構造により第二の情報アイテムとして形成された数値が、面が補正されおよび/または位置が補正された(上下反転ではない)表示で可視可能となり、第一および第二の情報アイテムを同一とすることが、同様に可能である。
【0027】
さらに、第一のレリーフ構造により、カラー数値が第一の情報アイテムとしてアクロマートな背景に対して形成され、セキュリティ要素が水平または垂直に反転すると、第二のレリーフ構造により、第二の情報アイテムとして形成されたアクロマートな数値がカラー背景に対して視認可能となることも可能である。
【0028】
第一の反射層が、第二のレリーフ構造により形成された第二の情報と、形成されたさらなる情報アイテムを随意に、完全にカバーし、第二の反射層が、第一のレリーフ構造により形成された第一の情報と、形成されたさらなる情報アイテムを随意に、完全にカバーすることが、特に好ましい。このように、セキュリティ要素は、第一および第二のレリーフ構造が互いに完全に光学的に分離しているため、両面において互いに独立する情報アイテムを提供する。
【0029】
構造層が、第一の面に第一の回折レリーフ構造を、第二の面に第二の回折レリーフ構造を有し、第一の面は第一の反射層に接し、第二の面は第二の反射層に接することが、特に有利であることが特に利点であることが分かっている。
【0030】
第一および第二の反射層は、構造層の面に垂直に観察される場合、大部分がまたは全てが、合致して配置されることが好ましい。表面領域に関する広がりの適合および構造層での2つの反射層の互いの位置により、特に魅力あるセキュリティ要素が形成され、第一のレリーフ構造と第二のレリーフ構造の光学的分離が簡単に実行可能となる。特に、少なくとも入射光で、特に、入射光および透過光で観察された場合に、不透明であり、または、少なくとも一つの不透明補助領域を背後に備える反射層が好ましい。
【0031】
第一の反射層は、観察者に対向した場合、少なくとも一つのグラフィックモチーフの正面像を形成し、正面像は、第一のレリーフ構造により形成される第一の情報を示し、第二の反射層は、観察者に対向した場合、少なくとも一つのグラフィックモチーフの背面像を形成し、背面像は、第二のレリーフ構造により形成される第二の情報を示すことが理想的である。グラフィックモチーフは、とりわけ観察者に対して明確なセキュリティ要素のメインモチーフを形成し、またはより明確な表示と結合される明確性の低い背景モチーフを形成可能である。正面および背面でのそのような表示は、顕著に異なり得る。
【0032】
このような実施形態における本発明によるセキュリティ要素は、グラフィックモチーフの正面と、セキュリティ要素が反転された場合に、グラフィックモチーフの背面を示す。構造層の面に垂直に観察される場合の、表面領域に対する広がりの完全な適合と、第二の反射層に対する第一の反射層の位置とにより、観察者は、正面領域において第一の反射層のみに面し、背面領域において第二の反射層のみに面する。第一および第二の反射層の組み合わせは、セキュリティ要素のどの側からも見ることが出来ない。従って、実質的に第一および第二の反射層の形成に同じ材料を用いた場合、観察者は、セキュリティ要素の異なる面にある2つの独立した反射層が含まれていることは分からない。グラフィックモチーフは、入射光で、特に入射光および透過光で不透明であることが好ましく、しかしながら、セキュリティ要素の全体的印象は、透過光状態で観察された場合、観察者に対して透明であることに留意すべきである。
【0033】
一般的には、実質的に透明性を損なうことなく、セキュリティ要素の透明領域はフィリグリー印刷がなされ得る。
【0034】
異なる第一および第二のレリーフ構造がグラフィックモチーフの領域で用いられる場合、2つの反射層および一つまたはそれ以上の不透明補助層の随意的支援によるレリーフ構造の光学的分離は、異なる情報アイテムを正面と背面とで読み取ることができ、観察者は、セキュリティ要素に一体化されグラフィックモチーフを提供する3次元物体を含む印象を持つことを意味する。
【0035】
この種のセキュリティ要素は、互いに完全な位置関係にある第一および第二の反射層の配置が技術的に要求されるため、模倣が困難である。構造層の面に垂直に観察される場合、第一の反射層の外形と第二の反射層の外形との間に5μmを越える空間があり、反射層が色および/または接するレリーフ構造の点で異なる場合、人間の眼は、2つの独立した反射層を区別することができる。
【0036】
少なくとも一つのイメージまたはグラフィックモチーフが、少なくとも入射光で観察される場合に不透明なイメージまたはグラフィック要素と、透明なイメージまたはグラフィック要素とからなり、少なくとも正面の入射光で不透明なイメージ要素が、第一の反射層および随意の少なくとも一つの第一の不透明補助層により形成され、少なくとも背面の入射光で不透明なイメージ要素が、第二の反射層および随意の少なくとも一つの第二の不透明補助層により形成され、透明なイメージ要素が、少なくとも一つのさらなる透明層に随意に結合する少なくとも一つの構造層の透明な領域により形成されることが利点であることが分かっている。
【0037】
これにより、模倣が困難な面白いグラフィックモチーフを有し、特に高い品質で審美的に魅力あるセキュリティ要素を形成することができる。少なくとも入射光で観察される場合に不透明なイメージ要素は、特に、入射光および透過光状態で観察される場合に不透明である。少なくとも入射光で観察される場合に不透明な個別イメージ要素は、1μm2から400μm2の範囲、特に、1μm2から2500μm2の範囲の表面領域に対する広がりを含むことが好ましい。特に、不透明領域の一方向における最小の広がりは、少なくとも第一および第二の反射層の間の平均間隔に対応する。
【0038】
不透明なイメージ要素は、例えばフレームまたは格子の形態で、透明なイメージ要素を取り囲みまたは規定し、および/または透明なイメージ要素で取り囲まれ、および/または例えばラインラスタおよび/または点ラスタの形態のラスタ格子形態で配置されることが可能であり、高いレベルの解像度を伴う半階調イメージを形成することができる。
【0039】
個別の不透明なイメージ要素の表面領域に対する広がりは、人間の眼に見えるように大きく、または、人間の眼の解像度が見るのに不十分であるように小さく、例えば半階調イメージを形成するためのラスタ点の形態で、選択されることが可能である。この種のラスタの推奨パラメータは、後に詳述する。
【0040】
少なくとも一つのグラフィックモチーフが、造形表現、ポートレイト、英数字、文章、グラフィックパターン、シンボルまたはロゴであることが好ましいことが分かっている。造形表現という表現は、植物、動物、技術、建築、スポーツなどの分野からの表現を意味するために用いられている。例えば文字を伴うポートレイト等の、異なるグラフィックモチーフの組み合わせが好ましいことも分かっている。
【0041】
反射層またはそれにより形成されるイメージ要素は、透過光モードにおける可視波長範囲において、光学密度が1より大きい場合に、透過光モードにおいて不透明であると表現される。
【0042】
少なくとも一つの第一の不透明補助層および/または少なくとも一つの第二の不透明補助層が、少なくとも一つの金属層および/または少なくとも一つの印刷インク層および/またはフォトレジスト層であり得る少なくとも一つの不透明カラーラッカー層および/または構造層の不透明領域により形成されることが好ましいことが分かっている。
【0043】
第一および/または第二の反射層は、少なくとも一つの金属層および/または少なくとも一つの誘電層により形成される。
【0044】
少なくとも部分的に透明な構造層に加えて、セキュリティ要素は、随意的に透明カラーであり、部分的にまたは全表面領域にわたりセキュリティ要素に存在し得る、少なくとも一つのさらなる透明層または層連続を有し得る。さらなる透明層は、ラッカー層、樹脂層またはフィルム、誘電層、特に薄い層厚の金属薄膜、視角依存性の干渉カラー変化効果を備えた薄膜干渉層スタックまたは液晶層であり得る。
【0045】
少なくともセキュリティ要素の透明領域において、カラー変化効果を備えた透明コレステリック液晶層または視角依存性の干渉カラー変化効果を備えた薄膜干渉層スタックの配置にあっては、セキュリティ要素が暗い背景に対して観察される場合、各カラー効果がより強調されて現れる。
【0046】
セキュリティ要素の透明な領域においては、第一および/または第二のレリーフ構造により形成される透明ホログラムまたはキネグラム(登録商標)の存在が可能であり、および/または視角依存性の干渉カラー変化効果の存在が可能である。
【0047】
随意に提供される透明ラッカー層、樹脂層またはセキュリティ要素のフィルムおよびセキュリティ要素の構造層は、通常光下で無色透明であり、例えばIRまたはUV照射により励起された場合に特別な色を示す、発光性または光発色性物質を含むことが利点であることが分かっている。
【0048】
第一および第二の反射層は、材料および/またはカラーの点で異ならないことが利点であることが分かっている。この場合、第一および第二の反射層は、同じ層厚であることが好ましい。
【0049】
従って、第一および第二の反射層は、同じ金属/金属合金、特に、アルミニウム、クロム、銅、金または銀、または、同じ誘電材料、特にZnS、TiO2等の高い屈折率を備えた透明材料で形成されることが好ましい。
【0050】
同様に、第一および第二の反射層が、材料および/または色の点で異なることが利点であることが分かっている。従って、第一の反射層は、金属または金属合金で形成されることが好ましい。そして、第二の反射層は、異なる色の金属/金属合金または誘電層で形成されることが好ましい。同じ材料の2つの反射層での異なる色効果は、一方または双方の反射層により代替的に形成され、観察者に対向する面は、透明カラー層でカバーされる。
【0051】
構造層が、0.2μmから15μmの範囲、特に0.3μmから3μmの範囲の層厚であることが好ましいことが分かっている。構造層がそのような層厚である場合、人間の眼は、第一および第二の反射層がセキュリティ要素の異なる面に配置されていることが分からず、0.1mmまでの深さの差は、裸眼では認識され得ない。構造層の層厚は、構造層の互いの影響を排除するために、第一および第二のレリーフ構造の最大の構造深度の和よりも大きいことが一般に留意されるべきである。
【0052】
構造層は、全体に透明であり、特に無色透明であることが好ましい。
【0053】
セキュリティ要素は、透過光状態で観察される場合、少なくとも一つの反射層の領域において、特に、パターン、文字、ポートレイト、ロゴ等の形態のさらなる情報を示す、明白に異なる透過領域を有することが利点であることが分かっている。これは、一つ以上の反射層が、入射光で観察された場合、人間の眼では見ることが出来ない小さい開口を備えて形成され、または異なる層厚であり、透過光状態で観察された場合、特にさらなる情報が見えるように、可視光が、少なくとも部分的に反射層の領域におけるセキュリティ要素を通過することで達成が可能である。二つ以上の反射層が重なり、構造層の面に垂直に透過光で観察される場合、各反射層の透過率は、相互に重なる反射層の領域においても随意に、セキュリティ要素において可視可能な透過率が達成されるように、局所的に適切に調整され得る。
【0054】
入射光で不透明に見える反射層は、少なくとも一方向における寸法が、人間の眼の解像度以下である、すなわち約0.3mmより小さい、透明な領域および/または開口を有することが好ましい。特に、少なくとも一方向の寸法が、1から250μmの範囲、特に2から100μmの範囲、特に5から80μmの範囲の開口が好ましい。この種の透明な領域または開口は、入射光で人間の眼に不可視であり、しかしながら、光の透過率の増大により、透過光では問題なく見ることが出来る。
【0055】
さらに、入射光で不透明に見える反射層は、透明領域の表面領域または不透明層の開口に対する平均密度が10%未満である、透明な領域および/または開口を有することが利点であることが分かっている。この種の透明な領域または開口は、入射光で人間の眼に実質的に不可視であり、しかしながら、光の透過率の増大により、透過光では問題なく見ることが出来る。
【0056】
入射光で不透明に見える反射層は、異なる層厚の領域を有することが利点である。異なる層厚を備えた領域は、入射光で人間の眼には不透明に見え、しかしながら、より薄い層厚の領域は、光の透過率の増大により、透過光で、より厚い層厚の領域と問題なく区別され得る。
【0057】
入射光で不透明に見える反射層において貫通開口と同等と見なされる透明な領域では、反射層を形成するために用いられる材料は、非常に薄い層厚であるため、セキュリティ要素の透過特性に大きなまたは目に見える影響はない。
【0058】
反射層の構築、または開口または透明な領域の形成は、特許文献3で説明されるプロセスに従って実施可能である。この場合、層厚は、回折表面構造を備える表面に均一に適用される層を形成する材料により調整され、この場合、局所的に異なる有効層厚は、表面構造の深さ−幅比に依存して形成される。
【0059】
入射光で不透明に見える領域では、反射層は、少なくとも部分的に、連続的に変化する層厚を有する。または、あるいはそれとともに、入射光で不透明に見える領域では、反射層は、少なくとも部分的に、段階的に変化する層厚を有する。異なる層厚の形成は、透過光状態で観察された場合、異なる透過率または光学密度を生じ、特許文献3で説明されるプロセスに従って実施可能である。
【0060】
入射光で不透明に見える反射層は、細かいドットまたは300μm未満のラスター幅のラスター線の形態で層が構築されるように開口を有することが利点であることが分かっている。層が非周期的ドットまたはラインラスタの形態で構築されることが特に好ましい。不透明なイメージ要素がラスターに用いられる場合、少なくとも一方向におけるその寸法は、人間の眼の解像度より下で、すなわち約0.3mmより小さいことが好ましいことが分かっている。少なくとも一方向における寸法が、1から250μmの範囲、特に2から100μmの範囲、特に5から80μmの範囲の、不透明なイメージ要素が、特に好ましい。
【0061】
“ドット”という表現は、円形ピクセルのみでなく、三角形、矩形および楕円形等の他の幾何学形状を意味するために用いられる。シンボル、グラフィック表現、英数字文字または文字のつながりの形態のピクセルも可能である。ドットまたはラインは、標準ラスタ格子間隔または局所的にまたは絶えず変化するラスタ格子間隔で配置される。または、あるいはそれとともに、表面領域に対するドットまたはラインの広がりは、変化し得る。
【0062】
セキュリティ要素における不透明なイメージ領域の平均領域カバー率は、50%未満であり、特に10から30%の範囲であることが好ましい。入射光で観察される場合、セキュリティ要素は、従って観察者に対し部分的に透明であり、両面に異なる回折効果が現れる。同時に、透過光モードで観察される場合、セキュリティ要素の透過率は、局所的に認知可能に異なる。
【0063】
セキュリティ文書に対する目的は、少なくとも一つのセキュリティ要素が、セキュリティ文書の少なくとも一つの透明な領域に位置され、または重複関係で配置される範囲で達成される。この場合、透明な領域は、100%透明であり、または領域25%までの不透明印刷、例えば、セキュリティ文書の接する領域に広がるフィリグリーパターン印刷の形態、を有しても良い。
【0064】
この場合、セキュリティ要素は、開口要素と呼ばれるもの、またはセキュリティスレッドの形態のものを形成することが好ましい。開口要素として用いられるセキュリティ要素は、例えば、セキュリティ文書に配置された隠し情報を可視化するための確認サインまたはバッジとして用いられ得る。この目的のために、例えば、隠れ情報アイテムを含み、確認バッジと重ね合わせられた場合にそれが可視化されるモアレパターンが、セキュリティ文書上に存在する。この目的のために、セキュリティ文章が、確認バッジがパターンと重なるように、例えば折り曲げられ、または、2つのセキュリティ文書が、隠し情報の相互の読み出しのために用いられる。
【0065】
セキュリティ文書は、透明な、または入射光および透過光で観察された場合に不透明なキャリア基質を有し、キャリア基質の少なくとも一つの透明領域に開口があり、少なくとも一つのセキュリティ要素が開口またはその拡張部に配置可能であることが利点であることが分かっている。従って、セキュリティ要素は、セキュリティ文書の両面から認識可能である。
【0066】
さらに、セキュリティ文書は、特にPVC、PETまたはPCの透明キャリア基質を有し、少なくとも一つのセキュリティ要素が、キャリア基質上に配置され、または埋め込まれることが好ましいことが分かっている。さらに、少なくとも一つのセキュリティ要素を備えた透明領域を断ってしまうが、キャリア基質の片面または両面を部分的にカバーする一つ以上の不透明カラー層またはフィルムがあり得る。また、部分的に透明で、透明な領域に少なくとも一つのセキュリティ要素が配置または組み込まれるキャリア基質を用いることも可能である。
【0067】
セキュリティスレッドの形態の本発明によるセキュリティ要素も、セキュリティ文書の一方の面においてセキュリティスレッドの前面が部分的に可視可能で、セキュリティ文書の他方の面においてセキュリティスレッドの背面が部分的に可視可能であり、少なくとも入射光で観察される場合に、セキュリティ文書の各反対面におけるそれらの部分の領域においてセキュリティスレッドが可視可能でないように、例えば紙幣等のセキュリティ文書の中に組み込みが可能である。従って、セキュリティ文書の一方の面で可視可能なセキュリティスレッドの部位は、例えば紙でできた、セキュリティ文書のキャリア基質により、背面がカバーされる。
【0068】
セキュリティ文書が、少なくとも一つのセキュリティ要素を含むセキュリティ文書を機械的損傷および/または他の悪影響、例えば湿度によるもの、から保護する、少なくとも一つの透明保護層を有することが利点であることが分かっている。セキュリティ文書は、2つの透明保護層を有し、その間に少なくともキャリア基質および少なくとも一つのセキュリティ要素、随意にセキュリティ文書のさらなる層が取り込まれていることが好ましい。
【0069】
セキュリティ文書は、身分証明書、パスポート、証明書、銀行カード、クレジットカード、テレフォンカード、紙幣、運転免許証またはビザ等が理想的である。
【0070】
本発明によるセキュリティ要素の第一の製造プロセスに対し、本発明の目的は、下記ステップにより達成される。
a)透明な第一の複製層を提供し、
b)マスター回折レリーフ構造を第一の複製層の第一の面に形成し、
c)部分的な第一の反射層と、随意に少なくとも一つの部分的な第一の不透明補助層とを、第一の面に形成し、
d)第二の複製層により少なくとも部分的に透明で、第一の反射層と、随意に少なくとも一つの第一の不透明補助層および第一の面のそれらがない領域とに配置される、構造層を形成し、
e)前記第二の回折レリーフ構造を前記構造層の第二の面に形成し、
f)部分的な第二の反射層をある層厚で構造層の第二の面に形成し、前記第二のレリーフ構造が、前記第二の反射層の前記構造層から離れた面に形成される。
【0071】
このプロセスは、特に薄く自立しない形態の構造層を可能とする。第一の複製層が構造層から剥離可能に適用される場合、または剥離可能な転写フィルムに提供される場合、通常転写フィルムの構造を提供する。従って、セキュリティ要素は、転写フィルムに一体化され、スタンプによりセキュリティ文書に適応され得る。第一の複製層は、自立することが可能で、または透明なキャリアフィルムに提供され、この場合、第一の複製層および随意のキャリアフィルムは、セキュリティ要素の他の層とともに強固な恒久的合成部品を形成し、完成したセキュリティ要素は、ラミネートフィルムの形態で提供される。
【0072】
第一の反射層および/または第二の反射層が、不透明であることが好ましいことが分かっている。さらに、第一および/または第二の反射層は透明であっても良く、構造層の面に垂直に観察される場合、少なくとも一つの第一および/または少なくとも一つの第二の不透明補助層が、透明な反射層と合致して配置される。
【0073】
本発明の目的は、下記ステップを含む本発明によるセキュリティ要素の第二の製造方法により達成される。
g)透明な構造層を提供し、
h)第一の回折レリーフ構造および第二の回折レリーフ構造を、構造層の第一の面および第二の面に形成し、
i)少なくとも一つの部分的な第一の反射層および随意の少なくとも一つの第一の不透明補助層を、構造層の第一の面に形成し、
k)少なくとも一つの部分的な第二の反射層および随意の少なくとも一つの第二の不透明補助層を、構造層の第二の面に形成する。
【0074】
このプロセスは、自立型構造層を扱うのに特に適している。第一および第二のレリーフ構造は、スタンプにより同時に形成されることが利点であることが分かっている。これは、例えば、それぞれ個別の表面レリーフが備えられた2つのスタンプローラの間を運ばれる自立型構造層により実行され、スタンプローラの部位上の適切な接触圧と適切な温度制御とにより、第一および第二のレリーフ構造が、構造層に形成される。2つのレリーフ構造の正しい位置関係を、とりわけ簡単な方法で保証することができる。完成したセキュリティ要素は、ラミネートフィルムの形態であることが好ましい。
【0075】
少なくとも一つの第一および/または第二の不透明領域が、構造層が部分的に露光され、構造層の中に含まれる透明なカラー物質が、露光領域のみにおいて、不透明なカラー物質に変換される工程で形成されることが好ましいことが分かっている。
【0076】
レリーフ構造、すなわち、第一のプロセスではマスターレリーフ構造および第二のレリーフ構造、第二のプロセスでは第一および第二のレリーフ構造は、スタンプ、特に熱複製またはUV複製により形成されることが特に好ましい。熱複製の開始時は、表面レリーフを備えた過熱されたスタンプツールが熱可塑性樹脂複製層または熱可塑性樹脂構造層に押し付けられ、所望のレリーフ構造が形成される。UV複製操作は、レリーフ構造を形成するために、スタンプツールが押し付けられ、同時にUV照射により反応が生じて硬化するUV硬化ラッカーの使用を含む。
【0077】
各プロセスのステップc)およびステップi)において、第一の複製層は、全表面領域にわたり、第一の複製層または構造層に適用され、部分的に除去される。特許文献4において十分に記述されているプロセスが、この目的に特に適している。部分的に与えられる反射層のより適切な形成プロセスは、後にエッチング槽によるエッチングを伴う、印刷によるエッチング溶剤の適用、または印刷による保護ラッカーの部分的適用である。
【0078】
第一のフォトレジスト層が、全表面領域にわたり形成された第一の反射層に対して、全表面領域にわたり適用される場合、第一のフォトレジスト層が部分的に露光されて除去され、第一の反射層が第一のフォトレジスト層が除去された領域においてエッチングにより除去され、さらに、第一のフォトレジスト層の残留領域が随意に除去され、または、不透明補助層として利用されることが特に好ましい。
【0079】
露光マスクにより、従来の露光が実施可能であるが、特許文献4に記述されるフォトレジストの露光プロセスを用いることもできる。ここで、第一のフォトレジスト層の露光は、第一の反射層を通じて行われ、第一のフォトレジスト層の部分的な露光は、第一のレリーフ構造の構造および/または配置に依存して行われる。
【0080】
さらに、各プロセスのステップf)またはステップk)において、第二の複製層が全表面領域にわたり適用され、続いて部分的に除去されることが好ましいことが分かっている。特に、特許文献2で詳述されているプロセスが、この目的に適している。
【0081】
第二のフォトレジスト層が全表面領域にわたり提供された第二の複製層に全表面領域にわたり適用され、第二のフォトレジスト層が部分的に露光されて除去され、第二の反射層が第二のフォトレジスト層が除去された領域においてエッチングにより除去され、さらに、第二のフォトレジスト層の残留領域が随意に除去されることが好ましい。フォトレジスト層の残留領域が透明カラーである場合、第二の反射層の着色がこれにより達成可能である。
【0082】
この場合も、露光マスクにより、従来の露光が行われ得るが、特許文献4に記述されるものに類似するフォトレジストの露光プロセスを用いることもできる。この場合、第二のフォトレジスト層の露光が、第一および第二の反射層を通じて行われ、第二のフォトレジスト層の部分的な露光が、第一のレリーフ構造および/または第二のレリーフ構造の構造および/または配置に依存して行われる。
【0083】
第二のフォトレジスト層の明確にターゲットとされた部分露光は、特許文献2で提案されるように、レリーフ構造および反射層を通じて行われ得るのみでなく、ビーム経路で連続する2つのレリーフ構造および2つの反射層を通じての露光も、フォトレジスト層の明確にターゲットとされた部分露光を提供するために用いられ得ることが特に驚きである。ビーム経路における露光照射の透過率は、第一の反射層の照射透過率と第二の反射層の照射透過率の合計である。
【0084】
図1aから5bは、本発明の実施例を示す。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1a】熱気球を示すグラフィックモチーフを備えたセキュリティ要素を示す。
【図1b】裏返した後の図1aのセキュリティ要素を示す。
【図2a】図1aおよび図1bのセキュリティ要素の製造プロセスの概略図を示す。
【図2b】図1aおよび図1bのセキュリティ要素の製造プロセスの概略図を示す。
【図2c】図1aおよび図1bのセキュリティ要素の製造プロセスの概略図を示す。
【図2d】図1aおよび図1bのセキュリティ要素の製造プロセスの概略図を示す。
【図2e】図1aおよび図1bのセキュリティ要素の製造プロセスの概略図を示す。
【図2f】図1aおよび図1bのセキュリティ要素の製造プロセスの概略図を示す。
【図2g】図1aおよび図1bのセキュリティ要素の製造プロセスの概略図を示す。
【図2h】図1aおよび図1bのセキュリティ要素の製造プロセスの概略図を示す。
【図2i】図1aおよび図1bのセキュリティ要素の製造プロセスの概略図を示す。
【図3a】第一および第二の回折レリーフ構造を備えた自立構造層を示す。
【図3b】図3aに示す構造層を備えたセキュリティ要素を示す。
【図4a】不透明補助層を備えたセキュリティ要素の製造プロセスの断面図を示す。
【図4b】不透明補助層を備えたセキュリティ要素の製造プロセスの断面図を示す。
【図4c】不透明補助層を備えたセキュリティ要素の製造プロセスの断面図を示す。
【図4d】不透明補助層を備えたセキュリティ要素の製造プロセスの断面図を示す。
【図4e】不透明補助層を備えたセキュリティ要素の製造プロセスの断面図を示す。
【図4f】不透明補助層を備えたセキュリティ要素の製造プロセスの断面図を示す。
【図4g】不透明補助層を備えたセキュリティ要素の製造プロセスの断面図を示す。
【図5a】不透明補助層を備えたセキュリティ要素の製造プロセスの断面図を示す。
【図5b】不透明補助層を備えたセキュリティ要素の製造プロセスの断面図を示す。
【図5c】不透明補助層を備えたセキュリティ要素の製造プロセスの断面図を示す。
【図5d】不透明補助層を備えたセキュリティ要素の製造プロセスの断面図を示す。
【図6a】セキュリティ要素を備えたセキュリティ文書を示す。
【図6b】セキュリティ要素を備えたセキュリティ文書を示す。
【発明を実施するための形態】
【0086】
図1aは、熱気球およびさらに装飾要素を示すグラフィックモチーフ100を備えたセキュリティ要素1を示す。入射光および透過光で観察された場合に不透明なアルミニウムを含む第一の反射層11が、観察者に対向する透明な構造層1aに配置され、反射層11は、多数の不透明イメージ要素100aを備えたグラフィックモチーフ100の前面を形成する。透明イメージ要素100bは、構造層1aおよび透明層40、41、1b、20(図2i参照)により形成される。不透明イメージ要素100aは、さらに、第一の回折レリーフ構造10a(図2d参照)により形成される“2005”の形態の第一のホログラフ情報50を示す。第一の情報アイテム50は、気球の中で線形態(破線で位置表示される)である細い透明領域100bにおいて不可視であり、第一の反射層11により、不透明イメージ要素100aの領域において背景が不透明である。
【0087】
図1bは、図1aのセキュリティ要素を他の側から示し、グラフィックモチーフ100の裏側を示す。アルミニウムで構成され、多数の不透明イメージ要素100cを備えたグラフィックモチーフ100の前面を提供する第二の反射層12が、観察者に対向する透明な構造層1aに配置される。透明イメージ要素100bは、構造層1aおよび透明層1b、20(図2i参照)により形成される。不透明イメージ要素100cは、ホログラム形態であり、第二の回折レリーフ構造10b(図2e参照)により形成される第二の情報アイテム51を示す。第二の情報51は、気球の中で線形態である細い透明領域100bにおいて不可視であり、第二の反射層12により、不透明イメージ要素100cの領域において背景が不透明である。
【0088】
この場合、図1aに示すように、グラフィックモチーフ100を正面から見る場合、第一の反射層11だけが見え、図1bに示すように、グラフィックモチーフ100を背面から見る場合、第二の反射層12だけが見える。その結果、第一のレリーフ構造10aの第一の情報アイテム50を含む回折光学可変効果が、グラフィックモチーフ100の前面においてのみ知覚され、第二のレリーフ構造10bの第二の情報アイテムを含む回折光学可変効果が、グラフィックモチーフ100の背面においてのみ知覚される。構造層1aの面に垂直に見た場合、第一および第二の反射層11および12が、表面領域に対して同一の範囲で合致して前後に配置されているため、第一のレリーフ構造10aは、第二のレリーフ構造10bと光学的に完全に分離される。セキュリティ要素1の観察者は、あたかもセキュリティ要素の中に3次元金属物体が含まれているような印象を持つ。
【0089】
図2a〜2iは、図1aおよび1bに示すセキュリティ要素の製造プロセスを示す概略図を示す。
【0090】
図2aを参照すると、後に上に形成されるセキュリティ要素1の分離を可能とする剥離層41が、キャリアフィルム40に配置される。キャリアフィルムは、通常12μmから100μmの範囲の厚みである。熱可塑性物樹脂層の形態の第一の透明複製層1bが、通常ワックスまたはシリコンで形成される剥離層41に適用され、複製層1bは、形状スタンプ治具(図示せず)が圧力下および第一の複製層1bに対して引き上げた温度で押圧される工程により、回折マスターレリーフ構造10でスタンプまたはエンボス加工される。
【0091】
図2bを参照すると、アルミニウムの第一の反射層11が全表面領域に渡り、第一の複製層11bに適用され、フォトレジスト層(図示せず)でカバーされる。第一の反射層11は、フォトレジスト層のパターン露光とその部分的除去により、部分的に露光され、エッチングにより、第一の複製層1bから除去される。しかしながら、印刷により耐エッチング性ラッカー層をパターンフォームで適用し、引き続くエッチング工程においてラッカー層が第一の反射層11を保護することもできる。
【0092】
結果を図2cに示す。第一の複製層1bは、第一の反射層11により部分的にのみカバーされる。
【0093】
図2dを参照すると、透明構造層1aが、全表面領域にわたり、第一の反射層11およびそれがない第一の複製層1bの領域に形成される。この場合、第一の回折レリーフ構造10aは、第一の反射層11に対向する構造層1aの面に形成される。
【0094】
図2eを参照すると、構造層1aは、第一の反射層11から離れた面の全領域で第二の回折レリーフ構造10bによりスタンプまたはエンボス加工され、アルミニウムの第二の反射層12により、全領域にわたってコーティングされる。第一および第二のレリーフ構造は、外形形状、配置または空間周波数の点で異なる。
【0095】
第二のレリーフ構造を形成する操作は、第一のレリーフ構造とは別に行うことができる。しかしながら、第一のレリーフ構造に対する第二のレリーフ構造のアライメントまたはレジストレーションは、少なくとも一方向で行われるべきであり、所望のレジストレーションからのずれ、またはレジストエラーは、2mm未満、特に1mm未満とすべきであることに留意すべきである。
【0096】
図2fを参照すると、フォトレジスト層30が、全領域にわたり、第二の反射層12に適用され、部分的に備えられる第一の反射層11と適切な位置関係で行われる露光により、パターンフォームで露光される。この場合、第一の反射層11は、フォトレジスト層30の露光マスクとして用いられることが好ましい。
【0097】
または、フォトレジスト層30は、例えば、透過光で可視可能な部分的な透明領域の形態で、個人の身分証を形成するために、第一の反射層11上にパターンフォームで形成され、または、例えば電気的動マスクまたはレーザースキャナーにより、部分的露光のみが行われ得る。
【0098】
図2gを参照すると、フォトレジスト層30は、部分的に除去され、残るのは、構造層1aの面に垂直に見た場合、第一の反射層11と合致して配置される、第二の反射層12上のフォトレジスト層30の領域だけである。
【0099】
図2hを参照すると、第二の反射層12の露光領域は、エッチングにより、構造層1aから除去される。
【0100】
続いて、フォトレジスト層30の残りが除去され、透明な粘着層20が、全表面領域にわたり、第二の反射層12と、それがない構造層1aの領域とに適用される。こうして、キャリアフィルム40、剥離層41、およびスタンピングによりセキュリティ文書に適用され接着層20によりその上に固定可能なセキュリティ要素1を有する転写フィルム200が提供される。続いて、キャリアフィルム40および剥離層41が、セキュリティ要素1から剥がされる。この配置は透明な剥離層41を有するため、後者はセキュリティ要素1に残り、キャリアフィルム40のみが除去される。透過光で透明なイメージ要素100bは、セキュリティ要素1において、不透明イメージ要素100a、100cの傍らで認知可能である。または、キャリアフィルム40が、第一の複製層1bから問題なく除去される場合は、剥離層41なしに行うことも可能である。
【0101】
セキュリティ要素がラミネートフィルムの形態である場合、その厚みにより、よく安定し、自立する。ラミネートフィルムは、特に、セキュリティ文書における開口部にわたる信頼性の高い恒久的なカバーまたは広がりに適している。セキュリティ要素を構成するために、最大数100μmまでの厚さのキャリアフィルムを用いることができ、同時に第一および第二の反射層間で維持されるべき間隔は、15μmより小さくまたは最小に維持され得る。
【0102】
図3aは、スタンプまたはエンボス加工された第一の回折レリーフ構造10aおよび第二の回折レリーフ構造10bを備えた自立型熱可塑性透明構造層1aを示し、第一の回折レリーフ構造10aおよび第二の回折レリーフ構造10bは、互いに異なる。
【0103】
図3bは、図3aに示す構造層1aを有するセキュリティ要素1’を示す。第一のレリーフ構造10aは、金の部分的な第一の反射層11と接して配置され、第二のレリーフ構造10bは、部分的に提供され、第一の反射層11と合致する銀の第二の反射層12と接して配置される。セキュリティ要素1’が、第一の反射層11が配置される側から観察される場合、金色で、金属反射で、不透明なイメージ要素100a、および透明なイメージ要素100bを備えたグラフィックモチーフを見ることができる。第一のレリーフ構造10aにより形成される第一の情報アイテムは、不透明な像要素100aの領域に提示される。セキュリティ要素1’が、第二の反射層12が配置される側から観察される場合、銀色で、金属反射で、不透明な像要素100c、および透明な像要素100bを備えたグラフィックモチーフを背面像として見ることができる。第二のレリーフ構造10bにより形成される第二の情報アイテムは、不透明な像要素100cの領域に提示される。
【0104】
第一および第二の反射層の形成に、例えばアルミニウムのような同じ材料が用いられる場合、透明カラー層でカバーされた一方または双方の反射層により、異なる色の効果を生じることが可能である。第一および第二の反射層が、観察者に対する側で、それぞれそのような層に覆われた場合、2つの層は、同じまたは異なる色を有し得る。個々の透明カラー層は、部分的またはパターン形態で、随意に異なる色で、着色が可能である。
【0105】
図4a〜4gは、不透明カラーフォトレジスト層30の形態の第一の不透明補助層を有するセキュリティ要素の製造プロセスの断面図示す。
【0106】
図4aを参照すると、上に形成されるセキュリティ要素1”(図4g参照)から剥離可能なPETのキャリアフィルム40がある。キャリアフィルム40には、剥離層41、および剥離層41とは離れた面に第一の回折レリーフ構造10aがエンボス加工された第一の透明複製層1bが配置される。
【0107】
図4bを参照すると、ZnSの透明な第一の反射層11が、全表面領域にわたり、第一の複製層1bに適用され、不透明なグリーンに着色されたフォトレジスト層30が、全表面領域にわたり、その上に適用され、フォトレジスト層がパターン形態で露光され、部分的に除去される。着色されたフォトレジスト層30は、特に層厚が厚く、第一の複製層1bと離れた面にレリーフ構造はない。そして、第一の不透明補助層を形成するパターンのフォトレジスト層30により被覆および保護されていない部分において、第一の反射層が除去されるエッチング工程が続く。
【0108】
これらのステップの結果を図4cに示す。第一の反射層11は、パターン形態で構成され、パターンのカラーフォトレジスト層30または不透明補助層とそれぞれ合致する。
【0109】
上述したフォトレジスト層の利用に代わり、パターンフォームでの印刷で適用することにより、不透明補助層を形成することができる。
【0110】
図4dを参照すると、フォトレジスト層30およびそれがない第一の複製層1bの領域を覆う透明な構造層1aが、全表面領域にわたり、形成される。
【0111】
図4eに示すように、構造層1aは、第一のレリーフ構造10aとは異なる第二のレリーフ構造10bでスタンプされる。
【0112】
ZnSの透明な第二の反射層12が、全表面領域にわたり、第二のレリーフ構造10bを有する構造層1aに適用される。構造層1aと離れた面で、第二の反射層12は、さらなるフォトレジスト層でカバーされてパターンフォームで露光され、不透明補助層は、露光マスクとして機能する。さらなるフォトレジスト層は、部分的に除去され、第二の反射層12が合わせて露光され、エッチングにより、露光領域が除去される。さらなるフォトレジスト層の残りを除去した後、結果は図4fに示すような配列となる。
【0113】
図4gを参照すると、配列は、セキュリティ要素1”を含む転写フィルム200’および剥離可能なキャリアフィルム40を有する。ホットスタンプによりセキュリティ要素1”をセキュリティ文書に適用するために、接着層20が、キャリアフィルム40とは離れたセキュリティ要素1”の面に随意に配置される。
【0114】
第一の反射層11が観察者と対向するように形成されたセキュリティ要素1”が観察される場合、第一の反射層11とともに第一のレリーフ構造10aにより形成される第一の情報アイテムが、パターンフォームの不透明グリーンカラーフォトレジスト層30、または第一の不透明補助層に対して生じる。第二の反射層12とともに第二のレリーフ構造10bにより形成される光学可変効果は、第一の不透明補助層により、完全にカバーされる。第二の反射層12が観察者と対向するように形成されたセキュリティ要素1”が観察される場合、第二の反射層12とともに第二のレリーフ構造10bにより形成される第二の情報アイテムは、パターンの不透明グリーンカラーフォトレジスト層30、または第一の不透明補助層に対して生じる。第一の反射層11とともに第一のレリーフ構造10aにより形成される第一のレリーフ構造10aの光学可変効果は、第一の不透明補助層により、完全にカバーされる。第一および第二の反射層、少なくとも一つの不透明補助層、および第一および第二のレリーフ構造の互いに関連した適切な位置関係により、特に模倣の難しい、グレードの高い、魅力のあるセキュリティ要素を形成することができる。
【0115】
図5a〜5dは、部分的に不透明なカラー構造層の形態である第一の不透明補助層を有するセキュリティ要素の製造プロセスの断面図を示す。
【0116】
図5aを参照すると、配列は、照射により不透明カラーまたは黒くなる透明染料またはカラー物質を含む自立透明構造層1a’を有する。構造層1a’は、第一の面に第一の回折レリーフ構造10aが、第二の面に第二の回折レリーフ構造が、エンボス加工される。
【0117】
ZnSの透明な反射層11、12は、全表面領域にわたり、構造層1a’の2面のそれぞれに適用される(図5b参照)。エッチングペーストが、両面にパターンフォームで適用され、エッチングペーストが、各反射層11、12の下方領域を溶解しまたは部分的に除去する。これらのプロセスステップの結果を図5cに示す。第一の反射層11は、パターンフォームで形成され、パターンフォームで形成された第二の反射層12と合致する。
【0118】
透明構造層1a’は、例えばマスクにより、パターンフォームで露光される。構造層1a’が、露光後に、領域100a、100cで不透明となり、第一の不透明補助層を形成するように、構造層1a’内の透明カラー物質は、領域100a、100cにおいて照射され、着色される。これに対して、構造層1a’の領域100bは、透明のままである。図5dに示すように、例えば接着層によりセキュリティ文書に適用可能なセキュリティ要素1’もある。
【0119】
第一の反射層11が観察者と対向するように形成されたセキュリティ要素1’が観察される場合、透明な第一の反射層11とともに第一のレリーフ構造10aにより形成される第一の情報アイテムが、構造層1a’の不透明カラー領域、または第一の不透明補助層に対して生じる。第二の反射層12とともに第二のレリーフ構造10bにより形成される光学可変効果は、第一の不透明補助層により、完全にカバーされる。第二の反射層12が観察者と対向するように形成されたセキュリティ要素1’が観察される場合、透明な第二の反射層12とともに第二のレリーフ構造10bにより形成される第二の情報アイテムは、パターンフォームの不透明カラーの構造層1a’、または第一の不透明補助層に対して生じる。第一の反射層11とともに第一のレリーフ構造10aにより形成される第一のレリーフ構造10aの光学可変効果は、第一の不透明補助層により、完全にカバーされる。
【0120】
第一および第二の反射層、少なくとも一つの不透明補助層、および第一および第二のレリーフ構造の互いに関連した適切な位置関係により、特に模倣の難しい、グレードの高い、魅力のあるセキュリティ要素を形成することができる。
【0121】
図6aは、本発明のセキュリティ要素1を備えたセキュリティ文書500の断面図を示す。セキュリティ文書500は、透明領域として開口502を備えた紙のキャリア基質501を有している。ここで、セキュリティ要素1は、開口502上を広がり、または、開口において、例えばキャリア基質501の2つの紙層の間に配置される。セキュリティ文書500は、また、キャリア基質501およびセキュリティ要素1を間に閉じ込め、機械的付加および湿度から保護する、無色透明な保護層503、504を随意に有する。従って、セキュリティ要素1は、セキュリティ文書500の透明領域において、両側から観察可能である。
【0122】
図6bは、本発明のセキュリティ要素1を備えるさらなるセキュリティ文書500’の断面図を示す。セキュリティ文書500’は、例えばPET、PVCまたはPCの透明なキャリア基質501’、および不透明印刷インク層505を有する。セキュリティ要素1は、キャリア基質501’に適用され、または、ラミネートされ、不透明印刷インク層505に囲まれる。この場合、セキュリティ要素1は、不透明印刷インク層505と部分的に重なって配置可能である。セキュリティ要素1は、実質上、キャリア基質501’と同じ材料で形成が可能である。セキュリティ文書500’は、また、キャリア基質501’、印刷インク層505およびセキュリティ要素1を間に閉じ込め、機械的付加および湿度から保護する、無色透明な保護層503、504を随意に有する。従って、セキュリティ要素1は、セキュリティ文書500’の透明領域において、両側から観察可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0123】
【特許文献1】DE 10 2005 017 169 A1
【特許文献2】WO 97/19820 A1
【特許文献3】DE 10 2004 042 136 A1
【特許文献4】WO 2006/084685 A2
【符号の説明】
【0124】
1、1’、1” セキュリティ要素
1a、1a’ 構造層
1b 透明層
10 マスター回折レリーフ構造
10a 第一の回折レリーフ構造
10b 第二の回折レリーフ構造
11 第一の反射層
12 第二の反射層
20 透明層
50 第一の情報アイテム
51 第二の情報アイテム
100 グラフィックモチーフ
100a 不透明なイメージ要素
100b 透明なイメージ要素
100c 不透明なイメージ要素
500 セキュリティ文書
500’ セキュリティ文書
501 不透明なキャリア基質
501’ 透明なキャリア基質
502 開口
503 透明な保護層
504 透明な保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に透明な少なくとも一つの構造層(1a、1a’)、少なくとも部分的に配置される第一の回折レリーフ構造(10a)、および、少なくとも部分的に配置される第二の回折レリーフ構造(10b)を有し、前記第一および第二のレリーフ構造(10a、10b)が少なくとも部分的に異なり、構造層(1a、1a’)の面に平行に観察された場合にセキュリティ要素(1、1’、1”)の異なる面に配置され、前記第一のレリーフ構造(10a)が第一の外形を備えた第一の反射層(11)と接し、前記第二のレリーフ構造(10b)が第二の外形を備えた第二の反射層(12)と接するセキュリティ要素(1、1’、1”)であって、
前記第一の反射層(11)および前記第二の反射層(12)は、前記構造層(1a、1a’)の面に垂直に観察された場合に、部分的に配置されるとともに少なくとも部分的に重複し、前記第一および第二の外形の少なくともサブ領域は、前記構造層(1a、1a’)の面に垂直に観察された場合に、互いに合致して広がるとともに、前記構造層(1a、1a’)の少なくとも一つの透明な領域と隣接し、前記第一の反射層が観察者に対向した場合、前記重複領域において前記第二のレリーフ構造(10b)により形成される第二の情報アイテム(51)が、少なくとも部分的に隠され、前記第二の反射層が観察者に対向した場合、前記重複領域において前記第一のレリーフ構造(10a)により形成される第一の情報アイテム(50)が、少なくとも部分的に隠されること、
を特徴とするセキュリティ要素。
【請求項2】
前記第一および第二の情報アイテム(50、51)が、少なくとも部分的に互いに異なること、
を特徴とする請求項1に記載のセキュリティ要素。
【請求項3】
前記第一の反射層(11)が不透明であり、前記観察者に対向した場合、前記第二の情報(51)および随意に前記第二のレリーフ構造(10b)により形成されるさらなる情報アイテムを少なくとも部分的に隠し、または、前記第一の反射層(11)が透明であり、少なくとも一つの第一の不透明補助層が、前記第二の情報(51)および随意に前記第二のレリーフ構造(10b)により形成されるさらなる情報アイテムを少なくとも部分的に隠すこと、
を特徴とする請求項1または2に記載のセキュリティ要素。
【請求項4】
前記第二の反射層(12)が不透明であり、前記観察者に対向した場合、前記第一の情報(50)および随意に前記第一のレリーフ構造(10a)により形成されるさらなる情報アイテムを少なくとも部分的に隠し、または、前記第二の反射層(12)が透明であり、少なくとも一つの第二の不透明補助層が、前記第一の情報(50)および随意に前記第一のレリーフ構造(10a)により形成されるさらなる情報アイテムを少なくとも部分的に隠すこと、
を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセキュリティ要素。
【請求項5】
第一および第二の情報(50、51)およびさらに随意に形成される情報アイテムが、それぞれ完全に隠されること、
を特徴とする請求項3または4に記載のセキュリティ要素。
【請求項6】
前記構造層(1a、1a’)が、第一の面に第一の回折レリーフ構造(10a)を、第二の面に第二の回折レリーフ構造(10b)を有し、前記第一の面は前記第一の反射層(11)に接し、前記第二の面は前記第二の反射層(12)に接すること、
を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のセキュリティ要素。
【請求項7】
前記第一および第二の反射層(11、12)は、前記構造層(1a、1a’)の平面に垂直に観察された場合に、大部分または完全に、互いに合致すること、
を特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のセキュリティ要素。
【請求項8】
前記第一の反射層(11)は、前記観察者に対向した場合、少なくとも一つのグラフィックモチーフ(100)の正面像を形成し、前記正面像は、前記第一のレリーフ構造(10a)により形成される前記第一の情報を示し、前記第二の反射層(12)は、前記観察者に対向した場合、少なくとも一つのグラフィックモチーフ(100)の背面像を形成し、前記背面像は、前記第二のレリーフ構造(10b)により形成される前記第二の情報を示すこと、
を特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のセキュリティ要素。
【請求項9】
少なくとも一つの前記グラフィックモチーフ(100)が、少なくとも入射光で観察される場合に不透明なイメージ要素(100a、100c)と、透明なイメージ要素(100b)とからなり、少なくとも正面の入射光で不透明な前記イメージ要素(100a)が、前記第一の反射層(11)および随意の少なくとも一つの前記第一の不透明補助層により形成され、少なくとも背面の入射光で不透明な前記イメージ要素(100c)が、前記第二の反射層(12)および随意の少なくとも一つの前記第二の不透明補助層により形成され、前記透明なイメージ要素(100b)が、少なくとも一つのさらなる透明層(1b、20)に随意に結合する少なくとも一つの前記構造層(1a、1a’)の透明な領域により形成されること、
を特徴とする請求項8に記載のセキュリティ要素。
【請求項10】
少なくとも一つの前記グラフィックモチーフ(100)が、造形表現、ポートレイト、英数字、文章、グラフィックパターン、シンボルまたはロゴであること、
を特徴とする請求項8または9に記載のセキュリティ要素。
【請求項11】
少なくとも一つの前記第一の不透明補助層および/または少なくとも一つの前記第二の不透明補助層が、少なくとも一つの金属層および/または少なくとも一つの印刷インク層および/または少なくとも一つの不透明カラーラッカー層および/または前記構造層(1a’)の不透明領域により形成されること、
を特徴とする請求項3〜10のいずれか1項に記載のセキュリティ要素。
【請求項12】
前記第一および/または第二の反射層(11、12)が、少なくとも一つの金属層および/または少なくとも一つの誘電層により形成されること、
を特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のセキュリティ要素。
【請求項13】
前記第一および第二の反射層(11、12)が、材料および/または色の点で異なること、
を特徴とする請求項1〜12に記載のセキュリティ要素。
【請求項14】
前記構造層(1a、1a’)が、0.2μmから15μmの範囲、特に0.3μmから3μmの範囲の層厚であること、
を特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のセキュリティ要素。
【請求項15】
前記構造層(1a)が、全体に透明であること、
を特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載のセキュリティ要素。
【請求項16】
前記セキュリティ要素は、透過光状態で観察される場合、少なくとも一つの前記反射層(11、12)の領域において、さらなる情報を示す明白に異なる透過領域を有すること、
を特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載のセキュリティ要素。
【請求項17】
少なくとも一つの前記セキュリティ要素(1、1’、1”)が、セキュリティ文書(500、500’)の少なくとも一つの透明領域に配置され、または部分的にそれらと重複関係にあること、
を特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の少なくとも一つのセキュリティ要素(1、1’、1”)を含むセキュリティ文書。
【請求項18】
前記セキュリティ文書(500)が、透明または不透明なキャリア基質(501)を有し、前記キャリア基質(501)の少なくとも一つの前記透明な領域に、開口(502)があること、
を特徴とする請求項17に記載のセキュリティ文書。
【請求項19】
前記セキュリティ文書(500’)が、透明なキャリア基質(501’)を有し、少なくとも一つの前記セキュリティ要素(1、1’、1”)が、前記キャリア基質(501’)上に配置され、または埋め込まれること、
を特徴とする請求項17に記載のセキュリティ文書。
【請求項20】
前記セキュリティ文書(500、500’)が、少なくとも一つの透明な保護層(503、504)を有すること、
を特徴とする請求項17〜19のいずれか1項に記載のセキュリティ文書。
【請求項21】
前記セキュリティ文書が、2つの透明保護層(503、504)を有し、その間に少なくとも一つの前記キャリア基質(501、501’)および少なくとも一つの前記セキュリティ要素(1、1’、1”)が取り込まれていること、
を特徴とする請求項20に記載のセキュリティ文書。
【請求項22】
前記セキュリティ文書(500、500’)が、身分証明書、パスポート、証明書、銀行カード、クレジットカード、テレフォンカード、紙幣、運転免許証またはビザであること、
を特徴とする請求項17〜21のいずれか1項に記載のセキュリティ文書。
【請求項23】
下記ステップによることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項に記載のセキュリティ要素(1)の製造プロセス。
a)透明な第一の複製層(1b)を提供し、
b)マスター回折レリーフ構造(10)を前記第一の複製層(1b)の第一の面に形成し、
c)部分的な前記第一の反射層(11)と、随意に少なくとも一つの部分的な第一の不透明補助層とを、前記第一の面に形成し、
d)第二の複製層により少なくとも部分的に透明で、前記第一の反射層(11)と、随意に少なくとも一つの前記第一の不透明補助層および前記第一の面のそれらがない領域とに配置される、前記構造層(1a)を形成し、
e)前記第二の回折レリーフ構造(12)を前記構造層(1a)の第二の面に形成し、
f)部分的な前記第二の反射層(12)をある層厚で前記構造層(1a)の前記第二の面に形成し、前記第二のレリーフ構造(10b)が、前記第二の反射層(12)の前記構造層(1a)から離れた面に形成される。
【請求項24】
前記第一の反射層および/または前記第二の反射層が、不透明であること、
を特徴とする請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記第一および/または第二の反射層が透明であり、前記構造層の前記平面に垂直に観察された場合、少なくとも一つの不透明補助層が、前記透明な反射層と合致すること、
を特徴とする請求項23または24に記載のプロセス。
【請求項26】
下記ステップによることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項に記載のセキュリティ要素(1’)の製造プロセス。
g)透明な構造層(1a、1a’)を提供し、
h)前記第一の回折レリーフ構造(10a)および前記第二の回折レリーフ構造(10b)を、前記構造層(1a、1a’)の第一の面および第二の面に形成し、
i)少なくとも一つの部分的な前記第一の反射層(11)および随意の少なくとも一つの第一の不透明補助層を、前記構造層(1a、1a’)の前記第一の面に形成し、
k)少なくとも一つの部分的な前記第二の反射層(12)および随意の少なくとも一つの第二の不透明補助層を、前記構造層(1a、1a’)の前記第二の面に形成する。
【請求項27】
少なくとも一つの前記不透明補助層が、部分的に露光された前記構造層により、および前記構造層に含まれ、前記露光領域において不透明なカラー物質に変換される透明なカラー物質により形成されること、
を特徴とする請求項23、25、または26に記載のプロセス。
【請求項28】
前記第一および第二のレリーフ構造(10a、10b)が、スタンプにより同時に形成されること、
を特徴とする請求項26に記載のプロセス。
【請求項29】
前記レリーフ構造(10、10a、10b)が、スタンプ、特に熱複製またはUV複製により形成されること、
を特徴とする請求項23〜28のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項30】
ステップc)またはステップi)において、前記第一の複製層(11)が全表面領域にわたり適用され、第一のフォトレジスト層が全表面領域にわたり前記第一の複製層(11)に適用され、前記第一のフォトレジスト層が部分的に露光されて除去され、前記第一の反射層(11)が前記第一のフォトレジスト層が除去された領域においてエッチングにより除去され、さらに、前記第一のフォトレジスト層の残留領域が随意に除去され、または、第一の不透明補助層として利用されること、
を特徴とする請求項23〜29のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項31】
前記第一のフォトレジスト層の露光が、前記第一の反射層(11)を通じて行われ、前記第一のフォトレジスト層の部分的な露光が、前記第一のレリーフ構造の構造および/または配置に依存して行われること、
を特徴とする請求項30に記載のプロセス。
【請求項32】
ステップf)またはステップk)において、前記第二の複製層(12)が全表面領域にわたり適用され、第二のフォトレジスト層が全表面領域にわたり前記第二の複製層(12)に適用され、前記第二のフォトレジスト層が部分的に露光されて除去され、前記第二の反射層(12)が前記第二のフォトレジスト層が除去された領域においてエッチングにより除去され、さらに、前記第二のフォトレジスト層の残留領域が随意に除去されること、
を特徴とする請求項23〜31のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項33】
前記第二のフォトレジスト層の露光が、前記第一および第二の反射層(11、12)を通じて行われ、前記第二のフォトレジスト層の部分的な露光が、前記第一のレリーフ構造(10a)および/または前記第二のレリーフ構造(10b)の構造および/または配置に依存して行われること、
を特徴とする請求項32に記載のプロセス。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図2f】
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【図2g】
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【図2h】
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【図2i】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図4e】
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【図4f】
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【図4g】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図6a】
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【図6b】
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【公表番号】特表2010−518432(P2010−518432A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548622(P2009−548622)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際出願番号】PCT/EP2008/000926
【国際公開番号】WO2008/095698
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(507370644)レオンハード クルツ シュティフトゥング ウント コー. カーゲー (21)
【Fターム(参考)】