説明

セキュリティ構造

【課題】 制御基板や制御回路に負担をかけることなく、制御基板ケースの破断の痕跡を残すとともに、ケースカバーとケース本体が本当に封止状態となったかどうかを判断可能とする。
【解決手段】 分離不能に連結された二つの部材に対する連結解除の痕跡を識別可能に残すセキュリティ構造であって、一方の部材側から行われる押し込み操作に応じて一方の部材及び他方の部材に形成された孔部を貫通するとともに、他方の部材に係合することによって二つの部材を連結する連結ピン40を備え、連結ピン40が、給電部から供給される電流の経路の一部を構成可能な導電部45を有し、連結ピン40による二つの部材の連結前と連結後で報知部の動作態様が異なり、二つの部材に対する連結解除の前後で報知部の動作態様が異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機の基板ケースなどに適用されるセキュリティ構造に関し、特に、連結ピンを用いて分離不能に連結された二つの部材に対する連結解除の痕跡を識別可能に残すセキュリティ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スロットマシン、パチンコなどの遊技機では、遊技機の動作を制御するIC、ROMなどの電子部品を実装した制御基板が備えられている。
近年、この種の遊技機の制御基板は、不正行為者によるROMなどの交換や改造、不正部品の追加、接続など、悪質な不正行為の標的となっており、その被害は深刻なものとなっている。
【0003】
このような遊技機の制御基板に対する不正行為を排除する手段として、従来から、制御基板全体を所定の基板ケース内に収納し、この基板ケースを開放不能に封印固定した状態で遊技機側に取り付けるという対策が講じられてきた。
そして、遊技機の制御基板を収納した基板ケースを開放不能に封印固定する方法としては、連結ピンを用いて二つの部材を分離不能に連結する連結構造が広く用いられていた。
【0004】
ところが、悪質な場合は、ニッパなどの剪断工具を用意し、その連結ピンを切断して、ケースを開封する不正行為者がいた。
そこで、連結ピンの切断によるケースの開封を困難にする技術が提案されている。
例えば、ケースカバーとケース本体を開封するために破断するとその痕跡が残る破断部と、ケース側部の突出部材に施された電気配線を遮断すると制御基板に痕跡が残る制御基板切断部位とを備えたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
これによれば、破断部と制御基板切断部位の二箇所を切断しなければケースカバーを開封できないので、開封が困難となり、不正行為の意欲を減衰させることができる。
【0005】
また、連結ピンに関する技術としては、次のものがある。
例えば、外光を受けて発電する太陽電池と、この太陽電池からの電力の供給を受けて発光するLEDと、これら太陽電池とLEDとを接続する配線とを連結ピンに備え、ケースカバーとケース本体との封止状態を解除するために連結ピンの突起部を切断すると、この突起部に埋め込まれた配線も切断され、LEDが消灯するものがある(例えば、特許文献2参照。)。
これによれば、LEDが消灯していることを確認することで、ケースカバーとケース本体との封止状態が解除されたことを容易に発見できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−6535号公報
【特許文献2】特開2006−68083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、ケースカバーを開封する際に、制御基板の一部を切断するので、この切断によって基板本体の回路や機器に悪影響を及ぼしていた。
また、同技術においては、各制御基板切断部位の電気配線に抵抗を設けて、切断時の抵抗による電圧変化で開封履歴を保持していた。このため、CPU、記憶装置に負担がかかり、遊技機本来の演出制御を行う主制御基板に影響を及ぼしていた。
さらに、特許文献2に記載の技術は、太陽電池という高価な部品を搭載する必要があるので、コスト高となっていた。
【0008】
しかも、特許文献1及び2に記載の技術は、ケースカバーとケース本体との封止状態が解除されたかどうかについては判断できるものの、連結ピンの係合によりケースカバーとケース本体が本当に分離不能な封止状態となったかどうかを判断することはできなかった。
【0009】
本発明は、上記の事情にかんがみなされたものであり、制御基板や制御回路に負担をかけることなく、制御基板ケースの破断の痕跡を残すとともに、ケースカバーとケース本体が本当に封止状態となったかどうかを判断可能とするセキュリティ構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するため、本発明のセキュリティ構造は、分離不能に連結された二つの部材に対する連結解除の痕跡を識別可能に残すセキュリティ構造であって、一方の部材側から行われる押し込み操作に応じて、一方の部材及び他方の部材に形成された孔部を貫通するとともに、他方の部材に係合することによって二つの部材を連結する連結ピンと、電力を受けて所定の動作を行う報知部と、この報知部に電力を送る給電部と、を備え、連結ピンが、給電部から供給される電流の経路の一部を構成可能な導電部を有し、連結ピンによる二つの部材の連結前と連結後で報知部の動作態様が異なり、二つの部材に対する連結解除の前後で報知部の動作態様が異なる構成としてある。
【発明の効果】
【0011】
本発明のセキュリティ構造によれば、連結ピンを用いて二つの部材を分離不能に連結する連結構造において、制御基板を破断することなく二つの部材の連結が解除されるので、制御基板に負担をかけることがない。
また、制御回路を構成するCPUや記憶装置を用いずに、封止状態の解除を検出するので、制御回路に負担をかけることがない。
さらに、連結ピンによる二つの部材の連結前と連結後で報知部の動作態様が異なるので、ケースカバーとケース本体が本当に分離不能な封止状態となったかどうかを判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】上ケースと下ケースが分離した状態の制御基板ケースの構成を示す外観斜視図である。
【図2】上ケースと下ケースが分離不能に連結された状態の制御基板ケースの構成を示す外観斜視図である。
【図3】連結ピンの構造を示す正面図と、導電部の構造を示す斜視図である。
【図4】連結ピンが封印固定部に押し込まれる前の状態を示す封印固定部及び近傍の縦方向断面図である。
【図5】連結ピンが封印固定部に押し込まれた後の状態を示す封印固定部及び近傍の縦方向断面図である。
【図6】連結ピンが封印固定部に押し込まれた後において開封部が切断された状態を示す封印固定部及び近傍の縦方向断面図である。
【図7】検出回路の構成を示す回路図である。
【図8】連結ピンが封印固定部に押し込まれてLEDが消灯する状態を示す回路図である。
【図9】開封部が切断されてLEDが点灯する状態を示す回路図である。
【図10】検出回路の他の構成を示す回路図である。
【図11】検出回路のさらに他の構成を示す回路図である。
【図12】連結ピンの他の構造を示す正面図と、導電部の構造を示す斜視図である。
【図13】図12に示した連結ピンに接続される検出回路の構成を示す回路図である。
【図14】図12に示す連結ピンが封印固定部に押し込まれた後の状態を示す封印固定部及び近傍の縦方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るセキュリティ構造が適用される制御基板ケースの分解斜視図、図2は、本発明の実施形態に係るセキュリティ構造が適用されて分離不能な封止状態となった制御基板ケースの外観斜視図である。
これらの図に示すように、本発明の実施形態に係るセキュリティ構造が適用される制御基板ケース10は、互に開閉可能に嵌合する上ケース20及び下ケース30を備えて構成されている。
【0014】
上ケース20及び下ケース30は、互に開閉可能に嵌合して遊技機用制御基板(図示せず)の収納ケースを構成するようになっており、全体が透明プラスチックからなる筐体構造となっている。
上ケース20には、下ケース30のヒンジ部(図示せず)と回動自在に係合するヒンジ部(図示せず)が設けられ、これらヒンジ部によって、上ケース20と下ケース30が開閉自在に組み立てられるようになっている。
【0015】
また、上ケース20及び下ケース30の開閉側(ヒンジ部と反対側の端部)には、互に上下に重合するように複数の封印固定部21、31(A、F)が突出形成され、これらの封印固定部21、31同士が、連結ピン40aを介して分離不能に連結されるようになっている。
【0016】
さらに、上ケース20には、ケース側面側にも、複数の封印固定部21(B〜E)が形成されている。
このケース側面側の封印固定部21は、制御基板ケース10が図示しない遊技機側に取り付けられた場合に、遊技機側に備えられる封印固定部(図示せず)と対応する位置に形成されており、これらの封印固定部同士を連結ピン40aを用いて連結させることで、制御基板ケース10と遊技機とを分離不能に連結固定することができる。
【0017】
次に、本実施形態に係る制御基板ケース10の連結構造について、図3〜図5を参照して説明する。
図3の(a)は、連結ピンの構造を示す外観正面図、図3の(b)は、連結ピンに嵌め込まれる導電部の構造を示す拡大斜視図、図4は、連結ピンが押し込み挿入される前の状態を示す封印固定部の縦方向断面図(図2のI−I断面図)、図5は、連結ピンが押し込み挿入された状態を示す封印固定部の縦方向断面図(図2のI−I断面図)である。
【0018】
本実施形態に係る制御基板ケース10の連結構造では、上ケース20及び下ケース30に形成される封印固定部21、31同士が連結ピン40aを用いて分離不能に連結されるとともに、開封時に開封部22の切断を要求し、この切断跡が開封の痕跡として残るように構成されている。
なお、ここでは、封印固定部21、31の連結構造について先に説明し、開封部22の構造をその後に説明する。
【0019】
封印固定部21、31同士は、連結ピン40aを用いて分離不能に連結される。連結ピン40aは、図3に示すように、押し込み操作される頭部41と、この頭部41に一体的に連続する軸部42と、この軸部42の先端外周部に一体的に形成される係合爪部43とを有する樹脂製のもので、係合爪部43は、先端側ほど細くなるテーパー形状になっている。
また、軸部42(係合爪部43)には、先端部から基端部にわたって切り込み状の溝部44が形成されている。そのため、側方から押圧力を受けたとき、弾性変形によって係合爪部43の径が縮小するようになっている。
【0020】
さらに、連結ピン40aには、銅や鉄などの導電性材料で形成され、後述する検出回路50に流れる電流を制御する導電部45aが外方から嵌め込まれている。導電部45aは、図3(b)に示すように、導電性材料を用いて環状に形成した上部接点部45a−1と、同じく導電性材料を用いて環状に形成した下部接点部45a−2と、これらを上下に配置して環状内側同士を導電性材料で連接した連接部45a−3とを有した構造となっている。
【0021】
上部接点部45a−1と下部接点部45a−2のそれぞれの環状内側の径は、いずれも連結ピン40aの軸部42の径とほぼ同じか僅かに大きくなっている。また、上部接点部45a−1と下部接点部45a−2は、一箇所に切込部45a−4が形成されてC字形状となっており、この切込部45a−4により分かれたC字形状の二つの端部の一方又は双方を上方又は下方へ弾性的に曲げることで、この導電部45aを連結ピン40aの外方から嵌合できるようになっている。
【0022】
この導電部45aの連接部45a−3の長さは、連結ピン40aの軸部42の長さとほぼ同じになっている。このため、導電部45aを連結ピン40aに嵌合した場合、上部接点部45a−1は、連結ピン40aの頭部41の底面41−1に並接し、下部接点部45a−2は、係合爪部43の上面43−1に並接し、連接部45a−3は、軸部42の側面に並接される。
なお、頭部41の底面41−1と上部接点部45a−1、係合爪部43の上面43−1と下部接点部45a−2、軸部42と連接部45a−3は、それぞれ接着剤などで固着してもよい。
また、連結ピン40aの軸部42の表面に軸方向の溝部(図示せず)を形成し、ここに導電部45aの連接部45a−3を嵌め込むようにしてもよい。
【0023】
上ケース20の封印固定部21は、上下方向を向く円筒形状に形成され、その内側に、連結ピン40aの頭部41よりも僅かに径寸法が大きい丸孔21−1を有している。丸孔21−1の下側には、壁部21−2を有しており、ここに挿通孔21−3が形成されている。
挿通孔21−3の径寸法は、連結ピン40aの頭部41よりも小さく、軸部42よりも僅かに大きく、また、係合爪部43よりも僅かに小さく設定されている。
【0024】
また、壁部21−2には、導電性材料で形成された環状の上部接触子(第一接触子)21−4がその壁部21−2の上面21−5に沿って配置されている。この上部接触子21−4の外周の一部には、突起部21−41が形成されており、壁部21−2の上面21−5から封印固定部21の外周面に向かって穿設された貫通孔21−6に挿入され、外周面から突出して、その先端が開封部22付近に達し、上部配線22−1を介して検出回路50に接続されている。
【0025】
下ケース30の封印固定部31も、上下方向を向く円筒形状に形成され、その内側に丸孔31−1を有している。丸孔31−1の上側には、壁部31−2を有しており、ここに係止孔31−3が形成されている。
係止孔31−3の径寸法は、連結ピン40aの軸部42よりも僅かに大きく、また、係合爪部43よりも僅かに小さく設定されている。
【0026】
また、壁部31−2には、導電性材料で形成された環状の下部接触子(第二接触子)31−4がその壁部31−2の下面31−5に沿って配置されている。この下部接触子31−4の外周の一部には、突起部31−41が形成されており、壁部31−2の下面31−5から封印固定部31の外周面に向かって穿設された貫通孔31−6に挿入され、その先端が下ケース30の本体に向かって外周面から突出し、下部配線32を介して検出回路50に接続されている。
【0027】
そして、上ケース20及び下ケース30の封印固定部21、31が重合した状態で、上ケース20の封印固定部21(丸孔21−1)に連結ピン40aを押し込むと、先端部のテーパーガイドにより係合爪部43が縮径状態で挿通孔21−3を通過する。この通過後、係合爪部43は、一旦弾性復元して封印固定部21の壁部21−2の底面に係合する(図4参照)。
この係合により、連結ピン40aが上ケース20の封印固定部21から抜けるのを防止できる。
【0028】
また、上ケース20及び下ケース30の封印固定部21、31が重合した状態で、さらに連結ピン40aを下ケース30の封印固定部31(丸孔31−1)に押し込むと、先端部のテーパーガイドにより係合爪部43が縮径状態で係止孔31−3を通過する。このとき、頭部41は、挿通孔21−3の通過が規制され、また、係合爪部43は、係止孔31−3を通過後、弾性復元して封印固定部31の壁部31−2の下面31−5に係合する(図5参照)。
これにより、上ケース20及び下ケース30の封印固定部21、31が連結ピン40aを介して一体的に連結固定される。
【0029】
そして、これら封印固定部21、31が連結固定された状態においては、連結ピン40aの導電部45aの上部接点部45a−1が封印固定部21の上部接触子21−4に接合し、導電部45aの下部接点部45a−2が封印固定部31の下部接触子31−4に接合する。ここで、上部接点部45a−1と下部接点部45a−2は、連接部45a−3を介して連接しており、これらは導電性材料で形成されているため、上部接触子21−4と下部接触子31−4が導電部45aを介して電気的に導通可能となる。
【0030】
このように連結ピン40aが押し込み挿入される封印固定部21は、上ケース20との間が開封部22によって結合されている。開封部22は、意識的に切断容易な板状に形成されており、ニッパなどの剪断工具を用いて切断することにより、封印固定部21が上ケース20から分離され、制御基板ケース10の開閉が可能になっている。開封部22の切断跡は、開封の痕跡として残り、これを確認することで開封の有無が判定される。
【0031】
なお、本実施形態では、封印固定部21が、二つの開封部22を介して上ケース20に結合されている。
これにより、上ケース20の開封に際し、一つの封印固定部21につき、二つの開封部22を切断することが要求され、痕跡を残さない開封や、痕跡の隠蔽が更に困難になる。
【0032】
また、開封部22には、極細裸リード線などで形成された上部配線22−1が配設されており、図6に示すように、開封部22が切断されると、上部配線22−1も一緒に切断されるようになっている。上部配線22−1が切断されると、後述する検出回路50aに流れる電流の経路も変わるため、報知部の動作を切替制御することができる。この上部配線22−1の切断による報知部の動作の切替制御については、後記の「検出回路及びその動作」にて詳述する。
【0033】
なお、このような連結構造を構成する封印固定部21、31は、上ケース20及び下ケース30にそれぞれ複数形成されている。これは、遊技機の認証確認を受ける際に必要となるからである。すなわち、遊技機の認証確認を受ける前は、一部の封印固定部21、31において連結ピン40aを押し込み挿入して上ケース20と下ケース30を分離不能に連結しておく。認証確認を受ける際、その連結ピン40aが押し込み挿入された封印固定部21、31に連続する開封部22が切断され、上ケース20が開封可能となって、認証確認が行われる。認証確認が終了すると、今度は、複数用意された封印固定部21、31のうち、連結ピン40aが未だ押し込まれていない封印固定部21、31にて連結ピン40aを押し込み挿入する。これにより、上ケース20と下ケース30を再度分離不能に連結することができる。
【0034】
次に、本発明の実施形態に係るセキュリティ構造を構成する、検出回路及びその動作について、図7〜図9を参照して説明する。
図7は、検出回路の構成と、連結ピンが押し込み挿入される前の状態における検出回路の動作を示す回路図、図8は、連結ピンが押し込み挿入された状態における検出回路の動作を示す回路図、図9は、開封部が切断された状態における検出回路の動作を示す回路図である。
【0035】
本実施形態に係るセキュリティ構造は、上ケース20及び下ケース30に形成される封印固定部21、31同士が連結ピン40aを用いて分離不能に連結されるとともに、開封部22の切断により該開封部22に切断の痕跡を残すように構成されている。また、本実施形態に係るセキュリティ構造は、連結ピン40aによる封印固定部21、31の連結前と連結後で検出回路50aに設けられた報知部の動作態様が異なることで、上ケース20と下ケース30が分離不能に連結されたことを確認でき、さらに、上ケース20と下ケース30の連結解除の前後で報知部の動作態様が異なることで、その連結解除を管理者に報知できるように構成されている。
【0036】
この本実施形態に係るセキュリティ構造を構成する検出回路50aは、制御基板ケース10の内部(分離不能に連結された二つの部材(上ケース20と下ケース30)により形成される閉空間内、例えば、制御基板上など)に設けられており、図7に示すように、給電部V1からの電力の供給を受けて点灯するLEDなどの発光素子(報知部)と、この発光素子が点灯可能な電流を流すための抵抗R1とを有して、これら発光素子と抵抗R1が直列に接続されており、さらに、上部接触子21−4及び下部接触子31−4が発光素子に並列に接続されている。
そして、上部接触子21−4と下部接触子31−4は、封印固定部21、31の内部で離間して配置されており、連結ピン40aが封印固定部21、31に押し込み挿入されると、導電部45aがそれら上部接触子21−4と下部接触子31−4との両方に接合して、上部接触子21−4→導電部45a→下部接触子31−4の経路を形成するようになっている。つまり、導電部45aも、給電部から供給される電流の経路の一部を構成可能となっており、上記経路が形成されたか否かで検出回路50aにおける電流の流れる経路も異なることから、報知部の動作を制御でき、これにより、連結ピン40aによる封印固定部21、31の連結状態を検出できる。
【0037】
具体的には、検出回路50aは、次のように動作する。
例えば、連結ピン40aが封印固定部21、31に押し込まれる前の状態では、図7に示すように、連結ピン40aの導電部45aが上部接触子21−4や下部接触子31−4に接合していない。このため、上部接触子21−4と下部接触子31−4との間が電気的に接続されておらず、開放状態にあるので、発光素子に電流が流れて点灯動作する。このように点灯している発光素子を視認することで、連結ピン40aが未だ押し込まれておらず封印固定部21、31が連結されていないものと判断できる。
【0038】
連結ピン40aが封印固定部21、31に押し込まれて封印固定部21、31が分離不能に連結されると、図8に示すように、連結ピン40aの導電部45aが上部接触子21−4と下部接触子31−4に接合し、これら上部接触子21−4と下部接触子31−4が導電部45aを介して電気的に接続される。つまり、上部接触子21−4と下部接触子31−4が電気スイッチの固定端子に相当し、導電部45aが移動端子に相当して、移動した導電部45aが上部接触子21−4と下部接触子31−4の両方に接合することにより、上部接触子21−4→導電部45a→下部接触子31−4の経路が形成される。そして、この経路に給電部V1からの電流が流れるので、発光素子に電流が流れなくなり消灯動作する。
【0039】
これらのように、連結ピン40aを封印固定部21、31に押し込む前と押し込んだ後で、発光素子が点灯から消灯へ変化する(報知部の動作態様が異なる)ので、この変化を視認することで、連結ピン40aが押し込まれて封印固定部21、31が確実に分離不能に連結されたか否かを判断できる。
【0040】
さらに、図9に示すように、開封部22の切断に伴い上部配線22−1が切断されると、上部接触子21−4、導電部45a、下部接触子31−4に電流が流れなくなり、発光素子に電流が流れて点灯動作する。
このように、開封部22が切断される前と切断された後で、発光素子が消灯から点灯へ変化する(報知部の動作態様が異なる)ことにより、開封部22が切断された痕跡を残すことができ、その変化を視認することで開封部22が切断されたか否かを判断できる。
【0041】
また、検出回路50aや給電部V1が制御基板ケース1の内部閉空間内に設けられているので、制御基板ケース1が開封されない限り、それら検出回路50a等に対して、断線や回路変更といった不正行為を行うことができない。このことからも、報知部の動作態様の変化による制御基板ケース1の連結解除の痕跡を確実に残すことができる。
【0042】
なお、図7〜図9に示す検出回路50aにおいては、発光素子を報知部として使用した。ただし、報知部は、発光素子に限るものではなく、例えば、所定の音声を発する音声出力手段や、所定の信号を他の装置へ送信する信号送信手段などを使用することもできる。
【0043】
また、検出回路50aの構成は、図7〜図9に示す構成に限るものではなく、例えば、図10に示すように、インバータを用いたロジック回路で構成することもできる。
この検出回路bは、次のように動作する。例えば、連結ピン40aの押し込み挿入前は、検出回路bの入力がLとなり、抵抗R1側にHが出力されて、発光素子(LED)が点灯する。連結ピン40aが押し込み挿入されると、検出回路bの入力がHとなり、抵抗R1側にLが出力されて、発光素子が消灯する。開封部22が切断されると、検出回路bの入力がLとなり、抵抗R1側にHが出力されて、発光素子が点灯する。
このように、検出回路bも、図7〜図9に示す検出回路aと同様の動作をするため、封印固定部21、31が分離不能に連結されたことを検出したり、開封部22が切断された痕跡を残したりすることができる。
【0044】
さらに、図7〜図9に示す検出回路50aにおいては、連結ピン40aを封印固定部21、31に押し込む前と押し込んだ後で発光素子を点灯から消灯へ変化させ、開封部22が切断される前と切断された後で発光素子を消灯から点灯へ変化させるようにしたが、発光素子の動作態様は、これに限るものではなく、例えば、図11に示す検出回路50cを用いることにより、連結ピン40aを封印固定部21、31に押し込む前と押し込んだ後で発光素子を消灯から点灯へ変化させ、開封部22が切断される前と切断された後で発光素子を点灯から消灯へ変化させるようにすることもできる。
【0045】
また、発光素子は、図7〜図9においては、検出回路50aに設けたが、これに限るものではなく、例えば、図12に示すように、連結ピン40bの内部に設けることができる。
この場合、導電部45bの構成としては、発光素子45b−5の一方の端子と上部接点部45b−1との間をジャンパ線45b−6で接続し、発光素子45b−5の他方の端子と下部接点部45b−2との間を極細裸リード線45b−7で接続することで、上部接点部45b−1と発光素子45b−5と下部接点部45b−2との間を電気的に導通可能とすることができる。
【0046】
この導電部45bを連結ピン45bに嵌め込んだ場合、発光素子45b−5は、軸部42の側面から頭部41の上面中央にかけてL字形状に穿設された収納孔46にジャンパ線45b−6とともに収納され、極細裸リード線45b−7は、外傷を防ぐために、軸部42の側面に形成された溝部(図示せず)に埋め込むように配置される。そして、頭部41の上面中央に位置する収納孔46の開口には透光性材料で形成された窓部材47が装着されており、発光素子45b−5の発光を外部から視認可能になっている。
【0047】
さらに、発光素子45b−5を内蔵した連結ピン40bを用いる場合、検出回路50dは、図13に示すように、給電部V1と上部接触子21−4との間に抵抗R1を直列に接続し、下部接触子31−4を接地する構成としている。
この構成において、例えば、連結ピン40bが封印固定部21、31に押し込まれる前の状態では、導電部45bが上部接触子21−4及び下部接触子31−4に接合せず、これら上部接触子21−4と導電部45bとの間、及び、導電部45bと下部接触子31−4との間がそれぞれ開放状態にあるので、発光素子45b−5に電流が流れず消灯する。
【0048】
また、連結ピン40bが封印固定部21、31に押し込まれて封印固定部21、31が分離不能に連結されると、上部接触子21−4と下部接触子31−4が導電部45bを介して電気的に接続され、発光素子45b−5に電流が流れて点灯する(図13、図14参照)。
このように、連結ピン40bを封印固定部21、31に押し込む前と押し込んだ後で、発光素子が消灯から点灯へ変化する(報知部の動作態様が異なる)ので、この変化を視認することで、連結ピン40bが押し込まれて封印固定部21、31が確実に分離不能に連結されたか否かを判断できる。
【0049】
さらに、開封部22の切断により上部配線22−1が切断されると、上部接触子21−4、導電部45b、下部接触子31−4に電流が流れなくなり、発光素子45b−5に電流が流れなくなり消灯する。
このように、開封部22が切断される前と切断された後で、発光素子が点灯から消灯へ変化する(報知部の動作態様が異なる)ので、開封部22が切断された痕跡を残すことができ、その変化を視認することで開封部22が切断されたか否かを判断できる。
【0050】
なお、連結ピン40bの頭部41や軸部42、あるいは連結ピン40bの全体を透光性の材料で形成することにより、発光素子45b−5の点灯を外部から容易に視認することができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態のセキュリティ構造によれば、連結ピンによる上ケースと下ケースの連結前と連結後で報知部の動作態様が異なるので、それら上ケースと下ケースが本当に分離不能な封止状態となったかどうかを判断できる。
また、開封部の切断に伴い、この開封部に配設された上部配線も切断されて、発光素子が点灯又は消灯するので、この発光素子の動作態様の変化によって不正行為の痕跡を残し、遊技機点検の際の目視検査を容易に行うことができる。
【0052】
さらに、検出回路の構成を、発光素子などの報知部への給電を制御する簡単な構成としたので、制御基板を破断してこの制御基板に負担をかけることがなく、さらに、CPUや記憶装置を搭載した制御回路に負担をかけることがない。
しかも、連結ピンを完全に封印固定部に押し込み挿入したときにのみ発光素子への導通(又は非導通)を可能にしているので、誤動作がほとんどない。
【0053】
また、開封部の切断ではなく、連結ピンを軸芯方向からドリルなどで破壊したり、又は、連結ピンの軸部を剪断したりするなどして、上ケースを開封する不正行為があった場合でも、連結ピンの導電部と各接触子との導通が断たれるので、発光素子の動作態様が変化する。これにより、不正の痕跡を容易に目視確認することができる。
【0054】
以上、本発明のセキュリティ構造の好ましい実施形態について説明したが、本発明に係るセキュリティ構造は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態では、遊技機に設けられる制御基板用のケースを対象としたセキュリティ構造について説明したが、遊技機に限るものではなく、例えば、遊技に使用されるパチンコ玉やメダルなどの遊技媒体を遊技者に貸出す遊技媒体貸出機、遊技媒体の数量を計数する計数機、遊技機ごとに設置され遊技機からの信号を中継する台コンピュータ、複数の遊技機で構成される遊技機島に設置され台コンピュータとホールコンピュータとの間で信号の中継を行う島コンピュータ、遊技機ごとに設置され遊技に関する各種データを表示する呼出しランプなど、遊技場に設置される各種装置において、これら各種装置に設けられた制御基板を、装置内の固定部材に連結ピンを介して分離不能(取り外し不能)に連結(固定)する連結構造にも、本発明のセキュリティ構造を適用することができる。
【0055】
また、本発明のセキュリティ構造は、上述した実施形態のように、所定の基板を収納する上ケース20と下ケース30を分離不能に連結する連結構造だけでなく、例えば、孔部を有する所定の基板を、孔部を有する所定の固定部材に連結ピンを介して直接固定する連結構造にも適用可能である。つまり、本発明のセキュリティ構造は、連結ピンを介して二つの部材を分離不能に連結する連結構造であれば、全てに適用できる。
【0056】
さらに、連結ピンに搭載された発光素子の色を連結ピンごとに変えることにより、上ケースの開封履歴を明確にすることができる。例えば、第一の連結ピンに搭載された発光素子の色を白色、第二の連結ピンに搭載された発光素子の色を赤色とする。遊技機の認証確認前(出荷時)は、第一の連結ピンにより上ケースと下ケースを連結封印し、認証確認終了後(不正検査後)、遊技機へ取り付ける際には、第二の連結ピンにより上ケースと下ケースを連結封印する。これにより、白色の発光素子が点灯していれば認証確認前であることがわかり、赤色の発光素子が点灯していれば認証確認後であることがわかり、すべての発光素子が消灯していれば不正行為により開封部が切断されたことがわかる。
【0057】
また、上述した実施形態では、連結ピンは、樹脂製としたが、樹脂製に限るものではなく、導電性材料で形成することができる。この場合、導電部は不要となり、この連結ピン本体により、上部接触子と下部接触子とを電気的に接続することができる。
【0058】
さらに、発光素子を下ケースの封印固定部の丸孔の底部に設けるとともに、連結ピン本体を透光性材料で形成し、さらに、検出回路の構成を、図11に示すように、連結ピンによる封印固定部の連結により発光素子が点灯し、開封部の切断により消灯するようにする。このようにすれば、複数の連結ピンのうち、封印固定部に押し込まれた連結ピンの先端は、発光素子に接近するので、透光性を有する連結ピン自体が明るく光る。これに対し、封印固定部に押し込まれていない連結ピンは、発光素子が点灯しないため、連結ピン自体も光らない。これにより、連結ピンが上ケースと下ケースを分離不能に連結しているか否かを判断できる。しかも、開封部が切断されると、発光素子が消灯し、連結ピン自体も光らなくなるので、開封部が切断された痕跡を残すことができる。
【0059】
そして、上ケースの封印固定部の壁部に配置される上部接触子の上面には、内周に沿って凸部を連続的又は間歇的に形成することができる。この凸部を有することで、連結ピンの導電部の上部接点部との接合がより確実なものとなる。
同様に、下ケースの封印固定部の壁部に配置される下部接触子の下面には、内周に沿って凸部を連続的又は間歇的に形成することができる。この凸部を有することで、連結ピンの導電部の下部接点部との接合をより確実なものとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、遊技機に取り付けられる遊技機用基板ケースに広く利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
10 制御基板ケース
20 上ケース
21 封印固定部
21−4 上部接触子
30 下ケース
31 封印固定部
31−4 下部接触子
40a、40b 連結ピン
41 頭部
42 軸部
43 係合爪部
45a、45b 導電部
45a−1、45b−1 上部接点部
45a−2、45b−2 下部接点部
50a〜50d 検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離不能に連結された二つの部材に対する連結解除の痕跡を識別可能に残すセキュリティ構造であって、
一方の前記部材側から行われる押し込み操作に応じて、一方の前記部材及び他方の前記部材に形成された孔部を貫通するとともに、他方の前記部材に係合することによって二つの前記部材を連結する連結ピンと、
電力を受けて所定の動作を行う報知部と、
この報知部に電力を送る給電部と、を備え、
前記連結ピンが、前記給電部から供給される電流の経路の一部を構成可能な導電部を有し、
前記連結ピンによる前記二つの部材の連結前と連結後で前記報知部の動作態様が異なり、
前記二つの部材に対する連結解除の前後で前記報知部の動作態様が異なることを特徴とするセキュリティ構造。
【請求項2】
前記報知部の動作態様が、前記所定の動作の実行又は停止であり、
前記報知部は、
前記連結ピンによる前記二つの部材の連結前は、前記所定の動作を実行し、
連結後は、前記所定の動作を停止し、
連結解除に伴う、前記連結ピン又は前記部材の切断によって、前記所定の動作を実行する請求項1記載のセキュリティ構造。
【請求項3】
前記報知部が、前記給電部から電力の供給を受けて発光する発光部、所定の音声を出力する音声出力部、所定の信号を出力する信号出力部のうちの一又は二以上を有する請求項1又は2記載のセキュリティ構造。
【請求項4】
前記一方の部材に形成された前記孔部の内側に、前記給電部に接続された第一接触子を備え、
前記他方の部材に形成された前記孔部の内側に第二接触子を備え、
前記連結ピンは、前記押し込み操作に応じて各前記孔部を貫通し、前記他方の部材に係合したときに前記導電部が前記第一接触子と前記第二接触子とを接続する請求項1〜3のいずれか一項に記載のセキュリティ構造。
【請求項5】
前記連結ピンは、押し込み操作される頭部と、前記各孔部を貫通する軸部と、他方の前記部材に裏側から係合する係合爪部と、を備え、
前記導電部は、前記頭部の底面に並接する第一接点部と、前記係合爪部の上面に並接する第二接点部と、前記第一接点部と前記第二接点部とを連接する連接部とを有し、
前記連結ピンが前記押し込み操作に応じて各前記孔部を貫通し、前記他方の部材に係合したときに、前記第一接点部が前記第一接触子に接合し、前記第二接点部が前記第二接触子に接合する請求項1〜4のいずれか一項に記載のセキュリティ構造。
【請求項6】
前記連結ピンが、前記報知部を内蔵し、
該連結ピンが前記押し込み操作により前記孔部を貫通して前記他方の部材に係合すると、前記報知部が係合前と異なる態様で動作し、
前記二つの部材に対する連結が解除されると、前記報知部が解除前と異なる態様で動作する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のセキュリティ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−194124(P2011−194124A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66214(P2010−66214)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(591142507)株式会社北電子 (348)
【Fターム(参考)】