説明

セグメントの形状保持装置及びこの形状保持装置を用いたセグメントの形状保持方法

【課題】トンネル構築の作業性を向上させるとともに、直前に組み立てたセグメントの形状保持効果を継続したまま、最新のセグメントの形状を保持することが可能なセグメントの形状保持装置及びこの形状保持装置を用いたセグメントの形状保持方法を提供する。
【解決手段】形状保持装置31は、一端がシールド機1のテール部5内に設置されている縦梁33に接続され、他端がシールド機1後方に突出する支持フレーム35と、この支持フレーム35に取り付けられ、上下方向に伸縮可能な左右一対の上下伸縮手段37と、各上下伸縮手段37の上端部に、シールド機1の進行方向前後に揺動自在にピン結合にて連結されるブラケット39と、ブラケット39の上部に連結され、セグメント13の内面に当接するとともに、この内面に沿って滑動可能な滑動体41を有する2台の滑動部43と、各上下伸縮手段37の下端部に連結される2台の滑動部43とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド工法において、掘削にともない覆工されるセグメントの形状保持装置及びこの形状保持装置を用いたセグメントの形状保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、地盤内にトンネルを構築するシールド工法では、シールド機のテール部内でのセグメントの組み立て時に、施工したセグメントの外周には裏込材が充填されるが、短時間では所定の強度が得られないために、直前に施工したセグメントに地山からの土圧や自重による変形が生じ、組み立て中の最新のセグメントとの連結に支障をきたすことが多い。このために、直前に施工したセグメントの形状を保持するための形状保持装置が使用される。
【0003】
例えば、特許文献1には、シールド機本体から後方に突設された支持デッキと、支持デッキの上下両側に、それぞれトンネル方向に移動可能に設置され、上下方向に伸縮する左右一対の拡張ジャッキと、拡張ジャッキの上端部及び下端部にそれぞれ取り付けられる掘削断面形状に沿った円弧状の上部拡張梁、下部拡張梁とを備えた形状保持装置が示されている。この形状保持装置は、拡張ジャッキを伸長して上部拡張梁及び下部拡張梁をセグメント内面に当接させることにより、地山からの土圧や自重によりセグメントに作用する垂直方向の荷重を支持し、セグメントの変形を防止するものである。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、シールド機本体から後方に突設されたベースフレームと、ベースフレームの上下両側に、それぞれトンネル方向に直列状に設置され、上下方向に伸縮する左右一対の昇降用ジャッキ等からなる複数の保形ユニットと、昇降用ジャッキの上端部及び下端部にそれぞれ取り付けられる掘削断面形状に沿った円弧状の上部保形フレーム、下部保形フレームと、最も後端側に位置する保形ユニットを他の複数の保形ユニットの内側を潜らせて最前端側の位置へ移載させるユニット移載機構とを備え、複数の保形ユニットがそれぞれ1リング分のセグメントを保持する形状保持装置が示されている。この形状保持装置は、最新のセグメントを組み立てた後に、最も後端側の保形ユニットを残りの複数の保形ユニットの内方を挿通させて最前端へ移動して、最新のセグメントの1リング分を保持し、順次この作業を繰り返してセグメンの変形を防止するものである。
【特許文献1】特開2002−97899号公報
【特許文献2】特開2000−328898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の形状保持装置を用いた方法では、最新のセグメントを組み立てた後に、直前に施工したセグメントを保形している形状保持装置の拡張ジャッキの圧力を開放して拡張ジャッキを収縮し、形状保持装置を最新のセグメント位置に移動し、拡張ジャッキを再び伸長して最新のセグメントの形状を保持していた。したがって、この形状保持装置を直前のセグメントから最新のセグメントへ移動する間は、これらの両セグメントの形状を保持していないために、地山からの土圧や自重により最新のセグメントが変形してしまうという問題点があった。そして、変形した最新のセグメントに形状保持装置を設置しても完全にもとの形状に戻すことができず、次に新たに組み立てられるセグメントの連結作業に支障をきたすという問題点があった。
【0006】
また、シールド機の推進にともない、直前に施工したセグメントを保持している形状保持装置を短時間で最新のセグメントに移動させると、このセグメントの外周に充填されている裏込材は短時間では所定の強度を得られないために、完全に固化していない状態で形状保持装置を取り外すこととなり、地山からの土圧や自重によりこのセグメントが変形してしまうという問題点があった。
【0007】
そして、特許文献2に記載の形状保持装置を用いた方法では、複数の保形ユニットを設置するために、トンネル内の空間の多くを形状保持装置が占有し、セグメントの搬送、作業員の移動等が困難であるという問題点があった。また、複数の保形ユニットを設けること、及び保形ユニット内を他の保形ユニットが通過するための機構を設けること等によりコストがかかり、工事費が増大するという問題点があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、トンネル構築の作業性を向上させるとともに、最新のセグメントの形状を保持する際に、1工程前に組み立てたセグメントの形状保持効果を継続することが可能なセグメントの形状保持装置及びこの形状保持装置を用いたセグメントの形状保持方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明の形状保持装置は、シールド機を推進する際に組み立てられたセグメントの形状を保持するための形状保持装置であって、
一端が前記シールド機のテール部内に接続され、他端が前記シールド機の後方に突出する支持フレームと、
前記支持フレームに脱着可能に接続され、上下方向に伸縮可能な上下伸縮手段と、
該上下伸縮手段の上下端部に連結され、セグメントの内面に当接するとともに、該セグメントの内面に沿って滑動可能な滑動体を有する滑動部とを備えることを特徴とする(第1の発明)。
【0010】
本発明のセグメントの形状保持装置によれば、形状保持装置が直前に組み立てたセグメントの形状を保持した状態のままで、上下伸縮手段を伸縮させる(形状保持装置を解除する)こと無くこのセグメント内面に沿って滑動して前進し、最新のセグメントに移動することが可能である。したがって、直前に組み立てたセグメントの形状を保持した状態から連続して最新のセグメントの形状を確実に、かつ正確に保持することが可能となる。また、ジャッキの伸縮作業、形状保持装置の盛り替え作業等が不要となるために、工期を短縮して工事費を低減することが可能となる。
そして、最新のセグメントを組み立てると、直ちに保持するために、浮き上がり、スキンプレート内における自重によるずり落ちを防止することが可能となる。
また、形状保持装置を移動させるための機構は、滑動体を有する滑動部のみからなるために、簡易で小さな構成にすることが可能となる。したがって、形状保持装置全体が簡易な機構にて構成されて、形状保持装置がセグメント内の空間を占有しないために、セグメントピースの運搬や組み立て用の足場等の作業空間が確保され、作業の効率化を図ることが可能となる。
【0011】
本発明において、前記滑動体は、ローラー等の回転体からなることを特徴とする。
【0012】
本発明において、前記滑動体は、摩擦抵抗の小さい板状の滑動材からなり、交換可能であることを特徴とする。
【0013】
本発明において、前記上下伸縮手段は、伸縮量を検出する検出手段を備え、所定の伸長量を伸長することによりセグメントの形状を保持することを特徴とする。
本発明のセグメントの形状保持装置によれば、セグメントの設計内空に基づいて設定された上下伸縮手段の伸長量を伸長するために、セグメントの形状を正確に保持することが可能となる。
【0014】
本発明のセグメントの形状保持方法は、一端がシールド機のテール部内に接続され、他端が前記シールド機の後方に突出する支持フレームと、前記支持フレームに脱着可能に接続され、上下方向に伸縮可能な上下伸縮手段と、該上下伸縮手段の端部に連結され、セグメントの内面に当接するとともに、該セグメントの内面に沿って滑動可能な滑動体を有する滑動部とを備えた形状保持装置を用いてセグメントの形状を保持する形状保持方法において、
前記上下伸縮手段を伸長し、前記滑動部の前記滑動体を直前に組み立てたセグメントの内面に当接して該直前に組み立てたセグメントの形状を保持し、
前記シールド機の内方にて最新のセグメントを組み立てて、
前記上下伸縮手段を伸縮することなく前記直前に組み立てたセグメントの形状を保持した状態のまま前記滑動体が前記直前に組み立てたセグメント内面に沿って進行方向に滑動することにより前記形状保持装置も前進し、
前記滑動体が前記最新のセグメントに移動すると同時に前記最新のセグメントの形状を保持することを特徴とする。
【0015】
本発明において、前記上下伸縮手段は、所定の伸長量を伸長することによりセグメントの形状を保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のセグメントの形状保持装置及びこの形状保持装置を用いた形状保持方法によれば、トンネル構築の作業性を向上させるとともに、直前に組み立てたセグメントの形状保持効果を継続したまま、最新のセグメントの形状を保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る矩形シールド機の正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る矩形シールド機の側断面図である。
【図3】本実施形態に係るシールド機のテール部の正断面図である。
【図4】本実施形態に係るシールド機のテール部の側断面図である。
【図5】本実施形態に係る形状保持装置の作動方法を示す図である。
【図6】本実施形態に係る形状保持装置の作動方法を示す図である。
【図7】本実施形態に係る形状保持装置の作動方法を示す図である。
【図8】参考例におけるシールド機のテール部の正断面図である。
【図9】図8のA−A’矢視図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係るシールド機のテール部の正断面図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係るシールド機のテール部の側断面図である。
【図12】右伸縮手段の他の設置方法を示す図である。
【図13】下伸縮手段の他の設置方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明における好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る矩形シールド機の正面図、図2は、本発明の実施形態に係る矩形シールド機の側断面図である。
【0019】
図1及び図2に示すように、シールド機1は、進行方向前部で切羽の掘削を行うフード部3と、後部で覆工を行うテール部5と、フード部3及びテール部5を結ぶとともに推進設備等を内方に装備するガーダー部7とから構成され、外部から作用する荷重に対し前述した各部を保護するための矩形筒状の鋼殻からなるスキンプレート9を備える。このスキンプレート9の内側に近接して、等間隔にシールドジャッキ11が設けられ、セグメント13全周に均等に推進荷重が作用するように環状に設置される。
【0020】
また、シールド機1は、スキンプレート9内に縦横に所定の組み合せで配列されるとともに、それぞれが独立して推進可能、かつそれぞれが独立して駆動可能な複数の矩形状の主シールド15を備える。主シールド15の配列は、構築するトンネルの掘削断面の形状、大きさ等に応じて適宜の組み合せとすることができ、本実施形態においては、例えば、縦(鉛直)方向×横(水平)方向=2(段)×3(列)としている。各主シールド15は、スキンプレート9内に前後移動自在に設けられる矩形状のシールド本体17と、シールド本体17を進退させるスライドジャッキ19と、シールド本体17の前面側に回転可能に設けられるカッターヘッド23と、シールド本体17に設けられ、カッターヘッド23を駆動するための駆動源25と、駆動源25の駆動力をカッターヘッド23に伝達する動力伝達機構27とを備えており、各主シールド15は、独立して駆動可能に構成される。
【0021】
テール部5の内方に複数のピースからなるセグメント13を組み立てるためのセグメント組立装置59が設けられ、このセグメント組立装置59により掘削したトンネルの内面に順次セグメントが組み立てられ、セグメントによる内壁が構築される。
ガーダー部7には掘削した土砂を排出するための排出装置57が接続されている。
【0022】
図3は、本実施形態に係るシールド機1のテール部5の正断面図、図4は、本実施形態に係るシールド機1のテール部5の側断面図である。
【0023】
セグメントの形状を保持するための形状保持装置31は、一端がシールド機1のテール部5内に設置されている縦梁33(図2に示す)に接続され、他端がシールド機1後方に突出する支持フレーム35と、この支持フレーム35に取り付けられ、上下方向に伸縮可能な左右一対の上下伸縮手段37と、各上下伸縮手段37の上端部に、シールド機1の進行方向前後に揺動自在にピン結合にて連結されるブラケット39と、ブラケット39の上部に連結され、セグメント13の内面に当接するとともに、この内面に沿って滑動可能な滑動体41を有する2台の滑動部43と、各上下伸縮手段37の下端部に連結される2台の滑動部43とを備える。
【0024】
支持フレーム35は、円筒形状の支持梁45と、支持梁45の両側にアーム状に取り付けられる延長梁47とからなり、支持梁45と延長梁47とは脱着可能に接続される。支持梁45の下方をセグメントピースの運搬や組み立て用の足場等の作業空間として確保するために、支持梁45はトンネル中心よりやや上方になるように縦梁33に片持ち式に取り付けられる。
【0025】
上下伸縮手段37は、側面が延長梁47の一端に接続された外筒49と、外筒49内に摺動可能に挿通された内筒51と、内筒51を外筒49に対して上下方向に摺動させるための上下ジャッキ53とを備える。
【0026】
上下ジャッキ53は、ジャッキの伸縮量を検出する検出手段を備え、所定の伸長量になると伸長が停止する。本実施形態においては、図3の紙面に対して上側の滑動体41の上端部から下側の滑動体41の下端部までの長さが、セグメント13の設計内空と同一になるように上下ジャッキ53を伸長させたときの伸長量を、上記した所定の伸長量とする。
【0027】
滑動部43は複数の滑動体41を有し、ブラケット39の上部及び外筒49の下端部にそれぞれピン結合にて連結される。滑動体41はローラー等の回転体からなり、本実施形態においては、例えば、樹脂製の回転ローラーを用いる。各滑動部43は1リング分のセグメント13の内面に当接するようにそれぞれ配置される。
【0028】
セグメント13の形状の保持は、上下ジャッキ53を所定の伸長量だけ伸長して内筒51を外筒49に対して上方に摺動させ、各滑動部43をセグメント13の内面に当接することにより行う。ここで、上下ジャッキ53を所定の伸長量だけ伸長させると、上側の滑動体41の上端部から上下伸縮手段37を介して下側の滑動体41の下端部までの長さがセグメント13の設計内空となり、この状態でセグメント13の形状を保持できる。
【0029】
また、曲線施工等によりシールド機の傾きとセグメント13の設置勾配とが異なる場合でも、上下ジャッキ53を伸長して滑動部43をセグメント13の内面に当接する際に、滑動部43がセグメント13の勾配に対して平行となるようにブラケット39が回転し、滑動体41がセグメント13の内面に片当たりすることを防止する。
【0030】
上下ジャッキ53を所定の伸長量だけ伸長して、セグメント13dの形状を保持した状態で、シールド機1が推進すると滑動部43がセグメント13内面に沿って滑動することにより形状保持装置31がシールド機1とともに前進し、滑動部43が最新のセグメント13eに移動すると、このセグメント13eの形状を保持する状態となる。
【0031】
以下に、形状保持装置31の作動方法について説明する。
図5〜図7は、形状保持装置31の作動方法を示す図である。
【0032】
まず、図4に示すように、形状保持装置31の上下ジャッキ53を所定の伸長量だけ伸長し、前方及び後方に配置された2台の滑動部43をそれぞれ既設のセグメント13c、13dの内面に当接して各セグメント13の形状を保持する。
そして、形状保持装置31が保持するセグメント13の前方に最新のセグメント13eを組み立てる。
【0033】
次に、図5に示すように、最新のセグメント13eの前端を反力材としてシールドジャッキ11を伸長し、シールド機1を推進するとともに、テールボイドに裏込材を充填する。形状保持装置31はシールド機本体の後部に牽引されているために、シールド機と同時に前進し、形状保持装置31の前進にともない、セグメント13c、13dの内面に当接していた各滑動部43は、滑動体41を回転させることによりセグメント13c、13dの形状を保持した状態のまま最新のセグメント13eに向かって移動する。
【0034】
図6に示すように、シールドジャッキ11をさらに伸長し、シールド機1及び形状保持装置31が1リング分だけ前進すると、形状保持装置31の前方の滑動部43は最新のセグメント13eへ移動してその形状を保持し、後方の滑動部43は1工程前に施工したセグメント13dへ移動してその形状を保持し続ける。この時点では、セグメント13cの外周部分の裏込材は硬化して所定の強度を得られるために、形状保持装置を外してもセグメント13cの形状が変形することはない。
【0035】
そして、図7に示すように、シールド機1が1リング分だけ推進した後に、シールドジャッキ11を収縮させ、再びセグメント組立装置59にてセグメント13fを組み立てる。
【0036】
以上のように、セグメント13eを組み立ててからシールド機1を推進するとともに形状保持装置31も前進させ、最新のセグメント13f及び1工程前に施工したセグメント13eを保形するまでの一連の作業を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返すことにより、シールド機1後方のセグメント13を構築するとともにセグメント13の形状を保持する。
【0037】
したがって、本実施形態の形状保持装置31によれば、シールド機1の推進にともない、形状保持装置31がセグメント13の形状を保持した状態のままでセグメント13内面に沿って滑動して前進し、最新のセグメント13に移動して、この最新のセグメント13の形状を保持することが可能となる。したがって、直前に組み立てたセグメント13の形状を保持した状態のまま、上下伸縮手段37を伸縮させる(形状保持装置を解除する)こと無く、最新のセグメント13の形状を保持することが可能となる。つまり、上下ジャッキ53の伸縮作業、形状保持装置31の盛り替え作業等が不要となるために、工期を短縮して工事費を低減することが可能となる。
【0038】
また、曲線施工等によりシールド機1の傾きとセグメント13の設置勾配とが異なる場合でも、上下伸縮手段37を伸長して滑動部43をセグメント13の内面に当接する際に、滑動部43がセグメント13の勾配に対して平行となるようにブラケット39が回転し、滑動体41がセグメント13の内面に片当たりすることを防止することが可能となる。
【0039】
そして、セグメント13の設計内空に基づいて設定された上下伸縮手段37の伸長量を伸長するために、セグメント13の形状を正確に保持することが可能となる。
【0040】
また、組み立て直後の最新のセグメント13を直ちに保持するために、浮き上がり、スキンプレート9内における自重によるずり落ちを防止することが可能となる。
【0041】
さらに、形状保持装置31がセグメント13内の下部を占有しないために、セグメント13内にセグメントピースの運搬や組み立て用の足場等の作業空間が確保され、作業の効率化を図ることが可能となる。
【0042】
なお、本実施形態において、左右一対の上下伸縮手段37を設置し、セグメント13を保持する方法について示したが、この方法に限定されるものではなく、例えば、セグメント13の中央部を1本の上下伸縮手段37で保持する方法を用いてもよく、地山強度、セグメント13内空断面積等の現場条件に応じて適宜変更する。
【0043】
次に、上下伸縮手段37の代わりに左右伸縮手段67のみを用いた場合の参考例について説明し、その後、上下伸縮手段37及び左右伸縮手段67を用いた本発明の他の実施形態について説明する。下記に示す説明において、上記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して、説明を省略する。
【0044】
図8は、参考例におけるシールド機1のテール部5の正断面図、図9は、図8のA−A’矢視図である。
図8及び図9に示すように、形状保持装置60は、支持フレーム35と、支持フレーム35の両端部に取り付けられ、左、右方向にそれぞれ伸縮可能な一対の左右伸縮手段67と、各左右伸縮手段67の外方側にトンネル方向に揺動自在に連結されるブラケット39と、各ブラケット39の外方に連結される2台の滑動部43とを備える。
【0045】
支持フレーム35は、支持梁45と、支持梁45の両側にアーム状に取り付けられる延長梁48とからなり、支持梁45と延長梁48とは脱着可能に接続される。
【0046】
左右伸縮手段67は、側面が上下伸縮手段37に接続される外筒69と、外筒69内に摺動可能に挿通される内筒71と、内筒71を外筒69に対して左右方向に摺動させるための左右ジャッキ73とを備える。
【0047】
左右ジャッキ73は、ジャッキの伸縮量を検出する検出手段を備え、所定の伸長量になると伸長が停止する。本実施形態においては、図8の紙面に対して左側の滑動体41の左端部から右側の滑動体41の右端部までの長さが、セグメント13の設計内空と同一になるように左右ジャッキ73を同等に伸長させたときのそれぞれの伸長量を上記した所定の伸長量とする。
【0048】
ブラケット39の端部にそれぞれ2台の滑動部43が連結され、各滑動部43は1リング分のセグメント13の内側に当接するようにそれぞれ配置される。
【0049】
セグメント13の形状の保持は、左右ジャッキ73をそれぞれの所定の伸長量だけ伸長してそれぞれの内筒71を外筒69に対して摺動させ、各滑動部43をセグメント13の内面に当接して行う。ここで、左右ジャッキ73をそれぞれの所定の伸長量だけ伸長させると、左側の滑動体41の左端部から右側の滑動体41の右端部までの長さがセグメントの設計内空となる。
【0050】
また、曲線施工等によりシールド機1の傾きとセグメント13の設置勾配とが異なる場合でも、左右ジャッキ73を伸長して滑動部43をセグメント13の内面に当接する際に、滑動部43がセグメント13の内面に対して平行となるようにブラケット39が回転し、滑動体41がセグメント13の内面に片当たりすることを防止する。
【0051】
形状保持装置60は、左右ジャッキ73をそれぞれの所定の伸長量だけ伸長し、セグメント13dの形状を保持した状態のままで左右ジャッキ73を伸縮することなく、シールド機1が推進する同時に、滑動体41をセグメント13内面に沿って滑動させることにより前進し、滑動部43が最新のセグメント13eに移動して、このセグメント13eの形状を保持する。
【0052】
したがって、本参考例の形状保持装置60によれば、左右方向に伸縮可能な左右伸縮手段67と左右伸縮手段67の右又は左端部に連結された滑動部43とを備えているために、セグメント13の左右方向の形状を保持することが可能となる。
【0053】
また、曲線施工等によりシールド機1の傾きとセグメント13の設置勾配とが異なる場合でも、左右伸縮手段67を伸長して滑動部43をセグメント13の内面に当接する際に、滑動部43がセグメント13の勾配に対して平行となるようにブラケット39が回転し、滑動体41がセグメント13の内面に片当たりすることを防止することが可能となる。
【0054】
そして、セグメント13の設計内空に基づいて設定された左右伸縮手段67の伸長量を伸長するために、セグメント13の形状を正確に保持することが可能となる。
【0055】
なお、本参考例において、矩形の形状を有するセグメント13を保持する方法について説明したが、この形状に限定されるものではなく、例えば、略U字形等のセグメントの形状も保持することが可能となる。
【0056】
また、本参考例において、左右伸縮手段67をトンネルの中心軸付近に設置し、セグメント13を保持する方法について示したが、この位置に限定されるものではなく、セグメント13の上部又は下部を保持してもよく、セグメントの形状、地山強度等の現場条件に応じて適宜変更する。さらに、例えば、セグメント13の上部及び下部等の複数箇所を保持する方法を用いてもよい。
【0057】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
図10は、本発明の他の実施形態に係るシールド機1のテール部5の正断面図、図11は、本発明の他の実施形態に係るシールド機1のテール部5の側断面図である。
【0058】
図10及び図11に示すように、形状保持装置61は、支持フレーム35と、左右一対の上下伸縮手段37と、各上下伸縮手段37の上端部に連結されるブラケット39と、ブラケット39の上部に連結される2台の滑動部43と、各上下伸縮手段37の下端部に連結される2台の滑動部43と、各上下伸縮手段37に取り付けられ、左、右方向にそれぞれ伸縮可能な一対の左右伸縮手段67と、各左右伸縮手段67の外方側にトンネル方向に揺動自在に連結されるブラケット39と、各ブラケット39の外方に連結される2台の滑動部43とを備える。
【0059】
セグメント13の形状の保持は、上下ジャッキ53、左右ジャッキ73をそれぞれの所定の伸長量だけ伸長してそれぞれの内筒51、71を外筒49、69に対して摺動させ、各滑動部43をセグメント13の内面に当接して行う。ここで、上下ジャッキ53及び左右ジャッキ73をそれぞれ所定の伸長量だけ伸長させると、図10の紙面に対して、上側の滑動体41の上端部から上下伸縮手段37を介して下側の滑動体41の下端部までの長さ、及び左側の滑動体41の左端部から右側の滑動体41の右端部までの長さがセグメントの設計内空となる。
【0060】
形状保持装置61は、上下ジャッキ53、左右ジャッキ73をそれぞれの所定の伸長量だけ伸長し、セグメント13dの形状を保持した状態のままで上下ジャッキ53及び左右ジャッキ73を伸縮することなく、シールド機1が推進する同時に、滑動体41をセグメント13内面に沿って滑動させることにより前進し、滑動部43が最新のセグメント13eに移動して、このセグメント13eの形状を保持する。
【0061】
したがって、本実施形態の形状保持装置61によれば、上下方向に伸縮可能な上下伸縮手段37と左右方向に伸縮可能な左右伸縮手段67とを備えているために、セグメント13の形状を確実に保持することが可能となる。
【0062】
そして、セグメント13の設計内空に基づいて設定された上下伸縮手段37及び左右伸縮手段67のそれぞれの伸長量を伸長するために、セグメント13の形状を正確に保持することが可能となる。
【0063】
また、本実施形態において、各上下伸縮手段37にそれぞれ左右伸縮手段67を設ける方法について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、図12に示すように延長梁47を下方に延長して延長部47aを設け、この延長部47aの下側に、左右方向に伸縮し、両端部に滑動部43を備えた1本の左右伸縮手段68を取り付ける方法を用いてもよい。
【0064】
なお、上記すべての実施形態において、延長梁47の両側に一対の上下伸縮手段37を設ける方法について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、図13に示すように、延長梁47の上側に左右一対の上方に向かって伸縮する上方伸縮手段75と、延長梁47の下側に左右一対の下方に向かって伸縮する下方伸縮手段77とを設け、上方・下方伸縮手段をそれぞれ伸長してセグメント13の形状を保持する方法を用いてもよい。
【0065】
なお、上記すべての実施形態において、2台の滑動部43を用いて2リング分のセグメント13を保持する方法について説明したが、これに限定されるものではなく、1リング分のセグメント13だけを保持する方法を用いてよく、1リング分を保持する場合は、最新のセグメント13を保持することが望ましい。さらに、裏込材が所定の強度に達するまで長時間を要する場合等は、3台の滑動部43を用いて3リング分以上のセグメント13を保持する方法を用いてもよい。
【0066】
また、上記すべての実施形態において、形状保持装置31、61は、シールド機1の推進と同時に前進する方法について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、延長梁47を支持梁45に沿って摺動可能に連結し、シールド機1が所定の距離だけ推進した後に、形状保持装置31、61を支持梁45に沿って摺動させて前進する方法を用いてもよい。
【0067】
さらに、上記すべての実施形態において、ローラー等の回転体からなる滑動体41について説明したが、これに限定されるものではなく、滑動体41として摩擦係数の小さく、交換可能な板状の滑動材を用いてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 シールド機
3 フード部
5 テール部
7 ガーダー部
9 スキンプレート
11 シールドジャッキ
13 セグメント
15 主シールド
17 シールド本体
19 スライドジャッキ
23 カッターヘッド
25 駆動源
27 動力伝達機構
31 形状保持装置
33 縦梁
35 支持フレーム
37 上下伸縮手段
39 ブラケット
41 滑動体
43 滑動部
45 支持梁
47 延長梁
47a 延長部
48 延長梁
49 外筒
51 内筒
53 上下ジャッキ
57 排出装置
59 セグメント組立装置
60 形状保持装置
61 形状保持装置
67、68 左右伸縮手段
69 外筒
71 内筒
73 左右ジャッキ
75 上方伸縮手段
77 下方伸縮手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド機を推進する際に組み立てられたセグメントの形状を保持するための形状保持装置であって、
一端が前記シールド機のテール部内に接続され、他端が前記シールド機の後方に突出する支持フレームと、
前記支持フレームに脱着可能に接続され、上下方向に伸縮可能な上下伸縮手段と、
該上下伸縮手段の上下端部に連結され、セグメントの内面に当接するとともに、該セグメントの内面に沿って滑動可能な滑動体を有する滑動部とを備えることを特徴とするセグメントの形状保持装置。
【請求項2】
前記滑動体は、ローラー等の回転体からなることを特徴とする請求項1に記載のセグメントの形状保持装置。
【請求項3】
前記滑動体は、摩擦抵抗の小さい板状の滑動材からなり、交換可能であることを特徴とする請求項1に記載のセグメントの形状保持装置。
【請求項4】
前記上下伸縮手段は、伸縮量を検出する検出手段を備え、所定の伸長量を伸長することによりセグメントの形状を保持することを特徴とする請求項1に記載のセグメントの形状保持装置。
【請求項5】
一端がシールド機のテール部内に接続され、他端が前記シールド機の後方に突出する支持フレームと、前記支持フレームに脱着可能に接続され、上下方向に伸縮可能な上下伸縮手段と、該上下伸縮手段の端部に連結され、セグメントの内面に当接するとともに、該セグメントの内面に沿って滑動可能な滑動体を有する滑動部とを備えた形状保持装置を用いてセグメントの形状を保持する形状保持方法において、
前記上下伸縮手段を伸長し、前記滑動部の前記滑動体を直前に組み立てたセグメントの内面に当接して該直前に組み立てたセグメントの形状を保持し、
前記シールド機の内方にて最新のセグメントを組み立てて、
前記上下伸縮手段を伸縮することなく前記直前に組み立てたセグメントの形状を保持した状態のまま前記滑動体が前記直前に組み立てたセグメント内面に沿って進行方向に滑動することにより前記形状保持装置も前進し、
前記滑動体が前記最新のセグメントに移動すると同時に前記最新のセグメントの形状を保持することを特徴とするセグメントの形状保持方法。
【請求項6】
前記上下伸縮手段は、所定の伸長量を伸長することによりセグメントの形状を保持することを特徴とする請求項5に記載のセグメントの形状保持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−21475(P2011−21475A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219958(P2010−219958)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【分割の表示】特願2005−282244(P2005−282244)の分割
【原出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】