説明

セキュリティ用レゾナンスタグおよびセキュリティ用レゾナンスタグの製造方法

本発明のセキュリティ用レゾナンスタグ(1)は、両側に導電性材料層パターン(3〜7)の設けられた誘電性材料シート(2)から成る。導電性材料層パターンとしてインダクタ(3)およびその内部に配置されたキャパシタ(4,6)が形成されており、これらが相互接続されて共振回路をなしている。キャパシタ部分を誘電性材料から切り出し、インダクタ(3)内の位置から折り曲げることにより、その部分がインダクタ(3)を通る磁束の浸透のために開放される。これにより検出レベルが向上し、セキュリティ用レゾナンスタグのサイズを低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する技術分野
本発明は請求項1の上位概念記載のセキュリティ用レゾナンスタグおよび請求項4の上位概念記載のセキュリティ用レゾナンスタグの製造方法に関する。
【0002】
背景技術
セキュリティ用レゾナンスタグは、例えば電子商品監視システム(EASシステム)において、店舗または倉庫などからの商品の不正持ち出しを検出するために用いられている。この種のセキュリティ用レゾナンスタグは誘電体材料シート上に大量生産される。この誘電体材料シートの両側に設けられた導電性材料層パターンのインダクタおよびキャパシタにより適切な共振周波数を有する共振回路が形成され、その共振周波数が店舗等の出入口に配置された適切な装置を介して検出されるのである。こうしたセキュリティ用レゾナンスタグは例えば欧州特許第0285559号明細書から公知である。
【0003】
日本国公開第02−310696号明細書から、キャパシタエレメントの周囲に沿って部材をカットし、カットされたキャパシタ部分をインダクタ平面から折り曲げ、インダクタを通る磁束を浸透させるためにこの部分を開放させることが知られている。ただし、実験から、このタイプのEASタグでは、共振周波数にかなりの変動が生じて検出レートが低下してしまうことが判明した。また本願の発明者は日本国公開第02−310696号明細書に記載された方法にしたがって製造されたEASタグを市場では確認していない。
【0004】
本発明の概要
本発明の課題は、セキュリティ用レゾナンスタグの検出レベルを向上させ、正確な共振周波数を維持し、同時にタグのサイズを小さく保つことである。
【0005】
この課題は請求項1の特徴により解決される。
【0006】
本発明では、インダクタを通る磁束を浸透させるためにインダクタの中央部が開放される。これにより高い検出レートが達成され、共振周波数は狭い範囲内で維持される。なお折り曲げ動作はインダクタパターンの反対側へ向かって行われ、キャパシタプレートの折り曲げられた部分の形状およびサイズに相応するシールドプレートが設けられる。本発明はさらにこうしたセキュリティ用レゾナンスタグの製造方法にも関する。
【0007】
本発明のセキュリティ用レゾナンスタグの有利な実施形態およびその利点は従属請求項および以下の説明から明らかとなるはずである。
【0008】
図面の簡単な説明
以下に本発明を図示の実施例に則して詳細に説明する。図1には店舗などの出入口に配置された送受信機がタグを検出する状況の概略図が示されている。図2には図1の状況で検出レベルの改善を図る手段の等価回路図が示されている。図3には本発明のセキュリティ用レゾナンスタグの誘電体材料シートの第1の側の導電性材料層パターンが示されている。図4には本発明のセキュリティ用レゾナンスタグの誘電体材料シートの第2の側の導電性材料層パターンが示されている。図5には図3,図4のタグにおいて切り出されて途中まで捲り上げられたキャパシタの様子が示されている。図6には図5のタグにおいて完全に折り曲げられたキャパシタの様子が示されている。図7にはキャパシタの折り曲げを行う手段の概略図が示されている。図8には本発明のセキュリティ用レゾナンスタグをCDまたはDVDの上部または内部に取り付ける実施例が示されている。
【0009】
有利な実施例の説明
図1,図2に則してセキュリティ用レゾナンスタグの品質について以下に考察する。図1,図2では、タグ1は電子商品監視システム(EASシステム)の送信機Txと受信機Rxとのあいだに存在する。送信機は特定の周波数レンジの無線周波数信号を送信しており、共振周波数を有するタグがこの送受信機のレンジ内にあるときにはつねに受信機がタグの共振周波数を検出する。
【0010】
検出レートまたは検出品質は共振回路のQ値およびその物理的サイズに依存する。式
【0011】
【数1】

から、高いQ値を得るためには、低いr値、高いL値および低いC値が必要であることがわかる。低いr値はタグとして導電性材料、例えば銀を選択することにより得られ、高いL値はインダクタに複数の巻線を設けることにより得られ、また低いC値はキャパシタンスの小さいキャパシタを選択することにより得られる。
【0012】
ただし実際には、銀はきわめて高価であり、またインダクタコイルの巻線数を増大するとタグの材料および表面積も増大するので、タグ全体の価格が上昇する。また、導電性材料の材料コストを節約しようとして小さい巻線を多数用意しても、r値は増大する。さらに、例えば10pFほどのきわめて小さいキャパシタンスを有するキャパシタを選択すると、共振回路が散乱容量などの外部影響を感受しやすくなり、共振周波数が変化してしまう。
【0013】
このように、EASシステムの共振回路の設計では価格、サイズその他の要素のあいだの妥協点を見出さなければならない。市場では、検出レートおよびQ値が高く、安価でかつ小さなタグが所望される。したがって共振回路は通常、ポリプロピレンまたはポリエチレンから成る誘電体材料シートと、その両側に形成されるアルミニウムから成る導電性材料層とを含む。
【0014】
図2にはEASシステムおよびインダクタL1,L2,L3間の相互インダクタンス係数M12,M23に相応する等価回路図が示されている。タグの共振回路での損失抵抗r,測定回路での入力抵抗Rが表されている。測定電圧Vmはタグの共振回路からの信号強度である。共振回路L2,r,Cは送信機コイルL1と受信機コイルL3とのあいだに位置している。受信信号強度Vmの式は
【0015】
【数2】

となり、ここでωは2πf[fは共振周波数]に等しい。V1は信号発生器の電圧である。コイルL1,L2,L3[断面積S1,S3>S2]が図示のように構成されている場合、相互インダクタンスは
【0016】
【数3】

となり、ここでK12,K23は定数である。式(2),式(3)を用いて
【0017】
【数4】

が得られる。ここでKは定数であり、Qは共振回路の品質
【0018】
【数5】

の尺度であり、Sは磁束に包囲される面積である。上の式からVmがQ*Sに比例することがわかる。したがってタグを改善するには、QまたはS、またはQおよびSの双方を増大すればよい。
【0019】
コイルの中心を通過する磁束は、図3,図4からわかるように、通常のタグではその位置にあるキャパシタによって部分的に阻止される。コイルの中心を通る磁束を増大するために、キャパシタの面積をできるだけ小さくすることが望まれる。前述したように、所定の最小サイズのキャパシタを使用したとしても、磁束通過のためのコイル中心の開放面積は制限される。本発明では、キャパシタをコイル中心から除去し、コイル中心を通る磁束を増大させ、これによりEASシステムの検出レートを大幅に増大することができる。
【0020】
図3には誘電体材料シート2の第1の側の導電性材料層パターンが示されている。ここには、インダクタ3,このインダクタの第1の端部に接続されかつインダクタの内部に配置された第1のキャパシタプレート4,およびインダクタの反対側の第2の端部に接続された第1の接続素子5が形成されている。図4には誘電体材料シート2の第2の側の、図3のパターンに重なるべき導電性材料層パターンが示されている。この第2の側には、第1のキャパシタプレートに対向する第2のキャパシタプレート6,およびこの第2のキャパシタプレートに接続されかつ第1の接続素子に対向するシールドプレート7が形成されている。シールドプレート7は第1のキャパシタプレート4および第2のキャパシタプレート6の形状およびサイズに相応する形状およびサイズの導電性材料のパッチとなる。
【0021】
図5に示されているように、第1のキャパシタプレート4および第2のキャパシタプレート6はキャパシタの周囲に沿ってカットされ、インダクタ3内部の中央位置から折り曲げられる。図6に示されているカットされたキャパシタ4,6は、シールドプレート7に重なるように、折り曲げ線10によって完全に折り曲げられている。
【0022】
シールドプレート7とインダクタ3の巻線とのあいだの容量結合が一定であることにより、シールドプレート7に重なるようにキャパシタ4,6を折り曲げれば、共振周波数に良好に定義された変化が生じる。折り曲げられたキャパシタ4,6からシールドプレート7までの距離は正確に固定される。
【0023】
キャパシタを折り曲げる際に生じうる機械的トレランスを補償するために、シールドプレート7は有利にはキャパシタプレート4,6よりも大きな寸法で設けられる。これによりキャパシタプレート4,6の折り曲げ後もつねにこれらがシールドプレート7の周内に位置する。
【0024】
第1の接続素子5とシールドプレート7とのあいだの電気コンタクト8は、有利には、キャパシタプレート4,6の折り曲げ前後に、接続素子5,7の領域で誘電体材料シート2を貫通する不規則な孔により設けられる。
【0025】
キャパシタの周囲に沿ったキャパシタプレート4,6のカット9は機械的手段による切削、レーザー切削、加熱などにより行われる。キャパシタ4,6の折り曲げの第1プロセスは機械的手段またはエアジェットなどにより行われる。キャパシタ4,6の折り曲げを行う機械的手段の例が図7に示されている。ここでは折り曲げツール12が誘電体材料シート2の上方に定置されており、誘電体材料シートはこの折り曲げツールへ向かって運動し、通過の際にキャパシタ4,6が捲り上げられる。捲り上げられたキャパシタ4,6をさらに折り曲げてタグの上方のシールドプレート7に密着させるために、ローラ型ツール13が図12の誘電体材料シート2の運動方向で見て折り曲げツール12の直後に配置されている。
【0026】
本発明のタグはCDまたはDVD用のEASタグに特に適している。これは、タグの中央の孔をCDまたはDVDの孔の上方に配置することにより、無線周波数フィールドの通過を妨げる金属層のない箇所にタグのコイルが位置するようになるからである。従来技術によって製造される従来のタグでは、サイズが小さくEASシステムで検出されなくなってしまうので、こうした構成は不可能である。
【0027】
本発明のタグは、図8に示されているように、CDまたはDVDの中央に配置されても良いし、またDVDのレイヤ間に組み込まれても良い。後者の場合には、EASタグはディスクを破壊しないかぎり取り外すことができなくなる。
【0028】
本発明の構造により共振回路のスペックが10〜20%の範囲まで改善され、しかもそのサイズを低減することができる。このようなタグの製造にかかる主たるコストは製造コストであるので、サイズが低減されれば相応にタグ価格も低減することができる。
【0029】
本発明を有利な実施例に則して説明したが、当該分野の技術者であれば、特許請求の範囲に示された本発明の範囲から離れることなく、実施例に種々の修正を加えられることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】店舗などの出入口に配置された送受信機がタグを検出する状況の概略図である。
【図2】図1の状況で検出レベルの改善を図る手段の等価回路図である。
【図3】本発明のタグの誘電体材料シートの第1の側の導電性材料のパターン層を示す図である。
【図4】本発明のタグの誘電体材料シートの第2の側の導電性材料のパターン層を示す図である。
【図5】捲り上げられたキャパシタの様子を示す図である。
【図6】完全に折り曲げられたキャパシタの様子を示す図である。
【図7】キャパシタの折り曲げを行う手段の概略図である。
【図8】本発明のタグをCDまたはDVDの上部または内部に取り付ける実施例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側に導電性材料層パターン(3〜7)を備えた誘電体材料シート(2)が設けられており、
誘電体材料シート(2)の第1の側の導電性材料層パターンは、インダクタ(3)、該インダクタの第1の端部に接続されかつ該インダクタの内部に配置された第1のキャパシタプレート(4)、および該インダクタの第2の端部に接続された第1の接続素子(5)を形成しており、
誘電体材料シート(2)の第2の側の導電性材料層パターンは、第1のキャパシタプレート(4)に対向する第2のキャパシタプレート(6)、および該第2のキャパシタプレートに接続されかつ第1の接続素子(5)に対向する第2の接続素子(7)を形成しており、
第1の接続素子(5)および第2の接続素子(7)は電気的に接続されており、
誘電体材料シート(2)は第1のキャパシタプレート(5)および第2のキャパシタプレート(6)の周囲に沿ってカットされ、カットされた部分がインダクタの平面から折り曲げられて、インダクタを通る磁束の浸透のためにこの部分が開放されている、
セキュリティ用レゾナンスタグ(1)において、
カットされたキャパシタ(4,6)は誘電体材料シート(2)の第2の側へ折り曲げられており、該折り曲げられたキャパシタの下方にシールドプレート(7)となる接続素子が位置している
ことを特徴とするセキュリティ用レゾナンスタグ。
【請求項2】
シールドプレート(7)の形状およびサイズは折り曲げられた第1のキャパシタプレート(4)および第2のキャパシタプレート(6)の形状およびサイズに相応する、請求項1記載のレゾナンスタグ。
【請求項3】
導電性材料層パターン(3〜7)は、タグがCDまたはDVDの上部または内部に位置しかつ該CDまたはDVDの中央孔の周囲にキャパシタの折り曲げによる孔が位置するように形成される、請求項1または2記載のレゾナンスタグ。
【請求項4】
両側に導電性材料層パターン(3〜7)を備えた誘電体材料シート(2)を準備し、ここで導電性材料層パターンによりインダクタ(3)およびその内部に配置されたキャパシタ(4,6)から成る共振回路を形成するステップと、
キャパシタ(4,6)の周囲に沿って誘電体材料シート(2)をカットし、カットされた部分をインダクタ(3)の平面から折り曲げて、インダクタを通る磁束の浸透のためにこの部分を開放するステップと
を有する
請求項1から3までのいずれか1項記載のセキュリティ用レゾナンスタグの製造方法において、
折り曲げの際には導電性材料層パターンのインダクタ(3)の形成されている側とは反対の側へキャパシタを折り曲げる
ことを特徴とするセキュリティ用レゾナンスタグの製造方法。
【請求項5】
エアジェットまたは機械的手段を用いてあらかじめキャパシタ部分を捲り上げ、タグが折り曲げツール(12)およびローラ(13)を通過する際に捲り上げたキャパシタ部分を完全に折り曲げ、タグ表面に密着するようにプレスする、請求項4記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−515006(P2007−515006A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544215(P2006−544215)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【国際出願番号】PCT/DK2004/000876
【国際公開番号】WO2005/059855
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(506198621)
【氏名又は名称原語表記】Poul Richter Jorgensen
【住所又は居所原語表記】Saugskaervej 16, Thuro, DK−5700 Svendborg, Denmark
【Fターム(参考)】