説明

セキュリティ製品のための機械読取可能なセキュリティ要素

本発明は、エレクトロルミネッセンス特性を有する少なくとも1種の粒子状物質および透明導電性顔料を含むセキュリティ製品のための機械読取可能のセキュリティ要素、このタイプのセキュリティ要素の製造のための印刷インキおよび前記セキュリティ要素を含むセキュリティ製品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交番電場における非接触の励起後に可視放射線または機械検出可能な放射線を発するセキュリティ製品のための機械読取可能なセキュリティ要素、このタイプのセキュリティ要素の製造のための印刷インキおよびこのタイプのセキュリティ要素を含むセキュリティ製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セキュリティ製品、例えば銀行紙幣、小切手、クレジットカード、株券、パスポート、身分証明書、運転免許証、入場券、価額印紙などは、これらの製品の偽造をさらに困難にすることを意図するさまざまなセキュリティ機能を付して長年の間提供されて来た。
【0003】
セキュリティ製品は、異なるセキュリティレベルに属するさまざまなセキュリティ要素と共に好ましくは提供される。ここで、1つの同じセキュリティ要素が、同時に多くのセキュリティレベルに属するならば、すなわち、セキュリティ製品のある限定領域を補助手段なしに、および補助手段によって両方共に光学的に照査することができるならば、これらの知覚可能な光学的印象は一般的に異なるので、これはより大きな利点である。異なるセキュリティレベルを有するこのタイプのセキュリティ要素が、簡単に、好ましくは単一の加工工程において生産されることは、特に望ましい。
【0004】
これらのセキュリティ要素は、エレクトロルミネッセンス特性を有する物質を含むものを含む。エレクトロルミネッセンス特性を有する物質は、交番電場における励起によって可視放射線を発する物質を意味すると解釈される。
【0005】
このタイプのセキュリティ要素を検出することができるためには、セキュリティ製品は、交番電場を使用して励起されなければならない。
【0006】
エレクトロルミネッセンス特性を有する物質を含むセキュリティ要素は知られている。
【0007】
それゆえに、ドイツ特許第4126051号には、エレクトロルミネッセンス特性を有する埋設セキュリティ糸状物を有するセキュリティ文書が記載されている。このセキュリティ糸状物は、多層構造を有し、電極として作用する2つの導電性層の間にエレクトロルミネッセンス物質を含む層を含有する。発光は、この特別な構造の場合において、および電極の直接的電気的接触によって検出され得るだけである。
【0008】
ドイツ特許第19735293号には、ルミネッセンス要素を有する重要製品およびセキュリティ製品が開示されている。このルミネッセンス要素は、セキュリティ製品の1つの層中にあり、その層は、認証の特徴を有する1つの層の下に配置されている。したがって、これは、その上にある認証要素のための背面照明としての役目を果たす。
ここでは、認証要素の設計は、二次的に重要なことである。さらに、それは必ずしも補助手段なしで光学的に目に見える必要はない。レーザーの使用が可能なポリカーボネートフィルムが、認証要素として記述されている。エレクトロルミネッセンスの要素は、印刷された電極および別の層の中に設置されるエレクトロルミネッセンス特性を有する物質によって作られる。
この構造は、非常に複雑であり、同様に接触させたときにエレクトロルミネッセンスが生成することを許容しているにすぎない。
【0009】
同様の構造を有する重要製品およびセキュリティ製品が、ドイツ特許第19708543号に記載されている。ここでは、印刷されたエレクトロルミネッセンス物質は、平面電極配列で発生する交番電場の電気力線がそれらを通り抜けるような形で配置されている。ここではまた、非接触でエレクトロルミネッセンスを生成することはできない。
【0010】
ヨーロッパ特許1156934B1号は、少なくとも1種の光学的に変化し得る物質および少なくとも1種の機械読取可能な特徴物質を含み、この特徴物質はコードの形または文字数字式情報であり、この光学的に変化し得る物質が顔料である重要文書を開示している。ここで機械読取可能な特徴物質は、光学的に変化し得る物質の目に見える光学的に変化する効果を損なってはならない。機械読取可能な特徴物質は、特に、ルミネッセンス物質、導電性ポリマー、カーボンブラックなどであり得る。一般に、これらはいずれか1種を選択して使用される。
記載されたルミネッセンス物質は、可視スペクトル領域外での光を発光するものである。エレクトロルミネッセンスの特性を有する物質については言及されていない。
導電性ポリマーまたはカーボンブラックは、導電性層の製造に使用される。
機械読取可能な特徴物質は、光学的に変化し得る物質と同じ層の中に、または、その代わりに、別々の層の中に配置することができる。2つの異なったセキュリティレベルがこの重要文書でお互いに有利に結合されるが、機械読取可能な特徴は、IRまたはUVの光の下で検出することができるものであり、交番電場を生み出す特別なチェック装置を使用して機械で読取ができない。しかしながら、この装置は、重要文書を専門的に照合する装置、例えば、自動の紙幣カウンターおよびチェッカーなどに主に使用されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明の目的は、交番電場における非接触の励起の際に機械で評価することができるルミネッセンスを有しており、簡単な構造を有していて、好ましくは透明であり、簡単なプロセスによってセキュリティ製品に応用でき、その中にさらなるセキュリティレベルが簡単な方法で集積化され得る、セキュリティ製品のための機械読取可能なエレクトロルミネッセンスのセキュリティ要素を提供することであった。
【0012】
さらなる目的は、このタイプのセキュリティ要素の製造のための印刷インキを提供することであった。
【0013】
その上、本発明のさらなる目的は、前記の特性を有しているセキュリティ要素の製造ための印刷インキに使用することができる顔料混合物を提供することであった。
【0014】
最後に、本発明のさらなる目的は、交番電場による非接触の励起の際に高いエレクトロルミネッセンス強度を有しているセキュリティ要素を含んでいるセキュリティ製品を提供することであった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の目的は、エレクトロルミネッセンス特性を有する少なくとも1種の粒子状物質および透明導電性顔料を含む、セキュリティ製品のための機械読取可能なセキュリティ要素によって達成される。
【0016】
さらに、本発明の目的は、エレクトロルミネッセンス特性を有する少なくとも1種の粒子状物質および透明導電性顔料を含むセキュリティ要素の製造のために印刷インキによって達成される。
【0017】
さらに本発明の目的は、単一層または多層の支持材(support material)およびその支持材の層の上または中に配置された前記の構成を有する少なくとも1つの機械読取可能なセキュリティ要素を含むセキュリティ製品によって達成される。
【0018】
本発明の目的のために、セキュリティ製品は、重要文書、例えば銀行紙幣、小切手、クレジットカード、株券、パスポート、身分証明文書、運転免許証、入場券、有価印紙、ラベル、包装材料、シールなど、同様に保護されるべき日用品、例えば衣服、靴、家財、家電など(この場合、本発明のセキュリティ要素が物品に直接応用される)などを意味すると解釈される。
【0019】
本発明によるセキュリティ要素は、エレクトロルミネッセンス特性を有している少なくとも1種の粒子状物質および透明導電性顔料を含む。
【0020】
エレクトロルミネッセンス特性を有している物質は一般に、金属、例えばCu、MnまたはAgなどでドープされ、または活性化された、周期表の第II族および第VI族の無機化合物、例えばZnSまたはCdSを含む粒子状の材料である。同様に主としてMn、Srを使用するか、または希土類を使用して活性化されたケイ酸塩、アルミン酸塩、リン酸塩、タングステン酸塩、ゲルマン酸塩、ホウ酸塩などに基づく粒子状ルミネッセンス物質、特にZn2SiO4:Mnに基づく粒子状物質、または粒子状有機ポリマー、または前記化合物の混合物を使用することもできる。
【0021】
これらの物質は、交番電場における励起後に、可視放射線を発する。可視光の発光は、好ましくは交番電場における励起によってのみ、または主としてそれによって起こり、紫外または赤外のスペクトル領域における励起によってはより少ない程度しか起こらない。
【0022】
粒子は、有利にはマイクロカプセル化された化合物の形態である。カプセル化層の非常に好適な物質は、特にポリマーまたはさまざまな金属酸化物である。これらは、長期間曝露の際にエレクトロルミネッセンス物質の分解を引き起こす場合があるさまざまな環境影響、例えば印刷インキの湿潤成分など、に対してエレクトロルミネッセンス物質を保護する。さらに、エレクトロルミネッセンス物質の劣化耐性は、フィルター層によって増加させることができ、または、これらの発光を改変することができる。
【0023】
粒子の粒径は、これらが印刷加工、特にグラビア印刷に好適であるように選択される。この目的に好適である平均粒子サイズは、好ましくは約0.2〜約100μm、好ましくは、1〜50μm、特に好ましくは2〜30μmの範囲内である。
【0024】
発光の励起が紫外スペクトル領域で確実に起こらないようにするために、エレクトロルミネッセンス粒子の表面にUVフィルター層を付加的に適用することができる。
【0025】
また、粒子状のエレクトロルミネッセンス物質に、これらの物質の反射帯または吸収帯が移動するように無機または有機の染料を加えることもできる。使用可能なベース物質は、元々少ない数の色相の光を発するのみであるので、このようにすることにより、発光の利用可能な色相の範囲をかなり広げることが可能である。
【0026】
粒子状のエレクトロルミネッセンス物質は、単独でまたは2つ以上の異なる物質の混合物で使用される。異なる物質が使用される場合、これらが異なる色の放射線を発光することは有利である。
【0027】
使用される透明導電性顔料は、少なくとも1層の透明導電性層を有する顔料である。
【0028】
好ましいのは、TiO2、合成または天然雲母、フィロケイ酸塩、ガラス、SiO2および/またはAl23からなる群から選択される基体(substrate)の上に少なくとも1つの透明な導電層を有する顔料の使用である。
【0029】
ここで前記の基体は、フレーク形状であることが特に好ましい。しかしながら、原則として、前記の物質を含む非フレーク形状の基体の上に少なくとも1つの透明導電性層を有する顔料の使用もまた好適である。導電性物質からなる透明な顔料も同様に好適である。導電性顔料は、断面、縦軸の両方において角、鋭い稜もまたは突起する先端がないスムーズに丸くなった形状を有することが特に有利である。非フレーク形状の顔料の使用は、本発明によるセキュリティ要素における用途特性によって単に制限されるにすぎない。
【0030】
一般に、導電性層または導電性物質は、ガリウム、アルミニウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、スズ、リン、砒素、アンチモン、セレン、テルル、および/またはフッ素でドープされた1種または複数のドープされた導電性金属酸化物、例えば酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウムまたは酸化チタンなどを含む。
【0031】
基体が存在している場合、前記の透明導電性顔料は、導電性層の上および/または下にさらなる1つまたは複数の層を有することができる。これらの層は、金属酸化物、金属酸化物水和物、金属亜酸化物、金属フッ化物、金属窒化物、金属酸窒化物またはこれらの物質の混合物を含むことができる。
【0032】
これらの追加層の適用は、特に追加層が導電性層の下に位置している場合、顔料の色特性をユーザー要求に合致するようにすることができる。導電性層の上への追加層の適用は、導電性を特に用途の要求に合わせることを可能にする。
【0033】
例えば、誘電体層が導電性層の上に位置することが、本発明によるセキュリティ要素における導電性顔料の相互の接触の場合に、この誘電体層が導電性層の直接的な接触を防ぐので、全く有利であるということが認められた。
【0034】
透明導電性顔料のための特に好ましい物質は、少なくとも1層の導電性金属酸化物層で被覆された雲母である。特に好ましいものは、アンチモンでドープされた酸化スズ層で被覆された雲母顔料;酸化チタン層、酸化ケイ素層およびアンチモンでドープされた酸化スズ層で被覆された雲母顔料;あるいはアンチモンでドープされた酸化スズ層およびさらなる金属酸化物層、特に酸化チタン層で被覆された雲母顔料である。
【0035】
そのような顔料は、Minatec(登録商標)の名前でMerck KGaAから市販されている。
【0036】
本発明によるセキュリティ要素における透明導電性顔料は、高い電気伝導率と同時に適度に高い透明性を有していなければならない。この理由のために、顔料の粒子径は、1〜500μm、好ましくは2〜100μm、特に好ましくは5〜70μmであることが必要である。狭い粒子径分布が好ましい。
【0037】
アスペクト比、すなわち顔料の平均厚さに対する平均粒径の比は、フレーク形状の導電性顔料の場合、少なくとも2:1、好ましくは少なくとも10:1、特に好ましくは少なくとも100:1である。
【0038】
高い電気伝導率を有していながら、特に透明であることが認められている導電性フレーク形状顔料は、数重み付け平均粒子面積F50が150μm2以上、特に200μm2以上である上記の組成物のものである。これらは、80μm2未満の粒子面積を有する顔料の数重み付け比率が、透明導電性顔料に基づいて33%以下、好ましくは25%未満である場合に、さらに有利な特性を有する。しかしながら、40μm2未満の粒子面積を有する顔料の数重み付け比率が、透明導電性顔料に基づいて15%以下、好ましくは10%以下である場合に、もっとさらに良好な透明性が得られる。微細物の含有量が減少すると、本発明によるセキュリティ要素において光散乱を減少させ、ひいてはヘイズの減少を生じさせる。
【0039】
粒子面積は、フレークの主面、すなわち最長軸を有する面、のサイズに対する値を意味すると解釈される。
【0040】
微細物含有量は、例えば顕微鏡下での測定および測定された粒子数を数えることによって監視される。これは、目視により実行することができ、所望なら、数えられた標準に対するサンプルの比較で簡素化され、またはビデオカメラおよび好適な自動像解析ソフトウェアの助けで自動的に行うことができる。粒径分析のためのこのタイプの自動解析システムは、当業者に知られており、市販されている。統計的に保証される粒径分析のためには、少なくとも1000、好ましくは2000以上の粒子を測定しなければならない。
【0041】
透明導電性顔料は、単独で、または2以上の異なった顔料の混合物として本発明によるセキュリティ要素に使用することができる。ここでは、異なる物質を含む顔料、異なった形状を有する顔料および/または異なった色を有している顔料を多様に使用することができる。しかし、光透過性だけは、保証されなければならない。
【0042】
十分高いエレクトロルミネッセンス強度で良好な機械可読性を達成するためには、透明導電性顔料の存在が、エレクトロルミネッセンス特性を有している物質のエレクトロルミネッセンス強度の増加を引き起こして、その結果、機械可読性を生み出しているので、本発明のセキュリティ要素は、エレクトロルミネッセンス特性を有している物質および透明導電性顔料の両方を含むことが不可欠である。
【0043】
また、本発明によるセキュリティ要素が、機械読取可能なエレクトロルミネッセンスに加えたさらなるセキュリティレベルを有すべき場合、それはさらに、少なくとも1種のフレーク形状効果顔料および/または有機若しくは無機の着色顔料を含むことができる。
【0044】
フレーク形状効果顔料は、フレーク形状真珠光沢顔料、主として透明または半透明の干渉顔料および金属効果顔料を意味すると解釈される。また、液晶顔料(いわゆるLCPs)または構造化されたポリマー薄片(いわゆるホログラフィ顔料)は、これらの中に含まれる。これらのフレーク形状顔料は、一層または複数層の物質から構成されており、所望なら、異なっていてもよい。
【0045】
真珠光沢顔料は、高い屈折率の透明なフレークからなっており、平行整列の際に多重反射によって独特の真珠光沢を示す。またさらに干渉色を示すこのタイプの真珠光沢顔料は干渉顔料として知られている。
【0046】
また、古典的な真珠光沢顔料、例えばTiO2フレーク、塩基性炭酸鉛、BiOCl顔料または真珠箔(nacreous pigments)なども、もちろん原則として好適であるが、本発明の目的に好ましく使用されるフレーク形状効果顔料は、無機フレーク形状支持体(flake-form support)の上に金属、金属酸化物、金属酸化物水和物またはその混合物、金属混合酸化物、金属亜酸化物、金属酸窒化物、金属フッ化物、BiOClまたはポリマーの少なくとも1つの被覆を有する干渉顔料または金属効果顔料である。金属効果顔料は、好ましくは少なくとも1つの金属層を有する。無機フレーク状支持体は、好ましくは天然または合成の雲母、カオリンまたはその他のフィロ珪酸塩、ガラス、SiO2、TiO2、A123、Fe23、ポリマーフレーク、黒鉛フレークまたは金属フレーク、例えばアルミニウム、チタン、青銅、銀、銅、金、鉄鋼またはさまざまな金属合金などからなる。特に好ましいものは、雲母、ガラス、黒鉛、SiO2、TiO2およびA123またはこれらの混合物の支持体(supports)である。
【0047】
これらの基体のサイズは、それ自体重要でない。基体は、一般に0.01〜5μm、特に0.05〜4.5μmの厚みを有している。長さおよび幅の範囲は、通常1〜250μm、好ましくは2〜200μm、特に2〜100μmである。これらは、一般に2:1〜25,000:1、特に3:1〜2000:1のアスペクト比(平均の粒子厚さに対する平均直径の比率)を有する。
【0048】
支持体に適用される被覆は、好ましくは金属、金属酸化物、金属混合酸化物、金属亜酸化物または金属フッ化物、特にTiO2、亜酸化チタン、酸窒化チタン、Fe23、Fe34、SnO2、Sb23、SiO2、Al23、ZrO2、B23、Cr23、ZnO、CuO、NiOまたはこれらの混合物から選択される無色または着色の金属酸化物からなる。
金属の被覆は、好ましくはアルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銀、亜鉛、モリブデン、タンタル、タングステン、パラジウム、銅、金、白金またはそれの合金を含む。
使用される金属フッ化物は、好ましくはMgF2である。
【0049】
使用されるフレーク形状効果顔料は、特に好ましくは多層効果顔料である。これらは、複数の層を有し、これらの層は、好ましくは前記の物質からなり、さまざまな屈折率を有しており、それぞれの場合において、少なくとも2つの屈折率の異なる層が支持体の上に、すなわちフレーク形状の、好ましくは非金属支持体の上に、交互に置かれており、それら個々の層の相互の屈折率は、少なくとも0.1だけ、好ましくは少なくとも0.3だけ異なる。支持体の上に位置する層は、ほとんど透明であるか、または着色されているか、または半透明であり得る。
【0050】
架橋し、配向したコレステリック液晶またはホログラフィ顔料として知られているいわゆる構造化されたポリマーフレークからなる、いわゆるLCPsもフレーク形状効果顔料として同様に使用することができる。
【0051】
前記のフレーク形状効果顔料は、本発明によるセキュリティ要素の中に単独または混合物で存在することができる。
【0052】
本発明によって使用されるフレーク形状効果顔料は、好ましくは透明であるかまたは半透明(すなわち入射光線の少なくとも10%を通過する)である。このタイプのフレーク形状効果顔料は、それらの透明性が本発明によるセキュリティ要素を有するセキュリティ製品における多種多様の可能な背景色に貢献し、同時にエレクトロルミネッセンスによって発生した光の放射強度が損なわれないので、好んで使用される。
【0053】
しかしながら、本発明のある実施形態においては、少なくとも1つの金属層を有するフレーク形状効果顔料を使用すると有利である。
【0054】
本発明の特に好ましい実施形態においては、異なる照明および/または視角で、目で知覚可能な異なる色および/または明るさの印象を後に残すフレーク形状効果顔料が使用される。異なる色の印象の場合、この特性はカラーフロップ(colour flop)として知られている。特にカラーフロップを有する顔料は、これで製造されたセキュリティ要素において補助手段なしに容易に肉眼で知覚可能であるコピーできない色および光沢の印象を生み出す。また、そのような顔料は、光学的に変化可能として知られている。
【0055】
本発明による光学的に変化し得るフレーク形状効果顔料は、少なくとも2つの異なる照明または視角で少なくとも2つから最大四つの光学的に明確に区別できる別個の色を有しているが、好ましくは2つの異なる照明または視角で2つの光学的に明確に区別できる別個の色を有するか、または3つの異なる照明または視角で3つの光学的に明確に区別できる別個の色を有する。それぞれの場合において、好ましくは、中間的ではなく、分離した色相(すなわち、光学的に変化し得る顔料を含むセキュリティ要素を傾けるとき、1つの色から別の色への変化が明白である)が現れる。この特性は、一方では見る人が、セキュリティ要素自体を認識することをより容易にし、同時にカラーフロップ効果は、市販のカラー写真複写機で複写し、再製することができないので、この特徴の複写をより困難にする。
【0056】
しかしながら、また、照明を変えて傾けたときにおよび/または視角を変えたときに連続した色の進行、すなわち多くの異なった色相、例えば典型的な真珠光沢、を有する光学的に可変なフレーク形状効果顔料を使用することももちろん可能である。このタイプの拡散色の変化もまた人間の目で容易に検出可能である。
【0057】
これらの完全な光学的な効果を発揮するのが可能なように、本発明によって使用されるフレーク形状効果顔料は、これらを含むセキュリティ要素中に配向した形で存在する、すなわち、これらは、セキュリティ要素と共に提供されるセキュリティ製品表面に対して実質的に平行に並べられる場合に有利である。一般に、このタイプの配向は、通常、セキュリティ要素の適用のために使用される方法、例えば従来の印刷方法によって既に実質的に行われている。
【0058】
使用することができるフレーク形状効果顔料は、例えばMerck KGaAからの例えばIriodin(登録商標)、Colorstream(登録商標)、Xirallic(登録商標)、Lustrepak(登録商標)、Colorcrypt(登録商標)、Colorcode(登録商標)およびSecuralic(登録商標)、MearlからのMearlin(登録商標)の名前で入手できる市販の干渉顔料;Eckhardからの金属効果顔料;ゴニオクロマティック(光学的に変化し得る)効果顔料、例えばBASFからのVariochrom(登録商標)、Flex Products Inc.からのChromafflair(登録商標)、WackerからのHelicone(登録商標)またはSpectratecからのホログラフィック顔料およびその他の同じタイプの市販の顔料である。しかしながら、このリストは、単に例示とみなされるべきであり、限定的ではない。
【0059】
好適な無機着色顔料は、全ての慣用的な透明および不透明な白色、着色および黒色顔料、例えばベルリン青、バナジン酸ビスマス、針鉄鋼、磁鉄鋼、赤鉄鉱、クロム酸化物、水酸化クロム、アルミン酸コバルト、ウルトラマリン、クロム/鉄の混合酸化物、スピネル、例えばテナール青(Thnard’s Blue)、カドミウム硫化物およびセレン化物、クロメート顔料またはカーボンブラックなどであり、他方、挙げられる有機着色顔料は、特にキナクリドン、ベンズイミダゾール、銅フタロシアニン、アゾ顔料、ペリノン(Perinone)、アンタントロン、さらにフタロシアニン、アントラキノン、インジゴ、チオインジゴまたはこれらの誘導体またはカーミンレッドである。一般に、全ての有機または無機の着色顔料、特に印刷部門において慣用的であるものを使用することができる。
また、紫外線に対する遮蔽のために、UV光を吸収する顔料を使用することも可能である。これらの中で、2酸化チタンおよび酸化亜鉛を単に例示するために挙げることができる。
【0060】
無機着色顔料および有機着色顔料の粒径は、制限されないが、例えば印刷法による、セキュリティ要素またはセキュリティ製品における適用の要求に合致しなければならない。
【0061】
本発明によるセキュリティ要素は、セキュリティ製品の全表面にわたって、または一部に適用される。
【0062】
最も簡単な変形では、これは標準の印刷法における印刷インキの助けをかりて実行される。
【0063】
したがって、本発明はまた、エレクトロルミネッセンス特性を有する少なくとも1種の粒子状物質および透明導電性顔料を含むセキュリティ要素の製造のための印刷インキに関するものである。
【0064】
エレクトロルミネッセンス特性を有する粒子状物質および透明導電性顔料として好適なものは、既に前記された物質である。
【0065】
前述の顔料および粒子は、本発明による印刷インキ中に、インキの印刷が問題なしに依然として可能であるような好適な濃度で存在する。したがって、印刷インキ中のエレクトロルミネッセンス特性を有する粒子状物質の濃度は、印刷インキに基づいて約0.01〜20重量%、好ましくは1〜10重量%、特に好ましくは2〜8重量%である。これに対し、透明導電性顔料は、一般的に、印刷インキに基づいて約0.01〜20重量%、好ましくは1〜10重量%、特に好ましくは2〜8重量%の濃度で印刷インキ中に存在している。
【0066】
また、本発明によるセキュリティ要素が、フレーク形状効果顔料および/または有機若しくは無機着色顔料を含むことを意図する場合、これらは印刷インキに基づいて約0.01〜約40重量%、好ましくは2〜20重量%、特に好ましくは5〜15重量%の濃度で本発明による印刷インキ中に存在する。
【0067】
前述の顔料および粒子は、別々に、または混合物で印刷インキに加えることができる。これは、粉末状顔料および粒子の形で行うことができる。しかしながら、前記の顔料および粒子は、好ましくは別々に、またはこれらの少なくとも2種の異なるタイプの混合物で流動性の顔料組成物または乾燥調製物の形で本発明による印刷インキに導入される。顔料成分以外に、これらはまた、少なくとも1種の好適なバインダーを含む。したがって、顔料組成物または乾燥調製物は、例えば、エレクトロルミネッセンス特性を有する粒子状物質および透明導電性顔料の混合物から、場合により、これらと共に1種または複数の効果顔料および/または着色顔料が混ぜられて調製される。個々の組成物またはその他の組み合わせも同様に可能である。流動性の顔料組成物は、前記の顔料以外にまたバインダー、溶剤および場合により1種または複数の添加剤を含むことができる特にペースト状物およびスラリー状物を意味すると解釈される。前記の乾燥調製物は、一般的に同じ添加剤を含むが、非常に実質的に減少した溶剤含有量を有する。しかしながら、0〜8重量%、好ましくは2〜8重量%、特に3〜6重量%の水および/または溶剤若しくは溶剤混合物を含む調製物はまた、乾燥調製物とみなされる。これらの乾燥調製物は、好ましくはパーレット(pearlets)、ブリケット、ペレット、粒状、チップ、ソーセージの形態または同様の形態であり、一般に約0.2〜80mmの粒径を有する。このタイプの流動性の顔料組成物および乾燥調製物は、顔料の輸送、保管および印刷インキへの顔料の均一な導入を簡単にし、顔料およびさらなる成分の分離を防ぎ、印刷インキの良好な再分散の作用を促進する。
【0068】
顔料成分以外に、本発明による印刷インキは1種または複数の好適なバインダーおよび場合により、印刷インキで慣用的である、例えば、溶剤、接着促進剤、分散助剤、乾燥促進剤、光開始剤などのさらなる添加剤を含む。言うまでもなく、これらのバインダーおよび添加剤は、使用される印刷プロセスに合わせられ、印刷インキは、適度の粘度を有している。ここでは、セキュリティ要素において連続した導電性の形成が防止されるように、印刷インキを使用して製造されるセキュリティ要素の電気伝導率を本質的には増加させないバインダーおよび添加剤のみが確実に選択されるようにすべきである。また、透明導電性顔料の濃度も、同様に、連続した導電性がセキュリティ要素において生じないように、前記の制限の中で選択することができる。
【0069】
好適な印刷法は、原則としてセキュリティ製品の製造において知られていて、慣用的である全ての印刷法、例えば、オフセット印刷、レターセット印刷、オフセットコーティング、フレキソ印刷、スクリーン印刷、熱昇華印刷、グラビア印刷、特にハーフトーン写真版印刷、凹版印刷、オーバープリントワニス法および全ての非接触印刷法である。しかしながら、本発明による印刷インキは、特に好ましくはスクリーン印刷法で使用される。
【0070】
しかしながら、また、他のコーティング方法、例えばナイフコーティング、刷毛塗り、スタンピング、鋳込み法、ラッカー塗り法、フロー方法、ローラーまたはグリッド適用法またはエアブラシによる適用などを使用することもできる。
【0071】
また、本発明によるセキュリティ要素は、セキュリティ製品の上または中にその全体の表面にわたってまたは部分領域において存在するポリマー層の形であってもよい。
【0072】
したがって、本発明のさらなる好ましい実施形態は、本発明によるセキュリティ要素を具現していて、セキュリティ製品の上または中に配置されているポリマー層である。
このポリマー層は、エレクトロルミネッセンス特性を有する少なくとも1種の粒子状物質および透明導電性顔料を含む。好ましい実施形態においては、ポリマー層は、付加的に少なくとも1種のフレーク形状効果顔料および/または少なくとも1種の有機若しくは無機の着色顔料を含む。
【0073】
ポリマー層は、例えば、全体の表面にわたってセキュリティ製品に積層されたフィルム、または貼り付けられたフィルム、例えば、(セキュリティ要素を有するか、または有していない)他のポリマーフィルムと共に共押出されたフィルムであり得る。また、好適なものは、透明導電性顔料および粒子状エレクトロルミネッセンス物質の両方を含むポリマー物質の堅いシートであり、従来の方法、例えば接着結合によって、その他の層状物質(場合により情報を運ぶ)に結合されている。これらのフィルムおよびシートは、セキュリティ製品の表面上またはその代わりに他のポリマー層で両側が囲まれている内部層中に配置され得る。しかしながら、これらは、基部(base)、すなわちセキュリティ製品の支持材のそれ自体を形成することもできる。
【0074】
フレーク形状効果顔料または場合によりさらに加えられた無機および/または有機の着色顔料によって生み出される色および/または光沢効果により、エレクトロルミネッセンスの特徴が機械読取可能であり、明白に認識および評価することができる限り、ポリマー層の厚さ、ポリマー物質、これらの層の可撓性やセキュリティ要素の他の層への結合のタイプは、ここでは限定されない。
【0075】
ポリマー層は、同様に重要文書の一部に適用し、または、その文書の中に導入することができる。この場合においては、印刷の場合のように、エレクトロルミネッセンスおよびいかなる追加の色および光沢の効果がまだ明確にはっきりと表れ、または機械読取可能である限り、考えられ得るいかなる形態も好適である。印刷のために既に述べた全ての形態が好適である。好ましいものは、ストリップ(細長い片)の形でのまたは重要文書中へのポリマー層の適用または導入である。ポリマー層が日用品の安全防護のために適用される場合、それは、実用的および美的理由のために、好ましくはこれらの表面の部分の上に置かれる。
【0076】
セキュリティ製品またはその一部分への適用若しくは導入のタイプは、限定的であるとみなすべきではない。例えば、接着接合、積層またはポリマー層物質のために慣用的であるその他の普通のタイプのその他の物質に対する接合法を挙げることができる。
その他の層物質は、好ましくは、さまざまのタイプの紙もしくはポリマー物質からなり、あるいは、繊維物質または金属などからなるものでもよい。
【0077】
本発明によるセキュリティ要素がポリマー層からなる場合、ポリマー層の形のセキュリティ要素は、本質的に互いに平行な2つの表面を有し、ポリマー層中にエレクトロルミネッセンス特性を有する少なくとも1種の粒子状物質、透明導電性顔料および少なくとも1種のポリマーを含む。
【0078】
ポリマープラスチック中のエレクトロルミネッセンス特性を有する粒子状物質の濃度は、プラスチックに基づいて約0.05〜15重量%、好ましくは0.2〜10重量%、特に好ましくは1〜8重量%である。一方、透明導電性顔料は、通常、プラスチックに基づいて約0.01〜30重量%、好ましくは0.2〜15重量%、特に好ましくは1〜8重量%の濃度で存在する。
【0079】
本発明によるセキュリティ要素がフレーク形状効果顔料および/または有機若しくは無機の着色顔料を含むことを意図する場合は、これらは、プラスチックに基づき約0.01〜約40重量%、好ましくは0.1〜20重量%、特に好ましくは1〜10重量%の濃度でポリマー層中に存在する。
【0080】
顔料および粒子は、好ましくはマスターバッチの形でポリマーベース組成物に導入される。また、顔料成分以外に、これらは、好適な量のバインダー、溶剤、場合により、さらに慣用的な助剤および添加剤を含む。
【0081】
ここで使用することができるポリマーは、エレクトロルミネッセンス物質および透明導電性フレーク形状効果顔料に対して不活性な挙動を示す全ての熱可塑性プラスチックである。特にポリマーは、導電性であってはならず、ポリマー層の電気伝導率を増加させてはならない。特に、それは導電性顔料を含むけれども、ポリマー層それ自体は、確実に連続的な導電性とならないようにしなければならない。
【0082】
ポリマー層は、好ましくは透明である。それゆえに、透明なポリマーの使用が好ましい。これは、例えばポリスチレン、ポリ塩化ビニルおよびこれらのコポリマーおよびグラフトポリマー、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリアクリレートおよびポリビニルエステル、熱可塑性ポリウレタン、セルロースエステルなどに当てはまる。これらは、単独で、または好適な混合物で使用することができる。
【0083】
さらに、ポリマー層は、追加的に慣用的な助剤および添加剤、例えば充填剤、UV安定剤、阻害剤、難燃剤、潤滑剤、可塑剤、溶剤、分散剤および付加的な染料または有機および/または無機の着色顔料などを含むことができる。
【0084】
ポリマー層は、さまざまな好適な方法、例えばフィルムキャスティング、スピニング(spinning)、押出法、カレンダー法または加圧法、特に押出法により、またはインフレーション成形法を経て好ましくは製造される。このために、さまざまな出発物質を互いに混合し、一般に知られた好適な装置で、さまざまな厚さのフィルムまたは薄いシートの形状のポリマー層に加工する。ポリマー組成物中に存在するフレーク形状顔料(効果顔料および場合により導電性顔料も)は、モールドの表面において配向され、それゆえに得られるポリマー層中において、ポリマー層の表面に実質的に平行に配向される。インフレーション成形の間の、または押出後の作業工程としての延伸および引張りの操作は、顔料の配向をさらに増進させる。
この配向は、その次の冷却中に固定される。
【0085】
使用される顔料混合物の分離または沈降の挙動は、ポリマー層中では観察されない。
【0086】
しかしながら、これらの破壊を防ぐために顔料成分に過度のせん断力が作用しないようにしなければならない。
【0087】
また、ポリマー物質の代わりに、エレクトロルミネッセンスの粒子状物質および透明導電性顔料を製紙原料または織物原料混合物に導入することもできる。
【0088】
このタイプのセキュリティ要素は、前述の成分に加えて、特に製紙において慣用的である全てのベース物質および助剤を加えることによって製造される。粒子状物質および顔料によって通常のプロセス手順に変化は生じない。代わりに、それらの濃度は、例えば製紙における全ての標準法を使用することができるように選択される。これらは、当業者に知られており、したがって、ここでさらに詳細に説明する必要はない。
しかしながら、既に記述したように、顔料が、紙および織物の製造プロセスで確実に破損または破壊されないように、また連続した導電性が、得られた紙または織物中に生じないようにしなければならない。
【0089】
このタイプのセキュリティ要素は、セキュリティ製品の支持材または基体として使用することができる。しかしながら、異なる、または同じタイプの着色または非着色の基体物質(substrate materials)に付設することもできる。
【0090】
本発明はさらに単一層または多層の支持材および支持材の層の上または中に配置された少なくとも1種の機械読取可能のセキュリティ要素を含み、前記セキュリティ要素がエレクトロルミネッセンス特性を有する少なくとも1種の粒子状物質および透明導電性顔料を含むセキュリティ製品に関するものである。
【0091】
場合により、好ましくは、機械読取可能なセキュリティ要素は、少なくとも1種のフレーク形状効果顔料および/または少なくとも1種の有機若しくは無機の着色顔料を含む。
【0092】
本発明によるセキュリティ製品のための支持材として好適なものは、全ての慣用的なタイプの紙であり、特に200g/m2までの単位重量を有するセキュリティ紙、好ましくは、木綿繊維、繊維物質、ポリマー物質、特にポリマー層状物質からなり、および全てのタイプのフィルムならびに被覆または非被覆の金属板、金属箔などである。
好ましいものは、セキュリティ紙またはポリマーフィルムの使用である。
【0093】
本発明によるセキュリティ製品は、前記の単一層または多層の支持材に基づくものであり、それぞれの層は同一または異なる物質でもよい。
【0094】
セキュリティ要素は、これらの層の1つの中または上に配置される。
【0095】
本発明によるセキュリティ要素が、支持材の層の上に配置される場合、それはその全表面にわたって、またはその一部に対してのいずれかに適用される。
【0096】
それが、セキュリティ製品における唯一のセキュリティ要素の形である場合、それは、好ましくは全表面にわたって適用される。これらは、好ましくは比較的低いセキュリティ標準を有するセキュリティ製品、例えば包装材料、ラベル、シール、入場券などである。しかしながら、また、本発明によるセキュリティ要素が、セキュリティ製品の片面上における唯一のセキュリティ要素として存在する場合、全表面にわたる適用が考慮されるべきである。
しかしながら、高いセキュリティ標準を有しているセキュリティ製品、例えば紙幣などの場合、一般に多くの異なったセキュリティ要素がお互いに並んでセキュリティ製品の各面に存在している。この場合、本発明によるセキュリティ要素での部分的な被覆が考慮される。ここでは、セキュリティ要素が、さまざまな無制限な形、例えばストリップ、ドット、線、英数字記号、図的表現などでセキュリティ製品に適用される。この形は、適用方法およびエレクトロルミネッセンスの機械可読性または効果顔料および/または着色顔料によって生み出される効果の光学的な知覚性によってのみ制限される。したがって、見る人がセキュリティ要素の全てのセキュリティレベルを明確に認識し、または機械で明確に評価することができるようにセキュリティ製品の十分に広い領域が、本発明によるセキュリティ要素で被覆されるべきである。
【0097】
同様に、セキュリティ製品が日用品、例えば、衣服、靴、家庭用品などである場合、形およびサイズにおいて制限されず、日用品の光学的デザインの中に含まれ得る部分的な被覆が、実用的な理由から有利であることが明白である。
【0098】
本発明によるセキュリティ要素が印刷法で作り出される場合、印刷インキの乾燥後の溶剤含有量を最少に抑えるので、前記の顔料成分を、印刷インキのために示されるものよりも当然に高い濃度で含む。
【0099】
本発明によるセキュリティ製品の中の顔料濃度が、多数回印刷インキを塗り重ねて適用することによって増加する場合、所期の効果、例えば光学可変性または光学的に目立つ着色およびエレクトロルミネッセンス特性などの増進を達成することができる。この場合、異なる印刷層は、それぞれの場合において前記の3つのグループの全てまたはいくつかだけからの顔料を含むことができる。
したがって、透明導電性フレーク形状顔料を含む印刷インキの多重の適用は、セキュリティ要素のエレクトロルミネッセンス特性を高める。
【0100】
着色顔料、効果顔料または好ましくは光学的に可変な顔料を含む多数の層を積み重ねて適用することによって、セキュリティ要素の着色および/または好ましくは光学的に変化する特性に影響を及ぼすことができる。この場合、少なくとも1つの層がエレクトロルミネッセンス特性を有する粒子状物質および透明導電性顔料の両方を含むことのみが必要である。
【0101】
このようにして、エレクトロルミネッセンス特性を有する粒子状物質および透明導電性顔料以外の、透明な効果顔料を含有するこのタイプの層を、半透明または不透明の効果顔料を含む層に適用することが有利である。また、透明な効果顔料を含む層を、エレクトロルミネッセンス特性を有する粒子状物質および透明導電性顔料以外の、透明あるいは不透明の効果顔料を含む層に適用することもできる。どちらの場合も、興味ある、追加の色彩効果、オリジナルの色の増進および/または光沢効果を獲得することができる。
【0102】
また、本発明によるセキュリティ要素が、他のポリマー層と結合できるか、または代わりに、上重ね印刷および/または下重ね印刷することができるポリマー層の形である場合も、同じ潜在的な変形がもちろん可能である。
【0103】
顔料を含む多数の層が、積み重ねて適用され、少なくとも1つの層が本発明によるセキュリティ要素を含む場合、下にあるおよび/または上にある層は、本発明によるセキュリティ要素と同じかまたは異なる形状を有することができる。
これは、特に光学的に知覚可能な形および色のデザインに関して大きなバリエーションの可能性を生じさせる。例えば、全表面にわたって不透明色の、場合により光学的に可変な背景を適用することが可能であり、これにより本発明によるセキュリティ要素の造形が際立つ。
同様に互いに積み重なって存在する少なくとも2つ以上の層が同じ形を有し、光学的な効果の増進がこの位置でのみ目視可能であるように一方を他方の上に正確に配置することも可能である。
【0104】
本発明によるセキュリティ要素において、前述の顔料成分は、ランダム分布している。
形式的には、顔料は、エレクトロルミネッセンス特性を有する粒子と共に使用されるフレーク形状の透明導電性顔料が主として屋根瓦のような構造に配置され、エレクトロルミネッセンス特性を有する粒子がそれらの間に散在するように配置されていると説明することができる。フレーク形状効果顔料を追加的に使用する場合、これらのほとんどは、着色顔料およびバインダーおよびポリマーベース組成物と同様に誘電特性を有している。
【0105】
エレクトロルミネッセンスの機械可読性にとって、粒子の発光強度が読取機によって記録され、明白に選定されるに十分に高いことが必要である。
【0106】
さまざまなフレーク形状顔料の屋根瓦のような配置のために、全てのエレクトロルミネッセンス粒子が、セキュリティ要素の表面に確実に存在するようにできないことは明らかに明白である。代わりに、それらの多くがフレーク形状顔料によって隠される。
しかしながら、エレクトロルミネッセンス粒子の濃度の増加は、加工上の不利益を伴うだろう。
また、それらが十分高い発光強度を有している場合、導電性顔料の透明性によって、その下にあるエレクトロルミネッセンス粒子を見ることができる。また、透明または少なくとも半透明のフレーク形状効果顔料および透明導電性フレーク形状顔料の両方を使用することが特に有利であることが証明された。これらは、それらの下にあるエレクトロルミネッセンス顔料の見える状態を妨害しない。
【0107】
本発明によるセキュリティ要素のエレクトロルミネッセンスを機械によって検出することができるように、セキュリティ要素を有しているセキュリティ製品は、交番電場中に導入される。
原則として、ドイツ特許第19758587C2号に記載された設備およびチェック装置が、本発明によるセキュリティ要素中のエレクトロルミネッセンスの測定のために好適である。
【0108】
交番電場の電気力線が、本発明によるセキュリティ要素を貫通し、電場の部分的な増幅が起こるように透明なフレーク形状導電性顔料によって偏向される。このように増幅された電磁波は、エレクトロルミネッセンス特性を有する粒子の増加した励起をもたらして、そこでのルミネッセンス放射線の増加した放出を引き起こし、それが測定器によって明白に記録され、選定される。
【0109】
また、原理上は、発光放射線のこのタイプの増幅は、非透過性導電性顔料、例えば金属顔料または金属層を含む顔料でも達成可能だろう。しかしながら、光に対する不透明性は、不透明顔料の下にある粒子を完全にカバーするので、使用されなければならないエレクトロルミネッセンス顔料について高い顔料濃度になる。そのような高い顔料濃度は、不利である。
【0110】
さらに、不透明導電性顔料の使用の場合には、前述の着色された下側印刷との組み合わせはできない。
その上、不透明導電性顔料、特に金属層を有するもので作り出されたセキュリティ要素は、存在し得る光学的性質は保有されるけれども、セキュリティ製品のその後の機械的な応力適用(印刷版によるものであろうと、あるいは特に従来のその後のエンボシング印刷法によるものであろうと)の際にそれらの電導性を失うことが見出された。その結果、セキュリティ要素のエレクトロルミネッセンスは、そのときはもはや明らかに機械読取可能であるために十分ではない。
【0111】
したがって、本発明による導電性不透明粒子、特に金属層を含むもの(この場合においては、効果顔料として使用される)と、透明導電性顔料およびエレクトロルミネッセンス粒子との組み合わせが、たとえこれらが例えばエンボシング印刷法の間などのその後の機械的な応力に曝された場合でも、金属の効果顔料の光学的特性および十分に高い機械読取可能のエレクトロルミネッセンスを有するセキュリティ要素をもたらすということは非常に驚くべきものであった。
それゆえに、これは、本発明のさらに好ましい実施形態である。
【0112】
本発明によるセキュリティ要素は、先行技術の知られている解決法と比較して多くの利点を有している。エレクトロルミネッセンス放射線の非接触の機械検出は、セキュリティ要素の中に、唯一の好適な量のエレクトロルミネッセンス物質を使用した際にはしばしばうまく行かないし、集積化電極を有するセキュリティ要素は複雑な構造を有するが、エレクトロルミネッセンスの非接触測定の問題を一つのさらなる物質を加えることによって解決したことは、本発明の際立った利点である。同時に、本発明によるセキュリティ要素の機械チェックは、他のセキュリティ要素のチェックより少ない時間しかかからないことが認められた。これは例えば紙幣などの既存のチェックプロセスの中に容易に一体化できることを意味する。
【0113】
本発明の目的を達成するためには、例えば、印刷インキに2つの異なる粒子状物質を好適な量加えることだけで十分であり、本発明によるセキュリティ要素もまた簡単な構造を有する場合、最も簡単には、通例の基体の上に印刷を経て達成することができる。本発明のセキュリティ要素を表すポリマー層は、同様に簡単な構造を有している。
【0114】
印刷およびポリマー層の両方は、これらの透明性により、非常に良好に目視可能な、特に着色された上に置かれる層または下に置かれる層と組み合わせることができる。しかしながら、同時にまたはその代わりに、また本発明によるセキュリティ要素は、これ自身効果顔料および/または着色顔料を含むことができ、これらは、これら自体で補助手段なしで光学的に検出され得るセキュリティ特徴に相当している。
【0115】
また、多くのエレクトロルミネッセンス物質は、光発光の特性を有するので、必要なら、これは、例えば、紫外線ランプを使用して照合できるさらなるセキュリティレベルの集積化をもたらすことができる。
【0116】
したがって、本発明によるセキュリティ要素は、エレクトロルミネッセンス特性の非接触の機械可読性に加えて、お互いに異なるセキュリティレベルに属する多くのセキュリティ特徴をセキュリティ製品の単一のポイントで組み合わせることができる優れた方法を表している。したがって、セキュリティ製品の偽造防止性は大いに増大する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトロルミネッセンス特性を有する少なくとも1種の粒子状物質および透明導電性顔料を含むセキュリティ製品のための機械読取可能なセキュリティ要素。
【請求項2】
少なくとも1種のフレーク形状効果顔料および/または少なくとも1種の有機若しくは無機の着色顔料をさらに含む請求項1に記載のセキュリティ要素。
【請求項3】
エレクトロルミネッセンス特性を有する粒子状物質が、Cu、MnまたはAgでドープされ、または活性化された周期表の第IIおよびVI族の無機化合物、Mn、Srまたは希土類で活性化されたケイ酸塩、アルミン酸塩、リン酸塩、タングステン酸塩、ゲルマン酸塩、ホウ酸塩、またはEL蛍光体ペースト、有機ポリマーまたはこれらの混合物を含み、交番電場における励起によって可視放射線を発する請求項1および請求項2のいずれか一項または複数項に記載のセキュリティ要素。
【請求項4】
エレクトロルミネッセンス特性を有する粒子状物質が、マイクロカプセル化された粒子を含む請求項1から3のいずれか一項に記載のセキュリティ要素。
【請求項5】
透明導電性顔料が、少なくとも1層の透明導電性層を有する請求項1から4のいずれか一項または複数項に記載のセキュリティ要素。
【請求項6】
透明導電性層が、TiO2、合成または天然の雲母、その他のフィロケイ酸塩、ガラス、SiO2およびAl23からなる群から選択される基体の上にある請求項5に記載のセキュリティ要素。
【請求項7】
透明導電性顔料が、少なくとも1層の導電性金属酸化物層で被覆された雲母顔料である請求項1から6のいずれか一項または複数項に記載のセキュリティ要素。
【請求項8】
導電性層が、Sbをドープしたスズ酸化物の層である請求項5から7のいずれか一項に記載のセキュリティ要素。
【請求項9】
少なくとも1層のさらなる誘電体層が、導電性層の上にある請求項5から8のいずれか一項または複数項に記載のセキュリティ要素。
【請求項10】
透明導電性顔料が、フレーク形状であり、少なくとも2:1のアスペクト比および1〜500μmの平均粒径を有する請求項1から9のいずれか一項または複数項に記載のセキュリティ要素。
【請求項11】
透明導電性顔料が、150μm2以上の数重み付け平均粒子面積F50を有する請求項1から10のいずれか一項または複数項に記載のセキュリティ要素。
【請求項12】
フレーク形状効果顔料が、真珠光沢顔料、主として透明または半透明干渉顔料、金属効果顔料、液晶顔料、構造化ポリマーフレークまたはこれらの混合物である請求項2から11のいずれか一項または複数項に記載のセキュリティ要素。
【請求項13】
フレーク形状効果顔料が、金属、金属酸化物、金属酸化物水和物またはこれらの混合物、金属混合酸化物、亜酸化物、酸窒化物、金属フッ化物、BiOClまたはポリマーの少なくとも1つの被覆を有する無機フレーク形状支持体を含む請求項2から12のいずれか一項または複数項に記載のセキュリティ要素。
【請求項14】
主として透明フレーク形状効果顔料を含む請求項2から13のいずれか一項または複数項に記載のセキュリティ要素。
【請求項15】
フレーク形状効果顔料として少なくとも1層の金属層を有する金属効果顔料を含む請求項2から13のいずれか一項または複数項に記載のセキュリティ要素。
【請求項16】
フレーク形状効果顔料が、光学的に可変である請求項2から15のいずれか一項または複数項に記載のセキュリティ要素。
【請求項17】
セキュリティ製品の全表面にわたって、または一部に適用される請求項1から16のいずれか一項または複数項に記載のセキュリティ要素。
【請求項18】
印刷インキによってセキュリティ製品の上に印刷される請求項17に記載のセキュリティ要素。
【請求項19】
セキュリティ製品の上または中でポリマー層の形態である請求項17に記載のセキュリティ要素。
【請求項20】
少なくとも1種のポリマー、紙および/または繊維をさらに含み、セキュリティ製品の支持材である請求項1から16のいずれか一項または複数項に記載のセキュリティ要素。
【請求項21】
交番電場における非接触の励起後に可視の機械検出可能な放射線を発する請求項1から20のいずれか一項または複数項に記載のセキュリティ要素。
【請求項22】
機械的な応力適用後および交番電場における非接触の励起後に可視の機械検出可能な放射線を発する請求項1から21のいずれか一項または複数項に記載のセキュリティ要素。
【請求項23】
エレクトロルミネッセンス特性を有する少なくとも1種の粒子状物質および透明導電性顔料を含む請求項1から22のいずれか一項または複数項に記載のセキュリティ要素の製造のための印刷インキ。
【請求項24】
少なくとも1種のフレーク形状効果顔料および/または少なくとも1種の有機若しくは無機の着色顔料をさらに含む請求項23に記載の印刷インキ。
【請求項25】
顔料および粒子が、少なくとも2種の異なるタイプのこれらの顔料および/または粒子を含む顔料混合物の形で使用される請求項23または24に記載の印刷インキ。
【請求項26】
顔料混合物が、少なくとも1種のバインダーをさらに含む請求項25に記載の印刷インキ。
【請求項27】
顔料混合物が、パーレット、ブリケット、ペレット、顆粒、チップ、ソーセージ、ペーストまたはスラリーの形態である請求項26に記載の印刷インキ。
【請求項28】
少なくとも1種のバインダーをさらに含む請求項23から27のいずれか一項または複数項に記載の印刷インキ。
【請求項29】
1種または複数の溶剤、接着促進剤、分散助剤、乾燥促進剤または光開始剤をさらに含む請求項28に記載の印刷インキ。
【請求項30】
エレクトロルミネッセンス特性を有する粒子状物質、透明導電性顔料、フレーク形状効果顔料および無機または有機の着色顔料からなる群から選択される少なくとも2種の異なるタイプの顔料および少なくとも1種のバインダーを含む請求項1から22のいずれか一項または複数項に記載のセキュリティ要素の製造のための印刷インキ用の顔料混合物。
【請求項31】
流動性顔料組成物または乾燥調製物の形である請求項30に記載の顔料混合物。
【請求項32】
単一層または多層の支持材および支持材の層の上または中に配置される請求項1から22のいずれか一項または複数項に記載の少なくとも1種の機械読取可能のセキュリティ要素を含むセキュリティ製品。
【請求項33】
全表面または部分被覆の形の機械読取可能なセキュリティ要素を含む請求項32に記載のセキュリティ製品。
【請求項34】
被覆が、印刷の形である請求項33に記載のセキュリティ製品。
【請求項35】
被覆が、ポリマー層の形態である請求項33に記載のセキュリティ製品。

【公表番号】特表2008−500201(P2008−500201A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513724(P2007−513724)
【出願日】平成17年4月29日(2005.4.29)
【国際出願番号】PCT/EP2005/004603
【国際公開番号】WO2005/115766
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【出願人】(506392931)ブンデスドルクケライ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【氏名又は名称原語表記】BUNDESDRUCKEREI GMBH
【Fターム(参考)】